(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1実施形態]
以下、添付の図面を参照して本発明の第1実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る共振装置1の外観を概略的に示す斜視図である。また、
図2は、本発明の第1実施形態に係る共振装置1の構造を概略的に示す分解斜視図である。
【0012】
この共振装置1は、共振子10と、共振子10を挟んで互いに対向するように設けられた上蓋30及び下蓋20と、を備えている。すなわち、共振装置1は、下蓋20と、共振子10と、上蓋30とがこの順で積層されて構成されている。
【0013】
また、共振子10と下蓋20及び上蓋30とが接合され、これにより、共振子10が封止され、共振子10の振動空間が形成される。共振子10、下蓋20及び上蓋30は、それぞれSi基板を用いて形成されている。そして、共振子10、下蓋20及び上蓋30は、Si基板同士が互いに接合されて、互いに接合される。共振子10及び下蓋20は、SOI基板を用いて形成されてもよい。
【0014】
共振子10は、MEMS技術を用いて製造されるMEMS共振子である。なお、本実施形態においては、共振子10はシリコン基板を用いて形成されるものを例として説明する。以下、共振装置1の各構成について詳細に説明する。
【0015】
(1.上蓋30)
上蓋30はXY平面に沿って平板状に広がっており、その裏面に例えば平たい直方体形状の凹部31が形成されている。凹部31は、側壁33に囲まれており、共振子10が振動する空間である振動空間の一部を形成する。
【0016】
(2.下蓋20)
下蓋20は、XY平面に沿って設けられる矩形平板状の底板22と、底板22の周縁部からZ軸方向(すなわち、下蓋20と共振子10との積層方向)に延びる側壁23とを有する。下蓋20には、共振子10と対向する面において、底板22の表面と側壁23の内面とによって形成される凹部21が設けられる。凹部21は、共振子10の振動空間の一部を形成する。上述した上蓋30と下蓋20とによって、この振動空間は気密に封止され、真空状態が維持される。この振動空間には、例えば不活性ガス等の気体が充填されてもよい。
【0017】
(3.共振子10)
図3は、本実施形態に係る、共振子10の構造を概略的に示す平面図である。
図3を用いて本実施形態に係る共振子10の、各構成について説明する。共振子10は、振動部120と、保持部140と、保持腕111、112と、配線191、192、193、及びビアV1、V2、V3を備えている。
【0018】
(a)振動部120
振動部120は、
図3の直交座標系におけるXY平面に沿って広がる矩形の輪郭を有している。振動部120は、保持部140の内側に設けられており、振動部120と保持部140との間には、所定の間隔で空間が形成されている。
図3の例では、振動部120は、基部130と4本の振動腕135A〜135D(まとめて「振動腕135」とも呼ぶ。)とを有している。なお、振動腕の数は、4本に限定されず、例えば1本以上の任意の数に設定される。本実施形態において、各振動腕135と、基部130とは、一体に形成されている。
【0019】
基部130は、平面視において、X軸方向に長辺131a、131b、Y軸方向に短辺131c、131dを有している。長辺131aは、基部130の前端の面131A(以下、「前端131A」とも呼ぶ。)の一つの辺であり、長辺131bは基部130の後端の面131B(以下、「後端131B」とも呼ぶ。)の一つの辺である。基部130において、前端131Aと後端131Bとは、互いに対向するように設けられている。
【0020】
基部130は、前端131Aにおいて、後述する振動腕135に接続され、後端131Bにおいて、後述する保持腕111、112に接続されている。なお、基部130は、
図3の例では平面視において、略長方形の形状を有しているがこれに限定されず、長辺131aの垂直二等分線に沿って規定される仮想平面Pに対して略面対称に形成されていればよい。基部130は、例えば、長辺131bが131aより短い台形や、長辺131aを直径とする半円の形状であってもよい。また、長辺131a、131b、短辺131c、131dは直線に限定されず、曲線であってもよい。
【0021】
基部130において、前端131Aから後端131Bに向かう方向における、前端131Aと後端131Bとの最長距離である基部長(
図3においては短辺131c、131dの長さ)は40μm程度である。また、基部長方向に直交する幅方向であって、基部130の側端同士の最長距離である基部幅(
図3においては長辺131a、131bの長さ)は285μm程度である。
【0022】
振動腕135は、Y軸方向に延び、それぞれ同一のサイズを有している。振動腕135は、それぞれが基部130と保持部140との間にY軸方向に平行に設けられ、一端は、基部130の前端131Aと接続されて固定端となっており、他端は開放端となっている。また、振動腕135は、それぞれ、X軸方向に所定の間隔で、並列して設けられている。なお、振動腕135は、例えばX軸方向の幅が50μm程度、Y軸方向の長さが420μm程度である。
【0023】
振動腕135はそれぞれ開放端に、錘部Gを有している。錘部Gは、振動腕135の他の部位よりもX軸方向の幅が広い。錘部Gは、例えば、X軸方向の幅が70μm程度である。錘部Gは、振動腕135と同一プロセスによって一体形成される。錘部Gが形成されることで、振動腕135は、単位長さ当たりの重さが、固定端側よりも開放端側の方が重くなっている。従って、振動腕135が開放端側にそれぞれ錘部Gを有することで、各振動腕における上下方向の振動の振幅を大きくすることができる。
【0024】
本実施形態の振動部120では、X軸方向において、外側に2本の振動腕135A、135Dが配置されており、内側に2本の振動腕135B、135Cが配置されている。X軸方向における、振動腕135Bと135Cとの間隔W1は、X軸方向における、外側の振動腕135A(135D)と当該外側の振動腕135A(135D)に隣接する内側の振動腕135B(135C)との間の間隔W2よりも大きく設定される。間隔W1は例えば35μ
m程度、間隔W2は例えば25μm程度である。間隔W2は間隔W1より小さく設定することにより、振動特性が改善される。また、共振装置1を小型化できるように、間隔W1を間隔W2よりも小さく設定してもよいし、等間隔にしても良い。
【0025】
振動部120の表面(上蓋30に対向する面)には、その全面を覆うように保護膜235が形成されている。さらに、振動腕135A〜135Dにおける保護膜235の表面の一部には、それぞれ、周波数調整膜236A〜236D(導電膜の一例である。以下、周波数調整膜236A〜236Dをまとめて「周波数調整膜236」とも呼ぶ。)が形成されている。保護膜235及び周波数調整膜236によって、振動部120の共振周波数を調整することができる。尚、必ずしも保護膜235は振動部120の全面を覆う必要はないが、周波数調整における下地の電極膜(例えば
図4の金属層E2)及び圧電膜(例えば
図4の圧電薄膜F3)へのダメージを保護する上で、振動部120の全面の方が望ましい。
【0026】
周波数調整膜236は、振動部120における、他の領域よりも振動による変位の比較的大きい領域の少なくとも一部において、その表面が露出するように、保護膜235上に形成されている。具体的には、周波数調整膜236は、振動腕135の先端、即ち錘部(第2領域の一例である。)Gに形成される。他方、保護膜235は、振動腕135におけるその他の領域(第1領域の一例である。)において、その表面が露出している。この実施例では、振動腕135の先端まで周波数調整膜236が形成され、先端部では保護膜235は全く露出していないが、保護膜235の一部が露出する様に、周波数調整膜236を振動腕135の先端部には形成されない構成も可能である。
【0027】
(b)保持部140
保持部140は、XY平面に沿って矩形の枠状に形成される。保持部140は、平面視において、XY平面に沿って振動部120の外側を囲むように設けられる。なお、保持部140は、振動部120の周囲の少なくとも一部に設けられていればよく、枠状の形状に限定されない。例えば、保持部140は、振動部120を保持し、また、上蓋30及び下蓋20と接合できる程度に、振動部120の周囲に設けられていればよい。
【0028】
本実施形態においては、保持部140は一体形成される角柱形状の枠体140a〜140dからなる。枠体140aは、
図3に示すように、振動腕135の開放端に対向して、長手方向がX軸に平行に設けられる。枠体140bは、基部130の後端131Bに対向して、長手方向がX軸に平行に設けられる。枠体140cは、基部130の側端(短辺131c)及び振動腕135Aに対向して、長手方向がY軸に平行に設けられ、その両端で枠体140a、140bの一端にそれぞれ接続される。枠体140dは、基部130の側端(短辺131d)及び振動腕135Dに対向して、長手方向がY軸に平行に設けられ、その両端で枠体140a、140bの他端にそれぞれ接続される。
【0029】
本実施形態においては、保持部140は、保護膜235で覆われているとして説明するが、これに限定されず、保護膜235は、保持部140の表面には形成されていなくてもよい。
【0030】
(c)保持腕111、112
保持腕111及び保持腕112は、保持部140の内側に設けられ、基部130の後端131Bと枠体140c、140dとを接続する。
図3に示すように、保持腕111と保持腕112とは、基部130のX軸方向の中心線に沿ってYZ平面に平行に規定される仮想平面Pに対して略面対称に形成される。
【0031】
保持腕111は、腕111a、111b、111c、111dを有している。保持腕111は、一端が基部130の後端131Bに接続しており、そこから枠体140bに向かって延びている。そして、保持腕111は、枠体140cに向かう方向(すなわち、X軸方向)に屈曲し、さらに枠体140aに向かう方向(すなわち、Y軸方向)に屈曲し、再度枠体140cに向かう方向(すなわち、X軸方向)に屈曲して、他端が枠体140cに接続している。
【0032】
腕111aは、基部130と枠体140bとの間に、枠体140cに対向して、長手方向がY軸に平行になるように設けられている。腕111aは、一端が、後端131Bにおいて基部130と接続しており、そこから後端131Bに対して略垂直、すなわち、Y軸方向に延びている。腕111aのX軸方向の中心を通る軸は、振動腕135Aの中心線よりも内側に設けられることが望ましく、
図3の例では、腕111aは、振動腕135Aと135Bとの間に設けられている。また腕111aの他端は、その側面において、腕111bの一端に接続されている。腕111aは、X軸方向に規定される幅が20μm程度であり、Y軸方向に規定される長さが40μmである。
【0033】
腕111bは、基部130と枠体140bとの間に、枠体140bに対向して、長手方向がX軸方向に平行になるように設けられている。腕111bは、一端が、腕111aの他端であって枠体140cに対向する側の側面に接続し、そこから腕111aに対して略垂直、すなわち、X軸方向に延びている。また、腕111bの他端は、腕111cの一端であって振動部120と対向する側の側面に接続している。腕111bは、例えばY軸方向に規定される幅が20μm程度であり、X軸方向に規定される長さが75μm程度である。
【0034】
腕111cは、基部130と枠体140cとの間に、枠体140cに対向して、長手方向がY軸方向に平行になるように設けられている。腕111cの一端は、その側面において、腕111bの他端に接続されており、他端は、腕111dの一端であって、枠体140c側の側面に接続されている。腕111cは、例えばX軸方向に規定される幅が20μm程度、Y軸方向に規定される長さが140μm程度である。
【0035】
腕111dは、基部130と枠体140cとの間に、枠体140aに対向して、長手方向がX軸方向に平行になるように設けられている。腕111dの一端は、腕111cの他端であって枠体140cと対向する側の側面に接続している。また、腕111dは、他端が、振動腕135Aと基部130との接続箇所付近に対向する位置において、枠体140cと接続しており、そこから枠体140cに対して略垂直、すなわち、X軸方向に延びている。腕111dは、例えばY軸方向に規定される幅が20μm程度、X軸方向に規定される長さが10μm程度である。
【0036】
このように、保持腕111は、腕111aにおいて基部130と接続し、腕111aと腕111bとの接続箇所、腕111bと111cとの接続箇所、及び腕111cと111dとの接続箇所で屈曲した後に、保持部140へと接続する構成となっている。
【0037】
保持腕112は、腕112a、112b、112c、112dを有している。保持腕112は、一端が基部130の後端131Bに接続しており、そこから枠体140bに向かって延びている。そして、保持腕112は、枠体140dに向かう方向(すなわち、X軸方向)に屈曲し、さらに枠体140aに向かう方向(すなわち、Y軸方向)に屈曲して、再度枠体140dに向かう方向(すなわち、X軸方向)屈曲し、他端が枠体140dに接続している。
【0038】
なお、腕112a、112b、112c、112dの構成は、それぞれ腕111a、111b、111c、111dと対称な構成であるため、詳細な説明については省略する。
【0039】
(d)配線191、192、193
配線191、192、193は、共振子10の表面に露出した保護膜235上に形成される。配線191、192、193は、振動腕135の錘部Gに形成された周波数調整膜236を、後述する金属層E1、又はE2(
図4参照)に接続させるための配線である。
【0040】
配線191は、振動腕135Aから基部130、保持腕111、枠体140cまで亘って形成されている。配線191は、周波数調整膜236Aから引き出され、振動腕135A上において、振動腕135Aに沿って基部130まで延びている。配線191は、基部130において、枠体140dの方向へ屈曲し、後端131Bに沿って、保持腕111の腕111aの延長上まで延び、そこから枠体140bの方向へ屈曲し、保持腕111へと延びる。さらに配線191は、保持腕111上において、保持腕111に沿って、枠体140cまで形成され、枠体140cにおいて、ビアV1に接続される。
【0041】
配線192は、振動腕135B、及び135Cから基部130、保持腕112、及び枠体140dまで亘って形成されている。配線192は、振動部120上の一部の領域において、二股の形状で形成されている。配線192の二股の一方は、周波数調整膜236Bから引き出され、振動腕135B上において、振動腕135Bに沿って、基部130まで延び、基部130の中央付近において枠体140dの方向へ屈曲し、二股の他方の方へ延びている。また、配線192の二股の他方は、周波数調整膜236Cから引き出され、振動腕135C上において、振動腕135Cに沿って、基部130まで延び、基部130の中央付近において、枠体140cの方向へ屈曲し、二股の一方の方へ延びている。配線192
の二股は、基部130において1本に合流した後、枠体140bの方向へ屈曲し、再度枠体140dの方向へ屈曲した後、後端131Bに沿って保持腕112の腕112aの延長上まで延び、さらに枠体140bの方向へ屈曲して、保持腕112へと延びる。配線192は、保持腕112上において、保持腕112に沿って、枠体140dまで形成され、枠体140dにおいて、ビアV2に接続される。
【0042】
配線193は、振動腕135Dから基部130、保持腕112、枠体140dまで亘って形成されている。配線193は、周波数調整膜236Dから引き出され、振動腕135D上において、振動腕135Dに沿って基部130まで延びている。配線193は、基部130において、枠体140dの方向へ屈曲し、後端131Bに沿って、保持腕112の腕112aの延長上まで延び、そこから枠体140bの方向へ屈曲し、保持腕112へと延びる。さらに配線193は、保持腕112において、配線192に沿って、枠体140dまで形成され、枠体140dにおいて、ビアV3に接続される。
【0043】
(e)ビアV1、V2、V3
ビアV1、V2、V3は保持部140上に形成された金属が充填された孔であり、配線191、192、193を介して周波数調整膜236と、後述する金属層E1、又はE2(
図4参照)とを電気的に接続させる。なお、
図4では、一例として、周波数調整膜236と金属層E2が接続された例を示している。
図4においては、
二点鎖線が電気的な接続を示しており、
特に、破線がビアV1、V2、V3による電気的な接続を示している。
【0044】
より具体的には、ビアV1は、枠体140cにおいて、保持腕111との接続箇所近傍に形成され、配線191と後述する金属層E1、又はE2(
図4参照)とを接続させる。また、ビアV2、V3は、枠体140dにおいて、保持腕112との接続箇所近傍に形成される。ビアV2、V3は、後述する金属層E1、又はE2(
図4参照)と、それぞれ配線192、193とを接続させる。
【0045】
(4.積層構造)
図4を用いて共振子10の積層構造について説明する。
図4は、
図3のAA´断面、及び共振子10の電気的な接続態様を模式的に示す概略図である。
【0046】
共振子10では、保持部140、基部130、振動腕135、保持腕111,112は、同一プロセスで一体的に形成される。共振子10では、まず、Si(シリコン)基板F2の上に、金属層E1(第2電極の一例である。)が積層されている。そして、金属層E1の上には、金属層E1を覆うように、圧電薄膜F3(圧電膜の一例である。)が積層されており、さらに、圧電薄膜F3の表面(上面の一例である。)には、金属層E2(第1電極の一例である。)が積層されている。金属層E2の上には、金属層E2を覆うように、保護膜235が積層されている。振動部120上においては、さらに、保護膜235上に、周波数調整膜236が積層されている。尚、低抵抗となる縮退シリコン基板を用いる事で、Si基板F2自体が金属層E1を兼ねる事で、金属層E1を省略する事も可能である。
【0047】
Si基板F2は、例えば、厚さ6μm程度の縮退したn型Si半導体から形成されており、n型ドーパントとしてP(リン)やAs(ヒ素)、Sb(アンチモン)などを含むことができる。特に、振動腕135とn型Si半導体から構成されたSi基板F2の[100]結晶軸またはこれと等価な結晶軸とのなす回転角は、0度より大きく15度以下(又は0度以上15度以下でもよい)、または75度以上90度以下の範囲内にあることが好ましい。なお、ここで回転角とは、Si基板F2の[100]結晶軸またはこれと等価な結晶軸に沿った線分に対して保持腕110が伸びる方向の角度をいう。
また、Si基板F2に用いられる縮退Siの抵抗値は、例えば1.6mΩ・cm未満であり、より好ましくは1.2mΩ・cm以下である。さらにSi基板F2の下面には酸化ケイ素(例えばSiO
2)層(温度特性補正層)F21が形成されている。これにより、温度特性を向上させることが可能になる。
【0048】
本実施形態において、酸化ケイ素層(温度特性補正層)F21とは、当該酸化ケイ素層F21をSi基板F2に形成しない場合と比べて、Si基板F2に温度補正層を形成した時の振動部における周波数の温度係数(すなわち、温度当たりの変化率)を、少なくとも常温近傍において低減する機能を持つ層をいう。振動部120が酸化ケイ素層F21を有することにより、例えば、Si基板F2と金属層E1、E2と圧電薄膜F3及び酸化ケイ素層(温度補正層)F21による積層構造体の共振周波数の、温度に伴う変化を低減することができる。
【0049】
共振子10においては、酸化ケイ素層F21は、均一の厚みで形成されることが望ましい。なお、均一の厚みとは、酸化ケイ素層F21の厚みのばらつきが、厚みの平均値から±20%以内であることをいう。
【0050】
なお、酸化ケイ素層F21は、Si基板F2の上面に形成されてもよいし、Si基板F2の上面と下面の双方に形成されてもよい。また、保持部140においては、Si基板F2の下面に酸化ケイ素層F21が形成されなくてもよい。
【0051】
金属層E2、E1は、例えば厚さ0.1〜0.2μm程度のMo(モリブデン)やアルミニウム(Al)等を用いて形成される。金属層E2、E1は、エッチング等により、所望の形状に形成される。金属層E1は、例えば振動部120上においては、下部電極として機能するように形成される。また、金属層E1は、保持腕111,112や保持部140上においては、共振子10の外部に設けられた交流電源に下部電極を接続するための配線として機能するように形成される。
【0052】
他方で、金属層E2は、振動部120上においては、上部電極として機能するように形成される。また、金属層E2は、保持腕111、112や保持部140上においては、共振子10の外部に設けられた回路に上部電極を接続するための配線として機能するように形成される。
【0053】
なお、交流電源から下部配線または上部配線への接続にあたっては、上蓋30の外面に電極(外部電極の一例である。)を形成して、当該電極が回路と下部配線または上部配線とを接続する構成や、上蓋30内にビアを形成し、当該ビアの内部に導電性材料を充填して配線を設け、当該配線が交流電源と下部配線または上部配線とを接続する構成が用いられてもよい。
【0054】
圧電薄膜F3は、印加された電圧を振動に変換する圧電体の薄膜であり、例えば、AlN(窒化アルミニウム)等の窒化物や酸化物を主成分とすることができる。具体的には、圧電薄膜F3は、ScAlN(窒化スカンジウムアルミニウム)により形成することができる。ScAlNは、窒化アルミニウムにおけるアルミニウムの一部をスカンジウムに置換したものである。また、圧電薄膜F3は、例えば、1μmの厚さを有するが、0.2μmから2μm程度を用いることも可能である。
【0055】
圧電薄膜F3は、金属層E2、E1によって圧電薄膜F3に印加される電界に応じて、XY平面の面内方向すなわちY軸方向に伸縮する。この圧電薄膜F3の伸縮によって、振動腕135は、下蓋20及び上蓋30の内面に向かってその開放端を変位させ、面外の屈曲振動モードで振動する。なお、本実施形態では、4本腕の面外屈曲振動モードにおいて、内腕2本と外腕2本とが互いに逆方向に屈曲振動する構成となっているが、これに限定されない。例えば、振動腕が1本の構成や、面内屈曲振動モードで振動する構成でもよい。
【0056】
保護膜235は、絶縁体の層であり、エッチングによる質量低減の速度が周波数調整膜236より遅い材料により形成される。例えば、保護膜235は、AlNやSiN等の窒化膜やTa
2O
5(5酸化タンタル)やSiO
2等の酸化膜により形成される。なお、質量低減速度は、エッチング速度(単位時間あたりに除去される厚み)と密度との積により表される。保護膜235の厚さは、圧電薄膜F3の厚さ(C軸方向)の半分以下で形成され、本実施形態では、例えば0.2μm程度である。なお、保護膜235のより好ましい厚さは、圧電薄膜F3の厚さの4分の1程度である。さらに、保護膜235がAlN等の圧電体によって形成される場合には、圧電薄膜F3と同じ配向を持った圧電体が用いられることが好ましい。
【0057】
周波数調整膜236は、導電体の層であり、エッチングによる質量低減の速度が保護膜235より速い材料により形成される。周波数調整膜236は、例えば、モリブデン(Mo)やタングステン(W)や金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)等の金属により形成される。
【0058】
なお、保護膜235と周波数調整膜236とは、質量低減速度の関係が上述のとおりであれば、エッチング速度の大小関係は任意である。
【0059】
周波数調整膜236は、振動部120の略全面に形成された後、エッチング等の加工により所定の領域のみに形成される。
【0060】
保護膜235及び周波数調整膜236に対するエッチングは、例えば、保護膜235及び周波数調整膜236に同時にイオンビーム(例えば、アルゴン(Ar)イオンビーム)を照射することによって行われる。イオンビームは共振子10よりも広い範囲に照射することが可能である。なお、本実施形態では、イオンビームによりエッチングを行う例を示すが、エッチング方法は、イオンビームによるものに限られない。
【0061】
(5.共振子の機能)
図4を参照して共振子10の機能について説明する。本実施形態では、外側の振動腕135A、135Dに印加される電界の位相と、内側の振動腕135B、135Cに印加される電界の位相とが互いに逆位相になるように設定される。これにより、外側の振動腕135A、135Dと内側の振動腕135B、135Cとが互いに逆方向に変位する。例えば、外側の振動腕135A、135Dが上蓋30の内面に向かって開放端を変位すると、内側の振動腕135B、135Cは下蓋20の内面に向かって開放端を変位する。
【0062】
これによって、本実施形態に係る共振子10では、逆位相の振動時、すなわち、
図4に示す振動腕135Aと振動腕135Bとの間でY軸に平行に延びる中心軸r1回りに振動腕135Aと振動腕135Bとが上下逆方向に振動する。また、振動腕135Cと振動腕135Dとの間でY軸に平行に延びる中心軸r2回りに振動腕135Cと振動腕135Dとが上下逆方向に振動する。これによって、中心軸r1とr2とで互いに逆方向の捩れモーメントが生じ、基部130で屈曲振動が発生する。
【0063】
(6.周波数調整膜の機能)
次に周波数調整膜236の機能について説明する。本実施形態に係る共振装置1では、上述のような共振子10が形成された後、周波数調整膜236の膜厚を調整するトリミング工程が行われる。
【0064】
トリミング工程では、まず共振子10の共振周波数を測定し、狙い周波数に対する偏差を算出する。次に、算出した周波数偏差に基づき、周波数調整膜236の膜厚を調整する。周波数調整膜236の膜厚の調整は、例えばアルゴン(Ar)イオンビームを共振装置1の全面に対して照射して、周波数調整膜236をエッチングすることによって行うことができる。さらに、周波数調整膜236の膜厚が調整されると、共振子10の洗浄を行い、飛び散った膜を除去することが望ましい。
【0065】
このようにトリミング工程によって、周波数調整膜236の膜厚が調整されることによって、同一ウエハにおいて製造される複数の共振装置1の間で、周波数のばらつきを抑えることができる。
【0066】
(7.接続態様)
図5、6を用いて本実施形態に係る共振子10における、周波数調整膜236と金属層E2,E1との接続態様について、配線191と金属層E2,E1との接続態様を例に説明する。
図5、6は、いずれも
図3のBB´断面を模式的に示す概略図である。
図5は、配線191が金属層E2と接続される場合を、
図6は、配線191が金属層E1と接続される場合を示している。
【0067】
図5に示すように、配線191が金属層E2と接続される場合には、ビアV1は、金属層E2の表面が露出するように保護膜235の一部を除去した孔に、導電体が充填されて形成される。ビアV1に充填される導電体は、例えばMo(モリブデン)やアルミニウム(Al)等である。
【0068】
配線191は、保護膜235の表面において、保持腕111から枠体140cにおけるビアV1が形成されている位置まで亘って形成され、ビアV1を介して金属層E2に接続される。配線191は、例えばMo(モリブデン)やアルミニウム(Al)等から形成される。
【0069】
また、
図6に示すように、配線191が金属層E1と接続される場合には、ビアV1は、金属層E1の表面が露出するように保護膜235、及び圧電薄膜F3の一部を除去した孔に導電体が充填されて形成される。配線191は、保護膜235の表面において、保持腕111から枠体140cにおけるビアV1が形成されている位置まで亘って形成され、ビアV1を介して金属層E1に接続される。
【0070】
周波数調整膜236が金属層E1,E2に電気的に接続されることの効果について説明する。上述のトリミング工程において、イオンビームが共振子10に照射された場合、保護膜235にもイオンビームが照射されてしまうことで、イオンビームの有する電荷によって保護膜235が帯電してしまう。また、保護膜235に焦電体を使用した場合には、熱の昇降温によって焦電効果が発生するため、保護膜235の界面に電荷が析出する。
【0071】
本実施形態に係る共振子10では、保護膜235上の一部に形成された、導電体から成る周波数調整膜236を、配線191、及びビアV1を介して金属層E2、E1へと接続させる。これによって、保護膜235に帯電された電荷を金属層E2、E1へと移動させることができる。金属層E2、E1へ移動させた電荷は、金属層E2、E1に接続された外部との接続端子を介して、共振装置1の外部へ逃がすことができる。このように本実施形態に係る共振子10では、振動部120上に形成された保護膜235に電荷が帯電することを抑制できるため、振動部120に帯電した電荷による共振周波数の変動を防止することができる。
【0072】
さらに、周波数調整膜236が、金属層E2と接続される場合には、保護膜235上に形成された導電層(周波数調整膜236)を保護膜235に近い層に接続させることができる。これによって、保護膜235に帯電した電荷が共振周波数に与える影響をより低減することができる。また、周波数調整膜236が、金属層E2と接続される場合において、保護膜235にAlN等の圧電体を用いる場合には、圧電薄膜F3と同じ配向のものを用いることが好ましい。これによって、振動腕135の振動を阻害することなく、周波数調整膜236を金属層E2に接続させることができる。
【0073】
なお、ビアV2、V3、及び配線192、193の接続態様、及び材質、効果等は、ビアV1、及び配線191と同様であるため説明を省略する。
【0074】
[第2の実施形態]
第2の実施形態以降では第1の実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態毎には逐次言及しない。
【0075】
図7は、本実施形態に係る、共振子10の構造の一例を概略的に示す平面図である。以下に、本実施形態に係る共振子10の詳細構成のうち、第1の実施形態との差異点を中心に説明する。本実施形態に係る共振子10は、第1の実施形態で説明した配線191、192、193、ビアV1、V2、V3に代えて配線194、195、及びビアV4、V5を有している。また、本実施形態に係る保持腕111、112は、第1実施形態とは異なる構成を有している。
【0076】
(1)保持腕111、112
本実施形態では、保持腕111は、腕111a、111bを有している。保持腕111は、一端が基部130の短辺131c側の側面に接続されており、そこから枠体140cに向かって延びている。そして、保持腕111は、枠体140aに向かう方向(Y軸方向)に屈曲して、他端が枠体140aに接続されている。
【0077】
具体的には、本実施形態において腕111aは、基部130と枠体140cとの間に、枠体140aに対向して、長手方向がX軸方向に平行になるように設けられている。腕111aは、一端がその端面において、基部130の短辺131c側の側面に接続されている。また、腕111aの他端は、その側面において腕111bに接続されている。腕111aは、Y軸方向に規定される幅が20μm程度であり、X軸方向に規定される長さが40μm程度である。
【0078】
また、腕111bは、基部130と枠体140cとの間に、枠体140cに対向して、長手方向がY軸方向に平行になるように設けられている。腕111bは、一端が腕111aの他端であって、枠体140aに対向する側の側面に接続され、そこから腕111aに対して略垂直、すなわちY軸方向に延びている。また、腕111bの他端は、枠体140aに接続されている。腕111bは、例えばX軸方向に規定される幅が20μm程度であり、Y軸方向に規定される長さが620μm程度である。
【0079】
本実施形態では、保持腕112は、腕112a、112bを有している。保持腕112は、一端が基部130の短辺13
1c側の側端に接続されており、そこから枠体140dに向かって延びている。そして、保持腕11
2は、枠体140aに向かう方向(Y軸方向)に屈曲して、他端が枠体140aに接続されている。
【0080】
なお、腕112a、112bの構成は、それぞれ腕111a、111bと対称な構成であるため、詳細な説明については省略する。その他の保持腕111、112の構成は第1実施形態と同様である。
【0081】
(2)配線194、195
配線194は、振動腕135B、及び135Cから基部130に亘って形成されている。配線194は、振動部120上の一部の領域において、二股の形状で形成されている。配線194の二股の一方は、周波数調整膜236Bから引き出され、振動腕135B上において、振動腕135Bに沿って、基部130まで延び、基部130の中央付近において枠体140dの方向へ屈曲し、二股の他方の方へ延びている。また、配線194の二股の他方は、周波数調整膜236Cから引き出され、振動腕135C上において、振動腕135Cに沿って、基部130まで延び、基部130の中央付近において、枠体140cの方向へ屈曲し、二股の一方の方へ延びている。配線194
の二股は、基部130において1本に合流する。
【0082】
配線195は、振動腕135A、及び135Dから基部130に亘って形成されている。配線195は、振動部120上の一部の領域において、二股の形状で形成されている。配線195の二股の一方は、周波数調整膜236Aから引き出され、振動腕135A上において、振動腕135Aに沿って、基部130まで延び、基部130の中央付近において枠体140dの方向へ屈曲し、二股の他方の方へ延びている。また、配線195の二股の他方は、周波数調整膜236Dから引き出され、振動腕135D上において、振動腕135Dに沿って、基部130まで延び、基部130の中央付近において、枠体140cの方向へ屈曲し、二股の一方の方へ延びている。配線195
の二股は、基部130において1本に合流する。
【0083】
(3)ビアV4、V5
ビアV4、V5は、本実施形態では、基部130上に形成され、周波数調整膜236を、配線194、195を介して、金属層E1、又はE2に電気的に接続させる。
【0084】
より具体的には、ビアV4は、基部130における保持腕112との接続箇所近傍において、配線194の屈曲箇所に対応する位置に形成され、配線194と金属層E1、又はE2(
図4参照)とを接続させる。また、ビアV5は、基部130における振動腕135Dとの接続箇所近傍において、配線194の屈曲箇所に対応する位置に形成され、配線195と金属層E1、又はE2とを接続させる。なお、本実施形態に係るビアV4、V5は基部130において、配線194、195と、金属層E1、又はE2とを接続させていればよく、基部130上の位置は、
図7に示したものに限定されない。
その他の本実施形態に係る共振子10の構成、効果は第1実施形態と同様である。
【0085】
[第3実施形態]
図8は、本実施形態に係る、共振子10の構造の一例を概略的に示す平面図である。以下に、本実施形態に係る共振子10の詳細構成のうち、第1実施形態との差異点を中心に説明する。本実施形態に係る共振子10は、第1実施形態で説明した構成のうち、配線191、192、193を有しておらず、また、ビアV1、V2、V3に代えてビアV6、V7、V8、V9を有している。
【0086】
本実施形態では、ビアV6、V7、V8、V9は、それぞれ振動腕135A、135B、135C、135Dの先端に形成され、周波数調整膜236A、236B、236C、236Dと、金属層E2とを接続させる。
【0087】
次に
図9を用いて本実施形態に係る共振子10における、周波数調整膜236と金属層E2との接続態様について、周波数調整膜236Dを例に説明する。
図9は、図
8のCC´断面を模式的に示す概略図である。
【0088】
図9に示すように、本実施形態に係るビアV9は、金属層E2が露出するように、振動腕135Dの先端において、
保護膜235の一部を除去して形成された孔に導電体が充填されて形成されている。その他の接続態様は、第1実施形態と同様である。
【0089】
本実施形態に係る共振子10では、周波数調整膜236を金属層E2に接続させるため、配線を共振子10上に形成するプロセスを省くことができる。その他の共振子10の構成、効果は、第1実施形態と同様である。
【0090】
[第4実施形態]
図10は、本実施形態に係る、共振子10の平面図の一例を示す図である。以下に、本実施形態に係る共振装置1の詳細構成のうち、第1の実施形態との差異点を中心に説明する。
【0091】
本実施形態では、共振子10は、XY平面面内において輪郭振動する面内振動子である。本実施形態において、共振子10は、第1の実施形態で説明した配線191、192、193、ビアV1、V2、V3に代えて配線196、197、198,199及びビアV10、V11を有している。また、本実施形態に係る振動部120、保持腕111、112は、第1実施形態とは異なる構成を有している。
【0092】
(1)振動部120
振動部120は、
図10の直交座標系におけるXY平面に沿って平板状に広がる略直方体の輪郭を有している。また、振動部120は、X軸方向に短辺121a、121bを有し、Y軸方向に長辺121c、121dを有している。振動部120は、短辺121a、121bにおいて、保持腕111、112によって保持部140に接続され、保持されている。また、振動部120の全面を覆うように、保護膜235が形成されている。さらに、保護膜235の表面には、振動部120の四隅(第2領域の一例である。)に4つの周波数調整膜236A〜236Dが積層されている。
その他の振動部120の構成は、第1実施形態と同様である。尚、周波数調整膜は4つに限定されず、例えば236Aと236Bが連結し、236Cと236Dが連結した2つでも良い。但し、周波数調整膜は振動時の変位の大きな第2領域を含み、第2領域は第1の領域の面積以下となる事が望ましい。これにより、周波数調整を効率よく実施し、かつ、周波数調整に伴う周波数温度特
性の変化を抑制する事ができる。
【0093】
(2)保持腕111、112
本実施形態において、保持腕111,112は、Y軸方向に長辺を、X軸方向に短辺を有する略矩形の形状を有している。
【0094】
保持腕111は、一端が振動部120における短辺121aの中心近傍と接続し、そこからY軸方向に沿って略垂直に延びている。また、保持腕111の他端は、保持部140における枠体140aの中心近傍と接続している。
【0095】
他方、保持腕112は、一端が振動部120における短辺121bの中心近傍と接続し、そこからY軸方向に沿って略垂直に延びている。また、保持腕112の他端は、保持部140における枠体140bの中心近傍と接続している。
その他の保持腕111、112の構成・機能は第1実施形態と同様である。
【0096】
(3)配線196、197,198,199
本実施形態では、配線198、199は、周波数調整膜236A,236DをビアV10へと接続し、配線196、197は、周波数調整膜236B、236CをビアV11へと接続する。
【0097】
配線198は、振動部120における、枠体140a側の端部に形成され、周波数調整膜236A,236Dの枠体140a側の端部同士を接続する。配線199は、配線198の中央付近に接続し、そこから保持腕111、枠体140aに亘って形成され、ビアV10へと接続する。
【0098】
他方で、配線196は、振動部120における、枠体140b側の端部に形成され、周波数調整膜236B,236Cの枠体140b側の端部同士を接続する。配線197は、配線196の中央付近に接続し、そこから保持腕112、枠体140bに亘って形成され、ビアV11へと接続する。
その他の配線196、197、198、199の構成は第1実施形態の配線191と同様である。
【0099】
(4)ビアV10、V11
本実施形態では、ビアV10、V11は、それぞれ配線198、199、196、197を介して周波数調整膜236を金属層E1、又はE2に電気的に接続させる。その他のビアV10、V11の構成は、第1実施形態のビアV1と同様である。
【0100】
(5.接続態様)
図11、12を用いて本実施形態に係る共振子10における、周波数調整膜236と金属層との接続態様について、説明する。
図11、12は、いずれも
図10のDD´断面を模式的に示す概略図である。
図11は、配線197,199が金属層E2と接続される場合
を例に示し、
図12は、配線199、197が金属層E1と接続される場合を例に示している。
【0101】
図11に示すように、配線199、197は、保持部140上において、ビアV10、V11を介して金属層E2と接続されている。また、
図12に示すように、配線199、197は、保持部140上において、ビアV10、V11を介して金属層E1と接続される構成でもよい。なお、本実施形態では、共振装置1は、基本波モードで輪郭振動する面内振動子である共振子10を有する構成であるが、これに限定されない。例えば共振装置1は、複数の共振子が一体となり高次モードで振動する構成でもよい。
その他の共振装置1の構成、機能は第1の実施形態と同様である。
【0102】
以上、本発明の例示的な実施形態について説明した。本発明の一実施形態に係る共振子10は、金属層E2及び金属層E1と、金属層E2と金属層E1との間に設けられ、金属層E2に対向する上面を有し、金属層E2及び金属層E1の間に電圧が印加されたときに所定の振動モードで振動する、圧電薄膜F3と、金属層E2を介して圧電薄膜F3の上面と対向して設けられた、絶縁体からなる保護膜235と、保護膜235を介して圧電薄膜F3の上面と対向して設けられた、導電体からなる周波数調整膜236と、を備え、周波数調整膜236は、金属層E2及び金属層E1のいずれか一方に電気的に接続される。本実施形態に係る共振子10では、振動部120上に形成された保護膜235に電荷が帯電することを抑制できるため、振動部120に帯電した電荷による共振周波数の変動を防止することができる。
【0103】
また、圧電薄膜F3の表面は、第1領域と当該第1領域よりも振動時の変位が大きい第2領域とを有し、周波数調整膜236は、第2領域の少なくとも一部において保護膜235を介して圧電薄膜F3の上面と対向して設けられることも好ましい。これによって、周波数調整膜236の膜厚が調整されることによって、同一ウエハにおいて製造される複数の共振装置1の間で、周波数のばらつきを抑えることができる。
【0104】
また、保護膜235は、圧電体からなり、C軸方向に沿った厚さが、圧電薄膜F3の厚さの半分以下であることも好ましい。この場合、保護膜235を挟む周波数調整膜236と金属層E2とが短絡されることにより、圧電体からなる保護膜235によって振動が阻害されることを抑制できる。
【0105】
また、保護膜235は、圧電薄膜F3と同じ方向に配向した圧電体であることが好ましい。これによって、周波数調整膜236が金属層E2に接続された場合においても、振動部120の振動が阻害されることを抑制できる。
【0106】
また、共振子10は、面外屈曲振動子であることが好ましい。
【0107】
また、本実施形態に係る共振装置1は、上述の共振子10と、共振子10を間に挟んで互いに対向して設けられた上蓋30及び下蓋20と、外部電極とを備える。本実施形態に係る共振装置1は、振動部120上に形成された保護膜235に電荷が帯電することを抑制できるため、振動部120に帯電した電荷による共振周波数の変動を防止することができる。
【0108】
以上説明した各実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るととともに、本発明にはその等価物も含まれる。即ち、各実施形態に当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、各実施形態が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。例えば、既述の実施形態において、金属層E2と圧電薄膜F3とから成る積層体は単層である構成について説明したが、これに限定されない。共振子10は、金属層E2と圧電薄膜F3とから成る積層体は多層であり、最上層(上蓋30側)の表面に保護膜235が形成される構成でもよい。また、各実施形態は例示であり、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもなく、これらも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。