(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両を制動させるときに前記車両の運転者により操作されるブレーキペダル(2)に対して、駆動することにより駆動力を付加するように構成された駆動力付加部(12)と、
前記車両のタイヤ(9)の負荷を示すために予め設定された負荷パラメータを算出するように構成された負荷算出部(S20,S30,S50)と、
前記駆動力付加部による前記駆動力の発生を制御するように構成された制御部(S70)とを備え、
前記制御部は、
前記ブレーキペダルが前記運転者により操作されることにより発生する反力をブレーキペダル反力とし、前記ブレーキペダルの操作量をブレーキ操作量として、
前記負荷パラメータが、予め設定された開始判定値以上であり、且つ、前記車両が走行する路面に対する前記タイヤのグリップ力が最大になるときの前記負荷パラメータとして予め設定された変曲判定値以下であることを第1負荷条件とし、前記負荷パラメータが前記変曲判定値より大きく且つ予め設定された終了判定値以下であることを第2負荷条件とし、
前記第1負荷条件が成立している場合には、前記ブレーキ操作量を一定としたときに前記ブレーキペダル反力が前記負荷パラメータと正または負の相関を有するように前記駆動力付加部に前記駆動力を発生させ、
前記第1負荷条件の成立時に正の相関を有するように前記駆動力付加部に前記駆動力を発生させ、且つ、前記第2負荷条件が成立している場合には、前記ブレーキ操作量を一定としたときに前記ブレーキペダル反力が前記負荷パラメータと負の相関を有するように前記駆動力付加部に前記駆動力を発生させ、
前記第1負荷条件の成立時に負の相関を有するように前記駆動力付加部に前記駆動力を発生させ、且つ、前記第2負荷条件が成立している場合には、前記ブレーキ操作量を一定としたときに前記ブレーキペダル反力が前記負荷パラメータと正の相関を有するように前記駆動力付加部に前記駆動力を発生させる反力付加装置(6)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に自動車用制動装置は、ブレーキペダルが踏み込まれるほど高い制動力が得られるわけではなく、タイヤと路面との摩擦抵抗(以下、グリップ力)が最も高くなるときに、最大の制動力が得られる。そして、タイヤの制動能力の限界を超えるとタイヤがロックして制動距離が延びる。通常、運転者がブレーキペダルから感じる反力は、グリップ力とは関係がなく、運転者はグリップ力を直接認識することができない。従って、運転者は、雪道のような低μ路を走行しているときにおいて、軽くブレーキを踏んだつもりでも、タイヤがロックしてひやっとすることがある。本来であれば運転者はタイヤのグリップ力の変化を認識しながらブレーキ操作をすることが望ましい。運転者がタイヤのグリップ力を直接認識しながらブレーキ操作ができれば、制動力を最大状態に近付けることができたり、これ以上踏まない方が良いと判断出来たりすることができる。また、制動能力の限界を超えてタイヤがロックして車両が滑り出してしまう前に気付くことができる。
【0005】
しかし、特許文献1に記載の技術では、制動能力の限界に近づいていること、制動能力の限界を超えたこととの何れか一方を運転者に知らせることができるが、その両方を知らせることができない。
【0006】
本開示は、制動能力の限界に近付いていることと、制動能力の限界を超えたこととの両方を運転者に知らせることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、駆動力付加部(12)と、負荷推定部(S20,S30,S50)と、制御部(S70)とを備える反力付加装置(6)である。駆動力付加部は、車両を制動させるときに運転者により操作されるブレーキペダル(2)に対して、駆動することにより駆動力を付加するように構成される。負荷算出部は、車両のタイヤ(9)の負荷を示すために予め設定された負荷パラメータを算出するように構成される。制御部は、駆動力付加部による駆動力の発生を制御するように構成される。
【0008】
また、ブレーキペダルが運転者により操作されることにより発生する反力をブレーキペダル反力とし、ブレーキペダルの操作量をブレーキ操作量とする。負荷パラメータが、予め設定された開始判定値以上であり、且つ、車両が走行する路面に対するタイヤのグリップ力が最大になるときの負荷パラメータとして予め設定された変曲判定値以下であることを第1負荷条件とする。負荷パラメータが変曲判定値より大きく且つ予め設定された終了
判定値以下であることを第2負荷条件とする。
【0009】
そして制御部は、第1負荷条件が成立している場合には、ブレーキ操作量を一定としたときにブレーキペダル反力が負荷パラメータと正または負の相関を有するように駆動力付加部に駆動力を発生させる。
【0010】
また制御部は、第1負荷条件の成立時に正の相関を有するように駆動力付加部に駆動力を発生させ、且つ、第2負荷条件が成立している場合には、ブレーキ操作量を一定としたときにブレーキペダル反力が負荷パラメータと負の相関を有するように駆動力付加部に駆動力を発生させる。
【0011】
また制御部は、第1負荷条件の成立時に負の相関を有するように駆動力付加部に駆動力を発生させ、且つ、第2負荷条件が成立している場合には、ブレーキ操作量を一定としたときにブレーキペダル反力が負荷パラメータと正の相関を有するように駆動力付加部に駆動力を発生させる。
【0012】
このように構成された本開示の反力付加装置は、負荷パラメータが開始判定値以上であり変曲判定値以下である場合には、負荷パラメータが大きくなるにつれてブレーキペダル反力が大きくなるか小さくなる。これにより、反力付加装置は、運転者に、タイヤの制動能力の限界に近付いていることを認識させることができる。
【0013】
そして、本開示の反力付加装置は、負荷パラメータが変曲判定値以下であるときにブレーキペダル反力を大きくしていた場合には、負荷パラメータが変曲判定値を超えると、負荷パラメータが大きくなるにつれてブレーキペダル反力を小さくする。一方、本開示の反力付加装置は、負荷パラメータが変曲判定値以下であるときにブレーキペダル反力を小さくしていた場合には、負荷パラメータが変曲判定値を超えると、負荷パラメータが大きくなるにつれてブレーキペダル反力を大きくする。これにより、反力付加装置は、運転者に、タイヤの制動能力の限界を超えたことを認識させることができる。
【0014】
このように、本開示の反力付加装置は、タイヤのグリップ力が最大になるときの負荷パラメータとして設定された変曲判定値を境界として、負荷パラメータに対するブレーキペダル反力の変化の傾きの正負を切り換えることにより、制動能力の限界に近付いていることと、制動能力の限界を超えたこととの両方を運転者に知らせることができる。
【0015】
なお、この欄及び特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
以下に本開示の第1実施形態を図面とともに説明する。
本実施形態のブレーキシステム1は、車両に搭載され、
図1に示すように、ブレーキペダル2と、制動装置3と、ブレーキペダルセンサ4と、車輪速センサ5と、反力付加装置6とを備える。
【0018】
ブレーキペダル2は、車両の制動を行うときに車両の運転者により足で操作される部品である。
制動装置3は、図示しない4個のブレーキパッド、倍力装置、マスタシリンダおよび油圧回路を備える。
【0019】
4個のブレーキパッドは、車両のタイヤ9が連結されている左前輪、右前輪、左後輪および右後輪のそれぞれと一体に回転するブレーキディスクを間に挟むようにして配置される。
【0020】
倍力装置は、運転者がブレーキペダル2を踏み込むことにより発生した踏力を倍力し、マスタシリンダ内に設けられたマスタピストンを押し込む。マスタシリンダは、マスタピストンが押し込まれることにより、マスタシリンダ圧を発生させる。
【0021】
油圧回路は、マスタシリンダと4個のブレーキパッドとの間を結ぶ主配管を備え、マスタシリンダで発生したマスタシリンダ圧をブレーキパッドへ伝達する。主配管を介してブレーキパッドにマスタシリンダ圧が伝達されることにより、ブレーキパッドがブレーキディスクに押し付けられ、左前輪、右前輪、左後輪および右後輪のそれぞれに対して制動力が付与される。
【0022】
油圧回路は、主配管においてマスタシリンダから4個のブレーキパッドに至る経路上に接続された減圧配管を備える。さらに油圧回路は、主配管から減圧配管へのブレーキ液の流入を制御するための減圧制御弁を備える。減圧制御弁が閉じている場合には、マスタシリンダ圧がブレーキパッドへ伝達される。減圧制御弁が開いている場合には、主配管から減圧配管へブレーキ液が流入することにより、マスタシリンダ圧より低いブレーキ液圧がブレーキパッドへ伝達される。すなわち、減圧制御弁が開かれることにより、減圧制御弁が閉じられている場合よりも、ブレーキパッドによる制動力を低下させることができる。
【0023】
ブレーキペダルセンサ4は、運転者によるブレーキペダル2の踏込量に応じた検出信号を出力する。
車輪速センサ5は、車両の左前輪、右前輪、左後輪および右後輪のそれぞれに取り付けられ、各車輪軸の回転に応じて所定角度毎にエッジが生じるパルス信号を検出信号として出力する。
【0024】
反力付加装置6は、制御装置11と、反力モータ12とを備える。
制御装置11は、CPU、ROMおよびRAM等を備えた周知のマイクロコンピュータを中心に構成された電子制御装置である。マイクロコンピュータの各種機能は、CPUが非遷移的実体的記録媒体に格納されたプログラムを実行することにより実現される。この例では、ROMが、プログラムを格納した非遷移的実体的記録媒体に該当する。また、このプログラムの実行により、プログラムに対応する方法が実行される。なお、CPUが実行する機能の一部または全部を、一つあるいは複数のIC等によりハードウェア的に構成してもよい。また、制御装置11を構成するマイクロコンピュータの数は1つでも複数でもよい。
【0025】
制御装置11は、ブレーキペダルセンサ4および車輪速センサ5からの入力に基づいて各種処理を実行し、制動装置3および反力モータ12を制御する。
反力モータ12は、
図2に示すように、その出力軸12aが、ブレーキペダル2のペダル回転軸2aに連結される。ペダル回転軸2aは、ブレーキペダル2に連結されており、運転者によってブレーキペダル2が踏み込まれたときにブレーキペダル2が回転する回転中心となる軸である。
【0026】
タイヤ9と路面との摩擦抵抗(以下、グリップ力)は、車速Vb[km/h]と車輪速Vw[km/h]とを用いて式(1)により算出されるスリップ率λに応じて変化する。車速Vbは、車両の走行速度である。車輪速Vwは、車両の車輪の回転速度から算出される走行速度である。
【0027】
λ=(Vb−Vw)/Vb ・・・(1)
例えば、車両が雪道を走行しているときにブレーキを掛けることによりタイヤがロックすると、グリップ力が低下し、制動距離が延びることが一般に知られている。
図3に示すように、一般には、スリップ率が20%前後であるときにグリップ力が最も大きく、このときに制動力が最大になる。
【0028】
次に、制御装置11が実行する反力制御処理の手順を説明する。反力制御処理は、制御装置11の動作中において繰り返し実行される処理である。
反力制御処理が実行されると、制御装置11は、
図4に示すように、まずS10にて、ブレーキ操作が行われたか否かを判断する。具体的には、ブレーキペダルセンサ4からの検出信号が示す踏込量が0より大きい場合に、ブレーキ操作が行われたと判断する。ここで、ブレーキ操作が行われていない場合には、反力制御処理を一旦終了する。一方、ブレーキ操作が行われた場合には、S20にて、車輪速センサ5からの検出信号に基づいて、左前輪、右前輪、左後輪および右後輪それぞれの車輪速を算出する。さらにS30にて、車輪速センサ5からの検出信号に基づいて、公知の手法により推定車体速度を算出し、算出した推定車体速度を上記の車速Vbとする。
【0029】
そしてS40にて、S30で算出された車速Vbが予め設定された制御判定車速(本実施形態では、例えば、20[km/h])以上であるか否かを判断する。ここで、車速Vbが制御判定車速未満である場合には、反力制御処理を一旦終了する。一方、車速Vbが制御判定車速以上である場合には、S50にて、車両のスリップ率を算出する。具体的には、左前輪、右前輪、左後輪および右後輪それぞれについて、上式(1)によりスリップ率を算出し、算出された4つのスリップ率のうち最大のスリップ率を、車両のスリップ率とする。またS60にて、ブレーキペダルセンサ4からの検出信号に基づいて、ブレーキペダル2の踏込量(以下、ブレーキ踏込量)を算出する。
【0030】
そしてS70にて、ブレーキ踏込量と車両のスリップ率とをパラメータとして反力モータ12の出力トルクが予め設定された3次元マップを参照して、反力モータ12の出力トルクを決定し、決定したトルクを出力するように反力モータ12を制御する。
【0031】
上記の3次元マップは、運転者がブレーキペダル2を踏み込むことにより発生する反力(以下、ブレーキペダル反力)のブレーキ踏込量とスリップ率とに応じた変化が、
図5に示す特性を有するように設定されている。
【0032】
ブレーキ踏込量を一定とした場合において、
図5に示すように、スリップ率が0%以上であり且つ反力制御開始スリップ率(本実施形態では、5%)未満であるときには、ブレーキ踏込量に比例してブレーキペダル反力が増加する。このときのブレーキペダル反力は
、運転者がブレーキペダル2を踏み込んだときのブレーキペダル2の回転方向(以下、ブレーキ踏込時回転方向)とは逆の方向へブレーキペダル2を押し戻すように制動装置3がブレーキペダル2へ作用させる力(以下、制動装置起因反力)である。この制動装置起因反力には、例えば、制動装置3が備えるリターンスプリングによる付勢力が含まれる。すなわち、スリップ率が0%以上であり且つ反力制御開始スリップ率未満である場合には、反力モータ12は駆動していない。なお、
図5の直線L1は、反力モータ12を駆動させていないときにおけるブレーキペダル反力のブレーキ踏込量に応じた変化を示す。
【0033】
ブレーキ踏込量を一定とした場合において、スリップ率が反力制御開始スリップ率以上であり且つ最大反力スリップ率(本実施形態では、20%)以下であるときには、スリップ率の上昇に伴い、ブレーキペダル反力が増加する。このときのブレーキペダル反力は、制動装置起因反力と、反力モータ12の駆動力とを加算した力である。すなわち、反力モータ12は、ブレーキ踏込時回転方向とは逆の方向へ出力軸12aを回転させる。
【0034】
ブレーキ踏込量を一定とした場合において、スリップ率が最大反力スリップ率より大きく且つ収束開始スリップ率(本実施形態では、25%)以下であるときには、スリップ率の上昇に伴い、ブレーキペダル反力が減少する。具体的には、スリップ率の上昇に伴い、ブレーキペダル反力と制動装置起因反力との差が徐々に小さくなり、
図5の点P1に示すように、或るスリップ率で、ブレーキペダル反力が、制動装置起因反力に一致する。さらにスリップ率が上昇すると、スリップ率の上昇に伴い、ブレーキペダル反力と制動装置起因反力との差が徐々に大きくなる。すなわち、ブレーキペダル反力が制動装置起因反力より大きいときには、反力モータ12は、ブレーキ踏込時回転方向とは逆の方向へ出力軸12aを回転させる。一方、ブレーキペダル反力が制動装置起因反力より小さいときには、反力モータ12は、ブレーキ踏込時回転方向と同じ方向へ出力軸12aを回転させる。
【0035】
ブレーキ踏込量を一定とした場合において、スリップ率が収束開始スリップ率より大きいときには、スリップ率が大きくなるにつれて、ブレーキペダル反力が予め設定された収束値へ収束する。
【0036】
また、スリップ率が反力制御開始スリップ率以上であり且つ最大反力スリップ率以下であるときにおけるブレーキペダル反力の変化量の絶対値F1に対して、スリップ率が最大反力スリップ率より大きく且つ収束開始スリップ率以下であるときにおけるブレーキペダル反力の変化量の絶対値F2の方が大きい。ブレーキペダル反力の変化量の絶対値F1は、ブレーキ踏込量を一定とした場合において、スリップ率が反力制御開始スリップ率であるときのブレーキペダル反力と、スリップ率が最大反力スリップ率であるときのブレーキペダル反力との差の絶対値である。ブレーキペダル反力の変化量の絶対値F2は、ブレーキ踏込量を一定とした場合において、スリップ率が最大反力スリップ率であるときのブレーキペダル反力と、スリップ率が収束開始スリップ率であるときのブレーキペダル反力との差の絶対値である。
【0037】
また、スリップ率が反力制御開始スリップ率以上であり且つ最大反力スリップ率以下であるときにおけるブレーキペダル反力の変化率の絶対値θ1に対して、スリップ率が最大反力スリップ率より大きく且つ収束開始スリップ率以下であるときにおけるブレーキペダル反力の変化率の絶対値θ2の方が大きい。ブレーキペダル反力の変化率の絶対値θ1は、絶対値F1を、最大反力スリップ率から反力制御開始スリップ率を減算した減算値で除した除算値である。ブレーキペダル反力の変化率の絶対値θ2は、絶対値F2を、収束開始スリップ率から最大反力スリップ率を減算した減算値で除した除算値である。
【0038】
さらに、上記の3次元マップは、スリップ率を一定とした場合において、ブレーキ踏込量に比例してブレーキペダル反力が増加するように設定されている。このため、例えば、
図6に示すように、スリップ率が最大反力スリップ率(本実施形態では、20%)となったときのブレーキ踏込量Pb1,Pb2,Pb3に応じて、最大反力スリップ率となったときのブレーキペダル反力の大きさFr1,Fr2,Fr3が異なる。そして、直線L2で示すように、最大反力スリップ率となったときのブレーキペダル反力の大きさFr1,Fr2,Fr3は、ブレーキ踏込量に比例している。
【0039】
そしてS70の処理が終了すると、
図4に示すように、S80にて、車両のスリップ率が反力制御開始スリップ率以上であり且つ最大反力スリップ率以下であるか否かを判断する。ここで、車両のスリップ率が反力制御開始スリップ率以上であり且つ最大反力スリップ率以下である場合には、S90にて、制動装置3の油圧回路の減圧制御弁を開いて、反力制御処理を一旦終了する。一方、車両のスリップ率が反力制御開始スリップ率より小さいか最大反力スリップ率より大きい場合には、S100にて、減圧制御弁を閉じて、反力制御処理を一旦終了する。
【0040】
S80〜S100の処理により、
図7に示すように、ブレーキ踏込量に対する制動力の比(以下、制動力比)は、スリップ率が0%以上であり且つ反力制御開始スリップ率未満である場合と、スリップ率が最大反力スリップ率より大きい場合とにおいて、予め設定された第1設定値R1となる。また、スリップ率が反力制御開始スリップ率以上であり且つ最大反力スリップ率以下である場合には、制動力比は、第1設定値R1より小さくなるように設定された第2設定値R2となる。
【0041】
このように構成された反力付加装置6は、反力モータ12と、制御装置11とを備える。反力モータ12は、車両を制動させるときに車両の運転者により操作されるブレーキペダル2に対して、駆動することにより駆動力を付加する。制御装置11は、車両のタイヤの負荷を示すために予め設定されたスリップ率を算出する。制御装置11は、反力モータ12による駆動力の発生を制御する。
【0042】
また、スリップ率が予め設定された反力制御開始スリップ率以上であり、且つ、車両が走行する路面に対するタイヤのグリップ力が最大になるときのスリップ率として予め設定された最大反力スリップ率以下であることを第1スリップ率条件とする。スリップ率が最大反力スリップ率より大きく且つ予め設定された収束開始スリップ率以下であることを第2スリップ率条件とする。
【0043】
そして制御装置11は、第1スリップ率条件が成立している場合には、ブレーキ踏込量を一定としたときにブレーキペダル反力がスリップ率と正の相関を有するように反力モータ12に駆動力を発生させる。
【0044】
また制御装置11は、第2スリップ率条件が成立している場合には、ブレーキ踏込量を一定としたときにブレーキペダル反力がスリップ率と負の相関を有するように反力モータ12に駆動力を発生させる。
【0045】
このように反力付加装置6は、スリップ率が反力制御開始スリップ率以上であり最大反力スリップ率以下である場合には、スリップ率が大きくなるにつれてブレーキペダル反力が大きくなる。これにより、反力付加装置6は、運転者に、タイヤ9の制動能力の限界に近付いていることを認識させることができる。
【0046】
そして反力付加装置6は、スリップ率が最大反力スリップ率を超えると、スリップ率が大きくなるにつれてブレーキペダル反力を小さくする。これにより、反力付加装置6は、運転者に、タイヤ9の制動能力の限界を超えたことを認識させることができる。
【0047】
このように反力付加装置6は、タイヤ9のグリップ力が最大になるときのスリップ率として設定された最大反力スリップ率を境界として、スリップ率に対するブレーキペダル反力の変化の傾きの正負を切り換えることにより、タイヤ9の制動能力の限界に近付いていることと、タイヤ9の制動能力の限界を超えたこととの両方を運転者に知らせることができる。
【0048】
また、スリップ率が最大反力スリップ率より大きく且つ収束開始スリップ率以下であるときにおけるブレーキペダル反力の変化量の絶対値F2は、スリップ率が反力制御開始スリップ率以上であり且つ最大反力スリップ率以下であるときにおけるブレーキペダル反力の変化量の絶対値F1より大きい。これにより、反力付加装置6は、スリップ率が最大反力スリップ率を超えた場合において、タイヤ9の制動能力の限界を超えたことを明確に運転者に認識させることができる。
【0049】
また、スリップ率が最大反力スリップ率より大きく且つ収束開始スリップ率以下であるときにおけるブレーキペダル反力の変化率の絶対値θ2は、スリップ率が反力制御開始スリップ率以上であり且つ最大反力スリップ率以下であるときにおけるブレーキペダル反力の変化率の絶対値θ1より大きい。これにより、反力付加装置6は、スリップ率が最大反力スリップ率を超えた場合において、タイヤ9の制動能力の限界を超えたことを早く運転者に認識させることができる。
【0050】
運転者によりブレーキペダル2が踏み込まれたときに、車両を制動させる制動装置3から、ブレーキペダル2が踏み込まれたブレーキ踏込時回転方向とは逆の方向へブレーキペダル2を移動させる制動装置起因反力がブレーキペダル2へ作用する。そして制御装置11は、スリップ率が収束開始スリップ率より大きい場合には、スリップ率が大きくなるにつれて、ブレーキペダル反力が、0より大きく且つ制動装置起因反力より小さくなるように予め設定された収束値に収束するように、反力モータ12に駆動力を発生させる。すなわち、反力付加装置6は、スリップ率が収束開始スリップ率より大きいときに、ブレーキペダル反力を0より大きくする。これにより、反力付加装置6は、スリップ率が収束開始スリップ率より大きいときに運転者がブレーキペダル2の踏み込みを止めた場合であっても、ブレーキペダル2が、ブレーキ踏込量が0となる初期位置まで戻らなくなってしまうという事態の発生を抑制することができる。
【0051】
また制御装置11は、第1スリップ率条件が成立している場合には、制動力比を、第1スリップ率条件が成立していない場合と比較して小さくする。これにより、反力付加装置6は、第1スリップ率条件が成立している状態において急激なスリップ率の上昇を抑制し、タイヤ9の制動能力の限界を超えてしまう事態の発生を抑制することができる。
【0052】
また制御装置11は、スリップ率を一定とした場合において、ブレーキペダル反力がブレーキ踏込量と正の相関を有するように反力モータ12に駆動力を発生させる。これにより、反力付加装置6は、ブレーキ踏込量に応じたブレーキペダル反力を発生させることができる。
【0053】
また制御装置11は、車速Vbが制御判定車速未満である場合には、反力モータ12の制御を禁止する。これにより、反力付加装置6は、車速が低い場合における車速の検出誤差の増大に起因したスリップ率の算出誤差の増大を抑制する。このため、反力付加装置6は、スリップ率に応じたブレーキペダル反力の付加を適切に行うことができる。
【0054】
以上説明した実施形態において、反力モータ12は駆動力付加部に相当し、S20,S30,S50は負荷算出部としての処理に相当し、S70は制御部としての処理に相当し、スリップ率は負荷パラメータに相当する。
【0055】
また、ブレーキ踏込量はブレーキ操作量に相当し、反力制御開始スリップ率は開始判定値に相当し、最大反力スリップ率は変曲判定値に相当し、収束開始スリップ率は終了判定値に相当し、第1スリップ率条件は第1負荷条件に相当し、第2スリップ率条件は第2負荷条件に相当する。
【0056】
また、絶対値F1は第1変化量に相当し、絶対値F2は第2変化量に相当し、絶対値θ1は第1変化率に相当し、絶対値θ2は第2変化率に相当し、収束値は終了後設定値に相当する。
【0057】
また、S80,S90は制動力比低減部としての処理に相当し、制動力比はブレーキ操作量に対する制動力の比に相当し、S40は禁止部としての処理に相当する。
(第2実施形態)
以下に本開示の第2実施形態を図面とともに説明する。なお第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分を説明する。共通する構成については同一の符号を付す。
【0058】
第2実施形態のブレーキシステム1は、反力制御処理が変更された点が第1実施形態と異なる。
第2実施形態の反力制御処理は、S70の処理が変更された点が第1実施形態と異なる。
【0059】
すなわち、S70にて、ブレーキ踏込量と車両のスリップ率とをパラメータとして反力モータ12の出力トルクが予め設定された3次元マップを参照して、反力モータ12の出力トルクを決定し、決定したトルクを出力するように反力モータ12を制御する。
【0060】
上記の3次元マップは、ブレーキペダル反力のブレーキ踏込量とスリップ率とに応じた変化が、
図8に示す特性を有するように設定されている。
図8に示すように、スリップ率が0%以上であり且つ反力制御開始スリップ率未満である場合には、ブレーキ踏込量に比例してブレーキペダル反力が増加する。
【0061】
スリップ率が反力制御開始スリップ率以上であり且つ最小反力スリップ率(本実施形態では、20%)以下である場合には、スリップ率の上昇に伴い、ブレーキペダル反力が減少する。このときのブレーキペダル反力は、制動装置起因反力から、反力モータ12の駆動力を減算した力である。すなわち、反力モータ12は、運転者がブレーキペダル2を踏み込んだときのブレーキペダル2の回転方向と同じ方向へ出力軸12aを回転させる。
【0062】
スリップ率が最小反力スリップ率より大きい場合には、スリップ率の上昇に伴い、ブレーキペダル反力が増加する。具体的には、スリップ率の上昇に伴い、ブレーキペダル反力と制動装置起因反力との差が徐々に小さくなり、
図8の点P2に示すように、或るスリップ率で、ブレーキペダル反力が制動装置起因反力に一致する。さらにスリップ率が上昇すると、スリップ率の上昇に伴い、ブレーキペダル反力と制動装置起因反力との差が徐々に大きくなる。すなわち、ブレーキペダル反力が制動装置起因反力より小さいときには、反力モータ12は、ブレーキ踏込時回転方向と同じ方向へ出力軸12aを回転させる。一方、ブレーキペダル反力が制動装置起因反力より大きいときには、反力モータ12は、ブレーキ踏込時回転方向とは逆の方向へ出力軸12aを回転させる。
【0063】
このように構成された反力付加装置6の制御装置11は、第3スリップ率条件が成立している場合には、ブレーキ踏込量を一定としたときにブレーキペダル反力がスリップ率と負の相関を有するように反力モータ12に駆動力を発生させる。なお、スリップ率が予め設定された反力制御開始スリップ率以上であり、且つ、車両が走行する路面に対するタイ
ヤのグリップ力が最大になるときのスリップ率として予め設定された最少反力スリップ率以下であることを第3スリップ率条件とする。
【0064】
また制御装置11は、第4スリップ率条件が成立している場合には、ブレーキ踏込量を一定としたときにブレーキペダル反力がスリップ率と正の相関を有するように反力モータ12に駆動力を発生させる。なお、スリップ率が最小反力スリップ率より大きく且つ100%以下であることを第4スリップ率条件とする。
【0065】
このように反力付加装置6は、スリップ率が反力制御開始スリップ率以上であり最小反力スリップ率以下である場合には、スリップ率が大きくなるにつれてブレーキペダル反力が小さくなる。これにより、反力付加装置6は、運転者に、タイヤ9の制動能力の限界に近付いていることを認識させることができる。
【0066】
そして反力付加装置6は、スリップ率が最小反力スリップ率を超えると、スリップ率が大きくなるにつれてブレーキペダル反力を大きくする。これにより、反力付加装置6は、運転者に、タイヤ9の制動能力の限界を超えたことを認識させることができる。
【0067】
このように反力付加装置6は、タイヤ9のグリップ力が最大になるときのスリップ率として設定された最小反力スリップ率を境界として、スリップ率に対するブレーキペダル反力の変化の傾きの正負を切り換えることにより、タイヤ9の制動能力の限界に近付いていることと、タイヤ9の制動能力の限界を超えたこととの両方を運転者に知らせることができる。
【0068】
以上説明した実施形態において、最小反力スリップ率は変曲判定値に相当し、100%のスリップ率は終了判定値に相当し、第3スリップ率条件は第1負荷条件に相当し、第4スリップ率条件は第2負荷条件に相当する。
【0069】
以上、本開示の一実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、種々変形して実施することができる。
[変形例1]
例えば上記実施形態では、スリップ率に基づいて反力モータ12を制御する形態を示しが、スリップ率の代わりに、車両のタイヤの負荷を示す負荷パラメータを用いてもよい。負荷パラメータとしては、タイヤと路面との摩擦抵抗、または、タイヤまたはホイールの歪みを用いて算出されたパラメータが挙げられる。但し、負荷パラメータは、
図3に示すように、グリップ力に対してスリップ率と同様の関係を有している必要がある。すなわち、負荷パラメータの値が0から大きくなるにつれてグリップ力が徐々に増大し、負荷パラメータが或る最大パラメータ値となるとグリップ力が最も大きくなり、最大パラメータ値を超えるとグリップ力が徐々に低下していくという関係を有している必要がある。
【0070】
[変形例2]
上記実施形態では、制動装置3が油圧により作動する形態を示したが、制動装置3は電動ブレーキまたは回生ブレーキであってもよい。
【0071】
[変形例3]
上記実施形態では、車輪速センサが各車輪軸の回転に応じて出力するパルス信号に基づいて車輪速を算出する形態を示したが、差動装置の出力比から車輪速を推定するようにしてもよい。
【0072】
また、上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素に分担させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に発揮させたりしてもよい。また、
上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【0073】
上述した反力付加装置6の他、当該反力付加装置6を構成要素とするシステム、当該反力付加装置6としてコンピュータを機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した媒体、反力付加方法など、種々の形態で本開示を実現することもできる。