(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
建物の床面又は天井面のいずれか一方である縁切面に対して水平移動可能に設けられた壁の開口部に設けられる建具であり、前記開口部の周縁に設けられた枠体と、前記枠体に対して開閉自在に取り付けられた建具本体とを備えた建具であって、
前記枠体は、上下一対の横枠と、前記上下一対の横枠のうち前記縁切面側とは反対側に位置する横枠と連結された左右一対の縦枠とを備え、
前記上下一対の横枠のうち前記縁切面側に位置する横枠は、当該縁切面に取り付けられた第1横枠部と、前記第1横枠部と別体に形成された第2横枠部であって、前記左右一対の縦枠に取り付けられた第2横枠部とを備え、
前記第1横枠部と前記縦枠とを連結するための連結手段であって、少なくとも前記壁と前記縁切面との相対水平変位が所定量以上となった場合に、当該縁切面に対する前記縦枠の水平移動が可能となるように形成された前記連結手段を備えた、
建具。
前記縦枠の内側に設けられる補助部材であって、前記連結手段によって前記第1横枠部に取り付けられた第1補助側片と、前記縦枠に取り付けられた第2補助側片とを有する補助部材を備えた、
請求項1から3のいずれか一項に記載の建具。
前記縦枠の下端部のうち前記第1横枠部と対向する部分及び前記第2横枠部における前記建物の屋外側の側部の各々と前記第1横枠部との相互間に、前記縦枠の水平移動を許容するための隙間を形成した、
請求項1から6のいずれか一項に記載の建具。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る建具の実施の形態を詳細に説明する。まず、〔I〕実施の形態の基本的概念を説明した後、〔II〕実施の形態の具体的内容について説明し、最後に、〔III〕実施の形態に対する変形例について説明する。ただし、実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0022】
〔I〕実施の形態の基本的概念
まず、実施の形態の基本的概念について説明する。実施の形態は、概略的に、建物の床面又は天井面のいずれか一方である縁切面に対して水平移動可能に設けられた壁の開口部に設けられる建具に関するものである。
【0023】
ここで、「建物」とは、その具体的な構造や種類は任意であるが、例えば、戸建て住宅、アパートやマンションの如き集合住宅、オフィスビル、商業施設、及び公共施設等を含む概念である。また、「縁切面」とは、壁と縁が切られている床面又は天井面(すなわち、壁に対して水平移動可能な状態で設置されている床面又は天井面)を意味する。また、「建物の壁の開口部」とは、建物の壁において窓や入り口を設置するために形成された開口である。また、「建具」とは、開口部の出入り又は視界を抑制又は制限するための構造体を意味し、例えば、開き戸、引き戸、窓等を含む概念である。また、建具の取り付け位置や用途は任意であるが、例えば玄関に設置される「玄関建具」、勝手口や通用口に設置される「勝手口建具」、又は建物内部に設置される「室内建具」等を含む。また、建具の開閉構造は任意であり、例えば、片開式の建具、両開式の建具、片引式の建具、引分式の建具等として構成することができる。以下、実施の形態では、建具が、戸建て住宅の如き建物の玄関に設けられた片開式の戸である場合について説明する。
【0024】
〔II〕実施の形態の具体的内容
次に、実施の形態の具体的内容について説明する。
【0025】
〔実施の形態1〕
まず、実施の形態1に係る建具について説明する。この実施の形態1は、後述するくつずり横枠の上側部が平坦状に形成されている形態である。
【0026】
(構成)
最初に、実施の形態1に係る建具の構成について説明する。以下の説明では、
図1のX方向を建具の左右方向又は幅方向(−X方向を建具の左方向、+X方向を建具の右方向)、
図2(b)のY方向を建具の前後方向(+Y方向を建具の前方向(建物の屋外側の方向)、−Y方向を建具の後方向(建物の屋内側の方向))、
図1のZ方向を建具の上下方向(+Z方向を建具の上方向、−Z方向を建具の下方向)と称する。
【0027】
建具1は、上述したように建物の玄関に設けられる建具であって、
図1に示すように、床面2(縁切面)に対して水平移動可能(具体的には、左右移動可能、前後移動可能)に設けられた壁3の開口部5に設置されており、具体的には、床面2とスリット部4(例えば、アルミシートで被覆されたポリエチレン独立発泡体等)を介して隣接している壁3の開口部5と、床面2における開口部5と対応する部分に形成された凹部6とに囲繞された空間内に設置されている。ここで、
図1に示すように、壁3を床面2に対して水平移動可能に設けた理由は、壁3が床面2と接合されている状態では、地震等が発生すると、床面2によって壁3の移動が拘束されることにより、壁3等にねじれ変形が生じやすくなるので、壁3及びその周辺部材(例えば、床面2、柱等)が損傷するおそれがあることから、当該損傷を低減するためである。
【0028】
また、この建具1は、
図1に示すように、概略的に、枠体10、扉体60(建具本体)、及びヒンジ部70を備えて構成されている。ただし、建具1に関する特記しない構成については、従来と同様であるものとして説明を省略する。なお、後述する建具1を構成する各種部材同士の取付方法(又は接続方法)については任意であるが、例えば、取付側の部材又は取付相手側の部材に形成された取付孔(例えば、リベット孔、ネジ孔、ビス孔等)を介して、取付側の部材を取付相手側の部材に対して固定具(例えば、リベット、取付ネジ、ビス等)、溶接、接着剤、両面テープ等によって取り付ける(又は接続する)方法が採用されている。
【0029】
(構成−枠体)
枠体10は、開口部5の周縁に設置されるものであり、
図1に示すように、鋼製(具体的には、スチール製、ステンレス製)の左右一対の縦枠20、30及び上下一対の横枠40、50を備えている。これら縦枠20、30及び横枠40、50は、相互に組み合わせられることにより全体として正面矩形環状の枠体10を構成する。以下では、必要に応じて、左右一対の縦枠20、30のうち、戸先側の縦枠20を「戸先側縦枠20」と称し、戸尻側の縦枠30を「戸尻側縦枠30」と称する。また、上下一対の横枠40、50のうち、上側の横枠40を「上側横枠40」と称し、下側の横枠50を「くつずり横枠50」と称する。
【0030】
また、
図1から
図3に示すように、戸先側縦枠20の一部、戸尻側縦枠30の一部、及びくつずり横枠50の一部が床面2よりも下方に位置するように(
図1では、これら一部が凹部6によって形成された空間に収容されるように)、これら戸先側縦枠20、戸尻側縦枠30、及びくつずり横枠50が設けられている。また、戸先側縦枠20には、デッドボルト受けと、ラッチ受けとが設けられている(いずれも図示省略)。デッドボルト受けは、扉体60を全閉位置(実施の形態1においては
図1に示す位置)に位置させた状態(以下、「全閉状態」と称する)において、扉体60に設けられた後述する公知のデッドボルトを受けるためのデッドボルト受容手段であり、後述するデッドボルトと対応する位置に配置されている。ラッチ受けは、扉体60に設けられた後述するラッチを受けるためのラッチ受容手段であり、ラッチと対応する位置に配置されている。また、
図4に示すように、戸先側縦枠20及び戸尻側縦枠30の各々には、第1戸当たり部11が設けられている。第1戸当たり部11は、扉体60と当接することにより、戸先側縦枠20又は戸尻側縦枠30と当該扉体60との相互間の気密性を高めるための気密手段である。この第1戸当たり部11は、戸先側縦枠20又は戸尻側縦枠30の上下方向の全長(又は当該全長よりも短い長さ)にわたって形成されており、後述する戸先側縦枠20又は戸尻側縦枠30の第2凹部33において、第1戸当たり部11の一部が第2凹部33から突出するように収容されている。また、上側横枠40及びくつずり横枠50の各々には、第2戸当たり部(図示省略)が設けられている。第2戸当たり部は、扉体60と当接することにより、上側横枠40及びくつずり横枠50と当該扉体60との相互間の気密性を高めるための気密手段である。この第2戸当たり部は、くつずり横枠50の左右方向の全長よりも短い長さ(又は当該全長)にわたって形成されており、後述するくつずり横枠50の凹部53aにおいて、第2戸当たり部の一部が凹部53aから突出するように収容されている。
【0031】
(構成−扉体)
図1に戻り、扉体60は、開口部5を開閉するための平板状の開閉体であり、扉枠(図示省略)及び一対の表面材61を備えている。
【0032】
(構成−扉体−扉枠)
扉枠は、扉体60の剛性を主として担う支持部材である。この扉枠は、鋼製(具体的には、スチール製、ステンレス製)の左右一対の縦力骨(図示省略)及び上下一対の横力骨(図示省略)を組み合わせることによって、正面形状が矩形環状となるように形成されている。このうち、左右一対の縦力骨は、長手方向(上下方向)の長さが相互に略同一となるように形成されており、上下方向に略沿うように設けられている。また、上下一対の横力骨は、長手方向(左右方向)の長さが相互に略同一となるように形成されており、左右方向に略沿うように設けられている。
【0033】
(構成−扉体−表面材)
一対の表面板61は、扉枠を覆うためのものである。これら一対の表面板61は、例えば薄厚な鋼材(一例として、スチール、ステンレス)等を用いて構成されており、扉枠を建物の屋内側及び建物の屋外側から挟むように配置され、扉枠に対して溶接、リベット、又は接着剤等によって固定されている。
【0034】
(構成−扉体−その他の構成)
また、
図1に示すように、扉体60の戸先側には、把手63、ラッチ(図示省略)、及び施錠装置(図示省略)が設けられている。把手63は、ユーザが扉体60の開閉操作を行うためのものであり、扉体60における建物の屋外側の側面及び建物の屋内側の側面における相互に対応する位置に配置されている。ラッチは、施錠装置による施錠の有無に関わらず、全閉位置に扉体60を維持するためのものである。このラッチは、扉体60の内部に設けられた連動機構(図示省略)を介して把手63と連結されており、ユーザによる把手63の操作に連動して、ラッチを扉体60の戸先側の側面から出し入れすることができる。施錠装置は、扉体60を施錠するための装置である。この施錠装置は、デッドボルト(図示省略)を備えて構成されており、具体的には、ユーザが扉体60の前方から鍵操作を行うことにより、デッドボルトを扉体60の戸先側の側面から出し入れすることができ、全閉状態において、このデッドボルトを戸先側縦枠20に設けられたデッドボルト受けに係止させることで、扉体60を施錠することができる。
【0035】
(構成−扉体−ヒンジ部)
ヒンジ部70は、扉体60を戸尻側縦枠30に対して回動自在(開閉自在)に軸支するためのものである。
図1に示すように、このヒンジ部70は、例えば公知の旗蝶番等を用いて構成されており、戸尻側の端部において、相互に間隔を隔てて上下方向に沿って複数並設されている。
【0036】
(構成−戸先側縦枠及び戸尻側縦枠の構成の詳細)
次に、戸先側縦枠20及び戸尻側縦枠30の構成の詳細について説明する。ただし、戸先側縦枠20及び戸尻側縦枠30は、特記する場合を除いて、任意の形状、方法、及び材質で製造することができる。実施の形態1において、
図1から
図5に示すように、戸先側縦枠20及び戸尻側縦枠30の各々は、枠材31、固定材34を備えている。
【0037】
(構成−戸先側縦枠及び戸尻側縦枠の構成の詳細−枠材)
枠材31は、戸先側縦枠20(又は戸尻側縦枠30)の基本構造体である。この枠材31は、横断面形状が左右方向の外側に向けて開放された略コ字状となるように形成された中空状体であり、開口部5の上下方向の略全長にわたって形成されており、上側横枠40と連結されている。また、この枠材31は、当該枠材31の下端部の一部(具体的には、
図3、
図5(c)に示す当該下端部における後述する第1横枠部51の上側部51aと対向する部分31a(以下、「第1下端部31a」と称する))が後述するくつずり横枠50の第1横枠部51と当接し、且つ、当該枠材31の下端部の他の一部(具体的には、
図3、
図5(c)に示す当該下端部における後述する第2トロ詰部85と対向する部分31b(以下、「第2下端部31b」と称する))が後述する第2トロ詰部85と当接しないように配置されている(ただし、これに限られず、例えば、後述する第2トロ詰部85の上面が平坦状である場合には、第2下端部31bが後述する第2トロ詰部85と当接するように配置されてもよい)。また、この枠材31の具体的な構成については任意であるが、実施の形態1では、
図2、
図4、
図5に示すように、戸尻側縦枠30の枠材31においては、枠材31における扉体60に対応する部分に、左右方向の外側に向けて突出する第1凹部32を形成することにより、当該第1凹部32に扉体60の左右方向の外側の一部を収容することが可能となる(なお、戸先側縦枠20の枠材31についても同様とする)。また、この第1凹部32のうち、扉体60における建物の屋内側の部分と対応する部分に、建物の屋内側に向けて突出する第2凹部33を形成することにより、当該第2凹部33に第1戸当たり部11を収容することが可能となる(なお、戸先側縦枠20の枠材31についても同様とする)。
【0038】
(構成−戸先側縦枠及び戸尻側縦枠の構成の詳細−固定材)
固定材34は、枠材31を壁3に対して固定するためのものである。この固定材34は、
図5に示すように、板状体であり、当該固定材34の前後方向の長さ(奥行き)が枠材31のコ字状の開放端部における前後方向の長さ(奥行き)と略同一(又はそれ以上の長さ)であると共に、当該固定材34の上下方向の長さ(高さ)が枠材31の上下方向の長さ(高さ)よりも短くなるように形成されている。また、この固定材34は、枠材31のコ字状の開放端部側(枠材31の左右方向の外側の端部側)において、所定間隔を隔てて上下方向に沿って複数並設配置されており、枠材31に対して溶接等によって固定されていると共に、壁3に対してアンカーボルト(図示省略)によって固定されている。
【0039】
(構成−戸先側縦枠及び戸尻側縦枠の構成の詳細−その他の構成)
また、
図1、
図2(a)に示すように、戸尻側縦枠30(又は戸先側縦枠20)と壁3との相互間の隙間には、シール材80及び図示しないバックアップ材が設けられている。シール材80は、枠材31と壁3との相互間の隙間を塞ぐための部材であり、例えば公知のシール材等を用いて構成されており、当該隙間の上下方向の略全長にわたって形成されている(なお、後述する他のシール材80の構成についても同様とする)。バックアップ材は、枠材31を壁3に対して安定して支持するための部材であり、例えば公知のバックアップ材を用いて構成されており、シール材80よりも建物の屋内側において、上記隙間の上下方向の略全長にわたって形成されている(なお、後述する他のバックアップ材の構成についても同様とする)。これらシール材80及びバックアップ材によって、枠材31と壁3との相互間の隙間を介して建物の屋内側に水が浸入することを抑制することができる。
【0040】
(構成−くつずり横枠の構成の詳細)
次に、くつずり横枠50の構成の詳細について説明する。ただし、くつずり横枠50は、特記する場合を除いて、任意の形状、方法、及び材質で製造することができる。実施の形態1において、
図1から
図4、
図6、
図7に示すように、くつずり横枠50は、第1横枠部51、固定材52、及び第2横枠部53を備えている。
【0041】
(構成−くつずり横枠の構成の詳細−第1横枠部)
第1横枠部51は、くつずり横枠50の基本構造体の一部である。
図2から
図4、
図6に示すように、この第1横枠部51は、左右方向に直交する方向の断面形状が建物の屋内側に向けて開放された略コ字状となるように形成された中空状体であり、開口部5の左右方向の略全長にわたって形成されている。また、この第1横枠部51の具体的な構成については任意であるが、実施の形態1では、
図3、
図6に示すように、第1横枠部51の上側部51aを平坦状に形成することにより、扉体60を収容することが可能となる。なお、このような第1横枠部51の上側部51aの形状に伴って、実施の形態1では、
図3、
図5(b)、
図7(b)に示すように、戸先側縦枠20及び戸尻側縦枠30の各々の枠材31の第1下端部31aが当該上側部51aと当接可能となるように、当該第1下端部31aを平坦状に形成している。また、後述する第2横枠部53における建物の屋外側の側部53bが当該上側部51aと当接しないように、当該建物の屋外側の側部53bを平坦状に形成している(あるいは、これ以外の形状(一例として傾斜状)にて形成されてもよい)。
【0042】
(構成−くつずり横枠の構成の詳細−固定材)
固定材52は、第1横枠部51を床面2に対して固定するためのものである。この固定材52は、
図3、
図6に示すように、横板部分が縦板部分から建物の屋外側に向けて突出するL字状体に形成されている。具体的には、固定材52の前後方向の長さ(奥行き)が第1横枠部51のコ字状の開放端部における前後方向の長さ(奥行き)と略同一(又はそれ以上の長さ)に設定され、固定材52の左右方向の長さ(幅)が第1横枠部51の左右方向の長さ(幅)よりも短く設定され、そして、固定材52の上下方向の長さ(高さ)が第1横枠部51の上下方向の長さ(高さ)と略同一に設定されている。また、この固定材52は、第1横枠部51のコ字状の開放端部側(第1横枠部51の建物の屋内側の端部側)において、所定間隔を隔てて左右方向に沿って複数並設配置されており、第1横枠部51に対して溶接等によって固定されていると共に、壁3に対してアンカーボルト83によって固定されている。
【0043】
(構成−くつずり横枠の構成の詳細−第2横枠部)
第2横枠部53は、くつずり横枠50の基本構造体の他の一部である。
図2から
図4、
図7に示すように、この第2横枠部53は、第1横枠部51と別体に形成され、且つ、左右方向に直交する方向の断面形状が下方に向けて開放された略逆U字状となるように形成された中空状体であり、開口部5の左右方向の略全長にわたって形成されており、戸先側縦枠20及び戸尻側縦枠30の各々の枠材31の側面のうち左右方向の内側の側面に対して溶接等により取り付けられている。また、第2横枠部53の具体的な構成については任意であるが、実施の形態1では、
図3、
図7に示すように、第2横枠部53のうち、扉体60における建物の屋内側の部分と対応する部分に、建物の屋内側に向けて突出する凹部53aを形成することにより、当該凹部53aに第2戸当たり部を収容することが可能となる。また、実施の形態1では、
図3に示すように、第2横枠部53と凹部6における建物の屋内側の側面との相互間に隙間が設けられているので、建具1の安全性を維持する観点から、当該隙間が外部に露出しないように、当該隙間を上方から覆うための図示しない蓋部が設けられている。ただし、これに限られず、例えば、蓋部に代えて、上記隙間を埋めるための充填材が設けられてもよい。なお、この充填材の材質については、具体的には、床面2に対する戸先側縦枠20及び戸尻側縦枠30の水平移動(具体的には、前後移動)を阻害しない材質が望ましく、一例として、当該水平移動の際に、第2横枠部53における建物の屋内側の側部53cに押圧されることでつぶれることが可能であり、又は上記隙間から外部にはみ出し可能な公知のコーキング材、公知のスポンジ材等によって形成される。あるいは、上記隙間が外部に露出する場合でも、建具1の安全性を維持できる場合には、蓋部又は充填材を省略してもよい。
【0044】
(構成−くつずり横枠の構成の詳細−その他の構成)
また、
図3に示すように、くつずり横枠50と床面2との相互間の隙間には、第1横枠部51と床面2との相互間の隙間を塞ぐためのシール材80と、シール材80よりも建物の屋内側に配置されたバックアップ材81とに加えて、第1トロ詰部84及び第2トロ詰部85が設けられている(なお、上側横枠40の構成についても同様とする)。第1トロ詰部84は、後述する第1横枠部51の上側部51aよりも下方に位置し、且つ固定材52の横板部分よりも上方に位置する空間S(以下、「空間S」と称する。なお、この空間Sは、固定材52の縦板部分よりも建物の屋外側に位置する。)を埋めるための部材であり、例えばモルタル等の公知の詰材を用いて構成されている。第2トロ詰部85は、固定材52と床面2との相互間の隙間、及び戸先側縦枠20(又は戸尻側縦枠30)の下端部よりも下方に位置し、且つ凹部6の底部分よりも上方に位置する隙間を塞ぐための部材であり、例えばモルタル等の公知の詰材を用いて構成されており、第1トロ詰部84よりも建物の屋内側において、これら隙間に充填されている。これらシール材80、バックアップ材81、第1トロ詰部84、及び第2トロ詰部85によって、くつずり横枠50と床面2との相互間の隙間を介して建物の屋内側に水が浸入することを抑制することが可能となる。
【0045】
(構成−上側横枠の構成の詳細)
図1に戻り、枠体10の上側横枠40の構成の詳細について説明する。上側横枠40は、特記する場合を除いて、任意の形状、方法、及び材質で製造することができ、実施の形態1においては、壁3に対して固定具等により固定されている。
【0046】
(構成−戸先側縦枠及び戸尻側縦枠の各々の枠材と第1横枠部との連結構造)
次に、戸先側縦枠20及び戸尻側縦枠30の各々の枠材31と第1横枠部51との連結構造について説明する。枠材31と第1横枠部51とを連結する連結構造であって、全閉状態において地震等が発生した場合に、少なくとも壁3と床面2(縁切面)との相対水平変位(具体的には、相対左右変位、相対前後変位。以下、単に「相対水平変位」と称する)が所定量以上となった場合に、床面2に対する壁3の水平移動に追随して、床面2に対する戸先側縦枠20及び戸尻側縦枠30の水平移動(具体的には、左右移動、前後移動。以下、単に「戸先側縦枠20及び戸尻側縦枠30の水平移動」と称する。)が可能となる連結構造として、
図2から
図4に示すように、連結部材90及び補助部材100が設けられている。
【0047】
(構成−戸先側縦枠及び戸尻側縦枠の各々の枠材と第1横枠部との連結構造−連結部材)
連結部材90は、枠材31と第1横枠部51とを連結するための連結手段であり、
図2から
図4に示すように、枠材31の内側において、後述する補助部材100の第1補助側片110を介して第1横枠部51に取り付けられている。また、この連結部材90の具体的な構成については任意であるが、実施の形態1では、相対水平変位が所定量未満の場合に、戸先側縦枠20及び戸尻側縦枠30の水平移動を規制可能となると共に、相対水平変位が所定量以上となった場合に、戸先側縦枠20及び戸尻側縦枠30の水平移動が可能となるように形成されている。ここで、相対水平変位が所定量未満の場合に、戸先側縦枠20及び戸尻側縦枠30の水平移動を規制可能となるように、連結部材90が形成されている理由は、戸先側縦枠20及び戸尻側縦枠30の水平移動を規制しない場合に、当該水平移動によって戸先側縦枠20及び戸尻側縦枠30の位置が元の位置からずれることにより、建具1の使用性が低下するおそれがあることから、これを回避するためである。また、相対水平変位が所定量以上となった場合に戸先側縦枠20及び戸尻側縦枠30の水平移動が可能となるように、連結部材90が形成されている理由は、相対水平変位が所定量以上となった場合に、戸先側縦枠20及び戸尻側縦枠30の水平移動が規制されると、壁3によって扉体60、戸先側縦枠20、又は戸尻側縦枠30が押圧されて変形することにより、扉体60を開閉することができなくなるおそれがあることから、これを回避するためである。なお、この「所定量」については、例えば、扉体60、戸先側縦枠20、又は戸尻側縦枠30の耐力等に応じて異なり得ることから、実験結果等に基づいて設定されている。
【0048】
また、この連結部材90の構成の詳細については、具体的には、相対水平変位が所定量未満の場合に分離することなく形状を保持し、相対水平変位が所定量以上になった場合に破断して分離可能となるボルト(すなわち、相対水平変位が所定量以上に達すると破断する程度の耐力(せん断耐力)を有するボルト)を用いて構成されている。ここで、連結部材90の径の大きさ及び本数の設定方法、並びに設置方法については、戸先側縦枠20及び戸尻側縦枠30の水平移動が可能となる相対水平変位の所定量や、後述する補助部材100の第1補助側片110の形状又は大きさ等に応じて異なり得ることから、実験結果等に基づいて設定しており、例えば、
図2から
図4に示すように、1つの補助部材100に対して、所定の径を有する2本の連結部材90が前後方向に略沿って並設されるように設定している。また、この連結部材90の材質については、連結部材90を安価に製造することができるように、例えば、樹脂材料にて形成されている。
【0049】
このような連結部材90の構成により、地震等によって相対水平変位が所定量未満の場合に、床面2に対する壁3の水平移動に追随することなく、戸先側縦枠20及び戸尻側縦枠30の水平移動を規制できる。よって、戸先側縦枠20及び戸尻側縦枠30の水平移動を規制しない場合に比べて、当該水平移動によって戸先側縦枠20又は戸尻側縦枠30の位置が元の位置からずれることを防止でき、建具1の使用性が低下することを抑制できる。また、相対水平変位が所定量以上となった場合に、床面2に対する壁3の水平移動に追随して、戸先側縦枠20及び戸尻側縦枠30の水平移動を行うことができる。よって、従来技術のように、戸先側縦枠20及び戸尻側縦枠30がくつずり横枠50を介して床面2に固定されて、床面2に対する壁3の水平移動に追随できない場合に比べて、枠体10又は扉体60の変形又は損傷によって建具1が使用できなくなることを抑制でき、建具1の使用性を維持することが可能となる。また、連結部材90によって第1横枠部51と戸先側縦枠20又は戸尻側縦枠30とを連結できるので、第1横枠部51、戸先側縦枠20、及び戸尻側縦枠30を工場等であらかじめ組み立てた状態で現場で設置でき、従来技術と同様の設置性を維持できる。また、第2横枠部53と別体に形成された第1横枠部51を床面2に対して固定できるので、第1横枠部51と床面2との相互間にシール材80が打設されている場合に、地震等の発生によって床面2に対して戸先側縦枠20及び戸尻側縦枠30が水平移動しても、シール材80が剥がれることを回避できる。
【0050】
また、このように構成された連結部材90は任意の方法や材質で製造することができ、例えば、連結部材90の製造性を高めるために、樹脂材料を用いた型抜き成形を行うことで製造することができる。
【0051】
(構成−戸先側縦枠及び戸尻側縦枠の各々の枠材と第1横枠部との連結構造−補助部材)
補助部材100は、連結部材90による枠材31と第1横枠部51との連結を補助するための部材である。
図2から
図4、
図8に示すように、補助部材100は、枠材31の内側に設けられており、第1補助側片110及び第2補助側片120を備えている。
【0052】
第1補助側片110は、第1横枠部51に取り付けられる側片である。この第1補助側片110は、略板状体に形成されており、具体的には、
図4、
図8に示すように、第1補助側片110の前後方向の長さ(奥行き)が枠材31の前後方向の全長よりも短く、且つ、第1補助側片110の左右方向の長さ(幅)が枠材31の左右方向の全長よりも短くなるように形成されている。また、この第1補助側片110は、当該第1補助側片110の側面(第1補助側片110の下面)が第1横枠部51の上側部51aと当接するように配置されており、当該第1補助側片110に形成された取付孔111及び当該上側部51aに形成された取付孔(図示省略)を介して、連結部材90及び当該連結部材90と組み合わせて用いられるナット部91により第1横枠部51に対して取り付けられている。
【0053】
第2補助側片120は、枠材31に取り付けられる側片である。この第2補助側片120は、略板状体に形成されており、具体的には、
図2から
図4、
図8に示すように、第2補助側片120の前後方向の長さ(奥行き)が枠材31の前後方向の全長よりも短く、且つ、第2補助側片120の上下方向の長さ(高さ)が枠材31の上下方向の全長よりも短くなるように形成されている。また、この第2補助側片120は、当該第2補助側片120の側面(第2補助側片120の扉体60側の側面)が枠材31における左右方向の内側の側部と当接するように配置されており、枠材31に対して溶接等により取り付けられている。
【0054】
このような補助部材100の構成により、補助部材100及び連結部材90を外部に露出しないように設置できるので、建具1の意匠性を維持することが可能となる。
【0055】
また、この補助部材100は、任意の方法で製造することができ、例えば、補助部材100の製造性を高めるために、鋼製(具体的には、スチール製、ステンレス製)の板状体を折り曲げ成形することにより、第1補助側片110及び第2補助側片120を一体に成形し、この折り曲げ成形の前後のいずれかの時点で、取付孔111を打ち抜き形成することで製造することができる。
【0056】
(構成−建具の作用)
次いで、このように構成された、建具1の作用について説明する。
【0057】
例えば、全閉状態において地震が発生した場合に、相対水平変位が生じることにより、連結部材90が第1横枠部51によって押圧される。
【0058】
この場合において、相対水平変位が所定量未満の場合には、
図2(a)に示すように、第1横枠部51による押圧力が連結部材90の耐力(せん断耐力)を下回ることから、連結部材90が分離することなく形状を保持することができるので、床面2に対する壁3の水平移動に追随することなく、戸先側縦枠20及び戸尻側縦枠30の水平移動を規制することができる。よって、戸先側縦枠20又は戸尻側縦枠30の位置が元の位置からずれることを回避でき、建具1の使用性が低下することを抑制することが可能となる。
【0059】
また、相対水平変位が所定量以上となった場合には、
図9に示すように、第1横枠部51による押圧力が連結部材90の耐力(せん断耐力)を上回ることから、連結部材90が破断して分離できるので、床面2に対する壁3の水平移動に追随して、戸先側縦枠20及び戸尻側縦枠30の水平移動が可能となる。よって、戸先側縦枠20及び戸尻側縦枠30がくつずり横枠50を介して床面2に固定されて、壁3の水平移動に追随できない場合に比べて、枠体10又は扉体60の変形又は損傷によって建具1が使用できなくなることを抑制でき、建具1の使用性を維持することが可能となる。
【0060】
(構成−建具のその他の構造)
続いて、建具1のその他の構造について説明する。この建具1は、全閉状態において、くつずり横枠50を介して建物の屋内側に水が浸入することを防止するための止水構造を備えている。また、この止水構造は、見込方向(前後方向)の止水構造と、見付方向(左右方向)の止水構造とを備えている。以下では、これら各止水構造について順次説明する。
【0061】
(構成−建具のその他の構造−見込方向の止水構造)
まず、見込方向の止水構造について説明する。建物の屋外側に存在する水が見込方向(前後方向)から建物の屋内側に浸入することを防止するための見込方向の止水構造の1つの特徴として、
図3、
図6に示すように、第1横枠部51の上側部51aに、水切り部130が形成されている。水切り部130は、上側部51aを介して建物の屋内側に水が浸入することを防止するための部材である。この水切り部130は、略板状体にて形成されており、具体的には、第1横枠部51の左右方向の略全長にわたって形成されていると共に、上方に向けて突出するように形成されている。また、この水切り部130の形成方法については任意であるが、例えば、水切り部130の製造性を高めるために、第1横枠部51の上側部51aの後端部及びその近傍部分を折り曲げ成形することにより形成している。
【0062】
また、この見込方向の止水構造のもう1つの特徴として、
図3に示すように、第2横枠部53における建物の屋外側の側部53bが水切り部130よりも建物の屋外側に位置するように(より具体的には、第1横枠部51の上側部51aと当接しないように)、第2横枠部53が配置されている。この第2横枠部53の配置の詳細については、具体的には、第2横枠部53によって水切り部130が上方から覆われると共に、上記建物の屋外側の側部53bと水切り部130との相互間、水切り部130と第2横枠部53における建物の屋内側の側部53cとの相互間、及び、上記建物の屋内側の側部53cと凹部6における建物の屋内側の壁部分との相互間に所定の間隔が形成されるように配置されている。この場合において、上記所定の間隔の設定方法については任意であるが、実施の形態1では、
図5に示すように、床面2に対する戸先側縦枠20及び戸尻側縦枠30の水平移動(具体的には、前後移動)を所定量許容することが可能な長さに設定している。ただし、これに限られず、例えば、上記建物の屋外側の側部53bの前後方向の長さ(奥行き)を
図3に示す長さよりも長くすることにより、あるいは、第1横枠部51の上側部51aの前後方向の長さ(奥行き)を
図3に示す長さよりも短くして、水切り部130を
図3に示す設置位置よりも建物の屋外側に設置することにより、床面2に対する戸先側縦枠20及び戸尻側縦枠30の水平移動(具体的には、前後移動)を小さくしたり、又は制限することが可能な長さに設定してもよい。また、水切り部130の上下方向の長さ(高さ)については、実施の形態1では、
図3に示すように、水切り部130によって第2横枠部53の設置が阻害されないように、第2横枠部53の上下方向の全長よりも短くなるように設定されている。
【0063】
以上のような見込方向の止水構造の構成により、水切り部130及び第2横枠部53によって、第1横枠部51と第2横枠部53との隙間を介して建物の屋内側に水が浸入することを抑制できるので、建具1の止水性を向上させることが可能となる。
【0064】
(構成−建具のその他の構造−見付方向の止水構造)
次に、見付方向の止水構造について説明する。建物の屋外側に存在する水が見付方向(左右方向)から建物の屋内側に浸入することを防止するための見付方向の止水構造として、
図2(b)、
図6に示すように、第1横枠部51の見付方向の両端部(第1横枠部51の左端部及び右端部)の各々に、水切りカバー部140が設けられている。水切りカバー部140は、第1横枠部51の左右両端部から少なくとも当該第1横枠部51の内側(実施の形態1では、第1横枠部51の内側を含む床面2の凹部6全体等)に水が浸入することを抑制するための部材である。この水切りカバー部140は、略板状体にて形成されており、当該水切りカバー部140の側面(扉体60側の側面)が第1横枠部51の見付方向の端部と当接するように配置され、第1横枠部51に対して溶接等により取り付けられている。また、水切りカバー部140の大きさ及び設置位置の設定方法については、例えば、少なくとも空間S全体が水切りカバー部140によって覆われるように設定することが望ましく、実施の形態1では、
図2(b)に示すように、上記空間全体と戸先側縦枠20(又は戸尻側縦枠30)の枠材31の下端部及びその近傍部分とが覆われるように設定している。また、実施の形態1では、水切りカバー部140によって床面2に対する戸先側縦枠20及び戸尻側縦枠30の水平移動(具体的には、左右移動)が阻害されないように、水切りカバー部140と戸先側縦枠20又は戸尻側縦枠30との相互間に隙間が形成されている。なお、この隙間は、戸先側縦枠20及び戸尻側縦枠30の水平移動(具体的には、左右移動)を所定量許容することが可能な長さに設定されている。
【0065】
このような見付方向の止水構造の構成により、水切りカバー部140によって、第1横枠部51を介して建物の屋内側に水が浸入することを抑制できるので、建具1の止水性を一層向上させることが可能となる。
【0066】
(効果)
このように実施の形態1によれば、上側横枠40及びくつずり横枠50のうち床面2側に位置するくつずり横枠50が、当該床面2に取り付けられた第1横枠部51と、第1横枠部51と別体に形成された第2横枠部53であって、戸先側縦枠20及び戸尻側縦枠30に取り付けられた第2横枠部53とを備え、第1横枠部51と戸先側縦枠20又は戸尻側縦枠30とを連結するための連結部材90であって、少なくとも壁3と床面2との相対水平変位が所定量以上となった場合に、当該床面2に対する戸先側縦枠20及び戸尻側縦枠30の水平移動が可能となるように形成された連結部材90を備えたので、地震等によって上記相対水平変位が所定量以上となった場合に、床面2に対する壁3の水平移動に追随して、床面2に対して戸先側縦枠20及び戸尻側縦枠30を水平移動させることができる。よって、従来技術のように、戸先側縦枠20又は戸尻側縦枠30がくつずり横枠50を介して床面2に固定されて、床面2に対する壁3の水平移動に追随できない場合に比べて、枠体10又は扉体60の変形又は損傷によって建具1が使用できなくなることを抑制でき、建具1の使用性を維持することが可能となる。また、連結部材90によって第1横枠部51と戸先側縦枠20又は戸尻側縦枠30とを連結できるので、第1横枠部51、戸先側縦枠20、及び戸尻側縦枠30を工場等であらかじめ組み立てた状態で現場で設置でき、従来技術と同様の設置性を維持できる。また、第2横枠部53と別体に形成された第1横枠部51を床面2に対して固定できるので、例えば、第1横枠部51と床面2との相互間にシール材80が打設されている場合に、地震等の発生によって床面2に対して戸先側縦枠20及び戸尻側縦枠30が水平移動しても、シール材80が剥がれることを回避できる。
【0067】
また、連結部材90を、上記相対水平変位が所定量未満の場合に、床面2に対する戸先側縦枠20及び戸尻側縦枠30の水平移動を規制可能となるように形成したので、上記相対水平変位が所定量未満の場合に、床面2に対する壁3の水平移動に追随することなく、床面2に対して戸先側縦枠20及び戸尻側縦枠30の水平移動を規制できる。よって、床面2に対する戸先側縦枠20及び戸尻側縦枠30の水平移動を規制しない場合に比べて、当該水平移動によって戸先側縦枠20又は戸尻側縦枠30の位置が元の位置からずれることを防止でき、建具1の使用性が低下することを抑制できる。
【0068】
また、連結部材90が、樹脂材料にて形成されたボルトを備えたので、連結部材90を安価に製造することができ、建具1の製造コストを低減することが可能となる。
【0069】
また、戸先側縦枠20又は戸尻側縦枠30の内側に設けられる補助部材100であって、連結部材90によって第1横枠部51に取り付けられた第1補助側片110と、当該戸先側縦枠20又は当該戸尻側縦枠30に取り付けられた第2補助側片120とを有する補助部材100を備えたので、補助部材100及び連結部材90を外部に露出しないように設置でき、建具1の意匠性を維持することが可能となる。
【0070】
また、第1横枠部51の上側部51aに、上方に向けて突出する水切り部130を形成し、第2横枠部53における建物の屋外側の側部53bが水切り部130よりも建物の屋外側に位置するように、当該第2横枠部53を配置したので、水切り部130及び第2横枠部53によって、第1横枠部51と第2横枠部53との隙間を介して水が浸入することを抑制できるので、建具1の止水性を向上させることが可能となる。
【0071】
また、第1横枠部51の見付方向の両端部の各々に、少なくとも当該第1横枠部51の内側に水が浸入することを抑制するための水切りカバー部140を設けたので、水切りカバー部140によって、第1横枠部51を介して建物の屋内側に水が浸入することを抑制できるので、建具1の止水性を一層向上させることが可能となる。
【0072】
〔実施の形態2〕
次に、実施の形態2に係る建具について説明する。この実施の形態2は、くつずり横枠の上側部が傾斜状に形成されている形態である。ただし、この実施の形態2の構成は、特記する場合を除いて、実施の形態1の構成と略同一であり、実施の形態1の構成と略同一の構成についてはこの実施の形態1で用いたものと同一の符号及び/又は名称を必要に応じて付して、その説明を省略する。
【0073】
(構成)
まず、実施の形態2に係る建具の構成について説明する。
図10に示すように、実施の形態2に係る建具200については、実施の形態1に係る建具1とほぼ同様に構成されている。ただし、戸先側縦枠20及び戸尻側縦枠30の枠材31の構成、くつずり横枠50の構成、及び補助部材100の構成については、下記に示す工夫が施されている。
【0074】
(構成−戸先側縦枠及び戸尻側縦枠の構成の詳細)
次に、戸先側縦枠20及び戸尻側縦枠30の構成の詳細について説明する。実施の形態2においては、戸先側縦枠20及び戸尻側縦枠30の各々の枠材31は、上側横枠40と連結されており、
図10に示すように、当該枠材31の第1下端部31aとくつずり横枠50の第1横枠部51の上側部51aと当接しないように配置されていると共に(すなわち、第1下端部31aと上側部51aとの相互間に隙間が形成されるように配置されている)、当該枠材31の第2下端部31bが第2トロ詰部85と当接しないように配置されている。このような配置により、後述するように、第1横枠部51の上側部51aが傾斜状に形成されている場合でも、相対水平変位が所定量以上となった場合に、上側部51aが第1下端部31aと当接することを回避しながら、床面2に対する戸先側縦枠20及び戸尻側縦枠30を水平移動(具体的には、前後移動)させることが可能となる。なお、実施の形態2においては、第1下端部31aと上側部51aとの相互間の隙間に、当該隙間を埋めるための図示しない充填材(例えば、公知のコーキング材、公知のスポンジ材等)が設けられていることにより、建具200の意匠性を維持すると共に、当該隙間を介して建物の屋内側に水が浸入することを抑制することができる。ただし、これに限られず、例えば、建具200の意匠性を維持できる場合には、充填材を省略してもよい。
【0075】
(構成−くつずり横枠の構成の詳細)
次に、くつずり横枠50の構成の詳細について説明する。このくつずり横枠50の第1横枠部51の具体的な形状については、実施の形態2において、
図10、
図12(b)に示すように、第1横枠部51の上側部51aの後端部(上側部51aにおける建物の屋内側の端部)が当該上側部51aの前端部(上側部51aにおける建物の屋外側の端部)よりも上方に位置するように、当該上側部51aを傾斜状に形成している。このような形状により、扉体60を収容することが可能となると共に、当該上側部51aを平坦状に形成した場合に比べて、建物の屋内側に水が浸入することを抑制することが可能となる。また、このような第1横枠部51の上側部51aの形状に伴って、実施の形態2では、
図10、
図11(b)、
図13(b)に示すように、戸先側縦枠20及び戸尻側縦枠30の各々の枠材31の下端部と上側部51aとの相互間に隙間(具体的には、戸先側縦枠20及び戸尻側縦枠30の水平移動を所定量許容可能な隙間)が形成できるように、枠材31の第1下端部31a及び第2横枠部53における建物の屋外側の側部53bを傾斜状に形成している。なお、実施の形態2では、枠材31の第1下端部31a及び上記建物の屋外側の側部53bの傾斜角度は、第1横枠部51の上側部51aの傾斜角度と略同一に設定されている。ただし、これに限られず、例えば、戸先側縦枠20及び戸尻側縦枠30の水平移動を許容可能な隙間が維持できる場合には、上側部51aの傾斜角度と異なるように設定されてもよい。このような形状により、第1横枠部51の上側部51aが傾斜状に形成されている場合でも、相対水平変位が所定量以上となった場合に、第1下端部31a及び上記建物の屋外側の側部53bが上側部51aと当接することを回避しながら、床面2に対する戸先側縦枠20及び戸尻側縦枠30を水平移動(具体的には、前後移動)させることが可能となる。
【0076】
(構成−補助部材の構成の詳細)
次に、くつずり横枠50の構成の詳細について説明する。
図10に示すように、補助部材100は、第1補助側片110及び第2補助側片120を備えている。ここで、第2補助側片120の取付方法については、実施の形態2では、
図10、
図11に示すように、第2補助側片120に形成された2つの長孔121(
図10では、上下方向の長さが前後方向の長さよりも長い長孔121)の各々に、戸先側縦枠20及び戸尻側縦枠30の各々の枠材31に溶接等によって接続された棒状のストッパ部122(一例として、スタットボルト等)を挿通させた後、当該挿通させたストッパ部122から第2補助側片120が外れることを防止するための図示しない離脱防止部(一例として、ナット等)を取り付けている。なお、この離脱防止部の取り付けの詳細については、第1横枠部51、戸先側縦枠20、及び戸尻側縦枠30を組み立てた状態で搬送する際には第2補助側片120がストッパ部122から外れることなく、床面2に対して戸先側縦枠20及び戸尻側縦枠30が水平移動する際には補助部材100が上下方向に移動自在となる程度に締め付けられている。このような取り付けにより、相対水平変位が所定量以上になることで連結部材90が破断して分離した場合には補助部材100が上下方向に移動自在となるので、例えば、実施の形態1のように、第2補助側片120を枠材31に対して溶接で取り付ける場合に比べて、戸先側縦枠20及び戸尻側縦枠30が水平移動する際に、補助部材100が上側部51aに対して突っ張ることにより、戸先側縦枠20及び戸尻側縦枠30の水平移動を阻害することを回避できる。
【0077】
(効果)
このように実施の形態2によれば、第1横枠部51の上側部51aの後端部が当該上側部51aの前端部よりも上方に位置するように、当該上側部51aを傾斜状に形成し、枠材31の第1下端部31a及び第2横枠部53における建物の屋外側の側部53bの各々と第1横枠部51との相互間に、戸先側縦枠20及び戸尻側縦枠30の水平移動を許容するための隙間を形成したので、上側部51aが上記傾斜状に形成された場合でも、地震等によって相対水平変位が所定量以上となった場合に、第1下端部31a及び上記建物の屋外側の側部53bが上側部51aと当接することを回避しながら、床面2に対する壁3の水平移動に追随して、床面2に対して戸先側縦枠20及び戸尻側縦枠30を水平移動させることができる。
【0078】
〔III〕実施の形態に対する変形例
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0079】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。例えば、本発明に係る建具の使用性が従来と同程度であっても、従来と異なる構造により従来と同程度の使用性を確保できている場合には、本願の課題は解決している。
【0080】
(形状、数値、構造、時系列について)
実施の形態や図面において例示した構成要素に関して、形状、数値、又は複数の構成要素の構造若しくは時系列の相互関係については、本発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。
【0081】
(壁について)
上記実施の形態1、2では、壁3が、床面2に対して左右移動可能及び前後移動可能に設けられていると説明したが、これに限られず、例えば、公知の拘束手段(一例として、レール部材)を用いて床面2に対して左右移動又は前後移動のいずれか一方が可能となるように設けられてもよい。
【0082】
また、上記実施の形態1、2では、壁3が、スリット部4を介して床面2と隣接していると説明したが、これに限られず、例えば、縁切面と接合されていない状態で当接していてもよい。
【0083】
(縁切面について)
上記実施の形態1、2では、床面2を縁切面として説明したが、これに限られず、例えば、天井面を縁切面としてもよい。この場合には、くつずり横枠50に代えて上側横枠40が、第1横枠部51及び第2横枠部53を備える。また、床面2に形成された凹部6及び止水構造を省略してもよい。
【0084】
(扉体について)
上記実施の形態1、2では、扉体60の扉枠は、4つの力骨(左右一対の縦力骨及び上下一対の横力骨)を備えていると説明したが、これに限られない。例えば、5つ以上の力骨を備えてもよく、又は、3つ以下の力骨を備えてもよい。あるいは、力骨に代えて、例えばペーパーコア等の公知のコア体を備えてもよい。
【0085】
(戸先側縦枠及び戸尻側縦枠の各々の枠材と第1横枠部との連結構造について)
上記実施の形態1、2では、建具が、戸先側縦枠20及び戸尻側縦枠30の各々の枠材31と第1横枠部51との連結構造を備えていると説明したが、これに限られない。例えば、戸先側縦枠20の枠材31と第1横枠部51との連結構造又は戸尻側縦枠30の枠材31と第1横枠部51との連結構造のいずれか一方のみで、実施の形態と同様の効果が得られる場合には、戸先側縦枠20の枠材31と第1横枠部51との連結構造又は戸尻側縦枠30の枠材31と第1横枠部51との連結構造のいずれか他方を省略してもよい。
【0086】
また、上記実施の形態1、2では、戸先側縦枠20及び戸尻側縦枠30の各々の枠材31と第1横枠部51との連結構造が、補助部材100を備えていると説明したが、これに限られない。例えば、連結部材90のみを用いて枠材31と第1横枠部51とを連結できる場合には、補助部材100を省略してもよい。
【0087】
上記実施の形態1では、戸先側縦枠20及び戸尻側縦枠30の各々の枠材31の第1下端部31aを第1横枠部51の上側部51aと当接するように配置し、第2横枠部53における建物の屋外側の側部53bを当接しないように配置していると説明したが、これに限られない。例えば、第1下端部31a及び上記建物の屋外側の側部53bの各々と第1横枠部51(具体的には上側部51a)との相互間に、隙間(すなわち、戸先側縦枠20及び戸尻側縦枠30の水平移動を許容するための隙間)を形成することで、第1下端部31aと上側部51aとの摩擦抵抗をなくして、戸先側縦枠20及び戸尻側縦枠30の水平移動(具体的には、前後移動)を一層スムーズに行うことができるようにしてもよい。
【0088】
(第2横枠部について)
上記実施の形態1、2では、第2横枠部53における建物の屋外側の側部53bが第1横枠部51の上側部51aと当接しないように、第2横枠部53が配置されていると説明したが、これに限られない。例えば、床面2に対する戸先側縦枠20及び戸尻側縦枠30の水平移動(具体的には、前後移動)が阻害されないのであれば、第2横枠部53における建物の屋外側の側部53bが第1横枠部51の上側部51aと当接するように、第2横枠部53が配置されてもよい。
【0089】
(連結部材について)
上記実施の形態1、2では、連結部材90が、樹脂材料にて形成されたボルトを備えていると説明したが、これに限られない。例えば、相対水平変位が所定量未満の場合に、戸先側縦枠20及び戸尻側縦枠30の水平移動を規制可能となると共に、相対水平変位が所定量以上となった場合に、戸先側縦枠20及び戸尻側縦枠30の水平移動が可能であり、且つ従来と同様の設置性を維持可能な部材であればよく、一例として、樹脂材料にて形成されたリベット、枠材31及び第1横枠部51にわたって取り付けられるクリップ材、枠材31と第1横枠部51との相互に取り付けられるコーキング材や磁石、鋼製(具体的には、スチール製、ステンレス製)やアルミ製のリベットやネジ、又はこれらを組み合わせたものを備えてもよい。あるいは、相対水平変位が所定量未満である場合にも、戸先側縦枠20及び戸尻側縦枠30の水平移動が可能であり、且つ従来と同様の設置性を維持可能な部材であってもよく、一例として、枠材31と第1横枠部51との相互に取り付けられる免震ゴムを備えてもよい。
【0090】
また、上記実施の形態1、2では、連結部材90が、枠材31と第1横枠部51とを直接的に連結すると説明したが、これに限られず、例えば、連結部材90が、第2横枠部53における建物の屋外側の側部53bを介して枠材31と第1横枠部51とを間接的に連結してもよい。
【0091】
(補助部材について)
上記実施の形態1、2では、補助部材100が、枠材31の内側に設けられていると説明したが、これに限られず、例えば、枠材31の構造上の都合により、枠材31の内側に設けることができない場合には、枠材31の外側に設けられてもよい。
【0092】
(止水構造について)
上記実施の形態1、2では、止水構造が、見込方向の止水構造及び見付方向の止水構造を備えていると説明したが、これに限られず、例えば、建具の製造コストを低減するために、少なくとも見込方向の止水構造又は見付方向の止水構造のいずれか一方を省略してもよい。
【0093】
(水切りカバー部について)
上記実施の形態1、2では、水切りカバー部140が、空間S全体と、戸先側縦枠20(又は戸尻側縦枠30)の枠材31の下端部及びその近傍部分とを含む領域を覆うと説明したが、これに限られない。例えば、建具の止水性を向上させるために、上述した領域に加えて、上記空間Sよりも下方領域又は建物の屋内側の領域(一例として、上記空間から床面2の凹部6に至る領域等)を覆うようにしてもよい。
【0094】
(付記)
付記1の建具は、建物の床面又は天井面のいずれか一方である縁切面に対して水平移動可能に設けられた壁の開口部に設けられる建具であり、前記開口部の周縁に設けられた枠体と、前記枠体に対して開閉自在に取り付けられた建具本体とを備えた建具であって、前記枠体は、上下一対の横枠と、前記上下一対の横枠のうち前記縁切面側とは反対側に位置する横枠と連結された左右一対の縦枠とを備え、前記上下一対の横枠のうち前記縁切面側に位置する横枠は、当該縁切面に取り付けられた第1横枠部と、前記第1横枠部と別体に形成された第2横枠部であって、前記左右一対の縦枠に取り付けられた第2横枠部とを備え、前記第1横枠部と前記縦枠とを連結するための連結手段であって、少なくとも前記壁と前記縁切面との相対水平変位が所定量以上となった場合に、当該縁切面に対する前記縦枠の水平移動が可能となるように形成された前記連結手段を備えた。
【0095】
付記2の建具は、付記1に記載の建具において、前記連結手段を、前記相対水平変位が所定量未満の場合に、前記縦枠の水平移動を規制可能となるように形成した。
【0096】
付記3の建具は、付記1又は2に記載の建具において、前記連結手段は、樹脂材料にて形成されたボルト又はリベットを備えた。
【0097】
付記4の建具は、付記1から3のいずれか一項に記載の建具において、前記縦枠の内側に設けられる補助部材であって、前記連結手段によって前記第1横枠部に取り付けられた第1補助側片と、前記縦枠に取り付けられた第2補助側片とを有する補助部材を備えた。
【0098】
付記5の建具は、付記1から4のいずれか一項に記載の建具において、前記床面を前記縁切面とし、前記第1横枠部の上側部に、上方に向けて突出する水切り部を形成し、前記第2横枠部における前記建物の屋外側の側部が前記水切り部よりも前記建物の屋外側に位置するように、当該第2横枠部を配置した。
【0099】
付記6の建具は、付記1から5のいずれか一項に記載の建具において、前記第1横枠部の見付方向の両端部の各々に、少なくとも当該第1横枠部の内側に水が浸入することを抑制するための水切りカバー部を設けた。
【0100】
付記7の建具は、付記1から6のいずれか一項に記載の建具において、前記縦枠の下端部のうち前記第1横枠部と対向する部分及び前記第2横枠部における前記建物の屋外側の側部の各々と前記第1横枠部との相互間に、前記縦枠の水平移動を許容するための隙間を形成した。
【0101】
(付記の効果)
付記1に記載の建具によれば、上下一対の横枠のうち縁切面側に位置する横枠が、当該縁切面に取り付けられた第1横枠部と、第1横枠部と別体に形成された第2横枠部であって、左右一対の縦枠に取り付けられた第2横枠部とを備え、第1横枠部と縦枠とを連結するための連結手段であって、少なくとも壁と縁切面との相対水平変位が所定量以上となった場合に、当該縁切面に対する縦枠の水平移動が可能となるように形成された連結手段を備えたので、地震等によって上記相対水平変位が所定量以上となった場合に、縁切面に対する壁の水平移動に追随して、縁切面に対して縦枠を水平移動させることができる。よって、従来技術のように、縦枠が縁切面側に位置する横枠を介して縁切面に固定されて、縁切面に対する壁の水平移動に追随できない場合に比べて、枠体又は建具本体の変形又は損傷によって建具が使用できなくなることを抑制でき、建具の使用性を維持することが可能となる。また、連結手段によって第1横枠部と縦枠とを連結できるので、第1横枠部及び縦枠を工場等であらかじめ組み立てた状態で現場で設置でき、従来技術と同様の設置性を維持できる。また、第2横枠部と別体に形成された第1横枠部を縁切面に対して固定できるので、例えば、第1横枠部と縁切面との相互間にシール材が打設されている場合に、地震等の発生によって縁切面に対して縦枠が水平移動しても、シール材が剥がれることを回避できる。
【0102】
付記2に記載の建具によれば、連結手段を、上記相対水平変位が所定量未満の場合に、縁切面に対する縦枠の水平移動を規制可能となるように形成したので、上記相対水平変位が所定量未満の場合に、縁切面に対する壁の水平移動に追随することなく、縁切面に対して縦枠の水平移動を規制できる。よって、縁切面に対する縦枠の水平移動を規制しない場合に比べて、当該水平移動によって縦枠の位置が元の位置からずれることを防止でき、建具の使用性が低下することを抑制できる。
【0103】
付記3に記載の建具によれば、連結手段が、樹脂材料にて形成されたボルト又はリベットを備えたので、連結手段を安価に製造することができ、建具の製造コストを低減することが可能となる。
【0104】
付記4に記載の建具によれば、縦枠の内側に設けられる補助部材であって、連結手段によって第1横枠部に取り付けられた第1補助側片と、縦枠に取り付けられた第2補助側片とを有する補助部材を備えたので、補助部材及び連結手段を外部に露出しないように設置でき、建具の意匠性を維持することが可能となる。
【0105】
付記5に記載の建具によれば、第1横枠部の上側部に、上方に向けて突出する水切り部を形成し、第2横枠部における建物の屋外側の側部が水切り部よりも建物の屋外側に位置するように、当該第2横枠部を配置したので、水切り部及び第2横枠部によって、第1横枠部と第2横枠部との隙間を介して水が浸入することを抑制できるので、建具の止水性を向上させることが可能となる。
【0106】
付記6に記載の建具によれば、第1横枠部の見付方向の両端部の各々に、少なくとも当該第1横枠部の内側に水が浸入することを抑制するための水切りカバー部を設けたので、水切りカバー部によって、第1横枠部を介して水が浸入することを抑制できるので、建具の止水性を一層向上させることが可能となる。
【0107】
付記7に記載の建具によれば、縦枠の下端部のうち第1横枠部と対向する部分及び第2横枠部における建物の屋外側の側部の各々と第1横枠部との相互間に、縦枠の水平移動を許容するための隙間を形成したので、上記上側部が傾斜状又は平坦状に形成された場合でも、地震等によって上記相対水平変位が所定量以上となった場合に、上記第1横枠部と対向する部分及び上記建物の屋外側の側部が上記上側部と当接することを回避しながら、縁切面に対する壁の水平移動に追随して、縁切面に対して縦枠をスムーズに水平移動させることができる。