(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の成形加工の複数の工程に使用される第1の金型群と、第2の成形加工の複数の工程に使用される第2の金型群とが設けられ、前記第1の金型群及び前記第2の金型群に荷重を加えることが可能なプレス装置であって、
プレス方向に見て、前記第1の金型群と前記第2の金型群とがプレス中心を挟んで互いに逆方に配置され、
更に、前記第1の金型群と前記第2の金型群とに加えられる荷重が許容範囲内であるか否かを判定する荷重判定部を備え、
前記荷重判定部は、プレス方向に直交する二軸方向における荷重中心点と総合荷重とに基づいて前記荷重が許容範囲内であるか否かを判定するプレス装置。
第1の成形加工の複数の工程に使用される第1の金型群と、第2の成形加工の複数の工程に使用される第2の金型群とが設けられ、前記第1の金型群及び前記第2の金型群に荷重を加えることが可能なプレス装置であって、
前記第1の成形加工のn番目(nは自然数)の工程に使用される前記第1の金型群の第1金型と、前記第2の成形加工のn番目の工程に使用される前記第2の金型群の第1金型とが、プレス方向に見てプレス中心を挟んで互いに逆方に配置され、
前記第1の成形加工のn+1番目の工程に使用される前記第1の金型群の第2金型と、前記第2の成形加工のn+1番目の工程に使用される前記第2の金型群の第2金型とが、プレス方向に見て前記プレス中心を挟んで互いに逆方に配置され、
更に、前記第1の金型群と前記第2の金型群とに加えられる荷重が許容範囲内であるか否かを判定する荷重判定部を備え、
前記荷重判定部は、プレス方向に直交する二軸方向における荷重中心点と総合荷重とに基づいて前記荷重が許容範囲内であるか否かを判定するプレス装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の各実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係るプレス装置の構成図である。
図2は、実施形態のプレス装置に記憶される許容荷重値データを説明する図である。
【0014】
本実施形態のプレス装置1は、鍛造成形を行う鍛造プレス装置であり、ベッド23、複数のアップライト22、クラウン21、ボルスタ24、スライド18、駆動部100、複数の荷重計30、制御盤40及びマニピュレータ(搬送部の一例に相当)51、52を備える。制御盤40は、許容荷重値データ記憶部41と、警報出力を行う警報部42と、駆動部100とマニピュレータ51、52を制御する制御部43とを備える。制御部43は、本発明に係る荷重判定部としても機能する。
【0015】
ベッド23、複数のアップライト22及びクラウン21は、プレス装置1のフレーム部を構成する。ベッド23、複数のアップライト22及びクラウン21は、内部にタイロッド25aが通され、タイロッドナット25bにより締め付けられることで、互いに締結される。前後左右に配置された4つのアップライト22それぞれには4つのガイド19(
図2を参照)が設けられている。スライド18は昇降方向に進退可能に4つのガイド19に支持される。
【0016】
スライド18の下部には、複数の金型20A、20Bの各上部分Uが固定される。ボルスタ24は、複数の金型20A、20Bの各下部分Dが固定される部品であり、ベッド23に支持される。金型20A、20Bの上部分Uと下部分Dとは対向するように配置され、スライド18が下降したときに互いに近接する。金型20A、20Bに被成形物が投入されている場合、スライド18が下降することで被成形物が金型20A、20Bの型空間の中で加圧され、被成形物が鍛造成形される。
【0017】
駆動部100は、モータ11、伝動軸12、減速機13、エキセン軸14及びコネクティングロッド15を備える。駆動部100は、クラウン21などのフレーム部に支持される。モータ11が駆動されると、モータ11の回転運動が伝動軸12、減速機13、エキセン軸14の順に伝達され、エキセン軸14の回転運動がコネクティングロッド15を介してスライド18の並進運動に変換される。これにより、スライド18が昇降方向に進退する。
【0018】
荷重計30は、
図2にも示すように、前方二本のアップライト22と後方二本のアップライト22との各々に設けられ、例えば各アップライト22の歪み量を計測して各アップライト22に加わった荷重を測定する。複数の荷重計30は各測定結果を制御部43へ出力する。
【0019】
マニピュレータ51、52は、ボルスタ24とスライド18とが離間した状態で、金型20A、20Bへの被成形物の投入、複数の金型20A、20B間の被成形物の搬送、及び金型20A、20Bからの被成形物の回収を行う。2つのマニピュレータ51、52は、それぞれプレス装置1の前方及び後方など異なる2方向から金型20A、20Bへ接近可能なように配置されている。
【0020】
許容荷重値データ記憶部41は、
図2のX方向の許容荷重値グラフ及びY方向の許容荷重値グラフに示されるように、荷重中心の2軸方向の各位置に対応する許容荷重値が表わされたデータを記憶する。
【0021】
図2のX方向の許容荷重値グラフは、荷重中心のX方向の位置と、プレス装置1が耐えうる許容荷重値との関係を表わす。
図2のY方向の許容荷重値グラフは、荷重中心のY方向の位置と、プレス装置1が耐えうる許容荷重値との関係を表わす。「荷重中心」は荷重の重心を意味する。一例として、スライド18とボルスタ24との間に荷重Fが加えられ、
図2に示すように、荷重Fの中心が任意の位置P
F(X
F、Y
F)であるとする。この場合、荷重Fが、X方向の位置X
Fに対応した許容荷重値F
thX(X
F)を超えてなく、かつ、Y方向の位置Y
Fに対応した許容荷重値F
thY(Y
F)を超えていなければ、荷重Fはプレス装置1の許容範囲内であることが示される。
【0022】
図2の2つのグラフに示されるように、許容荷重値は、荷重中心位置がプレス中心P
Cの近い範囲で高く、プレス中心P
Cから遠い範囲で低くなる。また、荷重の偏心に対する許容荷重値の低下割合はX方向よりもY方向が大きい。X方向は、エキセン軸14の軸方向であり、2本のコネクティングロッド15が並ぶ方向である。
【0023】
ここで、「プレス中心P
C」とは、スライド18の進退方向に直交する平面においてスライド18の中心位置を表わし、4本のアップライト22の各中心を結ぶ四辺形の中心に相当する。図中、「P
CX」はプレス中心P
CのX方向の位置を表わし、「P
CY」はプレス中心P
CのY方向の位置を表わす。
【0024】
なお、
図2の許容荷重値データの例では、X方向の許容荷重値がY方向の位置に依存せず、Y方向の許容荷重値がX方向の位置に依存しないデータを示した。しかし、許容荷重値データとしては、X方向及びY方向の二次元座標で許容荷重値が表わされるデータが採用されてもよい。
【0025】
<金型の配置構造>
図3と
図4は、第1の金型群と第2の金型群との配置例を示すもので、
図3(A)〜
図3(C)、
図4(A)〜
図4(C)にその第1例〜第6例の平面図を示す。本明細書では、上部分Uと下部分Dとを一組にした構成を1つの金型と数える。
【0026】
本実施形態のプレス装置1には、A製品の成形加工(第1の成形加工に相当)の複数の工程で使用される第1の金型群GAと、B製品の成形加工(第2の成形加工に相当)の複数の工程で使用される第2の金型群GBとが設けられる。A製品及びB製品としては、例えばベアリングの内輪と外輪など、大きさ及び形状が同等であり、同じ順番の成形工程で同等の荷重が発生し、必要な製造個数が同数である一対の製品が適用されるとよい。A製品の成形加工の成形工程数とB製品の成形加工の成形工程数とは等しく、第1の金型群GAに含まれる複数の金型20Aと、第2の金型群GBに含まれる複数の金型20Bとは同数である。
【0027】
図3及び
図4では、第1の金型群GAの複数の金型20Aに、A製品の成形加工の工程順序「A1、A2」、「A1、A2、A3」又は「A1、A2、A3、A4」を記している。同様に、第2の金型群GBの複数の金型20Bには、B製品の成形加工の工程順序「B1、B2」、「B1、B2、B3」、「B1、B2、B3、B4」を記している。
図3(A)、(B)は、各成形工程が2工程である場合、
図3(C)、
図4(A)は、各成形工程が3工程である場合、
図4(B)、(C)は、各成形工程が4工程である場合を示している。
【0028】
図3及び
図4に示すように、プレス方向に見て、第1の金型群GAと第2の金型群GBとは、プレス中心P
Cを挟んで互いに逆方に配置される。プレス方向とは、一対の金型20Aが近接する方向、すなわち、スライド18が進退する方向に相当する。第1の金型群GAにおいて、複数の金型20Aの並び順は、
図3(A)〜(C)、
図4(A)、(B)に示すように、工程の順序通りとしてよい。あるいは、
図4(C)に示すように、工程の順序と異なっていてもよい。同様に、第2の金型群GBにおいて、複数の金型20Bの並び順は、
図3(A)〜(C)、
図4(A)、(B)に示すように、工程の順序通りとしてよい。あるいは、
図4(C)に示すように、工程の順序と異なっていてもよい。但し、第1の金型群GAの複数の金型20Aの並び順と、第2の金型群GBの複数の金型20Bの並び順とは、プレス中心P
Cを中心に対称的な並び順とされる。
【0029】
また、本実施形態の金型配置構造は、次のように見なすことができる。すなわち、第1の金型群GAのうちn番目の工程の金型20Aと、第2の金型群GBのうちn番目の工程の金型20Bとは、プレス方向に見て、プレス中心P
Cを挟んで互いに逆方に配置される。nは1からNfの各自然数を表わし、Nfはプレス装置1で実施される各製品の成形加工の総工程数を表わす。
【0030】
より具体的には、第1の金型群GAの複数の金型20Aと、第2の金型群GBの複数の金型20Bとは、プレス中心P
Cを中心とした対称(点対称とも言う)の位置に配置される。また、第1の金型群GA及び第2の金型群GBのうち、同じ順番の工程に使用される各一対の金型20A、20Bは、プレス中心P
Cを中心とした対称の位置に配置される。同じ順番の工程とは、例えば「A1」と「B1」、「A2」と「B2」、「A3」と「B3」、「A4」と「B4」などの各一対の工程である。
【0031】
プレス中心P
Cを中心とする対称の配置は、第1の金型群GAのうちn番目の工程の金型20Aと、第2の金型群GBのうちn番目の工程の金型20Bとが、略同じ大きさの荷重を生じる構成である場合に適している。一方、第1の金型群GAのうちn番目の工程の金型20Aと、第2の金型群GBのうちn番目の工程の金型20Bとが、異なる大きさの荷重を生じる場合、荷重が小さい方を、荷重が大きい方より、プレス中心P
Cから遠くに配置するとよい。
【0032】
<プレス処理>
続いて、
図3(C)の金型配置構造が採用された場合を例にとってプレス装置1の動作について説明する。
図5は、制御部により実行されるプレス処理の手順を示すフローチャートである。
【0033】
本実施形態のプレス処理においては、A製品の成形加工とB製品の成形加工とが並行して行われる。先ず、制御部43は、マニピュレータ51、52を制御して、第1工程「A1」、「B1」の金型20A、20Bの各々に被成形物(第1と第2の被成形物に相当)を投入する(ステップS1)。そして、制御部43は、スライド18を昇降させる1回の成形処理を実行する(ステップS2)。
【0034】
ステップS2においては、「A1」の金型20Aと「B1」の金型20Bとに荷重が加わる。これらの各荷重は、プレス中心P
Cから離れた位置に生じるが、上述した金型20A、20Bの配置構造により、スライド18に生じる総合荷重の中心は、プレス中心P
C或いはその近傍に位置し、大きな偏心荷重の発生が避けられる。
【0035】
次に、制御部43は、マニピュレータ51を制御して、第1の金型群GAの先の工程「A1」の金型20Aから次工程「A2」の金型20Aへ被成形物を搬送させる(ステップS3)。また、制御部43は、マニピュレータ52を制御して、第2の金型群GBの先の工程「B1」の金型20Bから次工程「B2」の金型20Bへ被成形物を搬送させる(ステップS4)。制御部43は、ステップS3とステップS4の処理を、同時並行的に行ってもよい。
【0036】
搬送が完了したら、制御部43は、スライド18を昇降させる一回の成形制御を実行する(ステップS5)。
【0037】
続いて、制御部43は、A製品の成形加工及びB製品の成形加工に、次工程が含まれているか判別し(ステップS6)、含まれていれば、ステップS3〜S5のループ処理を、次工程について繰り返す。
図3(C)の金型配置の場合、ステップS3〜S5のループ処理が第3工程まで繰り返し実行される。
【0038】
上記のループ処理において第2工程における成形の際には、「A2」の金型20Aと「B2」の金型20Bとに荷重が加わる。これらの各荷重は、プレス中心P
Cから離れた位置に生じるが、上述した金型20A、20Bの配置構造により、スライド18に生じる総合荷重の中心は、プレス中心P
C或いはその近傍に位置し、大きな偏心荷重の発生が避けられる。
【0039】
同様に、第3工程における成形の際には、「A3」の金型20Aと「B3」の金型20Bとに荷重が加わる。これらの各荷重は、プレス中心P
Cから離れた位置に生じるが、上述した金型20A、20Bの配置構造により、スライド18に生じる総合荷重の中心は、プレス中心P
C或いはその近傍に位置し、大きな偏心荷重の発生が避けられる。
【0040】
そして、成形加工の最後の工程まで完了したら、制御部43は、マニピュレータ52を制御して、最後の工程の金型20A、20Bから被成形物を回収する(ステップS7)。
【0041】
ステップS1〜S7のプレス処理が繰り返し行われることで、複数組のA製品及びB製品が製造される。
【0042】
<スライドに発生する荷重の詳細>
図6(A)は第1の金型群の金型を1つずつ使用した場合に1回の成形処理で生じる荷重を説明する図、
図6(B)は第1の金型群の金型と第2の金型群の金型とをペアで使用した場合に1回の成形処理で生じる荷重を説明する図である。ここでは、
図3(C)の金型配置構造を例にとって、スライド18に発生する荷重について詳細に説明する。
【0043】
仮に、第1の金型群GAの各金型20A(「A1」〜「A3」)を1つずつ順に使用して被成形物の成形を行ったとする。この場合、
図6(A)に示すように、「A1」〜「A3」の各工程の成形で発生する荷重は、1個の被成形物を加圧する荷重F1であり、許容最大荷重の半分以下である。しかし、荷重中心は3つの金型20Aの配置に対応した位置となり、X方向について見れば、第1工程「A1」と第3工程「A3」の荷重中心は、X方向のプレス中心P
CXを大きく外れる。許容荷重値は、荷重中心がプレス中心P
Cから遠くになると低くなるため、第1工程「A1」と第3工程「A3」の成形で発生する荷重は、許容荷重値を超えてしまう。Y方向についても同様の状況が発生する。
【0044】
一方、本実施形態のプレス処理では、第1の金型群GAの第n工程の金型20Aと、第2の金型群GBの第n工程の金型20Bとを使用して同時に2つの被成形物の成形が行われる。この場合、
図6(B)に示すように、合計の荷重は、2つの被成形物を加圧する荷重F2となり、許容最大荷重に近くなる。しかし、荷重中心は、X方向のプレス中心PCXに近づくので、許容荷重値を超えない。Y方向についても同様の作用が得られる。
【0045】
<荷重警告処理>
続いて、制御部43により実行される荷重警告処理について説明する。
図7は、荷重警告処理のフローチャートである。
【0046】
制御部43は、
図5のプレス処理と並行して荷重警告処理を実行する。制御部43は、プレス処理において1回の成形処理が開始されたか判別し(ステップS11)、開始されたら続くループ処理(ステップS12〜S18)へ処理を移行する。ループ処理へ進むと、先ず、制御部43は、4つの荷重計30の計測値P1〜P4を入力し(ステップS12)、これらから合計荷重Fを計算する(ステップS13)。次に、制御部43は、荷重中心のX方向の位置X
Fと、荷重中心のY方向の位置Y
Fとを計算する(ステップS14、S15)。これらの計算式は、
図7のステップS13〜S15に記される通りである。計算式中の定数bは、
図2に示すように、X方向における1つのアップライト22の中心とプレス中心P
CXとの間の距離を表わし、定数aは、Y方向における1つのアップライト22の中心とプレス中心P
CYとの間の距離を表わす。
【0047】
これらの計算により、4つのアップライト22に発生した荷重の計測値P1〜P4に基づいて、スライド18に加わっている合計荷重Fとその荷重中心位置(X
F、Y
F)とが求められる。
【0048】
続いて、制御部43は、許容荷重値データ記憶部41からX方向の荷重中心位置X
Fに対応する許容荷重値F
thX(X
F)と、Y方向の荷重中心位置Y
Fに対応する許容荷重値F
thY(Y
F)とを読み出す。そして、制御部43は、合計荷重Fが二軸方向の許容荷重値F
thX(X
F)、F
thY(Y
F)のいずれかを超えているか否かを判定する(ステップS16、S17)。そして、合計荷重Fが両方の許容荷重値以下であれば、制御部43は、1回の成形処理が終了したか判別し(ステップS18)、終了していなければ、ステップS12に戻ってループ処理を繰り返す。一方、合計荷重Fが一方又は両方の許容荷重値を超えていれば、制御部43は、エラー処理へ処理を移行する。エラー処理では、制御部43は、例えば警報部42を動作させたり、スライド18の荷重が低減されるようにモータ11を駆動したりする制御を行ってもよい。
【0049】
以上のように、本実施形態のプレス装置1によれば、2つの製品の成形加工を行う複数の金型20A、20Bが設けられることで、1台で2つの製品の複数工程の成形を行うことができる。さらに、本実施形態の金型配置構造によれば、第1の金型群GAの金型20Aと、第2の金型群GBの金型20Bとを同時に使用して成形を行うことで、スライド18に大きな偏心荷重を発生するのを抑止できる。したがって、成形の精度が低下したり、プレス装置1の各部に無理な荷重が加わることを防止しつつ、2つの製品の成形加工を行うことができる。
【0050】
また、本実施形態のプレス装置1では、第1の金型群GAと第2の金型群GBとがプレス中心P
CからY方向に外れた位置にも配置される。プレス装置1はX方向の偏心荷重よりもY方向の偏心荷重に対して弱いため、上記のような金型配置構造を採る場合、Y方向の偏心荷重が許容値を超えないか監視が行われるとよい。そこで、本実施形態のプレス装置1によれば、X方向とY方向とに並んだ複数のアップライト22の各々に荷重計30を設け、制御部43が、複数の荷重計30の計測値に基づいてX方向及びY方向の荷重中心位置を求める。また、制御部43は、荷重中心位置に応じてX方向及びY方向の2軸方向の許容荷重値と荷重とを比較して、荷重が許容荷重値を超えないか監視を行う。これにより、何らかのエラーによって比較的に大きなY方向の偏心荷重が生じた場合でも、これを検出して適宜対処することができる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は上記の実施形態に限られない。例えば、
図3と
図4に示した金型配置構造では、第1の金型群GAの第n工程の金型20Aと、第2の金型群GBの第n工程の金型20Bとが、プレス中心P
Cを中心に対称の位置に配置された例を示した。しかし、これらの各一対の金型20A、20Bは、対称の位置からX方向及びY方向に少量ずれた位置に配置されてもよい。言い換えれば、偏心荷重が許容荷重値を超えない程度であれば、各一対の金型20A、20Bの配置が対称の位置から少しずれていてもよい。
【0052】
また、上記の実施形態の金型配置構造では、第1の金型群GAと第2の金型群GBとがプレス中心P
Cを挟んで互いに逆方に配置された例を示した。しかし、例えば、
図4(A)の「A2」工程の金型20Aと「B2」工程の金型20Bとの位置を交換するなど、上記配置例と異なる配置を採用してもよい。このような配置によれば、第1の金型群GAの中あるいは第2の金型群GBの中で被成形物を搬送する場合に、搬送の円滑さが比較的に低下する。しかし、実施形態で示したのと同様の作用により、成形加工の際に大きな偏心荷重が生じることを抑制できる。
【0053】
また、上記の実施形態の金型配置構造では、第1の金型群GAの第1工程から最後工程の金型20Aの並び順と、第2の金型群GBの第1工程から最後工程の金型20Bの並び順とが、プレス中心P
Cを中心として対称である例を示した。しかし、例えば
図4(A)中、例えば「A2、A3」工程の金型20Aはそのままに、「B2」工程の金型20Bと「B3」工程の金型20Bの配置を入れ替えてもよい。この配置では、「A2」と「B2」工程の成形と、「A3」と「B3」工程の成形との際に、X方向の偏心荷重が生じるが、Y方向の偏心荷重を抑制することができる。したがって、X方向の偏心荷重が許容荷重値を超えなければ、プレス処理に不都合は生じない。
【0054】
また、上記の実施形態では、A製品とB製品とが異なる製品である場合について説明したが、A製品とB製品とは同一製品であってもよい。この場合、A製品の成形加工の第n工程で使用される金型20Aと、B製品の成形加工の第n工程で使用される金型20Bとは、型の形状が同一となる。また、上記の実施形態では、モータの駆動によりスライドを進退させるプレス装置を例にとって説明したが、スライドを駆動する構成は、例えばシリンダピストンと流体圧とを用いた構成など、種々の構成を適用可能である。また、上記実施形態では、鍛造プレス装置に本発明を適用した例を示したが、例えば、板金、樹脂成形のプレス装置に本発明を適用してもよい。その他、実施形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。