(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6742414
(24)【登録日】2020年7月30日
(45)【発行日】2020年8月19日
(54)【発明の名称】吸入器デバイスのための加熱システムおよび加熱方法
(51)【国際特許分類】
A24F 47/00 20200101AFI20200806BHJP
A24F 40/46 20200101ALI20200806BHJP
【FI】
A24F47/00
A24F40/46
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-529047(P2018-529047)
(86)(22)【出願日】2016年12月2日
(65)【公表番号】特表2019-503668(P2019-503668A)
(43)【公表日】2019年2月14日
(86)【国際出願番号】EP2016079670
(87)【国際公開番号】WO2017093535
(87)【国際公開日】20170608
【審査請求日】2019年11月20日
(31)【優先権主張番号】15197837.6
(32)【優先日】2015年12月3日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516004949
【氏名又は名称】ジェイティー インターナショナル エス.エイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163050
【弁理士】
【氏名又は名称】小栗 眞由美
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】ローランド スタルダー
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ヴィルヘルム
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー ロバート ジョン ローガン
【審査官】
岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】
韓国公開特許第10−2012−0102856(KR,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0144453(US,A1)
【文献】
国際公開第2015/086316(WO,A1)
【文献】
独国特許出願公開第102014106589(DE,A1)
【文献】
米国特許第06155268(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0190496(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 47/00
A24F 40/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱される液体(L)からエアロゾルまたは蒸気を生成するための、eシガレットまたは個人用ヴェポライザなどの吸入器デバイス(30)用の加熱システム(1)であって、
その内部の毛管現象または表面張力下で、供給槽(4)から加熱される液体を運ぶ、少なくとも1つの供給チャネル(3)と、
前記少なくとも1つの供給チャネル(3)の出口(6)に配置され、物質が該少なくとも1つの供給チャネル(3)の該出口(6)から出現した時に前記物質を加熱するように構成されている加熱手段(10)と、を含み、
前記加熱手段(10)は、前記供給チャネル(3)の実質的に外側に配置され、該供給チャネル(3)の出口開口部(8)を横切るように延在している少なくとも1つの発熱体(11)を含む、加熱システム(1)。
【請求項2】
前記加熱手段(10)は前記供給チャネル(3)の前記出口(6)に実質的に閉じ込められており、および/または
前記少なくとも1つの発熱体(11)は、導電性ワイヤ、導電性ストリップ、導電性フォイル、もしくは導電性被覆材の1つもしくは複数を好ましくは含み、
前記導電性ストリップ、前記導電性フォイル、または前記導電性被覆材は、好ましくは前記供給チャネル(3)の前記出口開口部(8)の周囲に層または被覆として設けられる、請求項1に記載の加熱システム(1)。
【請求項3】
毛管現象または表面張力下で、加熱される前記液体(L)を運ぶ複数の供給チャネル(3)を含み、
前記加熱手段は、前記各供給チャネル(3)の前記出口(6)に配置され、前記液体が前記各供給チャネル(3)の該出口(6)から出現した時にこれを加熱するように構成されている、請求項1または2に記載の加熱システム(1)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの供給チャネル(3)は、前記供給槽(4)から前記エアロゾルまたは前記蒸気が吸入される前記吸入器デバイス(30)内の蒸気室(35)まで延在するように構成されている本体部材(2)内に形成されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の加熱システム(1)。
【請求項5】
前記本体部材(2)は、前記発熱体(11)を収容するために、前記各供給チャネル(3)の前記出口(6)に溝部または陥凹部(9)を含み、
前記溝部または前記陥凹部(9)は、好ましくは前記供給チャネルの長手方向範囲に対して横方向に延在している、請求項4に記載の加熱システム(1)。
【請求項6】
前記各供給チャネル(3)は、好ましくは毛細管および/または毛細スロットとして形成され、
前記各供給チャネル(3)が形成されている前記本体部材(2)は、好ましくはガラスまたはセラミックで構成されている、請求項4または5に記載の加熱システム(1)。
【請求項7】
前記少なくとも1つの供給チャネル(3)は、2mmから20mm、好ましくは5mmから10mmまでの範囲内の長さを有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の加熱システム(1)。
【請求項8】
前記少なくとも1つの供給チャネル(3)は、0.1mmから3.0mm、好ましくは0.7mmから2.0mmまでの範囲内の内径を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の加熱システム(1)。
【請求項9】
加熱される液体またはジェルからエアロゾルおよび/または蒸気を生成するための、電子たばこまたは個人用ヴェポライザ・デバイスなどの吸入器デバイス(30)であって、
前記吸入器デバイスは、請求項1から8のいずれか一項に記載の加熱システム(1)を含む、吸入器デバイス(30)。
【請求項10】
eシガレットまたは個人用ヴェポライザなどの吸入器デバイス(30)内で、特に液体またはジェルなどの物質を加熱する方法であって、
毛管現象または表面張力により、供給槽(4)から少なくとも1つの供給チャネル(3)を通して、加熱される前記物質を運ぶステップと、
該物質が前記供給チャネル(3)の出口(6)から出現して前記物質を蒸発させる時に前記少なくとも1つの供給チャネル(3)の該出口(6)で該物質を加熱するステップと、を含み、
前記液体(L)を加熱する前記ステップは、前記供給チャネル(3)の外側に設けられ、該供給チャネル(3)の前記出口(6)を横切るように延在している1つまたは複数の電気発熱体(11)により実施される、方法。
【請求項11】
前記物質を加熱する前記ステップは、定期的にまたは断続的に、望ましくはパルス状にまたは交互に実施される、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子たばこ(eシガレット(e−cigarette))、個人用ヴェポライザ(personal vaporizer)、または電子蒸気送達システムなどの吸入器デバイスに関する。より詳細には、本発明は、このような吸入器デバイス用の加熱システム、およびこのようなデバイス内で加熱される物質からエアロゾルまたは蒸気を生成するために加熱する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のタイプの吸入器デバイス、すなわちeシガレットおよび個人用ヴェポライザおよび電子蒸気送達システムが、たばこ、シガリロおよび葉巻たばこ等の従来の喫煙具の代替手段として提案されている。通常、これらの吸入器デバイスは、溶液(liquid solution)またはジェルを加熱して、ユーザにより吸入されるエアロゾルおよび/または蒸気を産出または生成するように設計されている。この液体またはジェルは、通常、プロピレン・グリコール(PG:propylene glycol)および/またはベジタブル・グリセリン(VG:vegetable glycerin)の溶液であり、典型的には、香味料または1つもしくは複数の濃縮フレーバを含有する。
【0003】
これらの吸入器デバイスの需要の増大および市場の拡大にも関わらず、より効率的な、改善された製品を提供する目的で、これらのデバイスの性能を発展させる努力が依然として必要とされている。例えば、これらの努力は、エアロゾルおよび/または蒸気の生成の改善、エアロゾルおよび/または蒸気の送達の改善、ならびにエネルギー消費を改善させる、例えばデバイスのバッテリ寿命を助長する、エアロゾルおよび/または蒸気の生成におけるより効率的なエネルギー使用に向けられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記を考慮して、本発明の目的は、新規の改善された吸入器デバイス、特に電子たばこ、より詳細には、このような吸入器デバイス内で物質からエアロゾルおよび/または蒸気を生成するための、新規の改善された加熱システムおよび加熱方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に基づいて、請求項1に記載されている特徴を有する加熱システム、および請求項10に記載されている方法が提供されている。本発明の様々な利点および/または好適な特徴が従属請求項に記載されている。
【0006】
一態様によれば、本発明は、加熱される物質からエアロゾルおよび/または蒸気を生成するための、eシガレットまたは個人用ヴェポライザなどの吸入器デバイス用の加熱システムを提供する。該システムは:少なくとも1つのチャネルの内部の毛管現象または表面張力下で、供給槽から加熱される物質を運ぶ少なくとも1つの供給チャネルと;該少なくとも1つの供給チャネルの出口に配置され、物質が少なくとも1つのチャネルの出口から出現した時にこれを加熱するように構成されている加熱手段とを含む。
【0007】
好適な実施形態では、加熱手段は供給チャネルの出口領域に閉じ込められているかまたは限定されている。加熱手段は、通常、少なくとも1つの発熱体と、供給チャネルの幅を横切るように、特に好ましくは、供給チャネルの出口開口部を横切るように延在している少なくとも1つの発熱体を含む。この関連で、加熱手段は、少なくとも部分的に、あるいは全体的に、供給チャネルの外側に配置されている可能性がある。
【0008】
好適な実施形態では、少なくとも1つの発熱体は、導電性ワイヤ、導電性ストリップ、導電性フォイル、もしくは導電性被覆材の1つまたは複数を含む。フォイルまたは導電性被覆材は、例えば、供給チャネルの出口開口部の周囲に層または被覆として設けられていてもよい。ワイヤ、ストリップ、フォイル、または被覆材の材料は、当業者により、既知の導電性材料から選択される。
【0009】
好適な実施形態では、加熱システムは、毛管現象または表面張力下で加熱される物質を運ぶ複数の供給チャネルを含む。加熱手段は、各供給チャネルの出口に配置され、物質が各チャネルの出口から出現した時にこれを加熱するように構成されている。加熱手段は、通常、少なくとも1つの発熱体を含み、該少なくとも1つの発熱体は、各供給チャネルの幅を横切るように、特に各供給チャネルの出口開口部を横切るように延在していることが好ましい。この関連で、加熱手段は、少なくとも部分的に、あるいは全体的に、各供給チャネルの外側に配置されている可能性がある。複数の供給チャネルは、少なくとも一列になど、少なくとも1つの配列に配置されていてもよく、少なくとも1つの発熱体は、該配列内の各供給チャネルの出口開口部を横切るように延在している細長い要素を含んでいてもよい。
【0010】
好適な実施形態では、少なくとも1つの供給チャネルが本体部材内に形成され、該供給チャネルは、供給槽から吸入器デバイス内のチャンバまで延在するように構成され、この吸入器デバイス内のチャンバからエアロゾルおよび/または蒸気が吸入される。この関連で、本体部材はガラスまたはセラミックで構成されていることが好ましい。本体部材は、少なくとも1つの発熱体を収容するために、各供給チャネルの出口領域に溝部または陥凹部を含むことが好ましい。該溝部または該陥凹部は、供給チャネルの長手方向範囲に対して横方向に延在していることが好ましい。この関連で、少なくとも1つの発熱体は、各供給チャネルの出口領域の所の溝部または陥凹部内にうまく嵌まるかまたは収容されることが好ましい。具体的には、少なくとも1つの発熱体は、少なくとも1つの供給チャネルが中に形成されている本体部材の材料、例えばガラスもしくはセラミック、と融合されるか、または結合されてもよく、少なくとも1つの発熱体は、供給チャネルの長手方向範囲に対して横方向または、これを横切るように延在していることが好ましい。このようにして、各供給チャネルの出口(exitまたはoutlet)で気化が直ちに起こる。
【0011】
好適な実施形態では、各供給チャネルは毛細管としてまたは毛細スロットとして形成されている。したがって、毛細管の場合、本体部材はこれを貫通して毛管チャネルを画定している管状部材を含んでいてもよい。毛細スロットの場合、本体部材は少なくとも1つの、好ましくは一対のプレート要素を含んでいてもよく、該プレート要素はスロット様供給チャネルを画定している。この関連で、本体部材は、離間関係で互いに実質的に平行にかつ対向して配置され、間にスロット様供給チャネルを画定している一対のプレート要素を含むことが好ましい。
【0012】
好適な実施形態では、少なくとも1つの供給チャネルは、2mmから20mm、より好ましくは5mmから10mmまでの範囲内の長さを有する。
【0013】
好適な実施形態では、少なくとも1つの供給チャネルは、0.1mmから3.0mm、より好ましくは0.5mmから1.0mmまでの範囲内の内径を有する。
【0014】
好適な実施形態では、加熱システムは、吸入器デバイスまたはeシガレット用のカートリッジまたは槽アセンブリと組み合わせられるかまたはこれに組み込まれる。このようにして、槽から加熱される液体を運ぶために、少なくとも1つの供給チャネルが中に形成されている本体部材は、液体を貯蔵または保持する槽を形成するカートリッジまたは槽アセンブリのハウジングに取り付けられてもよいし、またはこれに組み込まれてもよい。
【0015】
好適な実施形態では、少なくとも1つの供給チャネル内に沿って設けられており、加熱システムは、液体の存在を検出または感知する、静電容量センサなどの液体センサを含む。例えば、センサは、供給チャネルの出口またはこのすぐ上流に設けられていてもよい。このようにして、センサが液体を検出または感知した場合、システムは、発熱体を起動するように制御されてもよい。したがって、これはエネルギー消費の最適化を補助し、気化用の出口に液体が存在する場合にのみ発熱体が起動されることを可能にする。また、システムは、センサが所定の時間内に気化用の出口に到達する液体を検出しない場合には、信号を生成するように構成されていてもよい。これにより、槽内の低液体レベルを指示することができる。
【0016】
別の態様によれば、本発明は、加熱される物質、特に液体またはジェルからエアロゾルおよび/または蒸気を生成するための、電子たばこまたは個人用ヴェポライザなどの吸入器デバイスを提供しており、該吸入器デバイスは、前述されている実施形態のいずれかによる加熱システムを含む。
【0017】
好適な実施形態では、吸入器デバイスの1つまたは複数の吸気口が、エアロゾルおよび/または蒸気がこれから吸入される吸入器デバイス内のチャンバ(室)内の各々の供給チャネル(例えば、各毛細管または毛細スロット)の出口の近傍に配置されている。このようにして、吸入器デバイスの蒸気室内への空気流が、ユーザによる吸入のために蒸気が生成される加熱システムに近接またはこれに直接隣接している。吸入器デバイスの1つまたは複数の吸気口は、供給チャネルの出口を横切るように、空気流を方向付けるように構成および/または配置されていることが好ましい。
【0018】
さらなる態様によれば、本発明は、eシガレットまたは個人用ヴェポライザなどの吸入器デバイス内で物質、特に液体またはジェルを加熱する方法を提供しており、本方法は、
毛管現象または表面張力により、供給槽から少なくとも1つの供給チャネルを通して、加熱される物質を運ぶステップと、
物質が供給チャネルの出口から出現した時に少なくとも1つの供給チャネルの出口で物質を加熱するステップと、を含む。
【0019】
好適な実施形態では、物質を加熱するステップは、供給チャネルの幅を横切るように、特に供給チャネルの出口開口部を横切るように延在している1つまたは複数の電気発熱体により実施される。この関連で、加熱手段は、少なくとも部分的に、あるいは全体的に、供給チャネルの外側に配置されていてもよい。電気発熱体は、通常、供給チャネルの出口領域に閉じ込められているかもしくは限定され、および/または供給チャネルの外側に設けられている。好適な実施形態では、物質を加熱するステップは、定期的にまたは断続的に、例えば望ましくはパルス状にまたは交互に、実施される。
【0020】
本発明およびこれの利点のより完全な理解のために、本発明の例示的実施形態が、同様の参照文字が同様の部分を指定する添付図面を参照して、後続の記載においてより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態による加熱システムの概略斜視図である。
【
図2】本発明の、矢印II−IIの方向に取った、
図1に示されている加熱システムの一部の断面図である。
【
図3】本発明の別の実施形態による加熱システムの一部の概略斜視図である。
【
図4】本発明の、矢印IV−IVの方向に取った、
図3に示されている加熱システムの一部の断面図である。
【
図5】本発明の、矢印V−Vの方向に取った、
図4に示されている加熱システムの一部の断面図である。
【
図6】本発明のさらなる実施形態による加熱システムの概略平面図である。
【
図7】本発明の、矢印VII−VIIの方向に取った、
図6に示されている加熱システムの断面図である。
【
図8a】
図6および
図7の実施形態による加熱システムを有する電子たばこデバイスのカートリッジまたは槽アセンブリの概略斜視図である。
【
図8b】
図8aに示されているカートリッジまたは槽アセンブリの概略側面図である。
【
図8c】
図8aに示されているカートリッジまたは槽アセンブリの概略部分断面斜視図である。
【
図9】本発明の実施形態による、
図8aに示されているカートリッジまたは槽アセンブリを含む、吸入器デバイス、特に電子たばこの概略斜視図である。
【
図10】本発明の簡単な実施形態による加熱システムの断面図である。
【
図11】吸入器デバイスの槽アセンブリ内に組み込まれている、本発明の実施形態による加熱システムの概略斜視図である。
【
図12】本発明の実施形態による方法を概略的に示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
添付図面は本発明のさらなる理解をもたらすために含まれており、本明細書に組み込まれており、本明細書の一部を成している。該図面は本発明の特定の実施形態を例示しており、説明と共に、本発明の原理を説明するのに役立つ。以下の詳細な説明を参照してよりよく理解されるようになるので、本発明の他の実施形態および本発明の付随する利点の多くが容易に理解されるであろう。
【0023】
当然のことながら、実施形態のより要約された図を促進するために、商業的に実現可能な実施形態において有用であるかまたは必要である可能性がある、一般的なおよび/またはよく理解されている要素が必ずしも示されているとは限らない。図面の要素は、必ずしも互いに縮尺通りに示されているとは限らない。さらに当然のことながら、方法の実施形態におけるある動作および/またはステップが、特定の発生順に記載または示されていてもよく、一方、当業者は順序に関するこのような特異性が実際は必要とされないことを理解するであろう。また、本明細書において用いられている用語および表現は、本明細書において特定の意味が別段に定められている場合を除き、これらの対応する各調査研究の領域に関するこのような用語および表現に与えられる通常の意味を有することが理解されるであろう。
【0024】
図面の
図1および
図2を参照すると、吸入器、特にeシガレット(図示せず)内で加熱される液体から蒸気を生成する加熱システム1の一実施形態が概略的に示されている。該液体は、プロピレン・グリコール、ベジタブル・グリセリン、および/または1つまたは複数のフレーバの溶液を含んでいてもよい。加熱システム1は、チャネル3の内部の毛管現象または表面張力下で、本体部材2に隣接した供給槽4から加熱される液体を運ぶために、複数の供給チャネル3が中に設けられているかまたは形成されている、本体部材2を含む。この場合、供給チャネル3の各々は毛細管を含み、複数の供給チャネル3は、直線または列に配置され、本体部材2の入口側または入口領域5から出口側または出口領域6まで、加熱される液体を運ぶ。この関連で、各供給チャネルまたは毛細管3は、約0.5mmから0.8mmまでの内径dを有し、入口側5の所の入口開口部7と出口側6の所の出口開口部8との間に延在している。
【0025】
本体部材2の出口側6に形成されている、細長い溝部または陥凹部9が、供給チャネル3の各々の出口開口部8を横切るように延在しており、これらと連通、または相互接続している。毛細管3により槽4から運ばれる液体を気化するために、加熱手段10が、溝部9内に配置されるかまたは設置されるワイヤもしくはフィラメントなどの1つまたは複数の細長い発熱体11を含んで設けられている。この関連で、例えば、発熱体11は、0.05mmから0.3mmまで(例えば、約0.1mm)の範囲内の直径および約1アンペアから1.5アンペアまでの範囲内の電流に対して1ohmから5ohmまでの範囲の抵抗を有するワイヤ(例えば、ニクロム線またはカンタル(Kanthal)(商標)ワイヤ)を含んでいてもよい。溝部9は、毛細管3の出口開口部8の直径dより若干大きい幅Dを有する。加熱用ワイヤ11の両端12、13が、電気抵抗加熱のための、eシガレット(図示せず)内の電源に接続するために構成され、配置されている。したがって、加熱手段10は、各供給チャネル3の出口領域6内に配置され、これに閉じ込められ、液体が毛細管3の各々の出口開口部8から出現した時にこれを加熱し、気化するように構成されている。
【0026】
図面の
図3から
図5までを参照すると、eシガレット(図示せず)内で加熱される液体から蒸気を生成する加熱システム1の別の実施形態が概略的に示されている。この場合、構造の原理は本質的に不変であるが、代替的構造において適用されている。詳細には、本体部材2は、約0.5mmから0.8mmまでの内径dを有する毛細管として形成されている、槽4から複数の供給チャネル3まで、加熱される液体を送達するための断続的送達チャネル14を含む。各供給チャネルまたは毛細管3が、本体部材の送達チャネル14の所の入口開口部7と出口側6の所の出口開口部8との間に延在している。本実施形態では、供給チャネル3は、各毛細管3の出口開口部8が本体部材2の半円形外縁上に存在するように、径方向配列に配置されている。溝部または陥凹部9は本体部材2の出口領域6内に形成され、供給チャネル3の各々の出口開口部8を横切るように延在しており、これと連通または相互接続している。また、加熱手段10が、溝部9内に配置または設置されている、ワイヤまたはフィラメントなどの1つまたは複数の細長い発熱体11を含んで設けられている。このようにして、加熱用ワイヤ11は、液体が各毛細管3の出口開口部8から出現した時にこれを加熱し、気化するように配置され、構成されている。通気キャップまたは通気ストッパ15が、送達チャネル14の端部に設置されるか、または設けられていてもよい。このキャップまたはストッパ15はガス透過性であり、槽4とのガス交換を可能にして、毛細管3を通る液体流を増強しながら、液体の漏出を防止することができる。
【0027】
図面の
図6および
図7を参照すると、eシガレット内で加熱される液体から蒸気を生成する加熱システム1のさらなる実施形態が概略的に示されている。本実施形態では、前の実施形態の複数の毛細管は毛細スロットとして構成されている供給チャネル3に置き換えられている。より詳細には、本体部材2は、離間関係で互いに実質的に平行にかつ対向して配置され、これらの間にスロット様供給チャネル3を画定している一対のプレート要素16を含む。本体部材2のプレート要素16は、入口領域または入口端部5から出口領域または出口端部6まで延在しており、プレート要素16の側部17は閉鎖または封止されている。スロット様供給チャネル3の出口領域または出口端部6の所の各プレート要素16の縁部18は、出口開口部8に向かって面取りまたはテーパが付けられており、出口端部6においてプレート要素16により示される表面積を減少させている。これは、出口領域6においてプレート要素16の端面に対向する傾向を減少させて、加熱される液体の過剰量を収集または溜めるように作用する。
【0028】
図6および
図7の加熱システム1は、液体供給チャネル3の出口領域6に配置されている加熱手段10を含む。この関連で、電気抵抗加熱用ワイヤなどの蛇行発熱体11が、毛細スロット3の横方向に出口開口部8を横切るように延在している。前述の2つの実施形態の場合と同様に、発熱体11の両端12、13が、電気抵抗加熱のための、eシガレット(図示せず)内の電源に接続するために構成され、配置されている。この理由から、電気コネクタ19が発熱体11の両端部12、13の各々に設けられている。したがって、加熱手段10は、液体が供給チャネル3の出口開口部8から出現した時にこれを気化するために、供給チャネル3の出口領域6内に配置され、これに閉じ込められている。
【0029】
ここで、図面の
図8a〜
図8cおよび
図9を参照すると、
図6および
図7に示されている加熱システム1が電子たばこ30のカートリッジまたは槽アセンブリ20内にどのように含まれるかが例示されている。
図9に示されるように、電子たばこ30は、略円筒形のケーシング31と、バッテリ・ユニットの形の電源33を収容または封入している第1の部分32とを有する。ケーシング31の第1の部分32は第2のケーシング部分34に連結され、該第2のケーシング部分34はカートリッジまたは槽アセンブリ20を収容または封入している。
図8a〜
図8cに認められる通り、カートリッジ20は、eシガレット30の使用中に気化され、吸入されるある量の液体Lを保持または貯蔵する樽様の槽またはタンク4を封入しているハウジング21を含む。ハウジング21の基壁22に固定されている入口領域または入口端部5が液体Lの下に沈み、および/またはこれにより覆われると、プレート要素16が槽4内に延在するように、
図6および
図7の加熱システム1はカートリッジ20内に含まれている。出口領域または出口端部6および加熱手段10が第2のケーシング部分34の蒸気室35の内部に配置されるように、プレート要素16はハウジング21の端壁23から外へ斜角で上方に延在している。カートリッジ・ハウジング21の上面または上壁24が、弾性栓部材25により閉鎖され、封止される詰替え開口部を含む。さらに、ハウジング21の上面または上壁24は、ガス透過性膜を含み、槽4とのガス交換を可能にして、毛細スロット3を通る液体流を増強しながら、ここを通る液体の漏出を防止する通気キャップまたは通気弁26を含む。
【0030】
図9に認められる通り、ユーザがeシガレット30を利用するためにかつカートリッジ20内の加熱システム1により生成される蒸気を吸入するために、吸口36がケーシング31の第2の部分34の端部に設けられているかまたは接続されている。この関連で、一列の吸気孔37が、ユーザが吸口36を利用する時に、蒸気室35内へ吸気または空気の流入するために、第2のケーシング部分34に設けられている。液体Lは、蒸気室35内の供給チャネル3の出口6で加熱手段10により気化され、該蒸気は空気流中に引き込まれ、蒸気ガイド38および吸口36を介してユーザへ運ばれる。
【0031】
ここで図面の
図10を参照すると、eシガレットなどの吸入器デバイス内で加熱される液体から蒸気を生成する加熱システム1の簡単な実施形態が概略的に示されている。加熱システム1は、毛管現象により、本体部材2に隣接した供給槽4から加熱される液体を運ぶ毛管チャネル3を画定している管(例えば、ガラス管)の形の本体部材2を含む。この場合、毛管チャネル3は約1.0mmの内径dを有し、供給槽4から出口側6の出口開口部8まで延在している。溝部または陥凹部9が出口開口部8の所の管2の端部に形成され、ワイヤまたはフィラメントなどの細長い発熱体11が配置または設置され、管状本体部材2に関連して溝部9内で融合され、加熱用ワイヤ11は出口開口部8の中央を横切るように横方向に延在している。
【0032】
ここで図面の
図11を参照すると、カートリッジまたは槽アセンブリ20の別の実施形態が概略的に示されている。本実施形態では、加熱システム1は、毛管現象により、本体部材2に隣接した供給槽4から加熱される液体を運ぶ2つの別個の異なる毛管チャネル3を画定しているディスク形本体部材2を含む。本実施形態では、槽4から液体を運ぶ毛管供給チャネル3の各々は、ワイヤまたはフィラメントなどのこれ自体の発熱体11を有する。矢印Aの方向に取った管3の各々の断面は、本質的に、
図10に示されている例に対応する。発熱体11の各々は、一般的な制御および電力供給のための電気コネクタまたは給電リード線19により相互接続されている。発熱体11の各々は、各チャネル3の出口開口部8から出現する液体に対してより大きな表面積を示すために丸い断面またはあるいは平坦な断面を有していてもよい。さらに、各チャネル3の出口開口部8は、液体を溜める小ウェルを形成し、各それぞれの発熱体11に対してより大きな表面積を示す末広円錐表面8’で形成されていてもよい。
【0033】
最後に、図面の
図12を参照すると、
図1から
図11までに関して前述されている、本発明の実施形態のいずれかによる、eシガレットなどの吸入器デバイス30内で、特に液体Lなどの物質を加熱する方法のステップを概略的に示す流れ図が示されている。この関連で、
図12の第1のボックスiは、毛管現象または表面張力により、供給槽4から少なくとも1つの供給チャネル3および、あるいは複数の供給チャネル3を通して加熱される液体を運ぶステップを示す。第2のボックスiiは、次いで、液体が供給チャネル3の出口6から出現した時に各供給チャネル3の出口6で液体Lをもっぱら加熱して液体を気化するステップを示す。第3のボックスiiiは、ユーザによる吸入器デバイス30の使用に依存するように加熱するステップの起動を制御するステップを示す。図面の
図12の最後のボックスivは、定期的にまたは断続的に、特にパルス状に、液体の加熱を実施する随意のステップを示す。
【0034】
本発明の特定の実施形態が本明細書において図示され、記載されているが、当業者には当然のことながら、様々な代替的なおよび/または等価の実装形態が存在する。例示的実施形態(単数または複数)が例に過ぎず、範囲、適用性または構造を限定することが全く意図されていないことは言うまでもない。むしろ、上述の要約および詳細な説明は、当業者に、少なくとも1つの例示的実施形態を実施するための重宝な手引きをもたらし、添付の特許請求の範囲およびこれらの法的均等物に記載されている範囲から逸脱することなく、例示的実施形態に記載されている要素の機能および配置に様々な変更が施されてもよいことが分かる。全般的に、本願は、本明細書において検討されている特定の実施形態のいかなる適応形態(adaptation)または変形形態も包含することが意図されている。
【0035】
また、当然のことながら、本文献において、用語「comprise(含む)」、「comprising(含む)」、「include(含む)」、「including(含む)」、「contain(含有する)」、「containing(含有する)」、「have(有する)」、「having(有する)」およびこれらの任意の変形は、本明細書に記載されている工程、方法、デバイス、装置またはシステムが、記載されている特徴または部分または要素またはステップに限定されず、明示的に列挙されていないかまたはこのような工程、方法、物品または装置に固有の他の要素、特徴、部分またはステップを含むように、包括的な(すなわち非排他的な)意味で理解されることが意図されている。さらに、本明細書において用いられている用語「a」および「an」は、特に明記されていない限り、「1つまたは複数の」の意味で理解されることが意図されている。
さらに、用語「第1の」、「第2の」、「第3の」等は単に標示として用いられているに過ぎず、数的要件を課すことまたはこれらの対象の重要性の一定の序列を確立することは意図されていない。
【符号の説明】
【0036】
1 加熱システム
2 本体部材
3 供給チャネルまたは毛細管もしくは毛細スロット
4 槽
5 入口側または入口領域
6 出口側または出口領域
7 入口開口部
8 出口開口部
8’ 円錐表面
9 溝部または陥凹部
10 加熱手段
11 発熱体または加熱用ワイヤ
12 発熱体の端部
13 発熱体の端部
14 送達チャネル
15 通気キャップまたは通気ストッパ
16 プレート要素
17 プレート要素の側部
18 プレート要素の面取り縁部またはテーパ縁部
19 電気コネクタ
20 カートリッジまたは槽アセンブリ
21 カートリッジ・ハウジング
22 ハウジングの基壁
23 ハウジングの端壁
24 ハウジングの上面または壁
25 栓部材
26 通気キャップまたは通気弁
30 電子たばこ
31 ケーシング
32 第1のケーシング部分
33 電源またはバッテリ・ユニット
34 第2のケーシング部分
35 蒸気室
36 吸口
37 吸気口
38 クランプ留めリングまたは蒸気ガイド
D 溝部または陥凹部の幅
d 出口開口部の直径
L 加熱される液体