(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明を詳述する。これ以降の説明において特に記載がない限り、「部」は「質量部」、「%」は「質量%」をそれぞれ意味する。また、範囲を示す「A〜B」は、A以上B以下であることを示す。
【0019】
〔1.粘度指数向上剤〕
本発明の粘度指数向上剤に含まれる重合体は、(a)単位および(b)単位を必須構成単位とし、以下の条件で測定した粘度が25℃において30Pa・s以下である重合体を含有する粘度指数向上剤である。
<測定条件>
米国石油協会(API)分類におけるグループIII基油(粘度指数122、40℃動粘度19.6mm
2/s)80質量%と、前記重合体20質量%からなる溶液を、E型粘度計(東機産業製:TVE−35H 3°×R9.7ローター)で測定する。
【0020】
前記(a)単位は、具体的には一般式(1)で表される単位である。
【0022】
(式(1)中、R
1及びR
2はそれぞれ独立に、水素原子またはアルキル基であり、Xは水素原子または炭素数が1〜40の有機基である。)
一般式(1)のXは、水素原子または炭素数が1〜40の有機基であれば特に制限はなく、任意の置換基が結合していてもよい。ただし、前記有機基における炭素原子および水素原子以外の原子数は基油溶解性確保の観点から0以上10以下が好ましい。前記有機基のとしては、例えば、直鎖状または分岐鎖状、環状のアルキル基、アリール基、H(CH
2)
6−O−(CH
2)
2−O−(CH
2)
4−のようなオキサアルキル基が挙げられる。
【0023】
マレイミド系単量体の具体例としては、例えば、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−iso−プロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−iso−ブチルマレイミド、N−t−ブチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−オクチルマレイミド、N−2−エチルヘキシルマレイミド、N−デシルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−テトラデシルマレイミド、N−ステアリルマレイミド、N−2−デシルテトラデシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−クロロフェニルマレイミド、N−メチルフェニルマレイミド、N−ナフチルマレイミド、N−ヒドロキシルエチルマレイミド、N−ヒドロキシルフェニルマレイミド、N−メトキシフェニルマレイミド、N−カルボキシフェニルマレイミド、N−ニトロフェニルマレイミド、N−トリブロモフェニルマレイミド等が挙げられる。これらの中でも入手性や経済性の観点および基油への溶解性が高いことから、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−ステアリルマレイミドが好ましい。なお、(a)単位を構成するための上記単量体は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0024】
(a)単位の含有量は、該重合体100質量部において、0.5質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、5質量部以上がさらに好ましく、また35質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましい。上記範囲の(a)単位を有する粘度指数向上剤は、基油への溶解性を確保したまま、主鎖の環構造によりせん断安定性や耐熱性を高めることができる。さらには、スラッジ等の清浄分散性の向上や金属表面の摩耗抑制等の効果が期待される。
【0025】
前記(b)単位は、具体的には一般式(2)で表される単量体由来の単位である。
【0027】
(式(2)中、R
3は水素原子またはメチル基であり、R
4は炭素数が2〜6の脂肪族炭化水素基である。)
一般式(2)の具体例としては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、iso−アミル(メタ)アクリレート、t−アミル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも入手性や経済性の観点および基油組成物とした際の室温付近の流動性を大きく高めることから、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレートが好ましい。なお、(b)単位を構成するための上記単量体は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
(b)単位の含有量は、該重合体100質量部において、0.5質量部以上であることが好ましく、2質量部以上がより好ましく、5質量部以上がさらに好ましく、また60質量部以下が好ましく、55質量部以下がより好ましく、50質量部以下がさらに好ましい。上記数値範囲の(b)単位を有する重合体を含む粘度指数向上剤は、種々の組成の基油への溶解性が良好であり、基油組成物とした際の室温付近の流動性が高いために潤滑油組成物の生産性に優れ、得られる潤滑油組成物の粘度指数が高いものとなる。
【0028】
また、本発明における粘度指数向上剤は、メチル(メタ)アクリレート由来の単位を含んでいても良い。メチル(メタ)アクリレート由来の単位は、前記重合体100質量部において0.5質量部以上が好ましく、2質量部質量部以上がより好ましく、5質量部以上がさらに好ましく、また30質量部未満が好ましく、28質量部以下がより好ましく、25質量部以下がさらに好ましい。
【0029】
(a)単位、(b)単位、およびメチル(メタ)アクリレート由来の単位の合計は、前記重合体100質量部において10質量部以上が好ましく、20質量部以上がより好ましく、30質量部以上がより好ましく、35質量部以上が特に好ましく、また、70質量部未満が好ましく、65質量部未満がより好ましく、60質量部未満がさらに好ましい。(a)単位、(b)単位、およびメチル(メタ)アクリレート由来の単位の合計が上記範囲である重合体を含む粘度指数向上剤は、基油組成物とした際の室温付近の流動性が高いために潤滑油組成物の生産性に優れ、得られる潤滑油組成物の粘度指数およびせん断安定性が高いものとなる。
【0030】
本発明の粘度指数向上剤に含まれる重合体は、前記(a)単位、(b)単位、メチル(メタ)アクリレート由来の単位に加え、(c)単位を有することが好ましい。
前記(c)単位は、具体的には一般式(3)で表される単量体由来の単位である。
【0032】
(式(3)中、R
5は水素原子又はメチル基を表し、R
6は炭素数7〜40の脂肪族炭化水素基である。)
一般式(3)の具体例としては、例えば、n−ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、テトラコシル(メタ)アクリレート、2−デシルテトラデシル(メタ)アクリレート、メンチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、入手性や経済性の観点および基油への溶解性が高いことから、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、テトラコシル(メタ)アクリレート、2−デシルテトラデシル(メタ)アクリレートが好ましい。なお、(c)単位を構成するための上記単量体は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
(c)単位の含有量は、該重合体100質量部において、30質量部以上が好ましく、35質量部以上がより好ましく、40質量部以上がさらに好ましく、また90質量部未満が好ましく、80質量部未満がより好ましく、70質量部以下がさらに好ましい。上記数値範囲の(c)単位を有する重合体を含む粘度指数向上剤は、種々の組成の基油への溶解性が良好なものとなる。
【0034】
本発明の重合体は、(a)単位、(b)単位、(c)単位、メチル(メタ)アクリレート由来の単位以外の単位(以下、「(d)単位」と称する)を含有することができる。(a)単位、(b)単位、(c)単位、メチル(メタ)アクリレート由来の単位、(d)単位を構成するためにはラジカル重合が生産性やコストの観点から有利である。ラジカル重合性単量体は、ラジカル重合性基を同一分子内に1個有する単官能単量体と、ラジカル重合性基を同一分子内に2個以上有する多官能単量体とに分類できる。
【0035】
(d)単位を構成するための単官能単量体の例としては、一般式(2)、(3)以外のその他の(メタ)アクリレート、不飽和モノまたはジカルボン酸エステル、不飽和カルボン酸類、ビニル芳香族化合物、ビニルエステル、ビニルエーテル、オレフィン類、シアン化ビニル、N−ビニル化合物等が挙げられる。これらの単官能単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0036】
一般式(2)、(3)およびメチル(メタ)アクリレート以外のその他の(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モルフォリノアルキレン(メタ)アクリレート、α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0037】
不飽和モノまたはジカルボン酸エステルとしては、例えば、ブチルクロトネート、オクチルクロトネート、ジブチルマレエート、ジラウリルマレエート、ジオクチルフマレート、ジステアリルフマレート等が挙げられる。
【0038】
不飽和カルボン酸類としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸等が挙げられる。
【0039】
ビニル芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、メトキシスチレン等のスチレン系単量体、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン等が挙げられる。
【0040】
ビニルエステルとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、オクチル酸ビニル等が挙げられる。
【0041】
ビニルエーテルとしては、例えば、メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、等が挙げられる。
【0042】
オレフィン類としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−テトラデセン、1−オクタデセン、ジイソブテン等が挙げられる。
【0043】
シアン化ビニルとしては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。
【0044】
N−ビニル化合物としては、例えば、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルモルフォリン、N−ビニルアセトアミド等が挙げられる。
【0045】
これらの単官能単量体のうち、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチル、N−ビニルピロリドンが好ましい。
【0046】
(d)単位を構成するための単官能単量体は、該重合体100質量部において、0質量部以上30質量部以下が好ましく、25質量部以下がより好ましく、20質量部以下がさらに好ましい。
【0047】
(d)単位を構成するための多官能単量体の例としては、多官能(メタ)アクリレート、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリレート、アリル基含有(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリロイル基含有イソシアヌレート、多官能ウレタン(メタ)アクリレートなどの多官能(メタ)アクリル系化合物、多官能マレイミド系化合物、多官能ビニルエーテル、多官能アリル系化合物、多官能芳香族ビニルなどが挙げられる。上記多官能単量体は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0048】
多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAアルキレンオキシドジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、2,2’−〔オキシビス(メチレン)〕ビスアクリル酸、ジアルキル−2,2’−〔オキシビス(メチレン)〕ビス−2−プロペノエート等が挙げられる。
【0049】
ビニルエーテル基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル等が挙げられる。
【0050】
アリル基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アリル、α−アリルオキシメチルアクリル酸メチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ステアリル、α−アリルオキシメチルアクリル酸2−デシルテトラデシル等が挙げられる。
【0051】
多官能(メタ)アクリロイル基含有イソシアヌレートとしては、例えば、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(メタクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0052】
多官能ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の多官能イソシアネートと(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとの反応で得られる多官能ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0053】
多官能マレイミド系化合物としては、例えば、4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、m−フェニレンビスマレイミド、ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミド、1,6−ビスマレイミド−(2,2,4−トリメチル)ヘキサン等が挙げられる。
【0054】
多官能ビニルエーテルとしては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキシドジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等が挙げられる。
【0055】
多官能アリル系化合物としては、例えば、エチレングリコールジアリルエーテル、ジエチレングリコールジアリルエーテル、ポリエチレングリコールジアリルエーテル、ヘキサンジオールジアリルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキシドジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラアリルエーテル等の多官能アリルエーテル;トリアリルイソシアヌレート等の多官能アリル基含有イソシアヌレート;フタル酸ジアリル、ジフェン酸ジアリル等の多官能アリルエステル;ビスアリルナジイミド化合物等;ビスアリルナジイミド化合物等が挙げられる。
【0056】
多官能芳香族ビニルとしては、例えば、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
【0057】
(d)単位を構成するための多官能単量体の含有量は、全単量体成分の合計100質量部に対して、0質量部以上5質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましく、2質量部以下がさらに好ましい。また、重合体中の多官能単量体由来の単位の含有量は、重合体100質量部に対して、0質量部以上5質量部以下であることが好ましく、3質量部以下がより好ましく、2質量部以下がさらに好ましい。この場合、重合体が分岐構造などをとることにより、基油への溶解性を大きく損ねることなく、該重合体を含有する粘度指数向上剤のせん断安定性を改善することができる。
【0058】
ただし、2,2’−〔オキシビス(メチレン)〕ビスアクリル酸、ジアルキル−2,2’−〔オキシビス(メチレン)〕ビス−2−プロペノエート、α―アリルオキシメチルアクリル酸メチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ステアリル、α−アリルオキシメチルアクリル酸2−デシルテトラデシルのように、環化しながら重合が進行する多官能単量体の場合は、重合体中の多官能単量体由来の単位の含有量は、重合体100質量部に対して、0質量部以上30質量部以下であることが好ましく、25質量部以下がより好ましく、20質量部以下がさらに好ましい。全単量体成分の合計100質量部に対する多官能単量体の含有量も同様である。この場合、主鎖に導入される環構造の効果により、該重合体を含有する粘度指数向上剤の耐熱性が向上するとともに、せん断安定性を改善することができる。
【0059】
多官能単量体由来の単位が上記範囲を超えると、重合時にゲル化が進行したり、該重合体を含有する粘度指数向上剤の基油への溶解度が低下したりする場合がある。
【0060】
上記単量体成分をラジカル重合機構により重合する場合、ラジカル重合開始剤を併用するのが工業的に有利で好ましい。ラジカル重合開始剤としては、加熱により重合開始ラジカルを発生する熱ラジカル重合開始剤と、活性エネルギー線の照射により重合開始ラジカルを発生する光ラジカル重合開始剤とがあり、従来公知のものを1種または2種以上使用できる。また、必要に応じて従来公知の熱ラジカル重合促進剤、光増感剤、光ラジカル重合促進剤等を1種または2種以上添加することも好ましい。
【0061】
上記熱ラジカル重合開始剤としては、具体的には、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセテートパーオキサイド、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、イソブチリルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、スクシン酸パーオキサイド、m−トルオイルベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ−s−ブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、α,α’−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3,−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシマレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシ−m−トルイルベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ビス(t−ブチルパーオキシ)イソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(m−トルイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、t−ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、t−アミルパーオキシイソナノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等の過酸化物系開始剤;2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−フェニルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[N−(4−クロロフェニル)−2−メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[N−(4−ヒドロフェニル)−2−メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(フェニルメチル)プロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−プロペニル)プロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[N−(2−ヒドロキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−1,3−ジアゼピン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(5−ヒドロキシ−3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、ジメチル−2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、2,2’−アゾビス[2−(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]等のアゾ系開始剤、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン等が挙げられる。
【0062】
上記熱ラジカル重合開始剤とともに使用できる熱ラジカル重合促進剤としては、コバルト、銅、錫、亜鉛、マンガン、鉄、ジルコニウム、クロム、バナジウム、カルシウム、カリウム等の金属石鹸;1級、2級、3級のアミン化合物;4級アンモニウム塩;チオ尿素化合物;ケトン化合物等が挙げられ、具体的には、例えば、オクチル酸コバルト、ナフテン酸コバルト、オクチル酸銅、ナフテン酸銅、オクチル酸マンガン、ナフテン酸マンガン、ジメチルアニリン、トリエタノールアミン、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、ジ(2−ヒドロキシエチル)p−トルイジン、エチレンチオ尿素、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル等が挙げられる。
【0063】
上記光ラジカル重合開始剤としては、具体的には、例えば、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシー2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕−2−ヒドロキシー2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−〔4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル〕フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−〔(4−メチルフェニル)メチル〕−1−〔4−(4−モルホリニル)フェニル〕−1−ブタノン等のアルキルフェノン系化合物;ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、2−カルボキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテ等のベンゾイン系化合物;チオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系化合物;2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−エトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−エトキシカルボキニルナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等のハロメチル化トリアジン系化合物;2−トリクロロメチル−5−(2’−ベンゾフリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−〔β−(2’−ベンゾフリル)ビニル〕−1,3,4−オキサジアゾール、4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−フリル−1,3,4−オキサジアゾール等のハロメチル化オキサジアゾール系化合物;2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール等のビイミダゾール系化合物;1,2−オクタンジオン,1−〔4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)〕、エタノン,1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル〕−,1−(O−アセチルオキシム)等のオキシムエステル系化合物;ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム等のチタノセン系化合物;p−ジメチルアミノ安息香酸、p−ジエチルアミノ安息香酸等の安息香酸エステル系化合物;9−フェニルアクリジン等のアクリジン系化合物;等を挙げることができる。
【0064】
上記単量体成分をラジカル重合機構により重合する場合、必要に応じて、公知の連鎖移動剤を使用してもよく、ラジカル重合開始剤と併用するのがより好ましい。上記連鎖移動剤として一般的なものは単官能連鎖移動剤である。このような連鎖移動剤としては、具体的には、例えば、メルカプト酢酸、3−メルカプトプロピオン酸等のメルカプトカルボン酸類;メルカプト酢酸メチル、3−メルカプトプロピオン酸メチル、3−メルカプトプロピオン酸2−エチルヘキシル、3−メルカプトプロピオン酸n−オクチル、3−メルカプトプロピオン酸メトキシブチル、3−メルカプトプロピオン酸ステアリル、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)等のメルカプトカルボン酸エステル類;エチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、1,2−ジメルカプトエタン等のアルキルメルカプタン類;2−メルカプトエタノール、4−メルカプト−1−ブタノール等のメルカプトアルコール類;ベンゼンチオール、m−トルエンチオール、p−トルエンチオール、2−ナフタレンチオール等の芳香族メルカプタン類;トリス〔(3−メルカプトプロピオニロキシ)−エチル〕イソシアヌレート等のメルカプトイソシアヌレート類;2−ヒドロキシエチルジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド等のジスルフィド類;ベンジルジエチルジチオカルバメート等のジチオカルバメート類;α−メチルスチレンダイマー等の単量体ダイマー類;四臭化炭素等のハロゲン化アルキル類などが挙げられる。これらの中では、入手性、架橋防止能、重合速度低下の度合いが小さいなどの点で、メルカプトカルボン酸類、メルカプトカルボン酸エステル類、アルキルメルカプタン類、メルカプトアルコール類、芳香族メルカプタン類;メルカプトイソシアヌレート類などのメルカプト基を有する化合物が好ましい。これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0065】
単官能連鎖移動剤の使用量(添加量総量)は、使用する単量体の種類や量、重合温度、重合濃度等の重合条件、目標とする重合体の分子量等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されない。なお、基油溶解性が高い重量平均分子量が10万以上の重合体を含有する粘度指数向上剤を得る点から、単官能連鎖移動剤の使用量は、単量体成分100質量部に対して、0.001質量部以上が好ましく、0.005質量部以上がより好ましく、また0.5質量部以下が好ましく、0.3質量部以下がより好ましく、0.2質量部以下がさらに好ましい。
【0066】
上記単量体成分をラジカル重合機構により重合する場合、3官能以上の多価メルカプタンおよび/または3官能以上の多官能開始剤の存在下にてラジカル重合を行っても良い。
【0067】
3官能以上の多価メルカプタンとしては、例えば、トリメチロールプロパントリメルカプトアセテート、トリメチロールプロパントリ(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキスメルカプトアセテート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキスメルカプトアセテート、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)など、水酸基を3個以上有する化合物とカルボキシル基含有メルカプタン類のポリエステル化合物、トリアジン多価チオール類、多価エポキシ化合物の複数のエポキシ基に硫化水素を付加させて1分子当たり3個以上のメルカプト基を導入してなる化合物、多価カルボン酸の複数のカルボキシル基とメルカプトエタノールをエステル化してなる1分子当たり3個以上のメルカプト基を有する化合物などが挙げることができる。3官能以上の多価メルカプタンは、1種類以上を単独または組み合わせて(例えば、混合して)使用することができる。
【0068】
上記3官能以上の多価メルカプタンの使用量(添加量総量)は、使用する単量体の種類や量、重合温度、重合濃度等の重合条件、目標とする重合体の分子量等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されない。なお、基油溶解性が高い重量平均分子量が10万以上の重合体を含有する粘度指数向上剤を得る点から、3官能以上の多価メルカプタンの使用量は、単量体成分100質量部に対して、0.01質量部以上が好ましく、0.05質量部以上がより好ましく、また5質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましく、2質量部以下がさらに好ましい。この範囲とすることで、分子量分布が狭くなり、せん断安定性を向上できる。
【0069】
3官能以上の多官能開始剤としては、例えば、2,2−ビス(4,4−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、トリス(t−ブチルパーオキシ)トリアジン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンなどの3官能以上の有機過酸化物などが挙げられるが、特に限定されない。
【0070】
上記3官能以上の多官能開始剤の使用量(添加量総量)は、目的、用途に応じて適宜設定すればよく、特に限定されない。なお、重合性、分解物の悪影響、経済性のバランスを考慮し、さらに粘度指数と基油溶解性が高い重量平均分子量が10万以上の重合体を含有する粘度指数向上剤を得る点から、3官能以上の多官能開始剤の使用量は、単量体成分100質量部に対して、0.01質量部以上が好ましく、0.02質量部以上がより好ましく、0.05質量部以上がさらに好ましく、また10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましく、2質量部以下がさらに好ましい。
【0071】
3官能以上の多価メルカプタンおよび/または3官能以上の多官能開始剤の存在下にて、単量体成分をラジカル重合することによって得られた重合体は、中心から高分子鎖が枝分かれした構造を有するものとなる。つまり、本発明の粘度指数向上剤に含まれる重合体は、3官能以上の多価メルカプタン由来の分岐単位および/または3官能以上の多官能開始剤由来の分岐単位を有するものとなる。粘度指数向上剤に含まれる重合体がこのような構造を有することにより、基油への溶解性を大きく損ねることなく、該重合体を含有する粘度指数向上剤のせん断安定性を改善することができる。
【0072】
粘度指数向上剤に含まれる重合体が3官能以上の多価メルカプタン由来の分岐単位を有する場合、該重合体は、下記式(4)で示される分岐単位(連鎖移動剤残基)を有することが好ましい。下記式(4)において、L
Tはm価の有機残基を表し、mは0以上の数を表す。mは、好ましくは0〜5である。
【0074】
粘度指数向上剤に含まれる重合体が3官能以上の多官能開始剤由来の分岐単位を有する場合、該重合体は、3官能以上の過酸化物由来の分岐単位を有することが好ましく、具体的には、下記式(5)で示される分岐単位を有することが好ましい。下記式(5)において、L
Sはn価の有機残基(開始剤残基)を表し、nは0以上の数を表す。nは、好ましくは0〜5である。
【0076】
粘度指数向上剤に含まれる重合体は、3官能以上の多価メルカプタン由来の分岐単位と3官能以上の多官能開始剤由来の分岐単位のどちらか一方のみ含んでいてもよく、両方含んでいてもよい。3官能以上の多価メルカプタン由来の分岐単位は、1種のみ含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。3官能以上の多官能開始剤由来の分岐単位も、1種のみ含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。
【0077】
重合体中の3官能以上の多価メルカプタン由来の分岐単位の含有量は、重合体100質量部に対し、0.01質量部以上が好ましく、0.05質量部以上がより好ましく、また5質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましく、2質量部以下がさらに好ましい。この範囲とすることで、重合体の分子量分布が狭くなり、せん断安定性を向上できる。3官能以上の多価メルカプタン由来の分岐単位の含有量は、3官能以上の多価メルカプタンの使用量を重合体質量で除することにより求める。
【0078】
重合体中の3官能以上の多官能開始剤由来の分岐単位の含有量は、粘度指数と基油溶解性が高い重量平均分子量が10万以上の重合体を含有する粘度指数向上剤を得る点から、重合体100質量部に対し、0.01質量部以上が好ましく、0.02質量部以上がより好ましく、0.05質量部以上がさらに好ましく、また10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましく、2質量部以下がさらに好ましい。3官能以上の多官能開始剤由来の分岐単位の含有量は、3官能以上の多官能開始剤の使用量を重合体質量で除することにより求める。
【0079】
本発明の粘度指数向上剤に含有される重合体の重合方法は、単量体成分を重合する工程(重合工程)を有する製造方法により得ることができる。重合工程における単量体の成分の重合方法は、たとえば、バルク重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などいずれでもよいが、特に限定はされない。分散媒、乳化剤、分散剤等を使用する場合は、特に制限がなく公知のものが使用できる。
【0080】
重合工程で3官能以上の多価メルカプタンおよび/または3官能以上の多官能開始剤を用いる場合、それらの種類や使用量等の好適条件は、上記に説明した通りである。重合の際、3官能以上の多価メルカプタンおよび/または3官能以上の多官能開始剤は、一括添加してもよく、分割添加してもよい。また、2官能以下のメルカプタンや2官能以下の開始剤を併用してもよい。
【0081】
重合工程では、単量体成分として、上記に説明した一般式(1)で示される(a)単位を構成するための成分、(b)単位を構成するための一般式(2)で表されるアルキル(メタ)アクリレート成分、(c)単位を構成するための一般式(3)で表されるアルキル(メタ)アクリレート成分を必須的に用いることが好ましい。単量体成分として、メチル(メタ)アクリレートや上記に説明した(d)単位を構成するための成分を併用してもよい。これらの各単量体成分の種類や使用量等の好適条件は、上記に説明した通りである。
【0082】
重合に使用する溶媒としては、重合反応に不活性なものであれば特に限定されるものではなく、重合機構、使用する単量体の種類や量、重合開始剤・重合触媒の種類や量等の重合条件に応じて適宜設定すればよい。なお、重合体の溶解度を確保する観点、および重合後に基油への溶媒置換が容易である観点から、重合に使用する溶媒としては、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸ブチルが好ましい。また、後述する潤滑油基油も溶媒として好適に用いることができる。この場合、重合後の溶媒置換が不要となり、プロセスが簡略化されるため、より好ましい。これら溶媒は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。溶媒の使用量は特に制限はないが、粘度指数が高い重量平均分子量が10万以上の重合体を得る観点から、単量体成分、重合開始剤、その他の成分の合計量の濃度が、全体の20質量%以上80質量%以下となる程度が好ましい。
【0083】
上記単量体成分を重合する際の重合温度としては、重合機構、使用する単量体の種類や量、重合開始剤・重合触媒の種類や量等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、0℃以上が好ましく、25℃以上がより好ましく、また200℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましい。重合温度が0℃未満であると、重合反応が非常に遅くなり、200℃を超えると反応が激しく制御が困難となるため、いずれも好ましくない。
【0084】
本発明の粘度指数向上剤に含まれる重合体は、重量平均分子量(Mw)が2万以上であり、10万以上であることが好ましく、20万以上がより好ましく、25万以上がさらに好ましく、30万以上がさらにより好ましく、また50万未満であり、49万以下が好ましく、48万以下がより好ましい。重合体の重量平均分子量が上記下限値に満たない場合は、潤滑油組成物の粘度指数が低くなるだけでなく、所望の粘度に調整するために粘度指数向上剤の使用量を増やす必要があり、コスト面で不利となる。重合体の重量平均分子量が過度に大きい場合は、粘度指数向上剤の基油への溶解性が不足したり潤滑油組成物のせん断安定性が低下したりする傾向がある。
【0085】
本発明の粘度指数向上剤に含まれる重合体の数平均分子量(Mn)は0.8万以上が好ましく、9万以上が好ましく、より好ましくは9万〜22万であり、さらに好ましくは9万〜20万である。
【0086】
MwとMnから算出される分子量分布(Mw/Mn)は4.0以下が好ましく、より好ましくは3.5以下であり、さらに好ましくは3.0以下である。分子量分布が4.0を超えると粘度指数向上剤の基油への溶解性が不足したり、潤滑油組成物のせん断安定性が低下したりするため好ましくない。一方、分子量分布の下限は1.0が好ましいが、重合体の合成が容易な点から、分子量分布(Mw/Mn)は1.5以上が好ましく、2.0以上がより好ましく、2.3以上がさらに好ましい。なお、本発明におけるMwおよびMnは、公知の方法を用いて測定することができる。
【0087】
分子量の制御方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、重合開始剤・重合触媒の量や種類、重合温度、連鎖移動剤の種類や量の調整などにより制御できる。分子量分布を制御する方法としてはLiving Radical Polymerizationも使用できる。具体的な方法としては、RAFT法やNMP法、ATRP法などが有名である。詳細については、Aldrich Material Matters,Vol.5,No.1,2010に概説されている。使用例としては、例えばRAFT法の場合、特開2012−197399号公報において、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、重合触媒として、ジチオ安息香酸クミルが用いられている。
【0088】
本発明の粘度指数向上剤に含まれる重合体の分岐度は1.0以上が好ましく、より好ましくは1.4以上であり、また10.0以下が好ましく、6.0以下がより好ましく、4.0以下がさらに好ましい。分岐度が1.0よりも小さい場合には、重合体の分岐構造が十分ではなく、せん断安定性の改善が期待できない。なお、本発明における分岐度は、重合体1分子あたりの分岐点の数の平均に相当し、論理的には、例えば、分岐のない直鎖の重合体の分岐度は0となり、唯一の分岐点から3本のポリマー鎖が伸びている重合体の分岐度は1となり、4本のポリマー鎖が伸びている重合体の分岐度は2となり、5本のポリマー鎖が伸びている重合体の分岐度は3となる。
【0089】
本発明の粘度指数向上剤に含まれる重合体のガラス転移温度(Tg)は、後述の実施例に記載の方法で求めた値である。Tgは、−50℃以上が好ましく、−40℃以上がより好ましく、−30℃以上がさらに好ましく、また0℃以下が好ましく、−10℃以下がより好ましく、−20℃以下がさらに好ましい。重合体のTgがこの範囲であれば、基油への溶解性と高い粘度指数を維持したまま、基油組成物とした場合に室温付近で流動性を高めやすくなる。
【0090】
本発明の粘度指数向上剤に含まれる重合体のSP値(溶解度パラメーター)は、8.8以上が好ましく、8.9以上がより好ましく、9.0以上がさらに好ましく、また9.6以下が好ましく、9.5以下がより好ましく、9.4以下がさらに好ましい。基油のSP値は一般に8.0〜8.5程度の値を示すが、重合体のSP値が8.8以上であれば潤滑油組成物の粘度指数を高めやすくなり、重合体のSP値が9.6以下であれば粘度指数向上剤の基油への溶解性を確保しやすくなる。SP値は、公知の方法を用いて求めることができる。
【0091】
本発明の粘度指数向上剤は、粘度指数向上効果とせん断安定性を高いレベルで両立できる。せん断安定性の具体的数値としては、例えば、PSSI(パーマネントシアスタビリティインデックス:ASTM D 6022)や下記に示す方法で求めるSSI、または分解開始温度が指標となる。
本発明におけるSSIは、後述の実施例に記載の方法にて測定した値である。すなわち、100℃における動粘度が7.0mm
2/秒となるように、基油(SK製:YUBASE4)に重合体を希釈し、以下の条件で超音波を照射した。
装置:Hielscher Ultrasonics社製 UP400S
設定:Amplitude=70%、Cycle=1
時間:10分
温度:100℃
せん断前後および基油の100℃における動粘度を測定し、SSI={1−(せん断後の動粘度−基油の動粘度)/(せん断前の動粘度−基油の動粘度)}×100の式で計算した。
本発明において、せん断安定性の指標とする粘度指数向上剤のSSIは、45以下であることが好ましく、より好ましくは40以下であり、さらに好ましくは38以下である。また、前記SSIは、0.1以上であることが好ましく、より好ましくは0.5以上であり、さらに好ましくは2以上であり、特に好ましくは5以上である。SSIが0.1未満の場合には粘度指数向上効果が小さくコストが上昇するおそれがあり、SSIが45を超える場合にはせん断安定性や貯蔵安定性が悪くなるおそれがある。
【0092】
粘度指数向上剤の分解開始温度は、290℃以上であることが好ましく、295℃以上がより好ましく、300℃以上がさらに好ましく、310℃以上が特に好ましく、また500℃以下が好ましく、450℃以下がより好ましく、400℃以下がさらに好ましく、380℃以下が特に好ましい。粘度指数向上剤の分解開始温度が高くなることにより、耐熱性が向上し、熱分解安定性、せん断安定性が良好なものとなる。一方で過度に耐熱性を向上させた場合は、基油への溶解性が不足したり粘度指数が低下したりする傾向がある。
【0093】
本発明の粘度指数向上剤は、上述した重合体を主成分として含み、好ましくは粘度指数向上剤100質量%中、重合体を70質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、特に好ましくは99質量%以上、100質量%以下含有する。
【0094】
本発明の粘度指数向上剤に含まれる上述した重合体以外の成分としては、ポリメタクリレート、ポリイソブチレン、エチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ジエン水素化共重合体、これらのグラフトポリマーやくし型ポリマー、星形ポリマー等が挙げられる。これらその他の重合体は、0質量%以上、30質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましく、1質量%以下が特に好ましい。
【0095】
〔2.粘度指数向上剤と基油を含有する組成物〕
本発明は、本発明の粘度指数向上剤を含有する潤滑油組成物も提供する。本発明の粘度指数向上剤は、潤滑油基油と配合して、潤滑油組成物とすることができる。潤滑油組成物は、それをさらに潤滑油基油で希釈せずに潤滑油に用いてもよく、あるいは、さらに潤滑油基油で希釈したものを潤滑油に用いてもよい。後者の場合、潤滑油組成物は原液として用いられ、以下これを「基油組成物」と称する場合がある。
【0096】
潤滑油基油としては、公知の潤滑油基油を特に制限なく用いることができ、鉱油系基油や合成系基油を好適に挙げることができる。鉱油系基油としては、パラフィン系やナフテン系等の基油が挙げられる。鉱物系基油には、原料基油を溶剤精製、水素化分解または水素化異性化処理したものも含まれる。合成系基油としては、炭化水素系、エステル系、エーテル系、シリコン系、フッ素系等の基油が挙げられる。潤滑油基油は、上述したように、粘度指数向上剤に含まれる重合体の重合反応溶媒として用いることもできる。
【0097】
鉱油系基油の好ましい具体例としては、以下に示す基油(1)〜(7)を原料とし、この原料油及び/又はこの原料油から回収された潤滑油留分を、所定の精製方法によって精製し、潤滑油留分を回収することによって得られる基油を挙げることができる。また(1)〜(7)から選ばれる基油又は当該基油から回収された潤滑油留分について所定の処理を行うことにより得られる下記基油(8)または(9)が特に好ましい。
(1)パラフィン基系原油および/または混合基系原油の常圧蒸留残渣油の減圧蒸留による留出油(WVGO)
(2)潤滑油脱ろう工程により得られるワックス(スラックワックス等)および/またはガストゥリキッド(GTL)プロセス等により得られる合成ワックス(フィッシャートロプシュワックス、GTLワックス等)
(3)基油(1)〜(2)から選ばれる1種または2種以上の混合油および/または当該混合油のマイルドハイドロクラッキング処理油
(4)基油(1)〜(3)から選ばれる2種以上の混合油
(5)基油(1)〜(4)のいずれかの脱れき油(DAO)
(6)基油(5)のマイルドハイドロクラッキング処理油(MHC)
(7)基油(1)〜(6)から選ばれる2種以上の混合油。
(8)上記基油(1)〜(7)から選ばれる基油又は当該基油から回収された潤滑油留分を水素化分解し、その生成物又はその生成物から蒸留等により回収される潤滑油留分について溶剤脱ろうや接触脱ろうなどの脱ろう処理を行い、又は当該脱ろう処理をした後に蒸留することによって得られる水素化分解鉱油。
(9)上記基油(1)〜(7)から選ばれる基油又は当該基油から回収された潤滑油留分を水素化異性化し、その生成物又はその生成物から蒸留等により回収される潤滑油留分について溶剤脱ろうや接触脱ろうなどの脱ろう処理を行い、又は、当該脱ろう処理をしたあとに蒸留することによって得られる水素化異性化鉱油。
【0098】
鉱油系基油の100℃における動粘度は、1〜20mm
2/sであることが好ましい。
【0099】
合成系基油としては、具体的には、ポリα−オレフィン又はその水素化物、イソブテンオリゴマー又はその水素化物、イソパラフィン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ジエステル(ジトリデシルグルタレート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート等)、ポリオールエステル(トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネート等)、ポリオキシアルキレングリコール、ジアルキルジフェニルエーテル、ポリフェニルエーテル等が挙げられ、なかでもポリα−オレフィンが好ましい。ポリα−オレフィンとしては、典型的には、炭素数2〜32、好ましくは6〜16のα−オレフィンのオリゴマー又はコオリゴマー(1−オクテンオリゴマー、デセンオリゴマー、エチレン−プロピレンコオリゴマー等)及びそれらの水素化物が挙げられる。合成系基油の100℃における動粘度は、1〜20mm
2/sであることが好ましい。
【0100】
潤滑油組成物に配合する潤滑油基油としては、上記基油(1)〜(7)から選ばれる基油又は当該基油から回収された潤滑油留分について、潤滑油組成物の粘度指数を高くする理由から上述の処理を行うことにより得られる基油(8)または(9)が特に好ましい。また、米国石油協会(API)による分類に基づくグループIIIに属する基油を用いることも好ましい。潤滑油組成物に配合する潤滑油基油としては、上述の合成系基油を用いてもよい。
【0101】
本発明の潤滑油組成物においては、上記の潤滑油基油を単独で用いてもよく、また他の基油の1種又は2種以上と併用してもよい。なお、潤滑油基油と他の基油とを併用して混合基油とする場合、潤滑油組成物の粘度指数を高くする理由から当該混合基油は上記潤滑油基油(8)または(9)を少なくとも含むことが好ましい。混合基油中の上記潤滑油基油(8)または(9)の割合は、30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。
【0102】
潤滑油基油の粘度指数は、100以上であることが好ましく、120以上がより好ましく、また160以下が好ましい。粘度指数が上記の下限値未満であると、粘度−温度特性及び熱・酸化安定性、揮発防止性が悪化するだけでなく、摩擦係数が上昇する傾向にあり、また、摩耗防止性が低下する傾向にある。また、粘度指数が上記の上限値を超えると、低温粘度特性が低下する傾向にある。なお、本発明でいう粘度指数とは、JIS K 2283に準拠して測定された粘度指数を意味する。
【0103】
潤滑油組成物の粘度指数は、200以上400以下であることが好ましく、230以上300以下であることがより好ましい。粘度指数が上記の範囲内であれば、省燃費性と熱・酸化安定性、貯蔵安定性に優れる。
【0104】
潤滑油組成物中の本発明の粘度指数向上剤の含有量は特に限定されず、例えば、潤滑油組成物の全量を基準として、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上がさらに好ましく、また70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、50質量%未満がさらに好ましい。なお、潤滑油組成物をさらに潤滑油基油で希釈せずに潤滑油に用いる場合は、潤滑油組成物中の本発明の粘度指数向上剤の含有量は、潤滑油組成物の全量を基準として、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上がさらに好ましく、また20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。本発明の潤滑油組成物を基油組成物として用いる場合は、基油組成物中の本発明の粘度指数向上剤の含有量は、例えば5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましく、また70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、50質量%未満がさらに好ましい。
【0105】
本発明の基油組成物は、潤滑油組成物を製造する際の生産性や取り扱い性の面で有利となる観点から、以下の条件で測定した粘度が25℃において30Pa・s以下である重合体を含有する粘度指数向上剤を有する。
<測定条件>
米国石油協会(API)分類におけるグループIII基油(粘度指数122、40℃動粘度19.6mm
2/s)80質量%と、前記重合体20質量%からなる溶液を、E型粘度計(東機産業製:TVE−35H 3°×R9.7ローター)で測定する。
【0106】
上記粘度範囲であれば、基油組成物中の粘度指数向上剤の含有量を前述の範囲とした場合に良好な流動性を維持し、潤滑油基油や添加剤等を加えて潤滑油組成物を製造する際の生産性を向上することができる。
【0107】
本発明の潤滑油組成物は、本発明の粘度指数向上剤と潤滑油基油を必須成分として含有し、さらに任意の添加剤等を含有してもよい。潤滑油組成物は、例えば、流動点降下剤、摩耗防止剤、金属系清浄分散剤、無灰清浄分散剤、酸化防止剤、腐食防止剤、泡消剤及び摩擦調整剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種の添加剤をさらに含有することが好ましい。
【0108】
流動点降下剤としては、潤滑油に用いられる任意の流動点降下剤が使用できる。流動点降下剤としては、例えば、ポリメタクリレート類、ナフタレン−塩素化パラフィン縮合生成物、フェノール−塩素化パラフィン縮合生成物などが挙げられる。これらの中ではポリメタクリレート類の添加が好ましい。
【0109】
摩耗防止剤(又は極圧剤)としては、潤滑油に用いられる任意の摩耗防止剤・極圧剤が使用できる。摩耗防止剤(又は極圧剤)としては、例えば、硫黄系、リン系、硫黄−リン系の極圧剤等が使用でき、具体的には、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)、亜リン酸エステル類、チオ亜リン酸エステル類、ジチオ亜リン酸エステル類、トリチオ亜リン酸エステル類、リン酸エステル類、チオリン酸エステル類、ジチオリン酸エステル類、トリチオリン酸エステル類、これらのアミン塩、これらの金属塩、これらの誘導体、ジチオカーバメート、亜鉛ジチオカーバメート、MoDTC、ジサルファイド類、ポリサルファイド類、硫化オレフィン類、硫化油脂類等が挙げられる。これらの中では硫黄系極圧剤の添加が好ましく、特に硫化油脂が好ましい。
【0110】
金属系清浄分散剤としては、アルカリ金属/アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ金属/アルカリ土類金属フェネート、及びアルカリ金属/アルカリ土類金属サリシレート等の正塩又は塩基性塩を挙げることができる。アルカリ金属としてはナトリウム、カリウム等、アルカリ土類金属としてはマグネシウム、カルシウム、バリウム等が挙げられるが、マグネシウム又はカルシウムが好ましく、特にカルシウムが好ましい。
【0111】
無灰清浄分散剤としては、潤滑油に用いられる任意の無灰清浄分散剤が使用できる。無灰清浄分散剤としては、例えば、炭素数40〜400の直鎖もしくは分枝状のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するモノ又はビスコハク酸イミド、炭素数40〜400のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するベンジルアミン、あるいは炭素数40〜400のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するポリアミン、あるいはこれらのホウ素化合物、カルボン酸、リン酸等による変成品等が挙げられる。使用に際してはこれらの中から任意に選ばれる1種類あるいは2種類以上を配合することができる。
【0112】
酸化防止剤としては、フェノール系、アミン系等の無灰酸化防止剤、銅系、モリブデン系等の金属系酸化防止剤が挙げられる。酸化防止剤としては、具体的には、例えば、フェノール系無灰酸化防止剤としては、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)等が、アミン系無灰酸化防止剤としては、フェニル−α−ナフチルアミン、アルキルフェニル−α−ナフチルアミン、ジアルキルジフェニルアミン等が挙げられる。
【0113】
腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリルトリアゾール系、チアジアゾール系、又はイミダゾール系化合物等が挙げられる。
【0114】
泡消剤としては、例えば、25℃における動粘度が1000〜10万mm
2/sのシリコーンオイル、フルオロシリコーンオイル、アルケニルコハク酸誘導体、ポリヒドロキシ脂肪族アルコールと長鎖脂肪酸のエステル、メチルサリチレートとo−ヒドロキシベンジルアルコール等が挙げられる。
【0115】
摩擦調整剤としては、モリブデンジチオカーバメートやモリブデンジチオフォスフェートなどのコハク酸イミドモリブデン錯体や有機モリブデン酸のアミン塩等の有機モリブデン化合物のほか、基本構造として炭素数8以上30以下の直鎖アルキルと金属に吸着できる極性基を同じ分子内にもつ構造のものが挙げられる。極性基としては、アミンやポリアミン、アミドや、これらを同時に分子内に持つ、アミン化合物、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪族エーテル、ウレア系化合物、ヒドラジド系化合物等尿素やアルケニルコハク酸イミドタイプ、エステル、アルコールやジオール、あるいはエステルと水酸基を同時にもつ、例えばモノアルキルグリセリンエステルなどが挙げられる。そのほかアミンと水酸基とを同じ分子内に持つ、たとえばアルキルアミンアフコシキアルコール等など様々である。
【0116】
潤滑油組成物が、流動点降下剤、摩耗防止剤、金属系清浄分散剤、無灰清浄分散剤、酸化防止剤、腐食防止剤、泡消剤及び摩擦調整剤よりなる群から選ばれる1種又は2種以上を含有する場合、それぞれの含有量は、潤滑油組成物の全量を基準として、0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましい。また、潤滑油組成物が消泡剤を含有する場合、その含有量は、好ましくは0.0001質量%以上0.01質量%以下である。なお、潤滑油組成物を基油組成物として用いる場合は、基油組成物は実質的に粘度指数向上剤と潤滑油基油からなるものであってもよく、この場合、基油組成物中の粘度指数向上剤と潤滑油基油の合計含有量は、基油組成物の全量を基準として、例えば98質量%以上であることが好ましく、99質量%以上がより好ましく、99.5質量%以上がさらに好ましい。
【0117】
潤滑油組成物は、上記の成分に加えて、本発明の重合体以外の粘度指数向上剤、さび止め剤、抗乳化剤、金属不活性化剤等をさらに含有することができる。
【0118】
本発明の重合体以外の粘度指数向上剤は、具体的には非分散型又は分散型エステル基含有粘度指数向上剤であり、例として非分散型又は分散型ポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤、非分散型又は分散型オレフィン−(メタ)アクリレート共重合体系粘度指数向上剤、スチレン−無水マレイン酸エステル共重合体系粘度指数向上剤及びこれらの混合物等が挙げられる。これらの中でも非分散型又は分散型ポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤であることが好ましく、非分散型又は分散型ポリメタクリレート系粘度指数向上剤であることがより好ましい。その他に、非分散型又は分散型エチレン−α−オレフィン共重合体又はその水素化物、ポリイソブチレン又はその水素化物、スチレン−ジエン水素化共重合体及びポリアルキルスチレン等を挙げることができる。
【0119】
さび止め剤としては、例えば、石油スルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、ジノニルナフタレンスルホネート、アルケニルコハク酸エステル、又は多価アルコールエステル等が挙げられる。
【0120】
抗乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、又はポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル等のポリアルキレングリコール系非イオン系界面活性剤等が挙げられる。
【0121】
金属不活性化剤としては、例えば、イミダゾリン、ピリミジン誘導体、アルキルチアジアゾール、メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール又はその誘導体、1,3,4−チアジアゾールポリスルフィド、1,3,4−チアジアゾリル−2,5−ビスジアルキルジチオカーバメート、2−(アルキルジチオ)ベンゾイミダゾール、又はβ−(o−カルボキシベンジルチオ)プロピオンニトリル等が挙げられる。
【実施例】
【0122】
以下に実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「%」および「部」は、特に断りのない場合、それぞれ「質量%」および「質量部」を表す。
【0123】
また、実施例では、便宜上、化合物について下記の略称を用いる。
【0124】
PMI:N−フェニルマレイミド
MMA:メチルメタクリレート
BMA:n−ブチルメタクリレート
SMA:ステアリルメタクリレート
SLMA:ラウリルメタクリレート/トリデシルメタクリレート=54/46(質量比)の混合物
(1)分析方法
(重合率)
本発明の各単量体成分の重合率は、ガスクロマトグラフィー(島津製作所社製、GC−2010plus)を用いて求めた。
【0125】
測定条件は以下の通りである。
−カラム:GLサイエンス製 Inert Cap1(液相の膜厚:0.25μm、長さ:30m、内径:0.25mm)
−温度:40℃(5分保持)+40℃〜170℃(10℃/分)+170℃〜210℃(5℃/分)+210℃〜330℃(15℃/分)+330℃(20分保持)
−気化室温度:200℃
−検出器温度:350℃(FID)
−キャリアガス:ヘリウム(カラム流量1.33ml/分)
−注入量:0.5μl(スプリット法、スプリット比:30.0)
−内部標準試料:トリデカン
−希釈溶剤:酢酸エチル
各単量体とトリデカンを酢酸エチルに溶解させた検量線溶液を作成し、それらをガスクロマトグラフィーで測定し、ピーク面積から検量線を作成した。次いで、重合溶液とトリデカンを酢酸エチルに溶解させたサンプル溶液を作成し同様に測定した。内部標準法により、各単量体成分の重合率を求めた。
【0126】
(重量平均分子量および数平均分子量)
重合体の重量平均分子量と数平均分子量の測定は、下記の条件にて行った。
−装置:東ソー社製GPCシステム HLC−8320GPC ECOSEC
−カラム:東ソー社製、TSKgel GMHXL 2本
−展開溶媒:テトラヒドロフラン
−展開溶媒の流量:1.0ml/分
−標準試料:TSK標準ポリスチレン(東ソー社製、PS−オリゴマーキット)
−カラム温度:40℃
−サンプル濃度:0.5%
−注入量:200μl
(粘度指数)
100℃における動粘度が7.0mm
2/秒となるように、基油(SK製:YUBASE4 米国石油協会(API)分類におけるグループIII基油(粘度指数122、40℃動粘度19.6mm
2/s))に重合体を希釈し、JIS K2283の方法で測定した。粘度指数が230以上の場合を○、230未満の場合を×とした。
【0127】
(せん断安定性)
100℃における動粘度が7.0mm
2/秒となるように、基油(SK製:YUBASE4)に重合体を希釈し、以下の条件で超音波を照射した。
装置:Hielscher Ultrasonics社製 UP400S
設定:Amplitude=70%、Cycle=1
時間:10分
温度:100℃
せん断前後および基油の100℃における動粘度を測定し、SSI={1−(せん断後の動粘度−基油の動粘度)/(せん断前の動粘度−基油の動粘度)}×100の式で計算される値が、45以下である場合を○、45を超える場合を×とした。
【0128】
(粘度測定)
基油(SK製:YUBASE4 米国石油協会(API)分類におけるグループIII基油(粘度指数122、40℃動粘度19.6mm
2/s))80質量%と、前記重合体20質量%からなる溶液を、E型粘度計(東機産業製:TVE−35H 3°×R9.7ローター)で測定した。
25℃において、上記粘度が30Pa・s以下の場合を○、30Pa・sを超える場合を×とした。
【0129】
(希釈速度)
固形分濃度が20質量%となるように、基油(SK製:YUBASE4)に重合体を希釈した。得られた20質量%基油溶液1.5質量部をガラス製スクリュー管に取り、室温にてさらに基油(SK製:YUBASE4)を加え、総量を10質量部(固形分濃度3質量%)とした。
【0130】
上記混合物を、室温にて以下の条件で溶解させ、目視で完全溶解するまでに必要な時間が1時間未満である場合を◎、1時間以上1.5時間未満である場合を○、1.5時間以上である場合を×とした。
装置:MIX−ROTAR VWR−3 井内盛栄堂社製
設定:80rpm
(SP値)
重合体のSP値(溶解度パラメーター)を、アクセルリス社製のMaterials Studio(登録商標) Ver.6.1 MS−Synthiaモジュールを用いて計算した。まず、モノマー構造を作成し、繰り返し構造を定義した。定義したモノマー構造を用いてMS−Synthiaモジュールで高分子物性(溶解度パラメーター等)を計算した。MS−Synthiaモジュールは定量的構造物性相関(QSPR:Quantitave Structure Property Relationships)を用いることにより高分子の物性を計算できるソフトウェアであり、グラフ理論から得られる結合性指数を用いてモノマー構造から高分子の物性を計算することができる。詳細な理論は次の文献に記載されており、当該記載が本願に参考のため援用される:Jozef Bicerano、「Prediction of Polymer Properties,3rd Edition」、Marcel Dekker社発刊。今回は、MS−Synthiaで計算できるBiceranoが改良したFedors法とvan Krevelen法のSP値(溶解度パラメーター)のうち、Fedors法の値を使用した。
(Tg)
本発明において、ガラス転移温度(Tg)は、
FOXの式:1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+・・・
(Tg:求めるべきガラス転移温度、W1:成分1の重量分率、Tg1:成分1のホモポリマーのガラス転移温度)
に従い計算により求めたものである。各成分のホモポリマーのガラス転移温度の値は、日刊工業新聞社の「粘着技術ハンドブック」またはWiley−Interscienceの「ポリマーハンドブック(Polymer Handbook)」に記載の値を採用するものとする。なお、本発明においてPMI、SLMA、SMAのホモポリマーのガラス転移温度は、それぞれ337℃、−65℃、−70℃とする。
【0131】
(2)重合体の基油溶液の製造例
(実施例1)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管、および滴下ロートを備えた反応容器に、BMA32質量部、SMA30質量部、PMI10質量部、SLMA28質量部、基油(SK製 YUBASE4)124.2質量部、ペンタエリスリトールテトラキス(メルカプトアセテート)0.05質量部を仕込み、これに窒素ガスを導入しつつ内容物を105℃まで昇温させた。重合開始剤として0.1161質量部のt−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富社製、ルペロックス(登録商標)570)と基油(SK製 YUBASE4)8.2質量部を混合した溶液を添加するとともに、重合開始剤としてt−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(アルケマ吉富社製、ルペロックス(登録商標)575)0.051質量部を基油(SK製 YUBASE4)3.4質量部に溶解させた溶液を2時間かけて滴下しながら溶液重合を進行させ、さらに4時間の熟成を行った。続いて、基油(SK製 YUBASE4)97.3質量部を加え希釈することで重合体1の基油溶液(重合体濃度30質量%)を得た。各種評価の結果を表1に示す。
【0132】
(実施例2)
実施例1において、BMA32質量部を30質量部に、SLMA28質量部を30質量部に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行うことで、重合体2の基油溶液(重合体濃度30質量%)を得た。各種評価の結果を表1に示す。
【0133】
(実施例3)
実施例2において、t−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富社製、ルペロックス(登録商標)570)0.1161質量部を0.0774質量部に、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(アルケマ吉富社製、ルペロックス(登録商標)575)0.051質量部をt−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富社製、ルペロックス(登録商標)570)0.034質量部に変更した以外は、実施例2と同様の操作を行うことで、重合体3の基油溶液(重合体濃度30質量%)を得た。各種評価の結果を表1に示す。
(実施例4)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管、および滴下ロートを備えた反応容器に、MMA20質量部、BMA5質量部、SMA30質量部、PMI10質量部、SLMA35質量部、基油(SK製 YUBASE4)143.6質量部、ペンタエリスリトールテトラキス(メルカプトアセテート)0.05質量部を仕込み、これに窒素ガスを導入しつつ内容物を105℃まで昇温させた。重合開始剤として0.0774質量部のt−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富社製、ルペロックス(登録商標)570)と基油(SK製 YUBASE4)6.3質量部を混合した溶液を添加するとともに、重合開始剤としてt−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富社製、ルペロックス(登録商標)570)0.034質量部を基油(SK製 YUBASE4)3.4質量部に溶解させた溶液を2時間かけて滴下しながら溶液重合を進行させ、さらに4時間の熟成を行った。続いて、基油(SK製 YUBASE4)78.9質量部を加え希釈することで重合体4の基油溶液(重合体濃度30質量%)を得た。各種評価の結果を表1に示す。
【0134】
(比較例1)
実施例3について、BMA30質量部をMMA30質量部に変更した以外は、実施例3と同様の操作を行い、重合体5の基油溶液(重合体濃度30%)を得た。重合体5は基油への溶解性が悪く不溶物が発生したため、粘度指数やせん断安定性の評価を行うことができなかった。結果を表1に示す。
【0135】
(比較例2)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管、および滴下ロートを備えた反応容器に、MMA30質量部、SMA30質量部、SLMA40質量部、トルエン53.33質量部、ペンタエリスリトールテトラキス(メルカプトアセテート)0.05質量部を仕込み、これに窒素ガスを導入しつつ内容物を105℃まで昇温させた。重合開始剤として0.0258質量部のt−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富社製、ルペロックス(登録商標)570)とトルエン0.46質量部を混合した溶液を添加するとともに、前記重合開始剤0.103質量部をトルエン10.3質量部に溶解させた溶液を4時間かけて滴下しながら溶液重合を進行させ、さらに4時間の熟成を行った。
【0136】
続いて、冷却管を冷却管および溜出液受器につなげたトの字管に取替え、基油(SK製 YUBASE4)233質量部を反応容器に投入した。バス温を150℃まで昇温した後、真空ポンプを用いて徐々に減圧し、トルエンを除去した。内温が142℃に到達してから30分後に解圧・冷却し、重合体6の基油溶液(重合体濃度30質量%)を得た。結果を表1に示す。
【0137】
【表1】
【0138】
(a)単位および(b)単位必須構成単位とする粘度指数向上剤は、基油溶解性を維持しながら良好なせん断安定性をと高い粘度指数を示すだけでなく、特定の条件で測定した粘度が一定以下であることにより基油組成物とした際の室温での取り扱いが容易であり、速やかな希釈が可能であるために潤滑油組成物の生産性に優れることが示唆された。