特許第6742128号(P6742128)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社キッツの特許一覧

特許6742128オゾン処理と生物ろ過処理とを併存させた閉鎖循環型陸上養殖システムとその制御方法
<>
  • 特許6742128-オゾン処理と生物ろ過処理とを併存させた閉鎖循環型陸上養殖システムとその制御方法 図000002
  • 特許6742128-オゾン処理と生物ろ過処理とを併存させた閉鎖循環型陸上養殖システムとその制御方法 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6742128
(24)【登録日】2020年7月30日
(45)【発行日】2020年8月19日
(54)【発明の名称】オゾン処理と生物ろ過処理とを併存させた閉鎖循環型陸上養殖システムとその制御方法
(51)【国際特許分類】
   A01K 63/04 20060101AFI20200806BHJP
   C02F 3/34 20060101ALI20200806BHJP
   C02F 1/78 20060101ALI20200806BHJP
   C02F 1/461 20060101ALI20200806BHJP
【FI】
   A01K63/04 F
   C02F3/34 101B
   C02F1/78
   C02F1/461 Z
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-72906(P2016-72906)
(22)【出願日】2016年3月31日
(65)【公開番号】特開2017-176149(P2017-176149A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2019年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】390002381
【氏名又は名称】株式会社キッツ
(74)【代理人】
【識別番号】100081293
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 哲男
(72)【発明者】
【氏名】國友 新太
(72)【発明者】
【氏名】片倉 俊浩
(72)【発明者】
【氏名】金井 佑樹
【審査官】 坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−34385(JP,A)
【文献】 Juvenile Fish Cultivation: Improvements in Quality,ICES Annual Report for 2002,2003年 3月,p.57
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 61/00 − 63/06
C02F 9/04
C02F 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飼育水槽の養殖水を浄化ユニットにおいて浄化して飼育水槽に戻す閉鎖循環型陸上養殖システムにおいて、浄化ユニットとして生物処理ユニットとオゾン又は電解次亜処理ユニットを並列に備え、前記生物処理ユニットにおいて、前記飼育水槽から連続的に取り出して送水される養殖水中のアンモニアの分解処理を行うとともに、前記生物処理ユニットに送水される養殖水の一部を分流させて前記オゾン又は電解次亜処理ユニット常時送水し、前記生物処理ユニットにおいて、前記飼育水槽内の養殖水のアンモニア量に対して前記生物処理ユニットによるアンモニア分解能力が十分にあり、前記飼育水槽内の養殖水中のアンモニア濃度が少なくとも飼育されている魚介類が生存できる程度の濃度を超えない場合には、送水される養殖水中のアンモニアを分解処理しない量のオゾン又は次亜塩素酸ナトリウムを供給し、前記飼育水槽内の養殖水のアンモニア量に対して前記生物処理ユニットによるアンモニア分解能力が不足し、前記飼育水槽内の養殖水中のアンモニア濃度が飼育されている魚介類が生存できる程度の濃度を超える場合には、送水される養殖水中のアンモニアを分解処理可能な量のオゾン又は次亜塩素酸ナトリウムを供給する陸上養殖システム。
【請求項2】
前記飼育水槽内の養殖水中のアンモニア量に対して前記生物処理ユニットによるアンモニア分解能力が十分にある場合には、前記オゾン又は電解次亜処理ユニットに送水される養殖水中の細菌とウイルスを殺菌するとともに、送水される養殖水を脱色するに足りる量のオゾン又は次亜塩素酸ナトリウムを供給する請求項1に記載の閉鎖循環型陸上養殖システム。
【請求項3】
飼育水槽の養殖水を生物処理ユニットとオゾン処理ユニットを並列に備えた浄化ユニットにおいて浄化して前記飼育水槽に戻す閉鎖循環型陸上養殖システムの制御方法であって、前記生物処理ユニットにおいて、前記飼育水槽から連続的に取り出して送水される養殖水中のアンモニアの分解処理を行うとともに、前記生物処理ユニットにおいて、前記飼育水槽内の養殖水のアンモニア量に対して前記生物処理ユニットによるアンモニア分解能力が十分にあり、前記飼育水槽内の養殖水中のアンモニア濃度が少なくとも飼育されている魚介類が生存できる程度の濃度を超えない場合には、送水される養殖水中のアンモニアを分解処理しない量のオゾン又は次亜塩素酸ナトリウムを供給し、前記飼育水槽内の養殖水のアンモニア量に対して前記生物処理ユニットによるアンモニア分解能力が不足し、前記飼育水槽内の養殖水中のアンモニア濃度が飼育されている魚介類が生存できる程度の濃度を超える場合には、送水される養殖水中のアンモニアを分解処理可能な量のオゾン又は次亜塩素酸ナトリウムを供給する閉鎖循環型陸上養殖システムの制御方法。
【請求項4】
前記飼育水槽内の養殖水中のアンモニア量に対して前記生物処理ユニットによるアンモニア分解能力が十分にある場合には、前記オゾン又は電解次亜処理ユニットに送水される養殖水中の細菌とウイルスを殺菌するとともに、送水される養殖水を脱色するに足りる量のオゾン又は次亜塩素酸ナトリウムを供給する請求項3に記載の閉鎖循環型陸上養殖システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚介類を飼育する養殖水中に含まれるアンモニアをオゾン処理と生物ろ過処理とを併存させて分解処理する閉鎖循環型陸上養殖システム及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
養殖場、蓄養場や水族館の養殖水では、魚介類から出た排泄物、残餌などが水中で微生物により分解され、養殖水中にアンモニア性窒素(以下、単に「アンモニア」という。)が残留する。養殖水中のアンモニアは生物毒性が高いため、魚介類に深刻な呼吸障害を引き起こす。長期間の飼育や高密度養殖などの場合には、容易に飼育水槽内にアンモニアが蓄積するので、大きな問題となっている。
【0003】
養殖水中のアンモニアを除去する最も簡単な方法は、飼育水槽に新鮮な海水を供給しつつ排水する「掛け流し方式」で飼育水槽中のアンモニアを含む養殖水を新鮮な海水と交換することである。しかしながら、養殖場等が閉鎖性水域に面している場合には、その排水は環境負荷が高いこと、また、新鮮は海水との換水にコストが必要となることなどの点で問題が多い。また、掛け流し方式の場合、海水中に含まれる雑菌やウィルスが混入し易いという問題もある。
【0004】
このような問題を解決するため、近年、飼育水槽内の養殖水を循環利用しつつアンモニアを処理する閉鎖循環型陸上養殖に関する研究が進められてきており、実用化されつつある。
【0005】
現在、最も多く用いられている閉鎖循環型陸上養殖方法は、微生物を利用して養殖水中のアンモニアを分解処理する生物処理方法によるものである。この方法では、好気性のアンモニア硝化細菌によりアンモニアを亜硝酸、硝酸へと変えた後、嫌気性の脱窒細菌により硝酸を亜硝酸、窒素へと変化させて空気中へと放出させている。生物処理方法は、微生物の代謝を利用したものであり、魚介類に害を与えないこと、高度な施設や運転技術が不要なこと等の長所を有している。
【0006】
その反面、生物処理方法では、水中のアンモニアを十分に分解することができるアンモニア硝化菌を繁殖させるために必要な期間が数週間から数か月と非常に長いため、養殖する魚量や給餌量の急激な増加によるアンモニア量の急増に対して、アンモニア処理能力を急激に増加させることができない。養殖施設では、養殖水中のアンモニアが急増した場合であっても養殖水中のアンモニアを分解処理して魚介類の安全を図る必要がある。このため、常に安全サイドで運用することができるように、十分なアンモニア処理能力を持たせた硝化槽や脱窒素槽を設け、アンモニア量の急増に対処する必要があり、施設が大型化することによる建設費の増加や運用コストの増加の原因となっている。
【0007】
また、飼育水槽内で高密度に魚介類を養殖する養殖施設では、養殖水中に魚病の原因となる細菌やウイルスなどが混入すると魚病が発生して大きな被害を受けることがあるが、生物処理方法による養殖施設では抗生物質を投与するとアンモニアを分解する硝化細菌等も殺菌してしまうため、細菌対策用に抗生物質を投与することができない
【0008】
生物処理方法の長所を生かすとともに、養殖装置が大型化や、細菌対策が困難という生物処理方法の問題を解決するため、様々な技術が提案されている。例えば、特許文献1では、生物処理槽で発生した亜硝酸の処理を、生物処理だけでは時間がかかるため、亜硝酸の濃度を飼育魚介類に支障のない程度に抑えて、一部を飼育水槽に返送し、残りの亜硝酸をオゾンにより酸化して硝酸にする飼育水循環型陸上養殖方法と装置が提案されている。この養殖装置では、養殖水中のアンモニアはオゾンと気液接触して分解されるので、生物処理槽の大きさを通常の1/2から1/3に小型化することができるとともに、飼育水中のアンモニア量の急増に対しては、オゾンの供給量を操作することで対応可能となっている。また、養殖水中のバクテリアをオゾンにより殺菌することができる。
【0009】
また、特許文献2では、硝化細菌を付着させた担体が攪拌流動される流動床からなる硝化槽と、海水を電気分解する電極のうち陽極を備える調整槽とを、海水の流れ方向でこの順に循環経路に接続し、海水を電気分解する電極のうち陰極を備えると共に脱窒細菌を付着させた担体が静置される固定床を備える脱窒槽を硝化槽と調整槽の間に接続している循環式養殖装置を提案している。この養殖装置では、硝化槽を流動床のみからなる小型に形成して、アンモニア負荷が急増したときにアンモニアの硝化不十分で亜硝酸に酸化される段階で留まっていても、調整槽内の陽極の表面での化学反応によって亜硝酸を酸化して硝酸に変換することができるため、陽極の印加電力を増加することによって容易に調整することができるので、硝化槽や脱窒槽を大型化する必要なく、魚介類の飼育数や給餌量の急激な変動に対応することができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−34385号公報
【特許文献2】特開2003−158953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に記載された飼育水循環型陸上養殖方法と装置は、アンモニアの分解処理を行う養殖水の一部を飼育水槽に返送し、残りの亜硝酸をオゾンにより酸化して硝酸にしているため、養殖装置の運転にあたって、常にオゾン発生装置を稼働させるための電力が必要であり、この電気代が養殖コストを増加させる原因となる。また、オゾンの供給により未硝化のアンモニアと亜硝酸を酸化して除去する際に、オキシダントが発生するため、接触槽で活性炭等に接触させてオキシダントを除去する必要があるので、装置の複雑化、大型化、高コスト化につながる。
【0012】
特許文献2に記載された循環式養殖装置は、硝化槽で硝化処理された後に調整槽に流入する海水が含む亜硝酸を電気分解極の陽極での化学反応により酸化して硝酸に変換しているため、この養殖装置の運転中は、常に電気分解のための電気が必要となる。また、この装置における電気分解は殺菌を目的としたものではないので、養殖水中に魚病の原因となる細菌やウイルスなどが混入した場合には、養殖している魚介類に魚病が発生して大きな被害を受ける可能性がある。
【0013】
本発明は、上記の課題点を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、従来から実施されている生物処理方法の長所を生かしつつシンプルかつ小型に構成され、常に養殖水を浄化しながら養殖水中のアモニア濃度の急激な増加にも対応することができるとともに、運転コストを抑制することができる閉鎖循環型陸上養殖システム及び制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するため、請求項1に係る発明は、飼育水槽の養殖水を浄化ユニットにおいて浄化して飼育水槽に戻す閉鎖循環型陸上養殖システムにおいて、浄化ユニットとして生物処理ユニットとオゾン又は電解次亜処理ユニットを並列に備え、生物処理ユニットにおいて、飼育水槽から連続的に取り出して送水される養殖水中のアンモニアの分解処理を行うとともに、生物処理ユニットに送水される養殖水の一部を分流させてオゾン又は電解次亜処理ユニット常時送水し、生物処理ユニットにおいて、飼育水槽内の養殖水のアンモニア量に対して生物処理ユニットによるアンモニア分解能力が十分にあり、飼育水槽内の養殖水中のアンモニア濃度が少なくとも飼育されている魚介類が生存できる程度の濃度を超えない場合には、送水される養殖水中のアンモニアを分解処理しない量のオゾン又は次亜塩素酸ナトリウムを供給し、飼育水槽内の養殖水のアンモニア量に対して生物処理ユニットによるアンモニア分解能力が不足し、飼育水槽内の養殖水中のアンモニア濃度が飼育されている魚介類が生存できる程度の濃度を超える場合には、送水される養殖水中のアンモニアを分解処理可能な量のオゾン又は次亜塩素酸ナトリウムを供給する陸上養殖システムである。
【0015】
請求項2に係る発明は、飼育水槽内の養殖水中のアンモニア量に対して生物処理ユニットによるアンモニア分解能力が十分にある場合には、オゾン又は電解次亜処理ユニットに送水される養殖水中の細菌とウイルスを殺菌するとともに、送水される養殖水を脱色するに足りる量のオゾン又は次亜塩素酸ナトリウムを供給する閉鎖循環型陸上養殖システムである。
【0016】
請求項3に係る発明は、飼育水槽の養殖水を生物処理ユニットとオゾン処理ユニットを並列に備えた浄化ユニットにおいて浄化して飼育水槽に戻す閉鎖循環型陸上養殖システムの制御方法であって、生物処理ユニットにおいて、飼育水槽から連続的に取り出して送水される養殖水中のアンモニアの分解処理を行うとともに、生物処理ユニットにおいて、飼育水槽内の養殖水のアンモニア量に対して生物処理ユニットによるアンモニア分解能力が十分にあり、飼育水槽内の養殖水中のアンモニア濃度が少なくとも飼育されている魚介類が生存できる程度の濃度を超えない場合には、送水される養殖水中のアンモニアを分解処理しない量のオゾン又は次亜塩素酸ナトリウムを供給し、飼育水槽内の養殖水のアンモニア量に対して生物処理ユニットによるアンモニア分解能力が不足し、飼育水槽内の養殖水中のアンモニア濃度が飼育されている魚介類が生存できる程度の濃度を超える場合には、送水される養殖水中のアンモニアを分解処理可能な量のオゾン又は次亜塩素酸ナトリウムを供給する閉鎖循環型陸上養殖システムの制御方法である。
【0017】
請求項4に係る発明は、飼育水槽内の養殖水中のアンモニア量に対して生物処理ユニットによるアンモニア分解能力が十分にある場合には、オゾン又は電解次亜処理ユニットに送水される養殖水中の細菌とウイルスを殺菌するとともに、送水される養殖水を脱色するに足りる量のオゾン又は次亜塩素酸ナトリウムを供給する閉鎖循環型陸上養殖システムの制御方法である。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係る発明によると、養殖水を浄化する浄化ユニットが生物処理ユニットとオゾン又は電解次亜処理ユニットを並列に備えて構成されているので、養殖水中のアンモニア量に対して生物処理ユニットによるアンモニア分解能力が十分にある場合には、生物処理ユニットで養殖水中のアンモニアを分解し、生物処理槽の立ち上がり時や生物処理槽洗浄後の生物処理ユニットのアンモニア分解能力が低い場合には、オゾン又は電解次亜処理ユニットにより養殖水中のアンモニアの分解を行うことにより、生物処理ユニットのアンモニア処理能力が増加、回復するまでの間、養殖水中のアンモニアの分解処理を行うことができる。
【0020】
また、給餌後やバイオマス量(魚量)が増加により養殖水中のアンモニア急増した時に、生物処理ユニットの処理能力を超える分のアンモニアをオゾン又は電解次亜処理ユニットで分解して、飼育水槽中の養殖水中のアンモニア濃度生物処理ユニットで対応可能な濃度に低下させることができる。
【0021】
これに加え、飼育水槽内の養殖水中のアンモニア量に対して生物処理ユニットによるアンモニア分解能力が十分にある通常時には、生物処理ユニットで養殖水中のアンモニアを分解処理し、オゾン又は電解次亜処理ユニットにはアンモニアを分解処理しない量のオゾン又は次亜塩素酸ナトリウムが供給されるため、通常時にアンモニアの分解処理のために必要なエネルギーを最少化して養殖コストを抑制することができる。
【0022】
また、飼育水槽中の養殖水のアンモニア量が急増して、養殖水中のアンモニア量に対して生物処理ユニットによるアンモニア分解能力が不足する場合には、オゾン又は電解次亜処理ユニットでのアンモニア分解処理を開始して浄化ユニットのアンモニア処理能力を増加させ、飼育水槽内の養殖水中のアンモニア濃度を所定濃度以下に下げることができるため、生物処理ユニットのアンモニア処理能力をアンモニア急増時に対処可能な規模にする必要がないので、生物処理槽を小型化することができる。
【0023】
請求項2に係る発明によると、オゾン又は電解次亜処理ユニットには、養殖水のアンモニアの分解処理を行わない場合にも、細菌とウイルスを殺菌することができるとともに、養殖水を脱色する量のオゾン又は次亜塩素酸ナトリウムを常に供給するので、細菌だけでなく、紫外線耐性が高いウイルスを高減殺率で殺菌して魚病の発生を防止することができる。また、飼育水を脱色することにより、魚の餌視認性が向上して給餌効率が向上するので、餌の無駄が少なくなるとともに、養殖効率が向上する。
【0024】
請求項3に係る発明によると、生物処理ユニットとオゾン又は電解次亜処理ユニットを並列に備えた浄水ユニットを使用し、飼育水槽内の養殖水中のアンモニア量に対して生物処理ユニットによるアンモニア分解能力が十分にある場合には、生物処理ユニットで養殖水中のアンモニアを分解処理し、飼育水槽中の養殖水中のアンモニア量に対して生物処理ユニットによるアンモニア分解能力が不足する場合には、生物処理ユニットの処理能力を超える分のアンモニアをオゾン又は電解次亜処理ユニットで分解することにより、養殖水を循環処理する間に、養殖水のアンモニア濃度を所定の濃度以下に低下させることができる。
【0025】
また、飼育水槽内の養殖水中のアンモニア量に対して生物処理ユニットによるアンモニア分解能力が十分にある場合には、生物処理ユニットで養殖水のアンモニアを分解処理し、オゾン又は電解次亜処理ユニットではアンモニアの分解処理を行わないため、アンモニアの分解処理のためのエネルギーを最少化して養殖コストを抑制することができるとともに、生物処理ユニットのアンモニア処理能力をアンモニア急増時に対処可能な規模にする必要がないため、生物処理槽を小型化することができる。
【0026】
請求項4に係る発明によると、オゾン又は電解次亜処理ユニットには、養殖水のアンモニアの分解処理を行わない場合にも、細菌とウイルスを殺菌することができるとともに、養殖水を脱色する量のオゾン又は次亜塩素酸ナトリウムを常に供給するので、細菌だけでなく、紫外線耐性が高いウイルスを高減殺率で殺菌して魚病の発生を防止することができるとともに、飼育水を脱色することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明による閉鎖循環型陸上養殖システムの一実施例を示す模式図である。
図2】オゾン処理槽の構成を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明における閉鎖循環型陸上養殖システムの一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、閉鎖循環型陸上養殖システムの一実施形態の模式図を示している。図1に示すように、閉鎖循環型陸上養殖システム1は、魚介類を養殖する飼育水槽2と、飼育水槽2から抜出した養殖水に含まれる懸濁物質(SS)を分離する固液分離器3と、飼育水槽2から連続的に抜き出される養殖水を受け止める受水槽4と、養殖水中のアンモニアを分解処理する浄化ユニット5と、浄化ユニット5でアンモニアを分解処理した養殖水を受け止める受水槽6と、受水槽6内の養殖水を飼育水槽2に返送するポンプ7と、受水槽6から飼育水槽2に養殖水を返送する管路の途中に設けた紫外線照射部8と酸素溶解器9と、新鮮な海水を受水槽5に補給する管路の途中に設けたUF膜濾過装置10と、図示しない制御部とから構成される。
【0029】
飼育水槽2は、閉鎖循環型陸上養殖システム1の最上部に設けられており、図示しないアンモニア計を備えている。アンモニア計が測定した飼育水槽2内の養殖水中のアンモニア濃度は制御部に送られ、制御部が閉鎖循環型陸上養殖システム1を制御する際の基礎データとなる。飼育水槽2の底部中心には図示しない取り挿し孔が設けられており、内部に貯留している養殖水を連続的に無動力で取り出し、飼育水槽2よりも低い位置に設けた受水槽の4に管路を介して流し込むことができる。
【0030】
固液分離器3は、飼育水槽2と受水槽4とを結ぶ管路の途中に設けられており、図示しない流体サイクロン(Radial Flow Setter)と図示しないドラムフィルタとから構成され、養殖水に含まれるSSのうち、流体サイクロンにより魚介類の糞等の大きなSSを除去し、ドラムフィルタ(フィルタ目合い:40μmm)で小さなSSを除去している。
【0031】
受水槽4は、飼育水槽2よりも低い位置に設けられ、飼育水槽2から連続的に無動力で抜出されてくる養殖水を受け止め、後段の浄化ユニット5に養殖水を供給するため、常に一定量の養殖水を貯留する貯水升の役割を果たしている。なお、養殖水のアンモニア濃度を測定するアンモニア計は、この受水槽4に設置することもできる。
【0032】
浄化ユニット5は、本実施例では、生物処理ユニット14とオゾン処理ユニット15とから構成され、受水槽4から浄化ユニット5に流入する養殖水中のアンモニアを生物処理ユニット14とオゾン処理ユニット15の両方で処理するように構成している。
【0033】
生物処理ユニット14は、図1に示すように、ポンプ17と、生物処理槽18と、脱気槽19とから構成されている。ポンプ17は制御部の制御を受けて作動し、受水槽4に貯留されている養殖水を生物処理槽18に送水する。生物処理槽18は、流動床と固定床を備え、受水槽4から送水されてくる養殖水中のアンモニアを硝化菌等により分解処理する。なお、必ずしも流動床と固定床を備える必要はなく、流動床又は固定床のみとしても良い。また、脱気槽19は、生物処理後の養殖水に溶解しているCOを除去し、養殖水の酸素溶解量を増加させるために設けている。
【0034】
オゾン処理ユニット15は、図1に示すように、ポンプ21とオゾン処理槽22とから構成されている。ポンプ21は、制御部の制御を受けて作動し、受水槽4から生物処理槽18に送水される養殖水の一部を分流させてオゾン処理槽22に送水する。なお、分流させてオゾン処理槽22に送水する流量は、実際に使用する装置を使って養殖水中のアンモニアの分解処理を行って決定する必要がある。
【0035】
また、オゾン処理槽22は、図2に示すように、オゾン散気塔23と、オゾナイザ24と、ORP計25と、活性炭槽26とを備え、これらを流路27で連結している。また、流路27には活性炭槽26をバイパスするバイパス流路28が形成されており、バイパス流路28にはバルブ29、30、流路27の活性炭槽26の1次側にはバルブ31、2次側にはバルブ32が設けられている。これらのバルブは、制御部により開閉操作され、オゾン処理された養殖水を活性炭槽26を通過させたり、活性炭槽26をバイパスさせたりする。
【0036】
オゾン散気塔23は、オゾナイザ24から供給されるオゾンを養殖水と接触させ、養殖水中のアンモニアの分解処理(除去)、細菌及びウイルスの殺菌、並びに有機物の分解と低分子化を行う。養殖水中の有機物が分解されることにより、養殖水が脱色される。
【0037】
養殖水とオゾンとの接触は、オゾン散気塔23内に下部から流入した養殖水が上部から流出する間に行われる。養殖水と接触してもアンモニアの分解処理等に使用されなかったオゾンはオゾン散気塔23の上部からは排出されるが、オゾンをそのまま排出することを避けるため、オゾン散気塔23の上部に排出されるオゾンを分解する熱触媒を設けることが好ましい。
【0038】
オゾナイザ24は原料ガス(空気又は酸素)からオゾンを発生させてオゾン散気塔23にオゾンを供給するが、この際、オゾナイザ24は制御装置の制御を受け、飼育水槽2内の養殖水のアンモニア量に対して生物処理ユニットによるアンモニア分解能力が不足する場合と、アンモニア分解能力が足りる場合とでは、オゾンの供給量を切り替えて供給する。ここで、養殖水中のアンモニア量に対し生物処理ユニットによるアンモニア分解能力が不足するか否かは、例えば、養殖水中のアンモニア濃度が所定濃度を超えるか否かで判断することができる。この所定濃度とは、少なくとも飼育されている魚介類が生存できる程度のアンモニア濃度であり、実際に使用する装置を使いアンモニアの分解処理を行って決定することができる。以下、養殖水中のアンモニア濃度が所定濃度を超えるか否かで判断する場合に基づいて説明を行う。
【0039】
オゾナイザ24は、飼育水槽2内の養殖水のアンモニア濃度が所定濃度以下の場合には、養殖水中のアンモニアは殆んど分解されないが、養殖水中の細菌、ウイルスの殺菌、養殖水中の有機物の分解し、養殖水の脱色を行うことができる量のオゾンを供給し(脱色殺菌モード)、飼育水槽2内の養殖水のアンモニア濃度が所定濃度を超える場合には、養殖水中のアンモニアを分解処理することができる量のオゾンを供給する(アンモニア分解モード)。
【0040】
このように、オゾン処理槽22で養殖水中のアンモニアの分解処理を行わない場合であっても、オゾナイザ24には、常に養殖水中の細菌、ウイルスを殺菌することができる量のオゾンを供給しているので、細菌だけでなく、紫外線耐性が菌類に比べて数千倍であるため紫外線照射装置(UVランプ)では殺減率の低いウイルスであっても効果的に殺減することができ、また、養殖水中の有機物を低分子化するので、生物処理ユニット14での有機物の分解が容易になる。
【0041】
なお、生物処理ユニット14とオゾン処理ユニットに供給する養殖水の割合、並びに脱色殺菌モードとアンモニア分解モードにおけるオゾン注入量(g/hr)は、実際に使用する養殖システムを使用して設定する必要がある。
【0042】
ORP計25は、オゾン散気塔23でオゾン処理した後の養殖水のOPR値を測定し、
測定データを連続的に制御装置に送っている。脱色殺菌モード時にORP計25で測定したオゾン処理後の養殖水のORP値が所定の値を超えていた場合には、魚介類にとって有害なオキシダントが発生するおそれがあるため、オゾナイザ24からのオゾン供給を停止させる。
【0043】
活性炭槽26は、アンモニア分解モードで養殖水をオゾン処理した際に、少量発生する可能性があるオキシダントを除去するものである。このため、殆んどアンモニアが分解処理されないためにオキシダントが発生するおそれがない脱色殺菌モードでは、オゾン処理後の養殖水を活性炭槽26を通過させる必要がないので、バイパス流路28を設け、活性炭槽26を迂回させている。
【0044】
アンモニア分解モードで処理した養殖水を活性炭槽26を通過させる場合には、バイパス流路28に設けたバルブ29、30を閉止するとともに、活性炭槽26の1次側のバルブ31と2次側のバルブ32を開放する。また、脱色殺菌モードで処理した養殖水を活性炭槽26を迂回させる場合には、活性炭槽26の1次側のバルブ31と2次側のバルブ32を閉止するとともに、バイパス流路28に設けたバルブ29、30を開放する。これらバルブ29、30、31、32の開閉操作は、オゾン処理槽22作動モードに応じて、制御装置により制御される。
【0045】
オゾン処理ユニット15は以上の様に構成されており、常に、受水槽4から浄化ユニット5に流入する養殖水を生物処理ユニット14とオゾン処理ユニット15の両方に通過させているが、飼育水槽2内の養殖水のアンモニア濃度が所定濃度以下の場合には、オゾナイザ24からオゾン散気塔23に送られるオゾン供給量は、アンモニアの分解処理を行うことができない少量であり、オゾナイザ24の消費電力は少なく、エネルギーコストを少なくすることができる。
【0046】
受水槽6は、浄化ユニット5で浄化処理された養殖水を飼育水槽2に返送するため、常に一定量の養殖水を貯留する貯水升の役割を果たしている。また、受水槽6は浄化ユニット5よりも低い位置に設けているので、浄化ユニット5で浄化処理された養殖水を無動力で流し込むことができる。
【0047】
ポンプ7は制御部の制御を受けて作動し、受水槽6に貯留されている浄化ユニット5で浄化処理された養殖水を飼育水槽2に返送する。
【0048】
紫外線照射部(UVランプ)8は、生物処理ユニット14でアンモニアを分解処理した際に、養殖水中に残留する細菌に紫外線を照射して殺菌し、養殖水を最終的に浄化する。この際、オゾン処理部15で継続的に養殖水の脱色を行っているので、紫外線が養殖水中を透過し易いので、養殖水中に残留する細菌を効果的に殺菌することができる。
【0049】
酸素溶解器9は、脱気槽19で溶解しているCO2が除去されたため、酸素溶解量が増加している養殖水に酸素を供給し、酸素濃度が高くなった養殖水を飼育水槽2に返送する。
【0050】
UF膜濾過装置10は、補給する海水に含まれているおそれがある細菌、ウイルスを除去するためのフィルタ(限外濾過膜)を備えており、新鮮な海水を受水槽5に補給する管路の途中に設けられているので、補給する海水に含まれている細菌、ウイルスを除去して安全な海水を補給することができるため、オゾン処理ユニット15での細菌、ウイルスに対する減殺効果と併せて、養殖する魚介類を魚病から守ることができる。
【0051】
以上のように構成された閉鎖循環型陸上養殖システム1は、アンモニア処理ユニット15が「脱色殺菌モード」と「アンモニア分解モード」の二つの動作モードを有しているので、常にアンモニアの分解処理を行っている生物処理ユニット14のみでは十分に養殖水中のアンモニアを分解処理することができない場合には、オゾン処理ユニット15の動作を「アンモニア分解モード」に切り替えて、生物処理ユニット14の処理能力を超える分のアンモニアの分解処理を行わせることができる。そのため、生物処理ユニット14のアンモニア分解処理能力をアンモニア急増時に対処可能な規模に設ける必要がないので、生物処理槽22を小型化して閉鎖循環型陸上養殖システム1をコンパクトに設けることができるとともに、建設コストを削減することができる。
【0052】
また、飼育水槽2内の養殖水のアンモニア濃度が所定濃度以下であって、生物処理ユニット14のみで十分に養殖水中のアンモニアを分解処理することができる場合には、オゾン処理ユニット15の動作を「脱色殺菌モード」に切り替え、オゾンの供給量を削減して養殖水中の細菌、ウイルスの減殺と脱色のみを行わせるので、オゾナイザ24でオゾンを発生させるために必要な電力消費を削減して運用コストを抑制することができる。
【0053】
これらに加え、飼育水槽2、受水槽4、浄化ユニット5、受水槽6を、高低差を設けて上部から下部に向かって構成しているので、浄化ユニット5内で生物処理槽18及びオゾン処理槽22へ養殖水を供給するポンプ17、21を除き、飼育水槽2内の養殖水を動力を使用することなく受水槽6まで流すことができるので、養殖水が閉鎖循環型陸上養殖システム1内を循環するための動力を大きく削減することができる。
【0054】
以下に、上記のように構成された閉鎖循環型陸上養殖システム1の動作及び制御方法を併せて説明する。
先ず、飼育水槽2内に貯留されている養殖水、又は養殖水を固液分離器3で固液分離した後の養殖水(濾過水)のアンモニア濃度をアンモニア計で測定する。アンモニア計の測定値は、制御部へ送られ、制御部の自動分析装置でモニタリングする。
【0055】
固液分離器3で固液分離された後に受水槽4に流れ込んだ養殖水は、受水槽4から浄化ユニット5内に流入する。浄化ユニット5内に流入した養殖水は、浄化ユニット5内に並列で設けられた生物処理ユニット14とオゾン処理ユニット15に分岐して流れる。
導かれる。
【0056】
この時、生物処理ユニット14では硝化菌等により養殖水中のアンモニアの分解処理が行われるが、オゾン処理ユニット15では、飼育水槽2内の養殖水のアンモニア濃度が所定濃度以下の場合には、オゾナイザ24から脱色殺菌モードで散気塔23にオゾンが供給され、アンモニアを分解しない弱いオゾンによって養殖水の脱色と殺菌が継続して行われる。
【0057】
この時、オゾン処理部15のオゾン処理槽22では、アンモニアの分解処理を行っていないため、オキシダントが発生するおそれがないので、制御部は、オゾン処理槽22内の養殖水の流れを制御するバルブ29、30、31、32の開閉を操作し、養殖水が活性炭槽26をバイパスして流れるようにしている。
【0058】
飼育水槽2内の養殖水のアンモニア濃度が所定濃度以下に安定している場合には、浄化ユニット5ではこの動作状況が継続し、養殖水中のアンモニアの分解処理は生物処理ユニット14で行われ、オゾン処理ユニット15では、継続的に養殖水の脱色と殺菌が行われる。この時、オゾンナイザ24で発生させるオゾンの量は、オゾンによってアンモニアの分解処理を行う場合に比較すると極めて少量で済むので、オゾンナイザ24でオゾンを発生させるためのエネルギーコストを大幅に削減することができる。
【0059】
給餌後や、養殖する魚量の増加により飼育水槽2内の養殖水のアンモニア量が急増し、養殖水のアンモニア濃度が所定濃度を超えた場合には、制御部は、オゾナイザ24の動作をオゾン処理モードに切り替え、散気塔24に供給するオゾン量を養殖水中のアンモニアの分解処理が可能な量に増量する。
【0060】
この結果、散気塔23では養殖水中のアンモニアの分解処理が行われるため、アンモニアの分解処理に伴って臭素酸等の魚介類にとって有害なオキシダントが多量に発生する可能性があるので、ORP計25によってオゾン処理後の養殖水のORP値を測定し、ORP値が所定の値、例えば700mVを超える場合には、有害なオキシダントが多量に発生していると判断して、オゾナイザ24の作動を停止するようにしている。
【0061】
また、制御部は、オゾン処理槽22内の養殖水の流れを制御するバルブ29、30、31、32の開閉を操作し、オゾン処理後の養殖水が活性炭槽26を通過するようにして、オゾン処理により発生した少量のオキシダントを除去するようにしている。
【0062】
オゾン処理ユニット15がアンモニア分解モードで動作すると、生物処理ユニット14とオゾン処理ユニット15を並列に設けて構成した浄化ユニット5のアンモニア分解能力は、生物処理ユニット14のアンモニア処理能力とオゾン処理ユニット15のアンモニア処理力の合計となるので、飼育槽2内の養殖水を循環させて処理する間に、養殖水のアンモニア濃度を漸減させ、最終的には所定濃度以下にすることができる。
【0063】
飼育槽2内の養殖水のアンモニア濃度が所定濃度以下になると、制御部は、オゾン処理ユニット15の動作を脱色殺菌モードに切り替えるので、オゾン処理ユニット15では養殖水の脱色、殺菌を継続して行い、養殖水中のアンモニアの分解処理は、生物処理ユニット14が行うことになる。
【0064】
本発明の閉鎖循環型陸上養殖システムでは、以上説明した動作、制御を継続的に行うため、飼育水槽2内の養殖水のアンモニア濃度を所定濃度以下に維持するとともに、養殖水中の細菌、ウイルスの殺菌と養殖水の脱色を継続的に行って、養殖水を浄化することができる。
【0065】
なお、オゾン処理ユニット15のオゾン処理モードでの動作は、上述した飼育水槽2内の養殖水のアンモニア量の急増に対応する場合だけではなく、生物処理槽18の立ち上がり時や生物処理槽18の洗浄後において、生物処理ユニット14のアンモニア処理能力が不足している時に、生物処理ユニット14のアンモニア処理能力が増加、回復するのを待つ場合にも行うことができる。
【0066】
また、上記の閉鎖循環型陸上養殖システム1の動作及び制御方法の説明では、制御部がシステムを自動制御する場合について説明しているが、飼育水槽内の養殖水のアンモニア濃度変化は緩やかであるので、人間が定期的にアンモニア計の測定値を読み、アンモニア計が測定したアンモニア濃度に従って、オゾン処理ユニット22のオゾナイザ24やバルブ29、30、31、32を操作しても、閉鎖循環型陸上養殖システム1を操作することができる。さらに、上記の説明ではオゾン処理ユニットを用いる場合について説明したが、オゾン処理ユニットに代えて電解次亜処理ユニットを適用してもよい。
【0067】
以上のとおり、本発明における閉鎖循環型陸上養殖システム及びその制御方法では、従来から実施されている生物処理方法による閉鎖循環型陸上養殖システムを基礎として、養殖水中のアンモニア量の急増等により、生物処理ユニットのアンモニア処理能力が不足する場合には、オゾン処理ユニットで生物処理ユニットの処理能力を超える分のアンモニアの分解処理を行わせるようにしているため、生物処理ユニットのアンモニア処理能力をアンモニア急増時に対処可能な規模とする必要がないので、閉鎖循環型陸上養殖システムをシンプルかつ小型に構成することができるとともに、建設コストを削減することができる。
【0068】
また、通常は、養殖水を循環させながら、生物処理ユニットで養殖水中のアンモニアの分解処理を行い、オゾン処理ユニットでは少量のオゾンにより継続的に養殖水の殺菌と脱色を行うので、オゾン発生コストを削減して閉鎖循環型陸上養殖システムの運用コストを抑制することができるとともに、養殖水を継続的に浄化することができる
【符号の説明】
【0069】
1 閉鎖循環型陸上養殖システム
2 飼育水槽
3 固液分離器
4、6 受水槽
5 浄化ユニット
14 生物処理ユニット
15 オゾン処理ユニット
18 生物処理槽
19 脱気槽
22 オゾン処理槽
23 散気塔
24 オゾナイザ
25 ORP計
26 活性炭槽
図1
図2