(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の第1実施形態から第3実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、各実施形態の説明において、同一の構成要素に関しては同一の符号を付し、重複した説明は省略するものとする。
太陽電池アレイ群1は、
図1に示すように、太陽電池アレイ10を複数列に配置したものである。太陽電池アレイ群1は、複数の太陽電池アレイ10と、各太陽電池アレイ10をそれぞれ支持する複数の架台20と、後面防風体30または中間防風体40或いは側面防風体50,50と、を備えている。
第1実施形態は、防風体として樹木を配置した場合は容易に移動させることは困難であるが、太陽電池アレイの後面側および/または側面側に板状部材や遮蔽膜で形成された防風体を設置し、其々の防風体を係止具やワイヤで定着させる構造であり、着脱可能であることを特徴とする(
図1〜
図3)。
第2実施形態では、前後に隣接する太陽電池アレイの間に防風体を設置し、その防風体は、固定構造、または上端が係止具によって太陽電池アレイに接続され、かつ防風体の下端が係合器具によって任意の傾斜角度にて地盤に固定、または防風体の下端を非固定状態とする構造である(
図4〜
図7)。
第3実施形態は、太陽電池アレイの後面側に防風体を設置し、その防風体が連結部材(斜材)を介して太陽電池アレイを支持する架台に接続されている構造である。その防風体は、固定構造、または折れ曲げ可能な可動構造である(
図8〜
図10)。
各実施形態の前後左右とは、太陽電池アレイ群1の構成を分かり易く説明するために設定したものであり、太陽電池アレイ群1の構造を特定するものではない。
また、各実施形態では、前部が南側に配置され、後部が北側に配置されているが、太陽電池アレイ群1の向きは限定されるものではない。
【0011】
[第1実施形態]
第1実施形態の太陽電池アレイ群1は、四行×七列に並べられた二十八個の太陽電池アレイ10にからなるものである。
なお、以下の説明では、左右方向に間隔を空けて横一列に並べられた四つの太陽電池アレイ群10を「太陽電池アレイ列」と称する場合がある。第1実施形態の太陽電池アレイ群1では、前後方向に間隔を空けて七列の太陽電池アレイ列10A〜10Gが並べられている。
前後の太陽電池アレイ10,10は間隔を空けて配置されている(
図2参照)。前後の太陽電池アレイ10,10の間隔は、前側の太陽電池アレイ10の影が後側の太陽電池アレイ10の上面に映らないように設定されている。
左右の太陽電池アレイ10,10の間隔は、前後の太陽電池アレイ10,10の間隔よりも小さく設定されている。なお、左右の太陽電池アレイ10,10を連続して配置してもよい。
太陽電池アレイ10は、複数の太陽電池パネル11を縦横に並べたものである。太陽電池パネル11は、太陽の光エネルギーを電気エネルギーに変換する公知の太陽電池モジュールである。
【0012】
架台20は、
図2に示すように、複数の太陽電池パネル11を下方側から支える複数の脚部21と、各脚部21に支持された傾斜部材22と、を有し、傾斜部材22の上面に太陽電池アレイ10が載置されている。
架台20の各脚部21の下端部は、地盤に設置された基礎部材23に接続されているため、各脚部21の引き抜き耐力が大きくなっている。
架台20の後側の脚部21の高さは、前側の脚部21の高さよりも大きく形成されている。
【0013】
傾斜部材22は、太陽電池アレイ10を支持するフレームである。傾斜部材22は、前後の脚部21,21に支持されており、前部よりも後部が高くなるように傾斜している。
傾斜部材22の上面には、太陽電池アレイ10が取り付けられている。したがって、太陽電池アレイ10は、傾斜部材22の上面と同様に傾斜している。すなわち、太陽電池アレイ10は、前部よりも後部が高くなるように傾斜している。
このように、太陽電池アレイ10は、太陽光の入射方向を考慮して、太陽電池アレイ10の上面が南側に向くように傾斜した状態で架台20に支持されている。
なお、太陽電池アレイ10の傾斜角度は限定されるものではなく、太陽光が太陽電池アレイ10の上面に対して効率良く照射されるように、太陽電池アレイ群1の設置場所に応じて適宜に設定される。
【0014】
太陽電池アレイ10の下面は、前部から後部に向かうに従って地上面Gから離れている。すなわち、太陽電池アレイ10の前部と地上面Gとの間隔よりも、太陽電池アレイ10の後部と地上面Gとの間隔が大きくなっている。したがって、後方から前方に向かう風が太陽電池アレイ10の下方に流入すると、太陽電池アレイ10の下面に風が当接し、太陽電池アレイ10に対して上向きの風荷重が作用する。
【0015】
後面防風体30は、後方から前方に向かう風を遮るものであり、
図1に示すように、太陽電池アレイ群1の後方側(後半部分)に位置する最後列(第七列)の太陽電池アレイ列10Gの後面側(後方)に配置されている。
第1実施形態の後面防風体30は、最後列の太陽電池アレイ列10Gの左端から右端まで配置されることが好ましいが、全ての太陽電池アレイ列の最後部位置に設ける必要はなく、両端部を含めて部分的に設けてもよい。よって、太陽電池アレイ群1の最後面の全てに後面防風体30を設けた場合は、最後列の四つの太陽電池アレイ10全部に対して後面防風体30が配置されることになる。
後面防風体30は、左右方向に連続して並べられた複数の樹木31によって形成されている。なお、隣り合う樹木31,31の間に間隔を設けてもよい。
図2に示すように、後面防風体30は、太陽電池アレイ10の後端部とほぼ同じ高さに形成されている。
なお、太陽電池アレイ10には、前方から太陽光が入射されるため、後面防風体30が最後列の太陽電池アレイ10の後端部よりも高くても、最後列の太陽電池アレイ10の上面に後面防風体30の影が映ることはない。
そして、後方から前方に向かう風は、後面防風体30によって遮られるため、最後列の太陽電池アレイ10の下方に流入する風を低減することができる。
【0016】
中間防風体40は、
図1に示すように、太陽電池アレイ群1の後方側(後半部分)に位置する最後列(第七列)の太陽電池アレイ列10Gと、第六列(後ろから二列目)の太陽電池アレイ列10Fとの間の空間部分に配置されている。中間防風体40は、最後列の太陽電池アレイ10の下方を後方から前方に向けて通過した風を遮るものであり、地上面Gに立設された壁体である。
第1実施形態の中間防風体40は、第六列の太陽電池アレイ列10Fの左端から右端まで連続して配置されている。すなわち、第六列の四つの太陽電池アレイ10全部に対して中間防風体40が配置されている。なお、左右の太陽電池アレイ10,10の間の通路部分にも中間防風体40が配置されている。
図2に示すように、前後に隣り合う太陽電池アレイ10,10の間の中間位置に中間防風体40を配置すると、後方から中間防風体40の後面に当たった風を上方に逃がし易くなるとともに、中間防風体40よりも前方側に配置されている太陽電池アレイ10に作用する風荷重を抑えることができる。
そして、最後列の太陽電池アレイ10の下方を通過した風が中間防風体40によって遮られるため、最後列の太陽電池アレイ10よりも前方の太陽電池アレイ10の下方に流入する風を低減することができる。
中間防風体40は、前側の太陽電池アレイ10の後端部と、後側の太陽電池アレイ10の前端部とを結ぶ仮想線Lよりも低くなるように形成されている。これにより、前方から太陽光が入射したときに、中間防風体40の影が後側の太陽電池アレイ10の上面に映るのを防ぐことができる。
【0017】
二つの側面防風体50,50は、
図1に示すように、左右方向に吹く風を遮るものであり、少なくとも太陽電池アレイ群1の後方側(後半部分)に位置する太陽電池アレイ10の側面側(側方)に配置されている。第1実施形態では、太陽電池アレイ群1の前方側(前半部分)に位置する太陽電池アレイ10の側面側(側方)にも側面防風体50が配置されている。
右側の側面防風体50は、太陽電池アレイ群1の右端(各太陽電池アレイ列10A〜10Gの右端)に位置する太陽電池アレイ10の右側に配置されている。
左側の側面防風体50は、太陽電池アレイ群1の左端(各太陽電池アレイ列10A〜10Gの左端)に位置する太陽電池アレイ10の左側に配置されている。
なお、前後の太陽電池アレイ10,10の間の通路部分にも側面防風体50が配置されている。
側面防風体50は、
図3に示すように、各架台20の脚部21に支持された複数の支柱51と、各支柱51に張り渡された四本のワイヤ52と、各ワイヤ52にスライド自在に取り付けられた上下二枚の遮蔽膜53,53と、を備えている。
支柱51は、架台20の脚部21の側面にブラケット(図示せず)を介して支持されており、地上面Gに対して垂直に立設されている。支柱51は、太陽電池アレイ10の後部の高さと略同じ高さに形成されている。
各支柱51には、四本のワイヤ52が前後方向に架け渡されている。各支柱51の上端部に一本のワイヤ52が架け渡され、各支柱51の高さ方向の中間部には、二本のワイヤ52,52が上下方向に間隔を空けて架け渡されている。各支柱51の下端部には、一本のワイヤ52が架け渡されている。
【0018】
遮蔽膜53は、前後方向に延びている布である。遮蔽膜53は、
図1に示すように、最前列(第一列)の太陽電池アレイ10の側面側から最後列(第七列)の太陽電池アレイ10の側面側に亘って配置されている。上下に配置された二枚の遮蔽膜53,53によって、太陽電池アレイ群1の側面が覆われている。なお、遮蔽膜53は、
図3に示すように、最後列の太陽電池アレイ10の後側の支柱51よりも後方に延びている。
上側の上下一組のワイヤ52,52には、上側の遮蔽膜53の上縁部および下縁部がリング状の連結金具54を介して連結されている。また、下側の上下一組のワイヤ52,52には、下側の遮蔽膜53の上縁部および下縁部がリング状の連結金具54を介して連結されている。各連結金具54は、ワイヤ52対してスライド自在である。
したがって、上下の遮蔽膜53,53は、各ワイヤ52に対して前後方向にスライド自在であり、両遮蔽膜53,53は前後方向に開閉自在である。
中間部に配置された上下の連結金具54,54は一体に形成されている。したがって、両遮蔽膜53,53は前後方向に連動して開閉する。
また、両遮蔽膜53,53を固定する場合には、下端部の各連結金具54をアンカー部材54aによって地盤に固定する。
【0019】
以上のような太陽電池アレイ群1によれば、
図1に示すように、太陽電池アレイ10の列単位に防風体30,40,50を配置しているため、各太陽電池アレイ10を効率良く防風することができる。
なお、各防風体30,40,50は、太陽電池アレイ群1の設置場所の風環境を考慮し、太陽電池アレイ10に対して風上に成り易い位置に配置することができるため、太陽電池アレイ10に作用する風荷重を効果的に低減することができる。
また、最後列の太陽電池アレイ10と、最後列に隣接する太陽電池アレイ10との間の空間部分に中間防風体40を配置しているため、太陽電池アレイ群1の中央領域Aに配置された各太陽電池アレイ10の風荷重を効果的に低減することができる。
したがって、第1実施形態の太陽電池アレイ群1では、各太陽電池アレイ10にそれぞれ防風体を設ける場合に比べて、太陽電池アレイ群1の設置コストを低減することができる。
【0020】
また、第1実施形態の太陽電池アレイ群1では、側面防風体50が前後方向に開閉自在であるため、側面防風体50を前後方向の一方に寄せて、太陽電池アレイ群1の側面を開放した状態で、太陽電池アレイ群1の中央領域Aの太陽電池アレイ10の保守点検を行うことができるため、作業効率を高めることができる。
【0021】
以上、本発明の第1実施形態について説明したが、本発明は前記第1実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更が可能である。
【0022】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
第1実施形態では、
図1に示すように、後面防風体30を樹木31で構成し、中間防風体40を板状部材で構成し、側面防風体50を膜状部材で構成しているが、防風体30,40,50の構成は限定されるものではなく、板状部材、膜状部材、ネットおよび有孔部材のいずれか一つまたは二つの組み合わせによって構成することができる。
例えば、第2実施形態の中間防風体40では、
図4に示すように、左右方向に並設した複数の板状部材41によって構成されている。
また、第1実施形態では、
図1に示すように、後面防風体30、中間防風体40および左右の側面防風体50,50が設けられているが、風環境を考慮して、後面防風体30、中間防風体40および側面防風体50のいずれか一つまたは組み合わせを設けてもよい。
また、後面防風体30、中間防風体40および側面防風体50は、地上面Gに対して着脱自在または開閉自在であることが望ましい。
なお、地上面および/または架台20に係合器具を設けるとともに、防風体30,40,50に係止具を設け、係合器具と係止具とを着脱自在に構成した場合には、防風体30,40,50を簡単に着脱することができる。例えば、フック状の金具である係止器具を防風体30,40,50に設け、地上面および/または架台20に設けられた係止具の連結穴に係止器具を引っ掛けるように構成してもよい。
【0023】
また、第1実施形態では、最後列(第七列)の太陽電池アレイ列10Gと、第六列の太陽電池アレイ列10Fとの間の空間部分のみに中間防風体40が配置されているが、
図5に示すように、複数の中間防風体40を設けてもよい。
図5に示す第2実施形態の太陽電池アレイ群1では、第五列の太陽電池アレイ列10Eと、第四列の太陽電池アレイ列10Dとの間の空間部分および第三列の太陽電池アレイ列10Cと、第二列の太陽電池アレイ列10Bとの間の空間部分にも中間防風体40を配置している。
すなわち、中間防風体40を備えている太陽電池アレイ10の列の間に、中間防風体40を備えていない太陽電池アレイ10を一列または複数列配置してもよい。この構成では、太陽電池アレイ群1の中央領域Aに配置された太陽電池アレイ10の風荷重をより効果的に低減することができる。
【0024】
図6(a)は中間防風体40の変形例を示した図で、中間防風体40の上端部は、係止具43に接合され、その係止具43は架台20を構成する傾斜部材22の後端部に連結されている。また、中間防風体40は、下端部に設けられたアンカー部材42によって地盤に固定される。
なお、
図6(b)に示すように、傾斜部材22の後端部に形成された突起部22cおよび中間防風体40の上端部に形成された突起部40cが係止具43に挿入されることで、傾斜部材22および中間防風体40と係止具43とが連結されている(
図6(c)参照)。
また、
図7(a)に示すように、中間防風体40を上下二枚の板状部材40a,40bによって構成し、二枚の板状部材40a,40bを上下方向にスライドさせることで、中間防風体40が上下方向に伸縮するように構成してもよい。この構成では、中間防風体40を架台20に対して傾動させるとともに、中間防風体40を上下方向に伸縮させることで、中間防風体40の角度を調整することができる。
さらに、
図7(b)に示すように、中間防風体40を上下方向に伸縮自在な膜状部材によって構成し、中間防風体40の下端部に設けたアンカー部材42(係合器具)を地盤に固定してもよい。
第1実施形態では、太陽電池アレイ10に取り付ける中間防風体40について記載したが、太陽電池アレイ10と後面防風体との接続構造、または後面防風体と地盤との定着部構造にも、同様に適用することができる。
【0025】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
本発明の第3実施形態では、
図8(a)に示すように、太陽電池アレイ10と中間防風体40とが複数の連結部材60,60で連結されている。
連結部材60は、前後方向に延びている部材であり、中間防風体40側(後側)から太陽電池アレイ10側(前側)に向かうに従って下がるように傾斜している(
図8(b)参照)。連結部材60の前端部は、架台20の後側の脚部21の下端部に接合されるとともに、基礎部材23の上面に接合されている。また、連結部材60の後端部は、中間防風体40の前面の上縁部において、左右の端部に接合されている。
太陽電池アレイ10の後方側に設置された中間防風体40に後方から風が当たると、
図8(b)に示すように、中間防風体40に接続された連結部材60を介して、太陽電池アレイ10の架台20を構成する基礎部材23に下向きの押圧力F2が作用する。また、その脚部21には、連結部材60を介して下向きの力の反作用として上向きに引抜き力F1が作用するが、太陽電池アレイ10の鉛直荷重と一部が相殺されることで、脚部21に生じる軸方向力が低減されるために、太陽電池アレイ10を支持する架台20の荷重負担性能について、余裕度を高めることができる。このように、中間防風体40が連結部材60(斜材)によって脚部21に接続されていることで、中間防風体40に作用した風力を合理的に下向きの力として脚部21に伝達させることができる。
また、後方から前方に向かう風が太陽電池アレイ10の下方に流入すると、
図8(b)に示すように、太陽電池アレイ10の下面に風が当接し、太陽電池アレイ10に対して上向きの風荷重が作用する。この風荷重によって後側の脚部21に引抜き力F1が生じる。そして、引抜き力F1は基礎部材23に対して引張力として作用する。
後方から前方に向かう風が中間防風体40の後面に当たると、以下の式1の風荷重が中間防風体40に対して前方に向けて作用する。この風荷重によって連結用傾斜部材60に押圧力F2が生じる。そして、押圧力F2は基礎部材23に対して下向きの力として作用する。
W
D=q
H・C
D・G
D・A=3.5q
H・A (式1)
W
D:風荷重(N) q
H:設計速度圧(N/m
2) C
D:風力係数(1.2)
G
D:ガスト影響係数(約2.9) A:フェンスの見付面積(m
2)
なお、式1において、中間防風体の高さは5m以下であるとともに、高さ5mの設計速度圧に設定されている。
【0026】
このように、太陽電池アレイ10と中間防風体40とを連結部材60によって連結した構成では、中間防風体40に作用した風荷重が、連結部材60を通じて、下向きの押圧力として基礎部材23に作用する。これにより、架台20の後側の脚部21から基礎部材23に作用している引張力を効果的に低減させることができる。
なお、第3実施形態では、太陽電池アレイ10と中間防風体40とを連結する連結部材60について記載したが、太陽電池アレイ10と後面防風体とを同様な連結部材によって連結することもできる。
【0027】
図9に示すように、前後の太陽電池アレイ10,10の間に、折り曲げ可能な防風体70を設けてもよい。
防風体70は、前後の架台20,20の間の地上面Gに敷設されている。防風体70は、前後方向に並べられた前板71および後板72を備えている。
後板72は、前後の架台20,20の間の地上面Gにおいて、後側の領域に配置された四角形の板である。後板72の後縁部は、後側の架台20の前側の両基礎部材23,23に接合されている。
前板71は、前後の架台20,20の間の地上面Gにおいて、前側の領域に配置された四角形の板である。前板71の後縁部と後板72の前縁部とは連続している。
前板71の後縁部と、後板72の前縁部とは、複数の蝶板73によって連結されている。各蝶板73は、前板71および後板72の上面に取り付けられている。これにより、前板71は、
図10(a)に示すように、各蝶板73を回転軸として、後板72に対して上向きに傾動可能である。
【0028】
前板71の左右の両側には、
図9に示すように、左右の連結部材80,80が配置されている。両連結部材80,80は、前板71の左右の側面に沿って延びているC形鋼である。前板71が地上面Gに敷かれている状態では、連結部材80は溝80aが下向きに開口した状態で地面に置かれている。
連結部材80の前端部と、前板71の側面の前端部とは、回転軸74を介して、回転自在に連結されている。これにより、連結部材80は、前板71の側面の前端部に対して、左右方向の軸回りに回転自在である。
【0029】
図10(a)に示すように、前板71を後板72に対して上向きに傾動させ、前板71を立ち上げると、前板71の左右の両側に左右の連結部材80,80が垂れ下がった状態となる。さらに、
図10(b)に示すように、連結部材80の下端部を前方に移動させ、連結部材80の溝80aを後側の脚部21と嵌め合わせる。
なお、連結部材80の下端部は、連結部材80の溝を後側の脚部21に嵌め合わせたときに、連結部材80の下端縁部が基礎部材23の上面に当接するように、連結部材80の軸方向に対して斜めに加工されている。
そして、
図10(a)に示すように、連結部材80の下端部を後側の脚部21の下端部に接合させることで、地上面Gに立ち上げられた前板71を左右の連結部材80,80によって支持することができる。
これにより、前後の太陽電池アレイ10,10の間に前板71が立設され、前板71によって、後方から前方に向かう風が遮られるため、太陽電池アレイ10の下方側に流入する風を低減することができる。
太陽電池アレイ10の保守点検を行うときには、
図9に示すように、前板71を後板72に対して下向きに傾動させ、前板71を地上面Gに敷くことで、作業者は前後の太陽電池アレイ10,10の間のスペースを広く利用することができる。さらに、作業者は、防風体70の上面に載って作業することもできる。
【0030】
第1実施形態の太陽電池アレイ群1では、
図1に示すように、各列に四つの太陽電池アレイ10が並べられているが、その数は限定されるものではない。また、太陽電池アレイ群1では、七列の太陽電池アレイ列10A〜10Gが配置されているが、同様に、太陽電池アレイ10の列の数は限定されるものではない。例えば、一列に一つの太陽電池アレイ10を配置し、その太陽電池アレイ10の後面側および/または側面側に防風体30,40,50を配置してもよい。
また、第1実施形態では、後面防風体30、中間防風体40または側面防風体50は、新設の太陽電池アレイ群に設置させる場合について記載したが、既存の太陽電池アレイ群についても、既存の太陽電池アレイの架台に、係止具、または係合器具、或いは支柱を設けることで、同様に設置することができる。
【0031】
[性能確認実験]
次に、本発明の効果を確認するために実施した太陽電池アレイ群に作用する風荷重の低減対策効果に関する実験概要とその結果について説明する。
実験条件として、太陽電池アレイ群に防風体を設けない場合と、太陽電池アレイ群に防風体を設けた場合について風圧実験を行い、其々の実験ケースごとに、太陽電池アレイの風力係数を比較した。
実験試験体の太陽電池アレイ群1A〜1Fは、
図11(a)〜(f)に示すように、十五個の太陽電池アレイ10を三行×五列に並べられたものである。実験では、実際の太陽電池アレイ群の1/40の縮尺のモデルを作成し、このモデルに後方から風を吹き付けた。そして、各太陽電池アレイ列10A〜10Eの左右方向の中央に配置された太陽電池アレイ10の平均風力係数およびピーク風力係数を算出した。
なお、本明細書で対象とする風力係数は、太陽電池アレイの太陽電池パネル面に作用する風力の度合いを表す係数であり、太陽電池パネル面に加わる単位面積当たりの風圧力の測定値を、空気密度と風速から求まるアレイ面の平均高さにおける平均速度圧で除して算出した。
【0032】
実験試験体の太陽電池アレイ10は、前後方向の長さL1が94mm(実寸4m)で、左右方向の幅L2が225mm(実寸9m)である。太陽電池アレイ10は、前部よりも後部が高くなるように傾斜しており、その傾斜角度は20度に設定した。
また、前後に隣り合う太陽電池アレイ10,10の間隔L3は、全て87.5mm(実寸3.5m)とした。
また、太陽電池アレイ群Ba,1A〜1Eの前後方向の長さL4は819.8mm(実寸32.8m)とし、太陽電池アレイ群Ba,1A〜1Eの左右方向の幅L5は675mm(実寸27m)とした。
図11(a)の太陽電池アレイ群Baは、防風体が配置されていない構成である。
図11(a)の太陽電池アレイ群Baは、各太陽電池アレイ群Ba,1A〜1Eの風力係数を比較するときの基準となるものである。
【0033】
図11(b)の太陽電池アレイ群1Aは、最後列(第五列)の太陽電池アレイ列10Eと第四列の太陽電池アレイ列10Dとの間の空間部分に中間防風体40を配置した構成である。
図11(b)の太陽電池アレイ群1Aは、太陽電池アレイ列10D,10Eの左端から右端まで連続して板状の中間防風体40を配置した場合である。
中間防風体40は、前後に隣り合う太陽電池アレイ10,10の間隔L3の中間位置に配置した。また、中間防風体40の高さは50mm(実寸2m)とした。
図11(c)の太陽電池アレイ群1Bは、左右方向に間隔を空けて並設した複数の板状部材によって中間防風体40を配置している点が、
図11(b)の太陽電池アレイ群1Aと異なっている。
中間防風体40を構成する板状部材の高さは50mm(実寸2m)とし、左右方向の幅は56.25mm(実寸2.25m)とした。さらに、左右に隣り合う板状部材の間隔は21mm(実寸0.84m)とした。
【0034】
図11(d)の太陽電池アレイ群1Cは、最後列(第五列)の太陽電池アレイ列10Eの後面側に後面防風体30を配置した構成である。実験試験体では、板状のスポンジ部材を最後列の太陽電池アレイ列10Eの左端から右端まで連続して配置した。後面防風体30は、複数の樹木を左右方向に連続して並べた構成を模倣したものである。
後面防風体30の高さは67.1mm(実寸2.7m)とし、厚さは15mm(実寸0.6m)とした。
図11(e)の太陽電池アレイ群1Dは、左右方向に間隔を空けて並設した複数のスポンジ部材によって後面防風体30を配置した点が、
図11(d)の太陽電池アレイ群1Cと異なっている。各スポンジ部材は樹木を模倣したものである。
後面防風体30を構成するスポンジ部材の高さは50mm(実寸2m)とし、左右方向の幅は56.25mm(実寸2.25m)とした。さらに、左右に隣り合うスポンジ部材の間隔は21mm(実寸0.84m)とした。
【0035】
図11(f)の太陽電池アレイ群1Eは、最後列(第五列)の太陽電池アレイ列10Eと第四列の太陽電池アレイ列10Dとの間の空間部分に加えて、第三列の太陽電池アレイ列10Cと第二列の太陽電池アレイ列10Bとの間の空間部分にも中間防風体40を配置した点が、
図11(b)の太陽電池アレイ群1Aと異なっている。
第三列の太陽電池アレイ列10Cと第二列の太陽電池アレイ列10Bとの間の空間部分に配置した中間防風体40の形状や配置は、最後列(第五列)の太陽電池アレイ列10Eと第四列の太陽電池アレイ列10Dとの間の空間部分に配置した中間防風体40と同じである。
【0036】
図12(a)は、各太陽電池アレイ群Ba,1A〜1Eに後方から風を吹き付けたときの各太陽電池アレイ列10A〜10Eの左右方向の中央に配置された各太陽電池アレイ10の平均風力係数を示した表である。
図12(b)は、防風体が設けられていない太陽電池アレイ群Ba(
図11(a)参照)の最後列の太陽電池アレイ列10Eの太陽電池アレイ10の平均風力係数を基準として、各太陽電池アレイ群1A〜1Eの平均風力係数比を示した表である。
図12(c)は、各太陽電池アレイ群Ba,1A〜1Eの平均風力係数比のグラフである。
【0037】
図13(a)は、各太陽電池アレイ群Ba,1A〜1Eに後方から風を吹き付けたときの各太陽電池アレイ列10A〜10Eの左右方向の中央に配置された各太陽電池アレイ10のピーク風力係数を示した表である。
図13(b)は、防風体が設けられていない太陽電池アレイ群Ba(
図11(a)参照)の最後列の太陽電池アレイ列10Eの太陽電池アレイ10のピーク風力係数を基準として、各太陽電池アレイ群1A〜1Eのピーク風力係数比を示した表である。
図13(c)は、各太陽電池アレイ群Ba,1A〜1Eのピーク風力係数比のグラフである。
【0038】
図12および
図13の各表および各グラフに示すように、防風体30,40を設けた各太陽電池アレイ群1A〜1Eの太陽電池アレイ10の風力係数は、防風体を設けていない太陽電池アレイ群Baの太陽電池アレイ10の風力係数よりも小さく、防風体30,40の前方に配置された太陽電池アレイ10には加わる風荷重は低減されることが確認できた。上記のような実験結果によって、本発明の太陽電池アレイ群では、各太陽電池アレイを効率良く防風できることが確認できた。
【0039】
なお、本発明の太陽電池アレイ群は、地上面に設置する場合の実施形態について記載したが、太陽電池アレイ群が建物の屋上、或いは湖や海に設置される構台上に設置される場合であっても、本発明に係る防風体は設置可能であり、本発明の変形例と考える。