(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
各面状光源は、前記発光面とは反対側に非発光面を備え、前記発光面を前記透光カバーに向け前記非発光面を前記ランプボディに向けるように傾斜して配置されていることを特徴とする請求項7に記載の車両用灯具。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図に示す各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。
【0017】
図1は、実施の形態に係る車両用灯具10を説明するための概略断面図である。車両用灯具10は、例えば、車両後部に搭載されるテールランプである。
【0018】
車両用灯具10は、ランプボディ12と、透光カバー14と、光源装置20とを備える。透光カバー14は透明なカバーであり、ランプボディ12の前面開口部を覆うようにランプボディ12に取り付けられランプボディ12との間に灯室16を形成する。光源装置20は、灯室16内に設けられている。
【0019】
透光カバー14は、例えば球面または放物面などの凸面状の三次元曲面形状に形成されている。透光カバー14の形状に倣って、光源装置20は、例えば球面または放物面などの凸面状の三次元曲面形状22を表現するよう構成されている。なお、光源装置20によって表現可能な三次元曲面形状22は凸面に限られない。三次元曲面形状22は、凹面またはその他の任意の三次元曲面も可能である。
【0020】
図2は、
図1に示す光源装置20の外観を概略的に示す斜視図である。
図1に示される光源装置20は、
図2のA−A線に沿った概略断面である。
【0021】
図1および
図2に示されるように、光源装置20は、灯室16内に配置されている支持部材23と、支持部材23に支持され灯室16内に配置されている複数の有機ELパネル24を備える。
【0022】
支持部材23は、例えば板状の部材であり、灯具前後方向に垂直(すなわち、灯具左右方向および灯具上下方向に平行)に配置されている。支持部材23は、図示しない支持構造によりランプボディ12に固定されている。
【0023】
各有機ELパネル24は、灯具上下方向に垂直(すなわち、灯具前後方向および灯具左右方向に平行)に配置され、支持部材23から車両後側に向けて突き出している。光源装置20は、少なくとも3つ、少なくとも5つ、または少なくとも7つの有機ELパネル24を有する。図示の例では、光源装置20は、8つの有機ELパネル24を有する。このように、比較的多数の有機ELパネル24が密に積層されている。
【0024】
有機ELパネル24は、可撓性を有する平面状の有機ELパネル、例えば、いわゆる2.5次元曲面OLED(Organic Light Emitting Diode)パネルを採用することができる。2.5次元曲面OLEDパネルは、発光面内の発光均一性が良好であり、紙のように随意に曲げられるという優れた特徴をもつ。しかしながら、ここでは、有機ELパネル24は湾曲されずに平坦なままで使用されている。
【0025】
複数の有機ELパネル24の各々が、片面の少なくとも一部に発光面25を有し、反対側の面の少なくとも一部に非発光面(例えば反射面27)を有する。
図2においては理解のために、発光面25に斜線が付してある。
【0026】
例えば、発光面25は、車両用灯具10の外から良好に視認されるように、有機ELパネル24の周縁部に位置する。有機ELパネル24は、車両用灯具10の外から視認可能な部位のみを発光させるよう構成されていてもよい。
【0027】
複数の有機ELパネル24のうち末端に位置する有機ELパネル24(例えば、複数の有機ELパネル24のうち最も上方に位置する有機ELパネル24)については、発光面25が有機ELパネル24の片面全域を占めてもよい。末端に位置する有機ELパネル24は、その全体が車両用灯具10の外から視認されうるからである。また、例えば有機ELパネル24が小型の場合には、発光面25が有機ELパネル24の片面全域を占めてもよい。
【0028】
隣接する2つの有機ELパネル24は、互いに異なる面積の発光面25を有する。三次元曲面形状22を模擬するために、個々の有機ELパネル24の発光面25がそれぞれ異なる面積に設定されうる。
【0029】
複数の有機ELパネル24は、灯具上下方向に積層配列されている。言い換えれば、複数の有機ELパネル24は、隣接する2つの有機ELパネル24のうち第1有機ELパネルの発光面25が第2有機ELパネルの反射面27と向かい合うように、灯具上下方向に配列されている。これにより、第2有機ELパネルの反射面27は、第1有機ELパネルの発光面25からの出射光を第1有機ELパネルに向けて反射することができる。
【0030】
隣接する2つの有機ELパネル24のうち第1有機ELパネルの発光面25と第2有機ELパネルの反射面27との間には、有機ELパネル間隔26が形成される。図示の例では、有機ELパネル間隔26は一定である。これに代えて、複数の有機ELパネル24は、ある有機ELパネル間隔26が他の有機ELパネル間隔26と異なるように積層されていてもよい。
【0031】
なお、各有機ELパネル24は、灯具左右方向に垂直に配置され、支持部材23から車両後側に向けて突き出していてもよい。複数の有機ELパネル24は、灯具左右方向に積層配列されてもよい。あるいは、複数の有機ELパネル24は、その他の任意の方向に積層配列されることも可能である。
【0032】
各発光面25が、三次元曲面形状22の断面輪郭線に相当する曲線状前縁25aを有する。複数の有機ELパネル24は、曲線状前縁25aによって三次元曲面形状22が模擬されるように配列されている。
図1に示されるように、各有機ELパネル24は、曲線状前縁25aが透光カバー14側に位置し発光面25の後縁がランプボディ12側に位置するように灯室16に設けられている。
【0033】
ここで、三次元曲面形状22の断面輪郭線は、例えば、三次元曲面形状22を複数の平行な平面で複数片に薄切りにするとき各薄切片の断面に現れる輪郭の曲線である。よって、図示の例のように三次元曲面形状22が球面状の凸面である場合には、断面輪郭線すなわち曲線状前縁25aは、円弧状の曲線となる。
【0034】
なお、三次元曲面形状22を切断する複数の平面は必ずしも互いに平行でなくてもよく、三次元曲面形状22の断面輪郭線は、互いに交差しない複数の平面で三次元曲面形状22を薄切りにするとき各薄切片の断面に現れる輪郭の曲線であってもよい。
【0035】
あるいは、三次元曲面形状22の断面輪郭線は、互いに交差しない複数の曲面で三次元曲面形状22を薄切りにするとき各薄切片の断面に現れる輪郭の曲線であってもよい。この場合、断面輪郭線は三次元曲線となり、発光面25は曲面となるから、有機ELパネル24はその曲面に従って曲げた状態で用いられてもよい。
【0036】
また、少なくとも1つの有機ELパネル24には、支持部材23の表面に沿って延出部28が設けられている。延出部28は、有機ELパネル24の幅(例えば、有機ELパネル24が灯具上下方向に垂直に配置されている場合には灯具左右方向の幅)を長くして支持部材23への有機ELパネル24の固定を容易にするために設けられている。よって、延出部28は、比較的小型の有機ELパネル24に形成されることが望ましい。延出部28は、延出部28が設けられる有機ELパネル24がそれより大型の他の有機ELパネル24と同じ幅をもつように延出長さが定められていてもよい。
【0037】
図3は、光源装置20の発光部の一部分を概略的に示す拡大断面図である。図示されるように、有機ELパネル24は、層状の構造を有する。有機ELパネル24は、フレキシブル基板30、陽極層32、有機発光層34、陰極層36、および封止層38の積層構造を有する。フレキシブル基板30は、例えば、フレキシブルガラス基板、または、可撓性をもつ樹脂基板である。陽極層32は、例えば、ITOなど透明導電層である。陰極層36は、例えば、アルミニウムなど金属層(例えば金属蒸着層)である。この場合、陰極層36は不透明であるので、有機ELパネル24の光出射方向は、
図3に矢印31で示すように、有機発光層34から陽極層32およびフレキシブル基板30を通じて外部に向かう方向となる。例えば、有機発光層34が上述の発光面25を形成し、陰極層36が上述の反射面27を形成する。
【0038】
説明したように、光源装置20においては、各有機ELパネル24の発光面25が三次元曲面形状22の断面輪郭線に相当する曲線状前縁25aを有する。複数の有機ELパネル24が、曲線状前縁25aによって三次元曲面形状22が模擬されるように配列されている。このような有機ELパネル24の積層配列を用いることによって、三次元曲面を含む意匠を表現する光源装置20および車両用灯具10を提供することができる。
【0039】
有機ELパネル24の発光面25に曲線状前縁25aを形成するほうが、発光面25自体を三次元曲面形状に変形させ又は成形するのに比べて、容易である。また、複数の有機ELパネル24の積層配列は、比較的単純な構成である。したがって、実施の形態に係る光源装置20は、三次元形状の発光を容易に実現することができる。
【0040】
図4は、光源装置20の他の例を示す概略断面図である。
図5は、
図4に示すある有機ELパネル24を概略的に示す上面図である。
図4に示される光源装置20は、
図5のB−B線に沿った概略断面である。
【0041】
複数の有機ELパネル24に加えて、
図4に示す光源装置20は、発光面25の後縁25bに沿って延在するエクステンション40を備える。エクステンション40は前面に反射面40aを有する。反射面40aは、隣接する2つの有機ELパネル24間で、それぞれの発光面25の後縁25bに沿って延びている。発光面25および曲線状前縁25aは、エクステンション40から露出されている。
【0042】
反射面40aは、光線L1で例示されるように、発光面25からの出射光を前方に反射することができる。また、反射面40aは、光線L2で例示されるように、発光面25から出射し反射面27で反射された光を前方に反射することもできる。このように反射面40aを設置することにより、三次元的な見栄えをより良好に視認者に提示することができ、意匠性が向上される。
【0043】
エクステンション40は、有機ELパネル24を支持する支持部材(例えば、
図1に示す支持部材23)によって支持されていてもよい。あるいは、エクステンション40が、有機ELパネル24を支持する支持部材であってもよい。
【0044】
図5においては理解の容易のために、エクステンション40を破線で示す。
図5に示されるように、有機ELパネル24は給電端子部42を有する。エクステンション40によって、給電端子部42などの有機ELパネル24の非発光部を覆い隠すことができる。
【0045】
給電端子部42は、有機ELパネル24の後方端部に位置する。給電端子部42には、例えばコネクタが設けられていてもよい。
図3に示す陽極層32および陰極層36がそれぞれ給電端子部42を通じて外部の電源に接続される。外部電源から複数の有機ELパネル24それぞれの給電端子部42へと個別に配線接続がなされてもよい。
【0046】
図6は、有機ELパネル24の詳細を例示する概略拡大断面図である。
図6に示される有機ELパネル24は、例えば、
図4に示す光源装置20に使用しうる。有機ELパネル24は、フレキシブル基板30、陽極層32、有機発光層34、陰極層36、および封止板39を備える。フレキシブル基板30は、例えばガラスなどの透明基板である。フレキシブル基板30の表側(
図6において上側)の面は露出され、フレキシブル基板30の裏側(
図6において下側)の面に陽極層32、有機発光層34、および陰極層36がこの順に積層されている。
図3に例示した構成と同様に、陽極層32は例えばITOなど透明導電層であり、陰極層36は例えばアルミニウムなど金属層(例えば金属蒸着層)である。また、封止板39は、有機ELパネル24の内部を密閉するようフレキシブル基板30の裏側に取り付けられている。フレキシブル基板30と封止板39とに挟まれて陽極層32、有機発光層34、および陰極層36が配置されている。封止板39は例えばガラスで形成されている。
【0047】
また、有機ELパネル24を支持する支持部24aが設けられている。支持部24aは、第1支持板46と第2支持板47を備える。第1支持板46および第2支持板47は例えば樹脂で形成されている。第1支持板46の裏面が第2支持板47の表面に接着等により固定され、第1支持板46は第2支持板47と一体化されている。こうして、有機ELパネル24を収容する収容部48が形成されている。第2支持板47の裏面には、反射面27が形成されている。反射面27は、例えば、アルミニウムなど金属層(例えば金属蒸着層)である。有機ELパネル24からの光を出射する光出射開口49が、収容部48に対し反射面27と反対側に形成されている。
【0048】
第1支持板46は、有機ELパネル24の発光面25の後縁を定める第1突出部46aを備える。第2支持板47は、有機ELパネル24の発光面25の前縁を定める第2突出部47aを備える。光出射開口49に対し第1突出部46aと第2突出部47aとは互いに反対側に位置する。第1突出部46aは第1支持板46の表面から突き出し、第2突出部47aは有機ELパネル24の非発光部を隠すように第2支持板47から突き出している。
【0049】
有機ELパネル24への給電は、
図5に示す例と同様に、有機ELパネル24の後方端部に位置する給電端子部42から行われてもよい。また、支持部24aは、
図4および
図5に示すエクステンション40の一部であってもよい。あるいは、支持部24aは、例えば
図1に示す支持部材23などの、有機ELパネル24を支持する支持部材の一部であってもよい。
【0050】
図7は、光源装置20の他の例を示す概略外観図である。複数の有機ELパネル24に加えて、
図7に示す光源装置20は、複数の有機ELパネル24に給電する共通のフレキシブルプリント基板44を備える。フレキシブルプリント基板44は、各有機ELパネル24の給電端子部42に接続されるよう蛇腹状に湾曲されている。
【0051】
図8は、
図7に示すフレキシブルプリント基板44を展開した様子を概略的に示す図である。フレキシブルプリント基板44は、
図7の蛇腹状の状態から展開され直線状となっている。フレキシブルプリント基板44は、複数の有機ELパネル接続部44aと、複数の配線部44bとを備える。各有機ELパネル接続部44aが対応する有機ELパネル24の給電端子部42に接続される。有機ELパネル接続部44aと配線部44bとは交互に配置されており、配線部44bによって有機ELパネル接続部44aどうしが接続されている。末端の配線部44bにはコネクタ部44cが設けられており、コネクタ部44cによりフレキシブルプリント基板44は図示しない外部電源に接続される。
【0052】
このように、複数の有機ELパネル24に給電する共通のフレキシブルプリント基板44が用いられることにより、光源装置20の給電構造が小型化され、それにより光源装置20も小型化される。また、個々の有機ELパネル24に個別的な配線接続がなされる場合には多数の配線を要し接続が煩雑となりうるが、フレキシブルプリント基板44による給電は、光源装置20の製造工程の簡略化および作業性の向上にも役立つ。
【0053】
なお、
図4に示すエクステンション40が、
図7に示す光源装置20に適用されてもよい。エクステンション40によって、フレキシブルプリント基板44が覆い隠されてもよい。
【0054】
図9は、車両用灯具10の他の例を示す概略断面図である。透光カバー14は、上方から下方へと車両後方に向けてなだらかに傾斜している。また、ランプボディ12も上方から下方へと車両後方に向けて傾斜している。光源装置20の各有機ELパネル24は、曲線状前縁25aが透光カバー14側に位置し発光面25の後縁がランプボディ12側に位置するように灯室16に設けられている。複数の有機ELパネル24は、透光カバー14の傾斜面に倣った三次元曲面形状22が曲線状前縁25aによって模擬されるように配列されている。
【0055】
また、光源装置20の各有機ELパネル24は、発光面25を透光カバー14に向けるとともに反射面27をランプボディ12に向けるように傾斜して配置されている。
図9に示す車両用灯具10においては、
図1に示す車両用灯具10に比べて、車両後方から発光面25が視認されるよう各有機ELパネル24が若干下向きに傾けられている。有機ELパネル24がランバーシアン発光(すなわち拡散発光)であるため、こうした傾斜によって、より多くの光を車両後方に出射することができる。その結果、車両用灯具10は、配光規格を満足しやすくなる。
【0056】
図10は、車両用灯具10の他の例を示す概略断面図である。上述の各実施の形態においては光源装置20の複数の有機ELパネル24が灯具上下方向に積層配列されている。これに対し、
図10に示す光源装置20の複数の有機ELパネル24は、灯具左右方向に積層配列されている。
図10に示す車両用灯具10においても、
図9に示す車両用灯具10と同様に、有機ELパネル24の積層配列を用いることによって、三次元曲面を含む意匠を表現する光源装置20および車両用灯具10を提供することができる。
【0057】
また、各有機ELパネル24は、発光面を透光カバーに向け非発光面をランプボディに向けるように傾斜して配置されている。
図9に示す場合と同様に、有機ELパネル24の傾斜配置によって、より多くの光を車両後方に出射することができる。
【0058】
図10に例示する光源装置20においては各有機ELパネル24の発光面が車両外側を向くとともに非発光面が車両内側を向くよう配置されているため、車両後方から発光面が視認されるよう各有機ELパネル24が車両内側に傾けられている。逆に、各有機ELパネル24の発光面が車両内側を向くとともに非発光面が車両外側を向くよう配置されている場合には、車両後方から発光面が視認されるよう各有機ELパネル24が車両外側に傾けられてもよい。
【0059】
本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることが可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれる。
【0060】
上述の実施の形態で例示した特定の種類の灯具のみならず、光源装置20は、テールランプ、ストップランプ、ターンランプ、クリアランスランプ、デイタイムランニングランプなど任意の種類の車両用標識灯、またはその他の車両用灯具に適用可能である。
【0061】
上述の実施の形態では、光源装置20は、複数の有機ELパネルを備えるが、光源装置20は、1つ又は複数の有機ELパネルとともにまたはそれに代えて、LEDパネルなどその他の形式の1つまたは複数の面状光源を備えてもよい。面状光源は、可撓性を有してもよいし、有していなくてもよい。