(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6742315
(24)【登録日】2020年7月30日
(45)【発行日】2020年8月19日
(54)【発明の名称】高屈折率を有する耐溶媒性の透明な芳香族ポリアミドフィルム
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20200806BHJP
C08G 69/26 20060101ALI20200806BHJP
【FI】
C08J5/18CFG
C08G69/26
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-531458(P2017-531458)
(86)(22)【出願日】2015年8月31日
(65)【公表番号】特表2017-526803(P2017-526803A)
(43)【公表日】2017年9月14日
(86)【国際出願番号】US2015047834
(87)【国際公開番号】WO2016033613
(87)【国際公開日】20160303
【審査請求日】2018年8月3日
(31)【優先権主張番号】62/043,513
(32)【優先日】2014年8月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517065943
【氏名又は名称】アクロン ポリマー,インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】514286907
【氏名又は名称】サン,リミン
(73)【特許権者】
【識別番号】514286918
【氏名又は名称】チャン,ドン
(73)【特許権者】
【識別番号】517064706
【氏名又は名称】ジン,ジャオカイ
(73)【特許権者】
【識別番号】315016011
【氏名又は名称】ハリス,フランク ダブリュー.
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】サン,リミン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ドン
(72)【発明者】
【氏名】ジン,ジャオカイ
(72)【発明者】
【氏名】ハリス,フランク,ダブリュー.
【審査官】
大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2014/047640(WO,A1)
【文献】
特表2014−508851(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/006452(WO,A1)
【文献】
国際公開第2014/003092(WO,A1)
【文献】
特表2015−529284(JP,A)
【文献】
特表2014−522894(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/115216(WO,A1)
【文献】
国際公開第2014/047642(WO,A1)
【文献】
国際公開第2014/126210(WO,A1)
【文献】
特開2005−300722(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/125651(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00−5/02;5/12−5/22
C08G 69/00−69/50
C08G 59/00−59/72
C08K 3/00−13/08
C08L 1/00−101/14
H05B 33/00−33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高屈折率を有する耐溶媒性の透明な芳香族ポリアミドフィルムを作製する方法であって、
溶液状の芳香族ポリアミドポリマーを形成するように、有機溶媒中で少なくとも1種の芳香族二酸クロリド、および少なくとも1種の芳香族ジアミンを反応させ、その後、得られた溶液状の前記芳香族ポリアミドポリマーに少なくとも1種の架橋剤を添加するステップであって、
前記少なくとも1種の芳香族二酸クロリドが、イソフタロイルジクロリド、テレフタロイルジクロリド、2,6−ナフタレン−ジカルボン酸クロリドまたはその組み合わせからなる群から選択され、前記少なくとも1種の芳香族ジアミンが、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオリン、2,2’,5,5’−テトラクロロベンジジンまたはその組み合わせからなる群から選択され、かつ、前記架橋剤が芳香族カルボン酸化合物であり、前記架橋剤と前記芳香族ポリアミドポリマーの質量比が5:100であるように存在する、ステップと、
前記有機溶媒を溶液状の前記芳香族ポリアミドポリマーから留去させて、透明な芳香族ポリアミド前駆体フィルムを形成するステップと、
前記透明な芳香族ポリアミド前駆体フィルムを該前駆体フィルムのガラス転移温度に近い温度、すなわち270℃超の温度、で加熱して、1.6500を超える屈折率を有する、耐溶媒性の透明な芳香族ポリアミドフィルムを形成するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1種の芳香族二酸クロリドが、0:100〜70:30のモル比のそれぞれテレフタロイルジクロリドとイソフタロイルジクロリドとの混合物からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
テレフタロイルジクロリド対イソフタロイルジクロリドの前記モル比はそれぞれ60:40〜70:30である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の芳香族ジアミンは9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオリンである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記架橋剤がトリメシン酸、3,3’,5,5’−ビフェニルテトラカルボン酸、およびその組み合わせからなる群から選択される芳香族カルボン酸化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記芳香族カルボン酸化合物はトリメシン酸である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記透明な芳香族ポリアミド前駆体フィルムを前記透明な芳香族ポリアミド前駆体フィルムのガラス転移温度に近い温度で加熱する前記ステップが少なくとも30分間行われる、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2014年8月29日出願の米国仮出願番号第62/043,513号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、一般の有機溶媒に溶解でき、および種々の基板を被覆する、または自立膜に流延することができる熱的に安定な芳香族ポリアミドの製造に関する。より詳しくは、本発明は、高屈折率を有する耐溶媒性の透明なポリアミドフィルムの製造において、芳香族ポリアミドを高いガラス転移温度(Tg)で使用することに関する。
【背景技術】
【0003】
透明なポリマー材料は、特に、光学部品の製造において有用である。これらの材料は軽量で頑丈である。高屈折率を有するポリマーフィルムは、有機発光ダイオード(OLED)、マイクロレンズ、可撓性基板、反射防止層、その他などの先端のオプトエレクトロニクス製造において種々の潜在用途があるので、特に注目されている。
【0004】
そのようなフィルムが広範囲にわたり商業的な成功を達成することは困難であることが判明している。硫黄がモル屈折率に大きく寄与するため、含硫黄モノマーおよびそのポリマーを調製する多数の取り組みがなされてきた。しかし、このポリマーはTgが低く(約150C)、一般に市販されていなく、費用効果がなく、かつ一般的な有機溶媒への溶解性が限定されている。
【0005】
既知のポリマーのTgを上昇させるために、含硫黄ポリイミドが提案され、調製された。しかし、該ポリマーは、吸収がほぼ400nmであり、多少黄色を示した。無機粒子は通常有機ポリマーと比較してはるかに高い屈折率を有するために、高屈折率を有するポリマーナノ粒子ハイブリッドシステムが提案されてきたことに留意されたい。このポリマーは、良好な光透過性と熱安定性を示した。しかし、このポリマーの生産を拡大することは、容易でなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ポリマーフィルムを商業的に実現可能にするためには、高透明度と高屈折率以上のものを提供するポリマーフィルムでなければならない。ポリマーフィルムは溶液流延フィルムであり、しかも使用時に耐溶媒性でなければならない。オプトエレクトロニクスデバイスへの組み込みで必要とされる処理条件に耐えぬくためには、ポリマーフィルムは熱的に安定でなければならない。これらの条件下で、ポリマーフィルムは寸法的にも安定でなければならない。このように、ポリマーフィルムは高いガラス転移温度(Tg)と低い熱膨張率(CTE)を有する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
高屈折率を有する耐溶媒性の透明な芳香族ポリアミドフィルムは、溶液状の芳香族ポリアミドポリマーを形成するように、有機溶媒中で少なくとも1種の芳香族二酸クロリド、第1の芳香族ジアミンおよび少なくとも1種の架橋剤または第2の芳香族ジアミンを反応させることによって作製することができる。一実施形態において、少なくとも1種の芳香族二酸クロリドは、イソフタロイルジクロリド、テレフタロイルジクロリド、2,6−ナフタレン−ジカルボン酸クロリドまたはその組み合わせからなる群から選択され、および第1の芳香族ジアミンは、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオリン、2,2’,5,5’−テトラクロロベンジジンまたはその組み合わせからなる群から選択される。次いで有機溶媒は溶液状の芳香族ポリアミドポリマーから留去されて、透明な芳香族ポリアミド前駆体フィルムが形成される。次いで、この透明な芳香族ポリアミド前駆体フィルムは、この前駆体フィルムのガラス転移温度に近い温度で加熱されて、耐溶媒性の透明な芳香族ポリアミドフィルムが形成される。この方法に従って作製されたフィルムは、耐溶媒性になりながら、少なくとも約1.650の高屈折率を保持することが分かったのは驚くべきことであった。
【発明を実施するための形態】
【0008】
高屈折率を有する耐溶媒性の透明なフィルムは、ガラス転移温度(Tg)が高い、可溶性の芳香族ポリアミドから作製される。このフィルムは、極性非プロトン溶媒に溶解したポリアミド溶液から流延される。架橋剤が流延の前にポリマー溶液に加えられるか、または架橋に影響を与えるために使用できる官能基が適切なモノマーを使用することによりポリアミドに最初に取り入れられる。フィルムは、前駆体フィルムを形成するように流延されてから、可溶性芳香族ポリアミドに関連している高熱安定性、高透明度および高屈折率を維持しながら、耐溶媒性を呈するように加熱される。
【0009】
一実施形態において、芳香族ポリアミドは、0℃でDMAcなどの有機溶媒中で少なくとも1種の芳香族二酸クロリドおよび芳香族ジアミンを重合することにより作製することができる。いくつかの芳香族ジアミンを用いてポリアミドの溶解度およびそれから調製したフィルムの屈折率を高め得ることが判明したのは驚くべきことであった。二酸クロリドと芳香族ジアミンの間の反応で生成される塩酸は、酸化プロピレン(PrO)または無機塩のような試薬との反応によってトラップすることができる。次いで、多官能エポキシ樹脂または多官能芳香族カルボン酸などの架橋剤を該重合混合物に加えてもよい。
【0010】
重合の後、結果として生じたポリマー溶液を直接、基板上に流延して、前駆体フィルムを形成してもよく、または最初にポリマーをメタノールなどの非溶媒に沈殿させることによって、ポリマー溶液から分離してもよい。次いで、分離後、乾燥させたポリマーは、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−ピロリドン(NMP)またはγ−ブチロラクトン(GBL)などの一般的な有機溶媒中で、架橋剤を加えて、再溶解させることもできる。
【0011】
別の実施形態において、架橋に影響を及ぼすことできる官能基、例えばカルボキシル基は、適切に置換されたジアミンモノマーを使用することによりポリアミド主鎖に結合させることができる。このモノマーは、二酸クロリドとの重合作用においてフィルム屈折率に寄与するジアミンと共に使用される。重合は、上述のように行われる。しかし、この場合、余分な架橋剤を重合混合物に加える必要はない。しかしながら、場合によっては、少量を加えて、低温で架橋させることもできる。
【0012】
上述のすべての方法において、透明なフィルムは、前駆体フィルムを形成するようにガラス板などの平坦基板上にポリマー溶液を被覆する、または流延することによって調製することができる。次いで、透明な前駆体フィルムは、フィルムに耐溶媒性を加えるために、高温、すなわち芳香族ポリアミドのガラス転移温度(Tg)に近い温度で加熱することによって架橋させることができる。耐溶媒性フィルムは、高屈折率、高透明度および未硬化フィルムの高屈折率を維持する。
【0013】
ポリアミドフィルムは、一般に、400〜750nmの範囲にわたる高光透過性(400nmで約50%を超える透過率)、低熱膨張率(約60ppm/℃未満のCTE)、高ガラス転移温度(約270℃を超えるTg)および高屈折率(1.6500より高い)を有する。架橋フィルムは、有機溶媒への浸漬後、表面にしわ、膨張またはその他の目に見える損傷が実質的にない場合、耐溶媒性であるとみなされる。
【0014】
上述のように、本発明において有用なポリアミドは、少なくとも1種の芳香族二酸ジクロリドおよび少なくとも1種の芳香族ジアミンを組み合わせることによって形成されることができる。一実施形態において、芳香族ポリアミドを調製するのに適している芳香族二酸ジクロリドとしては以下が挙げられるが、これらに限定されない:
【0015】
イソフタロイルジクロリド(IPC);
【化1】
テレフタロイルジクロリド(TPC);および
【化2】
2,6−ナフタレンジカルボン酸クロリド(NDC)。
【化3】
【0016】
ポリアミドを調製するのに適している芳香族ジアミンとしては以下が挙げられるが、これらに限定されない:
【0017】
9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオリン(FDA);および
【化4】
2,2’,5,5’−テトラクロロベンジジン(TCB)。
【化5】
【0018】
そのようなジアミンをベースとしたポリアミドから調製されるフィルムは、高屈折率を示す。
【0019】
架橋剤として使用できる多官能エポキシ化合物としては以下が挙げられるが、これらに限定されない:
【0020】
イソシアヌル酸トリグリシジル(TG);
【化6】
ビスフェノールAジグリシジルエーテル(BPDDGE);および
【化7】
フェノールノボラックエポキシ。
【化8】
【0021】
架橋剤として使用できる多官能芳香族カルボン酸としては以下が挙げられるが、これらに限定されない:
【0022】
トリメシン酸(TA);および
【化9】
3,3’,5,5’−ビフェニルテトラカルボン酸(BPTA)。
【化10】
【0023】
ペンダントカルボキシル基を含有するポリアミドを調製するために使用できるモノマーとしては以下が挙げられるが、これらに限定されない:
【0024】
3,5−ジアミノ安息香酸(DAB);および
【化11】
4,4’−ジアミノジフェン酸(DADP)。
【化12】
【0025】
一実施形態において、芳香族ポリアミドはジアミンと共にTPCとIPCの組み合わせを用いて、調製されることができる。この実施形態において、TPC対IPCのモル比は、0:100〜70:30であり得、60:40〜70:30が好ましい。DABがジアミンに加えられる場合、TPC対IPCのモル比は0:100〜90:10であり得るが、90:10が好ましい。別の実施形態において、DABまたはDADPを用いて架橋を成し遂げる場合、これらのジアミンは一般にジアミン含有量の約1モル%〜約10モル%の量で存在し、約5モル%が望ましい。多官能エポキシ化合物または多官能芳香族カルボン酸が架橋剤として用いられる場合、それらの化合物は一般に芳香族ポリアミドポリマーの約1重量%〜10重量%、望ましくは約5重量%の量で存在する。
【0026】
ポリマー溶液の調製
実施例1.
本実施例は、酸ジクロリド(TPC、IPCおよび/またはNDC)と、少なくとも1種のジアミン(FDAまたはTCB)との混合物から芳香族ポリアミド溶液を調製するための基本手順を例示する。一般化学反応式を以下に示す:
【0028】
一実験において、約87.11g(0.25モル)の9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオリン(FDA)、44g(0.75モル)の酸化プロピレン(PrO)および1014gのジメチルアセトアミド(DMAc)を、窒素注入口および排出口と、機械式スターラーとを備える2L三首丸底フラスコに加えた。FDAが完全に溶解したならば、得られた溶液を氷水浴中で冷却した。冷却した前述の溶液に対して、約15.23g(0.075モル)のイソフタロイルジクロリド(IPC)を該フラスコに加えた。次いで、約35.53g(0.175モル)のテレフタロイルジクロリド(TPC)を数回に分けて2時間にわたって加えた。次いで、ジクロリド/ジアミン溶液を室温でさらに6時間撹拌させて、ポリマー溶液を形成した。次いで、このポリマー溶液をフィルム調製のために使用した。別法として、純粋なポリマーは、大量のメタノールに沈殿させ、得られたポリマーを新鮮なメタノールに数回浸漬させ、次いで減圧下で乾燥させることによって分離させてもよい。次いで、このポリマーを有機溶媒に再溶解させることができる。
【0029】
実施例2.
本実施例は、ペンダントカルボン酸基を含有するポリアミド溶液を調製するために用いられる基本手順を例示する。ポリマー溶液は、ジクロリド(TPC、IPCおよび/またはNDC)の混合物およびジアミンの混合物、例えば遊離ペンダントカルボン酸基を含む少なくとも1種(FDAまたはTCBとDAB)から作成することができる。一般化学反応式を以下に示す:
【0031】
一実験において、約3.3101g(0.0095モル)のFDA、0.0761g(0.0005モル)の3,5−ジアミノ安息香酸(DAB)、4.4g(0.075モル)のPrOおよび38gのDMAcを、窒素注入口および排出口と、機械式スターラーとを備える250mL三首丸底フラスコに加えた。ジアミンが完全に溶解したならば、溶液を氷水浴中で冷却した。この溶液に対して、約0.2030g(0.001モル)のIPCを該フラスコに加えた。次いで、約1.8272g(0.009モル)のTPCを数回に分けて2時間にわたって加えた。次いで、酸ジクロリド/ジアミン溶液を室温でさらに6時間撹拌させた。次いで、この溶液をフィルム調製のために使用した。別法として、ポリマーは、大量のメタノールに沈殿させ、沈殿したポリマーを新鮮なメタノールに数回浸漬させ、次いで減圧下で乾燥させることによって分離させてもよい。次いで、このポリマーを有機溶媒に再溶解させることができる。
【0032】
実施例3および4.
これらの実施例は、多官能エポキシ化合物(実施例3)を含有するポリアミド溶液および多官能芳香族カルボン酸(実施例4)を含有するポリアミド溶液を調製するのに用いられる基本手順を例示する。実施例1に記載のように、最初にポリマー溶液を調製し、次いでTGまたはTAのいずれか(ポリマーの5重量%に相当する量)を加える。ポリマー溶液は、総計約10重量%の固形物を含む。
【0033】
フィルムの調製
ポリマー溶液は、ドクターブレードを用いてガラス基板上に広げる。溶媒を60℃で1時間留去させておき、次いで減圧下160℃で12時間、乾燥させる。多官能エポキシ化合物を含有するフィルムの場合、さらなる加熱は必要ない。しかし、多官能芳香族カルボン酸を含有するフィルムおよびペンダントカルボキシル基を含有するポリアミドから調製したフィルムは、ポリアミドのTgに近い高温で30分間さらに加熱し、次いでガラス基板から取り外す。このようにして調製したフィルムは、厚さが約10〜20ミクロンである。
【0034】
フィルムの特性評価
厚さ10ミクロンのフィルムの透過率をShimadzi UV−2450分光計で測定した。厚さ20μmのフィルムのガラス転移温度(Tg)および熱膨張率(CTE)をTA Instruments Q400熱機械分析計(TMA)で測定した。10ミクロンフィルムのnx軸とny軸に沿った(面内)屈折率およびnzに沿った(面外)屈折率を厚さ約10μmフィルムの場合633nmでMetricon社のPrism Coupler 2010/Mで決定した。前述のフィルムの平均屈折率を以下の方程式を使用して決定した。
RI=(nx+ny+nz)/3
面外複屈折は、以下の方程式を使用して決定した。
Δn = nz−(nx+ny)/2
【0035】
フィルム特性
実施例1に記載の手順に従って調製したポリマー溶液から流延したフィルムの特性を表1に示す(これらのフィルムは、いかなる架橋剤も含まない)。
【0036】
【表1】
1M1、M2、M3はモノマー1、2および3を指す。Tgはガラス転移温度(℃)を指し、CTEは50℃と200℃の間の熱膨張率(ppm/℃)を指し、T%は400nmでの透過率を指し、RIは屈折率(633nm)を指し、およびΔnは複屈折(633nm)を指す。
【0037】
実施例3に記載の手順に従って調製したポリマー溶液から流延したフィルムの特性を表2に示す。このように、該フィルムは架橋剤TGを含んでいた。架橋剤TGとポリアミドとの質量比は、5対100であった。ポリマーフィルムを減圧下160℃で12時間加熱した。該フィルムの耐溶媒は、フィルムを室温でNMPに30分間浸漬することによって決定した。
【0039】
実施例4に記載の手順に従って調製したポリマー溶液から流延したフィルムの特性を表3に示す。このように、該フィルムは架橋剤TAを含んでいた。該架橋剤とポリアミドとの質量比は、5対100であった。該フィルムをポリマーTg近くまで30分間加熱した。該フィルムの耐溶媒性は、フィルムを室温でNMPに30分間浸漬することによって決定した。
【0041】
実施例2に記載の手順に従って調製したポリマー溶液から流延したフィルムの特性を表4に示す。このように、該フィルムはペンダントカルボキシル基を有するポリアミドを含んでいた。該フィルムをポリマーTg近くまで30分間加熱した。該フィルムの耐溶媒性は、フィルムを室温でNMPに30分間浸漬することによって決定した。
【0043】
上記のデータが示すように、種々のポリマーフィルムを約350℃、すなわちポリマーのガラス転移温度に近い温度まで加熱し、架橋剤または第2のジアミンを加えることによって、フィルムは、本明細書に記載の所望の光学特性を維持しながら、有機溶媒に溶解できるものから、耐溶媒性であるものに変わった。
【0044】
例示的な方法および組成物は実施例を記載することによって示し、該実施例はかなり詳細に記述しているが、添付の特許請求の範囲をこのような詳細に制限する、または多少なりとも限定することは、本出願者らの意図するところではない。システム、方法、デバイス等を述べる目的のために、本明細書に記載の構成成分または方法の考えられるすべての組み合わせを述べることは、もちろんできない。さらなる利点および修正は、当業者には容易に明らかになるであろう。したがって、本発明は、示され、かつ記載された、具体的な詳細、代表的な装置および例示的な実施例に限定されるものではない。したがって、本出願は、添付の特許請求の範囲内に該当する変更、修正および変形を包含することを意図する。さらに、前述の説明は、本発明の範囲を限定することを意味するものではない。むしろ、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって決定されるものとする。