(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を説明する。
【0013】
[第1実施形態]
図1〜
図7に本発明の第1実施形態を示す。
図1に示す塗装設備1は、被塗装部品としての車体M1を構成する金属製部品の一例としての車体本体2と、この車体本体2に取付けられる樹脂製部品の一例としてのフロントバンパ3及びリヤバンパ4に対して同一塗料を塗布し、塗布後の車体本体2とバンパ3,4とを並行して別々に乾燥焼付けするものである。
【0014】
この塗装設備1は、前工程から搬送治具Jt1,Jt2(
図3参照)に載置され、コンベヤにて搬送されてきた車体本体2とバンパ3,4とからなる車体M1に対して同一塗料を一括塗布する塗布工程12と、分離乾燥焼付工程13とを備えている。
【0015】
分離乾燥焼付工程13は、塗布工程12で車体本体2とバンパ3,4とに塗布された塗料を乾燥焼付けするものであり、車体分離部14と高温乾燥焼付炉(以下、「高温炉」と略称)15と低温乾燥焼付炉(以下、「低温炉」と略称)16と色相照合部17と色相調整部18と車体集成部19とを有している。車体分離部14は塗布工程12から搬送されてきた車体M1を車体本体2とバンパ3,4とに、それぞれが載置されている搬送治具Jt1,Jt2を移動させて分離する。
【0016】
高温炉15は搬入された金属製の車体本体2を、高温(例えば170°)で予め設定した時間だけ乾燥焼き付けする。又、低温炉16は搬入された樹脂製のバンパ3,4を、高温炉15よりも低い温度(例えば120°)で予め設定した時間だけ乾燥焼き付けする。
【0017】
色相照合部17は乾燥焼付けの完了した車体本体2とバンパ3,4との色相(Lab値)を比較し、その差(色差)が許容範囲に収まっているか否かを調べる。又、色相調整部18は、色差が許容範囲から外れている場合、その色差が許容範囲に収まるように車体本体2或いはバンパ3,4の色相を調整する。従って、色差が許容範囲に収まっている場合は、車体本体2とバンパ3,4とは、色相調整部18をそのまま通過する。
【0018】
又、車体集成部19は、色相調整部18から搬送されてきた車体本体2にバンパ3,4を取付けて車体M1を集成する。そして、この集成された車体M1を後工程(擬装工程)へ搬出させる。
【0019】
図2に示すように、高温炉15と低温炉16とは、車体本体2とバンパ3,4とを一定速度で移動させる際に乾燥焼き付けするための所定ライン長を有しており、
図3に示すように、高温炉15と低温炉16との両側下部に、熱風導入口15a,16aが炉長に沿って所定間隔を開けて開口されている。又、この熱風導入口15a,16aの上方に排気口15b,16bが炉長に沿って所定間隔を開けて開口されている。
【0020】
高温炉15に開口されている各熱風導入口15aに、第1送気路としての第1送気ダクト21の分岐された下流端がそれぞれ接続され、この第1送気ダクト21の集合された上流側が加熱炉22に接続されている。又、この第1送気ダクト21の集合部分に、熱風を熱風導入口の方向へ送気する第1送風ファン23が介装されている。
【0021】
又、高温炉15に開口されている排気口15bに第1排気路としての第1排気ダクト24の上流端が接続されており、この第1排気ダクト24の下流側が集合されてフィルタボックス25に接続され、この集合部分に排気をフィルタボックス25の方向へ送気する第2送風ファン26が介装されている。尚、フィルタボックス25は高温炉15から排出された排気を浄化するものである。
【0022】
更に、フィルタボックス25に循環路としての循環ダクト27の上流端が接続され、この循環ダクト27の中途が複数に分岐されて、各下流端が低温炉16の熱風導入口16aに接続されている。又、この循環ダクト27の集合部分にフィルタボックス25側からの熱風を熱風導入口16a方向へ送気する第3送風ファン28が介装されている。
【0023】
又、この低温炉16の排気口16bに第2排気路としての第2排気ダクト29の分岐された上流端がそれぞれ接続され、この第2排気ダクト29の下流側が集合されて加熱炉22に接続されている。更に、この第2排気ダクト29の集合部に、排気を加熱炉22側へ送気する第4送風ファン30が介装されている。
【0024】
符号31は外気導入路としての外気導入ダクトであり、この外気導入ダクト31の下流側が第1分岐ダクト31aと第2分岐ダクト31bとに分岐され、第1分岐ダクト31aが加熱炉22に接続され、第2分岐ダクト31bがフィルタボックス25に接続されている。又、外気導入ダクト31に外気を各分岐ダクト31a,31b側へ送気する第5送風ファン32が介装されている。更に、この各分岐ダクト31a,31bに外気の流量を調整する外気流量調整手段としての第1、第2ダンパ33,34が各々介装されている。
【0025】
加熱炉22はバーナ35を備えており、このバーナ35にて通過する空気を加熱する。又、この加熱炉22内には通過する熱風を浄化するフィルタ36が内装されている。更に、
図3、
図4に示すように、第1送気ダクト21の第1送風ファン23上流側に、通過する熱風温度を検出する第1温度センサ37が接続されている。又、循環ダクト27の第3送風ファン28下流側に、通過する熱風の温度を検出する温度センサ38と、熱風の流量を計測する流量センサ39とが接続されている。尚、この両センサ38,39で、本発明の熱量計測手段が構成されている。
【0026】
図5に示すように、上述した第1、第2ダンパ33,34の開度は、炉内温度制御手段としての炉内温度制御部41で制御される。この炉内温度制御部41は第1、第2温度センサ37,38で検出した熱風の温度と流量センサ39で計測した熱風の流量とに基づいて制御する。すなわち、第1温度センサ37で検出した加熱炉22による加熱後の熱風温度を読込み、この熱風温度が設定温度範囲に収まるように第1ダンパ33の開度を制御し、高温炉15の炉内温度を調整する。又、第2温度センサ38でフィルタボックス25から排出されて低温炉16に送気される熱風温度を検出すると共に、流量センサ39で熱風流量を計測し、その結果に基づいて、第2ダンパ34の開度を制御し、低温炉16に供給される熱風温度を調整して低温炉16の炉内温度を一定範囲に保持する。
【0027】
上述した炉内温度制御部41にて制御される高温炉15、及び低温炉16の炉内温度は、具体的には、
図6に示す高温炉内温度制御ルーチン、及び、
図7に示す低温炉内温度制御ルーチンに従って調整される。この両ルーチンは並行に実行される。尚、各炉15,16には、塗布工程12で同一塗料が一括塗布された車体本体2とバンパ3,4とが、所定間隔毎に連続投入されており、各送風ファン23,26,28,30,32は連続運転されており、これにより各炉15,16に熱風が供給されている。
【0028】
先ず、高温炉内温度制御ルーチンについて説明する。このルーチンでは、ステップS1で第4送風ファン30の稼動により低温炉16を加温した排気を、第2排気ダクト29を経て加熱炉22に送給させる。又、ステップS2で第5送風ファン32の稼動により外気を、外気導入ダクト31を経て加熱炉22に導入する。尚、この外気導入ダクト33に介装されている第1ダンパ33の開度は、前回のルーチン実行時に調整されている。
【0029】
そして、ステップS3へ進み、加熱炉22内にて低温炉16側からの排気と外気とを混合させ、その混合気をバーナ35の加熱により所定に昇温させる。尚、この加熱炉22にはフィルタ36が内装されており、このフィルタ36を通過する際に、混合気、特に、低温炉16からの排気に混入されている塗料等の粗ダストや揮発性有機化合物(VOC)等の不純物が除去されて浄化される。
【0030】
そして、ステップS4へ進み、加熱炉22によって加熱された熱風を、第1送気ダクト21に介装されている第1送風ファン23の稼動により、第1送気ダクト21を経て高温炉15の下部に開口する複数の熱風導入口15aから炉内に送気し加熱する。
【0031】
その間、ステップS5において、第1温度センサ37にて検出した第1送気ダクト21を通過する熱風の温度を読込み、ステップS6で、この熱風温度が予め設定した許容範囲に収まっているか、すなわち、高温炉15内を設定温度範囲に維持するだけの熱量を有しているか否かを調べる。
【0032】
そして、熱風温度が許容範囲に収まっている場合、ステップS8へ進む。又、熱風温度が許容範囲から外れている場合はステップS7へ分岐し、例えば許容範囲の中心値を目標熱風温度として設定し、この目標熱風温度と第1温度センサ37で検出した熱風温度との差分に基づき、第1ダンパ33の開度を制御し、熱風温度が許容範囲に収まるように調整する。すなわち、第1温度センサ37で検出した熱風温度が許容範囲を下回っている場合、第1ダンパ33の開度を絞り、バーナ35で加熱する混合気の低温炉16側からの排気に対する外気の比率を低くする。その結果、外気による混合気の温度低下が抑制され、その分、熱風の温度を上昇させて、熱風温度が許容範囲に収まるようにフィードバック制御を行う。一方、熱風温度が許容範囲を上回っている場合、第1ダンパ33の開度を大きくして、加熱炉22に供給する外気流量を増加させて混合気の温度を積極的に低下させて、熱風温度が許容範囲に収まるようにフィードバック制御を行う。
【0033】
その結果、高温炉15内の温度(炉内温度)は複数の熱風導入口15aから吹き出される熱風により所定の高温に維持される。
【0034】
そして、ステップS8へ進み、高温炉15内を加熱した排気を排気口15bから第1排気ダクト24に介装されている第2送風ファン26の稼動によりフィルタボックス25へ送気して、ルーチンを抜ける。フィルタボックス25は、高温炉15からの排気に混入されている塗料等の粗ダストや揮発性有機化合物(VOC)等の不純物を除去して浄化すると共に、排気と外気とを混合させる。従って、このフィルタボックス25は、本発明の混合ボックスとしての機能を備えている。
【0035】
次に、低温炉内温度制御ルーチンについて説明する。このルーチンでは、先ず、ステップS11で第3送風ファン28の稼動により、フィルタボックス25に供給された高温炉15からの排気熱と外気導入ダクト31を経て導入された外気とが混合されて生成された熱風を、低温炉16の底部に開口されている複数の熱風導入口16aに循環ダクト27を経て送気する。そして、この複数の熱風導入口16aから吹き出された熱風により炉内を加熱する。
【0036】
その間、ステップS12では循環ダクト27を通過する熱風温度を第2温度センサ38で検出し、又、ステップS13では通過する熱風の単位時間当たりの流量を流量センサ39で計測する。そして、ステップS14へ進み、予め設定されている低温炉16の目標炉温と循環ダクト27を通過する熱風の温度との差温、及び循環ダクト27を通過する単位時間当たりの流量に基づき低温炉16に供給する熱量を算出し、この熱量が所定範囲に収まっているか否かを調べる。換言すれば、供給する熱量が低温炉16を目標炉温に対して所定の温度範囲に維持させることができるものであるか否かを調べる。
【0037】
そして、この熱量が許容範囲に収まっている場合は、そのままステップS16へ進む。又、許容範囲から外れている場合は、ステップS15へ分岐し、熱量を外気により低下させるための目標流量を算出し、第2ダンパ34の開度を制御して、低温炉16に供給する外気流量が目標流量となるように調整する。
【0038】
高温炉15内を加熱した後の排気の温度及び流量が安定している場合、第1ダンパ33の開度はほぼ一定状態を維持している。従って、フィルタボックス25に流入する排気温度及び流量もほぼ一定している。
【0039】
その結果、第2温度センサ38で検出する熱風温度、及び流量センサ39で検出する熱風流量は、第2ダンパ34の開度に依存し、第2ダンパ34の開度を大きくすれば流量は増加し、熱風温度は低下する。一方、第2ダンパ34の開度を絞れば流量は減少し、熱風温度は上昇する。例えば、高温炉15を加熱する熱風の温度が170°で、低温炉16を加熱する熱風の温度が120°に設定されている場合、当然、高温炉15から排出される排気熱の温度は低温炉16の炉内温度よりも高い。そのため、第2ダンパ34の開度を制御することで低温炉16に供給するために必要とする熱風の熱量を得ることができる。
【0040】
上述したステップS15では、ステップS14で求めた熱量と低温炉16の目標炉温とに基づき、演算或いはマップ検索によって、低温炉16に供給する熱量が許容範囲に収まるように第2ダンパ34の開度を調整する。その後、ステップS14或いはステップS15からステップS16へ進むと、低温炉16内を加熱した後の排気を加熱炉22に送気し、還流させてルーチンを抜ける。
【0041】
このように、本実施形態では、高温炉15からの排気熱を低温炉16に供給して加熱するに際し、この排気熱を外気と混合させることで冷却して、低温炉16を加熱する最適な熱風温度に調整するようにしたので、低温炉16の炉内温度を容易に調整することができる。その結果、低温炉16の炉内温度の管理が容易となり、塗装完了後のバンパ3,4の色相を一定の範囲に収めることが可能となり、色相照合部17で照合される車体本体2とバンパ3,4との色差を許容範囲に収めることができる。従って、色相調整に要する負担を大幅に軽減することができ、生産効率の向上を図ることができる。
【0042】
[第2実施形態]
図8、
図9に本発明の第2実施形態を示す。本実施形態では、高温炉15と低温炉16とを隣接させた状態で配設して両炉15,16を一体化し、この両炉15,16に熱源供給系統を形成すると共に、高温炉15に対しては熱風を上部から吹き出させるようにしたものである。尚、第1実施形態と同一の構成部分については同一の符号を付して説明を省略、或いは簡略化する。
【0043】
図8に示すように、高温炉15と低温炉16とが流路空間を空けて隣接されている。又、
図9に示すように、高温炉15の上部に第1調整部15cが設けられ、下部に第2調整部15dが設けられている。更に、低温炉16の下部に第3調整部16cが設けられている。
【0044】
又、両炉15,16間に形成した流路空間の下部を第1排気ダクト24とし、フィルタボックス25を介した上方を循環ダクト27としている。更に、低温炉16の外壁から、循環ダクト27の上方であって高温炉15と低温炉16の間に形成した流路空間を第2排気ダクト29としている。又、第1調整部15cに第1送気ダクト21の下流端が接続され、一方、第2排気ダクト29の下流端が加熱炉22に連通されている。
【0045】
第1、第2調整部15c,15dは調整機能を有しており、高温炉15に流入、或いは高温炉15から流出する熱風(内気)の湿度、VOC濃度、ダストクリーン度等を更に調整する。又、第3調整部16cは低温炉16を加熱した後の熱風に混入されている異物を除去する物理フィルタや調整機能を有しており、調整機能としては、蒸気圧線図から低温時の飽和密度が高温時の飽和密度よりも高いことを利用して水蒸気及びVOCを回収する。
【0046】
尚、図示しないが、第1送気ダクト21に第1温度センサ37が接続され、循環ダクト27に第2温度センサ38、流量センサ39が接続されている。又、各ダクト21,24,27,29,31に第1〜第5送風ファン23,26,28,30,32が介装されている。更に、高温炉15及び低温炉16の炉内温度制御は、上述した第1実施形態と同じであるため説明を省略する。
【0047】
このような構成では、第1ダンパ33の開度によって流量が調整された外気と第2排気ダクト29を経て流入した、低温炉16を加熱した後の排気が、加熱炉22を通過する際に混合されて所定に加熱された熱風となり、第1送気ダクト21を経て第1調整部15cに吹き出される。
【0048】
第1調整部15cでは、流入した熱風(内気)の湿度、VOC濃度、ダストクリーン度等を調整して、高温炉15へ吹き出させ、高温炉15を所定に加熱する。そして、加熱した後の排気を第2調整部15dへ送り、その湿度、VOC濃度、ダストクリーン度等を調整した後、第1排気ダクト24に送られ、第2ダンパ34の開度によって流量が調整された外気と共にフィルタボックス25に送気される。
【0049】
フィルタボックス25に送られた排気と外気との混合気は、所定に混合されると共に、不純物を除去して浄化した後、循環ダクト27を経て隣接する低温炉16に吹き出されて、炉内を加熱する。又、この低温炉16は、ダクト空間を介して高温炉15に隣接されているため、第1排気ダクト24と循環ダクト27とを通過する熱風の輻射熱によっても加熱される。
【0050】
そして、低温炉16内を所定に加熱した熱風は第3調整部16cにて異物が除去されると共に、水蒸気及びVOCが回収されて、第2排気ダクト29から加熱炉22に還流される。
【0051】
このように、本実施形態では、高温炉15と低温炉16とをダクト空間を介して隣接させ、このダクト空間に第1排気ダクト24と循環ダクト27とを形成したので、このダクト24,27を通過する熱風の輻射熱によっても低温炉16内を加熱させることができ、低温炉16内の加熱効率が向上する。又、第2排気ダクト29を低温炉16と高温炉15との外壁に形成したので、設備全体のコンパクト化を実現することができる。
【0052】
[第3実施形態]
図10に本発明の第3実施形態を示す。本実施形態は上述した第2実施形態の変形例である。尚、第2実施形態と同一の構成部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0053】
本実施形態では、加熱炉22に接続する第1送気ダクト21の下流端、及び低温炉16に接続する第2排気ダクト29の上流端を、高温炉15と低温炉16との平面視において一方(図においてはラインの流れに対して上流側)に偏倚した位置に開口させている。
【0054】
又、互いに隣接する高温炉15と低温炉16間に形成したダクト空間に設けた第1排気ダクト24の上流側と循環ダクト27の下流側とを、平面視において他方(図においてはラインの下流側)へ偏倚した位置で、高温炉15と低温炉16とに接続させたものである。
【0055】
これにより、第1送気ダクト21から高温炉15に吹き出された熱風は、高温炉15内を上部から下部方向へ斜めに流れるため、炉内を効率良く加熱することができる。同様に、循環ダクト27から低温炉16に吹き出された熱風は、炉内を下部から上部方向へ斜めに流れるため、この場合も炉内を効率良く加熱することができる
尚、本発明は、上述した実施形態に限るものではなく、例えば、加熱炉22にベントを設け、外気導入ダクト31から各ダンパ33,34を介して導入される外気分の圧力上昇を調整するようにしても良い。