(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
<床用艶出し剤>
本発明の床用艶出し剤は、少なくとも(A)ポリウレタン樹脂と、(B)アクリル樹脂と、(C)架橋剤とを含む床用艶出し剤であり、(A)ポリウレタン樹脂がカーボネート基を含み、ウレア基とウレタン基との濃度の合計が、5.0質量%以上、18質量%以下である、床用艶出し剤に関する。
【0014】
<(A)ポリウレタン樹脂>
本発明に用いられる(A)ポリウレタン樹脂は、カーボネート基を含み、ウレア基とウレタン基との濃度の合計が、5.0質量%以上、18質量%以下であれば特に制限されるものではなく、例えば、(a)ポリオール化合物と(b)ポリイソシアネート化合物と(c)酸性基含有ポリオールとを構成成分とするポリウレタン樹脂(以下、「(A1)ポリウレタンプレポリマー」と表記することがある)であってもよく、更に(d)鎖延長剤を構成成分とするポリウレタン樹脂であってもよい。
【0015】
<<(a)ポリオール化合物>>
(a)ポリオール化合物は、1分子中に2つ以上の水酸基を有する化合物であり、上述する(A)ポリウレタン樹脂の構成成分となりうるものであれば特に制限されない。(a)ポリオール化合物としては、高分子量ポリオール又は低分子量ポリオールを用いることができ、その種類に特に制限はない。
【0016】
高分子量ポリオールとしては、上述した(A)ポリウレタン樹脂の構成成分となりうるものであれば特に制限されないが、数平均分子量が400〜8,000であることが好ましい。数平均分子量がこの範囲であれば、適切な粘度及び良好な取り扱い性が得られる。また、ソフトセグメントとしての性能の確保が容易であり、得られたポリウレタン樹脂を含む水性樹脂分散体を用いて皮膜を形成した場合に、割れの発生を抑制し易い。更に、(a)ポリオール化合物と(b)ポリイソシアネート化合物との反応性が十分なものとなり、(A1)ポリウレタンプレポリマーの製造を効率的に行うこともできる。また高分子量ポリオールは、数平均分子量が400〜4,000であることがより好ましい。
【0017】
本明細書において、数平均分子量は、JIS K 1557に準拠して測定した水酸基価に基づいて算出した数平均分子量とする。具体的には、水酸基価を測定し、末端基定量法により、(56.1×1,000×価数)/水酸基価 [mgKOH/g]で算出する。前記式中において、価数は1分子中の水酸基の数である。
【0018】
また高分子量ポリオールは、水性ポリウレタン樹脂分散体の製造の容易さから、高分子量ジオールを用いることが好ましい。高分子量ジオールとしては、例えば、ポリカーボネートジオール、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール等が挙げられる。ポリウレタン樹脂を含む床用艶出し剤から得られる皮膜の耐光性、耐候性、耐熱性、耐加水分解性、耐油性、光沢維持性をより高める点から、ポリカーボネートジオールを使用することが好ましく、光沢維持性をより高める点から、ポリカーボネートジオールとポリエーテルポリオールを使用することがより好ましい。
【0019】
ポリカーボネートジオールの中でも、ジオール成分が脂肪族ジオール及び/又は脂環族ジオールであることが好ましく、水系媒体への分散性が良好な点、(A)ポリウレタン樹脂を含む床用艶出し剤から得られる皮膜の光沢維持性が高い点、皮膜作成時の乾燥性が高い点等から、ジオール成分が脂環構造を有さない脂肪族ジオールであることがより好ましい。
【0020】
高分子量ポリオールとしては、例えば、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられる。ポリウレタン樹脂を含む床用艶出し剤から得られる皮膜の光沢維持性をより高め、また各種耐久性、例えば耐光性、耐候性、耐熱性、耐加水分解性、耐油性、耐汚れ性、耐ブラックヒールマーク性を高める点から、ポリカーボネートポリオールが好ましい。ここで、「耐ブラックヒールマーク性」とは、歩行によって付着する靴底の黒色ゴムの汚れに対する耐性である。特にコンビニエンスストアや量販店等は、床の上を多くの人が頻繁に歩行するため、歩行によるブラックヒールマークが床につきやすくなる。このため、耐ブラックヒールマーク性は、床用艶出し剤に求められる重要な耐久性能の一つである。
【0021】
ポリカーボネートポリオールは、1種以上のポリオールモノマーと、炭酸エステルやホスゲンとを反応させることにより得られる。製造が容易な点及び末端塩素化物の副生成がない点から、1種以上のポリオールモノマーと、炭酸エステルとを反応させて得られるポリカーボネートポリオールが好ましい。
本発明でいうポリカーボネートポリオールは、その分子中に、1分子中の平均のカーボネート結合の数と同じ又はそれ以下の数のエーテル結合やエステル結合を含有していてもよい。
【0022】
ポリオールモノマーとしては、特に制限されないが、例えば、脂肪族ポリオールモノマー、脂環構造を有するポリオールモノマー、芳香族ポリオールモノマー、ポリエステルポリオールモノマー、ポリエーテルポリオールモノマーが挙げられる。
【0023】
脂肪族ポリオールモノマーとしては、特に制限されないが、例えば、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール等の直鎖状脂肪族ジオール;2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,9−ノナンジオール等の分岐鎖状脂肪族ジオール;トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3官能以上の多価アルコールが挙げられる。
【0024】
脂環構造を有するポリオールモノマーとしては、特に制限されないが、例えば、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロペンタンジオール、1,4−シクロヘプタンジオール、2,7−ノルボルナンジオール、1,4−ビス(ヒドロキシエトキシ)シクロヘキサン等の主鎖に脂環式構造を有するジオールが挙げられる。
【0025】
芳香族ポリオールモノマーとしては、特に制限されないが、例えば、1,4−ベンゼンジメタノール、1,3−ベンゼンジメタノール、1,2−ベンゼンジメタノール、4,4’−ナフタレンジメタノール、3,4’−ナフタレンジメタノールが挙げられる。
【0026】
ポリエステルポリオールモノマーとしては、特に制限されないが、例えば、6−ヒドロキシカプロン酸とヘキサンジオールとのポリエステルポリオール等のヒドロキシカルボン酸とジオールとのポリエステルポリオール、アジピン酸とヘキサンジオールとのポリエステルポリオール等のジカルボン酸とジオールとのポリエステルポリオールが挙げられる。
【0027】
ポリエーテルポリオールモノマーとしては、特に制限されないが、例えば、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールやポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコールが挙げられる。
【0028】
炭酸エステルとしては、特に制限されないが、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の脂肪族炭酸エステル、ジフェニルカーボネート等の芳香族炭酸エステル、エチレンカーボネート等の環状炭酸エステルが挙げられる。その他に、ポリカーボネートポリオールを生成することができるホスゲン等も使用できる。中でも、ポリカーボネートポリオールの製造のしやすさから、脂肪族炭酸エステルが好ましく、ジメチルカーボネートが特に好ましい。
【0029】
ポリオールモノマー及び炭酸エステルからポリカーボネートポリオールを製造する方法としては、例えば、反応器中に炭酸エステルと、この炭酸エステルのモル数に対して過剰のモル数のポリオールモノマーとを加え、温度160〜200℃、圧力50mmHg程度で5〜6時間反応させた後、更に数mmHg以下の圧力において200〜220℃で数時間反応させる方法が挙げられる。上記反応においては副生するアルコールを系外に抜き出しながら反応させることが好ましい。その際、炭酸エステルが副生するアルコールと共沸することにより系外へ抜け出る場合には、過剰量の炭酸エステルを加えてもよい。また、上記反応において、チタニウムテトラブトキシド等の触媒を使用してもよい。
【0030】
ポリカーボネートジオールとしては、特に制限されないが、例えば、1,6−ヘキサンジオールと炭酸エステルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール、1,6−ヘキサンジオール及び1,5−ペンタンジオールの混合物と炭酸エステルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール、1,6−ヘキサンジオール及び1,4−ブタンジオールの混合物と炭酸エステルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールと炭酸エステルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール、1,6−ヘキサンジオール及び1,4−シクロヘキサンジメタノールの混合物と炭酸エステルとを反応させて得られたポリカーボネートジオールが挙げられる。
【0031】
ポリエステルジオールとしては、特に制限されないが、例えば、ポリエチレンアジペートジオール、ポリブチレンアジペートジオール、ポリエチレンブチレンアジペートジオール、ポリへキサメチレンイソフタレートアジペートジオール、ポリエチレンサクシネートジオール、ポリブチレンサクシネートジオール、ポリエチレンセバケートジオール、ポリブチレンセバケートジオール、ポリ−ε−カプロラクトンジオール、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレンアジペート)ジオール、1,6−へキサンジオールとダイマー酸の重縮合物等が挙げられる。
【0032】
ポリエーテルジオールとしては、特に制限されないが、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシド、エチレンオキシドとブチレンオキシドとのランダム共重合体やブロック共重合体等が挙げられる。更に、エーテル結合とエステル結合とを有するポリエーテルポリエステルポリオール等を用いてもよい。(A)ポリウレタン樹脂を含む床用艶出し剤から得られる皮膜の耐汚れ性が、より高くなる点から、ポリテトラメチレングリコールが好ましい。
【0033】
低分子量ポリオールは、上述した(A)ポリウレタン樹脂の構成成分となりうるものであれば特に制限されないが、例えば、数平均分子量が60以上400未満のものが挙げられる。
また低分子量ポリオールは、水性ポリウレタン樹脂分散体の製造の容易さから、低分子量ジオールを好適に用いることができる。低分子量ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等の炭素数2〜9の脂肪族ジオール;1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−ビス(ヒドロキシエチル)シクロヘキサン、2,7−ノルボルナンジオール、テトラヒドロフランジメタノール、2,5−ビス(ヒドロキシメチル)−1,4−ジオキサン等の炭素数6〜12の環式構造を有するジオールを挙げることができる。
また低分子量ポリオールとしては、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の低分子量多価アルコールを用いることもできる。
【0034】
(a)ポリオール化合物は、単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
【0035】
<<(b)ポリイソシアネート化合物>>
(b)ポリイソシアネート化合物は、1分子中に2個以上のイソシアナト基を有するものであり、目的とするポリウレタン樹脂の構成成分となりうるものであれば特に制限されない。(b)ポリイソシアネート化合物としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0036】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート(TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’,4’’−トリフェニルメタントリイソシアネート、m−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート、p−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネートが挙げられる。
【0037】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート、2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエートが挙げられる。
【0038】
脂環式ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水素添加TDI)、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシレート、2,5−ノルボルナンジイソシアネート、2,6−ノルボルナンジイソシアネートが挙げられる。
【0039】
また、(b)ポリイソシアネート化合物としては、1分子当たりイソシアナト基を2個有するものを使用することができる。また(A1)ポリウレタンプレポリマーがゲル化をしない範囲で、トリフェニルメタントリイソシアネートのような、1分子当たりイソシアナト基を3個以上有するポリイソシアネート化合物も使用することができる。
【0040】
(b)ポリイソシアネート化合物の中でも、床用艶出し剤から得られる皮膜の光沢維持性、耐汚れ性がより高まる点から、脂環式ポリイソシアネートが好ましく、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI)がより好ましく、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI)が特に好ましい。
【0041】
(b)ポリイソシアネート化合物は、単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
【0042】
<<(c)酸性基含有ポリオール>>
(c)酸性基含有ポリオールは、1分子中に2個以上の水酸基(フェノール性水酸基は除く)と、1個以上の酸性基を含有するものである。ここで、酸性基としては、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、フェノール性水酸基等が挙げられる。(c)酸性基含有ポリオールとして、1分子中に2個の水酸基と1個のカルボキシ基を有する化合物を含有するものが好ましい。(c)酸性基含有ポリオールは、単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
【0043】
(c)酸性基含有ポリオールとしては、例えば、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸等のジメチロールアルカン酸、N,N−ビスヒドロキシエチルグリシン、N,N−ビスヒドロキシエチルアラニン、3,4−ジヒドロキシブタンスルホン酸、3,6−ジヒドロキシ−2−トルエンスルホン酸等を用いることができる。中でも入手の容易さの観点から、2個のメチロール基を含む炭素数4〜12のジメチルロールアルカン酸を好適に用いることができる。ジメチロールアルカン酸の中でも、2,2−ジメチロールプロピオン酸をより好適に用いることができる。
【0044】
本発明において、(a)ポリオール化合物と、(c)酸性基含有ポリオールとの合計の水酸基当量数は、80〜1,000であることが好ましい。水酸基当量数がこの範囲であれば、床用艶出し剤から得られる皮膜の光沢維持性がより高くなりやすく、ポリウレタン樹脂を含む水性樹脂分散体の製造が容易であり、硬度の点で優れた皮膜が得られやすい。得られる水性ポリウレタン樹脂分散体の貯蔵安定性、乾燥性と塗布して得られる皮膜の硬度の観点から、水酸基当量数は、好ましくは100〜700、より好ましくは200〜500、特に好ましくは300〜400である。
【0045】
水酸基当量数は、以下の式(1)及び(2)で算出することができる。
各ポリオールの水酸基当量数=各ポリオールの分子量/各ポリオールの水酸基の数(フェノール性水酸基は除く)・・・(1)
ポリオールの合計の水酸基当量数=M/ポリオールの合計モル数・・・(2)
ポリウレタン樹脂(A)の場合、式(2)において、Mは、[〔(a)ポリオール化合物の水酸基当量数×(a)ポリオール化合物のモル数〕+〔(c)酸性基含有ポリオールの水酸基当量数×(c)酸性基含有ポリオールのモル数〕]を示す。
【0046】
<<(A1)ポリウレタンプレポリマー>>
(A1)ポリウレタンプレポリマーは、少なくとも、(a)ポリオール化合物と、(b)ポリイソシアネート化合物と、(c)酸性基含有ポリオール化合物とを反応させて得られる。(A1)ポリウレタンプレポリマーは、末端停止剤を含んでいてもよいが、光沢維持性がより高くなる点から、末端停止剤を含まない方が好ましい。
【0047】
(A1)ポリウレタンプレポリマーを得る場合において、(a)ポリオール化合物、(b)ポリイソシアネート化合物、(c)酸性基含有ポリオール化合物、後述する(d)鎖延長剤及び場合により末端停止剤の全量を100質量部とした場合に、(a)ポリオール化合物の割合は好ましくは30〜70質量部、より好ましくは40〜60質量部、特に好ましくは45〜55質量部である。(c)酸性基含有ポリオール化合物の割合は好ましくは0.5〜10質量部、より好ましくは3〜7質量部である。末端停止剤を含有させる場合、その割合は、所望する(A1)ポリウレタンプレポリマーの分子量等に応じて適宜決定することができる。
(a)ポリオール化合物の割合を30質量部以上とすることで、床用艶出し剤から得られる皮膜の耐汚れ性と耐ブラックヒールマーク性とをより高くできる傾向があり、70質量部以下とすることで、床用艶出し剤から得られる皮膜の光沢維持性がより高まる傾向がある。
(c)酸性基含有ポリオール化合物の割合を0.5質量部以上とすることで、得られる水性ポリウレタン樹脂の水系媒体中への分散性が良好になる傾向があり、10質量部以下とすることで、得られる水性ポリウレタン樹脂分散体の乾燥性が高くなる傾向がある。また、床用艶出し剤から得られる皮膜の耐水性を高くすることができ、得られる皮膜の光沢維持性もより高めることができる傾向がある。
【0048】
(A1)ポリウレタンプレポリマーを得る場合において、(a)ポリオール化合物及び(c)酸性基含有ポリオール化合物の全水酸基のモル数に対する、(b)ポリイソシアネート化合物のイソシアナト基のモル数の比は、1.05〜2.5が好ましい。
(a)ポリオール化合物及び(c)酸性基含有ポリオール化合物の全水酸基のモル数に対する、(b)ポリイソシアネート化合物のイソシアナト基のモル数の比を1.05以上とすることで、分子末端にイソシアナト基を有しない(A1)ポリウレタンプレポリマーの量が少なくなり、(d)鎖延長剤と反応しない分子が少なくなるため、床用艶出し剤を乾燥した後に、皮膜を形成しやすくなる。
また(a)ポリオール化合物及び(c)酸性基含有ポリオール化合物の全水酸基のモル数に対する、(b)ポリイソシアネート化合物のイソシアナト基のモル数の比を2.5以下とすることで、反応系内に残る未反応の(b)ポリイソシアネート化合物の量が少なくなり、(b)ポリイソシアネート化合物と(d)鎖延長剤が効率的に反応し、水との反応による望まない分子伸長を起こしにくくなるため、(A)ポリウレタン樹脂の調製を適切に行うことができ、貯蔵安定性がより向上する。また床用艶出し剤の乾燥性が高くなるという利点もある。
(a)ポリオール化合物及び(c)酸性基含有ポリオール化合物の全水酸基のモル数に対する、(b)ポリイソシアネート化合物のイソシアナト基のモル数の比は、1.1〜2.0とすることが好ましく、1.3〜1.8とすることがより好ましい。
【0049】
(A1)ポリウレタンプレポリマーを得る場合において、(a)ポリオール化合物、(b)ポリイソシアネート化合物、(c)酸性基含有ポリオール化合物、後述する(d)鎖延長剤及び、場合により末端停止剤との全量を100質量部とした場合に、(b)ポリイソシアネート化合物の量は、上記モル比の条件を満たす範囲で、(a)ポリオール化合物及び(c)酸性基含有ポリオール化合物の種類又は量に合わせて適宜設定することができる。
【0050】
(a)ポリオール化合物と、(c)酸性基含有ポリオール化合物と、(b)ポリイソシアネート化合物とから、(A1)ポリウレタンプレポリマーを得る場合には、(a)ポリオール化合物、(c)酸性基含有ポリオール化合物を順不同で(b)ポリイソシアネート化合物と反応させてもよい。(a)ポリオール化合物と(c)酸性基含有ポリオール化合物とを同時に(b)ポリイソシアネート化合物に反応させてもよい。
【0051】
(A1)ポリウレタンプレポリマーを得る反応の際には、触媒を用いることもできる。触媒としては、特に制限はされないが、例えば、スズ(錫)系触媒(トリメチルスズラウリレート、ジブチルスズジラウリレート等)や鉛系触媒(オクチル酸鉛等)等の金属と有機又は無機酸の塩、並びに有機金属誘導体、アミン系触媒(トリエチルアミン、N−エチルモルホリン、トリエチレンジアミン等)、ジアザビシクロウンデセン系触媒が挙げられる。中でも、反応性の観点から、ジブチル錫ジラウリレートが好ましい。
【0052】
(a)ポリオール化合物及び(c)酸性基含有ポリオール化合物と、(b)ポリイソシアネート化合物とを反応させる際の反応温度としては、特に制限はされず、40〜150℃が好ましい。反応温度を40℃以上とすることで、原料が十分に溶解し又は原料が十分な流動性を得て、得られた(A1)ポリウレタンプレポリマーの粘度を低くして十分な撹拌を行うことができる。反応温度を150℃以下とすることで、副反応が起こる等の不具合を起こさずに、反応を進行させることができる。反応温度として更に好ましくは60〜120℃である。
【0053】
(a)ポリカーボネートポリオール化合物と、(c)酸性基含有ポリオール化合物と、(b)ポリイソシアネート化合物との反応は、無溶媒で行ってもよく、有機溶媒を加えて行ってもよい。
無溶媒で反応を行う場合には、(a)ポリオール化合物と、(c)酸性基含有ポリオール化合物と、(b)ポリイソシアネート化合物の混合物が、液状であることが好ましい。
有機溶媒を加えて反応を行う場合、有機溶媒はそれ自身(a)ポリオール化合物等の各成分と反応せず、(A1)ポリウレタンプレポリマーの合成反応が進行するものであれば特に制限されない。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、β−アルコキシプロピオンアミド(出光興産製エクアミド(登録商標);例えばエクアミドM−100、エクアミドB−100)、酢酸エチルを用いることができる。
中でも、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチルが、ポリウレタンプレポリマーを水に分散し、鎖延長反応を行った後に加熱又は減圧により除去できるので好ましい。また、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、β−アルコキシプロピオンアミドは、得られたポリウレタン樹脂を含む床用艶出し剤から皮膜を作製する際に造膜助剤として働くため好ましい。
有機溶媒の添加量は、(a)ポリオール化合物と、(c)酸性基含有ポリオール化合物と、(b)ポリイソシアネート化合物との全量に対して、質量基準で、0.1〜2.0倍であることが好ましく、0.15〜0.8倍であることがより好ましい。
【0054】
<<(d)鎖延長剤>>
(d)鎖延長剤は、イソシアナト基と反応性を有する化合物である。例えば、エチレンジアミン、1,4−テトラメチレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,4−ヘキサメチレンジアミン、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、キシリレンジアミン、ピペラジン、アジポイルヒドラジド、ヒドラジン、2,5−ジメチルピペラジン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のアミン化合物、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等のジオール化合物、ポリエチレングリコールに代表されるポリアルキレングリコール類、水が挙げられ、中でも好ましくは、耐汚れ性の観点からアミン化合物が挙げられ、特に好ましくは、1級ジアミン化合物が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0055】
(d)鎖延長剤の添加量は、得られるポリウレタンプレポリマー中の鎖延長起点となるイソシアナト基の当量以下であることが好ましく、より好ましくはイソシアナト基の0.7〜0.99当量である。イソシアナト基の当量以下の量で(d)鎖延長剤を添加することで、鎖延長されたウレタンポリマーの分子量を低下させず、得られた水性ポリウレタン樹脂分散体を塗布して得た皮膜の強度を高くすることができる傾向がある。(d)鎖延長剤は、ポリウレタンプレポリマーの水への分散後に添加してもよく、分散中に添加してもよい。鎖延長は水によっても行うことができる。この場合は分散媒としての水が鎖延長剤を兼ねることになる。
【0056】
<水系媒体>
本発明においては、塗布性の観点から、(A)ポリウレタン樹脂が水系媒体中に分散されていることが好ましい。水系媒体としては、少なくとも水を含むものであれば特に制限されない。本発明においては、例えば、上水、イオン交換水、蒸留水、超純水等を用いることができる。中でも入手の容易さや塩の影響で粒子が不安定になること等を考慮して、イオン交換水を用いることが好ましい。また水系媒体は、有機溶剤を含んでいてもよい。
【0057】
本発明において、(A)ポリウレタンの酸価(AV)は、本発明の床用艶出し剤を得られる範囲であれば特に制限されず、例えば、8〜30mgKOH/gであることが好ましく、10〜22mgKOH/gであることがより好ましく、14〜19mgKOH/gであることが特に好ましい。ポリウレタンプレポリマーの酸価を8mgKOH/g以上とすることで、床用艶出し剤の貯蔵安定性、床用艶出し剤から得られる皮膜の耐傷つき性を向上させることができる傾向がある。また、(A)ポリウレタンの酸価を30mgKOH/g以下とすることで、床用艶出し剤から得られる皮膜の耐水性が向上する傾向がある。また、皮膜の光沢維持性を更に高めることができる傾向がある。
なお、本発明において、「(A)ポリウレタンの酸価」とは、(A)ポリウレタン樹脂を製造するにあたって用いられる溶媒及びポリウレタンプレポリマー(A1)を水系媒体中に分散させるための中和剤を除いたいわゆる固形分中の酸価である。
具体的には、(A)ポリウレタン樹脂の酸価は、下記式(3)によって導き出すことができる。
〔(A)ポリウレタン樹脂の酸価〕=〔(酸性基含有ポリオール化合物(c)のミリモル数)×(酸性基含有ポリオール化合物(c)1分子中の酸性基の数)〕×56.11/〔ポリオール化合物(a)、酸性基含有ポリオール化合物(c)、ポリイソシアネート化合物(b)、及び、(d)鎖延長剤の合計の質量〕・・・(3)
【0058】
本発明に用いられる(A)ポリウレタン樹脂は、(A)ポリウレタン樹脂中のウレタン基とウレア基との濃度の合計が、固形分基準で5質量%以上18質量%以下となるものである。また本発明においては、11質量%以上17.8質量%以下であることがより好ましく、16質量%以上17.5質量%以下であることが特に好ましい。
ウレタン基とウレア基との濃度の合計を上述する範囲とすることで、床用艶出し剤から得られる皮膜の光沢維持性がより高くなる。また、床用艶出し剤から得られる皮膜の耐汚れ性が高くなる傾向がある。
【0059】
本発明に用いられる(A)ポリウレタン樹脂は、カーボネート基を含むものである。(A)ポリウレタン樹脂中のカーボネート基の濃度は、特に制限されないが、例えば、固形分基準で、5質量%以上30質量%以下であることが好ましく、15質量%以上25質量%以下であることがより好ましく、15質量%以上20質量%以下であることが特に好ましい。(A)ポリウレタン樹脂中のカーボネート基の濃度を5質量%以上30質量%以下とすることで、床用艶出し剤から得られる皮膜の耐ブラックヒールマーク性、耐汚れ性がより高くなる傾向にある。
【0060】
本発明に用いられる(A)ポリウレタン樹脂は、更にエーテル基を含有することが好ましい。(A)ポリウレタン樹脂がエーテル基を含有することで、床用艶出し剤から得られる皮膜の光沢維持性がより高くなる傾向があるからである。(A)ポリウレタン樹脂中のエーテル基の濃度は、特に制限されないが、例えば、固形分基準で1質量%以上8質量%以下であることが好ましく、1.5質量%以上3.7質量%以下であることがより好ましい。(A)ポリウレタン樹脂中のエーテル基の濃度を上記範囲にすることで、床用艶出し剤から得られる皮膜の光沢維持性がより高くなり、また、耐ブラックヒールマーク性も高くなる傾向があるからである。エーテル基は、(A)ポリウレタン樹脂を構成する各成分のうち、どの成分に由来するものであってもよい。例えば、先に(a)ポリオール化合物として説明したポリエーテルポリオールを用いることができる。
【0061】
本発明に用いられる(A)ポリウレタン樹脂は、更に脂環構造を有するものであってもよい。その場合、(A)ポリウレタン樹脂の脂環構造含有濃度は、特に制限されないが、例えば、固形分基準で、5質量%以上40質量%以下であることが好ましく、12.4質量%以上26.0質量%以下であることがより好ましい。
脂環構造含有濃度を上記範囲とすることで、床用艶出し剤から得られる皮膜の光沢維持性がより高くなる傾向にある。脂環構造は、(A)ポリウレタン樹脂を構成する各成分のうち、どの成分に由来するものであってもよい。例えば、先に説明した脂環構造を有するポリオールモノマーを含むポリオール化合物や、脂環構造を有するポリイソシアネートを用いることができる。
【0062】
<水性ポリウレタン樹脂分散体の製造方法>
(A)ポリウレタン樹脂は、床用艶出し剤に用いられる他の成分と混合する前に、水系媒体に分散させ、水性ポリウレタン樹脂分散体として用いてもよい。後述する製造方法において(A1)ポリウレタンプレポリマーに含まれる酸性基を中和し、鎖延長剤を反応させた系をそのまま利用することができることから、(A)ポリウレタン樹脂としては、水性ポリウレタン樹脂分散体を調製することが好ましい。以下、(A)ポリウレタン樹脂を水系媒体に分散した水性ポリウレタン樹脂分散体の製造方法について説明する。水性ポリウレタン樹脂分散体の製造方法は、
前記(a)ポリオール化合物と、前記(c)酸性基含有ポリオール化合物を、(b)ポリイソシアネート化合物と反応させて(A1)ポリウレタンプレポリマーを得る工程(α)、
前記(A1)ポリウレタンプレポリマーの酸性基を中和する工程(β)、
前記(A1)ポリウレタンプレポリマーを水系媒体中に分散させる工程(γ)、
前記(A1)ポリウレタンプレポリマーと、前記(A1)ポリウレタンプレポリマーのイソシアナト基と反応性を有する(d)鎖延長剤とを反応させる工程(δ)を含む。
【0063】
前記(A1)ポリウレタンプレポリマーを得る工程(α)は、不活性ガス雰囲気下で行ってもよいし、大気雰囲気下で行ってもよい。(A1)ポリウレタンプレポリマーを調製する方法は、先に記載したとおりである。
【0064】
前記(A1)ポリウレタンプレポリマーの酸性基を中和する工程(β)において使用できる中和剤には、当業者に公知の塩基を、特に制限されず使用することができる。中和剤としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、N−メチルモルホリン、ピリジン等の有機アミン類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機アルカリ塩類、アンモニアが挙げられる。中でも、好ましくは有機アミン類を用いることができ、より好ましくは3級アミンを用いることができる。分散安定性が向上する点で、トリエチルアミンがより好ましい。ここで、(A1)ポリウレタンプレポリマーの酸性基とは、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、フェノール性水酸基等をいう。
【0065】
前記(A1)ポリウレタンプレポリマーを水系媒体中に分散させる工程(γ)において、水系媒体中にポリウレタンプレポリマーを分散させる方法としては、特に制限されないが、例えば、ホモミキサーやホモジナイザー等によって攪拌されている水系媒体中に、(A1)ポリウレタンプレポリマーを添加する方法、ホモミキサーやホモジナイザー等によって攪拌されている(A1)ポリウレタンプレポリマーに水系媒体を添加する方法等がある。
【0066】
前記(A1)ポリウレタンプレポリマーと、前記(A1)ポリウレタンプレポリマーのイソシアナト基と反応性を有する(d)鎖延長剤とを反応させる工程(δ)において、前記工程(δ)は冷却下でゆっくりと行ってもよく、また場合によっては60℃以下の加熱条件下で反応を促進して行ってもよい。冷却下における反応時間は、例えば0.5〜24時間とすることができ、60℃以下の加熱条件下における反応時間は、例えば0.1〜6時間とすることができる。
【0067】
水性ポリウレタン樹脂分散体の製造において、前記工程(β)と、前記工程(δ)とは、どちらを先に行ってもよいし、同時に行うこともできる。前記工程(β)と、前記工程(δ)は、同時に行ってもよい。
更に、前記工程(β)と、前記工程(γ)と、前記工程(δ)は、同時に行ってもよい。
【0068】
水性ポリウレタン樹脂分散体の製造方法の具体的な例としては、以下の方法が挙げられる:
(a)ポリオール化合物と、前記(c)酸性基含有ポリオール化合物を、(b)ポリイソシアネート化合物と反応させて(A1)ポリウレタンプレポリマーを得る(工程(α));
次いで、前記(A1)ポリウレタンプレポリマーの酸性基を中和する(工程(β))、
前記工程(β)で得られた溶液を水系媒体中に分散させる(工程(γ))、
分散媒中に分散した前記(A1)ポリウレタンプレポリマーと、前記(A1)ポリウレタンプレポリマーのイソシアナト基と反応性を有する(d)鎖延長剤とを反応させること(工程(δ))により、水性ポリウレタン樹脂分散体を得る。
【0069】
水性ポリウレタン樹脂分散体中のポリウレタン樹脂の割合は、5〜60質量%が好ましく、より好ましくは15〜50質量%である。
【0070】
本発明に用いられる(A)ポリウレタン樹脂の重量平均分子量は、通常25,000〜10,000,000程度である。より好ましくは、50,000〜5,000,000であり、更に好ましくは、100,000〜1,000,000である。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したものであり、予め作成した標準ポリスチレンの検量線から求めた換算値を使用することができる。重量平均分子量を25,000以上とすることで、床用艶出し剤の乾燥により、良好な皮膜を得ることができる傾向がある。重量平均分子量を1,000,000以下とすることで、床用艶出し剤の乾燥性をより高くすることができる傾向がある。
【0071】
また、本発明の(A)ポリウレタン樹脂には、必要に応じて、増粘剤、光増感剤、硬化触媒、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、可塑剤、表面調整剤、沈降防止剤等の添加剤を添加することもできる。前記添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、これらの添加剤の種類は当業者に公知であり、一般に用いられる範囲の量で使用することができる。
【0072】
<(B)アクリル樹脂>
本発明の床用艶出し剤に用いられる(B)アクリル樹脂は、床用艶出し剤を得られるものであれば特に制限されず、従来から使用されている既知の水溶性又は水分散性のアクリル樹脂を使用することができる。(B)アクリル樹脂の具体例としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2‐エチル‐ヘキシル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2‐エチル‐ヘキシル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、イタコン酸、マレイン酸、及びこれらの型の共重合物の単独又は混合物等を挙げることができる。また、(B)アクリル樹脂は、(C)架橋剤と反応し得る、水酸基、カルボキシ基、エポキシ基等の架橋性官能基を有していることが好ましい。なかでも、水酸基含有アクリル樹脂がより好ましい。
【0073】
<(C)架橋剤>
本発明の床用艶出し剤に用いられる(C)架橋剤は、(B)アクリル樹脂や(A)ポリウレタン樹脂の親水性基との間を架橋するものであれば特に制限されない。
このような架橋剤としては、例えば、イソシアネート系、アジリジン系、カルボジイミド系、オキサゾリン系、エポキシ系等の既存の水系架橋剤、シランカップリング剤、多価金属化合物の金属架橋剤等を挙げることができ、特に、水に分散可能なポリイソシアネート化合物が好ましい。水に分散可能なポリイソシアネートは、ポリイソシアネートに水酸基、カルボキシ基等の親水性基を導入することで得ることができるほか、市販のものを用いてもよい。具体例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)又はイソホロンジイソシアネート(IPDI)の誘導体(旭化成ケミカル社製デュラネート(商標)シリーズ等)が挙げられる。(C)架橋剤は、単独又は二種以上組み合わせて適用することができる。
【0074】
本発明の床用艶出し剤には、上述した(A)ウレタン樹脂、(B)アクリル樹脂、(C)架橋剤の他に、更にワックスエマルジョン、アルカリ可溶性樹脂、コロイダルシリカ、可塑剤、皮膜形成剤、濡れ性向上剤、消泡剤等を適宜加えることができる。
【0075】
<ワックスエマルジョン>
ワックスエマルジョンとしては、天然ワックス及び合成ワックスが挙げられる。具体的には、例えば、カルナバワックス、キャンデリラワックス、モンタンワックス、モンタン誘導ワックス、セレシンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、アマイドワックス、ポリエチレンワックスやそのカルボキシル変性ワックス、酸化ポリエチレンワックスやそのカルボキシル変性ワックス、ポリプロピレンワックスやそのカルボキシ変性ワックス、酸化ポリプロピレンワックスやそのカルボキシ変性ワックス、グリコール変性酸化ポリエチレンワックス、グリコール変性酸化ポリプロピレンワックス、エチレン−アクリル酸共重合体ワックス等を挙げることができ、特に、酸化ポリエチレンワックス、酸化ポリプロピレンワックスであると好ましい。
【0076】
<アルカリ可溶性樹脂>
アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、ロジン変性マレイン酸、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ジイソブチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸エステル−アクリル酸共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−メタクリル酸エステル−アクリル酸共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−メタクリル酸エステル−メタクリル酸共重合体、アクリル酸エステル−アクリル酸共重合体、メタクリル酸エステル−アクリル酸共重合体、メタクリル酸エステル−メタクリル酸共重合体、シュラック等を挙げることができ、これらを単独又は二種以上組み合わせて適用することができる。
【0077】
<コロイダルシリカ>
コロイダルシリカとしては、皮膜の透明性が損なわれないものであれば特に制限されずに用いることができる。コロイダルシリカは、主成分としての二酸化ケイ素(その水和物を含む)の他に、少量成分として、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム等のアルミン酸塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウム等の無機塩類やテトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の有機塩類が含まれていてもよい。また、コロイダルシリカは、通常用いられる方法で製造してもよく、市販のものを用いてもよい。コロイダルシリカの例としては、無水珪酸の微粒子を水中に分散させたシリカゾルで粒径50nm以下であるものが挙げられる。
【0078】
コロイダルシリカの平均粒子径は、分散粒子の一般的な測定である光散乱法、レーザ回折法等の手法により測定することができる。また、より直接的な手法として、TEM(透過型電子顕微鏡)撮影法により撮影した写真において、コロイダルシリカ粒子の粒径を実測し、その平均値を算出する方法等も挙げられる(例えば特開2015−078274号公報に記載の方法を参照)。
また使用できるコロイダルシリカの形状は、特に限定されない。例えば、球状、長尺の形状、針状、数珠状のいずれであってもよい。
【0079】
<可塑剤>
可塑剤としては、例えば、トリブトキシエチルホスフェート(TBEP)、トリブチルホスフェート、トリフェニルホスフェート等のリン酸エステルや、ジブチルフタレート等のフタル酸エステルや、アルキルクエン酸トリブチル等のクエン酸エステル類や、ジメチルアジピン酸エステル、ジブチルアジピン酸エステル等のアジピン酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルアルキルエステル、プロパンジオールエステル類等を挙げることができる。
【0080】
<皮膜形成剤>
皮膜形成剤成分としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メチルカルビトール)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(エチルカルビトール)、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類や、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類等を挙げることができる。
【0081】
<濡れ性向上剤>
前記濡れ性向上剤としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等の弗素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等の非イオン界面活性剤等を挙げることができる。
【0082】
<溶剤>
本発明の床用艶出し剤には、扱いやすさや安定性の向上を目的として、溶剤を加えてもよい。溶剤の種類としては特に制限されないが、水のほか、エチルカルビトール、メチルカルビトール等のカルビトール類、エタノール等のアルコール類が挙げられる。床に塗布した後に溶剤を揮発させると、気体状の溶剤が周囲に分散していくことから、周囲環境等の観点から、水を用いることが好ましい。(A)ポリウレタン樹脂として水性ポリウレタン樹脂分散体を用いると、該分散体中の水を溶剤としても用いることができる。また、(A)ポリウレタン樹脂に皮膜形成剤を用いる場合には、皮膜形成剤を溶剤成分として用いてもよい。溶剤の量は、艶出し剤を均一に分散させることができる量であれば特に制限されないが、床に塗布した後に溶剤を揮発させる必要から、床用艶出し剤の固形分含量が10〜30質量%となるような範囲で利用することが好ましい。
【0083】
<床用艶出し剤の配合>
本発明の床用艶出し剤には、添加剤を除いた固形分含有量を100質量%としたときに、(A)ポリウレタン樹脂を45〜90質量%の量で配合することが好ましい。より好ましくは、50〜80質量%である。(A)ポリウレタン樹脂の量をこの範囲にすることで、より高い光沢維持性がもたらされる。また、(B)アクリル樹脂は、5〜40質量%、特に10〜30質量%の量で配合することが好ましい。(B)アクリル樹脂の量をこの範囲とすることで、耐ブラックヒールマーク性も高くすることができる。更に、(C)架橋剤は、5〜50質量%、特に10〜40質量%の量で配合することが好ましい。床用艶出し剤に含まれる各成分の量をこの範囲にすることで、より高い光沢維持性がもたらされ、また、耐ブラックヒールマーク性が高くなる。
【0084】
<床用艶出し剤の製造方法>
本発明の床用艶出し剤は、当業者に公知の方法によって製造することができる。例えば、(A)ポリウレタン樹脂、(B)アクリル樹脂、(C)架橋剤及びその他の添加剤を混合し、固形分が所定の濃度となるように水等の溶剤量を調整して、床用艶出し剤を得ることができる。床用艶出し剤の各成分は、全てを一度に混合してもよいし、各成分を逐次導入して混合してもよい。例えば(A)ポリウレタン樹脂と(B)アクリル樹脂とを混合して均一な組成物としてから、(C)架橋剤を加えるようにしてもよいし、(A)ポリウレタン樹脂と(C)架橋剤とを混合して均一な組成物としてから、(B)アクリル樹脂を加えるようにしてもよい。(A)ポリウレタン樹脂、(B)アクリル樹脂及び(C)架橋剤を混合する手段として、通常使用される攪拌手段、振盪手段等を用いることができ、均一に混合することができる混合手段であれば特に限定されない。例えば、攪拌棒を用いて機械的に攪拌する攪拌手段、インペラーを備えた攪拌機を用いる攪拌手段、マグネチックスターラーを用いる攪拌手段、機械的振盪機を用いる振盪手段等を用いることができる。
【0085】
本発明の床用艶出し剤を用いて塗膜を形成する方法は、塗膜が形成できる方法であれば特に制限されるものではなく、例えば直接現場の床面に床用艶出し剤を塗布して塗膜を形成する方法や、予め基材に床用艶出し剤を塗布して塗膜を形成させたものを現場ではめ込む等の方法が挙げられる。なお、基材は床用として通常使用される材料であれば特に制限されない。
【実施例】
【0086】
次に、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0087】
なお、(A)ポリウレタン樹脂の物性の測定は、以下の通り行った。
(1)水酸基価:JIS K 1557のB法に準拠して測定した。
(2)ウレタン基とウレア基の濃度合計(固形分基準):水性ポリウレタン樹脂分散体の各原料の仕込み割合からウレタン基及びウレア基のモル濃度(モル/g)を算出し、質量分率に換算したものを合計した値を表記した。質量分率は水性ポリウレタン樹脂分散体の固形分を基準とする。水性ポリウレタン樹脂分散体0.3gを厚さ0.2mmでガラス基板上に塗布し、140℃で4時間加熱乾燥した後に残った質量を測定し、これを乾燥前の質量で割ったものを固形分濃度とした。水性ポリウレタン樹脂分散体の全質量と固形分濃度の積を固形分質量として、前記質量分率を算出した。
(3)カーボネート基の濃度(固形分基準):水性ポリウレタン樹脂分散体の各原料の仕込み割合からカーボネート基のモル濃度(モル/g)を算出し質量分率に換算したものを表記した。質量分率は水性ポリウレタン樹脂分散体の固形分を基準とし、ウレタン基とウレア基の濃度合計(固形分基準)と同様の方法で算出した。
(4)エーテル基の濃度(固形分基準):水性ポリウレタン樹脂分散体の各原料の仕込み割合からエーテル基のモル濃度(モル/g)を算出し質量分率に換算したものを表記した。質量分率は水性ポリウレタン樹脂分散体の固形分を基準とし、前記ウレタン結合の固形分基準の含有割合と同様の方法で算出した。
(5)脂環構造含有濃度(固形分基準):水性ポリウレタン樹脂分散体の各原料の仕込み割合から算出した脂環構造の質量分率を表記した。質量分率は水性ポリウレタン樹脂分散体の固形分を基準とし、ウレタン基等の濃度(固形分基準)と同様の方法で算出した。
(6)酸価:水性ポリウレタン樹脂分散体の各原料の仕込み割合からカルボキシ基のモル濃度(モル/g)を算出し、サンプル1gを中和するのに必要な水酸化カリウムの質量(mgKOH/g)に換算したものを表記した。サンプル質量は水性ポリウレタン樹脂分散体の固形分を基準とし、ウレタン基等の濃度(固形分基準)と同様の方法で算出した。
【0088】
[合成例1]
ETERNACOLL(登録商標)UH200(宇部興産製;数平均分子量2030;水酸基価55.4mgKOH/g;ポリオール成分が1,6−ヘキサンジオールと炭酸エステルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール)と、2,2−ジメチロールプロピオン酸と、イソホロンジイソシアネートと、2−メチル−1,5−ペンタンジアミンとを反応させ、水性ポリウレタン樹脂分散体を得た。水性ポリウレタン樹脂分散体は、固形分は、29.5%、pHは、9.7、粘度は、57cP(20℃)であった。ウレタン基濃度は、7.8質量%、ウレア基濃度は、3.1質量%、カーボネート基濃度は、28.6質量%、脂環含有率は、7.3質量%であった。
【0089】
[合成例2]
ETERNACOLL(登録商標)UH200(宇部興産製;数平均分子量2030;水酸基価55.4mgKOH/g;ポリオール成分が1,6−ヘキサンジオールと炭酸エステルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール)と、2,2−ジメチロールプロピオン酸と、水素添加MDIと、2−メチル−1,5−ペンタンジアミンとを反応させ、水性ポリウレタン樹脂分散体を得た。水性ポリウレタン樹脂分散体は、固形分は、30.1%、pHは、8.8、粘度は、57cP(20℃)であった。ウレタン基濃度は、7.6質量%、ウレア基濃度は、4.6質量%、カーボネート基濃度は、24.7質量%、脂環含有率は、17.5質量%であった。
【0090】
[合成例3]
ETERNACOLL(登録商標)UH100(宇部興産製;数平均分子量1000;水酸基価112mgKOH/g;ポリオール成分が1,6−ヘキサンジオールと炭酸エステルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール)と、2,2−ジメチロールプロピオン酸と、水素添加MDIと、2−メチル−1,5−ペンタンジアミンとを反応させ、水性ポリウレタン樹脂分散体を得た。水性ポリウレタン樹脂分散体は、固形分は、30.6%、pHは、7.9、粘度は、36cP(20℃)であった。ウレタン基濃度は、10.1質量%、ウレア基濃度は、6.1質量%、カーボネート基濃度は、19.3質量%、脂環含有率は、23.2質量%であった。
【0091】
[合成例4]
ETERNACOLL(登録商標)UH100(宇部興産製;数平均分子量1000;水酸基価112mgKOH/g;ポリオール成分が1,6−ヘキサンジオールと炭酸エステルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール)と、ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量650、水酸基価173mgKOH/g)と、2,2−ジメチロールプロピオン酸と、水素添加MDIと、2−メチル−1,5−ペンタンジアミンとを反応させ、水性ポリウレタン樹脂分散体を得た。水性ポリウレタン樹脂分散体は、固形分は、30.3%、pHは、8.4、粘度は、84cP(20℃)であった。ウレタン基濃度は、10.6質量%、ウレア基濃度は、6.4質量%、エーテル基濃度は、2.7質量%、カーボネート基濃度は、18.6質量%、脂環含有率は、24.3質量%であった。
【0092】
[合成例5]
ETERNACOLL(登録商標)UH100(宇部興産製;数平均分子量1000;水酸基価112mgKOH/g;ポリオール成分が1,6−ヘキサンジオールと炭酸エステルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール)と、ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量1000、水酸基価112mgKOH/g)と、2,2−ジメチロールプロピオン酸と、水素添加MDIと、2−メチル−1,5−ペンタンジアミンとを反応させ、水性ポリウレタン樹脂分散体を得た。水性ポリウレタン樹脂分散体は、固形分は、30.9%、pHは、8.2、粘度は、940cP(20℃)であった。ウレタン基濃度は、10.1質量%、ウレア基濃度は、6.1質量%、エーテル基濃度は、4.6質量%、カーボネート基濃度は、11.6質量%、脂環含有率は、23.1質量%であった。
【0093】
[合成例6]
ETERNACOLL(登録商標)UH100(宇部興産製;数平均分子量1000;水酸基価112mgKOH/g;ポリオール成分が1,6−ヘキサンジオールと炭酸エステルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール)と、ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量1000、水酸基価112mgKOH/g)と、2,2−ジメチロールプロピオン酸と、水素添加MDIと、2−メチル−1,5−ペンタンジアミンとを反応させ、水性ポリウレタン樹脂分散体を得た。水性ポリウレタン樹脂分散体は、固形分は、30.7%、pHは、8.2、粘度は、290cP(20℃)であった。ウレタン基濃度は、10.1質量%、ウレア基濃度は、6.1質量%、エーテル基濃度は、5.8質量%、カーボネート基濃度は、9.7質量%、脂環含有率は、23.1質量%であった。
【0094】
[合成例7]
ETERNACOLL(登録商標)UH100(宇部興産製;数平均分子量1000;水酸基価112mgKOH/g;ポリオール成分が1,6−ヘキサンジオールと炭酸エステルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール)と、ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量1000、水酸基価112mgKOH/g)と、2,2−ジメチロールプロピオン酸と、水素添加MDIと、2−メチル−1,5−ペンタンジアミンとを反応させ、水性ポリウレタン樹脂分散体を得た。水性ポリウレタン樹脂分散体は、固形分は、30.3%、pHは、8.1、粘度は、96cP(20℃)であった。ウレタン基濃度は、9.7質量%、ウレア基濃度は、7.3質量%、エーテル基濃度は、4.4質量%、カーボネート基濃度は、10.9質量%、脂環含有率は、24.3質量%であった。
【0095】
[合成例8]
ETERNACOLL(登録商標)UM90(1/3)(宇部興産製;数平均分子量900;水酸基価125mgKOH/g;ポリオール成分が1,6−ヘキサンジオール:1,4−シクロヘキサンジメタノール(3:1のモル比)と炭酸エステルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール)と、2,2−ジメチロールプロピオン酸と、水素添加MDIと、2−メチル−1,5−ペンタンジアミンとを反応させ、水性ポリウレタン樹脂分散体を得た。水性ポリウレタン樹脂分散体は、固形分は、29.9%、pHは、8.0、粘度は、48cP(20℃)であった。ウレタン基濃度は、11.6質量%、ウレア基濃度は、7.4質量%、カーボネート基濃度は、15.9質量%、脂環含有率は、32.1質量%であった。
【0096】
[合成例9]
ETERNACOLL(登録商標)UH100(宇部興産製;数平均分子量1000;水酸基価112mgKOH/g;ポリオール成分が1,6−ヘキサンジオールと炭酸エステルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール)と、2,2−ジメチロールプロピオン酸と、水素添加MDIと、2−メチル−1,5−ペンタンジアミンとを反応させ、水性ポリウレタン樹脂分散体を得た。水性ポリウレタン樹脂分散体は、固形分は、30.5%、pHは、8.8、粘度は、130cP(20℃)であった。ウレタン基濃度は、10.5質量%、ウレア基濃度は、8.4質量%、カーボネート基濃度は、15.4質量%、脂環含有率は、27.1質量%であった。
【0097】
[合成例10]
ETERNACOLL(登録商標)UH100(宇部興産製;数平均分子量1000;水酸基価112mgKOH/g;ポリオール成分が1,6−ヘキサンジオールと炭酸エステルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール)と、2,2−ジメチロールプロピオン酸と、水素添加MDIと、2−メチル−1,5−ペンタンジアミンとを反応させ、水性ポリウレタン樹脂分散体を得た。水性ポリウレタン樹脂分散体は、固形分は、31.1%、pHは、8.5、粘度は、86cP(20℃)であった。ウレタン基濃度は、11.6質量%、ウレア基濃度は、9.9質量%、カーボネート基濃度は、14.0質量%、脂環含有率は、28.6質量%であった。
【0098】
[実施例1〜7]
全固形分中に対する割合で、合成例1〜7で得られた水性ポリウレタン樹脂を50質量%、アクリル樹脂(旭化成ケミカルズ株式会社製ポリトロンR5118(商品名):固形分38%)を15質量%、ポリイソシアネート(旭化成ケミカルズ株式会社製デュラネートWB40−80D(商品名):固形分80%)を25質量%、濡れ性向上剤(株式会社ネオス製パーフルオロアルキルカルボン酸塩「フタージェント150CH(商品名)」)を0.02質量%、酸化ポリエチレンワックス(東邦化学工業株式会社製ワックスエマルジョン「ハイテックE6020(商品名)」)を10質量%、消泡剤(東レ・ダウコーニング株式会社製シリコーン系「FSアンチフォーム92(商品名)」)を0.03質量%混合し、全固形分の割合が25質量%となるように水分を調整して床用艶出し剤を作製した。
【0099】
[比較例1〜3]
全固形分中に対する割合で、合成例8〜10で得られた水性ポリウレタン樹脂を50質量%、アクリル樹脂(旭化成ケミカルズ株式会社製ポリトロンR5118(商品名):固形分38%)を15質量%、ポリイソシアネート(旭化成ケミカルズ株式会社製デュラネートWB40−80D(商品名):固形分80%)を25質量%、濡れ性向上剤(株式会社ネオス製パーフルオロアルキルカルボン酸塩「フタージェント150CH(商品名)」)を0.02質量%、酸化ポリエチレンワックス(東邦化学工業株式会社製ワックスエマルジョン「ハイテックE6020(商品名)」)を10質量%、消泡剤(東レ・ダウコーニング株式会社製シリコーン系「FSアンチフォーム92(商品名)」)を0.03質量%混合し、全固形分の割合が25質量%となるように水分を調整して床用艶出し剤を作製した。
【0100】
(光沢維持性)
黒色ホモジニアスビニル床タイル(15cm×10cm:東リ株式会社製「MSプレーン5608(商品名)」)に実施例1〜7及び比較剤1〜3の組成物をそれぞれ塗布して(1m
2当たり20ミリリットル)、恒温槽でそれぞれ乾燥させた(20℃×45分間)。次に、塗布、乾燥を繰り返し、重ね塗りすることにより三層形成して、恒温槽に静置して最終的な乾燥を行って(20℃×48時間)、試験片とした。
【0101】
それぞれのサンプルを歩行者通路にそれぞれ敷設して、所定期間(2か月)経過後、日本工業規格「JIS−K3920」で規定されているポリマタイプに準じて光沢値を測定した。表1には、60度光沢の値を示す。数字が大きいほど、光沢維持性が高い事を示す。周辺気候、歩行頻度等の条件を均等にするために、実施例1〜3、比較例1〜3の艶出し剤についての試験を同時に行った。この結果を「光沢維持性(試験条件1)」として表1に示す。
【0102】
【表1】
【0103】
実施例1〜3と比較例1〜3を比較すると、(A)ポリウレタン樹脂のウレタン基とウレア基の合計濃度を変えることで床用艶出し剤の光沢維持性が高くなることが明らかになった。ウレタン基とウレア基の濃度合計が所定の範囲である(実施例1〜3)と、ウレタン基とウレア基の濃度合計がより大きい比較例1〜3より高い光沢維持性を示すことがわかる。
【0104】
次に、「光沢維持性(試験条件1)」の試験とは異なる期間に、実施例3〜7の艶出し剤について同様の試験を行った。結果を「光沢維持性(試験条件2)」として表2に示す。なお、実施例3は「光沢維持性(試験条件1)」の試験では光沢値が70であった。
【0105】
【表2】
【0106】
表2に示す光沢維持性の試験時期(試験条件2)では、実施例3の艶出し剤では光沢値が59となった。表2から、ウレタン基とウレア基の濃度合計が所定の範囲である艶出し剤でも、(A)ポリウレタン樹脂がエーテル基を含むと更に良好な光沢維持性を示すことがわかる。
【0107】
次に、本発明の床用艶出し剤が有する耐久性能をより詳細に明らかにするため、耐ブラックヒールマーク性及び耐汚れ性の試験を行った。
【0108】
(耐ブラックヒールマーク性)
JISK−3920に準ずるヒールマーク試験機及び方法で評価した。白色ホモジニアスビニル床タイル(225mm×225mm:東リ株式会社製「MSプレーン5601(商品名)」)に実施例3〜7の組成物をそれぞれ光沢維持性の試験と同様に塗布、乾燥し、試験片とした。
【0109】
ヒールマーク試験機は、スネルカプセルと称される機器を使用した。スネルカプセルは、形態が六角柱状であり、六角形の中心に軸が通され、その軸を中心に回転することが可能になっている。
【0110】
試験片を寸法225mm×225mmに切断し、スネルカプセル(試験機)内壁面に装着し、標準ゴムブロック(JIS S 5050)50mm×50mm×50mm立方体(約175g)6個を試験機内に投入した。
【0111】
試験機を50回転/分で5分間回転させ、その後、逆方向に5分回転させた。標準ゴムブロックが10分間の回転で試験片に衝突するので、衝突による試験片の汚れで耐ヒールマーク性を評価した。
【0112】
評価は、試験片に付着したブラックヒールマーク(黒色のこすれたような汚れ)の量を目視によって判断することにより行った。評価基準を以下に示す。
◎:耐ブラックヒールマーク性に優れる
○:耐ブラックヒールマーク性が良い
×:耐ブラックヒールマーク性に劣る
【0113】
【表3】
【0114】
表3より、本発明の床用艶出し剤組成物によって得られた皮膜は、光沢維持性だけでなく、長期にわたって高い耐ブラックヒールマーク性を示すことが明らかになった。また、(A)ポリウレタン樹脂がエーテル基を所定の範囲で含むと、耐ブラックヒールマーク性が更に高くなることが明らかになった。
【0115】
(耐汚れ性)
白色ホモジニアスビニル床タイル(15cm×10cm:東リ株式会社製「MSプレーン5601(商品名)」)に実施例1〜4の組成物をそれぞれ塗布して(1m
2当たり20ミリリットル)、恒温槽でそれぞれ乾燥させる(20℃×45分間)。次に、塗布、乾燥を繰り返すことで、三層形成した後、恒温槽に静置して最終的な乾燥を行い(20℃×48時間)、試験片とした。
【0116】
それぞれのサンプルを敷設して、所定期間(2か月)経過後、外観を観察することで、耐汚れ性を求めた。
◎:汚れがほとんどない
○:汚れがわずかにある
△:汚れが多少ある
×:汚れがある
【0117】
【表4】
【0118】
表4から、ウレタン基とウレア基の濃度合計が所定の範囲である艶出し剤の中でも、特に(A)ポリウレタン樹脂が特定の範囲の脂環含有率を有するか、又は所定の範囲の量でエーテル基を含むと更に良好な耐汚れ性を示すことがわかる。