(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6742019
(24)【登録日】2020年7月30日
(45)【発行日】2020年8月19日
(54)【発明の名称】気象場の客観解析装置及び気象場の客観解析方法
(51)【国際特許分類】
G01W 1/00 20060101AFI20200806BHJP
G16Z 99/00 20190101ALI20200806BHJP
【FI】
G01W1/00 A
G16Z99/00
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-164255(P2016-164255)
(22)【出願日】2016年8月25日
(65)【公開番号】特開2018-31683(P2018-31683A)
(43)【公開日】2018年3月1日
【審査請求日】2019年5月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】501138231
【氏名又は名称】国立研究開発法人防災科学技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100088041
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 龍吉
(72)【発明者】
【氏名】清水 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】下瀬 健一
【審査官】
山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−019583(JP,A)
【文献】
特開2007−285773(JP,A)
【文献】
特開2010−054460(JP,A)
【文献】
米国特許第6535817(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01W 1/00
G06Q 50/00
G16Z 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気象場の観測データを取得する観測データ取得部と、
背景場データ及び前記観測データ取得部が取得した前記観測データから初期時刻に初期値を作成する初期値作成部と、
前記初期値作成部が作成した前記初期値から継続的に所定時間毎に気象場の予報値を作成する予報値作成部と、
解析値を求める解析時刻より前の予め定めたリスタート時刻におけるリスタート予報値及びその後のデータを作成するための情報を含むリスタートファイルを作成するリスタートファイル作成部と、
前記初期時刻の後、所定時刻毎に前記観測データ取得部が取得する新たな観測データが入力された前記解析時刻の予報値を推定値として作成する推定値作成部と、
前記観測データ取得部が取得した前記新たな観測データと前記推定値作成部が作成した前記推定値とから解析インクリメントを計算する仮解析部と、
前記リスタート時刻まで遡り、前記解析時刻に前記仮解析部が計算した前記解析インクリメントを用いて、前記リスタート予報値を前記リスタート時刻でのデータ分から修正し、本解析値を出力する本解析部と、
を備える
ことを特徴とする気象場の客観解析装置。
【請求項2】
本解析後、前記本解析値を新たな初期値として、前記予報値作成部が予報値を継続的に作成する
ことを特徴とする請求項1に記載の気象場の客観解析装置。
【請求項3】
前記本解析部は、前記解析インクリメントを平滑化して用いて、前記リスタート予報値を前記リスタート時刻から継続的に修正する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の気象場の客観解析装置。
【請求項4】
背景場データ及び観測データから初期値を作成し、
前記初期値から気象場の予報値を継続的に作成し、
解析値を求める解析時刻より前の予め定めたリスタート時刻におけるリスタート予報値及びその後のデータを作成するための情報を含むリスタートファイルを作成し、
新たな観測データが有る場合、前記解析時刻の予報値を推定値として作成し、
前記推定値と前記新たな観測データから解析インクリメントを計算し、
前記解析インクリメントを保持し、前記リスタート時刻へ遡り、
前記リスタートファイルと前記解析インクリメントから本解析を行う
ことを特徴とする客観解析方法。
【請求項5】
本解析後、前記本解析値を新たな初期値として、前記予報値を継続的に作成する
ことを特徴とする請求項4に記載の気象場の客観解析方法。
【請求項6】
前記本解析は、前記解析インクリメントを平滑化して用いて、前記リスタート予報値を前記リスタート時刻から継続的に修正する
ことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の気象場の客観解析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観測データから気象場の客観解析を行う気象場の客観解析装置及び気象場の客観解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、観測データを取得し、大気現象を支配する物理法則から将来の気象場を客観的に予測する数値予報を行い、数値予報により作成される資料を利用して天気予報が行われている。数値予報を行うには、コンピュータで取り扱いやすくするため、初めに三次元空間を格子で区切り、観測データから各格子点での気象場を初期値として求める。ここで、不規則に分布した観測データから、規則的な格子点での気象場を与えることを客観解析という。
【0003】
従来、客観解析装置として、ドップラーレーダーにより取得された観測データをデータ解析部により解析し、一定の品質評価指標のもとで取捨選択、あるいは重み関数を乗算することにより時空間的な連続性を保つシステムが開示されている(特許文献1参照)。
【0004】
図6は、従来の客観解析装置の解析の流れを示す。ここで、横軸は、時間の流れを表す。
【0005】
従来の客観解析装置は、まず、第1の時刻の観測データから初期値を作成する。その後、初期値を用いて第1の時刻から所定の時間経過した第2の時刻の推定値及び第3の時刻の推定値を求める。続いて、第2の時刻に、第2の時刻の推定値と第2の時刻の観測データから第2の時刻の解析値を求める。次に、第3の時刻に、第3の時刻の推定値と第3の時刻の観測データから第3の時刻の解析値を求める(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−249662号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】数値予報課,「数値予報の基礎知識と最新の数値予報システム」,気象庁予報部,平成24年度数値予報研修テキスト,2012年11月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の客観解析装置は、レーダーが降水粒子の動きをとらえることで、風向及び風速を観測するものである。したがって、雨が降っていない場所では、風向及び風速を推定することができない。また、レーダーは、直線状に進むため、地表付近の観測をすることができず、観測解像度が低く、局所的な変化に対応することができなかった。
【0009】
また、非特許文献1の客観解析装置は、第1の時刻の観測データから初期値を作成した後、第1の時刻に作成した初期値を用いて以後の推定値を求める。したがって、観測データと共に解析値を求めるための推定値は、すべて第1の時刻に作成した初期値のみに影響をうけることになる。つまり、各解析値の時間的な連続性は担保されておらず、第1の時刻に作成した初期値を数時間利用することとなるので、解析値の精度が低かった。また、解析間隔が長く、リアルタイムの配信とはなっていなかった。さらに、解像度が低く、局所的な変化に対応することができなかった。
【0010】
本発明は、従来技術と比較して、高解像度、高頻度及び高精度な気象場の客観解析をリアルタイムに行うことが可能な気象場の客観解析装置及び気象場の客観解析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明にかかる気象場の客観解析装置は、
気象場の観測データを取得する観測データ取得部と、
背景場データ及び前記観測データ取得部が取得した前記観測データから初期時刻に初期値を作成する初期値作成部と、
前記初期値作成部が作成した前記初期値から継続的に所定時間毎に気象場の予報値を作成する予報値作成部と、
解析値を求める解析時刻より前の予め定めたリスタート時刻におけるリスタート予報値及びその後のデータを作成するための情報を含むリスタートファイルを作成するリスタートファイル作成部と、
前記初期時刻の後、所定時刻毎に前記観測データ取得部が取得する新たな観測データが入力された前記解析時刻の予報値を推定値として作成する推定値作成部と、
前記観測データ取得部が取得した前記新たな観測データと前記推定値作成部が作成した前記推定値とから解析インクリメントを計算する仮解析部と、
前記リスタート時刻まで遡り、前記解析時刻に前記仮解析部が計算した前記解析インクリメントを用いて、前記リスタート予報値を前記リスタート時刻でのデータ分から修正し、本解析値を出力する本解析部と、
を備える
ことを特徴とする。
【0012】
本発明にかかる気象場の客観解析装置は、
本解析後、前記本解析値を新たな初期値として、前記予報値作成部が予報値を継続的に作成する
ことを特徴とする。
【0013】
本発明にかかる気象場の客観解析装置は、
前記本解析部は、前記解析インクリメントを平滑化して用いて、前記リスタート予報値を前記リスタート時刻から継続的に修正する
ことを特徴とする。
【0014】
本発明にかかる気象場の客観解析方法は、
背景場データ及び観測データから初期値を作成し、
前記初期値から気象場の予報値を継続的に作成し、
解析値を求める解析時刻より前の予め定めたリスタート時刻におけるリスタート予報値及びその後のデータを作成するための情報を含むリスタートファイルを作成し、
新たな観測データが有る場合、前記解析時刻の予報値を推定値として作成し、
前記推定値と前記新たな観測データから解析インクリメントを計算し、
前記解析インクリメントを保持し、前記リスタート時刻へ遡り、
前記リスタートファイルと前記解析インクリメントから本解析を行う
ことを特徴とする。
【0015】
本発明にかかる気象場の客観解析方法は、
本解析後、前記本解析値を新たな初期値として、前記予報値を継続的に作成する
ことを特徴とする。
【0016】
本発明にかかる気象場の客観解析方法は、
前記本解析は、前記解析インクリメントを平滑化して用いて、前記リスタート予報値を前記リスタート時刻から継続的に修正する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
このような気象場の客観解析装置及び気象場の客観解析方法によれば、高解像度、高頻度及び高精度な気象場の客観解析をリアルタイムに行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】本実施形態の客観解析装置の解析の流れを示す。
【
図3】本実施形態の客観解析装置の各時刻におけるデータを示す。
【
図4】本実施形態の客観解析装置の制御フローチャートを示す。
【
図5】従来法と本実施形態の客観解析装置で風を解析した例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明にかかる実施の形態を図により説明する。
【0020】
図1は、本実施形態の客観解析装置を示す。
図2は、本実施形態の客観解析装置の解析の流れを示す。
図2の横軸は、時間の流れを表す。
図3は、本実施形態の客観解析装置の各時刻におけるデータを示す。
【0021】
客観解析装置1は、観測データ取得部11と、初期値作成部12と、予報値作成部13と、リスタートファイル作成部14と、推定値作成部15と、仮解析部16と、修正部17と、本解析部18と、を備える。
【0022】
観測データ取得部11は、地上観測、気象衛星及びレーダー等の観測データを、世界各国の気象機関又は宇宙機関等から取得する。観測は、様々な場所や時刻で行われているので、観測データはそれぞれの取得先から所定の時間毎に取得される。また、観測データ取得部11は、気象庁の全球モデル又はメソモデルの格子点データ等の背景場データも取得することが好ましい。観測データには、人為的なミスや機器の故障等によって精度が低く、利用できないものが存在するので、これらのデータは除外する。取得された観測データは、初期値作成部12に出力される。
【0023】
初期値作成部12は、背景場データ及び観測データ取得部11が取得した観測データから初期時刻に初期値を作成する。
図3に示すように、観測データは、分布が不均一であるため、そのまま使用することはできない。そのため、初期値作成部12は、空間的且つ時間的に均一な形式の初期値を作成する。
【0024】
予報値作成部13は、初期値作成部12が作成した初期値から継続的に所定時間毎に気象場の予報値を作成する。予報値は、初期値と同様に空間的且つ時間的に均一な形式で作成される。ここで、気象場とは、気圧、気温、湿度、風向、風速、降水量、積雪の深さ、降雪の深さ、日照時間、日射量、雲、視程、大気現象等をいう。
【0025】
リスタートファイル作成部14は、本解析に使用するリスタートファイルを作成する。リスタートファイルは、解析時刻より前の予め定めたリスタート時刻tにおける予報変数(風、気温、気圧、水物質等)、予報変数の時間変化項、境界値、及びリスタート時刻の一つ前のタイムステップ時間t−Δtにおける予報変数等によって、作成される(非特許文献1参照)。
【0026】
推定値作成部15は、初期時刻の後、所定時刻毎に観測データ取得部11が取得する観測データが入力された解析時刻の予報値を推定値として作成する。推定値は、予報値と同様に空間的且つ時間的に均一な形式で作成される。
【0027】
仮解析部16は、観測データ取得部11が取得した新たな観測データと推定値作成部15が作成した推定値とから解析インクリメントを計算する。解析インクリメントは、推定値と新たな観測値の誤差を修正する値である。解析インクリメントは、推定値と同様に空間的且つ時間的に均一な形式で作成される。本実施形態では、3次元変分法を用いて解析を行うことが好ましい。
【0028】
ここで、3次元変分法について簡単に説明する。3次元変分法では、以下の式(1)及び(2)を用いる。
J = 1/2 (x-x
b)
T B
-1 (x-x
b) + 1/2 [H(x)-y]
T R
-1 [H(x)-y] (1)
∇xJ = B
-1 (x-x
b) + H
T R
-1 [H(x)-y] (2)
ただし、
B
-1は、背景誤差共分散行列の逆行列、
R
-1は、観測誤差共分散行列の逆行列、
yは、観測値、
x
bは、推定値、
H(x) は、解析値から観測に相当する量を求める関数(観測演算子)、
H
T は、観測演算子が解析値の線形変換に相当する場合の行列Hの転置行列
である。
【0029】
式(1)は、コストファンクションと呼ばれ、観測値や数値モデルの推定値の誤差を二次形式で定量化したものである。式(2)は、コストファンクションの勾配ベクトルと呼ばれ、スカラー量のコストファンクションをこれから求めようとするベクトル量の推定値で微分したものであり、推定値と同じ次元をもつベクトル量である。
【0030】
勾配ベクトルは、誤差を小さくするために推定値をどのように修正すればよいかについての定量的情報を与えるものである。背景誤差共分散行列の逆行列と観測誤差共分散行列の逆行列は、既知であって、予め記憶されている。すなわち、3次元変分法とは、勾配ベクトルを利用し、コストファンクションを最小にする未知値x を解析値として探査する問題である。
【0031】
本解析部17は、リスタート時刻まで遡り、解析時刻に仮解析部16が計算した解析インクリメントを平滑化して用いて、リスタート予報値をリスタート時刻でのデータ分から継続的に修正し、本解析値を出力する。修正方法は、IAU(Incremental Analysis Update)フィルター等を用いることが好ましい。本解析後、新たな本解析値を初期値として、予報値作成部13が予報値を継続的に作成する。すなわち、次の観測値を取得すると、すぐに計算を再開することが可能となる。
【0032】
ここで、IAUフィルターについて説明する。IAUフィルターは、以下の式(3)を用いる。
∂A/∂t = Adv.A + Diff.A + Src.A + β( t - t
0 ) * Inc.A (3)
【0033】
数値予測の時間発展は一般に、式(3)のように、移流項(Adv)、拡散項(Diff)、発生・消滅項(Src)によって、時間発展が決定されている。IAUフィルターでは、さらにβ( t - t
0 ) * Inc.Aを付加することで、時間発展の仕方を変更し、予測を改善させるものである。
【0034】
β( t - t
0 )は、ある時刻 t と同化が行われた時刻 t
0との時間差の関数で与えられる。t が t
0 に一致する時に最大となり、時間差が大きくなるほど0に近づく。Inc.Aは、ある時刻 t
0に式(1)と式(2)で得られた x-x
b である。
【0035】
図4は、本実施形態の客観解析装置の制御フローチャートを示す。
【0036】
まず、ステップ1で、観測データ取得部11で背景場データ及び気象庁等から取得した観測データを、初期値作成部12で同化し、初期値を作成する(ST1)。背景場データは、初期値作成時に取得してもよい。
【0037】
続いて、ステップ2で、初期値から予報値作成部13が気象場の予報値を継続的に作成する(ST2)。
【0038】
続いて、ステップ3で、リスタートファイル作成部14がリスタートファイルを作成する(ST3)。リスタートファイルは、解析時刻より前の予め定めたリスタート時刻に作成される。
【0039】
ステップ4では、新たな観測データが有るか否かを判定する(ST4)。新たな観測データは解析時刻に入力されるので、通常、解析時刻になるまでは、新たな観測データは、入力されない。新たな観測データが有る場合、ステップ5に進む。新たな観測データが無い場合、ステップ4に戻る。
【0040】
ステップ5では、推定値作成部15が解析時刻の予報値を推定値として作成する(ST5)。
【0041】
続いて、ステップ6で、仮解析部16が推定値と新たな観測データから解析インクリメントを計算する(ST6)。
【0042】
次に、ステップ7で、本解析部17において、解析インクリメントを保持し、リスタート時刻へ遡る(ST7)。
【0043】
次に、ステップ8で、本解析部17がリスタートファイルと解析インクリメントから本解析を行い、本解析値を出力する(ST8)。本解析は、解析インクリメントを平滑化して用いて、リスタート予報値をリスタート時刻でのデータ分から継続的に修正することが好ましい。
【0044】
次に、ステップ9で、解析期間が終了したか否かを判定する(ST9)。解析期間が終了した場合には、制御を終了する。
【0045】
解析期間が終了した場合、ステップ10で、本解析値を新たな初期値とし、且つ、解析インクリメントを削除し、ステップ2に戻る(ST10)。すなわち、本実施形態の客観解析装置は、解析期間が終了するまで、客観解析を繰り返す。
【0046】
図5は、従来法と本実施形態の客観解析装置で風を解析した例を示す。
図5(a)は、従来法で解析した例、
図5(b)は本実施形態の客観解析装置で解析した例を示す。図中、白い部分は非降水域、矢印の向きは風向き、矢印の長さは風速、をそれぞれ示す。
【0047】
図5(a)に示すように、従来法で解析した場合、レーダーによって降水粒子の動きをとらえて、降水域での風向風速を求めることは可能である。しかしながら、非降水域では、風向風速を求めることはできない。
【0048】
これに対して、
図5(b)に示すように、本実施形態の客観解析装置では、非降水域においても風向風速を推定することが可能である。
【0049】
以上、本実施形態の気象場の客観解析装置10は、気象場の観測データを取得する観測データ取得部11と、背景場データ及び観測データ取得部11が取得した観測データから初期時刻に初期値を作成する初期値作成部12と、初期値作成部12が作成した初期値から継続的に所定時間毎に気象場の予報値を作成する予報値作成部13と、解析値を求める解析時刻より前の予め定めたリスタート時刻におけるリスタート予報値及びその後のデータを作成するための情報を含むリスタートファイルを作成するリスタートファイル作成部14と、初期時刻の後、所定時刻毎に観測データ取得部が取得する新たな観測データが入力された解析時刻の予報値を推定値として作成する推定値作成部15と、観測データ取得部11が取得した新たな観測データと推定値作成部13が作成した推定値とから解析インクリメントを計算する仮解析部16と、リスタート時刻まで遡り、解析時刻に仮解析部16が計算した解析インクリメントを用いて、リスタート予報値をリスタート時刻でのデータ分から修正し、本解析値を出力する本解析部17と、を備える。したがって、本実施形態の気象場の客観解析装置は、高頻度及び高精度な気象場の客観解析をリアルタイムに行うことが可能となる。
【0050】
また、本実施形態の気象場の客観解析装置10は、本解析後、本解析値を新たな初期値として、予報値作成部13が予報値を継続的に作成する。したがって、本実施形態の気象場の客観解析装置は、過去の解析結果を初期値とすることで、推定値の誤差を小さくすることが可能となる。
【0051】
また、本実施形態の気象場の客観解析装置10は、本解析部17は、解析インクリメントを平滑化して用いて、リスタート予報値をリスタート時刻から継続的に修正する。したがって、本実施形態の気象場の客観解析装置は、連続性の高い解析をすることが可能となる。
【0052】
本実施形態の気象場の客観解析方法は、背景場データ及び観測データから初期値を作成し、初期値から気象場の予報値を継続的に作成し、解析値を求める解析時刻より前の予め定めたリスタート時刻におけるリスタート予報値及びその後のデータを作成するための情報を含むリスタートファイルを作成し、新たな観測データが有る場合、解析時刻の予報値を推定値として作成し、推定値と新たな観測データから解析インクリメントを計算し、解析インクリメントを保持し、リスタート時刻へ遡り、リスタートファイルと解析インクリメントから本解析を行う。したがって、本実施形態の気象場の客観解析方法は、高頻度及び高精度な気象場の客観解析をリアルタイムに行うことが可能となる。
【0053】
また、本実施形態の気象場の客観解析方法は、本解析後、本解析値を新たな初期値として、予報値を継続的に作成する。したがって、本実施形態の気象場の客観解析方法は、過去の解析結果を初期値とすることで、推定値の誤差を小さくすることが可能となる。
【0054】
また、本実施形態の気象場の客観解析方法は、本解析は、解析インクリメントを平滑化して用いて、リスタート予報値をリスタート時刻から継続的に修正する。したがって、本実施形態の気象場の客観解析方法は、連続性の高い解析をすることが可能となる。
【0055】
なお、この実施形態によって本発明は限定されるものではない。すなわち、実施形態の説明に当たって、例示のために特定の詳細な内容が多く含まれるが、当業者であれば、これらの詳細な内容に色々なバリエーションや変更を加えてもよい。
【符号の説明】
【0056】
10…客観解析装置
11…観測データ取得部
12…初期値作成部
13…予報値作成部
14…リスタートファイル部
15…推定値作成部
16…仮解析部
17…本解析部