(54)【発明の名称】レーザ加工装置、レーザ加工装置の加工パターン調整方法、レーザ加工装置の加工パターン調整プログラム、コンピュータで読み取り可能な記録媒体及び記録した機器
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
レーザ光を発生するレーザ光発生部と、前記レーザ光発生部から出射されたレーザ光を、走査可能な領域である加工領域にて二次元で走査するためのレーザ光走査部と、前記レーザ光走査部の加工領域に対応付けられた設定面を表示するための表示部と、前記レーザ光走査部の走査角度を検出する走査角度検出部とを備えるレーザ加工装置の加工パターン調整方法であって、
前記表示部で表示された設定面上に、加工対象物の加工対象面上でレーザ光により加工される加工パターンを設定する工程と、
前記設定された加工パターンに基づいて、前記加工対象面にてレーザ光が辿る第一軌跡を規定する加工線分データと、前記レーザ光発生部から出射されるレーザ光の出射タイミングを規定する出射タイミングデータとを含む展開データを生成する工程と、
レーザ光が外部に出射されない状態で、前記展開データに含まれる加工線分データに基づいて前記レーザ光走査部を制御する工程と、
前記レーザ光走査部の制御に際して、前記走査角度検出部により走査角度を検出し、該検出された走査角度と、レーザ光の出射タイミングとに基づいて、実際のレーザ加工時にレーザ光が辿ると想定される第二軌跡を示す軌跡データを生成する工程と、
前記生成された軌跡データに基づいて、前記表示部に前記第二軌跡を表示させる工程と、
前記表示された第二軌跡のうち、加工乱れに相当する箇所を加工乱れ箇所として指定する工程と、
前記指定された加工乱れ箇所に対応する軌跡データ及び加工線分データに基づいて、第二軌跡の加工乱れに関する解析を行う工程と、
前記解析された解析結果に基づいて、前記表示部において軌跡データを加工線分データに近づけるための誘導表示を行う工程と、
前記指定された加工乱れの種別に応じて、前記レーザ光走査部の動作を規定する動作パラメータを調整する工程と、
を含むレーザ加工装置の加工パターン調整方法。
レーザ光を発生するレーザ光発生部と、前記レーザ光発生部から出射されたレーザ光を、走査可能な領域である加工領域にて二次元で走査するためのレーザ光走査部と、前記レーザ光走査部の加工領域に対応付けられた設定面を表示するための表示部と、前記レーザ光走査部の走査角度を検出する走査角度検出部とを備えるレーザ加工装置の加工パターン調整プログラムであって、
前記表示部で表示された設定面上に、加工対象物の加工対象面上でレーザ光により加工される加工パターンを設定する機能と、
前記設定された加工パターンに基づいて、前記加工対象面にてレーザ光が辿る第一軌跡を規定する加工線分データと、前記レーザ光発生部から出射されるレーザ光の出射タイミングを規定する出射タイミングデータとを含む展開データを生成する機能と、
レーザ光が外部に出射されない状態で、前記展開データに含まれる加工線分データに基づいて前記レーザ光走査部を制御する機能と、
前記レーザ光走査部の制御に際して、前記走査角度検出部により走査角度を検出し、該検出された走査角度と、レーザ光の出射タイミングとに基づいて、実際のレーザ加工時にレーザ光が辿ると想定される第二軌跡を示す軌跡データを生成する機能と、
前記生成された軌跡データに基づいて、前記表示部に前記第二軌跡を表示させる機能と、
前記表示された第二軌跡のうち、加工乱れに相当する箇所を加工乱れ箇所として指定する機能と、
前記指定された加工乱れ箇所に対応する軌跡データ及び加工線分データに基づいて、第二軌跡の加工乱れに関する解析を行う機能と、
前記解析された解析結果に基づいて、前記表示部において軌跡データを加工線分データに近づけるための誘導表示を行う機能と、前記指定された加工乱れの種別に応じて、前記レーザ光走査部の動作を規定する動作パラメータを調整する機能と、
をコンピュータで実現させるレーザ加工装置の加工パターン調整プログラム。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は以下のものに特定されない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一若しくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
【0032】
本明細書において、レーザ加工装置とこれに接続される操作、制御、入出力、表示、その他の処理等のためのコンピュータ、プリンタ、外部記憶装置その他の周辺機器との接続は、例えばIEEE1394、RS−232X、RS−422、RS−423、RS−485、USB等のシリアル接続、パラレル接続、或いは、10BASE−T、100BASE−TX、1000BASE−T等のネットワークを介して電気的に接続して通信を行う。接続は有線を使った物理的な接続に限られず、IEEE802.1x、OFDM方式等の無線LANやBluetooth(登録商標)等の電波、赤外線、光通信等を利用した無線接続等でもよい。さらに観察像のデータ保存や設定の保存等を行うための記録媒体には、メモリカードや磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリ等が利用できる。
【0033】
以下の実施の形態では、本発明を具現化したレーザ加工装置の一例として、印字を行うレーザマーカについて説明する。ただ、本明細書においてレーザ加工装置は、その名称に拘わらずレーザ応用機器一般に利用でき、例えばレーザ発振器や各種のレーザ加工装置、穴あけ、マーキング、トリミング、スクライビング、表面処理等のレーザ加工や、印刷機器、医療機器等において、好適に利用できる。また、本明細書においては加工の代表例として印字について説明するが、印字とは文字や記号、図形等のマーキングの他、前述した各種の加工も含む概念で使用する。さらに本明細書において印字文字列や印字パターンとは、ひらがな、カタカナ、漢字、アルファベットや数字、記号、絵文字、アイコン、ロゴ、一次元コードや二次元コードといったシンボルやグラフィック等、さらに、直線、曲線等の図面も含める意味で使用する。なお、シンボルには、一次元コードや二次元コードに加え、これらを組み合わせた合成シンボルも含む。一次元コードは、一次元コードバーコードや一次元シンボル等とも呼ばれ、Code39やCode128等が挙げられる。二次元コードも同様に二次元バーコードや二次元シンボル等とも呼ばれ、QRコード(登録商標)、マイクロQRコード、データマトリクス(DataMatorix)、ベリコード(VeriCode)、アズテックコード(AztecCode)、PDF417、MicroPDF417、マキシコード(MaxiCode)等がある。また合成シンボルには、一次元コードと二次元コードが混在するGS1合成シンボル等がある。GS1合成シンボルはベースになる一次元コードとしてEAN/UPC(EAN-13、EAN-8、UPC-A、UPC-E)、GS1-128及びGS1データバーの三種が利用できる。また、付加情報には、MicroPDF417又はPDF417の二次元コードが利用できる。また、本実施の形態は、バーコードと、マイクロQRコード等のマトリクス型二次元コードとを組み合わせたものにも適用できる。
【0034】
さらに、白黒パターンの印字に際して、黒字の部分にレーザ光を照射して印字する場合や、逆に白字の部分にレーザ光を照射して印字する場合のいずれにも適用できる。
(レーザ加工装置の構成)
【0035】
レーザ加工装置は、レーザ光を所定の領域内において走査して、部品や製品等の加工対象物(ワーク)の表面に対しレーザ光を照射して印字やマーキング等の加工を行う。レーザ加工装置の構成の一例を
図1に示す。この図に示すレーザ加工装置100は、レーザ制御部1のレーザ光発生部6で発生される励起光を、レーザ出力部2のレーザ発振部50で発振器を構成するレーザ媒質8に照射し、レーザ発振を生じさせる。レーザ発振光はレーザ媒質8の出射端面から出射され、
図2に示すように、ビームエキスパンダ53でビーム径を拡大されて、レーザ光走査部9に導かれる。レーザ光走査部9は、レーザ光LBを反射させて所望の方向に偏光し、集光部15から出力されるレーザ光LBは、ワークWKの表面で走査されて印字等の加工を行う。
【0036】
レーザ加工装置100は、レーザ光LBをワークWK上で走査させるために、
図1〜
図2に示すようなレーザ光走査部9を備える。レーザ光走査部9は、一対のガルバノミラーを構成するX・Y軸スキャナ14a、14bと、各ガルバノミラーをそれぞれ回動軸に固定し回動するためのガルバノモータ51a、51bとを備えている。X・Y軸スキャナ14a、14bは、
図1〜
図2に示すように互いに直交する姿勢で配置されており、レーザ光LBをX方向、Y方向に反射させて走査させることができる。また、レーザ光走査部9の下方には、
図1に示すように、集光部15が備えられる。集光部15はレーザ光LBを作業領域に照射させるよう集光するための集光レンズで構成され、fθレンズやテレセントリックレンズが使用される。
【0037】
以上の
図1〜
図2は、二次元平面内でレーザ光LBを走査して加工を行うレーザ加工装置の例を示している。ただ本発明はこの構成に限られず、Z軸方向(高さ方向)にレーザ光LBの焦点距離を調整して三次元状の加工を可能としたレーザ加工装置も利用できる。
図3に、このような三次元加工可能なレーザ加工装置の一例として、Z軸スキャナ14cを付加することで焦点距離を変化可能としたレーザ加工装置を示す。
図3に示すように、Z軸スキャナ14cは、レーザ光LBの入射側(発振部50側)に面する入射レンズと、レーザ出射側に面する出射レンズを含んでおり、レンズを駆動モータ等で摺動させてレンズ間の距離を相対的に変化させ、焦点距離すなわち高さ方向のワーキングディスタンスを調整可能としている。これによって、
図4に示すように、レーザ光LBを加工エリアWA内で走査させると共に、高さ方向への焦点位置の調整も可能としている。
(入力部3)
【0038】
図1に示す入力部3はレーザ制御部1に接続され、レーザ加工装置100を操作するための必要な設定を入力してレーザ制御部1に送信する。設定内容はレーザ加工装置100の動作条件、具体的な文字列やシンボル等の印字パターン、及び、フィードバックされた印字結果に対する調整情報(調整値等)等である。入力部3はキーボードやマウス、コンソール等の入力デバイスである。また、入力部3で入力された入力情報を確認したり、レーザ制御部1の状態等及びフィードバックされた加工予定情報及び加工結果を表示する表示部82を別途設けることもできる。
(表示部82)
【0039】
図1に示す表示部82は、LCDやブラウン管等のモニタが利用できる。またタッチパネル方式を利用すれば、入力部と表示部を兼用することもできる。これによって、モニタ等を外部接続することなく入力部兼表示部でレーザ加工装置の必要な設定を行うことができる。または専用のコンソールや無線接続されたタブレット等を入力部や表示部に利用することもできる。
【0040】
表示部82は、例えば、第一軌跡FTと第二軌跡STとを並べて表示したり、第一軌跡FTと第二軌跡STとを重畳表示したり、或いは、第一軌跡FTと第二軌跡STとを切り替えて表示することができる(詳細は後述)。
(レーザ制御部1)
【0041】
図1に示すレーザ制御部1は、レーザ光制御部4とメモリ部5とレーザ光発生部6と電源7とを備える。メモリ部5は、入力部3から入力された設定内容を記録する。レーザ光制御部4は必要時にメモリ部5から設定内容を読み込み、印字パターンに応じた印字信号に基づいてレーザ光発生部6を動作させてレーザ出力部2のレーザ媒質8を励起する。メモリ部5はRAMやROM等の半導体メモリが利用できる。またメモリ部5はレーザ制御部1に内蔵する他、挿抜可能なPCカードやSDカード等の半導体メモリカード、カード型ハードディスク等のメモリカードを利用することもできる。メモリカードで構成されるメモリ部5は、コンピュータ等の外部機器で容易に書き換え可能であり、コンピュータで設定した内容をメモリカードに書き込み、レーザ制御部1にセットすることで、入力部3をレーザ制御部1に接続することなく設定を行うことができる。特に半導体メモリはデータの読み込み・書き込みが高速で、しかも機械的動作部分がないため振動等に強く、ハードディスクのようなクラッシュによるデータ消失事故を防止できる。
(レーザ光制御部4)
【0042】
レーザ光制御部4は、設定された印字を行うようレーザ媒質8で発振されたレーザ光LBを印字対象物(ワーク)WK上で走査させるため、レーザ出力部2のレーザ光走査部9を動作させる走査信号をレーザ光走査部9に出力する。電源7は、定電圧電源として、レーザ光発生部6へ所定電圧を印加する。印字動作を制御する印字信号は、そのHIGH/LOWに応じてレーザ光LBのON/OFFが切り替えられ、その1パルスが発振されるレーザ光LBの1パルスに対応するPWM信号である。PWM信号は、その周波数に応じたデューティ比に基づいてレーザ強度が定められるが、周波数に基づいた走査速度によってもレーザ強度が変化するよう構成することもできる。
【0043】
また、レーザ光制御部4は、レーザ光LBの出射タイミングデータに基づいて、レーザ光発生部6のON/OFFを制御する。レーザ光制御部4は、初期値として設定された印字パターンと、例えば、レーザ光走査部9からフィードバックされた角度信号と偏差信号及びレーザ光検出部70からフィードバックされたレーザ光LBの出射タイミングデータに基づき生成される印字結果を、印字対象物(ワーク)WKに実際にレーザマーキングすることなく、表示部82及びメモリ部5へ出力するよう制御する(詳細は後述)。
(レーザ光発生部6)
【0044】
レーザ光発生部6は、光学的に接合されたレーザ励起光源10とレーザ励起光源集光部11を備える。レーザ光発生部6は、レーザ励起光源10とレーザ励起光源集光部11をレーザ光発生部ケーシング内に固定している。レーザ光発生部ケーシングは、熱伝導性の良い真鍮等の金属で構成され、レーザ励起光源10を効率よく外部に放熱する。レーザ励起光源10は半導体レーザやランプ等で構成される。
(レーザ出力部2)
【0045】
レーザ出力部2は、レーザ発振部50を備える。レーザ光LBを発生させるレーザ発振部50は、レーザ媒質8と、レーザ媒質8が放出する誘導放出光の光路に沿って所定の距離を隔てて対向配置された出力ミラー及び全反射ミラーと、これらの間に配されたアパーチャ、Qスイッチ19等を備える。レーザ媒質8が放出する誘導放出光を、出力ミラーと全反射ミラーとの間での多重反射により増幅し、Qスイッチ19の動作により短周期にて通断しつつアパーチャによりモード選別して、出力ミラーを経てレーザ光LBを出力する。なお、パルス化する方法としてはQスイッチに限られず、例えば、シード光となるLDをパルスジェネレータでパルス発振させるようにしてもよい。
【0046】
図1に示すレーザ出力部2は、レーザ媒質8とレーザ光走査部9を備える。レーザ媒質8は光ファイバケーブル13を介してレーザ光発生部6から入射されるレーザ励起光で励起されて、レーザ発振される。レーザ媒質8はロッド状の一方の端面からレーザ励起光を入力して励起され、他方の端面からレーザ光LBを出射する、いわゆるエンドポンピングによる励起方式を採用している。
(レーザ光検出部70)
【0047】
図1に示すレーザ光検出部70は、例えばフォトダイオード(Photodiode)を用いた光検出器であって、レーザ光発生部6からのレーザ光LBの出射タイミングを検出する。レーザ光発生部6からのレーザ光LBは、光路上に配されたハーフミラー62によって、レーザ光検出部70方向と、レーザ光走査部9方向とに分岐される。レーザ光発生部6から実際に発生したレーザ光LBの出射タイミングは、ハーフミラー62を介して分岐されたレーザ光LBをレーザ光検出部70で検出することで出射タイミングデータとして得られる。
【0048】
レーザ光検出部70は、レーザ発振部50から出るパルス状のレーザ光LBの出射タイミングに合った信号を生成する。生成された出射タイミングデータをレーザ光制御部4に出力することによりフィードバック制御を可能とする。
(シャッタ部71)
【0049】
レーザ光を通過させる状態と遮断させる状態とを切り替えるための部材である。このシャッタ部71は、
図1に示すようにレーザ光LBの光路上に設けられる。シャッタ部71は、例えば光路を遮断するシャッタを光路上に挿入して遮断状態とし、またシャッタを光路上から排除するよう移動させることで開放状態とする。レーザマーキングを実行する際には、シャッタ部71はシャッタを開放状態とし、シャッタ部71に至ったレーザ光LBを通過させ、ワークWKにレーザ光LBが照射される。一方、レーザ加工の加工パターンを調整する際等、レーザ光LBを発振させつつも出力させたくない場合は、シャッタを光路上に挿入して、レーザ光LBがシャッタ部71を通過できないようにする。
【0050】
シャッタ部71によるシャッタの開閉動作は、例えば通常状態でシャッタ部71を遮断状態とし、レーザマーキング実行時に開放状態に切り替える。逆に、通常状態でシャッタ部71を開放状態とし、レーザ加工の加工パターンを調整する際には閉塞するように動作させてもよい。なお、レーザ光発生部6からレーザ光LBを発生させない場合には、シャッタ部71を不要とできる。このような例を変形例1として、
図5に示す。
(変形例1)
【0051】
前述の実施例では、レーザ光検出部70から受けた実際のレーザ光LBのON/OFF信号を使ってレーザ光LBの出射タイミングを算出しているが、レーザ発振部50内のQスイッチに与えているレーザ出力信号パルスからレーザ光LBの出射タイミングを算出してもよい。また、レーザ光発生部6の出力に対するレーザ光LBの出射タイミングの実測値のテーブルをメモリ部5に記憶しておき、レーザ光制御部4が随時読み出すことで、出力応答遅れが反映された出射タイミングを得ることもできる。このような方法によって、レーザ光発生部6からレーザ光LBを実際に出射せずとも、出射タイミングを得ることが可能となる。よって
図5に示すレーザ加工装置100'のように、レーザ光検出部やシャッタ部を省略することが可能となる。
(レーザ光走査部9)
【0052】
レーザ光走査部9は、
図1に示すように、互いに直交する姿勢で配置されており、レーザ光LBをX方向、Y方向に反射させて走査可能とする一対のデジタルガルバノミラーを構成するデジタルガルバノスキャナの一例を、
図6の斜視図に示す。この図に示すデジタルガルバノスキャナは、デジタルガルバノミラーを構成するX軸スキャナ14aと、このX軸スキャナ14aを回動軸に固定し回動するためのデジタルガルバノスキャナモータ51aと、デジタルガルバノミラーの角度を検出するための走査角度検出部72aを備えている。このデジタルガルバノスキャナの回転動作は
図1等に示すスキャナ駆動回路52で制御される。具体的には、スキャナ駆動回路52に含まれるデジタルガルバノスキャナドライバがX軸スキャナ14a、Y軸スキャナ14bをそれぞれ制御している(詳細は
図7で後述)。なお
図6の例では、X軸側のデジタルガルバノミラーについて説明したが、Y軸側のデジタルガルバノミラーを構成するY軸スキャナ14b、デジタルガルバノスキャナモータ51b、走査角度検出部72bも同様に構成できる。
【0053】
走査角度検出部72は、例えば、光学式ロータリーエンコーダであって、モータシャフトに連結したスケールディスクとステータ側に配置したエンコーダデバイスとで構成される。走査角度検出部72は、デジタルガルバノミラーの角度を検出し、検出した角度を、スケールの1つのグレーティングを1波長として、位相が直交する2つのアナログ信号で出力する。
【0054】
デジタルガルバノスキャナドライバ73による制御構成を
図7に示す。この図に示すように、デジタルガルバノスキャナドライバ73は、A/D回路731と角度信号処理回路732と制御器733とD/A回路734と電流制御アンプ735とで構成され、走査角度検出部72で検出した角度信号をフィードバック信号として、入力される角度指令信号に従い、デジタルガルバノスキャナモータ51a、51bを駆動する。
【0055】
デジタルガルバノスキャナドライバ73は、コントローラ74から出力された角度指令信号を入力し、対応する角度にミラーを追従するよう、フィードバック制御を行う。具体的には、走査角度検出部72から出力された2つのアナログ信号をA/D回路731でデジタル信号に変換した後、角度信号処理回路732でミラー角度に応じた角度信号を生成し、この角度信号と、コントローラ74から入力された角度指令信号との差を計算して偏差信号を生成する。このように、デジタルガルバノスキャナドライバ73はデジタル信号で処理を行う。このようなデジタル処理によって、低ノイズで再現性の高い処理が行える。
【0056】
デジタルガルバノスキャナドライバ73は、得られた偏差信号を制御器733に入力してデジタルガルバノスキャナモータ51a、51bを駆動するための電流指令信号を生成し、得られた電流指令信号をD/A回路734に入力してアナログ信号に変換し、電流制御アンプ735によりデジタルガルバノスキャナモータ51a、51bを駆動する。なお、他の実用的なモータ駆動方法として、D/A変換をせずに、PWM信号でモータを駆動するようにしてもよい。
【0057】
また、デジタルガルバノスキャナドライバ73は、前述したデジタル処理によって低ノイズで生成した角度信号と偏差信号とをデジタルガルバノスキャナモータ51a、51bを駆動させるための制御に供する他、レーザ制御部1のレーザ光制御部4に出力することにより、本実施の形態に係る仮想加工を実現する(詳細は後述)。なお、本発明は、二次元平面内での加工を行うレーザ加工装置のみならず、Z軸方向(高さ方向)にレーザ光の焦点距離を調整して三次元加工を可能としたレーザ加工装置にも適用可能である。
(レーザ媒質8)
【0058】
前記の例では、レーザ媒質8としてロッド状のNd:YVO
4の固体レーザ媒質を用いた。また固体レーザ媒質の励起用半導体レーザの波長は、このNd:YVO
4の吸収スペクトルの中心波長である809nmに設定した。ただ、この例に限られず他の固体レーザ媒質として、例えば希土類をドープしたYAG、LiSrF、LiCaF、YLF、NAB、KNP、LNP、NYAB、NPP、GGG等も用いることもできる。また、固体レーザ媒質に波長変換素子を組み合わせて、出力されるレーザ光LBの波長を任意の波長に変換できる。また、レーザ媒質としてバルクに代わってファイバを発振器として利用した、いわゆるファイバレーザにも適用可能である。
【0059】
さらに、固体レーザ媒質を使用せず、言い換えるとレーザ光を発振させる共振器を構成せず、波長変換のみを行う波長変換素子を使用することもできる。この場合は、半導体レーザの出力光に対して波長変換を行う。波長変換素子としては、例えばKTP(KTiPO
4)、有機非線形光学材料や他の無機非線形光学材料、例えばKN(KNbO
3)、KAP(KAsPO
4)、BBO、LBOや、バルク型の分極反転素子(LiNbO
3(Periodically Polled Lithium Niobate:PPLN)、LiTaO
3等)が利用できる。また、Ho、Er、Tm、Sm、Nd等の希土類をドープしたフッ化物ファイバを用いたアップコンバージョンによるレーザの励起光源用半導体レーザを用いることもできる。このように、本実施の形態においてはレーザ発生源として様々なタイプを適宜利用できる。
(レーザ発振部50)
【0060】
レーザ発振部50は、固体レーザに限られず、CO
2やヘリウム−ネオン、アルゴン、窒素等の気体を媒質として用いる気体レーザを利用することもできる。例えば炭酸ガスレーザを用いた場合のレーザ発振部50は、レーザ発振部の内部に炭酸ガス(CO
2)が充填され、電極を内蔵しており、レーザ制御部1から与えられる印字信号に基づいて、レーザ発振部50内の炭酸ガスを励起し、レーザ発振させる。
(レーザ加工装置100のシステム構成)
【0061】
図8に、レーザ加工装置100のシステム構成を示す。この図に示すレーザ加工システムは、レーザ出力部2を構成するマーキングヘッド部150と、マーキングヘッド部150と接続されてこれを制御するレーザ制御部1であるコントローラ部1Aと、コントローラ部1Aとデータ通信可能に接続され、コントローラ部1Aに対して印字パターンを三次元のレーザ加工データとして設定するレーザ加工条件設定装置180とを備える。レーザ加工条件設定装置180は、
図8の例においてはコンピュータにレーザ加工条件設定プログラムをインストールして、レーザ加工条件設定機能を実現させている。
【0062】
レーザ加工条件設定装置180は、コンピュータの他、タッチパネルを接続したプログラマブルロジックコントローラ(PLC)や、その他専用のハードウエア等を利用することもできる。またレーザ加工条件設定装置180は、レーザ加工装置の動作を制御する制御装置として機能させることもできる。例えば、一のコンピュータにレーザ加工条件設定装置180としての機能と、レーザ出力部を備えるマーキングヘッドのコントローラとしての機能を統合してもよい。さらにレーザ加工条件設定装置180は、レーザ加工装置と別部材で構成する他、レーザ加工装置に統合することもでき、例えばレーザ加工装置に組み込まれたレーザ加工条件設定回路等とすることもできる。
【0063】
さらにコントローラ部1Aには、必要に応じて各種外部機器190を接続できる。例えばライン上に搬送されるワークWKの種別、位置等を確認するイメージセンサ等の画像認識装置、ワークWKとマーキングヘッド部150との距離に関する情報を取得する変位計等の距離測定装置、所定のシーケンスに従って機器の制御を行うPLC、ワークWKの通過を検出するPDセンサその他各種のセンサ等を設置し、これらとデータ通信可能に接続できる。
(レーザ加工条件設定装置180)
【0064】
印字データをワークWKに印字するための設定情報であるレーザ加工データは、レーザ加工条件設定装置180により設定される。
図9は、レーザ加工条件設定装置180の一例としてブロック図を示している。この図に示すレーザ加工条件設定装置180は、加工パターン設定部の一形態である加工条件設定部3Cと、制御部80と、レーザ光発生部6と、記憶部5Aと、動作パラメータ入力部3Zとを備えている。
(加工条件設定部3C)
【0065】
加工条件設定部3Cは、加工面に加工する加工パターンとして、一次元コード、二次元コード及び文字列等で構成された加工ブロックを設定する。この加工条件設定部3Cは、ボタンやスイッチ等の各種入力手段が利用できる。また、グラフィカルユーザインタフェースを用いて入力することもできる(詳細は後述)。
(制御部80)
【0066】
制御部80は、軌跡データ生成部80Xと、軌跡表示制御部80Yと、展開データ生成部の一形態である展開情報生成部80Cと、動作パラメータ調整部80Zと、走査制御部80Dとの機能を実現する。このような制御部80は、FPGAやLSI等のIC等で構成できる。
(サブブロック分割部80A)
【0067】
サブブロック分割部80Aは、加工条件設定部3Cで設定された各加工ブロックを、文字列については文字単位を基準としてサブブロックに分割し、二次元コード又は一次元コードについては、これら二次元コード又は一次元コードを構成するセル単位又はモジュール幅単位を基準として、サブブロックに分割する。
(加工順決定部80B)
【0068】
加工順決定部80Bは、サブブロック分割部80Aでそれぞれ分割された複数のサブブロックについて、ワークWKの加工面が加工エリアWA内に移動された場合に、加工エリアWA内への進入が完了するサブブロックから順に加工されるように、加工順を決定する。なお「加工エリアへの進入が完了する」とは、例えばサブブロックを構成する枠(ユーザが視認し得るか否かは問わない)のうち、ワークが移動する向きから最も離れた部分(線であるか点であるかは問わない)が加工エリアへ進入したとき、ということもできる。より具体的には、例えばサブブロックを構成する枠が四角枠であって、且つワークが移動する向きと略直交する2辺を有する場合、ワークが移動する向きから離れた方の辺が加工エリアへ進入したとき、ということもできる。
(展開情報生成部80C)
【0069】
展開情報生成部80Cは、加工条件設定部3Cで設定された加工パターン、及び加工順決定部80Bで決定された加工順に基づいて、レーザ光走査部9でもってレーザ光LBが辿るべき軌跡を規定する加工線分データ、及びレーザ光LBをON又はOFFに制御するための制御データを含む展開情報を生成する。
【0070】
また、展開情報生成部80Cは、後述する動作パラメータ調整部80Zによって、動作パラメータが調整された場合、変更された動作パラメータを展開情報に反映させる。
(軌跡データ生成部80X)
【0071】
軌跡データ生成部80Xは、レーザ光検出部70からのレーザ出力タイミングと走査角度検出部72からの角度信号とに基づいて、線分データ計算機LCと印字線分計算機TCとによりレーザ出射軌跡データを生成する。
【0072】
より具体的には、
図10に示すように、軌跡データ生成部80Xは、Xスキャナ14aとYスキャナ14bから出力された角度信号と、さらに三次元加工の場合はZスキャナ14cを駆動する位置指令信号(3D装置の場合)から、XY面線分データへの構成計算を線分データ計算機LCで行う。そして、レーザ出力指令パルスを、レーザ光検出部70により検出したレーザ出力タイミング信号に位相調整器PRを介して同期化することで、レーザON/OFF信号を生成する。
【0073】
ここで、レーザ光走査部9におけるガルバノスキャナ動作と印字線分との関係を
図11に示す。この図に示すように、算出したXY面線分データには、レーザ光LBが出力される印字線分と、レーザ光LBが出力されない助走や繋ぎ線が含まれる。XY面線分データとレーザON/OFF信号との論理積を印字線分計算機TCで取ることで、仮想加工結果(詳細は後述)に対応するレーザ出射軌跡データを生成する。なお、前述の構成計算をDSPやFPGA等で行うことでリアルタイムに処理することができる。また、例えばオペレータを介する場合のように、リアルタイム性が要求されない場合には、PCへデータを渡して、アプリケーション上で計算することも可能である。
【0074】
また、軌跡データ生成部80Xは、印字パターンを印字完了するまでに要する印字時間を算出する。
(軌跡表示制御部80Y)
【0075】
軌跡表示制御部80Yは、加工条件設定部3Cで設定された加工パターンに基づいて展開情報生成部80Cで生成された第一軌跡FTと、軌跡データ生成部80Xで生成されたレーザ出射軌跡データに基づいて生成された第二軌跡STとを、表示部82に表示するよう表示制御をする。第二軌跡STは、実際のレーザ加工時にレーザ光LBが辿ると想定される軌跡である。
(仮想加工機能)
【0076】
このように、軌跡データ生成部80Xで生成された軌跡データに基づいて、軌跡表示制御部80Yが第二軌跡を表示部に表示することで、レーザ光LBが辿る第二軌跡STをユーザが表示部82上から確認できるようになる。この結果、実際に加工対象物に加工を行った上で、得られた加工結果に基づいて評価をしなくてもよくなる。言い換えると仮想的な加工を行って得られた加工結果のイメージを、表示部上で確認できるので、従来必要であった動作パラメータの設定作業と、テスト印字、印字結果を参照して再度動作パラメータを調整してテスト印字を行うという試行錯誤を行うことなく、ユーザはより簡便に仮想的な加工結果を画面で確認しながら、レーザ加工の加工パターンを調整することが可能となり、大幅な省力化と印字サンプルの浪費を生じない低コスト化、タクトタイム縮小が実現される。
【0077】
図12は、第一軌跡FT及び第二軌跡STを表示部82に表示する際のレーザ光軌跡の見せ方を示している。Qスイッチ19の周期と印字速度との積が、レーザスポット径より大きい場合には
図12Aに示すようにドット表示となり、レーザスポット径より小さければ、
図12Bに示すようなライン表示となる。レーザスポット径の取り方によって、ドット表示とライン表示とは切り替え可能である。第一軌跡FT及び第二軌跡STを拡大表示する際にのみドット表示となるようレーザスポット径を調節するようにしてもよい。
【0078】
ここで、レーザ加工装置100においては、ブロック毎に加工条件を変更できるよう印字ブロックという概念を用いている。例えば、文字列、二次元コード、ロゴというように複数のブロックが存在し、ブロック毎に印字パターンに応じて印字速度を変更する等、実際には、ブロック毎に加工条件を変更したいというニーズがある。このため、レーザ加工装置100は、印字ブロックの概念を用いて、加工条件を変更したい場合、ブロック番号毎に条件設定ができるようになっている。
【0079】
図13に示すレーザ加工条件設定プログラムのユーザインタフェース画面を参照して、印字ブロックの概念を説明する。ブロックには、文字列や、二次元コード、ロゴ等の種別がある。
図13は、ブロック番号0に文字列、ブロック番号1に2次元コード、ブロック番号2にロゴが配置されたGUIの表示例である。レーザ加工装置100は、このブロック単位に、レーザ出力、スキャンスピード等の動作パラメータを設定し、加工を行っている。
【0080】
また、軌跡表示制御部80Yは、第一軌跡FTと第二軌跡STを表示部82上で識別可能な態様で表示させるための識別表示機能を備えることもできる。識別表示機能の一例として、一方の軌跡を強調させる強調表示機能が挙げられる。具体的には、レーザ出射軌跡データと加工線分データとの差分を算出し、その差分に基づいて第二軌跡STの全部又は一部を強調表示する。例えば、第一軌跡FTと第二軌跡STの差分のみを強調する他、第二軌跡STと第一軌跡FTを、それぞれ異なる色や線種(太線、細線、実線、破線等)で表示させて、両者の違いを視覚的に把握するようにしてもよい。このような識別表示は、例えば軌跡表示制御部80Yに組み込まれた識別表示部75で行わせてもよいし(詳細は後述)、あるいは軌跡表示制御部80Yとは別に識別表示部を設けて、強調表示機能を実行させることもできる。レーザ出射軌跡データと加工線分データの差分とを区別して表示するための強調表示としては、ハイライト処理、例えばカラーで着色する他、グレースケールやグラデーション、影、ハッチング等のパターンを施す、太線表示や枠で囲む等の強調、点滅、グレーアウト等、他と区別可能な表示形態が適宜利用できる。
【0081】
さらにまた、軌跡表示制御部80Yは、ハイライト処理を行う基準となる、加工乱れ抽出部80W(詳細は後述)における偏差量等の基準値を所望の値に設定することができ、基準値を変更すると、変更後の基準値でもって強調表示を行った箇所をリアルタイムに表示部82上に更新する。
(識別表示部75)
【0082】
識別表示部75は、第一軌跡FTと第二軌跡STとの比較結果に基づいて、表示部82上に第二軌跡STの全部又は一部を強調表示するための部材である。強調表示方法にはバリエーションがあり、モードを切り替えることによって強調表示方法が選択できるようになっている。なお、強調表示方法は、一の方法に予め決められていてもよい。また、識別表示部75は、後述する比較部の一形態である加工乱れ抽出部80Wで抽出された加工乱れ箇所に応じて、軌跡データ生成部80Xで算出され、印字パターンを印字完了するまでに要する印字時間を表示部82上に表示できる。
【0083】
以下は、強調表示方法のバリエーションを示しているが、強調表示方法はこれらに限定されない。このうち、(1)〜(4)では、ハイライト表示によって強調しており、(5)では、選択箇所を拡大表示することによって強調する。また、(6)では、第一軌跡FTと第二軌跡STとを平行表示し、(7)では、第一軌跡FTと第二軌跡STとを重畳表示する。さらに、(8)では、第一軌跡FTと第二軌跡STとを切替表示する。
【0084】
(1)
図14Aに示すように、第二軌跡STについて、第一軌跡FTとの差分箇所を強調表示する。この図において、「K」及び「D」の縦線、並びに二次元コードの左端の縦線が例えば赤色で強調表示されており、ここが印字乱れ箇所であることが把握できるようになっている。
【0085】
(2)
図14Bに示すように、加工ブロック毎に第二軌跡STの全部を強調表示する。この図において、「Keyence」のブロック及び「Digital Scanning」のブロック、並びに左端の二次元コードの各々が例えば赤色の破線で囲われており、それらが強調表示された加工ブロックであることを把握できるようになっている。
【0086】
(3)
図14Cに示すように、加工ブロック毎に第二軌跡STの一部を強調表示する。この図において、「Keyence」のうち「K」の文字部分及び「Digital Scanning」の「D」の文字部分、並びに左端の二次元コードが例えば赤色の破線で囲われており、それらが強調表示された加工ブロックの一部であることを把握できるようになっている。第二軌跡STの一部を強調表示する際には、サブブロック分割部80Aによって分割されたサブブロック毎に強調表示する。
【0087】
(4)第二軌跡STについて、第一軌跡FTとの差分箇所を文字単位で強調表示する。前述の(1)と(3)とを組み合わせて、印字乱れ箇所を具体的に特定すると共に、その印字乱れ箇所のサブブロックも強調表示する。
【0088】
(5)
図15に示すように、加工ブロック選択部76(詳細は後述)で選択された加工ブロック全体又は選択された加工ブロックのうち強調表示された部分を拡大表示する。
図15Aは、拡大表示前の第一軌跡FTとの差分箇所が強調表示された第二軌跡STを示しており、
図15Bは、ハイライト表示から選択した箇所(
図15Aを参照。)が拡大表示されていることを示している。なお、軌跡表示制御部80Yが、印字乱れ箇所を自動的に検出して自動的に拡大表示するようにしてもよい。
【0089】
(6)加工線分データに基づいて生成された第一軌跡FTとレーザ出射軌跡データに基づいて生成された第二軌跡STとをそれぞれ別ウィンドウで同時に並べて表示部82上に表示する。また、
図16A及び
図16Bに示すように、動作パラメータ調整前のレーザ出射軌跡データに基づいて生成された第二軌跡STと動作パラメータ調整後のレーザ出射軌跡データに基づいて生成された第二軌跡STとをそれぞれ別ウィンドウで同時に並べて表示部82上に表示する。
【0090】
(7)加工線分データに基づいて生成された第一軌跡FTとレーザ出射軌跡データに基づいて生成された第二軌跡STとを重ねて表示部82上に表示するよう制御する。好ましくは、必要に応じて、差分を強調表示するようにする。また、
図16Cに示すように、動作パラメータ調整前のレーザ出射軌跡データに基づいて生成された第二軌跡STと動作パラメータ調整後のレーザ出射軌跡データに基づいて生成された第二軌跡STとを重ねて表示部82上に表示するよう制御する。
【0091】
(8)加工線分データに基づいて生成された第一軌跡FTとレーザ出射軌跡データに基づいて生成された第二軌跡STとを切り替えて表示部82上に表示する。
【0092】
さらにまた、軌跡表示制御部80Yは、印字品質を重視して動作パラメータを調整する第一モードと、印字速度(又は、印字時間、タクト)を重視して動作パラメータを調整する第二モードとを選択可能に表示部82上に表示する。
【0093】
図17Aは、品質重視の第一モードが選択された際のGUIの表示例である。第一モードでは、印字ブロック毎に、品質が最適化されるよう動作パラメータ調整部80Zで動作パラメータを調整し、調整後の第二軌跡STを表示部82上に表示する。したがって、ユーザは、第一モードを選択することで、自動的に、最適化された印字パターン及び設定が得られる。
【0094】
図17Bは、タクト重視の第二モードが選択された際のGUIの表示例である。
図17Aにおいて矢印の箇所は選択されたことを意味しており、第二モードでは、選択箇所を、動作パラメータ調整部80Zで動作パラメータを変化させて生成された第二軌跡STを軌跡データ生成部80Xで算出された印字時間と共に時系列に表示部82上に表示する。
図17Bにおいて矢印の箇所は選択されたことを意味しており、ユーザは、第二モードにおいて、印字ブロック毎に、所望の第二軌跡STを選択することによって動作パラメータを決定することができる。すなわち、ユーザは、第二モードを選択することで、選択的に、仮想印字結果と印字時間とから、所望する印字パターン及び設定が得られる。
(走査制御部80D)
【0095】
走査制御部80Dは、展開情報生成部80Cで生成された展開情報に基づいて、レーザ光発生部6、レーザ光走査部9、及び、シャッタ部71を制御する。
【0096】
走査制御部80Dは、運用時の通常の動作モードに加えて、仮想的な加工を行うための仮想加工モードに切り替え可能としている。
【0097】
走査制御部80Dは、仮想加工モードの際には、ワークWKがレーザ光LBによって照射されないようシャッタ部71のシャッタを閉じると共に、軌跡データ生成部80Xによってレーザ出射軌跡データが得られるようレーザ光発生部6及びレーザ光走査部9を制御する。
【0098】
第一軌跡FTと第二軌跡STとに基づいてなされた調整情報は、展開情報生成部80Cで更新されることによって展開情報に反映される。走査制御部80Dは、通常動作モードの際には、ワークWKがレーザ光LBによって照射されるようシャッタ部71のシャッタを開き、展開情報生成部80Cによって生成された展開情報に基づいて、レーザ光発生部6及びレーザ光走査部9を制御する。
(記憶部5A)
【0099】
記憶部5Aは、各種設定を保持するための部材である。このような記憶部材には半導体メモリやハードディスク等の記憶素子、記憶媒体が利用できる。例えば加工条件設定部3Cで設定されたレーザ加工設定条件を保持する。また、展開情報生成部80Cで生成された展開情報を記憶する。
【0100】
好ましくは、展開情報生成部80Cは、レーザ加工装置の運用前に、予め展開情報を生成して、この展開情報を記憶部5Aに記憶しておく。そして運用時には、記憶部5Aから展開情報を読み出すことで、一々展開情報部で展開情報を生成する必要がなく、処理の軽負荷化と高速化を図ることができる。
【0101】
より好ましくは、実際の運用前に行う仮想加工の際に、展開情報生成部80Cで生成された展開情報を、記憶部5Aに記憶しておく。走査制御部80Dは、運用時の通常の動作モードに加えて、仮想的な加工を行うための仮想加工モードに切り替え可能としている。そして、仮想加工モードでレーザ加工の様々な加工条件が決定された際に、この時点で得られた加工条件に従って展開情報生成部80Cは展開情報を生成し、これを記憶部5Aに保存しておく。
(動作パラメータ調整部80Z)
【0102】
動作パラメータ調整部80Zは、印字乱れ箇所に対応するレーザ出射軌跡データが印字乱れ箇所に対応する印字線分データに近づくようレーザ光走査部9の動作を規定する動作パラメータを調整する。動作パラメータ調整部80Zによって調整された動作パラメータは、展開情報生成部80Cにおいて展開情報に反映される。
【0103】
前述したように、ユーザは、品質重視の第一モードとタクト重視の第二モードとをGUIで選択することができる。動作パラメータ調整部80Zは、モードの選択に応じて、動作パラメータを調整する。
【0104】
第一モードが選択されている場合、動作パラメータ調整部80Zは、印字ブロック毎に、品質が最適化されるよう動作パラメータを調整する。動作パラメータ調整部80Zは、加工乱れ抽出部80W(詳細は後述)及び軌跡データ解析部80V(詳細は後述)による解析結果に基づいて、印字パターンが最適化される印字条件を決定する。
【0105】
第二モードが選択されている場合、動作パラメータ調整部80Zは、第一モードにおいて選択された印字ブロックに対して、加工乱れ抽出部80W及び軌跡データ解析部80Vによる解析結果に基づいて、タクト重視の動作パラメータと品質重視の動作パラメータとの間で、動作パラメータの値を変化させる。動作パラメータは、例えば、解析結果に応じてどのように変化させるかを定めた調整パラメータセットに基づいて、変化させるべき動作パラメータの選定及び値を変化させることができる。調整パラメータセットにおける動作パラメータの変化の刻み幅及び範囲は、動作パラメータの種別毎に予め定められており、好ましくは、動作パラメータの選定も含めてユーザによって設定できるようにする。
【0106】
動作パラメータ調整部80Zは、例えば、ユーザインタフェース画面上で、(1)品質最重視、(2)品質重視、(3)加工速度重視、(4)加工速度最重視、(5)修正しないというようなパラメータ候補をユーザが選択することで、それぞれのパラメータ候補に対応する調整パラメータセットを予め保存された記憶部5Aから適宜読み出し、選択された加工乱れ箇所又はこれを含む印字ブロックの動作パラメータに適用するようにする。
(動作パラメータ入力部3Z)
【0107】
動作パラメータ入力部3Zは、印字乱れ箇所に対応するレーザ出射軌跡データが、印字乱れ箇所に対応する印字線分データに近づくように、レーザ光走査部9が動作するための情報を入力するための部材である。例えば、レーザ光走査部9の助走長、待ち時間、縮退補正ON・OFF、レーザパワー等の動作パラメータを直接数値でユーザが入力部3を介して入力する。表1に示すように、助走長を調整すると、ドット間隔に影響を及ぼし、待ち時間を調整すると、ハネ又はつられの少なくとも一方に影響を及ぼし、縮退補正ON・OFFを調整すると、円弧縮退又は上下左右の対称性の少なくとも一方に影響を及ぼす。また、ライン速度が可変の場合は、エンコーダを用いたトリガ入力等によって、レーザ加工装置側でワークWKの位置を把握できる。
【表1】
【0108】
また、
図9の例では、レーザ加工条件設定装置180を専用のハードウエアで構成したが、これらの部材はソフトウエアでも実行できる。特に、
図8に示すように汎用のコンピュータにレーザ加工条件設定プログラムをインストールして、レーザ加工条件設定装置180として機能させることもできる。また、
図9の例では、レーザ加工条件設定装置180とレーザ加工装置100とを個別の機器としたが、これらを一体的に統合することもできる。例えば、レーザ加工装置に自体にレーザ加工条件設定機能を付加することもできる。
【0109】
さらに、
図8の例ではヘッド部150とコントローラ部1Aとが分離しており、通信ケーブルで両者が接続されているが、本発明はヘッド部とコントローラ部とを一体に構成したレーザ加工装置に適用することもできる。
(閾値入力部3Za)
【0110】
閾値入力部3Zaは、軌跡データ生成部80Xで生成されたレーザ出射軌跡データと、展開情報生成部80Cで生成された加工線分データとの差分が所定の閾値以下となるよう閾値を入力するための部材である。
【0111】
この閾値によって、加工乱れに相当する箇所であるか否かの判断が変わってくる。より具体的には、後述する加工乱れ抽出部80Wにおいて、表示部82に表示された第二軌跡STのうち、第一軌跡FTとの差分が所定の閾値を超える場合に、加工乱れ箇所として抽出する。
(加工乱れ指定部3Y)
【0112】
加工乱れ指定部3Yは、ユーザの操作に基づいて、表示部82に表示された第二軌跡STのうち、加工乱れに相当する箇所を加工乱れ箇所として指定するための部材である。加工乱れ抽出部80Wによって、加工乱れを視覚的に特定可能な、偏差マップ、加速度マップ、及び、文字列重心補助線が必要に応じて生成され、軌跡表示制御部80Yにおいて、これらが、表示部82上に表示されるよう制御される。したがって、ユーザは、表示部82上に表示された第二軌跡STの加工乱れ箇所を自身の判断に基づいて、或いは、加工乱れ抽出部80Wによる判断に基づいて、加工乱れ箇所を指定することができる。
(軌跡データ解析部80V)
【0113】
軌跡データ解析部80Vは、加工乱れ指定部3Yで指定された加工乱れ箇所に対応するレーザ出射軌跡データ及び加工線分データを用いて、加工乱れ抽出部80Wにおける加工乱れ箇所を機械的に特定するための、例えば、加工線分の始点加速度計測機能、加工線分の始点偏差計測機能、円弧検出比較機能、往復線分の始点加速度及び追従誤差検出機能、及び、加工ブロックの加工位置偏差検出機能によって、第二軌跡STの加工乱れに関する解析を行い、加工乱れ箇所における加工乱れの種別についての解析を行う。また、軌跡データ解析部80Vは、加工乱れ箇所に対応するレーザ出射軌跡データを、加工乱れ箇所に対応する加工線分データに近づけるための複数の異なる動作パラメータを算出する。
(誘導表示制御部80U)
【0114】
誘導表示制御部80Uは、軌跡データ解析部80Vの解析結果に基づいて、レーザ出射軌跡データを加工線分データに近付けるように表示部82に誘導表示の制御を行う。また、誘導表示制御部80Uは、軌跡データ解析部80Vによる解析結果に応じた加工乱れの種別を表示部82に表示するよう制御する。好ましくは、表示部82に表示された加工乱れを種別に応じてソートして一覧表示するよう制御する。例えば、軌跡データ解析部80Vが、第二軌跡STの端部におけるレーザ出射軌跡データと加工線分データとの差分からレーザ光LBで加工されたドット間の距離を演算し、該演算されたドット間距離が予め設定された所定の閾値を超える場合には、「つられ」としてエラー種別を特定した場合、誘導表示制御部80Uは、エラー種別として「つられ」を表示制御する。
(レーザ加工条件設定プログラム)
【0115】
次に、以上のようなレーザ加工データを設定する方法として、レーザ加工条件設定プログラムを用いて、加工条件設定部3Cから入力された文字情報等に基づいて加工パターンを生成する手順を、
図18〜
図24のユーザインタフェース画面に基づいて説明する。なお、これらのプログラムのユーザインタフェース画面の例において、各入力欄や各ボタン等の配置、形状、表示の仕方、サイズ、配色、模様等は適宜変更できることはいうまでもない。デザインの変更によってより見易く、評価や判断が容易な表示としたり、操作し易いレイアウトとすることもできる。例えば、詳細設定画面を別ウィンドウで表示させる、複数画面を同一表示画面内で表示する等、適宜変更できる。また、これらのプログラムのユーザインタフェース画面において、仮想的に設けられたボタン類や入力欄に対するON/OFF操作、数値や命令入力等の指定は、加工条件設定部3Cで行う。ここでは、プログラムを組み込んだコンピュータに接続された入力デバイスでもって、加工条件の設定を行う。本明細書において「押下する」とは、ボタン類に物理的に触れて操作する他、入力部によりクリック、或いは、選択して擬似的に押下することを含む。入力部等を構成する入出力デバイスはコンピュータと有線、若しくは、無線で接続され、或いは、コンピュータ等に固定されている。一般的な入力部としては、例えば、マウスやキーボード、スライドパッド、トラックポイント、タブレット、ジョイスティック、コンソール、ジョグダイヤル、デジタイザ、ライトペン、テンキー、タッチパッド、アキュポイント等の各種ポインティングデバイスが挙げられる。また、これらの入出力デバイスは、プログラムの操作のみに限られず、レーザ加工装置等のハードウエアの操作にも利用できる。さらに、インターフェース画面を表示する表示部82のディスプレイ自体にタッチスクリーンやタッチパネルを利用して、画面上をユーザが手で直接触れることにより入力や操作を可能としたり、又は、音声入力その他の既存の入力手段を利用、或いは、これらを併用することもできる。
【0116】
なお、このレーザ加工条件設定プログラムは、三次元レーザ加工データの編集が可能である。ただ、三次元データの編集が不得手なユーザを考慮し、平面上での設定のみ可能で、三次元上での編集ができない「2D編集モード」を用意し、三次元レーザ加工データの加工が可能な「3D編集モード」と切り替え可能としてもよい。このような複数の編集モードを備える場合は、現在の編集モードを示す編集モード表示欄270と、編集モードを切り替える編集モード切替ボタン272を備える。
図18の例では、レーザ加工条件設定プログラムの起動時は「2D編集モード」とし、画面右上に設けられた編集モード表示欄270に、現在の編集モードが「2D編集中」であることを表示させている。操作が比較的容易な二次元編集モードを起動時のデフォルト編集モードとして設定することにより、三次元レーザ加工データの編集が不得手なユーザであっても戸惑うことなく操作できる。また、起動時の編集モードはユーザが変更可能に構成することもでき、操作を習熟したユーザが編集モードを切り替えることなく三次元レーザ加工データの編集が可能となるよう設定することもできる。また、二次元でのレーザ加工が可能なレーザ加工装置に対しては、二次元のレーザ加工データのみを設定することも可能であることはいうまでもない。
【0117】
図18〜
図24は、レーザ加工条件設定プログラムのユーザインタフェース画面の一例を示しており、画面の左側にワークWK上に印字される加工パターンのイメージを表示する編集表示欄202、右側に具体的な加工条件として各種データを指定する印字パターン入力欄204を設けている。印字パターン入力欄204では、設定項目を選択するタブとして「基本設定」タブ204h、「形状設定」タブ204i、「詳細設定」タブ204jを切り替えることができる。
図18の例では「基本設定」タブ204hが選択されており、ここには加工種類指定欄204aと、文字データ指定欄204d、文字入力欄204b、詳細設定欄204cを設けている。加工種類指定欄204aは、加工パターンの種別として、文字列やシンボル、ロゴ、模様、図等のイメージを含めた印字パターン、若しくは加工機としての動作を行うかを指定する。
図18の例では、加工種類指定欄204aからラジオボタンで文字列、ロゴ、図、加工機動作の別を選択する。また文字データ指定欄204dは、文字データの種別を指定する。ここでは文字、バーコード、二次元コード、GS1データバー・CC(Composite Code)のいずれかをプルダウンメニューから選択する。さらに選択された文字データの種別に応じて、さらに詳細な種別を種別指定欄204qで選択する。例えば文字を選択した場合はフォントの種別、バーコードを選択した場合は、CODE39、ITF、2 of 5、NW7、JAN、Code 28等のバーコード種別、二次元コードを選択した場合は、QRコード(登録商標)、マイクロQRコード、DataMatrix等の二次元コード種別、GS1データバー・CCを選択した場合は、GS1 DataBar-14、GS1 DataBar-14 CC-A、GS1 DataBar Stacked、GS1 DataBar Stacked CC-A、GS1 DataBar Limited、GS1 DataBar Limited CC-A等のGS1データバーコード種別、又は、GS1データバーコンポジットコード種別を指定する。文字入力欄204bでは、印字したい文字情報を入力する。入力された文字は、文字データ指定欄204dで文字を選択した場合、そのまま文字列として印字される。一方、シンボルが指定された場合は、選択されたシンボルの種別に従って入力された文字列がエンコードされた加工パターンが生成される。加工パターンの生成は、加工条件設定部3Cでの設定に従い、制御部80が行っている。また、詳細設定欄204cは、タブを切り替えて「印字データ」タブ204e、「サイズ・位置」タブ204f、「印字条件」タブ204g等、印字条件の詳細を指定する。
【0118】
また、編集表示欄202には、印字エリアの一部を二次元状に表示させた設定平面が表示される。ここで、編集表示欄202で表示される印字エリアは、拡大縮小が可能であり、印字エリアを拡大表示させた場合は、編集表示欄202には印字エリアに対応する設定平面の一部が表示されることとなる。また、印字エリアを編集表示欄202で縮小表示させて、印字エリアの全体、すなわち、最大印字エリアを表示させることもできる。このように編集表示欄202には、最大加工エリアに対応する設定平面の少なくとも一部を表示可能としている。また、編集表示欄202に印字エリアを三次元状に表示させることもできる。ユーザは、この編集表示欄202に表示された設定平面上で、加工ブロック(この例では印字可能なので印字ブロック)を設定できる。なお、表示部上に表示された編集表示欄202での表示例は、印字エリアと1:1に対応している。
【0119】
図19の例では、文字データ指定欄204dでGS1データバー・CCが指定されており、種別指定欄204qでGS1 DataBar Limited CC-Aが指定されている。「印字データ」タブ204eでモジュール幅、モジュール微調整、印字線幅、リニアコードの高さ、セパレータの高さ、2Dモジュールの高さ等を数値で指定する。また、必要に応じてモード自動、白黒反転、パスワード等を指定できる。
【0120】
なお、加工種類指定欄204aから加工機動作を選択すると、加工種別がプルダウンメニューから選択できるようになり、定点、直線、破線、左回り円・楕円、右回り円・楕円、トリガON中定点等が選択できる。加工機動作では、加工パターンとして文字入力欄に代わって線分座標指定欄が設けられ、直線や円弧等の軌跡を座標で指定する。
(加工ブロック設定手段)
【0121】
以上のようにして、一つの加工ブロック、すなわち、印字ブロックに関する印字パターン情報を設定する。また、印字ブロックを複数設定することもできる。すなわち、加工領域において複数の印字ブロックを設定し、異なる印字条件で印字加工を行うことができる。印字ブロックは、一のワーク又は加工(印字)面に対して複数設定する他、加工領域内に存在する複数のワークに対して各々設定することもできる。
【0122】
印字ブロックの設定は、加工ブロック設定手段で行う。
図18の例では、加工ブロック設定手段の一形態として、印字パターン入力欄204の上欄にブロック番号選択欄が設けられる。ブロック番号選択欄にはブロック番号を表示する番号表示欄205aと、番号指定手段として、「>」ボタン、「>>」ボタン、「<」ボタン、「<<」ボタンが設けられる。「>」ボタンを押下すると、ブロック番号が1インクリメントされて、新たな印字ブロックの設定が可能となる。また、設定済みの印字ブロックの設定を変更する際も、同様に「>」ボタンを操作してブロック番号を選択し、該当する印字ブロックの設定を呼び出すことができる。また、「>>」ボタンを押下すると最終のブロック番号にジャンプする。さらに、「<」ボタンを押下するとブロック番号が1つ戻り、「<<」ボタンを押下すると先頭のブロック番号にジャンプする。さらに、ブロック番号選択欄の数値表示欄に直接数値を入力してブロック番号を指定することもできる。このようにして、ブロック番号選択欄で印字ブロックを選択し、各印字ブロックについて印字パターン情報を指定する。この例では、ブロック番号を0〜255まで設定可能としている。
【0123】
図19においては、ブロック番号000の印字ブロックとして、GS1データバーを設定している。ここでは、文字データ指定欄204dでGS1データバーを選択し、文字入力欄204bにエンコードする文字列を入力すると、入力された文字列と対応するシンボルが作成され、編集表示欄202にそのイメージが表示される。また、印字パターン入力欄204でシンボルの設定条件を変更すれば、これに応じて編集表示欄202に表示されるシンボルの表示イメージも変化する。
【0124】
また、必要に応じて「ヒューマン」ボタン、「区切り」ボタン、「更新文字挿入」ボタン等を設けることもできる。
図18の例では、文字入力欄204bの下部に、各種の機能を設けたフローティングバーを配置しており、このうちの一である「ヒューマン」ボタン204rをクリックすれば、設定済みの印字ブロックのシンボルに対応するHR文字列を取得することができる。その詳細については後述する。また、「区切り」ボタンは、コンポジットコードを設定する際に、複数種類のバーコードの区切り文字を入力するために使用される。「更新文字挿入」ボタンは、シリアル番号や日時情報のような更新文字を入力する際に使用される。
【0125】
図19に示すようにシンボルの入力が完了した状態で、対応するHR文字列を設定する。この例では、GS1データバーと対応するHR文字列を、GS1データバーとは別の印字ブロックとして設定する。先ず、
図20に示すように、ブロック番号選択欄でブロック番号を000から001に切り替え、新たな印字ブロックを設定する。ここでは番号指定手段で「>」ボタンを押下する、或いは、番号表示欄205aで直接数値を入力して、番号表示欄205aにおけるブロック番号の表示を「000」から「001」に切り替えると、新たな印字ブロックの設定が可能となる。ここでは、加工種類指定欄204aにおいてラジオボタンで文字列を選択する。そして、「ヒューマン」ボタン204rを押下すると、
図21のHR文字設定画面210が表示される。このHR文字設定画面210から、HR文字列を設定する。ここでHR文字列は、対応するシンボルを参照して入力することができる。
【0126】
図21の例では、HR文字列は、HR文字列と対応するGS1データバーを設定した印字ブロックのブロック番号を指定することで、自動的に取得できる。具体的には、HR文字設定画面210の中段に設けられた「参照ブロック番号」欄213で「0」を指定すると、参照ブロック番号「0」に設定されたGS1データバーに対応するHR文字列が、「印字サンプル」欄211に表示される。また、その下の「文字列」欄212には、対応するHR文字列参照文字列が表示される。ここでは、HR文字列参照文字列として「%H<0001>」が入力される。「%」は特殊文字を表し、「H」はヒューマンリーダブル文字列を表す。また、<0001>はブロック0番目の一次元コードを参照する意味である。例えば<0052>であれば、ブロック5番目の二次次元コードを参照することを示す。
【0127】
また、HR文字設定画面210の「GS1 DataBar&CCオプション」設定欄における「参照シンボル」欄214は、コンポジットコードの参照シンボルを指定する。ここでは「リニアコード」が指定される。
【0128】
このように、加工条件設定部3Cは、一次元コード又は二次元コードが設定された印字ブロックを参照して、これら一次元コード又は二次元コードに対応するヒューマンリーダブル文字列を取得し、このヒューマンリーダブル文字列を文字列の印字ブロックとして設定することができる。この方法であれば、入力の手間を省力化できると共に、入力ミスも回避できる。なお、以上の例では、加工条件設定部3Cを用いて、印字ブロックをブロック毎にそれぞれ設定しているが、加工条件設定部3Cによる設定方法は種々の方法が考えられ、例えばユーザがGUI上で一連の数字を入力すると、それに対応する一次元コード・二次元コード・ヒューマンリーダブル文字列が自動的に設定されるような態様であってもよい。
【0129】
このようにして「印字サンプル」欄211にHR文字列が表示された状態で、「追加」ボタン215を押下すると、
図20における文字入力欄に、取得されたHR文字列参照文字列(例えば「%H<0001>」)が表示される。また、印字パターン入力欄204で設定された条件に従って、HR文字列の印字サンプルが編集表示欄202に表示される(
図22)。ここでも前述したシンボルと同様、印字パターン入力欄204でHR文字列の設定条件を変更すれば、これに応じて編集表示欄202に表示されるHR文字列の表示イメージも変化する。さらに、編集表示欄202に表示されたシンボルやHR文字列のイメージを、マウス等のポインティングデバイスを用いたドラッグ操作によって印字位置や文字列全体の大きさ(縮尺)を変更することもできる。これにより、
図22に示すように、シンボルの下に適切な大きさのHR文字列を配置して印字することができる。
【0130】
次に、コンポジットコードを構成する二次元バーコードのHR文字列の印字パターンをブロック番号「002」の印字ブロックに設定する。ブロック番号に「002」を設定し、再び「ヒューマン」ボタン204rをクリックすると、
図23に示すように、HR文字列を設定するためのHR文字設定画面210が現れる。ここで、「参照ブロック番号」欄213を0に設定し、「参照シンボル」欄214にはプルダウンメニューから二次元コードを選択する。その結果、ブロック番号「000」に設定されたコンポジットコードを構成する二次元コードに対応するHR文字列が、「文字列」欄212に表示される。
【0131】
この状態で「追加」ボタン215を押下すると、
図24に示すように、取得されたHR文字列が文字入力欄204bに表示される。また、印字データの種類等を設定する印字パターン入力欄204に設定された文字データの種類、種別、線種、サイズ・位置、及び印字条件にしたがって、HR文字列を加えたGS1データバーのイメージが編集表示欄202に表示される。
【0132】
編集表示欄202に表示されたHR文字列のイメージも、前記と同様にマウス等のポインティングデバイスを用いたドラッグ操作によって印字位置や文字列全体の大きさ(縮尺)を変更することができる。このようにして、コンポジットコードを構成する一次元バーコードの下に対応するHR文字列を適切な大きさで配置し、また、二次元バーコードの上にも対応するHR文字列を適切な大きさで配置することができる。
(加工乱れの態様及び動作パラメータの調整)
【0133】
レーザ加工装置は、一般に、X軸及びY軸の二方向に対して走査可能なガルバノミラーを備えており、このガルバノミラーを動作させることにより、任意の印字パターンをワークWKに印字することができる。しかしながら、このガルバノミラーは慣性の影響で応答遅れが発生し、この応答遅れに起因して加工乱れが発生する。この加工乱れのうち、主たる態様は、
図25Aに示すような、(1)つられ、ハネ、(2)ドット間隔の不均等、及び、(3)円弧縮退の三種類ある。
(1)つられ、ハネ
【0134】
図25Aに示す加工乱れの種別のうち、(1)が「つられ」である。レーザ加工装置では、レーザ光LBの軌跡が角を描くように走査する場合、慣性の影響で、
図25Bの中央の図に示すように、内側に円弧を描くように走査されてしまう。レーザ光LBが出力されない助走や繋ぎ(
図11を参照)の走査でもこの現象が発生するため、ガルバノミラーが実際の始点となるところまで追随せずにレーザ光LBが出射される結果、「つられ」が形成される。また、印字線の終了時の助走が短いと、スキャナが本来の終了点まで到達せずに次の点に移動しようしているところで、レーザ光LBの出力をOFFにしていないため、ハネたように印字線が残る「ハネ」が形成される。
【0135】
「つられ」を解消するためには、動作パラメータのうち、レーザ光LBの走査を待機させるための待ち時間を設ける。
図11に示すように、待ち時間を設けることで、待機箇所までガルバノミラーが追随し、そこから初めて助走を入れて印字線を印字するよう制御することで「つられ」を発生させずに直線状に印字することができる。待ち時間を増加させることでより綺麗な直線が印字できるようになる。
【0136】
また、「ハネ」を解消するためには、動作パラメータのうち、助走長を延ばす。助走長を延ばすことで、スキャナが本来の終了点まで到達したところでレーザLBの出力をOFFにすることができ、次の点に移動しようしているところでレーザLBの出力がOFFになっているので、「ハネ」を発生させずに本来の終了点で綺麗に印字線を止めることができる。
(2)ドット間隔の不均等
【0137】
図25Aに示す加工乱れの種別のうち、(2)のドット間隔の不均等について説明する。ガルバノミラーの走査は、一定の速度に達するまでは加速し、一定の速度に達してから止まるまでは減速することになる。この速度の過渡期に、レーザ光LBが出射されると、ドット間隔の不均等が発生する。ドット間隔の不均等が発生した箇所では、加工線分の長さが変化したり、ドットの見え方が汚くなる。また、ドット間隔が詰まっていると、ワークWKが焦げたり、樹脂製のワークWKでは溶ける場合もある。
【0138】
このドット間隔の不均等を解消するためには、動作パラメータのうち助走長を長くする。助走長を長くすると、ガルバノミラーの走査が一定の速度に達してから、レーザ光LBが出射されるので、ドット間隔が均等になる。
(3)円弧縮退
【0139】
図25Aに示す加工乱れの種別のうち、(3)が「円弧縮退」である。レーザ加工装置では、
図25Bの左の図に示すように、レーザ光LBの軌跡が角を描くように走査する場合、慣性の影響で、
図25Bの中央の図に示すように、内側に円弧を描くように印字されてしまう。
【0140】
このような角を作ることができないという問題に対しては、
図25Bの右の図に示すように、印字線に対して助走を付加したガルバノミラーの走査を行うことにより、角を印字することができる。
【0141】
また、
図25Cの左の図に示すように、レーザ光LBの軌跡が円弧を描くように走査する場合、同様に、
図25Cの中央の図に示すように、指令円弧の内側に印字されてしまう。
【0142】
このような円弧が内側に縮退するという問題に対しては、印字する際のガルバノミラーの動作速度を遅くすることで、応答遅れによる影響を軽減することができる。しかしながら、
図25Cの円弧縮退については、印字パターンの曲率が大きくなると、動作速度に関係なく印字乱れが発生するという問題があった。
(加工乱れ抽出部80W)
【0143】
加工乱れ抽出部80Wは、第一軌跡FTと第二軌跡STとを比較する比較部の一形態であり、表示部82に表示された第二軌跡STのうち、第一軌跡FTとの比較から、加工乱れに相当する箇所を加工乱れ箇所として抽出する。抽出方法としては、
図26に示すように、加工乱れ箇所を視覚的に特定するための、例えば、偏差マップ、加速度マップ、及び、文字列重心補助線が挙げられる。また、他の抽出方法として、加工乱れ箇所を機械的に特定するための、例えば、加工線分の始点加速度計測機能、加工線分の始点偏差計測機能、円弧検出比較機能、往復線分の始点加速度及び追従誤差検出機能、及び、加工ブロックの加工位置偏差検出機能が挙げられる。
(偏差マップ)
【0144】
偏差マップは、レーザ光走査部9の走査角度検出部72で得られたX・Y軸スキャナ14a、14bの偏差信号値と、レーザ光検出部70で得られたレーザON/OFF信号との論理積をX・Y平面上に展開したものである。軌跡表示制御部80Yが、表示部82上に、偏差量に応じて色分けし、仮想加工結果である第二軌跡STと重ね合わせて表示することで、視覚的に加工領域でリファレンスである第一軌跡FTと第二軌跡STとの位置誤差が大きい箇所を把握し、入力部3にて動作パラメータを調整することができる。
【0145】
図27は、偏差マップの表示例であり、この図において、色をハッチングで示している。この表示例では、偏差量が20%以上の箇所を赤色、偏差量が10%以上20%未満の箇所を黄色、偏差量が10%未満の箇所を緑色で示している。
【0146】
また、
図28は、偏差マップの他の表示例である。この図において、正方形のブロックが8×8に配列して形成される大枠の正方形のうち、四隅に位置する各3個の太線のブロックがGUI上では例えば赤色の囲み枠で表示され、それより中心側に位置する3個の破線のブロックがGUI上では例えば黄色の太線で表示される。例えば、赤色の囲み枠で表示されたブロックは偏差量が大きい印字ブロック、黄色の囲み枠で表示されたブロックは偏差量が中間の印字ブロックというように、偏差量に応じて、ブロック単位や線分単位で、印字データや仮想印字結果を色や記号、数字等を使い、分かり易く表示することができる。
(加速度マップ)
【0147】
加速度マップは、レーザ光走査部9の走査角度検出部72で得られたX・Y軸スキャナ14a、14bのポジション信号を二階微分することにより、加速度信号を生成し、生成した加速度信号と、レーザ光検出部70で得られたレーザON/OFF信号との論理積をX・Y平面上に展開したものである。軌跡表示制御部80Yが、表示部82上に、加速度の大きさに応じて色分けし、第二軌跡STと重ね合わせて表示することで、視覚的に加工領域で加減速が大きい箇所を把握し、入力部3にて動作パラメータの調整を行うことができる。
【0148】
図29Aは、加速度マップのライン表示の例であり、
図29Bは、該加速度マップを拡大してなるドット表示の例であり、
図29Cは、
図29Bに示すドットと加速度との関係を示す図である。
図29B及び
図29Cに示すように、加速度が大きい(速度変化が大きい)箇所では、レーザドット間隔が一定でなくなる。このため、加減速が大きい箇所は、加工線分の長さが変化したり、ドットの見え方が汚くなるため、加工乱れ箇所として抽出できる。
【0149】
図29Cに示すように、上限基準値を設けて、上限基準値を超えた箇所を色分け表示する。また、好ましくは、下限基準値を設けて、下限基準値を下回る箇所を色分け表示する。このようにして加工乱れ箇所を視覚的に抽出し、入力部3にて動作パラメータを調整することができる。
(文字列重心補助線)
【0150】
文字列重心補助線は、仮想加工結果から得られる文字や記号の重心を結ぶことで得られる補助線である。これにより、加工品位を判り易く表示することができる。文字や記号列等の印字パターンを加工する際、加工速度が速い場合や印字パターンのサイズが小さい場合には、様々な要因(例えば、円弧縮退)により、印字パターンの構成要素の位置誤差が大きくなる。
【0151】
図30Aは、リファレンスである第一軌跡FTの表示例であり、
図30Bは、仮想加工結果である該第一軌跡FTに対応する第二軌跡STにおいて、文字列重心補助線、及び、下揃え補助線の表示例である。このように、文字列重心補助線、及び/又は、下揃え補助線を表示することで、構成要素の位置誤差が大きい箇所を把握し、入力部3にて加工速度や待ち時間等の動作パラメータを調整することができる。
(加工線分の始点加速度計測機能)
【0152】
加工線分の始点加速度計測機能は、各線分の加工開始点における加工線分の加速度データを生成し、加工位置誤差を把握可能とするための機能である。線分の加工開始点は、加減速を伴い、加工線分長がリファレンスデータより変化し易い。
【0153】
このため、この機能における計測では、線分の加工開始点における、レーザ光走査部9の走査角度検出部72で得られたX・Y軸スキャナ14a、14bのポジション信号を二階微分して、加工線分の加速度データを生成し、この加速度データとレーザON/OFF信号との論理積を取り、加工領域での加速度データを得る。加工領域での加速度が大きい箇所は、加工線分長が異なるため、加工位置誤差が大きく、レーザドット間隔も一定にならないことを示す。
【0154】
図31は、加工線分の始点加速度計測機能についての説明図である。この図において、加工線分が、番号の箇所を始点として矢印の方向に番号順に印字される。線分の加工開始点に当たる番号を付した部分において加速度データを生成する。これにより、それぞれの始点位置における加速度の多寡が分かるので、加工位置誤差を把握することができる。
(加工線分の始点偏差計測機能)
【0155】
加工線分の始点偏差計測機能は、各線分の加工開始点における加工線分の偏差データを生成し、ガルバノスキャナの応答の加工位置特性(加工位置での応答特性)を把握可能とするための機能である。線分の加工開始点は、繋ぎ線から助走への切り換えのため、レーザ光走査部9の応答遅れが発生し、湾曲した加工痕跡を残し易い。
【0156】
このため、この機能における計測では、線分の加工開始点における、レーザ光走査部9の走査角度検出部72で得られたX・Y軸スキャナ14a、14bのポジション信号とリファレンスデータとから偏差データを算出する。偏差データは、スキャナ駆動回路52で生成する偏差信号を流用してもよい。この偏差データとレーザON/OFF信号との論理積を取り、加工領域での偏差データを得る。線分の始点での偏差量が大きい箇所は、ガルバノスキャナの応答遅れにより、誤った加工が行われることを示す。
【0157】
図32は、加工線分の始点偏差計測機能についての説明図である。この図において、線分の加工開始点に当たる番号を付した部分において偏差データを生成する。これにより、それぞれの始点位置における偏差の多寡が分かるので、ガルバノスキャナの応答の加工位置特性を把握することができる。
(円弧検出比較機能)
【0158】
円弧検出比較機能は、円弧状加工箇所を検出し、リファレンスデータと仮想加工結果との偏差量又は円弧径の差を比較して、円弧の加工品位を把握可能とするための機能である。円弧を加工する場合、加工速度が速くなる程、また、円弧の径が小さくなる程、レーザ光走査部9の応答遅れにより、加工結果の円弧径が小さくなるため、加工品位が悪くなる。
【0159】
このため、この機能における計測では、リファレンスデータから円弧状加工箇所を検出し、リファレンスデータと仮想加工結果とを円弧状加工箇所において比較する。比較は、レーザ光走査部9の走査角度検出部72で得られたX・Y軸スキャナ14a、14bのポジション信号とリファレンスデータとの偏差量、又は、ポジション信号から算出した円弧径とリファレンスデータから算出した円弧径との差を求めることによって行う。このように算出した偏差量又は円弧径の差が大きい箇所は、円弧の加工品位が悪いことを示す。
【0160】
図33は、円弧検出比較機能について説明するための、
図33Aは、第一軌跡の表示例であり、
図33Bは、第二軌跡の表示例である。
図33Aにおけるハッチングされた箇所が、第一軌跡FTにおいて検出された円弧状加工箇所であり、
図33Bにおけるハッチングされた箇所が、該円弧状加工箇所と対応する第二軌跡STの円弧状加工箇所である。第一軌跡FTと第二軌跡STとから円弧状加工箇所における偏差量又は円弧径の差を算出する。この偏差量又は円弧径の差を評価することで円弧の加工品位を把握することができる。
(往復線分の始点加速度及び追従誤差検出機能)
【0161】
往復線分の始点加速度及び追従誤差検出機能は、隣り合う線分において、各線分の加工開始点における加工線分の加速度データを生成し、線分加工中に、該加速度データが規定値以下であるポイントで、偏差量を測定し、レーザ光走査部9の駆動速度から遅延時間を算出することによって、加工品位及び追従誤差を把握するための機能である。
【0162】
複数の平行な線分を加工する際、加工時間を短縮するため、
図34Aに示すように、レーザ光走査部9を往復動作させて加工する手法を使う。このレーザ光走査部9による往復動作によって加減速を繰り返すため、始点においては、加速度の変化が大きくドット詰まりが発生し易い。また、線分を往復で加工することで、隣り合う加工線分間でレーザ光走査部9の追従誤差による偏差が2倍になるため、隣り合う線分の始点及び終点の位置が一致せず、不揃いに加工される。
【0163】
このため、この機能における計測では、線分の加工開始点における、レーザ光走査部9の走査角度検出部72で得られたX・Y軸スキャナ14a、14bのポジション信号を二階微分して、加工線分の加速度データを生成し、この加速度データとレーザON/OFF信号との論理積を取り、加工領域での加速度データを得る。そして、線分加工中に前記加速度データが規定値以下であるポイントで、偏差量を測定し、レーザ光走査部9の駆動速度から遅延時間を算出する。隣り合う線分において、加工開始点の加速度が大きい程、加工品位が悪いことを示す。また、算出した遅延時間分、リファレンスの出力タイミングを早めることで、
図34Bに示す追従誤差の影響を抑制できる。
(加工ブロックの加工位置偏差検出機能)
【0164】
加工ブロックの加工位置偏差検出機能は、仮想加工結果から印字ブロックの位置を検出し、リファレンスデータと比較することで、印字ブロックの位置誤差量を算出し、印字ブロックの配置のバランスを把握可能とするための機能である。
【0165】
加工要素を高速に加工する要求がある場合、また、加工要素のサイズが小さく加減速回数が多い場合、さらにまた、レーザ光走査部9の応答遅れを小さくするのに十分な待ち時間を確保することができない場合がある。これらの場合、
図35に示すように、仮想加工結果である第二軌跡STから印字ブロックの位置を検出し、リファレンスデータである第一軌跡FTと比較することで、印字ブロックの位置誤差量を算出する。
【0166】
印字ブロック位置は、第二軌跡FTから始点、又は、重心を求め、これと第一軌跡FTとの差を求める。印字ブロック位置の位置誤差量が大きい程、印字ブロックの配置がアンバランスであることを示す。位置誤差量分だけ、リファレンスデータの印字ブロック位置を調整することができる。
(動作パラメータの自動調整)
【0167】
動作パラメータ調整部80Zは、仮想加工結果である第二軌跡STに基づいて、動作パラメータの調整内容が一意的に求まる場合、動作パラメータを自動調整することによって加工乱れを補正する。以下に例示する加工乱れについては、動作パラメータの調整内容が一意的に求まる。
(加工開始部分のドットの詰まり)
【0168】
加工速度が安定する前にレーザ光LBを出力することにより、「加工開始部分のドットの詰まり」が発生する。ガルバノスキャナの加速度が微小になるポイントを検出してから、レーザを出力することで加工を開始できるよう、動作パラメータのうち、助走長や助走速度、レーザON/OFFタイミングを自動調整する。具体的には、加工乱れ抽出部80Wにおける「加工線分の始点加速度計測機能」により求まる始点加速度が規定値以下になるよう、前記調整を行う。
(加工開始部分のつられ)
【0169】
線分加工開始点で、ガルバノスキャナの応答遅れにより、ガルバノスキャナが線分加工に移行する前に、レーザ光LBを出力することにより、加工線分の先端が湾曲したり鍵状になる「加工開始部分のつられ」が発生する。線分加工動作の開始点の直線性又は偏差量を検出し、開始点の加工線分が直線または、開始点の偏差量が基準値を下回る状態でレーザを出力するよう、動作パラメータのうち、待ち時間や助走長、レーザON/OFFタイミングを自動調整する。具体的には、加工乱れ抽出部80Wにおける「加工線分の始点偏差計測機能」により求まる始点偏差が規定値以下になるよう、前記調整を行う。
(円弧加工部分の縮退)
【0170】
ガルバノスキャナの応答遅れにより、円弧径が小さくなる「円弧加工線分」(縮退)が発生する。円弧の径をポジション信号より算出して、リファレンスデータである第一軌跡FTの径との差分が基準値を下回るよう、動作パラメータのうち、加工速度を調整する。具体的には、加工乱れ抽出部80Wにおける「円弧検出比較機能」により求まる円弧径差が規定値以下になるよう、前記調整を行う。
(往復線分加工の始点及び終点の位置ズレ)
【0171】
一次元、二次元のバーコード加工等で使われる往復の線分加工で、ガルバノスキャナの加速が間に合わないことにより、また加工時の追従誤差により、加工線分の始点と終点の位置が揃わない「往復線分加工の始点及び終点の位置ズレ」が発生する。ガルバノスキャナが等速度になることを検出するため、加速度が微小になるポイントを検出してからレーザ光LBを出力するよう、動作パラメータのうち、助走長やレーザON/OFFタイミングを自動調整する。
【0172】
追従誤差の影響を調整するため、リファレンスデータに対するポジション信号の遅れ時間を計測し、計測した時間分のリファレンスデータの出力タイミングを早める。具体的には、加工乱れ抽出部80Wにおける「往復線分の始点加速度及び追従誤差検出機能」により求まる追従誤差をリファレンスデータに反映させ、始点加速度が規定値以下になるよう、前記調整を行う。
(印字ブロックの加工位置ズレ)
【0173】
加工要素を高速に印字する要求がある場合、また、加工要素のサイズが小さく加減速回数が多い場合、ガルバノスキャナの応答遅れを小さくするのに十分な待ち時間を確保することができない場合がある。この場合、仮想加工結果から印字ブロックの位置を検出し、リファレンスデータを比較することで、位置ズレ量を算出する。算出した位置ズレ量を、リファレンスデータに加えることにより、印字ブロックの位置をリファレンスデータに近づけ、加工結果の品質を上げる。具体的には、加工乱れ抽出部80Wにおける「加工ブロックの加工位置偏差検出機能」により求まるブロック位置の偏差をリファレンスデータに反映する。
(動作パラメータの半自動調整)
【0174】
ユーザインタフェース上において、ユーザが、加工乱れ位置にマウスカーソルを置くと、
図36に示すように、それらを調整できるパラメータ候補がポップアップ表示される。マウスカーソルを使い、パラメータ値をアップ、ダウンすると、即座にガルバノスキャナが動作し、動作パラメータ値を指定した値に変更した状態で、加工乱れ箇所のスキャンニングを行い、そのスキャンニング結果が、仮想加工結果として表示される。
【0175】
この場合、パラメータ候補のポップアップ表示の代わりに、マウスホイール等のポインティングデバイスの機能を使用してもよい。例えば、マウスホイールの回転方向と回転量に応じて、パラメータを変更して、加工乱れ箇所のスキャンニングを行い、そのスキャンニング結果を表示させる手法がある。また、パラメータ候補をポップアップさせる代わりに、加工乱れに関係があるパラメータを特定の値や割合だけ変更したパラメータ候補値を生成し、これに従い、ガルバノスキャナを動作させ、幾つかの仮想加工結果の候補を得る方法もある。得られた仮想加工結果の候補は、一覧で表示され、ユーザが最適なものを選択してもよい。この際、仮想加工結果を選ぶ指標として、画面表示された仮想加工結果の候補画像の他に、加工時間を表示する機能を設けることができる。ユーザは、加工時間或いは加工品質のトレードオフから、加工対象に適切なパラメータを選ぶことができる。また、仮想加工結果を選ぶ指標として、加工状況を数値化したものや、A、B、Cのようにランク分けしたものを表示する方法もある。
【0176】
仮想加工結果を数値化するためには、幾つかの評価関数を用いる。この場合、評価関数には、ポジション信号、偏差信号、レーザON/OFF信号等を入力し、評価結果を出力する。例えば、ポジション信号とレーザON/OFF信号を評価入力として、二階微分をしたポジション信号とレーザON/OFF信号の論理積を取ることで、加工期間における加工速度の変化を算出することができる。
【0177】
この評価出力が小さくなるよう、助走長や加工待ち時間を調整することで、加工開始部分の位置ズレや、加工ドット間隔を一定にすることができる。また、偏差信号とレーザON/OFF信号を評価入力として、この2信号の論理積を取ることで、加工期間における加工位置ズレ量を算出することができる。この評価出力が小さくなるよう、加工待ち時間や加工速度を調整することで、加工位置のズレや縮退量を調整することができる。
(仮想加工による動作パラメータの調整手順)
【0178】
本実施の形態における仮想加工による動作パラメータの調整手順を、
図37のフローチャートに基づいて、
図40、
図45、
図46のフローチャートを適宜参照しながら説明する。先ず、
図37に示すように、ステップST1では、ユーザが、加工条件設定部3Cにおいて、
図38に示すGUI上で、例えば印字文字を設定する。
図38Aは、文字列を印字する場合のGUIの一例であるが、印字対象は、文字列だけでなく、ロゴ(図形)やバーコード、二次元コードであってもよい。
図38Aにおいて、文字列は、フォントの項目において字体が変更可能であり、単線や太線、wobble、サイズ等の設定も可能である。
図38Bは、XY平面或いは三次元形状設定のボタンで印字面の形状のレイアウトのボタンが設けられている。ユーザは、このボタンを押下することで、印字面形状のレイアウト設定が可能となり、
図38Bの一例では、XY平面上で、印字文字をどのように配置するかを設定できる。
【0179】
ステップST2では、ユーザが、加工条件設定部3Cにおいて、レーザパワーやスキャンスピード等の加工条件を設定する。
図38に示すGUI上で、右端の印字条件ボタンが押下されると、
図39に示すような印字条件を設定可能なGUIが表示される。ユーザは、このGUI上で、レーザパワーやスキャンスピード等の印字条件を設定する。
【0180】
ステップST3では、展開情報生成部80Cが、ユーザが加工条件設定部3Cで設定された印字パターン及び加工条件に基づいて、レーザ光走査部9でもってレーザ光LBが辿るべき軌跡を規定する加工線分データ、及び、レーザ光LBをON又はOFFに制御するための制御データを含む展開情報を生成する。そして、走査制御部80Dが、ワークWKがレーザ光LBによって照射されないようシャッタ部71のシャッタを閉じると共に、軌跡データ生成部80Xによってレーザ出射軌跡データが得られるようレーザ光発生部6及びレーザ光走査部9を制御して仮想加工を実行する。次いで、軌跡データ生成部80Xが、レーザ光検出部70からのレーザ出力タイミングと走査角度検出部72からの角度信号とに基づいて、線分データ計算機LCと印字線分計算機TCとによりレーザ出射軌跡データを生成する。
【0181】
ステップST4では、加工乱れ抽出部80Wが、加工条件設定部3Cで設定された加工パターンに基づいて展開情報生成部80Cで生成された展開情報と、ステップST3で得られたレーザ出射軌跡データとに基づいて、加工乱れ箇所を抽出し、軌跡表示制御部80Yの識別表示部75が該加工乱れ箇所を表示部82上で強調表示する。加工乱れ箇所は、閾値入力部76において入力された閾値を超える全てについてハイライト表示をしてもよいし、差分の大きい上位数個についてハイライト表示をしてもよい。強調表示は、識別表示部75の項目で説明したように、ハイライト表示に限られず様々な方法があるので、適宜好適な方法を採用するようにしてもよい。
【0182】
例えば、
図41Aに示すように、ユーザインタフェース画面上で、印字文字の加工乱れ箇所に符合及びマークが付されることで、加工乱れ箇所が強調表示される。
【0183】
ステップST5では、ユーザが、ステップST4において強調表示された加工乱れ箇所の修正の要否を判断する。修正の必要があればステップST6の工程を実行する。修正の必要がなければ、ステップST7に進み、加工条件が決定する。
【0184】
ステップST6では、ユーザが選択する加工乱れ箇所でどのエラー種別の加工乱れが発生しているかを解析し、動作パラメータの調整を行う。この手順については、
図40のフローチャートを参照して詳述する。
図40に示すように、ステップST61では、ユーザが、ステップST4において強調表示された加工乱れ箇所のうち、修正したい箇所を選択する。加工乱れ指定部3Yは、ユーザによって選択された箇所をユーザが修正したい加工乱れ箇所として指定する。
【0185】
例えば、
図41Aに示すように、ユーザインタフェース画面上で、印字文字の加工乱れ箇所に付された符合と、「エラー箇所1」、「エラー箇所2」・・・というように、修正箇所選択の画面上で付された符合とが一致するよう対応付けられており、「エラー箇所1」の修正箇所選択ボタンを押下すると、「エラー箇所1」に対応するパラメータ候補が表示される。
【0186】
修正箇所選択ボタンを押下する前は、「修正しない」がデフォルトで設定されており、パラメータ候補を選択すると、加工乱れ指定部3Yは、その「エラー箇所」を、ユーザが修正したい加工乱れ箇所として指定することになる。
【0187】
ステップST62では、軌跡データ解析部80Vが、ユーザが選択する加工乱れ箇所でどのエラー種別の加工乱れが発生しているかを解析し、エラー種別として適合する可能性のあるエラー種別を特定する。前述したように、例えば、エラー種別として、(1)つられ、ハネ、(2)ドット間隔の不均等、及び、(3)円弧縮退というように、エラー種別を特定する(「加工乱れの態様及び動作パラメータの調整」の項目を参照)。軌跡データ解析部80Vは、例えば、第二軌跡STの端部におけるレーザ出射軌跡データと加工線分データとの差分からレーザ光LBで加工されたドット間の距離を演算し、該演算されたドット間距離が予め設定された所定の閾値を超える場合には、エラー種別を「つられ」と特定する。
【0188】
ステップST63では、誘導表示制御部80Uが、軌跡データ解析部80Vによる解析結果に応じた加工乱れの種別を表示部82に表示するよう制御し、表示部82が、該加工乱れの種別を表示する。ステップST62において、軌跡データ解析部80Vが、例えば、エラー種別を「つられ」と特定した場合、誘導表示制御部80Uが、表示部82上に、エラー種別が「つられ」と表示されるよう制御する。
【0189】
例えば、
図41Aに示すように、ユーザインタフェース画面上で、「エラー箇所1」、「エラー箇所2」・・・と設けられた項目の向かって右隣の欄に、誘導表示制御部80Uによって、エラー種別が表示される。この図において、「エラー箇所1」の向かって右隣の欄には「つられ」と表示されており、軌跡データ解析部80Vは、「エラー箇所1」のエラー種別を「つられ」と特定し、誘導表示制御部80Uが、表示部82上にそれを表示したことになる。
【0190】
ステップST64では、ステップST62によって特定され、ステップST63によって、表示部82上に表示されたエラー種別に適合するパラメータ候補を選択し(「動作パラメータの半自動調整」の項目を参照)、或いは、パラメータ候補を自動で選択する(「動作パラメータの自動調整」の項目を参照)。例えば、デフォルトでは、品質重視の第一モードが最初に表示部82上に表示される仕様にしておき、品質最重視のパラメータ候補が自動で適用されるようにしてもよい。
【0191】
図41Aに示すユーザインタフェース画面上において、修正箇所選択ボタンを押下すると、例えば、
図42に示すような新たなユーザインタフェース画面が表示され、該画面上で、1つのエラーに対して、エラーの修正レベルが4つの段階で反映されたパラメータ候補が表示される。ここで、
図42に示すユーザインタフェース画面では、各パラメータ候補の向かって右隣に印字時間が表示されている。これは、動作パラメータ調整部80Zが、例えば、ユーザインタフェース画面上で、それぞれのパラメータ候補に対応する調整パラメータセットを予め保存された記憶部5Aから読み出し、選択された加工乱れ箇所の動作パラメータで仮想加工を実行し、加工時間を計測して表示している。この例では、ユーザは、ラジオボタンにチェックを入れると、そのパラメータ候補を選択したことになる。
【0192】
ステップST65では、誘導表示制御部80Uが、表示部82上に、エラー種別に対応する誘導表示を行う。例えば、
図41Aに示すユーザインタフェース画面上において、「完了」ボタンを押下すると、
図41Bに示すユーザインタフェース画面が表示され、例えば、「つられを消すために待ち時間を増やします。よろしいですか?」というエラー種別に対応する動作パラメータを調整する旨の誘導表示(確認表示)がされる。ここで「OK」ボタンを押下すると、調整後の動作パラメータで仮想加工が開始する。
【0193】
図43は、誘導表示制御部80Uが表示部82上において行う誘導表示の他の実施例を示している。この実施例では、
図43Aに示すユーザインタフェース画面上の点線枠内の「K」や「D」、二次元コードが、加工乱れが発生している箇所であり、このエラー種別に対して、「ブロックの書き出し部分の偏差が増えています。待ち時間を増やしますが宜しいですか?」の誘導表示(確認表示)がされている。
【0194】
次に、ステップST66では、動作パラメータ調整部80Zが、前述の手順を経て選択したパラメータ候補に対応する調整パラメータセットを動作パラメータに反映させる。
【0195】
ステップST66を実行後、ステップST3に戻り、再度、ステップST3からステップST5までを実行する。ステップST5において、加工乱れ箇所の修正の必要があればステップST6における動作パラメータの調整を実行し、修正の必要がなければ、動作パラメータが決定する。
【0196】
ユーザは、修正したい複数の加工乱れ箇所の全てに対して、加工乱れ箇所毎に動作パラメータを決定していく。したがって、動作パラメータを修正したい加工乱れ箇所が他にもある場合、ステップST61において、他の加工乱れ箇所を指定し、前述の工程を順次実行することで、その加工乱れ箇所における動作パラメータを決定する。その際、加工乱れ箇所毎に、決定した動作パラメータに対しては、その動作パラメータで仮想加工を実行し、例えば
図44に示すように、加工時間を計測して表示する。なお、例えば、ユーザによって複数の加工乱れ箇所が指定され、その各々に対してエラー種別が選択された後に、複数の加工乱れ箇所に対して仮想加工を順次実行するようにしてもよい。
【0197】
加工乱れ箇所について新たな修正の必要がなければ、走査制御部80Dが、ワークWKがレーザ光LBによって照射されるようシャッタ部71のシャッタを開き、決定した加工条件で展開情報生成部80Cによって生成された展開情報に基づいて、レーザ光発生部6及びレーザ光走査部9を制御する。これにより、レーザマーキングが実際に行われ、レーザマーキングの完了によって実加工が終了する。
(動作パラメータの半自動調整の手順)
【0198】
ユーザは、自動調整で満足する結果が得られない場合、或いは、高度な調整を行いたい場合、半自動調整へ移行することができる。この半自動調整では、動作パラメータ調整部80Zによる動作パラメータの調整において、表示部82上に表示されたエラー種別に対応するパラメータ候補をユーザが手動で選択し、仮想加工を実行し、仮想加工結果に基づいて、選択したパラメータ候補の適否をユーザが判断する。この手順について、
図45のフローチャートに基づいて詳細に説明する。
【0199】
先ず、ステップST101では、誘導表示制御部80Uが、表示部82上に、
図44に示すユーザインタフェース画面を表示する。ユーザが、修正箇所選択ボタンを押下すると、例えば、1つのエラーに対して、エラーの修正レベルが4つの段階で反映されたパラメータ候補が表示される。ユーザは、パラメータ候補が幾つかある中で、パラメータ候補1を選択し、「仮想印字」ボタンを押下することで、レーザ加工装置100が、パラメータ候補1の加工条件で仮想加工する。
【0200】
ステップST102では、誘導表示制御部80Uが、仮想加工結果に基づいて、加工時間を「ブロック印字時間」の欄に表示すると共に、他の印字ブロックにおける印字時間との総和を「全体の印字時間」の欄に表示する。また、軌跡表示制御部80Yが、仮想加工結果である第二軌跡STを表示部82上に表示する。
【0201】
ステップST103では、ユーザが、表示結果を確認して、パラメータ候補1の適否を判断する。ユーザは、パラメータ候補1が適すると判断した場合、現在の箇所の動作パラメータの調整を終了して、次の箇所での調整に移行する(ステップST111)。全ての調整が終了した場合、レーザ加工装置100にて実際のレーザマーキングを実行する。
【0202】
ユーザは、パラメータ候補1が適さないと判断した場合、ステップST104の工程に進み、ステップST101〜ステップST103と同様の手順を実行することで、パラメータ候補2を試すことができる。また、ユーザは、ステップST106において、パラメータ候補2の適否を判断する。
【0203】
また、ユーザは、同様に、パラメータ候補2が適さないと判断した場合、パラメータ候補3を試し、ステップST109において、パラメータ候補3の適否を判断する。
【0204】
このようにして、ユーザは、パラメータ候補の適否を判断し、所望するパラメータ候補を選択することが可能であり、他の加工乱れ箇所についても同様に選択することができる。そして、ユーザは、半自動調整によって適するパラメータ候補が得られなかった場合、ステップST110に進み、手動調整を実行する。この手動調整では、より高度な調整を行うことができる。
(変形例2)
【0205】
前述の手順では、ユーザが、適すると判断できるパラメータ候補が得られるまで、異なるパラメータ候補で仮想加工するという手順を繰り返しているが、
図46に示すように、先ず、異なるパラメータ候補で仮想加工し(ステップST201〜ステップST203)、得られた複数の仮想加工結果を一度に画面表示し(ステップST204)、得られた複数の仮想加工結果から、適するパラメータ候補を選択するようにしてもよい(ステップST205)。
【0206】
ユーザは、適するパラメータ候補が得られない場合、手動調整に切り替えることができる(ステップST206)。適するパラメータ候補が得られた場合、次の箇所での調整に移行し(ステップST207)、レーザ加工装置100にて実際のレーザマーキングを実行する。
【0207】
以上説明したように、本実施形態によれば、仮想加工機能によりテスト加工を実際に行わずとも加工結果を取得して動作パラメータの調整作業を簡素化したレーザ加工装置、レーザ加工装置の操作方法、レーザ加工装置の操作プログラム、コンピュータで読み取り可能な記録媒体及び記録した機器を提供することができる。特に、本実施形態に係るレーザ加工装置100は、ユーザが指定した加工乱れ箇所の解析結果に基づいて、軌跡データを加工線分データに近づけるための誘導表示が表示部に表示されるので、ユーザのより細かなニーズを加工乱れ箇所の調整に反映させることができる。