(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6742339
(24)【登録日】2020年7月30日
(45)【発行日】2020年8月19日
(54)【発明の名称】液体口腔用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/19 20060101AFI20200806BHJP
A61K 8/46 20060101ALI20200806BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20200806BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20200806BHJP
【FI】
A61K8/19
A61K8/46
A61K8/44
A61Q11/00
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-556072(P2017-556072)
(86)(22)【出願日】2016年12月13日
(86)【国際出願番号】JP2016087068
(87)【国際公開番号】WO2017104664
(87)【国際公開日】20170622
【審査請求日】2019年10月16日
(31)【優先権主張番号】特願2015-242955(P2015-242955)
(32)【優先日】2015年12月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内野 陽介
【審査官】
田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】
特表平04−501863(JP,A)
【文献】
特表2013−529634(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/094849(WO,A1)
【文献】
国際公開第2013/180019(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、及びセスキ炭酸ナトリウムから選ばれる1種又は2種以上の炭酸塩 炭酸換算量で0.1質量%以上2質量%以下
(B)アニオン界面活性剤 0.2質量%以上1.7質量%以下
(C)水 60質量%以上99.5質量%以下
を含有し、多価金属カチオン(D)の含有量が成分(A)に対して0.1倍モル未満であり、成分(A)の炭酸換算量と成分(B)の含有量の積の値((A)×(B))が0.9以下であり、25℃におけるpHが8.5以上10.5以下であり、かつ
ノニオン界面活性剤(F)の含有量が0.5質量%以下である液体口腔用組成物。
【請求項2】
成分(A)以外のpH調整剤(E)の含有量が、成分(A)の炭酸換算量100質量部に対して20質量部以下である請求項1に記載の液体口腔用組成物。
【請求項3】
成分(B)が、アルキル硫酸ナトリウム、アシルグルタミン酸ナトリウム、及びラウリルメチルタウリンナトリウムから選ばれる1種又は2種以上である請求項1又は2に記載の液体口腔用組成物。
【請求項4】
成分(A)以外のpH調整剤(E)が、アミノ酸(e-1)、アルカリ金属水酸化物(e-2)、成分(e-1)以外の有機酸又はその塩(e-3)、成分(e-2)以外の無機酸又はその塩(e-4)、並びに尿素から選ばれる請求項1〜3のいずれか1項に記載の液体口腔用組成物。
【請求項5】
成分(A)以外のpH調整剤(E)のうち、アルカリ金属水酸化物(e-2)の含有量が、成分(A)の炭酸換算量100質量部に対して10質量部以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の液体口腔用組成物。
【請求項6】
成分(B)が、少なくともアルキル硫酸ナトリウムを含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の液体口腔用組成物。
【請求項7】
成分(A)の炭酸換算量と成分(B)の含有量の積の値((A)×(B))が、0.08以上0.8以下である請求項1〜6のいずれか1項に記載の液体口腔用組成物。
【請求項8】
研磨性粉体、及び顆粒から選ばれる粒状体の合計含有量が、1質量%以下である請求項1〜7のいずれか1項に記載の液体口腔用組成物。
【請求項9】
過酸化物、及び二酸化塩素から選ばれる消毒剤の合計含有量が、0.1質量%以下である請求項1〜8のいずれか1項に記載の液体口腔用組成物。
【請求項10】
次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、及びセスキ炭酸ナトリウムから選ばれる1種又は2種以上の炭酸塩 炭酸換算量で0.1質量%以上2質量%以下
(B)アニオン界面活性剤 0.2質量%以上1.7質量%以下
(C)水 70質量%以上99.5質量%以下
を配合する工程を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の液体口腔用組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、歯面に付着した歯垢又は歯石の除去効果や、う蝕防止効果、着色汚れの除去効果等、種々の性能を発揮し得る液体口腔用組成物が開発されている。例えば、特許文献1には、カルシウムイオン、リン酸イオン、又は重炭酸イオンが添加されたpHが8以上12以下の口腔洗浄剤が開示されており、歯質の脱灰を抑制すべく、バイオフィルムの除去効果を高めている。また、特許文献2には、香料を含有しつつブロックコポリマー型非イオン界面活性剤と両性界面活性剤とを併用した、pHが8.0以上の口腔用組成物が開示されており、香料の可溶化や経時的安定化を図っている。
さらに、特許文献3には、ホワイトニング成分として炭酸ナトリウムや炭酸水素ナトリウム等の炭酸塩を含むホワイトニング剤が開示されており、安全で簡便な歯のホワイトニングを実現している。
【0003】
(特許文献1)特開2008−1657号公報
(特許文献2)特開平10−77217号公報
(特許文献3)特開2014−152166号公報
【0004】
本発明は、次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、及びセスキ炭酸ナトリウムから選ばれる1種又は2種以上の炭酸塩 炭酸換算量で0.1質量%以上2質量%以下
(B)アニオン界面活性剤 0.2質量%以上1.7質量%以下
(C)水 60質量%以上99.5質量%以下
を含有し、多価金属カチオン(D)の含有量が成分(A)に対して0.1倍モル未満であり、成分(A)の炭酸換算量と成分(B)の含有量の積の値((A)×(B))が0.9以下であり、かつ
25℃におけるpHが8.5以上10.5以下である液体口腔用組成物に関する。
【0005】
日常の飲食等によって歯面に付着する着色汚れは、様々な汚れが混在しており、口腔内にて一定時間含嗽するという、簡易な適用方法を採用する液体口腔用組成物において、良好な使用感を保持しながら、こうした着色汚れを充分に除去するのは困難であることが知られている。
そのため、上記特許文献1〜2に記載の組成物であっても、着色汚れの除去効果を充分に高めるのは困難であり、また上記特許文献3に記載の組成物であっても、歯肉や口腔内粘膜への刺激性が増強して、為害性のない良好な使用感が得られないおそれがあり、着色汚れの除去効果との両立を図るには、依然として更なる改善を要する。
【0006】
したがって、本発明は、良好な使用感を保持しつつ着色汚れの除去効果に優れる液体口腔用組成物に関する。
【0007】
そこで本発明者は、種々検討したところ、水酸化物イオン(OH
-)を持続的に供給することが着色汚れの除去に大いに寄与することに着目し、かかる水酸化物イオンの供給源として緩衝能を有する特定の炭酸塩を用いることが有効であることを新たに見出した。そして本発明者は、特定量の水の存在下、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、及びセスキ炭酸ナトリウムから選ばれる1種又は2種以上の炭酸塩と、アニオン界面活性剤とを各々特定量かつ特定の積の値を示すよう併用し、多価金属カチオンの含有量を制限しつつ、特定のアルカリpH領域に調整することにより、良好な使用感を保持した、着色汚れの除去効果に優れる液体口腔用組成物が得られることを見出すに至った。
【0008】
本発明の液体口腔用組成物によれば、口腔内にて含嗽するのみで、歯肉や口腔内粘膜に対する刺激性の増強等による為害性の発現や、苦味等による風味の低下を有効に防止して、良好な使用感を保持しつつ、日常の飲食等によって歯面に堅固に付着した着色汚れを効果的に除去することができる。
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の液体口腔用組成物は、成分(A)として、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、及びセスキ炭酸ナトリウムから選ばれる1種又は2種以上の炭酸塩を含有する。これらの炭酸塩は、いずれも緩衝能を有するとともにpH調整剤としても用い得るものであり、本発明では、これらを成分(A)として、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、及びセスキ炭酸ナトリウムから選ばれる1種を用いてもよく、より好ましくは、炭酸水素ナトリウムと炭酸ナトリウム、及びセスキ炭酸ナトリウムから選ばれる炭酸塩を配合し含有する。炭酸水素ナトリウムと炭酸ナトリウム、及びセスキ炭酸ナトリウムから選ばれる炭酸塩を用いるとは、炭酸水素ナトリウムと炭酸ナトリウムを併用した混合物を用いるか、又はセスキ炭酸ナトリウムを単独で用いるか、或いは炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、及びセスキ炭酸ナトリウムの全てを用いるかのいずれかの態様である。かかる成分(A)を用いることにより、各々が有する緩衝能が充分に発揮され、口腔内において持続的に水酸化物イオンを供給して、後述するようにpHを所定のアルカリ領域に調整して、使用感が良好でありながら歯面等に付着した着色汚れを効果的に除去する効果を充分に発揮することができる。かかる成分(A)としては、着色汚れの除去効果を高める観点から、炭酸水素ナトリウムと炭酸ナトリウムを併用するのが好ましい。
【0010】
成分(A)の含有量は、高い着色汚れの除去効果を確保する観点から、本発明の液体口腔用組成物中に、炭酸(H
2CO
3)換算量で0.1質量%以上であって、好ましくは0.15質量%以上であり、より好ましくは0.18質量%以上であり、さらに好ましくは0.20質量%以上である。また、成分(A)の含有量は、歯肉や口腔内粘膜における為害性等を抑制する観点、及び風味を確保する観点から、本発明の液体口腔用組成物中に、炭酸換算量で2質量%以下であって、好ましくは1.5質量%以下であり、より好ましくは1.3質量%以下であり、さらに好ましくは1.0質量%以下であり、よりさらに好ましくは0.6質量%以下である。そして、成分(A)の含有量は、本発明の液体口腔用組成物中に、炭酸換算量で0.1質量%以上2質量%以下であって、好ましくは0.15〜1.5質量%であり、より好ましくは0.18〜1.3質量%であり、さらに好ましくは0.20〜1.0質量%であり、よりさらに好ましくは0.20〜0.6質量%である。
【0011】
本発明の液体口腔用組成物は、成分(B)として、アニオン界面活性剤を0.2質量%以上1.7質量%以下含有する。成分(B)をかかる量で含有することにより、上記成分(A)による着色汚れの除去効果を相乗的に高めることができるとともに、為害性等の発現を有効に防止して良好な使用感を保持することができる。
【0012】
かかる成分(B)としては、例えば、アルキル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩、アシルグルタミン酸ナトリウムやアシルサルコシンナトリウム等のアシルアミノ酸塩、ラウリルメチルタウリンナトリウム等のN−メチル長鎖アシルタウリンナトリウム塩、アルキルリン酸ナトリウム等のアルキルリン酸塩、高級脂肪酸スルホン化モノグリセリド塩、イセチオン酸の脂肪酸エステル塩、及びポリオキシエチレンモノアルキルリン酸塩から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。なかでも、着色汚れの高い除去効果と良好な使用感を両立させる観点から、アルキル硫酸ナトリウム、アシルグルタミン酸ナトリウム、及びラウリルメチルタウリンナトリウムから選ばれる1種又は2種以上であるのが好ましく、少なくともアルキル硫酸ナトリウムを含むのがより好ましく、またアルキル硫酸ナトリウムとその他の成分(B)とを併用するのがより好ましい。
【0013】
かかるアルキル硫酸ナトリウムとしては、具体的には、炭素数8〜18の飽和又は不飽和のアルキル基を有するアルキル硫酸ナトリウムが挙げられ、溶解性と製造性及び使用感の観点から、炭素数10〜14の飽和又は不飽和のアルキル基を有するアルキル硫酸ナトリウムが好ましく、より具体的には、ラウリル硫酸ナトリウム、及びミリスチル硫酸ナトリウムから選ばれる1種又は2種がより好ましく、ラウリル硫酸ナトリウムがさらに好ましい。
【0014】
成分(B)の含有量は、着色汚れの除去効果を有効に高める観点から、本発明の液体口腔用組成物中に、0.2質量%以上であって、好ましくは0.4質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上である。また、成分(B)の含有量は、歯肉や口腔内粘膜における為害性等を有効に抑制する観点、及び良好な風味を保持する観点から、本発明の液体口腔用組成物中に、1.7質量%以下であって、好ましくは1.6質量%以下であり、より好ましくは1.5質量%以下であり、さらに好ましくは1.2質量%以下であり、よりさらに好ましくは1.0質量%以下である。そして、成分(B)の含有量は、本発明の液体口腔用組成物中に、0.2質量%以上1.7質量%以下であって、好ましくは0.4〜1.6質量%であり、より好ましくは0.5〜1.5質量%であり、さらに好ましくは0.5〜1.2質量%以下であり、よりさらに好ましくは0.5〜1.0質量%以下である。
【0015】
成分(A)の炭酸換算量と成分(B)の含有量の積の値((A)×(B))は、着色汚れの高い除去効果と為害性等を抑制することによる良好な使用感とを有効に両立させる観点から、0.9以下であって、好ましくは0.8以下であり、より好ましくは0.5以下であり、さらに好ましくは0.4以下であり、好ましくは0.08以上であり、より好ましくは0.10以上である。そして、成分(A)の炭酸換算量と成分(B)の含有量の積の値((A)×(B))は、0.9以下であって、好ましくは0.08〜0.9であり、より好ましくは0.08〜0.8であり、さらに好ましくは0.10〜0.5であり、さらに好ましくは0.10〜0.4である。ここで、成分(A)の炭酸換算量と成分(B)の含有量の積は、各々の組成物100質量%中における質量%表記の値の積である。
上記成分(A)は、その炭酸換算量が増大するにつれ、主として液体口腔用組成物のpH値が後述する特定のアルカリ領域超えとなったり風味が低下したりするおそれを高める特性を有する一方、上記成分(B)は、その含有量が増大するにつれ、主として為害性等が発現しやすくなるだけでなく、風味も損なわれて使用感が低下するおそれを高める特性を有する。本発明者は、こうした成分(A)と成分(B)が有する各々の特性を加味したところ、液体口腔用組成物において、優れた着色汚れの除去効果と良好な使用感を両立させるにあたり、成分(A)及び成分(B)を上記特定の量で含有することに加え、これら含有量の積の値((A)×(B))を上記特定の範囲とすることが、優れた着色汚れの除去効果と良好な使用感の双方を確保する上で非常に有効であることを見出したのである。
【0016】
成分(A)の炭酸換算量と成分(B)の含有量の合計量は、着色汚れの除去効果を有効に高める観点から、本発明の液体口腔用組成物中に、好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは0.55質量%以上であり、さらに好ましくは0.7質量%以上であり、よりさらに好ましくは0.75質量%以上である。また、成分(A)の炭酸換算量と成分(B)の含有量の合計量は、歯肉や口腔内粘膜における為害性等を有効に抑制する観点、及び良好な風味を保持する観点から、本発明の液体口腔用組成物中に、好ましくは2.4質量%以下であり、より好ましくは2.2質量%以下であり、さらに好ましくは2.0質量%以下であり、よりさらに好ましくは1.6質量%以下である。そして、成分(A)の炭酸換算量と成分(B)の含有量の合計量は、本発明の液体口腔用組成物中に、好ましくは0.5〜2.4質量%であり、より好ましくは0.55〜2.2質量%であり、さらに好ましくは0.7〜2.0質量%であり、よりさらに好ましくは0.75〜1.6質量%である。
【0017】
本発明の液体口腔用組成物は、成分(C)として、水を60質量%以上99.5質量%以下含有する。本発明における成分(C)の水とは、液体口腔用組成物に配合した精製水やイオン交換水等だけでなく、配合した各成分に含まれる水分をも含む、液体口腔用組成物中に含まれる全水分を意味する。かかる成分(C)の水を含有することにより、各成分を良好に分散又は溶解させることができるとともに、使用時においても口腔内の隅々にわたり液体口腔用組成物を良好に拡散させて優れた着色汚れの除去効果を発揮させることができる。なお、水の含有量が60質量%にも満たない歯磨剤等の口腔用組成物であると、口腔内において特定の部位に偏在しやすいことから、局所的な効果が得られる一方、口腔内全域にわたって所望の効果を得る観点、或いは口腔内全域にわたるまでに唾液により希釈されつつも所望の効果を得る観点から、本発明のように、口腔内にて一定時間含嗽することで口腔内の全体に各成分の含有量等を可能な限り保持したまま適用しやすい、液体口腔用組成物が好ましい。
【0018】
成分(C)の含有量は、各成分を良好に分散又は溶解させる観点から、本発明の液体口腔用組成物中に、60質量%以上であって、好ましくは65質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上である。また、成分(C)の含有量は、優れた着色汚れの除去効果を確保する観点から、本発明の液体口腔用組成物中に、99.5質量%以下であって、好ましくは99.2質量%以下であり、より好ましくは99.15質量%以下である。そして、成分(C)の含有量は、本発明の液体口腔用組成物中に、60質量%以上99.5質量%以下であって、好ましくは65〜99.2質量%であり、より好ましくは70〜99.15質量%である。
【0019】
本発明の液体口腔用組成物は、多価金属カチオン(D)の含有量が、成分(A)に対して0.1倍モル未満である。かかる多価金属カチオンは、本発明の液体口腔用組成物において、成分(A)等を不溶性にしたり着色汚れの除去効果を低減させたりするおそれがあるため、その含有を制限するものである。多価金属カチオンの合計含有量は、ICP発光分析法(ICP発光分析装置:Perkin Elmer社 Optima 5300DV)で測定し、成分(A)の炭酸換算量に対して、0.1倍モル未満であって、好ましくは0.02倍モル以下である。したがって、本発明の液体口腔用組成物において、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛等の多価金属カチオンを供給する成分は含有しないことが望ましく、また不可避的に混入する場合を除き、多価金属カチオンを含有しないものであってもよい。なお、前述の多価金属カチオンは、多価金属を含む成分であれば、例えば不溶性の多価金属塩であって粒状体として組成物中に存在しても、成分(A)による本発明の効果を減少させる傾向がある。例えば、水酸化アルミニウムのような研磨性粉体であっても、液体口腔用組成物中にアルミニウムイオンを供給する。したがって、本発明の液体口腔用組成物が多価金属塩を含有する場合には、液体口腔用組成物中に含まれる水分にカチオンが微量ずつ供給されたり、多価金属塩と成分(A)の接触によっても成分(A)を吸着させたりすることにより、成分(A)による着色汚れ除去性能の低下を生じるものと考えられる。
【0020】
なお、本明細書において「粒状体」とは、研磨性粉体、及び顆粒の総称であり、平均粒径5〜800μmの粒状を呈する、研磨性粉体及び顆粒を意味する。本発明の液体口腔用組成物において、かかる粒状体は、成分(A)等を不溶性にしたり着色汚れの除去効果を低減させたりすることを抑制する観点から、その含有を制限するのが好ましい。
【0021】
研磨性粉体とは、研磨剤として機能し得る粉体であり、かかる研磨性粉体としては、具体的には、例えば、上記水酸化アルミニウムのほか、第二リン酸カルシウム、第三リン酸カルシウム、不溶性メタリン酸ナトリウム、リン酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、複合アルミノケイ酸塩等が挙げられる。
顆粒とは、所定の材料を造粒することにより得られる凝集体であり、かかる材料としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、ゼオライト、第二リン酸カルシウム、第三リン酸カルシウム、不溶性メタリン酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、リン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウム、炭酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ベントナイト、モンモリロナイト、カオリン、水酸化アルミニウムゲル、アルミナゾル、合成ヒドロタルサイト、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウムのほか、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸塩が挙げられる。
研磨性粉体、及び顆粒から選ばれる粒状体の合計含有量は、本発明の液体口腔用組成物中に、好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.2質量%以下であり、さらに好ましくは0.1質量%以下であり、また本発明の液体口腔用組成物は、粒状体を含有しないのが好ましい。
【0022】
本発明の液体口腔用組成物において、成分(A)以外のpH調整剤(E)、すなわち、アミノ酸(e−1)、アルカリ金属水酸化物(e−2)、成分(e−1)以外の有機酸又はその塩(e−3)、成分(e−2)以外の無機酸又はその塩(e−4)、並びに尿素から選ばれるpH調整剤(E)は、その種類によっても具体的な事情は異なるが、場合によっては成分(A)の有する緩衝能を低下させるおそれがあり、後述する特定のアルカリpH領域への調整が困難になる可能性があるため、その含有を制限するのが好ましい。すなわち、成分(E)の含有量は、成分(A)の炭酸換算量100質量部に対し、好ましくは20質量部以下であり、より好ましくは15質量部以下であり、さらに好ましくは10質量部以下である。なお、pH調整剤(E)の種類により多少事情が異なるため、制限される具体的な含有量の値についても、その種類に応じて異なる。
【0023】
アミノ酸(e−1)としては、具体的には、アルギニンやリジン等の塩基性アミノ酸、アスパラギン酸等の酸性アミノ酸が挙げられる。かかる成分(e−1)のなかでも、塩基性アミノ酸の含有量は、例えば、風味や安定性等を高めるべく、ソルビトールのような糖アルコールを含有した場合に黄変を生じさせるおそれがあり、また成分(A)とともに不要な塩を形成してしまうおそれもあることから、これらを有効に回避する観点から、成分(A)の炭酸換算量100質量部に対し、好ましくは5質量部以下であり、より好ましくは3質量部以下であり、さらに好ましくは1質量部以下であり、また塩基性アミノ酸を含有しないのが好ましい。
【0024】
アルカリ金属水酸化物(e−2)としては、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが挙げられる。かかる成分(e−2)の含有量は、pHが高くなることによる風味や為害性への影響を抑制する観点、あるいは成分(A)の緩衝能の低下による着色汚れ除去性能の低下を抑制する観点から、後述する特定のアルカリpH領域への調整を容易にする観点から、成分(A)の炭酸換算量100質量部に対し、好ましくは10質量部以下であり、より好ましくは5質量部以下であり、さらに好ましくは3質量部以下であり、よりさらに好ましくは1質量部以下であり、また成分(e−2)を含有しないのが好ましい。なお、成分(e−2)の含有量は、配合量が明らかである場合は配合量であり、配合量が不明である場合には、組成物中の成分(A)の炭酸換算量から推定される成分(A)の配合量と、組成物中のナトリウム、カリウムの量、及びpHから計算して求めるものとする。
【0025】
有機酸又はその塩(e−3)としては、具体的には、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、酒石酸、コハク酸、酢酸、グリセロリン酸、グルコン酸、フマル酸、フィチン酸、又はこれらの塩が挙げられる。かかる塩としては、カリウム塩、ナトリウム塩、アンモニウム塩が挙げられる。
【0026】
かかる成分(e−3)の含有量は、本発明の液体口腔用組成物において、後述する特定のアルカリpH領域への調整を容易にする観点から、成分(A)の炭酸換算量100質量部に対し、好ましくは20質量部以下であり、より好ましくは15質量部以下であり、さらに好ましくは10質量部以下である。また、成分(A)の炭酸換算量100質量部に対し、成分(e−3)を5質量部以上含有してもよい。
【0027】
無機酸又はその塩(e−4)としては、具体的には、オルトリン酸又はその塩のほか、ピロリン酸、トリポリリン酸、又はヘキサメタリン酸から選ばれる縮合リン酸、或いはこれらの塩が挙げられる。さらに、これらオルトリン酸、縮合リン酸、及びこれらの塩以外の無機酸(e−4)としては、塩酸、硫酸、硝酸、及びスルホン酸、又はこれらの塩が挙げられる。
【0028】
かかる成分(e−4)のなかでも、オルトリン酸、縮合リン酸、及びこれらの塩の含有量は、良好な使用感をもたらしつつ高い着色汚れ除去性能を確保する観点から、成分(A)の炭酸換算量100質量部に対し、好ましくは20質量部以下であり、より好ましくは15質量部以下である。また、オルトリン酸、縮合リン酸、及びこれらの塩の含有量は、着色汚れや有機汚れの除去性能の観点から、成分(A)の炭酸換算量100質量部に対し、好ましくは3質量部以上であり、より好ましくは5質量部以上であり、さらに好ましくは7質量部以上である。
【0029】
また、成分(e−4)のなかでも、塩酸や硫酸等の、オルトリン酸、縮合リン酸、及びこれらの塩以外の成分(e−4)の含有量は、後述する特定のアルカリpH領域への調整を阻害しない観点から、成分(A)の炭酸換算量100質量部に対し、好ましくは5質量部以下であり、より好ましくは3質量部以下であり、さらに好ましくは1質量部以下であり、またオルトリン酸、縮合リン酸、及びこれらの塩以外の成分(e−4)を含有しないのが好ましい。
【0030】
さらにその他のpH調整剤(E)として、尿素が挙げられるが、かかる尿素の含有量は、後述する特定のアルカリpH領域への調整を阻害しない観点から、成分(A)の炭酸換算量100質量部に対し、好ましくは5質量部以下であり、より好ましくは3質量部以下であり、さらに好ましくは1質量部以下であり、また尿素を含有しないのが好ましい。
【0031】
本発明の液体口腔用組成物において、ノニオン界面活性剤(F)は、着色汚れの除去効果を向上させる観点、及び為害性の増強を抑制する観点から、かかる成分(F)の含有を制限するのが好ましい。成分(F)のノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;ショ糖脂肪酸エステル;ソルビタン脂肪酸エステル;モノステアリン酸グリセリド等のグリセリン脂肪酸エステル;アルキルグルコシド;モノステアリン酸デカグリセリド、モノミリスチン酸デカグリセリド等のポリグリセリン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンモノアルキル(又はアルケニル)エーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;アミンオキサイド系界面活性剤;ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド等の脂肪酸アルカノールアミド;並びにポリエチレングリコール脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。具体的には、成分(F)の含有量は、本発明の液体口腔用組成物中に、好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下であり、さらに好ましくは0.2質量%以下であり、よりさらに好ましくは0.1質量%以下であり、また本発明の液体口腔用組成物は、ノニオン界面活性剤(F)を含有しないのが好ましい。
【0032】
本発明の液体口腔用組成物において、優れた着色汚れの除去効果を保持しつつ、口腔内における過度な刺激を抑制して良好な使用感を確保する観点、及び為害性の増強を抑制する観点から、過酸化物、及び二酸化塩素から選ばれる消毒剤の含有を制限するのが好ましい。具体的には、かかる消毒剤の合計含有量は、本発明の液体口腔用組成物中に、好ましくは0.1質量%以下であり、より好ましくは0.01質量%以下であり、また本発明の液体口腔用組成物は、過酸化物、及び二酸化塩素から選ばれる消毒剤を含有しないのが好ましい。
【0033】
本発明の液体口腔用組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記成分の他、例えば、上記成分(B)のアニオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤以外の界面活性剤、糖アルコール、香料、保存剤、粘結剤、顔料、色素等を含有することができる。
【0034】
上記成分(B)のアニオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤以外の界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の酢酸ベタイン;2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチル−N−イミダゾリウムベタイン等のイミダゾリニウムベタイン;ラウリルスルホベタインやラウリルヒドロキシスルホベタイン等のアルキルスルホベタイン;ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン等のヤシ油脂肪酸アミドアルキルベタイン;N−アルキル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリンベタインナトリウム等の長鎖アルキルイミダゾリンベタイン塩が挙げられる。
【0035】
糖アルコールとしては、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、ラクチトール、還元パラチノース、マルチトールが挙げられる。
【0036】
香料としては、油溶性を示す香料であればよく、例えば、ペパーミント油、スペアミント油、シナモン油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、タイム油、セージ油、セージクラリー油、ナツメグ油、ファンネル油、レモン油、オレンジ油、ハッカ油、カルダモン油、コリアンダー油、バジル油、マンダリン油、ライム油、ラベンダー油、ローズマリー油、ジンジャ−油、グレープフルーツ油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、マジョラム油、ベイ油、レモングラス油、レモンバーム油、ピメントベリー油、パルマローザ油、オリバナム油、パインニードル油、ペチグレン油、ネロリ油、ローズ油、ジャスミン油等の天然香料成分、及びこれら天然香料成分を加工処理した香料成分;メントール、プレゴール、カルボン、アネトール、シネオール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、オイゲノール、3−1−メントキシプロパン−1,2−ジオール、チモール、シトロネリルアセテート、リナロール、リナリルアセテート、ゲラニオール、ゲラニルアセテート、シトロネロール、リモネン、メントン、メンチルアセテート、N−置換−パラメンタン−3−カルボキサミド、ピネン、オクチルアルデヒド、シトラール、プレゴン、カルビルアセテート、ジヒドロカルビルアセテート、アニスアルデヒド、ベンズアルデヒド、カンファー、ラクトン、エチルアセテート、エチルブチレート、アリルシクロヘキシルプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、バニリン、ウンデカラクトン、ヘキサナール、ブチルアセテート、イソアミルアセテート、ヘキセノール、ジメチルサルファイド、シクロテン、フルフラール、トリメチルピラジン、エチルラクテート、メチルラクテート、エチルチオアセテート等の単品香料成分;ストロベリーフレーバー、アップルフレーバー、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、グレープフレーバー、マンゴーフレーバー、バターフレーバー、ミルクフレーバー、フルーツミックスフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー等の調合香料成分が挙げられる。
【0037】
保存剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸イソブチル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸メチル、安息香酸、安息香酸ナトリウム、サリチル酸メチル、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウムが挙げられる。
【0038】
粘結剤としては、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース又はその塩、カラギーナン、キサンタンガム、ポリアクリル酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ペクチン、トラガントガム、アラビアガム、グアーガム、カラヤガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、タマリンドガム、サイリウムシードガム、ポリビニルアルコール、コンドロイチン硫酸ナトリウム、メトキシエチレン無水マレイン酸共重合体が挙げられる。
【0039】
本発明の液体口腔用組成物における25℃におけるpHは、上記成分(A)や成分(B)が相まって発揮する高い着色除去効果を確保する観点から、8.5以上であって、好ましくは9以上であり、より好ましくは9を超え、さらに好ましくは9.5以上である。また、本発明の液体口腔用組成物における25℃におけるpHは、為害性の発現を有効に抑制し、良好な風味をも保持して高い使用感を確保する観点から、10.5以下であって、好ましくは10以下である。そして、本発明の液体口腔用組成物における25℃におけるpHは、8.5以上10.5以下であって、好ましくは9〜10であり、より好ましくは9を超え10以下であり、さらに好ましくは9.5〜10である。
【0040】
本発明の液体口腔用組成物は、本発明の効果をさらに向上する観点から、成分(A)、(B)が成分(C)水に溶解あるいは分散されている液体口腔用組成物であることが好ましく、透明な液体口腔用組成物であることが好ましい。本発明において透明又は半透明であるとは、光路長10mmのセルにおける吸収波長550nmの光の透過率が80%以上であることをいい、透過率90%以上であることが好ましく、透過率95%以上であることがより好ましく、有色透明、無色透明のいずれでもよい。透過率は、光路長1mmの石英セルを用い、波長550nmについて紫外可視分光光度計、例えば株式会社島津製作所製の「UV−2500PC型測定器」により測定することができる。
【0041】
本発明の液体口腔用組成物は、洗口剤、液状歯磨剤、水歯磨剤、マウススプレー、うがい薬等に適用することが可能であり、また本発明の液体口腔用組成物をシート剤に含浸させた歯磨きシートに適用することも可能であり、また泡吐出容器に充填されて泡状に吐出される泡製剤であることも可能であり、口腔内に適用する液剤として使用することができる。
例えば、本発明の液体口腔用組成物が洗口剤又は液状歯磨剤、或いは泡製剤である場合は、1日に1〜5回口腔内に適用して使用することが好ましく、例えば5mL〜100mL、より好ましくは10mL〜50mLを口腔内に含むことにより使用することが好ましい。口腔内に含む時間は、10秒〜5分が好ましく、20秒〜3分がより好ましく、30秒〜1分がさらに好ましい。また、例えば、本発明の液体口腔用組成物を歯磨きシートに適用する場合には、ウェットシートを手指に巻きつけて歯の表面を拭くことにより、歯の汚れを除去することができる。
【0042】
本発明の液体口腔用組成物は、成分(A)の炭酸塩を炭酸換算量で0.2質量%以上3質量%以下、成分(B)のアニオン界面活性剤を0.2質量%以上1.7質量%以下、及び成分(C)の水を70質量%以上99.5質量%以下の量で配合しpHを8.5以上10.5以下に調整する工程を含む製造方法により得ることができる。
【0043】
成分(A)は、上述のとおり、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、及びセスキ炭酸ナトリウムから選ばれる1種又は2種以上の炭酸塩であり、炭酸換算量での合計量が上記範囲であって、pHが上記範囲になるよう、炭酸水素ナトリウムと炭酸ナトリウムの混合物を配合するか、又はセスキ炭酸ナトリウムを単独で配合するか、或いは炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、及びセスキ炭酸ナトリウムの全てを配合するかのいずれかの態様であればよい。
【0044】
その他、成分(A)〜(C)の配合量は、各々上記含有量と同様であり、また必要に応じて用いるその他の成分の配合量についても、上記含有量と同様である。これらの成分の配合順序は特に制限されず、かかる配合する工程を経た後、混合する工程を経ることにより、本発明の液体口腔用組成物を得ることができる。
【0045】
上述した本発明の実施態様に関し、さらに以下の液体口腔用組成物、及びその製造方法を開示する。
[1]次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、及びセスキ炭酸ナトリウムから選ばれる1種又は2種以上の炭酸塩 炭酸換算量で0.1質量%以上2質量%以下
(B)アニオン界面活性剤 0.2質量%以上1.7質量%以下
(C)水 60質量%以上99.5質量%以下
を含有し、多価金属カチオン(D)の含有量が成分(A)に対して0.1倍モル未満であり、成分(A)の炭酸換算量と成分(B)の含有量の積の値((A)×(B))が0.9以下であり、かつ
25℃におけるpHが8.5以上10.5以下である液体口腔用組成物。
[2]成分(A)の含有量は、炭酸(H
2CO
3)換算量で、好ましくは0.15質量%以上であり、より好ましくは0.18質量%以上であり、さらに好ましくは0.20質量%以上であり、好ましくは1.5質量%以下であり、より好ましくは1.3質量%以下であり、さらに好ましくは1.0質量%以下であり、よりさらに好ましくは0.6質量%以下である上記[1]の液体口腔用組成物。
[3]成分(A)が炭酸水素ナトリウムと炭酸ナトリウムの混合物、及びセスキ炭酸ナトリウムから選ばれる炭酸塩である上記[1]又は[2]の液体口腔用組成物。
[4]成分(B)が、アルキル硫酸ナトリウム、アシルグルタミン酸ナトリウム、及びラウリルメチルタウリンナトリウムから選ばれる1種又は2種以上であるのが好ましく、少なくともアルキル硫酸ナトリウムを含むのがより好ましい上記[1]〜[3]のいずれか1の液体口腔用組成物。
[5]成分(B)の含有量は、好ましくは0.4質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは1.6質量%以下であり、より好ましくは1.5質量%以下であり、さらに好ましくは1.2質量%以下であり、よりさらに好ましくは1.0質量%以下である上記[1]〜[4]いずれか1の液体口腔用組成物。
【0046】
[6]成分(A)の炭酸換算量と成分(B)の含有量の積の値((A)×(B))は、好ましくは0.8以下であり、より好ましくは0.5以下であり、さらに好ましくは0.4以下であり、好ましくは0.08以上であり、より好ましくは0.10以上である上記[1]〜[5]いずれか1の液体口腔用組成物。
[7]成分(A)の炭酸換算量と成分(B)の含有量の合計量は、好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは0.55質量%以上であり、さらに好ましくは0.7質量%以上であり、よりさらに好ましくは0.75質量%以上であり、好ましくは2.4質量%以下であり、より好ましくは2.2質量%以下であり、さらに好ましくは2.0質量%以下であり、よりさらに好ましくは1.6質量%以下である上記[1]〜[6]いずれか1の液体口腔用組成物。
[8]成分(C)の含有量は、好ましくは65質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、好ましくは99.2質量%以下であり、より好ましくは99.15質量%以下である上記[1]〜[7]いずれか1の液体口腔用組成物。
[9]多価金属カチオン(D)の含有量が、成分(A)の炭酸換算量に対して、好ましくは0.02倍モル以下である上記[1]〜[8]いずれか1の液体口腔用組成物。
[10]成分(A)以外のpH調整剤(E)の含有量は、成分(A)の炭酸換算量100質量部に対し、好ましくは20質量部以下であり、より好ましくは15質量部以下であり、さらに好ましくは10質量部以下である上記[1]〜[9]いずれか1の液体口腔用組成物。
[11]成分(A)以外のpH調整剤(E)が、アミノ酸(e−1)、アルカリ金属水酸化物(e−2)、成分(e−1)以外の有機酸又はその塩(e−3)、成分(e−2)以外の無機酸又はその塩(e−4)、並びに尿素から選ばれるpH調整剤である上記[1]〜[10]いずれか1の液体口腔用組成物。
【0047】
[12]アミノ酸(e−1)のうち、塩基性アミノ酸の含有量は、成分(A)の炭酸換算量100質量部に対し、好ましくは5質量部以下であり、より好ましくは3質量部以下であり、さらに好ましくは1質量部以下であり、或いは塩基性アミノ酸を含有しない上記[1]〜[11]いずれか1の液体口腔用組成物。
[13]アルカリ金属水酸化物(e−2)の含有量は、成分(A)の炭酸換算量100質量部に対し、好ましくは10質量部以下であり、より好ましくは5質量部以下であり、さらに好ましくは3質量部以下であり、よりさらに好ましくは1質量部以下であり、或いは成分(e−2)を含有しない上記[1]〜[12]いずれか1の液体口腔用組成物。
[14]有機酸又はその塩(e−3)の含有量は、成分(A)の炭酸換算量100質量部に対し、好ましくは20質量部以下であり、より好ましくは15質量部以下であり、さらに好ましくは10質量部以下であり、5質量部以上であってもよい上記[1]〜[13]いずれか1の液体口腔用組成物。
[15]無機酸又はその塩(e−4)のうち、オルトリン酸、縮合リン酸、及びこれらの塩の含有量は、成分(A)の炭酸換算量100質量部に対し、好ましくは20質量部以下であり、より好ましくは15質量部以下であり、好ましくは3質量部以上であり、より好ましくは5質量部以上であり、さらに好ましくは7質量部以上である[1]〜[14]いずれか1の液体口腔用組成物。
【0048】
[16]ノニオン界面活性剤(F)の含有量は、好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下であり、さらに好ましくは0.2質量%以下であり、よりさらに好ましくは0.1質量%以下であり、或いはノニオン界面活性剤(F)を含有しない上記[1]〜[15]いずれか1の液体口腔用組成物。
[17]研磨性粉体、及び顆粒から選ばれる粒状体の合計含有量は、好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.2質量%以下であり、さらに好ましくは0.1質量%以下であり、或いは粒状体を含有しない上記[1]〜[16]いずれか1の液体口腔用組成物。
[18]過酸化物、及び二酸化塩素から選ばれる消毒剤の合計含有量は、本発明の液体口腔用組成物中に、好ましくは0.1質量%以下であり、より好ましくは0.01質量%以下であり、或いは過酸化物、及び二酸化塩素から選ばれる消毒剤を含有しない上記[1]〜[17]いずれか1の液体口腔用組成物。
[19]25℃におけるpHが、好ましくは9以上であり、より好ましくは9を超え、さらに好ましくは9.5以上であり、好ましくは10以下である上記[1]〜[18]いずれか1の液体口腔用組成物。
[20]洗口剤、液状歯磨剤、水歯磨剤、マウススプレー、又はうがい薬であり、或いは泡吐出容器に充填されて泡状に吐出される泡製剤である上記[1]〜[19]いずれか1の液体口腔用組成物。
[21]洗口剤、液状歯磨剤、水歯磨剤、マウススプレー、又はうがい薬を製造するための、或いは泡吐出容器に充填されて泡状に吐出される泡製剤を製造するための、上記[1]〜[19]いずれか1の液体口腔用組成物の使用。
[22]上記[1]〜[19]いずれか1の液体口腔用組成物の、歯の着色汚れ除去のための使用。
[23]口腔内への適用のための上記[1]〜[19]いずれか1の液体口腔用組成物の使用。
[24]次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、及びセスキ炭酸ナトリウムから選ばれる1種又は2種以上の炭酸塩 炭酸換算量で0.1質量%以上2質量%以下
(B)アニオン界面活性剤 0.2質量%以上1.7質量%以下
(C)水 70質量%以上99.5質量%以下
を配合する工程を含む、上記[1]〜[19]いずれか1の液体口腔用組成物の製造方法。
[25]次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、及びセスキ炭酸ナトリウムから選ばれる1種又は2種以上の炭酸塩 炭酸換算量で0.1質量%以上2質量%以下
(B)アニオン界面活性剤 0.2質量%以上1.7質量%以下
(C)水 70質量%以上99.5質量%以下
を配合して得られる、上記[1]〜[19]いずれか1の液体口腔用組成物。
【実施例】
【0049】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明する。なお、表中に特に示さない限り、各成分の含有量は質量%を示す。
【0050】
[実施例1〜16、比較例1〜9]
表1〜2に示す処方にしたがって、各液体口腔用組成物を調製した。次いで、下記方法にしたがって着色汚れ除去効果、風味、及び為害性の評価を行った。なお、実施例1〜16、比較例1〜9の液体口腔用組成物は、多価金属カチオンの含有量は成分(A)に対して0.02倍モル以下であった。
結果を表1〜2に示す。
【0051】
《着色汚れ除去効果の評価》
試験に用いるHAP板(HOYA(株)、APP-100)を研磨紙(#400)により研磨した後、0.1Nの塩酸に30秒間浸漬して酸処理を施した後、水1mLで3回洗浄した。次いで、HAP板を牛血清アルブミン1%溶液(BSA 和光純薬製)40mL、人工唾液40mL、及び紅茶溶液40mLの順に5分間ずつ浸漬して、乾燥させた。これを15回繰り返した後、分光測色計(CM−700d、コニカミノルタ社製)を用いて、着色の程度をL*a*b表色系(マルセル表色)で表した際におけるb*値(浸漬前b*値)を測定した。
次に、得られたHAP板を各液体口腔用組成物に2分間浸漬した後、同様にしてb*値(浸漬後b*値)を測定し、下記式(X)にしたがって着色汚れの除去率(%)を算出し、比較例1の値を100として指数表示した。
除去率(%)=(浸漬前b*値−浸漬後b*値)/浸漬前b*値×100・・・(X)
なお、人工唾液は、塩化カルシウム(1.0mM)、リン酸水素カリウム(0.9mM)、HEPES(4−(2−hydroxyethyl)−1−piperazineethanesulfonic acid)(2.0mM)を含有する水溶液であって水酸化カリウムでpH=7に調整したものを使用した。紅茶溶液は、ティーバッグ6つ(日東紅茶)を300mLの熱湯にいれて5分間抽出し、室温に冷ましたものをろ過して用いた。紅茶溶液のろ過は、WHATMAN社製 No.1のろ紙を用いた。
【0052】
《風味の評価》
各液体口腔用組成物20mLを口腔内に40秒間含み、吐き出した後に口腔内にて感じる風味について、5名の専門パネラーにより、下記基準にしたがって評価し、協議により評価結果とした。
A:良好な味であった
a:僅かに苦味が感じられた
B:苦味が感じられた
C:強い苦味が感じられた
【0053】
《為害性の評価》
各液体口腔用組成物20mLを口腔内に40秒間含み、吐き出した後に歯肉や口腔内粘膜にて感じる為害性について、5名の専門パネラーにより、下記基準にしたがって評価し、協議により評価結果とした。
A:全く刺激を感じなかった
a:僅かに刺激を感じた
B:刺激が感じられた
C:強い刺激が感じられた
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
表1〜2の結果によれば、成分(B)を含有しない比較例1、pHが8.5以上10.5以下の範囲外である比較例2〜3、成分(B)の含有量や成分(A)の炭酸換算量が上記範囲を超える比較例4〜5、(A)×(B)の値が0.9以上である比較例6及び8、成分(B)の代わりにノニオン界面活性剤を用いた比較例7、成分(A)の炭酸換算量やpHの値が上記範囲外である比較例9に比べ、実施例1〜16の液体口腔用組成物は、良好な使用感の付与効果と優れた着色汚れの除去効果とをともに充分に兼ね備えることがわかる。
【0057】
[比較例10〜11]
表3に示す処方にしたがって、各歯磨剤を調製した。次いで、上記方法にしたがって着色汚れ除去効果、風味、及び為害性の評価を行った。なお、歯磨剤をHAPに均一に接触させる観点、及び歯磨剤は口腔内で希釈される観点から、精製水により4倍希釈した流動性のある液体により評価を行った。
また、25℃におけるpHについても、精製水により4倍希釈した後に測定した。
上記実施例4の液体口腔用組成物も含め、結果を表3に示す。
【0058】
【表3】
【0059】
表3の結果によれば、歯磨剤であれば、成分(A)及び成分(B)の配合量の多い比較例11の歯磨剤であっても風味や為害性に課題はないものの、実施例1〜16の液体口腔用組成物のような高い着色除去性能を充分に発揮しないことが理解できる。