特許第6742511号(P6742511)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6742511ハイブリッドタイヤコード及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6742511
(24)【登録日】2020年7月30日
(45)【発行日】2020年8月19日
(54)【発明の名称】ハイブリッドタイヤコード及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D02G 3/26 20060101AFI20200806BHJP
   D02G 3/48 20060101ALI20200806BHJP
   D02G 3/04 20060101ALI20200806BHJP
   D06M 15/55 20060101ALI20200806BHJP
   D06M 15/41 20060101ALI20200806BHJP
   D06M 15/693 20060101ALI20200806BHJP
   B60C 9/00 20060101ALI20200806BHJP
【FI】
   D02G3/26
   D02G3/48
   D02G3/04
   D06M15/55
   D06M15/41
   D06M15/693
   B60C9/00 G
   B60C9/00 B
   B60C9/00 D
【請求項の数】23
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2019-512731(P2019-512731)
(86)(22)【出願日】2017年9月29日
(65)【公表番号】特表2019-532192(P2019-532192A)
(43)【公表日】2019年11月7日
(86)【国際出願番号】KR2017011026
(87)【国際公開番号】WO2018062960
(87)【国際公開日】20180405
【審査請求日】2019年3月5日
(31)【優先権主張番号】10-2016-0125412
(32)【優先日】2016年9月29日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2016-0183260
(32)【優先日】2016年12月30日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100117422
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 かおり
(72)【発明者】
【氏名】イ,ミン ホ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,オク ファ
(72)【発明者】
【氏名】イム,ジョン ハ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ダ エ
【審査官】 堀内 建吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−014678(JP,A)
【文献】 特開昭61−071204(JP,A)
【文献】 特開昭62−039302(JP,A)
【文献】 特表2015−536269(JP,A)
【文献】 特開昭54−045007(JP,A)
【文献】 特開2005−022455(JP,A)
【文献】 特開昭60−045401(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0120791(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D02G1/00− 3/48
D02J1/00−13/00
B60C1/00−19/12
D06M13/00/15/715
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PET下撚糸と、
アラミド下撚糸と、
前記PET下撚糸及び前記アラミド下撚糸上にコートされた接着剤とを含み、
前記PET下撚糸と前記アラミド下撚糸とはともに上撚りされており、
所定の長さ部分に対する撚り戻し後、前記アラミド下撚糸の長さは前記PET下撚糸の長さの1〜1.05倍であるハイブリッドタイヤコード。
【請求項2】
前記PET下撚糸は400〜3000デニールのPETフィラメントからなり、
前記アラミド下撚糸は400〜3000デニールのアラミドフィラメントからなる、
請求項1に記載のハイブリッドタイヤコード。
【請求項3】
前記PET下撚糸は1300〜3000デニールの繊度を有し、
前記アラミド下撚糸は1500〜3000デニールの繊度を有する、
請求項2に記載のハイブリッドタイヤコード。
【請求項4】
前記PET下撚糸は第1撚り方向を有し、
前記アラミド下撚糸は第2撚り方向を有し、
前記PET下撚糸と前記アラミド下撚糸はともに第3撚り方向に上撚りされており、
前記第2撚り方向は前記第1撚り方向と同一であり、
前記第3撚り方向は前記第1撚り方向と反対である、
請求項1に記載のハイブリッドタイヤコード。
【請求項5】
前記PET下撚糸及び前記アラミド下撚糸はそれぞれ200〜500TPMの第1撚り数を有する、
請求項1に記載のハイブリッドタイヤコード。
【請求項6】
前記PET下撚糸及び前記アラミド下撚糸はともに第2撚り数で上撚りされており、
前記第2撚り数は前記第1撚り数と同一である、
請求項5に記載のハイブリッドタイヤコード。
【請求項7】
前記PET下撚糸と前記アラミド下撚糸との重量比は20:80〜80:20である、
請求項1に記載のハイブリッドタイヤコード。
【請求項8】
前記PET下撚糸と前記アラミド下撚糸との重量比は1:3〜3:1である、
請求項7に記載のハイブリッドタイヤコード。
【請求項9】
ASTM D885に従って測定された破断強度が8.0〜15.0g/dであり、破断伸び率が5〜15%である、
請求項1に記載のハイブリッドタイヤコード。
【請求項10】
日本規格協会(Japanese Standard Association:JSA)のJIS−L 1017方法に従って実施されるディスク疲労テスト後の強度保持率が80%以上である、
請求項1に記載のハイブリッドタイヤコード。
【請求項11】
ASTM D885に従って測定された3%LASEが6kgf以上、5%LASEが10kgf以上、7%LASEが17kgf以上である、
請求項1に記載のハイブリッドタイヤコード。
【請求項12】
ASTM D885に従って測定された3%LASEが8kgf以上、5%LASEが15kgf以上、7%LASEが25kgf以上である、
請求項11に記載のハイブリッドタイヤコード。
【請求項13】
180℃で初荷重0.01g/dで2分間測定された乾熱収縮率が0.3〜2.5%である、
請求項1に記載のハイブリッドタイヤコード。
【請求項14】
アラミドフィラメントを第1方向に下撚りしてアラミド下撚糸を形成する段階と、
PETフィラメントを第2方向に下撚りしてPET下撚糸を形成する段階と、
前記アラミド下撚糸と前記PET下撚糸をともに第3方向に上撚りして合撚糸を形成する段階と、
前記合撚糸を接着剤溶液に浸漬させる段階と、
前記浸漬によって前記接着剤溶液が含浸された前記合撚糸を乾燥させる段階と、
前記乾燥した合撚糸を熱処理する段階とを含み、
前記第2方向は前記第1方向と同一であり、
前記第3方向は前記第1方向と反対であり、
前記PET合撚糸を形成する段階で前記PETフィラメントに印加される張力が前記アラミド合撚糸を形成する段階で前記アラミドフィラメントに印加される張力より小さい
請求項1に記載のハイブリッドタイヤコードの製造方法。
【請求項15】
前記合撚糸を形成する段階で形成された所定の長さの前記合撚糸において、前記合撚糸の撚り戻し後、前記PET下撚糸の長さが前記アラミド下撚糸の長さの1.005〜1.050倍である、
請求項14に記載のハイブリッドタイヤコードの製造方法。
【請求項16】
前記PET下撚糸を形成する段階で前記PETフィラメントに印加される張力は前記アラミド下撚糸を形成する段階で前記アラミドフィラメントに印加される張力の50%〜95%である、
請求項14に記載のハイブリッドタイヤコードの製造方法。
【請求項17】
前記アラミド下撚糸を形成する段階、前記PET下撚糸を形成する段階及び前記合撚糸を形成する段階は単一撚糸機で行う、
請求項14に記載のハイブリッドタイヤコードの製造方法。
【請求項18】
前記アラミド下撚糸を形成する段階、前記PET下撚糸を形成する段階及び前記合撚糸を形成する段階は連続工程で行う、
請求項14に記載のハイブリッドタイヤコードの製造方法。
【請求項19】
前記接着剤溶液は、RFL(Resorcinol Formaldehyde Latex)接着剤及びエポキシ系接着剤の少なくとも1種を含む、
請求項14に記載のハイブリッドタイヤコードの製造方法。
【請求項20】
前記乾燥段階は70〜200℃で30〜120秒間行い、
前記熱処理段階は200〜250℃で30〜120秒間行う、
請求項14に記載のハイブリッドタイヤコードの製造方法。
【請求項21】
前記浸漬段階、前記乾燥段階、及び前記熱処理段階は連続的に行い、
前記浸漬段階、前記乾燥段階、及び前記熱処理段階で前記合撚糸に加わる張力はコード当たり0.4kg/cord以上である、
請求項14に記載のハイブリッドタイヤコードの製造方法。
【請求項22】
前記熱処理後、前記ハイブリッドコードの撚り戻し後に測定された前記アラミド下撚糸の長さは前記PET下撚糸の長さの1〜1.05倍である、
請求項14に記載のハイブリッドタイヤコードの製造方法。
【請求項23】
PET下撚糸と、
アラミド下撚糸と、
前記PET下撚糸及び前記アラミド下撚糸上にコートされた接着剤とを含み、
前記PET下撚糸と前記アラミド下撚糸はともに上撚りされており、
所定の長さ部分に対する撚り戻し後、前記アラミド下撚糸の長さは前記PET下撚糸の長さの1〜1.05倍であるカーカス用ハイブリッドタイヤコード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハイブリッドタイヤコード及びその製造方法に関し、より詳しくは、タイヤの高性能化及び軽量化を具現することができる高性能ハイブリッドタイヤコード及びその製造方法に関する。また、本発明はカーカス用ハイブリッドコード及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤ、コンベヤーベルト、Vベルト、ホースなどのゴム製品の補強材として繊維コード、特に接着剤で処理された繊維コードである“ディップコード(dip cord)”が広く用いられている。繊維コードの材料としては、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維などがある。最終ゴム製品の性能を向上させる重要な方法の一つは、補強材として使われる繊維コードの物性を向上させることである。
一方、タイヤの補強材として使われる繊維コードをタイヤコードと指称する。自動車の性能向上及び道路状態の改善によって車両の走行速度が徐々に増加しているので、高速走行時にもタイヤの安全性及び耐久性を維持させることができるタイヤコードに対する研究が活発に進んでいる。
また、環境に優しい車両に対する要求が増加するに従い、高燃費のための車両の軽量化が大きなイシューとして関心を引いており、このためにタイヤの軽量化に対する研究もやはり活発に進んでいる。
繊維、金属及びゴムの複合体であるタイヤは、最外側に位置して路面と接触するトレッド(tread)、トレッドの下側のキャップフライ(capply)、キャップフライの下側のベルト(belt)及びベルトの下側のカーカス(carcass)を含む。このようなタイヤの軽量化のために、繊維成分であるタイヤコードの高性能化が必要である。
タイヤコードの高性能化のために、ナイロンとアラミドから製造されたハイブリッドタイヤコードが開発されたが、このようなハイブリッドタイヤコードは、S−Sカーブパターン上で初期にナイロン物性が発現して低いモジュラスを示す問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明はこのような関連技術の制限及び欠点に起因する問題点を防止することができるハイブリッドタイヤコード及びその製造方法に関する。
本発明の一観点は、タイヤの高性能化及び軽量化を具現することができる高性能ハイブリッドタイヤコードを提供することである。
本発明の他の観点は、タイヤの高性能化及び軽量化を具現することができる高性能ハイブリッドタイヤコードを、物性偏差を最小化しながら高い生産性及び低い費用で製造することができる方法を提供することである。
本発明のさらに他の一観点は、高い強度、高いモジュラス及び優れた耐疲労特性を有することによってタイヤの高性能化及び軽量化を具現することができるカーカス用ハイブリッドタイヤコードを提供することである。
本発明のさらに他の一観点は、高い強度、高いモジュラス及び優れた耐疲労特性を有することによってタイヤの高性能化及び軽量化を具現することができるカーカス用ハイブリッドタイヤコードを、物性偏差を最小化しながら高い生産性及び低い費用で製造することができる方法を提供することである。
本発明のさらに他の特徴及び利点は以下で記述され、部分的にはそのような記述から明らかになるであろう。もしくは、本発明の実施によって本発明のさらに他の特徴及び利点が理解可能であろう。本発明の目的及び他の利点は発明の詳細な説明及び特許請求範囲で特定する構造によって実現されて達成されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0004】
このような技術的課題を解決するために、本発明の一実施例は、PET下撚糸と、アラミド下撚糸と、前記PET下撚糸及び前記アラミド下撚糸上にコートされた接着剤とを含み、前記PET下撚糸と前記アラミド下撚糸はともに上撚りされており、所定の長さ部分に対する撚り戻し後、前記アラミド下撚糸の長さは前記PET下撚糸の長さの1〜1.1倍である、ハイブリッドタイヤコードを提供する。
前記PET下撚糸は400〜3000デニールのPETフィラメントからなり、前記アラミド下撚糸は400〜3000デニールのアラミドフィラメントからなる。
より具体的には、前記PET下撚糸は1300〜3000デニールの繊度を有してもよく、前記アラミド下撚糸は1500〜3000デニールの繊度を有してもよい。
前記PET下撚糸は第1撚り方向を有し、前記アラミド下撚糸は第2撚り方向を有し、前記PET下撚糸と前記アラミド下撚糸とは、ともに第3撚り方向に上撚りされており、前記第2撚り方向は前記第1撚り方向と同一であり、記第3撚り方向は前記第1撚り方向と反対である。
前記PET下撚糸と前記アラミド下撚糸とは、それぞれ200〜500TPMの第1撚り数を有する。
前記PET下撚糸と前記アラミド下撚糸とは、ともに第2撚り数で上撚りされており、前記第2撚り数は前記第1撚り数と同一である。
前記PET下撚糸と前記アラミド下撚糸との重量比は20:80〜80:20である。
より具体的に、前記PET下撚糸と前記アラミド下撚糸との重量比は1:3〜3:1の範囲であってもよい。
【0005】
前記ハイブリッドタイヤコードは、ASTM D885に従って測定された破断強度が8.0〜15.0g/dであり、破断伸び率が5〜15%である。
前記ハイブリッドタイヤコードは、日本規格協会(Japanese Standard Association:JSA)のJIS−L 1017方法に従って実施されるディスク疲労テスト後の強度保持率が80%以上である。
前記ハイブリッドタイヤコードにおいて、ASTM D885に従って測定された3%LASEがkgf以上、5%LASEが10kgf以上、7%LASEが17kgf以上である。
より具体的に、前記ハイブリッドタイヤコードにおいて、ASTM D885に従って測定された3%LASEが8kgf以上、5%LASEが15kgf以上、7%LASEが25kgf以上であってもよい。
前記ハイブリッドタイヤコードにおいて、180℃にて初荷重0.01g/dで2分間測定された乾熱収縮率が0.3〜2.5%である。
【0006】
本発明の他の一実施例は、アラミドフィラメントを第1方向に下撚りしてアラミド下撚糸を形成する段階と、PETフィラメントを第2方向に下撚りしてPET下撚糸を形成する段階と、前記アラミド下撚糸と前記PET下撚糸をともに第3方向に上撚りして合撚糸を形成する段階と、前記合撚糸を接着剤溶液に浸漬させる段階と、前記浸漬によって前記接着剤溶液が含浸された前記合撚糸を乾燥させる段階と、前記乾燥した合撚糸を熱処理する段階とを含み、前記第2方向は前記第1方向と同一であり、前記第3方向は前記第1方向と反対であり、前記PET合撚糸を形成する段階で前記PETフィラメントに印加される張力が前記アラミド合撚糸を形成する段階で前記アラミドフィラメントに印加される張力より小さい、ハイブリッドタイヤコードの製造方法を提供する。
前記合撚糸を形成する段階で形成された所定の長さの前記合撚糸において、前記合撚糸の撚り戻し後、前記PET下撚糸の長さが前記アラミド下撚糸の長さの1.005〜1.050倍である。
前記PET下撚糸を形成する段階で前記PETフィラメントに印加される張力は前記アラミド下撚糸を形成する段階で前記アラミドフィラメントに印加される張力の50%〜95%である。
前記アラミド下撚糸を形成する段階、前記PET下撚糸を形成する段階及び前記合撚糸を形成する段階は単一撚糸機で行う。
前記アラミド下撚糸を形成する段階、前記PET下撚糸を形成する段階及び前記合撚糸を形成する段階は連続工程で行う。
前記接着剤溶液は、RFL(Resorcinol Formaldehyde Latex)接着剤及びエポキシ系接着剤の少なくとも1種を含む。
前記乾燥段階は70〜200℃で30〜120秒間行い、前記熱処理段階は200〜250℃で30〜120秒間行う。
前記浸漬段階、前記乾燥段階及び前記熱処理段階は連続的に行い、前記浸漬段階、前記乾燥段階及び前記熱処理段階で前記合撚糸に加わる張力はコード当たり0.4kg/cord以上である。
前記熱処理後、前記ハイブリッドコードの撚り戻し後に測定された前記アラミド下撚糸の長さは前記PET下撚糸の長さの1〜1.1倍である。
【0007】
本発明のさらに他の一実施例は、PET下撚糸と、アラミド下撚糸と、前記PET下撚糸及び前記アラミド下撚糸上にコートされた接着剤とを含み、前記PET下撚糸と前記アラミド下撚糸とはともに上撚りされており、所定の長さ部分に対する撚り戻し後、前記アラミド下撚糸の長さは前記PET下撚糸の長さの1〜1.1倍であるカーカス用ハイブリッドタイヤコードを提供する。
このような一般的敍述及び以下の詳細な説明はいずれも本発明を例示するか説明するためのものであり、特許請求範囲は発明についてのより詳細な説明を提供するためのものと理解されなければならない。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施例によれば、合撚糸製造のための上撚りと下撚りとを単一撚糸機で行うので、ハイブリッドタイヤコードの生産性が向上し、製造コストが減少することができる。また、本発明の一実施例による製造方法による場合、80%以上の優れた強度保持率を有するハイブリッドタイヤコードを製造することができる。
このような製造方法に従って製造された本発明の一実施例によるハイブリッドタイヤコードは高性能の軽量化特徴を有することができ、また高圧タイヤに適用可能である。
より具体的に、本発明の一実施例によるハイブリッドタイヤコードは、アラミド下撚糸の高い強度により、高速走行時にタイヤの変形を最小化することができる。
本発明の一実施例によるハイブリッドタイヤコードは、アラミド下撚糸とPET下撚糸とが実質的に同じ撚り数及び実質的に同じ長さを有し、構造的安全性に優れるので、製造過程で引き起こされることができる物性偏差及び不良率が最小化することができる。
本発明の一実施例によれば、タイヤコードが撚り戻しされた後に測定されたアラミド下撚糸の長さがPET下撚糸の長さの1〜1.1倍であるので、タイヤが引張及び圧縮を繰り返すとき、タイヤコードに加わるストレスがアラミド下撚糸だけではなくPET下撚糸にも分散させることができる。その結果、本発明の一実施例によるハイブリッドタイヤコードは優れた耐疲労特性を有し、長時間の高速走行にもタイヤが安全性を維持することができる。
また、本発明の一実施例によるハイブリッドタイヤコードは、高速走行時にタイヤの変形を最小化することができ、特にSUV、LTなどの大型車両のタイヤのように高荷重に耐えなければならず、優れた形態安全性を有しなければならない高圧タイヤのカーカスに有用に適用可能である。
本発明の一実施例によれば、ハイブリッドタイヤコードの製造過程、特に熱処理過程で発生するかもしれない強度及びモジュラスの低下が最小化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下では本発明のハイブリッドタイヤコード、カーカス用ハイブリッドタイヤコード及びその製造方法の実施例を具体的に説明する。
本発明の技術的思想及び範囲を逸脱しない範疇内で本発明の多様な変更及び変形が可能であるという点は当業者に明らかであろう。よって、本発明は特許請求範囲に記載された発明及びその均等物の範囲内にある変更及び変形のいずれも含む。
本明細書で使われる “下撚糸(primarily twisted yarn)”という用語はフィラメントをいずれか一方向に撚って作った糸(yarn)を意味である。ここで、フィラメントはモノフィラメント及びマルチフィラメントのいずれも含む意味である。本発明の一実施例によれば、下撚糸はフィラメント糸からなることができる。下撚糸が一本の糸からなる場合、下撚糸を単糸(single yarn)とも言うことがある。
本明細書で使われる“合撚糸(cabled yarn)”という用語は2本以上の下撚糸をいずれか一方向に一緒に撚って作った糸を意味する。本発明の一実施例によれば、合撚糸を“ローコード(raw cord)”ということがある。
本明細書で使われる“タイヤコード”という用語はゴム製品に直ちに適用できるように接着剤を含む合撚糸を意味する。本発明の一実施例によれば、タイヤコードを“ディップコード(dip cord)”ということがある。
本明細書で使われる“撚り数(twist number)”は1m当たりの撚りの回数を意味し、その単位はTPM(Twist Per Meter)である。
本明細書で使われる“LASE”は特定の伸び率での荷重(Load At Specific Elongation)を意味し、例えば3%LASEは3%伸び率での荷重を意味する。
高性能タイヤコードを開発するためには、材料そのものの物性だけではなく、撚り数、形態などの構造的特性の全てを考慮しなければならない。
【0010】
本発明の一実施例はハイブリッドタイヤコードを提供する。
本発明の一実施例によるハイブリッドタイヤコードはPETとアラミドとのハイブリッドタイプであり、PET下撚糸、アラミド下撚糸及びPET下撚糸とアラミド下撚糸上にコートされた接着剤を含む。ここで、PET下撚糸とアラミド下撚糸とはともに上撚りされている。本発明の一実施例によるハイブリッドタイヤコードの所定の長さ部分に対する撚り戻し後、アラミド下撚糸の長さはPET下撚糸の長さの1〜1.1倍である。
具体的に、本発明の一実施例によるハイブリッドタイヤコードは、第1撚り方向のPET下撚糸及び第2撚り方向のアラミド下撚糸を含み、PET下撚糸とアラミド下撚糸とはともに第3撚り方向に上撚りされている。本発明の一実施例によるハイブリッドタイヤコードは、PET下撚糸及びアラミド下撚糸が上撚りされてなる合撚糸を含む。
例えば、PETフィラメントとアラミドフィラメントが単一撚糸機(例えば、ケーブルコード撚糸機、Allma社のCable Corder)によって同時にそれぞれ下撚りされることによってPET下撚糸とアラミド下撚糸とがそれぞれ形成され、それとほぼ同時に、すなわち連続的にPET下撚糸とアラミド下撚糸とがともに上撚りされて、ローコード(raw cord)である合撚糸が形成される。
アラミド下撚糸の第2撚り方向はPET下撚糸の第1撚り方向と同一であり、第3撚り方向、すなわち上撚り方向は第1撚り方向の反対方向である。
【0011】
本発明の一実施例によれば、PET下撚糸とアラミド下撚糸とは同じ撚り数を有してもよい。PET下撚糸とアラミド下撚糸とは、例えば200〜500TPMの範囲で同じ撚り数を有してもよい。すなわち、PET下撚糸とアラミド下撚糸とはそれぞれ200〜500TPMの第1撚り数を有してもよい。また、PET下撚糸とアラミド下撚糸とはともに第2撚り数で上撚りされ、第2撚り数は第1撚り数と同一であってもよい。
本発明の一実施例によれば、下撚りと上撚りが単一撚糸機によって行われるから、それぞれの下撚り及び上撚りが互いに異なる撚糸機によって行われるバッチ式方法に比べてハイブリッドタイヤコードの生産性が向上し、製造コストが減少させることができる。
アラミドは直鎖状分子を有するから、結晶化度が高く、熱による収縮挙動がほとんどない。一方、タイヤコードで要求される高強度及び高モジュラスを発現するために延伸工程によって製造されるPETフィラメントは、ハイブリッドタイヤコード(ディップコード)製造過程で行われる熱処理工程中に収縮することになり、その結果、最終的なタイヤコードにおいてアラミド下撚糸とPET下撚糸との長さ差が発生して不均一な物性をもたらすことがある。PET下撚糸の収縮によってディップコードの形態が不均一になれば、アラミド下撚糸とPET下撚糸とが分離されて強度が低下し、疲労性能もやはり低くなる。例えば、最終の結果物であるハイブリッドタイヤコードにおいてアラミド単糸の長さがPET単糸の長さの1.1倍を超えるほどに長さ差が発生すれば、ハイブリッドタイヤコードの強度及びモジュラスの低下が引き起こされ、耐疲労特性も減少する。
したがって、本発明の一実施例によれば、高い強度及び疲労性能を有するハイブリッドタイヤコードを製造するために、撚糸(twist)工程中にアラミドフィラメントとPETフィラメントとにそれぞれ加わる張力を調節して、PET下撚糸をアラミド下撚糸より長く製造する。また、熱処理工程中にPET下撚糸の収縮を最小化するために比較的高い水準の張力(例えば、0.4kg/cord以上)を合撚糸(ローコード)に印加することができる。よって、完成されたハイブリッドタイヤコードにおいてアラミド単糸とPET単糸とが実質的に同じ長さ及び構造を有することができる。
具体的に、最終タイヤコードにおいてアラミド下撚糸とPET下撚糸とが実質的に同じ構造を有するようにするために、撚糸工程を行うとき、アラミドフィラメントとPETフィラメントに加わる張力を適切に調節する。すなわち、下撚りと上撚りとが行われるとき、PETフィラメントよりアラミドフィラメントに相対的により大きな張力を加えることによってPET下撚糸の長さをアラミド下撚糸より長くすることができる。
本発明の一実施例によれば、所定の長さの合撚糸(ローコード)を撚り戻しした後のPET下撚糸の長さはアラミド下撚糸の長さの1.005〜1.050倍である。したがって、本発明の一実施例による合撚糸(ローコード)はアラミド下撚糸をPET下撚糸がカバーする構造、すなわち“カバーリング構造”が若干加わった併合構造(merged structure)を有することができる。
【0012】
本発明の一実施例によれば、合撚糸(ローコード)においてPET下撚糸の長さがアラミド下撚糸の長さより長いから、接着剤付与のための後続のディッピング、乾燥及び熱処理工程を順次行うときに引き起こされるPET下撚糸の収縮によって最終的なハイブリッドタイヤコード(すなわち、ディップコード)においてアラミド下撚糸の長さがPET下撚糸よりあまりにも長くなることを防止することができる。
本発明の一実施例によれば、所定の長さの最終的なハイブリッドタイヤコードにおいて、所定の長さ部分に対する撚り戻し後、アラミド下撚糸の長さはPET下撚糸の長さの1〜1.1倍である。
ハイブリッドタイヤコードにおいてアラミド下撚糸がPET下撚糸より短い場合、すなわち合撚糸(ローコード)においてPET下撚糸の長さがアラミド下撚糸の長さの1.050倍を超える場合、タイヤの引張/圧縮が繰り返されるとき、タイヤコードに加わるストレスがアラミド下撚糸に集中的に印加されるため、タイヤコードの耐疲労特性が低くなり、このような低い耐疲労特性によって、長期間の高速走行時にタイヤの安全性を保障することができない。
一方、合撚糸(ローコード)においてPET下撚糸の長さがアラミド下撚糸の長さの1.005倍未満の場合、アラミド下撚糸の長さがPET下撚糸の長さの1.1倍を超えるカバーリング構造のハイブリッドタイヤコードが最終的に得られる。このようなカバーリング構造のハイブリッドタイヤコードにおいてはPET下撚糸をカバーするアラミド下撚糸がガイド又はローラーとの摩擦によって押されてループを形成するなど、不均一な形態が引き起こされるため、ハイブリッドタイヤコードの製造時に物性偏差及び不良率が大きくなるだけでなく、タイヤの製造工程でも物性偏差によってタイヤ不良率が増加する。
【0013】
本発明の一実施例によれば、合撚糸(ローコード)の製造のための下撚り及び上撚りを行うとき、200〜500TPMの範囲内で同じ撚り数が適用される。ただ、接着剤の付与のための後続のディッピング、乾燥及び熱処理工程を順次行うとき意図しない撚り戻り(untwist)が発生し、下撚りと上撚りとにおいて最初の設定撚り数に対して15%以内の差がそれぞれ発生することがある。一般に、繊維の撚り数が高ければ、強度は低下するが、疲労性能が増加する。一方、繊維の撚り数が低いほど、強度が増加するが疲労性能は減少する。
本発明の一実施例によれば、アラミド下撚糸とPET下撚糸とが実質的に同じ撚り数、長さ及び構造を有することにより、下撚糸が強度及び疲労性能において類似の挙動を示す。
【0014】
本発明の一実施例によるハイブリッドタイヤコード製造に使われるアラミドフィラメント及びPETフィラメントは特に制限されない。アラミド下撚糸及びPET下撚糸にそれぞれ適用されるアラミドフィラメント及びPETフィラメントは400〜3000デニールの範囲内で同一又は類似の繊度を有することができる。例えば、本発明の一実施例によるPET下撚糸は400〜3000デニールのPETフィラメントからなるPETフィラメント糸であり、アラミド下撚糸は400〜3000デニールのアラミドフィラメントからなるアラミドフィラメント糸である。このようなハイブリッドタイヤコードは高性能の軽量タイヤに適用可能である。
一方、PET下撚糸は1300〜3000デニールの繊度を有し、アラミド下撚糸は1500〜3000デニールの繊度を有することができる。このような繊度を有するアラミド下撚糸とPET下撚糸とからなるハイブリッドコードは、特に高圧タイヤに有用に適用可能である。
アラミドは主鎖にアミド基とともにフェニル環を含んでおり、フェニル環の連結状態によってパラ型(p−)とメタ型(m−)に分類される。本発明の一実施例によれば、アラミド下撚糸はポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)を含むことができる。
本発明の一実施例によれば、アラミドフィラメントは20g/d以上の引張強度及び3%以上の破断伸度を有する。アラミドフィラメントの引張強度が20g/d未満であれば、PETフィラメント糸の低い強度を充分に補償することができないため、高速走行時にタイヤの変形が引き起こされる危険が増加する。
また、アラミドフィラメントはPETフィラメントの5〜10倍のモジュラスを有するため、ハイブリッドタイヤコードにおいてアラミド下撚糸とPET下撚糸との重量比が15:85程度のみであってもハイブリッドタイヤコードはPET単一素材のタイヤコードの2〜3倍のモジュラスを有することになる。よって、タイヤコードの物性と製造コストとの両者を考慮してアラミド下撚糸とPET下撚糸との重量比を決定することができる。本発明の一実施例によれば、アラミド下撚糸とPET下撚糸との重量比は20:80〜80:20である。
PET下撚糸の重量がアラミド下撚糸重量の4倍を超えると、最終的に得られるハイブリッドタイヤコードがPETの物性に追従して強度及びモジュラスが不足するため、高い形態安全性を要求する高圧タイヤ用タイヤコードとして相応しくない。また、不足した強度及びモジュラスを補償するために多量のタイヤコードを要するため、結果的にタイヤの軽量化ができなくなる。
一方、アラミド下撚糸の重量がPET下撚糸重量の4倍を超えると、ハイブリッドタイヤコードの耐疲労性能が低下してタイヤの耐久力の確保が難しく、さらに高価のアラミドを多量で使うことによって費用が上昇することになる。
より具体的に、アラミド下撚糸とPET下撚糸との重量比は1:3〜3:1の範囲に調整することができる。
【0015】
本発明の一実施例によるハイブリッドタイヤコードは、タイヤの他の構成要素との接着力向上のために、PET下撚糸とアラミド下撚糸上とにコートされた接着剤をさらに含む。接着剤は、RFL(Resorcinol Formaldehyde Latex)接着剤及びエポキシ系接着剤の少なくとも1種を含む。
本発明の一実施例によれば、ハイブリッドタイヤコードは、8.0〜15.0g/dの破断強度及び5〜15%の破断伸び率を有する。より具体的に、本発明の一実施例によるハイブリッドタイヤコードは10.0〜15.0g/dの破断強度及び5〜15%の破断伸び率を有していてもよい。破断強度及び破断伸び率はASTM D885に従って測定することができる。
【0016】
本発明の一実施例によるハイブリッドタイヤコードは80%以上の強度保持率を有する。強度保持率は日本規格協会(Japanese Standard Association: JSA)のJIS−L 1017方法に従って実施するディスク疲労テスト後の強度保持率を意味する。80%以上の高い強度保持率を有するハイブリッドコードは本発明の一実施例による製造方法に従って製造することができる。
また、本発明の一実施例によるハイブリッドタイヤコードは、ASTM D885に従って測定された、30kgf以上の高い強度(strength)を有する。
本発明の一実施例によるハイブリッドタイヤコードは高性能軽量化タイヤに使用することができる。さらに、本発明の一実施例によるハイブリッドタイヤコードは高圧タイヤに要求される程度の優れた形態安全性を保障することができる高いモジュラスを備えることから、高圧タイヤの補強材として使用することもできる。
例えば、本発明の実施例によれば、高性能軽量化タイヤのためのハイブリッドタイヤコードは、ASTM D885に従って測定された、6kgf以上の3%LASE、10kgf以上の5%LASE、17kgf以上の7%LASEを有することができる。また、高圧タイヤに適用されるハイブリッドタイヤコードは、例えば1300デニール以上のPET下撚糸及び1500デニール以上の繊度を有するアライミ下撚糸によって製造することができ、ASTM D885に従って測定された、8kgf以上の3%LASE、15kgf以上の5%LASE及び25kgf以上の7%LASEを有することができる。
本発明の一実施例によるハイブリッドタイヤコードにおいて、180℃にて初荷重0.01g/dで2分間測定された乾熱収縮率は0.3〜2.5%とすることができる。
【0017】
前述した本発明の一実施例によるハイブリッドタイヤコードはタイヤのカーカスに適用され、本発明の他の一実施例によるカーカス用ハイブリッドタイヤコードとして使用することができる。
カーカスは車体の荷重を支持し、タイヤの空気圧を維持するタイヤの骨格であり、タイヤの全面を取り囲む構造を有する。よって、タイヤの軽量化のためにカーカスの軽量化が要求される。カーカスの軽量化のためには、カーカス補強材層の数を減少させるか各補強材層の厚さを減少させる必要がある。このためには、カーカス用タイヤコードの高性能化が先決されなければならない。
通常、カーカス用タイヤコードのための素材としてPET及びレーヨンが使われている。しかし、両者のいずれもカーカス補強材層の数を減少させるか、各補強材層の厚さを減少させるのにはその強度及びモジュラスが足りない。
近年、ナイロンとアラミドとから製造されたハイブリッドタイヤコードがキャッププライ用に開発された。このようなハイブリッドタイヤコードはS−Sカーブパターン上で初期にナイロン物性が発現して低いモジュラスを示す。カーカスはタイヤの全体的骨組みの役目を果たし、タイヤの形態安全性に重大な影響を及ぼすから、初期モジュラスが低い場合、タイヤの製造時に低い形態安全性によってタイヤの形態が崩れる問題点がある。したがって、ナイロンとアラミドとのハイブリッドタイヤコードはカーカス用に適していないと認識されている。
特に、SUV(Sport Utility Vehicle)及びLT(Light Truck)の需要が増加するに従い、一般車両のタイヤより高い荷重に耐えることができるとともに、走行安全性を保障することができる高圧タイヤに適した、大変高い形態安全性を有する、高強度及び高モジュラスのタイヤコードがもっと要求されている。
材料自体の物性、各下撚糸の線密度(linear density)、撚り数、形態などの構造的側面の全てを考慮すると、本発明の一実施例によるハイブリッドタイヤコードは、本発明の他の一実施例によるカーカス用ハイブリッドタイヤコードとして使用することができる。本発明の他の一実施例によるカーカス用ハイブリッドタイヤコードはタイヤの形態を維持し、自動車走行性能を向上させることができる。
【0018】
本発明のさらに他の一実施例はハイブリッドタイヤコードの製造方法を提供する。
本発明のさらに他の一実施例によるハイブリッドタイヤコードの製造方法は、アラミドフィラメントを第1方向に下撚りしてアラミド下撚糸を形成する段階、PETフィラメントを第2方向に下撚りしてPET下撚糸を形成する段階、アラミド下撚糸とPET下撚糸をともに第3方向に上撚りして合撚糸を形成する段階、合撚糸を接着剤溶液に浸漬させる段階、浸漬によって前記溶液が含浸された合撚糸を乾燥させる段階及び乾燥した合撚糸を熱処理する段階を含む。
以下では本発明のさらに他の一実施例によるハイブリッドタイヤコードの製造方法をより詳細に説明する。
まず、400〜3000デニールのアラミドフィラメントと400〜3000デニールのPETフィラメントを下撚りと上撚りの両者を行うケーブルコード撚糸機に投入する。撚糸機で、アラミドフィラメントを第1方向に下撚りしてアラミド下撚糸を形成する段階(第1段階)とPETフィラメントを第2方向に下撚りしてPET下撚糸が形成する段階(第2段階)とを同時に行い、アラミド下撚糸とPET下撚糸をともに第3方向に上撚りして合撚糸を形成する段階(第3段階)を行う。
一方、高圧タイヤ用ハイブリッドタイヤコード製造のために、1300〜3000デニールの繊度を有するPET下撚糸と1500〜3000デニールの繊度を有するアラミド下撚糸とを使うこともできる。
下撚糸を形成する段階(第1段階及び第2段階)及び合撚糸を形成する段階(第3段階)は単一撚糸機で行う。また、合撚糸を形成する段階(第3段階)は下撚糸を形成する段階(第1段階及び第2段階)との連続工程で行う。すなわち、第3段階は第1及び第2段階と連続的に行う。
前述したように、第2方向は第1方向と同一であり、第3方向は第1方向の反対方向である。下撚りと上撚りとを行うとき、200〜500TPMの範囲内で同じ撚り数を適用する。
本発明のさらに他の一実施例によれば、下撚りと上撚りとを単一撚糸機で行う連続式方法で合撚糸を製造するため、PETフィラメントとアラミドフィラメントとを互いに異なる撚糸機でそれぞれ下撚りした後、さらに他の撚糸機でこれらをともに上撚りするバッチ式方法に比べてハイブリッドタイヤコードの生産性を向上させることができる。
【0019】
本発明のさらに他の一実施例によれば、PET下撚糸を形成する段階(第2段階)でPETフィラメントに印加される張力がアラミド下撚糸を形成する段階(第1段階)でアラミドフィラメントに印加される張力より小さい。したがって、単一撚糸機で下撚りと上撚りとを行うにもかかわらず、所定の長さの合撚糸(ローコード)を撚り戻しすれば、アラミド下撚糸の長さがPET下撚糸の長さより若干短くすることができる。
本発明のさらに他の一実施例によれば、所定の長さの合撚糸(ローコード)を撚り戻しした後、PET下撚糸の長さがアラミド下撚糸の長さの1.005〜1.050倍となることができる程度に、第2段階でPETフィラメントに印加される張力が第1段階でアラミドフィラメントに印加される張力より小さい。例えば、PET合撚糸を形成する段階(第段階)でPETフィラメントに印加される張力はアラミド合撚糸を形成する段階(第段階)でアラミドフィラメントに印加される張力の50%〜95%の範囲に調整することができる。
【0020】
PETフィラメントとアラミドフィラメントに加わる張力の大きさは撚糸機のロールの分当たり回転数(rpm)を適切にセットすることによって調節することができる。例えば、PETフィラメントとアラミドフィラメントとに加わる張力の大きさは撚糸機の‘Creel Yarn Tension’と‘Inner Yarn Tension’とを適切にセットすることによって調節することができる。
このように製造されたアラミド下撚糸とPET下撚糸とはそれぞれ400〜3000の繊度を有することができる。一方、高圧タイヤ用ハイブリッドタイヤコード製造のために、PET下撚糸は1300〜3000デニールの繊度を有し、アラミド下撚糸は1500〜3000デニールの繊度を有することができる。また、アラミド下撚糸とPET下撚糸とはそれぞれ1500〜3000デニールの範囲内で同一又は類似の繊度を有することもできる。
【0021】
次いで、合撚糸(ローコード)を接着剤溶液に浸漬させる段階、接着剤溶液が含浸された合撚糸を乾燥させる段階及び乾燥した合撚糸を熱処理する段階を連続的に行うことによって本発明の一実施例によるハイブリッドタイヤコード(すなわち、ディップコード)を完成する。
接着剤溶液は、RFL接着剤及びエポキシ系接着剤の少なくとも1種を含むことができる。
乾燥段階の温度及び時間は接着剤溶液の組成によって変更することができる。例えば、70〜200℃で30〜120秒間乾燥を行うことができる。
熱処理は200〜250℃で30〜120秒間実施することができる。
ここで、浸漬段階、乾燥段階及び熱処理段階は連続的に行うことができる。
このような工程によって接着剤溶液の接着剤成分が合撚糸(ローコード)の表面にコートされることにより、本発明の一実施例によるハイブリッドタイヤコードとタイヤ製造用ゴム組成物との間の接着性が増加する。
一方、同じ撚り数で下撚り及び上撚りを行うように撚糸機がセットされるが、撚糸機によって製造された合撚糸(すなわち、ローコード)が接着剤溶液に浸漬された後に乾燥及び熱処理される過程で撚り戻り現象が発生することがある。このような撚り戻り現象を最小化するために、かつPET合撚糸の過度な収縮を防止するために、連続的に行われる浸漬、乾燥及び熱処理段階で合撚糸(ローコード)に加わる張力を0.4kg/cord以上とすることができる。よって、最初の設定撚り数と最終的に製造されたハイブリッドタイヤコードとの実際の撚り数の差が最初の設定撚り数の15%未満になるようにすることができる。
【0022】
本発明の一実施例によれば、撚糸工程の撚り不良を格段に低減することができ、合撚糸が安定した構造を有することにより、不均一な形態による物性偏差を最小化することができる。具体的に、同じ条件の下で製造される本発明のハイブリッドタイヤコードの場合、各物性において最大値と最小値との差を顕著に低減させることができる。例えば、破断強度の最大値と最小値との差は3g/d以下であり、破断伸び率の最大値と最小値との差は5%以下である。
以下、本発明の具体的な実施例及び比較例に基づいて本発明の効果を説明する。ただ、下記の実施例は本発明の理解を助けるためのものであるだけ、これらが本発明の権利範囲を制限するものではない。
【0023】
実施例1
1000デニールのPETフィラメントと1000デニールのアラミドフィラメントとをケーブルコード撚糸機(Allma社のCable Corder)に投入し、Z方向の下撚りとS方向の上撚りを同時にそれぞれ行って2−合撚糸(2−ply cabled yarn)(すなわち、ローコード)を製造した。このとき、下撚りと上撚りとのために460TPMの撚り数で前記ケーブルコード撚糸機をセットし、PETフィラメント及びアラミドフィラメントにそれぞれ加わる張力を調節することにより、合撚糸(ローコード)において、アラミド下撚糸に対するPET下撚糸の長さの比率(PET下撚糸の長さ/アラミド下撚糸の長さ)(L/L)が1.005になるようにした。アラミド下撚糸とPET下撚糸との長さ比を求めるために、1m長さの合撚糸(ローコード)サンプルに0.05g/dの荷重を与えて上撚りの撚りを解いてアラミド下撚糸とPET下撚糸とを互いに分離した後、アラミド下撚糸の長さ及びPET下撚糸の長さを0.05g/dの荷重を付与した状態でそれぞれ測定した。
次いで、合撚糸(ローコード)を2.0重量%のレゾルシノール、3.2重量%のホルマリン(37%)、1.1重量%の水酸化ナトリウム(10%)、43.9重量%のスチレン/ブタジエン/ビニルピリジン(15/70/15)ゴム(41%)及び水を含むレゾルシノール−ホルムアルデヒド−ラテックス(RFL)接着剤溶液にディッピングした。浸漬によってRFL溶液を含むことになった合撚糸(ローコード)を150℃で100秒間乾燥させ、240℃で100秒間熱処理することによってディップコードであるハイブリッドタイヤコードを完成した。浸漬、乾燥及び熱処理工程の際、合撚糸に加わった張力は0.5kg/cordであった。
【0024】
実施例2
合撚糸(ローコード)において、アラミド下撚糸に対するPET下撚糸の長さの比率(L/L)を1.010としたことを除き、実施例1と同様の方法でハイブリッドタイヤコード(ディップコード)を製造した。
実施例3
合撚糸(ローコード)において、アラミド下撚糸に対するPET下撚糸の長さの比率(L/L)を1.020としたことを除き、実施例1と同様の方法でハイブリッドタイヤコード(ディップコード)を製造した。
実施例4
合撚糸(ローコード)において、アラミド下撚糸に対するPET下撚糸の長さの比率(L/L)を1.030としたことを除き、実施例1と同様の方法でハイブリッドタイヤコード(ディップコード)を製造した。
【0025】
実施例5
合撚糸(ローコード)において、アラミド下撚糸に対するPET下撚糸の長さの比率(L/L)を1.050としたことを除き、実施例1と同様の方法でハイブリッドタイヤコード(ディップコード)を製造した。
実施例6
1500デニールのPETフィラメントと1500デニールのアラミドフィラメントとをケーブルコード撚糸機(Allma社のCable Corder)に投入し、Z方向の下撚りとS方向の上撚りを同時にそれぞれ行って2−ply合撚糸(2−ply cabled yarn)(ローコード)を製造した。このとき、下撚りと上撚りとのために380TPMの撚り数で前記ケーブルコード撚糸機をセットし、PETフィラメント及びアラミドフィラメントにそれぞれ加わる張力を調節することにより、合撚糸(ローコード)において、アラミド下撚糸に対するPET下撚糸の長さの比率(PET下撚糸の長さ/アラミド下撚糸の長さ)(L/L)を1.03とした。アラミド下撚糸とPET下撚糸との長さ比を求めるために、1m長さの合撚糸(ローコード)サンプルに0.05g/d荷重を与えて上撚りの撚りを解いてアラミド下撚糸とPET下撚糸を互いに分離した後、アラミド下撚糸の長さ及びPET下撚糸の長さを0.05g/dの荷重を付与した状態でそれぞれ測定した。
次いで、合撚糸(ローコード)を2.0重量%のレゾルシノール、3.2重量%のホルマリン(37%)、1.1重量%の水酸化ナトリウム(10%)、43.9重量%のスチレン/ブタジエン/ビニルピリジン(15/70/15)ゴム(41%)及び水を含むレゾルシノール−ホルムアルデヒド−ラテックス(RFL)接着剤溶液にディッピングした。浸漬によってRFL溶液を含むことになった合撚糸(ローコード)を150℃で100秒間乾燥させ、240℃で100秒間熱処理することによってハイブリッドタイヤコードを完成した。浸漬、乾燥及び熱処理工程の際、合撚糸に加わった張力は0.5kg/cordであった。
【0026】
実施例7
1500デニールのPETフィラメントの代わりに2000デニールのPETフィラメントを用い、1500デニールのアラミドフィラメントの代わりに2000デニールのアラミドフィラメントを用い、下撚りと上撚りとのために300TPMの撚り数でケーブルコード撚糸機をセットしたことを除き、実施例6と同様の方法でハイブリッドタイヤコードを完成した。
実施例8
合撚糸(ローコード)において、アラミド合撚糸長さに対するPET合撚糸長さの比率(L/L)を1.005としたことを除き、実施例6と同様の方法でハイブリッドタイヤコードを製造した。
実施例9
合撚糸(ローコード)において、アラミド合撚糸長さに対するPET合撚糸長さの比率(L/L)を1.05としたことを除き、実施例6と同様の方法でハイブリッドタイヤコードを製造した。
【0027】
比較例1
下撚りと上撚りとのために360TPMの撚り数で前記ケーブルコード撚糸機をセットし、合撚糸(ローコード)においてアラミド下撚糸に対するPET下撚糸の長さの比率(L/L)を0.980としたことを除き、実施例1と同様の方法でハイブリッドタイヤコード(ディップコード)を製造した。
比較例2
下撚りと上撚りとのために400TPMの撚り数でケーブルコード撚糸機をセットし、合撚糸(ローコード)においてアラミド下撚糸に対するPET下撚糸の長さの比率(L/L)を0.980としたことを除き、実施例1と同様の方法でハイブリッドタイヤコード(ディップコード)を製造した。
比較例3
下撚りと上撚りとのために430TPMの撚り数でケーブルコード撚糸機をセットし、合撚糸(ローコード)においてアラミド下撚糸に対するPET下撚糸の長さの比率(L/L)を0.980としたことを除き、実施例1と同様の方法でハイブリッドタイヤコード(ディップコード)を製造した。
比較例4
合撚糸(ローコード)においてアラミド下撚糸に対するPET下撚糸の長さの比率(L/L)を0.980としたことを除き、実施例1と同様の方法でハイブリッドタイヤコード(ディップコード)を製造した。
比較例5
合撚糸(ローコード)においてアラミド下撚糸の長さに対するPET下撚糸の長さの比率(L/L)を1.000としたことを除き、実施例6と同様の方法でハイブリッドタイヤコードを製造した。
比較例6
合撚糸(ローコード)においてアラミド下撚糸の長さに対するPET下撚糸の長さの比率(L/L)を0.98としたことを除き、実施例6と同様な方法でハイブリッドタイヤコードを製造した。
【0028】
実施例1−9及び比較例1−6は下記表1のようにまとめることができる。
【表1】
【0029】
上記実施例1−9及び比較例1−6で得られたハイブリッドタイヤコード(ディップコード)の、(i)PET下撚糸の長さに対するアラミド下撚糸の長さの比率(アラミド下撚糸の長さ/PET下撚糸の長さ)(L/L)、(ii)強度、重伸(elongation at specified load)(4.5kgで)及び切伸(elongation at break)、(iii)3%LASE、5%LASE及び7%LASE、(iv)乾熱収縮率及び(v)ディスク疲労テスト後の強度保持率を次の方法でそれぞれ測定し、その結果を表2に示した。
(i)PET下撚糸の長さに対するアラミド下撚糸の長さの比率(L/L
1m長さのハイブリッドタイヤコードサンプルに0.05g/d荷重を与えて上撚りの撚りを解いてアラミド下撚糸とPET下撚糸を互いに分離した後、アラミド下撚糸の長さ及びPET下撚糸の長さを0.05g/dの荷重を付与した状態でそれぞれ測定した。
次いで、“アラミド下撚糸の長さ/PET下撚糸の長さ”(L/L)の値を計算した。
(ii)強度(kgf)、重伸(4.5kgで)(%)、及び切伸(%)
ASTM D−885試験方法に従って、インストロン試験器(Instron Engineering Corp., Canton, Mass)を用いて10個の250mmのサンプルに対して300m/minの引張速度を加えることにより、ハイブリッドタイヤコード(ディップコード)の強度、重伸(4.5kgで)及び切伸をそれぞれ測定した。次いで、10個サンプルの強度、重伸(4.5kgで)及び切伸の平均値をそれぞれ算出することによってハイブリッドタイヤコード(ディップコード)の強度、重伸(4.5kgで)及び切伸を得た。
(iii)3%LASE、5%LASE及び7%LASE
ASTM D−885試験方法に従って、インストロン試験器(Instron Engineering Corp., Canton, Mass)を用いて10個の250mmのサンプルに対して300m/minの引張速度加えることによってハイブリッドタイヤコードの3%LASE、5%LASE、及び7%LASEをそれぞれ測定した。次いで、10個サンプルの3%LASE、5%LASE及び7%LASEの平均値をそれぞれ算出することによってハイブリッドタイヤコードの3%LASE、5%LASE及び7%LASEを得た。
(iv)乾熱収縮率(%)
温度25℃、相対湿度65%の雰囲気の条件の下で24時間以上サンプルを放置した後、テストライト(Testrite)機器を用い、180℃で初荷重0.01g/d(20g)で2分間測定した。
(v)ディスク疲労テスト後の強度保持率(%)
強度(疲労前強度)が測定されたハイブリッドタイヤコード(ディップコード)に対してゴムを加硫して試料を製造した後、日本規格協会(Japanese Standard Association: JSA)のJIS−L 1017方法に従ってディスク疲労測定機(Disk Fatigue Tester)を用いて80℃で2500rpmの速度で回転させながら±8%範囲内で引張及び収縮を16時間繰り返すことによって試料に疲労を加えた。次いで、試料からゴムを除去した後、ハイブリッドタイヤコード(ディップコード)の疲労後強度を測定した。疲労前強度と疲労後強度に基づいて下記の式1によって定義される強度保持率を計算した。
<式1>:強度保持率(%)=[疲労後強度(kgf)/疲労前強度(kgf)]×100
ここで、疲労前及び疲労後強度(kgf)を、ASTM D−885試験方法に従ってインストロン試験器(Instron Engineering Corp., Canton, Mass)を用い、250mmのサンプルに対して300m/minの引張速度を加えながら破断強度(Strength at Break)を測定して求めた。
【表2】
【0030】
表1及び表2を参照すれば、比較例1〜6で製造された70%未満の強度保持率を有する。一方、本発明のさらに他の一実施例による製造方法で製造されたハイブリッドコード(実施例1〜9)は80%以上の強度保持率を有することを確認することができる。このような物性を有する本発明の実施例1〜9によるハイブリッドタイヤコードは高性能軽量化タイヤに有用に適用可能である。
また、本発明の実施例〜9によるハイブリッドタイヤコードは80%以上の強度保持率を有するだけでなく、ASTM D885に従って測定された3%LASEが8kgf以上、5%LASEが15kgf以上、7%LASEが25kgf以上であることを確認することができる。このような実施例〜9のハイブリッドタイヤコードは高圧タイヤの補強材として使われることができ、特に高圧タイヤのカーカスに使われることができる。