(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一定期間にわたる脈波又は血圧の連続的な測定値を得ようとする場合、被測定者の被測定部位を押圧し続ける必要があるので、被測定者に身体的負担がかかる。
【0006】
一方、脈波の被測定者が安静な状態にないとき、被測定者の体動に起因する成分が脈波信号に重畳し、脈波伝播時間を正確に測定できなくなることがある。従って、被測定者の体動があるとき(脈波伝播時間を測定できないとき)、例えば、被測定部位の押圧を停止して被測定者の身体的負担を緩和することが考えられる。このように、脈波又は血圧を測定する際の身体的負担をできるだけ緩和することにより、被測定者の利便性が向上する。
【0007】
そこで、この発明の課題は、被測定者の体動を考慮して被測定者の利便性を向上するように新規な制御方法で被測定部位への押圧力を制御する脈波測定装置および脈波測定方法を提供することにある。
【0008】
また、この発明の課題は、そのような脈波測定装置を備えて、脈波伝播時間と血圧との間の対応式を用いて血圧を算出する血圧測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、この発明の脈波測定装置は、
被測定者の被測定部位を取り巻いて装着されるべきベルトと、
上記ベルトに搭載され、上記被測定部位を通る動脈の脈波を検出する少なくとも1つの脈波センサと、
上記ベルトに搭載され、上記被測定部位に対して上記少なくとも1つの脈波センサを、押圧力を可変して押圧し得る押圧部材と、
上記被測定者の体動の有無を検出する体動検出部と、
上記被測定者の体動がないとき、上記押圧部材の押圧力を第1の押圧力に設定して上記少なくとも1つの脈波センサにより脈波を測定し、上記被測定者の体動があるとき、上記押圧部材の押圧力を上記第1の押圧力よりも低くかつゼロよりも高い第2の押圧力に設定して脈波の測定を中断する制御部と
を備えたことを特徴とする。
【0010】
本明細書で、「被測定部位」とは、動脈が通っている部位を指す。被測定部位は、例えば手首、上腕などの上肢であっても良いし、足首、大腿などの下肢であっても良い。
【0011】
また、「ベルト」とは、名称の如何を問わず、被測定部位を取り巻いて装着される帯状の部材を指す。例えば、ベルトに代えて、「バンド」、「カフ」などの名称であっても良い。
【0012】
また、ベルトの「幅方向」とは、被測定部位の長手方向に相当する。
【0013】
また、「体動」とは、少なくとも1つの脈波センサによって検出される脈波信号において有意な変動をもたらす、被測定者の身体の動きを表す。
【0014】
また、「第1の押圧力」とは、少なくとも1つの脈波センサにより脈波を適切に測定可能な強さの力である。
【0015】
また、「第2の押圧力」とは、被測定者に無用な身体的負荷をかけず、かつ、被測定者の体動が過度に激しくない限り少なくとも1つの脈波センサが被測定部位から位置ズレしない程度の強さの力である。
【0016】
一実施形態の脈波測定装置では、ベルトに少なくとも1つの脈波センサが搭載されている。上記ベルトが被測定部位を取り巻いて装着された状態で、押圧部材が被測定部位に対して上記少なくとも1つの脈波センサを、例えば或る押圧力で押圧する。この状態で、上記少なくとも1つの脈波センサが上記被測定部位を通る動脈のうちそれぞれ対向する部分の脈波を検出する。体動検出部は、上記被測定者の体動の有無を検出する。制御部は、上記被測定者の体動がないとき、上記押圧部材の押圧力を第1の押圧力に設定して上記少なくとも1つの脈波センサにより脈波を測定する。制御部は、上記被測定者の体動があるとき、上記押圧部材の押圧力を上記第1の押圧力よりも低くかつゼロよりも高い第2の押圧力に設定して脈波の測定を中断する。これにより、被測定者の体動があるとき、押圧部材の押圧力を第2の押圧力に設定して被測定者の身体的負担を緩和することができる。また、第2の押圧力はゼロより高いので、少なくとも1つの脈波センサを被測定部位から位置ズレしにくくすることができる。このように被測定者の体動を考慮した新規な制御方法で被測定部位への押圧力を制御することにより、被測定者の利便性を向上することができる。
【0017】
一実施形態の脈波測定装置では、上記制御部は、脈波の測定を中断した後で、上記被測定者の体動がある状態から上記被測定者の体動がない状態に遷移したとき、上記押圧部材の押圧力を第1の押圧力に戻して脈波の測定を再開することを特徴とする。
【0018】
この一実施形態の脈波測定装置では、脈波の測定を中断するとき、押圧部材の押圧力をゼロよりも高い第2の押圧力に設定しているので、脈波の測定を再開するときには、押圧部材の押圧力をゼロに設定する場合よりも迅速に、押圧部材の押圧力を第1の押圧力に戻すことができる。これにより、被測定者の利便性を向上することができる。
【0019】
一実施形態の脈波測定装置では、上記制御部は、脈波の測定を中断した後で予め決められた長さの待機時間が経過したとき、上記押圧部材の押圧力をゼロに設定することを特徴とする。
【0020】
この一実施形態の脈波測定装置では、被測定部位の無駄な押圧を回避することができる。
【0021】
一実施形態の脈波測定装置では、上記ベルトに、このベルトの幅方向に関して互いに離間した状態で搭載され、上記被測定部位を通る動脈のうちそれぞれ対向する部分の脈波を検出する第1及び第2の脈波センサを備えたことを特徴とする。
【0022】
この一実施形態の脈波測定装置では、第1の押圧力は、例えば、第1及び第2の脈波センサがそれぞれ時系列で出力する第1及び第2の脈波信号の相互相関係数が予め決められた閾値を超える値に設定される。ここで、「相互相関係数」とは、標本相関係数(sample correlation coefficient)を意味する(ピアソン(Pearson)の積率相関係数とも呼ばれる。)。例えば、2組の数値からなるデータ列{x
i}、データ列{y
i}(ここで、i=1,2,…,nとする。)が与えられたとき、データ列{x
i}とデータ列{y
i}との間の相互相関係数rは、
図16に示す式(Eq.4)によって定義される。式(Eq.4)中の、上バーが付されたx,yは、それぞれx,yの平均値を表している。
【0023】
一実施形態の脈波測定装置では、ベルトに、このベルトの幅方向に関して互いに離間した状態で第1及び第2の脈波センサが搭載されている。上記ベルトが被測定部位を取り巻いて装着された状態で、押圧部材が被測定部位に対して上記第1及び第2の脈波センサを、例えば或る押圧力で押圧する。この状態で、上記第1及び第2の脈波センサが上記被測定部位を通る動脈のうちそれぞれ対向する部分の脈波を検出する。体動検出部は、上記被測定者の体動の有無を検出する。制御部は、上記被測定者の体動がないとき、上記押圧部材の押圧力を第1の押圧力に設定して上記第1及び第2の脈波センサにより脈波を測定する。制御部は、上記被測定者の体動があるとき、上記押圧部材の押圧力を上記第1の押圧力よりも低くかつゼロよりも高い第2の押圧力に設定して脈波の測定を中断する。これにより、被測定者の体動があるとき、押圧部材の押圧力を第2の押圧力に設定して被測定者の身体的負担を緩和することができる。また、第2の押圧力はゼロより高いので、第1及び第2の脈波センサを被測定部位から位置ズレしにくくすることができる。このように被測定者の体動を考慮した新規な制御方法で被測定部位への押圧力を制御することにより、被測定者の利便性を向上することができる。
【0024】
一実施形態の脈波測定装置では、
上記押圧部材は、上記第1及び第2の脈波センサを個別の押圧力で押圧可能な要素を含み、
上記制御部は、上記押圧部材の上記第1の押圧力を、上記第1及び第2の脈波センサに対して個別の値に設定することを特徴とする。
【0025】
この一実施形態の脈波測定装置では、押圧部材の上記第1の押圧力を、第1及び第2の脈波センサに対して個別の値に設定することにより、脈波及び血圧の測定精度を向上することができる。
【0026】
別の局面では、この発明の血圧測定装置は、
上記脈波測定装置と、
上記第1及び第2の脈波センサがそれぞれ時系列で出力する第1及び第2の脈波信号の間の時間差である脈波伝播時間に基づいて、脈波伝播時間と血圧との間の予め定められた対応式を用いて血圧を算出する第1の血圧算出部と
を備えたことを特徴とする。
【0027】
この一実施形態の血圧測定装置では、上記脈波測定装置によって脈波伝播時間が取得される。第1の血圧算出部は、脈波伝播時間と血圧との間の予め定められた対応式を用いて、上記脈波伝播時間に基づいて血圧を算出(推定)する。したがって、被測定者の血圧を測定する際、このように被測定者の体動を考慮した新規な制御方法で被測定部位への押圧力を制御することにより、被測定者の利便性を向上することができる。
【0028】
一実施形態の血圧測定装置では、
上記押圧部材は上記ベルトに沿って設けられた流体袋であり、
上記ベルトに対して一体に設けられた本体を備え、
この本体に、
上記体動検出部、上記制御部、および、上記第1の血圧算出部が搭載されるとともに、
オシロメトリック法による血圧測定のために、上記流体袋に空気を供給して圧力を制御する圧力制御部と、上記流体袋内の圧力に基づいて血圧を算出する第2の血圧算出部とが搭載されていることを特徴とする。
【0029】
本明細書で、上記ベルトに対して本体が「一体に設けられ」ているとは、ベルトと本体とが例えば一体成形されていても良いし、それに代えて、ベルトと本体とが別々に形成され、上記ベルトに対して上記本体が係合部材(例えばヒンジなど)を介して一体に取り付けられていても良い。
【0030】
この一実施形態の脈波測定装置では、脈波伝播時間に基づく血圧測定(推定)と、オシロメトリック法による血圧測定とが一体の装置で行われ得る。したがって、ユーザの利便性が高まる。
【0031】
別の局面では、この発明の脈波測定方法は、
被測定者の被測定部位を取り巻いて装着されるべきベルトと、
上記ベルトに搭載され、上記被測定部位を通る動脈の脈波を検出する少なくとも1つの脈波センサと、
上記ベルトに搭載され、上記被測定部位に対して上記少なくとも1つの脈波センサを、押圧力を可変して押圧し得る押圧部材と、
上記被測定者の体動の有無を検出する体動検出部と
を備えて、上記被測定部位の脈波を測定する脈波測定方法であって、
上記被測定者の体動がないとき、上記押圧部材の押圧力を第1の押圧力に設定して上記少なくとも1つの脈波センサにより脈波を測定し、
上記被測定者の体動があるとき、上記押圧部材の押圧力を上記第1の押圧力よりも低くかつゼロよりも高い第2の押圧力に設定して脈波の測定を中断する
ことを特徴とする。
【0032】
この一実施形態の脈波測定方法では、被測定部位の無駄な押圧を回避することができる。
【発明の効果】
【0033】
以上より明らかなように、この発明の脈波測定装置および脈波測定方法、並びに血圧測定装置によれば、被測定者の体動を考慮した新規な制御方法で被測定部位への押圧力を制御し、被測定者の利便性を向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0036】
実施形態1.
以下、この発明の実施形態1に係る脈波測定装置を備えた血圧測定装置について説明する。
【0037】
(血圧計の構成)
図1は、この発明の実施形態1に係る脈波測定装置を備えた血圧測定装置である手首式血圧計(全体を符号1で示す。)の外観を斜めから見たところ示している。また、
図2は、血圧計1が被測定部位としての左手首90に装着された状態(以下「装着状態」と呼ぶ。)で、左手首90の長手方向に対して垂直な断面を模式的に示している。
【0038】
これらの図に示すように、この血圧計1は、大別して、ユーザの左手首90を取り巻いて装着されるべきベルト20と、このベルト20に一体に取り付けられた本体10とを備えている。
【0039】
図1によって良く分かるように、ベルト20は、左手首90を周方向に沿って取り巻くように細長い帯状の形状を有し、左手首90に接すべき内周面20aと、この内周面20aと反対側の外周面20bとを有している。ベルト20の幅方向Yの寸法(幅寸法)は、この例では約30mmに設定されている。
【0040】
本体10は、ベルト20のうち、周方向に関して一方の端部20eに、この例では一体成形により一体に設けられている。なお、ベルト20と本体10とを別々に形成し、ベルト20に対して本体10を係合部材(例えばヒンジなど)を介して一体に取り付けても良い。この例では、本体10が配置された部位は、装着状態で左手首90の背側面(手の甲側の面)90bに対応することが予定されている(
図2参照)。
図2中には、左手首90内で掌側面(手の平側の面)90a近傍を通る橈骨動脈91が示されている。
【0041】
図1によって良く分かるように、本体10は、ベルト20の外周面20bに対して垂直な方向に厚さを有する立体的形状を有している。この本体10は、ユーザの日常活動の邪魔にならないように、小型で、薄厚に形成されている。この例では、本体10は、ベルト20から外向きに突起した四角錐台状の輪郭を有している。
【0042】
本体10の頂面(被測定部位から最も遠い側の面)10aには、表示画面をなす表示器50が設けられている。また、本体10の側面(
図1における左手前側の側面)10fに沿って、ユーザからの指示を入力するための操作部52が設けられている。
【0043】
ベルト20のうち、周方向に関して一方の端部20eと他方の端部20fとの間の部位に、少なくとも1つの脈波センサを構成するインピーダンス測定部40が設けられている。本実施形態では、インピーダンス測定部40が第1及び第2の脈波センサを構成する場合について説明する。ベルト20のうち、インピーダンス測定部40が配置された部位の内周面20aには、ベルト20の幅方向Yに関して互いに離間した状態で6個の板状(またはシート状)の電極41〜46(これらの全体を「電極群」と呼び、符号40Eで表す。)が配置されている(後に詳述する。)。この例では、電極群40Eが配置された部位は、装着状態で左手首90の橈骨動脈91に対応することが予定されている(
図2参照)。
【0044】
図1中に示すように、本体10の底面(被測定部位に最も近い側の面)10bとベルト20の端部20fとは、三つ折れバックル24によって接続されている。このバックル24は、外周側に配置された第1の板状部材25と、内周側に配置された第2の板状部材26とを含んでいる。第1の板状部材25の一方の端部25eは、幅方向Yに沿って延びる連結棒27を介して本体10に対して回動自在に取り付けられている。第1の板状部材25の他方の端部25fは、幅方向Yに沿って延びる連結棒28を介して第2の板状部材26の一方の端部26eに対して回動自在に取り付けられている。第2の板状部材26の他方の端部26fは、固定部29によってベルト20の端部20f近傍に固定されている。なお、ベルト20の周方向に関して固定部29の取り付け位置は、ユーザの左手首90の周囲長に合わせて予め可変して設定されている。これにより、この血圧計1(ベルト20)は、全体として略環状に構成されるとともに、本体10の底面10bとベルト20の端部20fとが、バックル24によって矢印B方向に開閉可能になっている。
【0045】
この血圧計1を左手首90に装着する際には、バックル24を開いてベルト20の環の径を大きくした状態で、
図1中に矢印Aで示す向きに、ユーザがベルト20に左手を通す。そして、
図2に示すように、ユーザは、左手首90の周りのベルト20の角度位置を調節して、左手首90を通っている橈骨動脈91上にベルト20のインピーダンス測定部40を位置させる。これにより、インピーダンス測定部40の電極群40Eが左手首90の掌側面90aのうち橈骨動脈91に対応する部分90a1に当接する状態になる。この状態で、ユーザが、バックル24を閉じて固定する。このようにして、ユーザは血圧計1(ベルト20)を左手首90に装着する。
【0046】
図2中に示すように、この例では、ベルト20は、外周面20bをなす帯状体23と、この帯状体23の内周面に沿って取り付けられた押圧部材としての押圧カフ21とを含んでいる。帯状体23は、この例では、厚さ方向に関して可撓性を有し、かつ、周方向(長手方向)に関して実質的に非伸縮性のプラスチック材料からなっている。押圧カフ21は、この例では、伸縮可能な2枚のポリウレタンシートを厚さ方向に対向させ、それらの周縁部を溶着して、流体袋として構成されている。押圧カフ21(ベルト20)の内周面20aのうち、左手首90の橈骨動脈91に対応する部位には、既述のようにインピーダンス測定部40の電極群40Eが配置されている。
【0047】
図3に示すように、装着状態では、インピーダンス測定部40の電極群40Eは、左手首90の橈骨動脈91に対応して、手首の長手方向(ベルト20の幅方向Yに相当)に沿って並んだ状態になる。電極群40Eは、幅方向Yに関して、両側に配置された通電用の電流電極対41,46と、これらの電流電極対41,46の間に配置された電圧検出用の、第1の脈波センサ40−1をなす第1の検出電極対42,43、および、第2の脈波センサ40−2をなす第2の検出電極対44,45とを含んでいる。第1の検出電極対42,43に対して、橈骨動脈91の血流のより下流側の部分に対応して、第2の検出電極対44,45が配置されている。幅方向Yに関して、第1の検出電極対42,43の中央と第2の検出電極対44,45の中央との間の距離D(
図5(A)参照)は、この例では20mmに設定されている。この距離Dは、第1の脈波センサ40−1と第2の脈波センサ40−2との間の実質的な間隔に相当する。また、幅方向Yに関して、第1の検出電極対42,43間の間隔、第2の検出電極対44,45間の間隔は、この例ではいずれも2mmに設定されている。
【0048】
このような電極群40Eは、偏平に構成され得る。したがって、この血圧計1では、ベルト20を全体として薄厚に構成できる。
【0049】
図4は、血圧計1の制御系のブロック構成を示している。血圧計1の本体10には、既述の表示器50、操作部52に加えて、制御部としてのCPU(Central Processing Unit)100、記憶部としてのメモリ51、通信部59、圧力センサ31、ポンプ32、弁33、圧力センサ31からの出力を周波数に変換する発振回路310、ポンプ32を駆動するポンプ駆動回路320、及び、血圧計1に加えられた加速度を測定する加速度センサ60が搭載されている。さらに、インピーダンス測定部40には、既述の電極群40Eに加えて、通電および電圧検出回路49が搭載されている。
【0050】
表示器50は、この例では有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイからなり、CPU100からの制御信号に従って、血圧測定結果などの血圧測定に関する情報、その他の情報を表示する。なお、表示器50は、有機ELディスプレイに限られるものではなく、例えばLCD(Liquid Cristal Display)など、他のタイプの表示器からなっていてもよい。
【0051】
操作部52は、この例ではプッシュ式スイッチからなり、ユーザによる血圧測定開始又は停止の指示に応じた操作信号をCPU100に入力する。なお、操作部52は、プッシュ式スイッチに限られるものではなく、例えば感圧式(抵抗式)または近接式(静電容量式)のタッチパネル式スイッチなどであってもよい。また、図示しないマイクロフォンを備えて、ユーザの音声によって血圧測定開始の指示を入力するようにしてもよい。
【0052】
メモリ51は、血圧計1を制御するためのプログラムのデータ、血圧計1を制御するために用いられるデータ、血圧計1の各種機能を設定するための設定データ、血圧値の測定結果のデータなどを非一時的に記憶する。また、メモリ51は、プログラムが実行されるときのワークメモリなどとして用いられる。
【0053】
CPU100は、メモリ51に記憶された血圧計1を制御するためのプログラムに従って、制御部として各種機能を実行する。例えば、オシロメトリック法による血圧測定を実行する場合は、CPU100は、操作部52からの血圧測定開始の指示に応じて、圧力センサ31からの信号に基づいて、ポンプ32(および弁33)を駆動する。また、CPU100は、この例では圧力センサ31からの信号に基づいて、血圧値を算出する。
【0054】
通信部59は、CPU100によって制御されて所定の情報を、ネットワーク900を介して外部の装置に送信したり、外部の装置からの情報を、ネットワーク900を介して受信してCPU100に受け渡したりする。このネットワーク900を介した通信は、無線、有線のいずれでも良い。この実施形態において、ネットワーク900は、インターネットであるが、これに限定されず、病院内LAN(Local Area Network)のような他の種類のネットワークであってもよいし、USBケーブルなどを用いた1対1の通信であってもよい。この通信部59は、マイクロUSBコネクタを含んでいてもよい。
【0055】
ポンプ32および弁33はエア配管39を介して、また、圧力センサ31はエア配管38を介して、それぞれ押圧カフ21に接続されている。なお、エア配管39,38は、共通の1本の配管であってもよい。圧力センサ31は、エア配管38を介して、押圧カフ21内の圧力を検出する。ポンプ32は、この例では圧電ポンプからなり、押圧カフ21内の圧力(カフ圧)を加圧するために、エア配管39を通して押圧カフ21に加圧用の流体としての空気を供給する。弁33は、ポンプ32に搭載され、ポンプ32のオン/オフに伴って開閉が制御される構成になっている。すなわち、弁33は、ポンプ32がオンされると閉じて、押圧カフ21内に空気を封入する一方、ポンプ32がオフされると開いて、押圧カフ21の空気をエア配管39を通して大気中へ排出させる。なお、弁33は、逆止弁の機能を有し、排出されるエアが逆流することはない。ポンプ駆動回路320は、ポンプ32をCPU100から与えられる制御信号に基づいて駆動する。
【0056】
圧力センサ31は、この例ではピエゾ抵抗式圧力センサであり、エア配管38を通してベルト20(押圧カフ21)の圧力、この例では大気圧を基準(ゼロ)とした圧力を検出して時系列の信号として出力する。発振回路310は、圧力センサ31からのピエゾ抵抗効果による電気抵抗の変化に基づく電気信号値に基づき発振して、圧力センサ31の電気信号値に応じた周波数を有する周波数信号をCPU100に出力する。この例では、圧力センサ31の出力は、押圧カフ21の圧力を制御するため、および、オシロメトリック法によって血圧値(収縮期血圧(Systolic Blood Pressure;SBP)と拡張期血圧(Diastolic Blood Pressure;DBP)とを含む。)を算出するために用いられる。
【0057】
加速度センサ60は、血圧計1に加えられた加速度を測定することにより、被測定者の体動の有無を検出する体動検出部として働く。
【0058】
電池53は、本体10に搭載された要素、この例では、CPU100、圧力センサ31、ポンプ32、弁33、表示器50、メモリ51、通信部59、発振回路310、ポンプ駆動回路320、加速度センサ60の各要素へ電力を供給する。また、電池53は、配線71を通して、インピーダンス測定部40の通電および電圧検出回路49へも電力を供給する。この配線71は、信号用の配線72とともに、ベルト20の帯状体23と押圧カフ21との間に挟まれた状態で、ベルト20の周方向に沿って本体10とインピーダンス測定部40との間に延在して設けられている。
【0059】
インピーダンス測定部40の通電および電圧検出回路49は、CPU100によって制御され、その動作時に、
図5(A)中に示すように、手首の長手方向(ベルト20の幅方向Yに相当)に関して両側に配置された電流電極対41,46間に、この例では、周波数50kHz、電流値1mAの高周波定電流iを流す。この状態で、通電および電圧検出回路49は、第1の脈波センサ40−1をなす第1の検出電極対42,43間の電圧信号v1と、第2の脈波センサ40−2をなす第2の検出電極対44,45間の電圧信号v2とを検出する。これらの電圧信号v1,v2は、左手首90の掌側面90aのうち、それぞれ第1の脈波センサ40−1、第2の脈波センサ40−2が対向する部分における、橈骨動脈91の血流の脈波による電気インピーダンスの変化を表す(インピーダンス方式)。通電および電圧検出回路49は、これらの電圧信号v1,v2を整流、増幅および濾波して、
図5(B)中に示すような山状の波形をもつ第1の脈波信号PS1,第2の脈波信号PS2を時系列で出力する。この例では、電圧信号v1,v2は、約1mV程度になっている。また、第1の脈波信号PS1,第2の脈波信号PS2のそれぞれのピークA1,A2は、この例では約1ボルトになっている。
【0060】
なお、橈骨動脈91の血流の脈波伝播速度(Pulse Wave Velocity;PWV)が1000cm/s〜2000cm/sの範囲であるとすると、第1の脈波センサ40−1と第2の脈波センサ40−2との間の実質的な間隔D=20mmであることから、第1の脈波信号PS1,第2の脈波信号PS2間の時間差Δtは1.0ms〜2.0msの範囲となる。
【0061】
(オシロメトリック法による血圧測定の動作)
図6は、血圧計1がオシロメトリック法による血圧測定を行う際の動作フローを示している。
【0062】
ユーザが本体10に設けられた操作部52のプッシュ式スイッチによってオシロメトリック法による血圧測定を指示すると(ステップS1)、CPU100は動作を開始して、処理用メモリ領域を初期化する(ステップS2)。また、CPU100は、ポンプ駆動回路320を介してポンプ32をオフし、弁33を開いて、押圧カフ21内の空気を排気する。続いて、圧力センサ31の現時点の出力値を大気圧に相当する値として設定する(0mmHg調整)。
【0063】
続いて、CPU100は、圧力制御部として働いて、ポンプ駆動回路320を介してポンプ32を駆動して押圧カフ21に空気を送ることにより、弁33を閉鎖して押圧カフ21を膨張させ、カフ圧Pc(
図7参照)を徐々に加圧していく(
図6のステップS3)。
【0064】
この加圧過程で、CPU100は、血圧値を算出するために、圧力センサ31によって、カフ圧Pcをモニタし、被測定部位としての左手首90の橈骨動脈91で発生する動脈容積の変動成分を、
図7中に示すような脈波信号Pmとして取得する。
【0065】
次に、
図6中のステップS4で、CPU100は、第2の血圧算出部として働いて、この時点で取得されている脈波信号Pmに基づいて、オシロメトリック法により公知のアルゴリズムを適用して血圧値(収縮期血圧SBPと拡張期血圧DBP)の算出を試みる。
【0066】
この時点で、データ不足のために未だ血圧値を算出できない場合は(ステップS5でNO)、カフ圧Pcが上限圧力(安全のために、例えば300mmHgというように予め定められている。)に達していない限り、ステップS3〜S5の処理を繰り返す。
【0067】
このようにして血圧値の算出ができたら(ステップS5でYES)、CPU100は、ポンプ32を停止し、弁33を開いて、押圧カフ21内の空気を排気する(ステップS6)。そして最後に、血圧値の測定結果を表示器50に表示するとともに、メモリ51に記録する(ステップS7)。
【0068】
なお、血圧値の算出は、加圧過程に限らず、減圧過程において行われてもよい。
【0069】
(脈波伝播時間に基づく血圧測定の動作)
図8は、血圧計1が一実施形態の脈波測定方法を実行して脈波伝播時間(Pulse Transit Time;PTT)を取得し、その脈波伝播時間に基づく血圧測定(推定)を行う際の動作フローを示している。
【0070】
ユーザが本体10に設けられた操作部52のプッシュ式スイッチによってPTTに基づく血圧測定を指示すると、CPU100は動作を開始する。まず、CPU100は、加速度センサ60を用いて、被測定者の体動の有無を検出する(
図8のステップS11)。
【0071】
CPU100は、被測定者の体動がないとき(
図8のステップS11でNO)、押圧カフ21の押圧力を予め決められた測定用のカフ圧(第1の押圧力)に設定する(
図8のステップS12)。測定用のカフ圧(第1の押圧力)の決定方法については、後述する。CPU100は、ポンプ駆動回路320を介してポンプ32を駆動して押圧カフ21に空気を送ることにより、弁33を閉鎖して押圧カフ21を膨張させ、カフ圧Pc(
図5(A)参照)を測定用のカフ圧まで加圧する。
【0072】
次いで、CPU100は、第1の脈波センサ40−1及び第2の脈波センサ40−2により第1及び第2の脈波信号PS1,PS2を測定し、第1及び第2の脈波信号PS1,PS2の間の時間差Δt(
図5(B)参照)を脈波伝播時間(PTT)として取得する(
図8のステップS13)。より詳しくは、この例では、第1脈波信号PS1のピークA1と第2の脈波信号PS2のピークA2との間の時間差Δtを脈波伝播時間(PTT)として取得する。
【0073】
次に、CPU100は第1の血圧算出部として働いて、脈波伝播時間と血圧との間の予め定められた対応式Eqを用いて、ステップS13で取得された脈波伝播時間(PTT)に基づいて、血圧を算出(推定)する(
図8のステップS14)。ここで、脈波伝播時間と血圧との間の予め定められた対応式Eqは、脈波伝播時間をDTと表し、血圧をEBPと表すとき、例えば
図13の式(Eq.1)で示すような、1/DT
2の項を含む公知の分数関数として提供される(例えば、特開平10−201724号公報参照)。式(Eq.1)において、α、βはそれぞれ既知の係数または定数を表している。
【0074】
血圧値の測定結果は、表示器50に表示されるとともに、メモリ51に記録される。
【0075】
一方、CPU100は、被測定者の体動があるとき(
図8のステップS11でYES)、押圧カフ21の押圧力を待機用のカフ圧(第1の押圧力よりも低くかつゼロよりも高い第2の押圧力)に設定し、脈波の測定を中断する(
図8のステップS15)。
図1の動作フローの開始後すぐに脈波の測定を中断する場合には、CPU100は、ポンプ駆動回路320を介してポンプ32を駆動して押圧カフ21に空気を送ることにより、弁33を閉鎖して押圧カフ21を膨張させ、カフ圧を待機用のカフ圧まで加圧する。一方、いったん押圧カフ21の押圧力を測定用のカフ圧に設定してから脈波の測定を中断する場合には、CPU100は、ポンプ駆動回路320を介してポンプ32を停止することにより、弁33を開いてカフ圧Pcを待機用のカフ圧まで減圧する。次いで、CPU100は、待機用のカフ圧に達したとき、再びポンプ駆動回路320を介してポンプ32を一時的に動かすことにより弁33を閉鎖する。CPU100は、被測定者の体動を検出したことにより脈波の測定を中断していることを表示器50に表示してもよい。
【0076】
次に、CPU100は、脈波の測定を中断してからの待機時間(すなわち、待機用のカフ圧(第2の押圧力)を設定してからの待機時間)が予め決められた長さの閾値T1を超えたか否かを判断する(
図8のステップS16)。
図8のステップS16でNOのときはステップS17に進み、ステップS11で被測定者の体動を検出している限り(
図8のステップS11でYES)、ステップS11、15、S16、及びS17のループを繰り返す。脈波の測定を中断してからの待機時間は、
図8のステップS11でYESの状態が継続している場合(すなわち、ステップS11、15、S16、及びS17のループが繰り返されている場合)には、その合計値である。脈波の測定を中断してからの待機時間が閾値T1を超えたとき(
図8のステップS16でYES)、CPU100は、ポンプ32を停止し、弁33を開いて押圧カフ21内の空気を排気し、押圧カフ21の押圧力をゼロに設定する(
図8のステップS18)。
【0077】
この例では、
図8のステップS17において操作部52のプッシュ式スイッチによって測定停止が指示されていなければ(
図8のステップS17でNO)、ステップS11に戻り、被測定者の体動の有無に応じて、測定用のカフ圧を設定するステップS12〜S14と、待機用のカフ圧を設定するステップS15〜S16とのいずれかを繰り返す。
図9は、
図1の血圧計において体動の有無に応じて設定されるカフ圧Pcを示すグラフである。被測定者の体動がないとき、カフ圧Pcは例えば50mmHgに設定され、被測定者の体動があるとき、カフ圧Pcは例えば20mmHgに設定される。CPU100は、脈波の測定を中断した後で(
図8のステップS11でYES)、被測定者の体動がある状態から被測定者の体動がない状態に遷移したとき(
図8のステップS11でNO)、押圧カフ21の押圧力を第2の押圧力から第1の押圧力に戻して脈波の測定を再開する。CPU100は、ステップS12〜S14を実行するごとに、血圧値の測定結果を、表示器50に更新して表示するとともに、メモリ51に蓄積して記録する。
【0078】
ユーザが本体10に設けられた操作部52のプッシュ式スイッチによって測定停止を指示すると(
図8のステップS17でYES)、CPU100は、ポンプ32を停止し、弁33を開いて押圧カフ21内の空気を排気し、測定動作を終了する(ステップS18)。
【0079】
この血圧計1によれば、被測定者の体動を考慮した新規な制御方法で被測定部位への押圧力を制御し、被測定者の利便性を向上することができる。この血圧計1によれば、被測定者の体動があるとき、押圧カフの押圧力を低下させることにより、被測定者の身体的負荷を緩和することができる。また、この血圧計1によれば、押圧カフの押圧力を低下させるとき、ゼロより高い押圧力に設定することにより、脈波センサ40−1,40−2の位置ズレを低減することができ、また、測定を再開する際の加圧時間を短縮することができる。
【0080】
この血圧計1によれば、この脈波伝播時間(PTT)に基づく血圧測定によって、ユーザの身体的負担が軽い状態で、血圧を長期間にわたって連続的に測定することができる。
【0081】
また、この血圧計1によれば、脈波伝播時間に基づく血圧測定(推定)と、オシロメトリック法による血圧測定とを一体の装置で行うことができる。したがって、ユーザの利便性を高めることができる。
【0082】
(第1の押圧力の決定)
図8のステップS12で設定した測定用のカフ圧(第1の押圧力)は、例えば、以下のように決定される。
【0083】
本発明者による実験よると、被測定部位としての左手首90に対する第1の脈波センサ40−1(第1の検出電極対42,43を含む。)、第2の脈波センサ40−2(第2の検出電極対44,45を含む。)の押圧力(押圧カフ21によるカフ圧Pcに等しい。)がゼロから徐々に大きくなると、それに伴って第1及び第2の脈波信号PS1,PS2の波形間の相互相関係数rが徐々に大きくなり、極大値rmaxを示し、それから徐々に小さくなることが発見された。この動作フローは、相互相関係数rが予め定められた閾値Th(この例では、Th=0.99)を超えている範囲が、押圧力の適正な範囲(これを「適正押圧範囲」と呼ぶ。)であるとの考え方に基づいている。
【0084】
第1の押圧力を決定するために、まず、CPU100は、ポンプ駆動回路320を介してポンプ32を駆動して押圧カフ21に空気を送ることにより、弁33を閉鎖して押圧カフ21を膨張させ、カフ圧Pc(
図5(A)参照)を徐々に加圧してゆく。この例では、カフ圧Pcを一定速度(=5mmHg/s)で連続的に高くしてゆく。なお、次に述べる相互相関係数rを算出するための時間を容易に確保できるように、カフ圧Pcを段階的に高くしてもよい。
【0085】
この加圧過程で、CPU100は、第1の脈波センサ40−1及び第2の脈波センサ40−2がそれぞれ時系列で出力する第1及び第2の脈波信号PS1,PS2を取得して、それらの第1及び第2の脈波信号PS1,PS2の波形間の相互相関係数rをリアルタイムで算出する。
【0086】
それとともに、CPU100は、算出した相互相関係数rが予め定められた閾値Th(=0.99)を超えているか否かを判断する。ここで、相互相関係数rが閾値Th以下であれば、相互相関係数rが閾値Thを超えるまで、カフ圧Pcの加圧及び相互相関係数rの算出を繰り返す。そして、相互相関係数rが閾値Thを超えたら、CPU100は、ポンプ32を停止して、カフ圧Pcをその時点、つまり、相互相関係数rが閾値Thを超えた時点の値に設定する。
【0087】
このように決定された測定用のカフ圧(第1の押圧力)を用いることにより、脈波伝播時間の測定精度を高めることができる。また、カフ圧Pcを相互相関係数rが閾値Thを超えた時点の値に設定するので、カフ圧Pcを無用に大きくすることなく、脈波伝播時間を取得できる。これにより、ユーザの身体的負担を軽くすることができる。
【0088】
実施形態2.
以下、この発明の実施形態2に係る脈波測定装置を備えた血圧測定装置について説明する。
【0089】
図10は、この発明の実施形態2に係る脈波測定装置を備えた血圧測定装置である血圧計1Aの制御系のブロック構成を示す図である。
図11は、
図10の血圧計が被測定者の左手首に装着された状態での、手首の長手方向に沿った断面を模式的に示す図である。
【0090】
血圧計1Aは、本体10A及びベルト20Aを備える。
【0091】
図10の本体10Aは、
図4の本体10の1系統の圧力センサ31、ポンプ32、弁33、発振回路310、ポンプ駆動回路320と、それらを制御するCPU100とに代えて、2系統の圧力センサ31a,31b、ポンプ32a,32b、弁33a,33b、発振回路310a,310b、ポンプ駆動回路320a,320bと、それらを制御するCPU100Aとを備える。
図10の圧力センサ31a,31b、ポンプ32a,32b、弁33a,33b、発振回路310a,310b、及びポンプ駆動回路320a,320bはそれぞれ、
図4の圧力センサ31、ポンプ32、弁33、発振回路310、及びポンプ駆動回路320と同様に構成される。
【0092】
図10のベルト20Aは、
図4のベルト20の1つの押圧カフ21に代えて、2つの押圧カフ21a,21bを備える。
図10の押圧カフ21a,21bはそれぞれ、
図4の押圧カフ21と同様に構成される。押圧カフ21aは、エア配管38a,39aを介して圧力センサ31a及びポンプ32aに接続される。押圧カフ21bは、エア配管38b,39bを介して圧力センサ31b及びポンプ32bに接続される。
【0093】
図10の血圧計1Aの他の構成要素は、
図4の血圧計1の対応する構成要素と同様に構成される。
【0094】
図10の血圧計1Aは、2系統のポンプ32a,32bを備えたことにより、第1の脈波センサ(検出電極42,43)及び第2の脈波センサ(検出電極44,45)を個別の押圧力(カフ圧)で押圧することができる。CPU100は、押圧カフ21a,21bの第1の押圧力(カフ圧)を、第1の脈波センサ及び第2の脈波センサに対して個別の値に設定する。
図12は、
図10の血圧計において体動の有無に応じて設定されるカフ圧Pcを示すグラフである。被測定者の体動がないとき、押圧カフ21aのカフ圧Pcは例えば40mmHgに設定され、被測定者の体動があるとき、押圧カフ21aのカフ圧Pcは例えば20mmHgに設定される。被測定者の体動がないとき、押圧カフ21bのカフ圧Pcは例えば50mmHgに設定され、被測定者の体動があるとき、押圧カフ21bのカフ圧Pcは例えば20mmHgに設定される。
【0095】
第1の押圧力としての押圧カフ21a,21bのカフ圧Pcは、例えば、第1及び第2の脈波センサがそれぞれ時系列で出力する第1及び第2の脈波信号の相互相関係数が予め決められた閾値を超える値に設定される。押圧カフ21a,21bの第1の押圧力(カフ圧)を個別の値に設定することにより、相互相関係数を1に近づけやすくなり、従って、脈波及び血圧の測定精度を向上させやすくなる。
【0096】
被測定者の体動があるときの押圧カフ21a,21bのカフ圧Pcは、同じ値であっても、異なる値であってもよい。
【0097】
(変形例)
上の例では、被測定者の体動の有無を検出するために加速度センサ60を用いたが、それに代えて、例えば、圧力センサ31を用いて、被測定者の体動に起因するカフ圧の変化を検出してもよい。被測定者の体動の有無を検出するために、加速度と、カフ圧の変化との両方を用いてもよい。
【0098】
上の例では、
図8のステップS11においてのみ、被測定者の体動の有無を判断したが、それに代えて、ステップS12〜S14の実行中に常に被測定者の体動の有無を判断し、被測定者の体動があるとき、ステップS12〜S14を中断してステップS15に進んでもよい。
【0099】
また、上の例では、
図8のステップS14において、脈波伝播時間(PTT)に基づいて血圧を算出(推定)するために、脈波伝播時間と血圧との間の対応式Eqとして、
図13の式(Eq.1)を用いた。しかしながら、これに限られるものではない。脈波伝播時間と血圧との間の対応式Eqとしては、それぞれ脈波伝播時間をDT、血圧をEBPと表すとき、例えば
図14の式(Eq.2)に示すように、1/DT
2の項に加えて、1/DTの項と、DTの項とを含む式を用いてもよい。式(Eq.2)において、α、β、γ、δはそれぞれ既知の係数または定数を表している。
【0100】
さらに、例えば
図15の式(Eq.3)に示すように、1/DTの項と、心拍周期RRの項と、容積脈波面積比VRの項とを含む式を用いてもよい(例えば、特開2000−33078公報参照)。式(Eq.3)において、α、β、γ、δはそれぞれ既知の係数または定数を表している。なお、この場合、心拍周期RR、容積脈波面積比VRは、脈波信号PS1,PS2に基づいて、CPU100が算出する。
【0101】
脈波伝播時間と血圧との間の対応式Eqとして、これらの式(Eq.2)、式(Eq.3)を用いる場合も、式(Eq.1)を用いる場合と同様に、血圧を測定することができる。当然ながら、これらの式(Eq.1)、(Eq.2)、(Eq.3)以外の対応式を用いてもよい。
【0102】
上述の実施形態では、第1の脈波センサ40−1及び第2の脈波センサ40−2は、被測定部位(左手首90)を通る動脈(橈骨動脈91)の脈波をインピーダンスの変化として検出した(インピーダンス方式)。しかしながら、これに限られるものではない。第1及び第2の脈波センサは、それぞれ、被測定部位のうち対応する部分を通る動脈へ向けて光を照射する発光素子と、その光の反射光(または透過光)を受光する受光素子とを備えて、動脈の脈波を容積の変化として検出してもよい(光電方式)。または、第1及び第2の脈波センサは、それぞれ、被測定部位に当接された圧電センサを備えて、被測定部位のうち対応する部分を通る動脈の圧力による歪みを電気抵抗の変化として検出してもよい(圧電方式)。さらに、第1及び第2の脈波センサは、それぞれ、被測定部位のうち対応する部分を通る動脈へ向けて電波(送信波)を送る送信素子と、その電波の反射波を受信する受信素子とを備えて、動脈の脈波による動脈とセンサとの間の距離の変化を送信波と反射波との間の位相のずれとして検出してもよい(電波照射方式)。
【0103】
上述の実施形態では、
図1の血圧計が脈波伝播時間に基づく血圧測定(推定)を行う場合について説明したが、被測定者の体動を考慮して被測定部位への押圧力を制御する処理は、少なくとも1つの脈波センサを用いて脈波を検出する任意の場合に適用可能である。
【0104】
また、上述の実施形態では、血圧計1は、被測定部位として左手首90に装着されることが予定されているものとした。しかしながら、これに限られるものではない。被測定部位は、動脈が通っていれば良く、手首以外の上腕などの上肢であっても良いし、足首、大腿などの下肢であっても良い。
【0105】
また、上述の実施形態では、血圧計1に搭載されたCPU100が体動検出部、制御部、第1および第2の血圧算出部として働いて、オシロメトリック法による血圧測定(
図6の動作フロー)並びに脈波測定およびPTTに基づく血圧測定(推定)(
図8の動作フロー)を実行するものとした。しかしながら、これに限られるものではない。例えば、血圧計1の外部に設けられたスマートフォンなどの実質的なコンピュータ装置が、体動検出部、制御部、第1および第2の血圧算出部として働いて、ネットワーク900を介して、血圧計1にオシロメトリック法による血圧測定(
図6の動作フロー)並びに脈波測定およびPTTに基づく血圧測定(推定)(
図8の動作フロー)を実行させるようにしてもよい。
【0106】
以上の実施形態は例示であり、この発明の範囲から離れることなく様々な変形が可能である。上述した複数の実施の形態は、それぞれ単独で成立し得るものであるが、実施の形態同士の組みあわせも可能である。また、異なる実施の形態の中の種々の特徴も、それぞれ単独で成立し得るものであるが、異なる実施の形態の中の特徴同士の組みあわせも可能である。