(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
レーザー光源から出射したレーザー光を対象物に照射して、その対象物からの戻り光を受光部で受光し、受光した時間と出射した時間との時間差に基づいて距離を測定可能なレーザー測定器と、測定対象物に反射光を照射可能な位置に設置されている反射板とを用いて、前記測定対象物の座標を取得するレーザー測定方法であって、
前記反射板の設置位置に応じて、前記レーザー光源から出射するレーザー光を前記反射板に照射可能な位置に前記レーザー測定器を設置する工程と、
予め定められた測定準備点に、前記レーザー光源から出射したレーザー光を直接照射して得た準備点距離および前記レーザー光を前記測定準備点に向けて出射した準備点角度を取得する工程と、
前記測定準備点に、前記レーザー光源から出射したレーザー光を前記反射板で反射させて照射して得た準備点反射測定距離および前記レーザー光を前記反射板に向けて出射した準備点反射測定角度を取得する工程と、
前記準備点距離および前記準備点角度と、前記準備点反射測定距離および前記準備点反射測定角度とに基づき、前記反射板の傾いた姿勢に関する関数情報を作成する工程と、
前記測定対象物に、レーザー光源から出射したレーザー光を前記反射板で反射させて照射して得た測定対象物反射測定距離および前記レーザー光を前記反射板に向けて出射した測定対象物反射測定角度を取得する工程と、
前記測定対象物反射測定距離および前記測定対象物反射測定角度と、前記関数情報から、前記測定対象物の座標を求める工程と、
を備えたことを特徴とするレーザー測定方法。
レーザー光源から出射したレーザー光を対象物に照射して、その対象物からの戻り光を受光部で受光し、受光した時間と出射した時間との時間差に基づいて距離を測定可能なレーザー測定器と、測定対象物に反射光を照射可能な位置に設置されている反射板とを用いて、前記測定対象物の座標を得るためのレーザー測定プログラムであって、
前記レーザー測定器に含まれるコンピュータに、
予め入力されて特定されている測定準備点に、前記レーザー光源から出射したレーザー光を直接照射して得た準備点距離および前記レーザー光を前記測定準備点に向けて出射した準備点角度を取得する処理と、
前記測定準備点に、前記レーザー光源から出射したレーザー光を前記反射板で反射させて照射して得た準備点反射測定距離および前記レーザー光を前記反射板に向けて出射した準備点反射測定角度を取得する処理と、
前記準備点距離および前記準備点角度と、前記準備点反射測定距離および前記準備点反射測定角度とに基づき、前記反射板の傾いた姿勢に関する関数情報を作成する処理と、
前記測定対象物に、レーザー光源から出射したレーザー光を前記反射板で反射させて照射して得た測定対象物反射測定距離および前記レーザー光を前記反射板に向けて出射した測定対象物反射測定角度を取得する処理と、
前記測定対象物反射測定距離および前記測定対象物反射測定角度と、前記関数情報から、前記測定対象物の座標を求める処理と、
を実行させることを特徴とするレーザー測定プログラム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、営業運転中の鉄道の軌道内や高圧電圧が印加されている電車線の近傍等の場所は、通常立ち入ることができないので、結果として、このような場所の構造物の3次元画像(座標)に対してはレーザー光を直接照射することができず、測定対象物の3次元画像情報(座標)を得ることができないといった問題点があった。
【0008】
本発明の目的は、レーザー光を直接照射することができない場所にある測定対象物の3次元画像情報(座標)を得ることができるレーザー測定装置、レーザー測定方法及びレーザー測定プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本出願に係る一の発明は、レーザー測定装置であって、
測定対象物に反射光を照射可能な位置に予め設置される反射板と、
レーザー光源から出射したレーザー光を前記反射板で反射させて前記測定対象物に照射し、前記測定対象物からの戻り光を受光部で受光し、受光した時間と出射した時間との時間差から得られる距離と、前記レーザー光を前記反射板に向けて出射した角度と、前記反射板の傾いた姿勢に関する関数情報から前記測定対象物の座標を求める制御部を有するレーザー測定器と、
を備え、
前記制御部は、
予め定められた測定準備点に、前記レーザー光源から出射したレーザー光を直接照射し、前記測定準備点からの戻り光を受光部で受光し、受光した時間と出射した時間との時間差から得た距離および前記レーザー光を前記測定準備点に向けて出射した角度と、
前記測定準備点に、前記レーザー光源から出射したレーザー光を前記反射板で反射させて照射し、前記測定準備点からの戻り光を受光部で受光し、受光した時間と出射した時間との時間差から得た距離および前記レーザー光を前記反射板に向けて出射した角度と、に基づき、前記関数情報を作成する機能を有するようにした。
【0010】
また、本出願に係る他の発明は、
レーザー光源から出射したレーザー光を対象物に照射して、その対象物からの戻り光を受光部で受光し、受光した時間と出射した時間との時間差に基づいて距離を測定可能なレーザー測定器と、測定対象物に反射光を照射可能な位置に設置されている反射板とを用いて、前記測定対象物の座標を取得するレーザー測定方法であって、
前記反射板の設置位置に応じて、前記レーザー光源から出射するレーザー光を前記反射板に照射可能な位置に前記レーザー測定器を設置する工程と、
予め定められた測定準備点に、前記レーザー光源から出射したレーザー光を直接照射して得た準備点距離および前記レーザー光を前記測定準備点に向けて出射した準備点角度を取得する工程と、
前記測定準備点に、前記レーザー光源から出射したレーザー光を前記反射板で反射させて照射して得た準備点反射測定距離および前記レーザー光を前記反射板に向けて出射した準備点反射測定角度を取得する工程と、
前記準備点距離および前記準備点角度と、前記準備点反射測定距離および前記準備点反射測定角度とに基づき、前記反射板の傾いた姿勢に関する関数情報を作成する工程と、
前記測定対象物に、レーザー光源から出射したレーザー光を前記反射板で反射させて照射して得た測定対象物反射測定距離および前記レーザー光を前記反射板に向けて出射した測定対象物反射測定角度を取得する工程と、
前記測定対象物反射測定距離および前記測定対象物反射測定角度と、前記関数情報から、前記測定対象物の座標を求める工程と、
を備えるようにした。
【0011】
また、本出願に係る他の発明は、
レーザー光源から出射したレーザー光を対象物に照射して、その対象物からの戻り光を受光部で受光し、受光した時間と出射した時間との時間差に基づいて距離を測定可能なレーザー測定器と、測定対象物に反射光を照射可能な位置に設置されている反射板とを用いて、前記測定対象物の座標を得るためのレーザー測定プログラムであって、
前記レーザー測定器に含まれるコンピュータに、
予め入力されて特定されている測定準備点に、前記レーザー光源から出射したレーザー光を直接照射して得た準備点距離および前記レーザー光を前記測定準備点に向けて出射した準備点角度を取得する処理と、
前記測定準備点に、前記レーザー光源から出射したレーザー光を前記反射板で反射させて照射して得た準備点反射測定距離および前記レーザー光を前記反射板に向けて出射した準備点反射測定角度を取得する処理と、
前記準備点距離および前記準備点角度と、前記準備点反射測定距離および前記準備点反射測定角度とに基づき、前記反射板の傾いた姿勢に関する関数情報を作成する処理と、
前記測定対象物に、レーザー光源から出射したレーザー光を前記反射板で反射させて照射して得た測定対象物反射測定距離および前記レーザー光を前記反射板に向けて出射した測定対象物反射測定角度を取得する処理と、
前記測定対象物反射測定距離および前記測定対象物反射測定角度と、前記関数情報から、前記測定対象物の座標を求める処理と、
を実行させるようにした。
【0012】
かかる構成のレーザー測定装置、レーザー測定方法及びレーザー測定プログラムによれば、レーザー光を反射板で反射させて測定した測定準備点までの距離(準備点反射測定距離)と、そのときレーザー光を反射板に向けて出射した角度(準備点反射測定角度)を得るとともに、レーザー光を測定準備点に直接照射して測定した測定準備点までの距離(準備点距離)と、そのときレーザー光を測定準備点に向けて出射した角度(準備点角度)を得ることで、それら距離と角度に基づいて反射板の傾いた姿勢に関する関数情報を作成することができる。
そして、この関数情報が取得できれば、レーザー光を反射板で反射させて測定した測定対象物までの距離(測定対象物反射測定距離)と、そのときレーザー光を反射板に向けて出射した角度(測定対象物反射測定角度)と、関数情報とから、測定対象物の座標を算出して求めることができる。
こうして、レーザー光を直接照射することができない場所にある測定対象物の3次元画像情報(座標)を得ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、レーザー光を直接照射することができない場所にある測定対象物の3次元画像情報(座標)を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明に係るレーザー測定装置、レーザー測定方法及びレーザー測定プログラムの実施形態について詳細に説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0016】
図1は、レーザー光を直接照射することができない場所にある測定対象物OB11の3次元画像情報(座標)を得る3次元レーザー測定装置100の機能を表した概略構成図である。
本実施形態の3次元レーザー測定装置100(以下、単に測定装置100)は、
図1に示すように、3次元レーザー測定器1と反射板2とを備えて構成されている。
3次元レーザー測定器1は、任意の位置に設置されて使用される。一方、反射板2は、レーザー光を直接照射することができない場所にある測定対象物OB11に対して反射光RL11を照射可能な位置に予め設置されて使用される。
【0017】
図1に示すように、3次元レーザー測定時において、3次元レーザー測定器1は、レーザー光源15(後述)からレーザー光OL11を出射させ、反射板2に入射させる。反射板2に入射されたレーザー光OL11は反射され、反射光RL11として測定対象物OB11に照射される。そして、測定対象物OB11からの戻り光ML11は、反射板2で再び反射され、戻り光ML12として3次元レーザー測定器1の受光部16(後述)に入射される。
ちなみに、
図1においては、レーザー光OL11等を互いに区別し易いように、それぞれ異なる光路で示しているが、勿論、実際には、レーザー光OL11の光路と戻り光ML12の光路は同一であり、反射光RL11の光路と戻り光ML11の光路は同一である。
【0018】
そして、3次元レーザー測定器1の制御部11(後述)は、レーザー光源15からレーザー光OL11を出射した時間と、受光部16で戻り光ML12を受光した時間との時間差を求めて、測定対象物OB11までの距離を求めることができる。
【0019】
また、3次元レーザー測定器1は、レーザー光源15から出射したレーザー光を対象物(例えば、後述する測定準備点P4)に直接照射して、その対象物からの戻り光を受光部16で受光し、受光した時間と出射した時間との時間差に基づいて、対象物までの距離を求めることもできる。
【0020】
3次元レーザー測定器1は、
図1に示すように、制御部11、操作入力部12、表示部13、記憶部14、レーザー光源15、受光部16、走査部17を備えている。上記各部は、内部バスや配線等により互いに接続され、制御部11によって制御可能な状態にある。
反射板2は、入射されたレーザー光を反射させることが可能な部材である。例えば、反射板2は、ミラー、表面が鏡面加工された金属板、表面に反射層が形成された部材等であってよい。
【0021】
操作入力部12は、ユーザからの操作入力を受け付け、その操作入力に応じた操作信号を制御部11へ出力する。
例えば、操作入力部12は、3次元レーザー測定器1を設置した位置の座標情報の入力を受け付けたり、測定器1(レーザー光源15)から出射するレーザー光OL11の出射角度を走査部17が切り替えるための操作入力を受け付けたりする。
なお、操作入力部12は、スマートフォンやタブレット端末等のように、表示部13と一体的に形成されたタッチパネルなどであってもよい。
【0022】
表示部13は、制御部11から出力された表示制御信号に基づいた画像を表示画面に表示する。例えば、表示部13は、LCD(Liquid Crystal Display)、有機EL(Electro Luminescence)素子を用いたFPD(Flat Panel Display)などであってよい。
なお、表示部13は、スマートフォンやタブレット端末等のように、操作入力部12と一体的に形成されたタッチパネルなどであってもよい。
【0023】
記憶部14は、プログラムデータ(例えば3次元レーザー測定プログラム)や各種設定データ等を制御部11から読み書き可能に記憶する。例えば、記憶部14は、HDD(Hard Disk Drive)や半導体メモリなどであってよい。
【0024】
レーザー光源15は、制御部11の制御により、測定対象物OB11など所定の対象物までの距離を測定するためのレーザー光を出射する。例えば、レーザー光源15は、半導体レーザー素子等であってよい。
なお、レーザー光源15から出射されるレーザー光の波長及び出力パワーは、距離の測定に適した波長等であればよく、また、人間の目に安全な波長及び出力パワーであることが望ましい。
【0025】
受光部16は、測定対象物OB11からの戻り光ML12など、レーザー光源15から出射されたレーザー光の戻り光を受光して制御部11に受光した情報を出力する。例えば、受光部16は、フォトダイオード等の半導体受光素子であってよい。
【0026】
走査部17は、制御部11の制御により、測定器1から出射されるレーザー光の出射角度(出射方向)を走査するように切り替える。この走査部17は、測定器1(レーザー光源15)から出射したレーザー光の出射角度情報を制御部11に出力する。例えば、走査部17は、光学的に出射されるレーザー光の出射角度を切り替えるものであってよいし、或いは機械的にレーザー光源15の出射方向を変化させてレーザー光の出射角度を切り替えるものであってよい。また、レーザー光源15自体が走査部17の機能を併せ持つものであってもよい。
【0027】
制御部11は、3次元レーザー測定器1の動作を中央制御する。具体的には、制御部11は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを有しており、RAMの作業領域に展開された記憶部14(あるいはROM)に記憶されているプログラムデータとCPUとの協働により測定器の各部を統括制御する。つまり、制御部11は、3次元レーザー測定器1を統括制御するコンピュータとして機能する。
【0028】
特に、制御部11は、レーザー光源15から出射したレーザー光OL11を反射板2で反射させて、その反射光RL11を測定対象物OB11に照射し、測定対象物OB11からの戻り光ML11,ML12を受光部16で受光し、受光した時間とレーザー光OL11を出射した時間との時間差から得られる距離と、レーザー光OL11を反射板2に向けて出射した角度と、反射板2の傾いた姿勢に関する関数情報とから、測定対象物OB11の座標を求める処理を実行する。
【0029】
また、制御部11は、予め定められた測定準備点に、レーザー光源15から出射したレーザー光を直接照射し、その測定準備点からの戻り光を受光部16で受光し、受光した時間とレーザー光を出射した時間との時間差から得た距離およびレーザー光を測定準備点に向けて出射した角度と、測定準備点に、レーザー光源15から出射したレーザー光を反射板2で反射させて照射し、その測定準備点からの戻り光を受光部16で受光し、受光した時間とレーザー光を出射した時間との時間差から得た距離およびレーザー光を反射板に向けて出射した角度とに基づき、反射板2の傾いた姿勢に関する関数情報を作成する処理を実行する。
【0030】
次に、本実施形態の測定装置100を用いて、レーザー光を直接照射することができない場所にある測定対象物の座標を取得する手順について説明する。
本実施形態の測定装置100を用いた3次元レーザー測定方法によって、測定対象物の座標を取得するにあたり、まず、レーザー光を直接照射することができない場所にある測定対象物に対して反射光を照射可能な位置に設置した反射板2の傾いた姿勢に関する関数情報を作成するための準備測定を行う。
そして、準備測定によって関数情報を得た後、実際に測定対象物の座標を得るための測定を行うことが可能になる。
なお、本実施形態では、駅構内HS41において、プラットホームPH41に設置した3次元レーザー測定器1により、軌道RW41の上方であってレーザー光を直接照射できない測定対象物(後述する測定点P2;
図5参照)の座標を求める場合を例に説明する。
【0031】
[関数情報を得るための準備測定]
反射板2の傾いた姿勢に関する関数情報を得るための準備測定について、
図2、
図3に基づき説明する。
図2は、準備測定における3次元レーザー測定器1の動作や処理を示すフローチャートである。
図3は、準備測定において、反射板2の傾いた姿勢に関する関数情報を作成する過程を示す説明図である。なお、
図3では、説明を簡単にするために、2次元座標を用いて説明しているが、勿論、z軸の座標情報を加味することにより、3次元座標に展開することは容易である。
【0032】
図3に示すように、プラットホームPH41上に3次元レーザー測定器1が設置され、レーザー光を直接照射することができない場所にある測定対象物(後述する測定点P2;
図5参照)に対して反射光を照射可能な位置に反射板2が設置されている。
3次元レーザー測定器1は、反射板2の設置位置に応じて、レーザー光源15から出射するレーザー光を反射板2に照射可能な位置に設置されている。
反射板2は、例えばプラットホームPH41上に設置された基台(図示省略)に配設されている伸縮棒の先端に取り付けられており、その伸縮棒の長さや向きを調整して反射板2が軌道RW41の上側に位置するように設置されている。
また、3次元レーザー測定器1の制御部11は、測定器1の座標を特定して原点P0(0,0)としている。
また、この制御部11は、操作入力部12を介して入力された測定準備点P4の位置情報を特定している。
【0033】
まず、制御部11は、レーザー光源15を制御して、予め定められた測定準備点P4に、レーザー光源15から出射したレーザー光を反射板2で反射させて照射し、その測定準備点P4からの戻り光を受光部16で受光し、受光した時間とレーザー光を出射した時間との時間差から測定準備点P4までの反射光路長L0を測定する(ステップS101)。また、このステップS101において、レーザー光を反射板2に向けて出射した角度θ11が得られている。
例えば、測定準備点P4までの反射光路長L0は、レーザー光の伝搬速度に、レーザー光を出射した時間と戻り光を受光した時間との時間差を乗算した値の1/2の値として求めることができる。そして、反射板2でレーザー光が反射した箇所を反射点P3(x3,y3)とすると、測定準備点P4までの反射光路長L0は、原点P0から反射点P3までの距離L1と、反射点P3から測定準備点P4までの距離L2との和(L0=L1+L2)の長さになる。
また、反射板2に写る測定準備点P4の鏡像を仮想点P4’とすると、原点P0と仮想点P4’の距離はL0(=L1+L2)に相当する。
【0034】
次いで、制御部11は、レーザー光源15を制御して、測定準備点P4に、レーザー光源15から出射したレーザー光を直接照射し、その測定準備点P4からの戻り光を受光部16で受光し、受光した時間とレーザー光を出射した時間との時間差から測定準備点P4までの光路長(L3)を測定する(ステップS102)。また、このステップS102において、レーザー光を測定準備点P4に向けて出射した角度θ12が得られている。
原点P0から測定準備点P4までの光路長L3も同様に、レーザー光の伝搬速度に、レーザー光を出射した時間と戻り光を受光した時間との時間差を乗算した値の1/2の値として求めることができる。
【0035】
次いで、制御部11は、測定準備点P4と原点P0を結ぶ線分と、反射点P3と原点P0を結ぶ線分とで挟まれた内角θ13(θ13=θ12−θ11)を算出する(ステップS103)。
【0036】
次いで、制御部11は、測定準備点P4と仮想点P4’とを結ぶ線分の距離Aを算出する(ステップS104)。なお、距離Aは、不等辺三角形の公式に基づき、
A=√(L0
2+L3
2−2・L0・L3・cosθ13)として求めることができる。
【0037】
次いで、制御部11は、原点P0と仮想点P4’とを結ぶ線分に対し、測定準備点P4から引いた補助垂線h1の距離(h1=L3・sinθ13)を算出する(ステップS105)。
【0038】
次いで、制御部11は、測定準備点P4と仮想点P4’を結ぶ線分と、原点P0と仮想点P4’を結ぶ線分とで挟まれた内角θ14(θ14=asin(h1/A))を算出する(ステップS106)。
【0039】
次いで、制御部11は、測定準備点P4と仮想点P4’とを結ぶ線分に対し、反射点P3から引いた補助垂線h2の距離(h2=(A/2)・tanθ14)を算出する(ステップS107)。
【0040】
次いで、制御部11は、反射点P3から測定準備点P4までの距離L2を算出する(ステップS108)。
ここで、反射点P3から測定準備点P4までの距離L2は、反射点P3から仮想点P4’までの距離L2’と同じ距離なので、
L2=L2’=h2/sinθ14として求めることができる。
【0041】
次いで、制御部11は、原点P0から反射点P3までの距離L1(L1=L0−L2)を算出する(ステップS109)。
【0042】
次いで、制御部11は、測定準備点P4と反射点P3とを結ぶ線分と、補助垂線h2とで挟まれた内角θ15(θ15=acos(h2/L2))を算出する(ステップS110)。
【0043】
次いで、制御部11は、反射板2の設置角度の裏角θ16
(θ16=180−θ11−θ15)を算出する(ステップS111)。
【0044】
次いで、制御部11は、反射板2の設置角度θ10(θ10=180−θ16)を算出する(ステップS112)。
【0045】
次いで、制御部11は、反射板2の傾いた姿勢に関する関数情報を求める(ステップS113)。
ここで、反射板2の反射面上には、反射点P3(x3,y3)があるので、
x3=L1・cosθ11
y3=L1・sinθ11
であり、切片bは、b=y3−x3・tanθ10
と、求めることができる。
つまり、反射板2の傾いた姿勢に関する関数情報は、
y=x・tanθ10+b
という方程式として作成される。
この取得した関数情報(y=x・tanθ10+b)は、記憶部14に格納され、準備測定が終了する。
【0046】
すなわち、レーザー光を反射板2で反射させて測定した測定準備点P4までの距離L0と、そのときレーザー光を反射板2に向けて出射した角度θ11を得るとともに、レーザー光を測定準備点P4に直接照射して測定した測定準備点P4までの距離L3と、そのときレーザー光を測定準備点P4に向けて出射した角度θ12を得ることで、反射板2の傾いた姿勢に関する関数情報を作成し、取得することができる。
【0047】
[測定対象物の座標を求める測定]
準備測定によって関数情報を得た後に行う、測定対象物(測定点P2)の座標を得るための本測定について、
図4、
図5に基づき説明する。
図4は、本測定における3次元レーザー測定器1の動作や処理を示すフローチャートである。
図5は、本測定において、レーザー光を直接照射できない測定点P2の座標を求める過程を示す説明図である。なお、
図5では、説明を簡単にするために、2次元座標を用いて説明しているが、勿論、z軸の座標情報を加味することにより、3次元座標に展開することは容易である。
【0048】
図5に示すように、準備測定の際に設置された3次元レーザー測定器1と反射板2は、準備測定時の姿勢を維持した状態で設置されている。
なお、3次元レーザー測定器1の制御部11は、操作入力部12を介して入力された測定点P2の位置情報を特定している。
そして、まず、制御部11は、レーザー光源15を制御して、測定点P2(x2,y2)に、レーザー光源15から出射したレーザー光を反射板2で反射させて照射し、その測定点P2からの戻り光を受光部16で受光し、受光した時間とレーザー光を出射した時間との時間差から測定点P2までの反射光路長Lを測定する(ステップS201)。また、このステップS201において、レーザー光を反射板2に向けて出射した角度θ1が得られている。
そして、反射板2でレーザー光が反射した箇所を反射点P1(x1,y1)とすると、測定点P2までの反射光路長Lは、原点P0から反射点P1までの距離L1と、反射点P1から測定点P2までの距離L2との和(L=L1+L2)の長さになる。
【0049】
次いで、制御部11は、反射板2の反射面と鉛直線との内角θ2
(θ2=180−90−θ10)を算出する(ステップS202)。
【0050】
次いで、制御部11は、反射板2の設置角度(θ10)の裏角θ3
(θ3=180−θ10)を算出する(ステップS203)。
【0051】
次いで、制御部11は、原点P0と反射点P1を結ぶ線分と、反射板2の反射面との内角θ4(θ4=180−θ1−θ3)を算出する(ステップS204)。
【0052】
次いで、制御部11は、測定点P2と反射点P1を結ぶ線分と鉛直線との内角θ5
(θ5=θ4−θ2)を算出する(ステップS205)。
【0053】
次いで、制御部11は、原点P0と反射点P1を結ぶ線分の関数y=x・tanθ1と、反射板2の傾いた姿勢に関する関数情報(y=x・tanθ10+b)とに基づき、これら関数の交点(L1x,L1y)を求める(ステップS206)。
L1xは、L1x=b/(tanθ1−tanθ10)
L1yは、L1y=L1x・tanθ1
と求めることができる。
【0054】
次いで、制御部11は、原点P0と反射点P1を結ぶ線分の距離L1と、反射点P1と測定点P2を結ぶ線分の距離L2を求める(ステップS207)。
L1は、L1=√(L1x
2+L1y
2)
L2は、L2=L−L1
と求めることができる。
【0055】
次いで、制御部11は、反射点P1と測定点P2を結ぶ線分の距離L2に関するx成分L2xとy成分L2yを求める(ステップS208)。
L2xは、L2x=L2・sinθ5
L2yは、L2y=L2・conθ5
と求めることができる。
【0056】
次いで、制御部11は、測定点P2(x2,y2)の座標を求める(ステップS209)。
x2は、x2=L1x−L2x
y2は、y2=L1y+L2y
と求めることができる。
こうして、測定点P2(x2,y2)の座標を測定することができる。
【0057】
すなわち、反射板2の傾いた姿勢に関する関数情報(y=x・tanθ10+b)を取得するとともに、レーザー光を反射板2で反射させて測定した測定点P2までの距離Lと、そのときレーザー光を反射板2に向けて出射した角度θ1を得ることで、測定点P2(x2,y2)の座標を算出して求めることができる。
【0058】
なお、レーザー光の出射角度を走査部17で走査して、測定された測定点の座標を順次プロットして3次元画像情報を得ることについての説明は省略する。
また、所定箇所に設置した3次元レーザー測定器1からレーザー光を走査する測定を行うことに限らず、例えば、レールに沿って移動可能とする3次元レーザー測定器1を使い、その3次元レーザー測定器1自体を移動させながらレーザー光を走査する測定を行うようにして、連続的に面的な測定を行い、測定された測定点の座標を順次プロットして3次元画像情報を得ることも可能である。
【0059】
以上のように、レーザー光を反射板2で反射させて測定した測定準備点P4までの距離L0(準備点反射測定距離)と、そのときレーザー光を反射板2に向けて出射した角度θ11(準備点反射測定角度)を得るとともに、レーザー光を測定準備点P4に直接照射して測定した測定準備点P4までの距離L3(準備点距離)と、そのときレーザー光を測定準備点P4に向けて出射した角度θ12(準備点角度)を得ることで、それら距離(距離L0、距離L3)と角度(θ11、θ12)とに基づいて、反射板2の傾いた姿勢に関する関数情報(y=x・tanθ10+b)を作成して取得することができる。
そして、その関数情報(y=x・tanθ10+b)を取得できれば、レーザー光を反射板2で反射させて測定した測定点P2までの距離L(測定対象物反射測定距離)と、そのときレーザー光を反射板2に向けて出射した角度θ1(測定対象物反射測定角度)と、その関数情報とから、測定点P2(x2,y2)の座標を算出して求めることができる。
このように、レーザー光を直接照射することができない場所にある測定対象物(測定点P2)の3次元画像情報(座標)を得ることができる。
【0060】
(反射板の変形例)
次に、レーザー光を直接照射することができない場所にある測定対象物に対して反射光を照射可能にする反射板2の変形例について説明する。
【0061】
例えば、レーザー光を直接照射することができない場所にあるボルトやナットなどの締結具を測定対象物として、その締結具の緩みや脱落の有無を上述した3次元レーザー測定方法によって観察することがある。
また、レーザー光を直接照射することができない場所での腐食箇所を測定対象物として、その腐食箇所の腐食の進行に伴う変形を上述した3次元レーザー測定方法によって観察することがある。
このように、レーザー光を直接照射することができない場所にある測定対象物の3次元画像情報(座標)を長期間に亘って継続的に測定する場合、測定の度に反射板2を設置して準備測定を行い、反射板2の関数情報を作成するのでは作業効率が悪い。
【0062】
そこで、そのような測定対象物の3次元画像情報(座標)を長期間に亘って継続的に測定する場合には、
図6(a)に示すような反射板2を用い、その反射板2を測定対象物の近傍に取り付けて3次元レーザー測定に使用する。
図6(a)に示すように、反射板2は、例えば、鏡面部21と、爪部22aを有する固定部22と、鏡面部21と固定部22の間の折曲部23を備えている。
この反射板2は、金属板を材料に成形されている。なお、鏡面部21は、金属板の一部を鏡面加工したものでも、金属板にミラー部材を固設したものでもよい。
【0063】
例えば、この反射板2を折屋根3に取り付ける場合、
図6(b)(c)に示すように、折屋根3とタイトフレーム4の隙間に固定部22を挿し入れ、固定部22の爪部22aを曲げてタイトフレーム4に固定する。
そして、
図6(d)に示すように、折曲部23を折り曲げたり捻じ曲げたりして、鏡面部21の反射面の角度を調整し、折屋根3の下の測定対象物に対して反射光を照射可能にする。
【0064】
このように、反射板2を測定対象物の近傍に取り付けて、その測定対象物に対して反射光を照射可能としておけば、原点位置に3次元レーザー測定器1を設置して速やかに3次元レーザー測定を行うことができる。
【0065】
なお、反射板2の固定部22の形状は上記したものに限らず、反射板2を取り付ける箇所にある隙間や突起物などに応じて、適宜設計すればよい。
また、反射板2を取り付ける箇所は折屋根3に限らず、その他の測定箇所や検査箇所であってもよいのは勿論である。
【0066】
(3次元レーザー測定の応用例)
次に、測定装置100を使用した、3次元レーザー測定の応用例について説明する。
例えば、天井に照明器具や看板などを取り付けることがあるが、その照明具や看板が重量物である場合、天井裏にある構造物に吊り具を固定し、その吊り具によって吊り下げた照明器具や看板を天井に取り付けることがある。
但し、室内からは天井裏の構造物の配置が分かり難いので、照明器具や看板の取り付け位置となる箇所の天井面に、正確に取り付け用の穴を形成することが困難になることがある。
【0067】
そこで、そのような場合、
図7に示すように、天井に設けられている天井点検口を開いて、そこから天井裏に反射板2を挿し入れて設置し、3次元レーザー測定を行えば、レーザー光を直接照射することができない場所にある天井裏の構造物5の3次元画像情報(3次元座標)を得ることができる。
こうして得た天井裏の構造物5の3次元座標を、z軸方向(鉛直方向)に所定量スライドさせるようにして天井面に投影するようにすれば、天井裏の構造物5に対応する照明器具や看板の取り付け位置を容易に把握することができる。
【0068】
このように、天井裏の構造物5の3次元座標を得ることができれば、その構造物5の下方に相当する天井面の位置情報を求めることができ、天井裏の構造物5に対応する箇所に取り付け用の穴を正確に形成することができる。
【0069】
なお、こうした3次元レーザー測定の応用例は、天井裏の構造物の測定に限らない。
例えば、床面に設けられている床下点検口を開いて、そこから床下に反射板2を挿し入れて設置し、3次元レーザー測定を行えば、レーザー光を直接照射することができない場所にある床下の構造物の3次元画像情報(3次元座標)を得ることができる。そして、床下の構造物に対応する箇所に取り付け用の穴などを正確に形成することができる。
また、壁面に設けられている窓などの開口部を開いて、そこから隣室や外壁側に反射板2を挿し入れて設置し、3次元レーザー測定を行えば、レーザー光を直接照射することができない場所にある隣室や外壁面の構造物の3次元画像情報(3次元座標)を得ることができる。そして、隣室や外壁面の構造物に対応する箇所に取り付け用の穴などを正確に形成することができる。
【0070】
また、配管やダクトの内部を測定して、その内面の3次元画像情報(3次元座標)を得ることや、橋梁の下面(裏面)を測定して、その面の3次元画像情報(3次元座標)を得ることができるので、作業者が入り込めない箇所の測定や点検を行うこともできる。
【0071】
また、測定対象物に反射光を照射可能であれば、反射板2は手鏡サイズであっても、手鏡サイズより小さくてもよいので、狭隘な隙間や空間の内部測定も可能である。
例えば、文化財である仏像の内部空間の形状を測定して、その内部空間の3次元画像情報(3次元座標)を得ることや、口腔内の形状を測定して、その内部空間の3次元画像情報(3次元座標)を得ることもできる。
【0072】
なお、以上の実施の形態においては、レーザー光源15から出射したレーザー光を対象物に照射して、その対象物からの戻り光を受光部16で受光し、受光した時間と出射した時間との時間差に基づいて距離を測定する3次元レーザー測定器1を用いた時間差式の測定を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、レーザー光源15から出射したレーザー光と、受光部16で受光したレーザー光の位相差に基づいて距離を測定することが可能なレーザー測定器を用いる位相差式の測定を行うようにしてもよい。
【0073】
また、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。