特許第6742259号(P6742259)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6742259中性子線検出システム、及び中性子線検出システムの設定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6742259
(24)【登録日】2020年7月30日
(45)【発行日】2020年8月19日
(54)【発明の名称】中性子線検出システム、及び中性子線検出システムの設定方法
(51)【国際特許分類】
   G01T 3/06 20060101AFI20200806BHJP
   G01T 1/20 20060101ALI20200806BHJP
   G21C 17/108 20060101ALI20200806BHJP
   H05H 13/00 20060101ALN20200806BHJP
【FI】
   G01T3/06
   G01T1/20 C
   G21C17/10 F
   !H05H13/00
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-39492(P2017-39492)
(22)【出願日】2017年3月2日
(65)【公開番号】特開2018-146298(P2018-146298A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2019年7月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】赤堀 清崇
【審査官】 藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/192321(WO,A1)
【文献】 米国特許第04476391(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0236530(US,A1)
【文献】 特開2013−167467(JP,A)
【文献】 特開2005−121514(JP,A)
【文献】 特開2016−223791(JP,A)
【文献】 特開平03−156392(JP,A)
【文献】 特開昭62−278479(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/00−1/16
G01T 1/167−7/12
G21C 17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中性子線を検出する中性子線検出システムであって、
放射線が入射すると光を発生させるシンチレータと、
前記シンチレータで発生した前記光を伝送する光ファイバーと、
前記光ファイバーによって伝送された前記光を受光し、受光した前記光に関する検出信号の波高が判定閾値を超えた場合に、前記検出信号を前記中性子線に関する信号と弁別する弁別部と、
前記判定閾値を設定する判定閾値設定部と、を備え、
前記判定閾値設定部は、
前記中性子線をカットするフィルタを介して前記シンチレータに入射した放射線の前記検出信号である第1の検出信号、及び前記フィルタを介さず前記シンチレータに入射した放射線の前記検出信号である第2の検出信号を取得する検出信号取得部と、
前記第1の検出信号に基づく波高分布と前記第2の検出信号に基づく波高分布との差分に基づいて、前記中性子線のみの中性子線波高分布、及び前記放射線に含まれるガンマ線のみのガンマ線波高分布を取得する波高分布取得部と、
前記中性子線波高分布、及び前記ガンマ線波高分布に基づき、前記判定閾値を調整する判定閾値調整部と、を備える、中性子線検出システム。
【請求項2】
前記判定閾値設定部は、要求されている検出精度を取得する要求検出精度取得部を更に備え、
前記判定閾値調整部は、波高が前記判定閾値を超える前記ガンマ線の量と、前記要求検出精度取得部で取得された前記検出精度と、を比較することで、前記判定閾値を調整する、請求項1に記載の中性子線検出システム。
【請求項3】
前記波高分布取得部は、前記第1の検出信号を取得する時の前記放射線の照射量と、前記第2の検出信号を取得する時の前記放射線の照射量との差を考慮して、前記中性子線波高分布及び前記ガンマ線波高分布を取得する、請求項1又は2に記載の中性子線検出システム。
【請求項4】
前記放射線の照射量を制御する照射制御部を更に備え、
前記照射制御部は、前記第1の検出信号を取得する時の前記放射線の照射量と、前記第2の検出信号を取得する時の前記放射線の照射量とを等しくする、請求項1又は2に記載の中性子線検出システム。
【請求項5】
中性子線を検出する中性子線検出システムの設定方法であって、
前記中性子線検出システムは、
放射線が入射すると光を発生させるシンチレータと、
前記シンチレータで発生した前記光を伝送する光ファイバーと、
前記光ファイバーによって伝送された前記光を受光し、受光した前記光に関する検出信号の波高が判定閾値を超えた場合に、前記検出信号を前記中性子線に関する信号と弁別する弁別部と、を備え、
前記設定方法は、
前記中性子線をカットするフィルタを介して前記シンチレータに入射した放射線の前記検出信号である第1の検出信号、及び前記フィルタを介さず前記シンチレータに入射した放射線の前記検出信号である第2の検出信号を取得する検出信号取得工程と、
前記第1の検出信号と前記第2の検出信号との差分に基づいて、前記中性子線のみの中性子線波高分布、及び前記放射線に含まれるガンマ線のみのガンマ線波高分布を取得する波高分布取得工程と、
前記中性子線波高分布、及び前記ガンマ線波高分布に基づき、前記判定閾値を調整する判定閾値調整工程と、を備える、中性子線検出システムの設定方法。
【請求項6】
中性子線を検出する中性子線検出システムであって、
放射線が入射すると光を発生させるシンチレータと、
前記シンチレータで発生した前記光を伝送する光ファイバーと、
前記光ファイバーによって伝送された前記光を受光し、受光した前記光に関する検出信号の波高が判定閾値を超えた場合に、前記検出信号を前記中性子線に関する信号と弁別する弁別部と、
情報を表示する表示部と、
前記判定閾値を設定する判定閾値設定部と、を備え、
前記表示部は、
検出精度の入力を案内する通知を表示し、
入力された前記検出精度に基づいて前記判定閾値設定部が前記判定閾値を設定した後、設定された前記判定閾値を表示する、中性子線検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中性子線検出システム、及び中性子線検出システムの設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中性子線とガンマ線とを弁別する技術として特許文献1に記載の技術がある。特許文献1に係るシステムでは、検出した信号の波形から中性子線による信号とガンマ線による信号とを弁別している。また、このシステムは、所定の判定閾値を設定し、検出した信号のうち、波高が判定閾値を超えたものを中性子線に関する信号としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2014/192321号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、判定閾値の設定次第では、波高が判定閾値を超える信号の中には、ガンマ線の信号が含まれる場合もある。すなわち、判定閾値の設定次第では、ガンマ線がノイズとして検出されることで十分な検出精度が得られない場合がある。一方、検出精度を高めすぎると、中性子線の検出効率が低下する場合がある。
【0005】
従って、本発明は、判定閾値を適切な値に設定することができる中性子線検出システム、及び中性子線検出システムの設定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る中性子線検出システムは、中性子線を検出する中性子線検出システムであって、放射線が入射すると光を発生させるシンチレータと、シンチレータで発生した光を伝送する光ファイバーと、光ファイバーによって伝送された光を受光し、受光した光に関する検出信号の波高が判定閾値を超えた場合に、検出信号を中性子線に関する信号と弁別する弁別部と、判定閾値を設定する判定閾値設定部と、を備え、判定閾値設定部は、中性子線をカットするフィルタを介してシンチレータに入射した放射線の検出信号である第1の検出信号、及びフィルタを介さずシンチレータに入射した放射線の検出信号である第2の検出信号を取得する検出信号取得部と、第1の検出信号に基づく波高分布と第2の検出信号に基づく波高分布との差分に基づいて、中性子線のみの中性子線波高分布、及び放射線に含まれるガンマ線のみのガンマ線波高分布を取得する波高分布取得部と、中性子線波高分布、及びガンマ線波高分布に基づき、判定閾値を調整する判定閾値調整部と、を備える。
【0007】
この中性子線検出システムでは、弁別部が、受光したシンチレータからの光に関する検出信号の波高が判定閾値を超えた場合に、検出信号を中性子線に関する信号と弁別する。このような判定閾値を設定する判定閾値設定部は、中性子線をカットするフィルタを介してシンチレータに入射した放射線の検出信号である第1の検出信号、及びフィルタを介さずシンチレータに入射した放射線の検出信号である第2の検出信号を取得する検出信号取得部を備える。また、判定閾値設定部は、第1の検出信号に基づく波高分布と第2の検出信号に基づく波高分布との差分に基づいて、中性子線のみの中性子線波高分布、及び放射線に含まれるガンマ線のみのガンマ線波高分布を取得する波高分布取得部を備えている。このように、中性子線のみの中性子線波高分布、及び放射線に含まれるガンマ線のみのガンマ線波高分布を取得することで、どのような判定閾値を設定した場合に、どの程度の量のガンマ線がノイズとして検出されるかを把握することができる。すなわち、判定閾値と検出精度の関係を把握することができる。また、中性子線波高分布及びガンマ線波高分布は、中性子線をカットするフィルタを用いる場合と用いない場合の二回の測定に基づいて取得されたものであるため、判定閾値と検出精度の関係を正確に把握することができる。従って、判定閾値調整部は、中性子線波高分布、及びガンマ線波高分布に基づき、要求されている検出精度に合わせて適切な判定閾値を調整することができる。以上により、判定閾値を適切な値に設定することができる。
【0008】
中性子線検出システムにおいて、判定閾値設定部は、要求されている検出精度を取得する要求検出精度取得部を更に備え、判定閾値調整部は、波高が判定閾値を超えるガンマ線の量と、要求検出精度取得部で取得された検出精度と、を比較することで、判定閾値を調整してよい。これにより、判定閾値調整部は、使用者から要求されている検出精度に適合するような判定閾値を調整することができる。
【0009】
中性子線検出システムにおいて、波高分布取得部は、第1の検出信号を取得する時の放射線の照射量と、第2の検出信号を取得する時の放射線の照射量との差を考慮して、中性子線波高分布及びガンマ線波高分布を取得してよい。このように、中性子線をカットするフィルタを用いる場合と用いない場合の二回の測定の間の放射線の照射量の違いを考慮することで、より正確に中性子線波高分布及びガンマ線波高分布を取得することができる。
【0010】
中性子線検出システムにおいて、放射線の照射量を制御する照射制御部を更に備え、照射制御部は、第1の検出信号を取得する時の放射線の照射量と、第2の検出信号を取得する時の放射線の照射量とを等しくしてよい。このように、中性子線をカットするフィルタを用いる場合と用いない場合の二回の測定の間の放射線の照射量を等しくすることで、より正確に中性子線波高分布及びガンマ線波高分布を取得することができる。
【0011】
本発明に係る中性子線検出システムの設定方法は、中性子線を検出する中性子線検出システムの設定方法であって、中性子線検出システムは、放射線が入射すると光を発生させるシンチレータと、シンチレータで発生した光を伝送する光ファイバーと、光ファイバーによって伝送された光を受光し、受光した光に関する検出信号の波高が判定閾値を超えた場合に、検出信号を中性子線に関する信号と弁別する弁別部と、を備え、設定方法は、中性子線をカットするフィルタを介してシンチレータに入射した放射線の検出信号である第1の検出信号、及びフィルタを介さずシンチレータに入射した放射線の検出信号である第2の検出信号を取得する検出信号取得工程と、第1の検出信号と第2の検出信号との差分に基づいて、中性子線のみの中性子線波高分布、及び放射線に含まれるガンマ線のみのガンマ線波高分布を取得する波高分布取得工程と、中性子線波高分布、及びガンマ線波高分布に基づき、判定閾値を調整する判定閾値調整工程と、を備える。
【0012】
この中性子線検出システムの設定方法によれば、上述の中性子線検出システムと同様の作用・効果を得ることができる。
【0013】
本発明に係る中性子線検出システムは、中性子線を検出する中性子線検出システムであって、放射線が入射すると光を発生させるシンチレータと、シンチレータで発生した光を伝送する光ファイバーと、光ファイバーによって伝送された光を受光し、受光した光に関する検出信号の波高が判定閾値を超えた場合に、検出信号を中性子線に関する信号と弁別する弁別部と、情報を表示する表示部と、判定閾値を設定する判定閾値設定部と、を備え、表示部は、検出精度の入力を案内する通知を表示し、入力された検出精度に基づいて判定閾値設定部が判定閾値を設定した後、設定された判定閾値を表示する。
【0014】
この中性子線検出システムによれば、使用者は、表示部の表示に従って検出精度を入力すれば、当該検出精度に基づいて判定閾値設定部によって設定された判定閾値を、表示部の表示を介して知ることができる。これにより、使用者は、必要な検出精度に従った適切な判定閾値にて中性子線の検出を行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、判定閾値を適切な値に設定することができる中性子線検出システム、及び中性子線検出システムの設定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態の中性子線検出システムを備えた中性子捕捉療法装置を示す概略図である。
図2】コリメータに設けられた中性子線検出器を示す断面図である。
図3】中性子捕捉療法装置の制御部を示すブロック図である。
図4】判定閾値の設定方法の処理内容を示すフローチャートである。
図5】判定閾値の調整に用いられる波高分布とカウントするとの関係を示すグラフである。
図6】判定閾値の調整に用いられる波高分布とカウントするとの関係を示すグラフである。
図7】判定閾値と検出精度の関係の一例を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
図1に示される中性子捕捉療法装置1は、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT:Boron Neutron Capture Therapy)を用いたがん治療を行う装置である。中性子捕捉療法装置1では、例えばホウ素(10B)が投与された患者(被照射体)50の腫瘍に中性子線Nを照射する。
【0019】
中性子捕捉療法装置1は、サイクロトロン2を備えている。サイクロトロン2は、陰イオン等の荷電粒子を加速して、荷電粒子線Rを作り出す加速器である。本実施形態において、荷電粒子線Rは陰イオンから電荷を剥ぎ取って生成した陽子ビームである。このサイクロトロン2は、例えば、ビーム半径40mm、60kW(=30MeV×2mA)の荷電粒子線Rを生成する能力を有している。なお、加速器は、サイクロトロンに限られず、シンクロトロンやシンクロサイクロトロン、ライナックなどであってもよい。
【0020】
サイクロトロン2から出射された荷電粒子線Rは、中性子線生成部Mへ送られる。中性子線生成部Mは、ビームダクト3とターゲット7とからなる。サイクロトロン2から出射された荷電粒子線Rは、ビームダクト3を通り、ビームダクト3の端部に配置されたターゲット7へ向かって進行する。このビームダクト3に沿って複数の四極電磁石4、電流モニタ5、及び走査電磁石6が設けられている。複数の四極電磁石4は、例えば電磁石を用いて荷電粒子線Rのビーム軸調整を行うものである。
【0021】
電流モニタ5は、ターゲット7に照射される荷電粒子線Rの電流値(つまり、電荷,照射線量率)をリアルタイムで検出するものである。電流モニタ5は、荷電粒子線Rに影響を与えずに電流測定可能な非破壊型のDCCT(DC Current Transformer)が用いられている。電流モニタ5は、検出結果を後述する制御部20に出力する。なお、「線量率」とは、単位時間当たりの線量を意味する。
【0022】
具体的には、電流モニタ5は、ターゲット7に照射される荷電粒子線Rの電流値を精度よく検出するため、四極電磁石4による影響を排除すべく、四極電磁石4より下流側(荷電粒子線Rの下流側)で走査電磁石6の直前に設けられている。すなわち、走査電磁石6はターゲット7に対して常時同じところに荷電粒子線Rが照射されないように走査するため、電流モニタ5を走査電磁石6よりも下流側に配設するには大型の電流モニタ5が必要となる。これに対し、電流モニタ5を走査電磁石6よりも上流側に設けることで、電流モニタ5を小型化することができる。
【0023】
走査電磁石6は、荷電粒子線Rを走査し、ターゲット7に対する荷電粒子線Rの照射制御を行うものである。この走査電磁石6は、荷電粒子線Rのターゲット7に対する照射位置を制御する。
【0024】
中性子捕捉療法装置1は、荷電粒子線Rをターゲット7に照射することにより中性子線Nを発生させ、患者50に向かって中性子線Nを出射する。中性子捕捉療法装置1は、ターゲット7、遮蔽体9、減速材8、コリメータ10、ガンマ線検出部11を備えている。
【0025】
また、中性子捕捉療法装置1は、制御部20を備えている(図2及び図3参照)。制御部20は、CPU[Central Processing Unit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]等から構成されており、中性子捕捉療法装置1を総合的に制御する電子制御ユニットである。制御部20の詳細な構成については後述する。
【0026】
ターゲット7は、荷電粒子線Rの照射を受けて中性子線Nを生成するものである。ここでのターゲット7は、例えば、ベリリウム(Be)やリチウム(Li)、タンタル(Ta)、タングステン(W)により形成され、例えば直径160mmの円板状を成している。なお、ターゲット7は、円板状に限らず、他の形状であってもよい。また、ターゲット7は固体状に限らず液体状であってもよい。
【0027】
減速材8は、ターゲット7で生成された中性子線Nのエネルギーを減速させるものである。減速材8は、中性子線Nに含まれる速中性子を主に減速させる第1の減速材8Aと、中性子線Nに含まれる熱外中性子を主に減速させる第2の減速材8Bと、からなる積層構造を有している。
【0028】
遮蔽体9は、発生させた中性子線N、及び当該中性子線Nの発生に伴って生じたガンマ線等を外部へ放出されないよう遮蔽するものである。遮蔽体9は、減速材8を囲むように設けられている。遮蔽体9の上部及び下部は、減速材8より荷電粒子線Rの上流側に延在しており、これらの延在部にガンマ線検出部11が設けられている。
【0029】
コリメータ10は、中性子線Nの照射野を整形するものであり、中性子線Nが通過する開口10aを有する。コリメータ10は、例えば中央に開口10aを有するブロック状の部材である。
【0030】
ガンマ線検出部11は、荷電粒子線Rの照射により中性子線生成部Mから発生するガンマ線をリアルタイムで検出するものである。ガンマ線検出部11としては、シンチレータや電離箱、その他様々なガンマ線検出機器を採用することができる。本実施形態において、ガンマ線検出部11は、ターゲット7の周囲で減速材8より荷電粒子線Rの上流側に設けられている。
【0031】
ガンマ線検出部11は、荷電粒子線Rの上流側に延在する遮蔽体9の上部及び下部の内側にそれぞれ配置されている。なお、ガンマ線検出部11の数は特に限定されず、一つであってもよく、三つ以上であってもよい。ガンマ線検出部11を三つ以上設けるときは、ターゲット7の外周を囲むように所定間隔で設けることができる。ガンマ線検出部11は、ガンマ線の検出結果を制御部20に出力する。このガンマ線検出部11を備えていない構成でもよい。
【0032】
次に、本実施形態に係る中性子線検出システム100の構成について、図2及び図3を参照して説明する。
【0033】
図2に示されるように、中性子線検出システム100は、中性子線検出器12と、制御部20と、表示部31と、入力部32と、を備えている。
【0034】
コリメータ10には、コリメータ10の開口10aを通過する中性子線Nをリアルタイムで検出するための中性子線検出器12が設けられている。中性子線検出器12は、コリメータ10に形成された貫通孔10b(開口10aと直交する方向に形成された貫通孔)中に少なくともその一部が設けられている。中性子線検出器12は、シンチレータ13、光ファイバー14、光検出器15を有している。
【0035】
シンチレータ13は、入射した放射線(中性子線N、ガンマ線)を光に変換する蛍光体である。シンチレータ13は、入射した放射線の線量に応じて内部結晶が励起状態となり、シンチレーション光を発生させる。シンチレータ13は、コリメータ10の貫通孔10b内に設けられており、コリメータ10の開口10aに露出している。シンチレータ13は、開口10a内の中性子線Nまたはガンマ線がシンチレータ13に入射することで発光する。シンチレータ13には、Liガラスシンチレータ、LiCAFシンチレータ、LiFを塗布したプラスチックシンチレータ、LiF/ZnSシンチレータ等を採用できる。
【0036】
光ファイバー14は、シンチレータ13で生じた光を伝達する部材である。光ファイバー14は、例えば、フレキシブルな光ファイバーの束などから構成されている。光検出器15は、光ファイバー14を通じて伝達された光を検出するものである。光検出器15としては、例えば光電子増倍管や光電管など各種の光検出機器を採用することができる。光検出器15は、光検出時に電気信号(検出信号)を制御部20に出力する。
【0037】
表示部31は、使用者に対して各種情報を表示する機器である。表示部31として、ディスプレイ等が採用される。使用者に入力させたい情報がある場合、表示部31は、使用者に対して情報の入力を案内する通知を表示する。例えば、表示部31は、使用者に要求される中性子線の検出精度の入力を案内する通知を表示する。また、表示部31は、当該入力を受けて制御部20で演算された結果などを表示する。例えば、入力された検出精度に基づいて制御部20が判定閾値を設定した後、表示部31は当該判定閾値を表示する。入力部32は、使用者による各種入力がなされる機器である。入力部32は、キーボード、マウス、タッチスクリーン等によって構成されている。
【0038】
図3に示されるように、制御部20は、線量算出部21と、照射制御部22と、判定閾値設定部40と、を有している。制御部20は、電流モニタ5、走査電磁石6、ガンマ線検出部11及び光検出器15(中性子線検出器12)、表示部31、及び入力部32と電気的に接続されている。
【0039】
線量算出部21は、電流モニタ5による荷電粒子線Rの電流値の検出結果に基づいて、ターゲット7に照射される荷電粒子線Rの線量をリアルタイムで測定(算出)する。線量算出部21は、測定された荷電粒子線Rの電流値を時間に関して逐次積分し、荷電粒子線Rの線量をリアルタイムで算出する。
【0040】
また、線量算出部21は、ガンマ線検出部11によるガンマ線の検出結果に基づいて、ガンマ線の線量をリアルタイムで測定(算出)する。
【0041】
さらに、線量算出部21は、中性子線検出器12による中性子線Nの検出結果に基づいて、コリメータ10の開口10aを通過する中性子線Nの線量を測定(算出)する。線量算出部21は、光検出器15から検出信号を受信し、中性子線に関する信号とガンマ線に関する信号とを弁別する(詳しくは後述する)。線量算出部21は、光検出器15と合せて、弁別部を構成する。
【0042】
線量算出部21は、算出した荷電粒子線Rの線量、ガンマ線の線量、及び中性子線Nの線量に基づいて、ターゲット7で発生した中性子線Nの線量を総合的にリアルタイムで算出する。中性子線Nの線量など線量算出部21による算出結果は、例えば表示部31に表示される。
【0043】
照射制御部22は、線量算出部21によって算出された中性子線Nの線量に基づいて、ターゲット7に対する荷電粒子線Rの照射を制御する。照射制御部22は、サイクロトロン2及び走査電磁石6に指令信号を送信してターゲット7に対する荷電粒子線Rの照射を制御することで、ターゲット7から生成される中性子線Nの患者に対する照射制御を行う。照射制御部22は、線量算出部21の算出する中性子線Nの線量が予め設定された治療計画に沿うように中性子線Nの照射制御を行う。
【0044】
線量算出部21は、光検出器15で受光した光に関する検出信号の波高(光量)が判定閾値Qthを超えているか否か判定し、中性子線Nによる検出信号と、ガンマ線による検出信号とを弁別する。シンチレータ13において、放射線として中性子線N及びガンマ線が入射するので、光量の強さに応じて中性子線Nとガンマ線とを弁別する。
【0045】
判定閾値設定部40は、上述の判定閾値Qthを設定する。ここで、判定閾値Qthを求めるための判定閾値計算式は、「Qth=P−aσ」と表される。「P」は中性子線Nによるピークを示している。「σ」は、中性子が作る分布の標準偏差を示す。「a」は、σに対する係数を示す。すなわち、判定閾値Qthは、中性子線NによるピークPからaσだけ低い値に設定される。ここで、ピークP付近であって波高が高い領域には中性子線Nが多く含まれ、波高が低い領域に行くに従って、ガンマ線が増えてゆく。従って、係数aを大きく設定すると、判定閾値Qthが低くなるため、当該判定閾値Qthより波高が高くなるガンマ線が増える。これにより、ガンマ線が誤って中性子線Nであると弁別され易くなるので、検出精度が低下する。しかし、検出精度は低下するが、検出される中性子線Nのイベント数自体も増えるので、検出効率は向上する。一方、係数aを小さく設定すると、判定閾値Qthが高くなるため、当該判定閾値Qthより波高が高くなるガンマ線が減少する。これにより、誤って中性子線Nであると弁別されるガンマ線が減少するので、検出精度が向上する。しかし、検出精度は向上するが、検出される中性子線Nのイベント数自体も減るので、検出効率は低下する。以上より、判定閾値設定部40は、使用者から要求されている検出精度に基づいて、係数aを調整することによって、最適な判定閾値Qthを設定する。
【0046】
具体的に、判定閾値設定部40は、検出信号取得部41と、波高分布取得部42と、判定閾値調整部43と、要求検出精度取得部44と、を備える。
【0047】
検出信号取得部41は、光検出器15からの検出信号を取得する。ここで、本実施形態では、判定閾値Qthを設定するときには、中性子線の照射が二回行われることにより、検出信号取得部41は、第1の検出信号及び第2の検出信号の二種類の検出信号を取得する。一回目の照射では、中性子線Nをカットするフィルタ51がシンチレータ13を覆うように設けられた状態で中性子線Nの照射が行われる(図2(b)参照)。これにより、検出信号取得部41は、フィルタ51を介してシンチレータ13に入射した放射線の検出信号である第1の検出信号を取得する。二回目の照射では、フィルタ51が除去された状態で中性子線Nの照射が行われる(図2(a)参照)。これにより、検出信号取得部41は、フィルタ51を介さずシンチレータ13に入射した放射線の検出信号である第2の検出信号を取得する。
【0048】
フィルタ51の材料は、6フッ化リチウム、フッ化リチウムのような中性子線を吸収する際に、ガンマ線を放出しないものが好ましい。または、フィルタ51の材料は、カドミウムのように放出ガンマ線のエネルギーが低いものでもよい。フィルタ51の厚みは、ガンマ線を強く吸収しない程度に薄く設定されることが好ましい。
【0049】
波高分布取得部42は、第1の検出信号に基づく波高分布と第2の検出信号に基づく波高分布との差分に基づいて、中性子線Nのみの中性子線波高分布、及び放射線に含まれるガンマ線のみのガンマ線波高分布を取得する。波高分布取得部42は、第1の検出信号を取得する時の放射線の照射量と、第2の検出信号を取得する時の放射線の照射量との差を考慮して、中性子線波高分布及びガンマ線波高分布を取得する。中性子線波高分布及びガンマ線波高分布の取得方法の詳細については後述する。
【0050】
判定閾値調整部43は、中性子線波高分布、及びガンマ線波高分布に基づき、判定閾値Qthを調整する。判定閾値調整部43は、波高が判定閾値Qthを超えるガンマ線の量と、要求検出精度取得部44で取得された検出精度と、を比較することで、判定閾値Qthを調整する。判定閾値Qthの調整方法の詳細については後述する。
【0051】
要求検出精度取得部44は、要求されている中性子線の検出における検出精度を取得する。要求検出精度取得部44は、入力部32で使用者によって入力された要求検出精度を取得する。
【0052】
次に、図4図7を参照して、判定閾値設定部40の判定閾値Qthの設定方法について説明する。ただし、判定閾値Qthの設定方法は以下のものに限定されず、趣旨を変更しない範囲で適宜変更してもよい。
【0053】
図4に示すように、要求検出精度取得部44は、要求検出精度の入力案内を行うと共に、入力された検出精度を取得する(ステップS10)。S10では、要求検出精度取得部44は、表示部31へ信号を出力し、当該表示部31に要求される検出精度の入力を案内する通知を表示する。また、使用者によって要求検出精度が入力部32を介して入力された場合、要求検出精度取得部44は、要求検出精度を取得する。
【0054】
次に、検出信号取得部41は、第1の検出信号を取得するために、使用者に対して一回目の測定を行うように案内する(ステップS20)。S20では、表示部31は、一回目の測定を行う案内を表示する。これにより、使用者は、図2(b)に示すように、中性子線Nをカットするフィルタ51でシンチレータ13を覆った状態で、中性子線Nの照射を行う。所定時間経過後、検出信号取得部41は、一回目の測定が終了したか否かを問い合わせる(ステップS30)。S30では、表示部31は、一回目の測定が終了したか否かを問い合わせる旨の表示をする。一回目の測定が終了した場合、使用者は入力部32に測定が終了した旨の入力を行う。
【0055】
次に、検出信号取得部41は、第2の検出信号を取得するために、使用者に対して二回目の測定を行うように案内する(ステップS40)。S40では、表示部31は、一回目の測定を行う案内を表示する。これにより、使用者は、図2(a)に示すように、フィルタ51をシンチレータ13から取り外した状態で、中性子線Nの照射を行う。所定時間経過後、検出信号取得部41は、二回目の測定が終了したか否かを問い合わせる(ステップS50)。S50では、表示部31は、二回目の測定が終了したか否かを問い合わせる旨の表示をする。二回目の測定が終了した場合、使用者は入力部32に測定が終了した旨の入力を行う。なお、第1の検出信号を取得するための測定と、第2の検出信号を取得するための測定は、どちらが先になされてもよい。
【0056】
次に、検出信号取得部41は、S20,30の間に行われた一回目の測定による第1の検出信号を検出し、S40,50の間に行われた二回目の測定による第2の検出信号を取得する(ステップS60:検出信号取得工程)。これにより、検出信号取得部41は、フィルタ51で中性子線Nがカットされた第1の検出信号の波高を計算することで、例えば図5の「fLiF」で示す波高分布の曲線を取得する。検出信号取得部41は、フィルタ51で中性子線Nがカットされていない第2の検出信号の波高を計算することで、例えば図5の「fnormal」で示す波高分布の曲線を取得する。
【0057】
次に、波高分布取得部42は、中性子線波高分布、及びガンマ線波高分布を取得する(ステップS70:波高分布取得工程)。S70では、波高分布取得部42は、S60で取得された第1の検出信号に基づく波高分布fLiFと第2の検出信号に基づく波高分布fnormalとの差分に基づいて、中性子線波高分布、及びガンマ線波高分布を取得する。また、S70では、波高分布取得部42は、第1の検出信号を取得する時の放射線の照射量と、第2の検出信号を取得する時の放射線の照射量との差を考慮して、中性子線波高分布及びガンマ線波高分布を取得する。
【0058】
具体的には、波高分布取得部42は、波高分布fnormalのうち、ガンマ線のみが含まれる領域を抽出し、当該領域の波高の範囲として「xγ_min〜xγ_max」を設定する(図5参照)。次に、波高分布取得部42は、以下の式(1)に示す式を定義し、イタレーションによりdγを最小にするようなα(=αopt)を求める。ここで、「fLiF_scaled=αopt・fLiF」と定義する。このような波高分布fLiF_scaledは、第1の検出信号を取得した時の放射線の照射量が第2の検出信号を取得した時の放射線の照射量に合うように、波高分布fLiFを処理したものである。従って、波高分布取得部42は、波高分布fnormalと波高分布fLiF_scaledの差分を求めることで、中性子線のみの波高分布である中性子線波高分布fを取得する(図5参照)。
【0059】
【数1】
【0060】
次に、波高分布取得部42は、波高分布fnormalのうち、中性子線Nのみが含まれる領域を抽出し、当該領域の波高の範囲として「xn_min〜xn_max」を設定する(図6参照)。次に、波高分布取得部42は、以下の式(2)に示す式を定義し、イタレーションによりdnを最小にするようなβ(=βopt)を求める。ここで、「fn_scaled=βopt・f」と定義する。このような波高分布fn_scaledは、第1の検出信号を取得した時の放射線の照射量が第2の検出信号を取得した時の放射線の照射量に合うように、波高分布fを処理したものである。従って、波高分布取得部42は、波高分布fnormalと波高分布fn_scaledの差分を求めることで、ガンマ線のみの波高分布であるガンマ線波高分布fγを取得する(図6参照)。
【0061】
【数2】
【0062】
次に、判定閾値調整部43は、判定閾値Qthが要求検出精度に対応するものとなるように、判定閾値Qthの調整を行う(ステップS80:判定閾値調整工程)。まず、判定閾値調整部43は、暫定的に係数aを任意の値にしたうえで、「Qth=P−aσ」という式を用いて判定閾値Qthを暫定的に計算する。次に、判定閾値調整部43は、暫定的な判定閾値Qth以上の波高を有するイベントの総数を式(3)を用いてガンマ線波高分布fγから計算する。これにより、判定閾値Qth以上の波高となるガンマ線のイベント数が算出される(第1の値と称する)。判定閾値調整部43は、暫定的な判定閾値Qth以上の波高を有するイベントの総数を式(4)を用いて波高分布fnormalから計算する(第2の値と称する)。そして、判定閾値調整部43は、第1の値を第2の値で割った値を検出精度Pとする。次に、判定閾値調整部43は、要求検出精度と算出した検出精度Pを比較することで、判定閾値Qthが使用者の要求検出精度を満たしているか否かを確認する。要求検出精度を満たしていない場合は、係数aの値を別の値に設定し、再度上述の式(3)及び式(4)を用いた検出精度Pを算出する。判定閾値調整部43は、このような処理を、検出精度Pが使用者が要求する要求検出精度に一致するまで続ける。例えば、図7に示すように、係数aの値を減少させるに伴って検出精度Pが向上(%が減る)ので、判定閾値調整部43は、要求検出精度に合うような係数aを選択する。
【0063】
【数3】

【数4】
【0064】
次に、判定閾値調整部43は、最適化された判定閾値Qthを表示部31にて表示する(ステップS90)。また、制御部20は、最適化された判定閾値Qthを線量算出部21へ出力する(ステップS100)。以上によって図4に示す処理が終了する。
【0065】
次に、本実施形態に係る中性子線検出システム100、及び中性子線検出システム100の設定方法の作用・効果について説明する。
【0066】
本実施形態に係る中性子線検出システム100では、弁別部である線量算出部21が、受光したシンチレータ13からの光に関する検出信号の波高が判定閾値Qthを超えた場合に、検出信号を中性子線Nに関する信号と弁別する。このような判定閾値Qthを設定する判定閾値設定部40は、中性子線Nをカットするフィルタ51を介してシンチレータ13に入射した放射線の検出信号である第1の検出信号、及びフィルタ51を介さずシンチレータ13に入射した放射線の検出信号である第2の検出信号を取得する検出信号取得部41を備える。また、判定閾値設定部40は、第1の検出信号に基づく波高分布と第2の検出信号に基づく波高分布との差分に基づいて、中性子線Nのみの中性子線波高分布、及び放射線に含まれるガンマ線のみのガンマ線波高分布を取得する波高分布取得部42を備えている。このように、中性子線Nのみの中性子線波高分布、及び放射線に含まれるガンマ線のみのガンマ線波高分布を取得することで、どのような判定閾値Qthを設定した場合に、どの程度の量のガンマ線がノイズとして検出されるかを把握することができる。すなわち、判定閾値Qthと検出精度の関係を把握することができる。また、中性子線波高分布及びガンマ線波高分布は、中性子線Nをカットするフィルタ51を用いる場合と用いない場合の二回の測定に基づいて取得されたものであるため、判定閾値Qthと検出精度の関係を正確に把握することができる。従って、判定閾値調整部43は、中性子線波高分布、及びガンマ線波高分布に基づき、要求されている検出精度に合わせて適切な判定閾値Qthを調整することができる。以上により、判定閾値Qthを適切な値に設定することができる。
【0067】
中性子線検出システム100において、判定閾値設定部40は、要求されている検出精度を取得する要求検出精度取得部44を更に備え、判定閾値調整部43は、波高が判定閾値を超えるガンマ線の量と、要求検出精度取得部44で取得された検出精度と、を比較することで、判定閾値を調整してよい。これにより、判定閾値調整部43は、使用者から要求されている検出精度に適合するような判定閾値Qthを調整することができる。
【0068】
中性子線検出システム100において、波高分布取得部42は、第1の検出信号を取得する時の放射線の照射量と、第2の検出信号を取得する時の放射線の照射量との差を考慮して、中性子線波高分布及びガンマ線波高分布を取得してよい。このように、中性子線Nをカットするフィルタ51を用いる場合と用いない場合の二回の測定の間の放射線の照射量の違いを考慮することで、より正確に中性子線波高分布及びガンマ線波高分布を取得することができる。
【0069】
また、中性子線検出システムの設定方法は、中性子線Nを検出する中性子線検出システム100の設定方法であって、中性子線検出システム100は、放射線が入射すると光を発生させるシンチレータ13と、シンチレータ13で発生した光を伝送する光ファイバー14と、光ファイバー14によって伝送された光を受光し、受光した光に関する検出信号の波高が判定閾値Qthを超えた場合に、検出信号を中性子線Nに関する信号と弁別する弁別部と、を備える。設定方法は、中性子線をカットするフィルタ51を介してシンチレータ13に入射した放射線の検出信号である第1の検出信号、及びフィルタ51を介さずシンチレータ13に入射した放射線の検出信号である第2の検出信号を取得する検出信号取得工程と、第1の検出信号と第2の検出信号との差分に基づいて、中性子線のみの中性子線波高分布、及び放射線に含まれるガンマ線のみのガンマ線波高分布を取得する波高分布取得工程と、中性子線波高分布、及びガンマ線波高分布に基づき、判定閾値を調整する判定閾値調整工程と、を備える。
【0070】
この中性子線検出システム100の設定方法によれば、上述の中性子線検出システム100と同様の作用・効果を得ることができる。
【0071】
また、中性子線検出システム100は、中性子線を検出する中性子線検出システムであって、放射線が入射すると光を発生させるシンチレータ13と、シンチレータ13で発生した光を伝送する光ファイバー14と、光ファイバー14によって伝送された光を受光し、受光した光に関する検出信号の波高が判定閾値Qthを超えた場合に、検出信号を中性子線に関する信号と弁別する弁別部と、情報を表示する表示部31と、判定閾値Qthを設定する判定閾値設定部40と、を備える。表示部31は、要求される検出精度の入力を案内する通知を表示し、入力された検出精度に基づいて判定閾値設定部40によって設定された判定閾値を表示する。
【0072】
この中性子線検出システム100によれば、使用者は、表示部31の表示に従って検出精度を入力すれば、当該検出精度に基づいて判定閾値設定部40によって設定された判定閾値Qthを、表示部31の表示を介して知ることができる。これにより、使用者は、必要な検出精度に従った適切な判定閾値にて中性子線の検出を行うことができる。
【0073】
本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
【0074】
例えば、上述の実施形態では、第1の検出信号及び第2の検出信号を取得するための測定を使用者が行っていた。これに代えて、各測定を全て自動化してよい。すなわち、制御部20が測定準備が整い次第、放射線の照射を自動的に行ってよい。このとき、フィルタ51の付け替えは使用者がおこなってよい。あるいは、フィルタ51に駆動部を設けて、フィルタ51の付け替えも自動でおこなってよい。
【0075】
また、上述の実施形態では、第1の検出信号及び第2の検出信号を取得するための測定を使用者が行っていた。すなわち、各測定における照射量に差があった。従って、検出信号に基づいて得られた波高分布に対して、照射量を合わせる処理を行っていた。これに代えて、中性子線検出システム100において、放射線の照射量を制御する照射制御部22を更に備え、照射制御部22は、第1の検出信号を取得する時の放射線の照射量と、第2の検出信号を取得する時の放射線の照射量とを等しくしてよい。このように、中性子線をカットするフィルタ51を用いる場合と用いない場合の二回の測定の間の放射線の照射量を等しくすることで、より正確に中性子線波高分布及びガンマ線波高分布を取得することができる。
【0076】
また、上記実施形態では、中性子線検出装置を中性子捕捉療法装置1に適用しているが、中性子線検出装置の用途は限定されない。例えば、原子炉の運転状態を監視するモニタとして、本発明の中性子線検出装置を適用してもよい。また、物理実験で使用される加速中性子を測定する際に本発明の中性子線検出装置を使用してもよい。また、非破壊検査用の中性子照射装置において、本発明の中性子線検出装置を使用してもよい。
【符号の説明】
【0077】
1…中性子捕捉療法装置、13…シンチレータ、14…光ファイバ、15…光検出器、20…制御部、21…線量算出部、22…照射制御部、40…判定閾値設定部、41…検出信号取得部、42…波高分布取得部、43…判定閾値調整部、44…要求検出精度取得部、100…中性子線検出システム、N…中性子線、M…中性子線生成部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7