特許第6742890号(P6742890)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6742890
(24)【登録日】2020年7月31日
(45)【発行日】2020年8月19日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 15/06 20060101AFI20200806BHJP
   B60C 15/00 20060101ALI20200806BHJP
【FI】
   B60C15/06 C
   B60C15/06 N
   B60C15/00 B
   B60C15/06 Q
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-230232(P2016-230232)
(22)【出願日】2016年11月28日
(65)【公開番号】特開2018-86889(P2018-86889A)
(43)【公開日】2018年6月7日
【審査請求日】2019年9月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】横枕 聖二
【審査官】 橋本 有佳
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−155208(JP,A)
【文献】 特開2001−206027(JP,A)
【文献】 中国実用新案第205239025(CN,U)
【文献】 特開2014−040183(JP,A)
【文献】 特開平01−262205(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C15/00−15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビード部に埋設されたビードコアと、前記ビードコアのタイヤ径方向外側に配置されたビードフィラーと、前記ビードコアの周りをタイヤ軸方向内側から外側に巻き上げられたカーカスプライと、前記カーカスプライの外側においてタイヤ軸方向内側から外側に巻き上げられた内側金属補強層と、前記内側金属補強層の外側においてタイヤ軸方向内側から外側に巻き上げられた外側金属補強層と、前記内側金属補強層と前記外側金属補強層の間に設けられタイヤ軸方向内側から外側に巻き上げられた緩衝層と、を備え、
前記カーカスプライはプライコードと前記プライコードを被覆するカーカスゴムとを備え、前記内側金属補強層及び前記外側金属補強層は金属コードと前記金属コードを被覆する被覆ゴムとを備え、前記緩衝層は前記カーカスゴム及び前記被覆ゴムより高硬度のゴムを備える空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記内側金属補強層のタイヤ軸方向外側端、前記緩衝層のタイヤ軸方向外側端、及び前記外側金属補強層のタイヤ軸方向外側端が、前記ビードコアのタイヤ径方向外側面を延長したビード上側ラインよりタイヤ径方向外方に位置し、
前記内側金属補強層のタイヤ軸方向外側端が前記緩衝層のタイヤ軸方向外側端よりタイヤ径方向外方に位置し、前記緩衝層のタイヤ軸方向外側端が前記外側金属補強層のタイヤ軸方向外側端よりタイヤ径方向外方に位置する請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記内側金属補強層のタイヤ軸方向内側端、前記緩衝層のタイヤ軸方向内側端、及び前記外側金属補強層のタイヤ軸方向内側端が、前記ビードコアのタイヤ径方向外側面を延長したビード上側ラインよりタイヤ径方向外方に位置し、
前記内側金属補強層のタイヤ軸方向内側端が前記緩衝層のタイヤ軸方向内側端よりタイヤ径方向外方に位置し、前記緩衝層のタイヤ軸方向内側端が前記外側金属補強層のタイヤ軸方向内側端よりタイヤ径方向外方に位置する請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記カーカスプライの巻き上げ端が前記内側金属補強層のタイヤ軸方向外側端よりタイヤ径方向外方に位置する請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記内側金属補強層のタイヤ軸方向内側端が前記カーカスプライの巻き上げ端よりタイヤ径方向外方に位置し、
前記カーカスプライの巻き上げ端が前記外側金属補強層のタイヤ軸方向内側端よりタイヤ径方向外方に位置する請求項3に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤ、とりわけ重荷重用空気入りタイヤにおいては、ビード部の耐久性を向上することが求められる。ビード部の耐久性を向上するためには、ビード部の変形を抑制することにより、カーカスプライの巻き上げ端での歪みを低減させることが有効である。そのため、ビードコアの周りにおいてカーカスプライの外側に沿って金属コードを含む金属補強層を設けた空気入りタイヤが提案されている(特許文献1及び2参照)。
【0003】
特許文献1及び2では、ビード部における補強効果を高めるため、2層の金属補強層をカーカスプライの外側に沿わせて設けている。しかし、ビードコアの周りに2層の金属補強層を設けると2層の金属補強層の間に大きなせん断歪みが発生しやすくなるため、金属補強層の端部に応力が集中してしまい、ビード部の耐久性が悪化することがある。
【0004】
また、ビード部では、リムフランジと接触するリムストリップと呼ばれる部位に、リムフランジとの間で大きなせん断歪みが作用するが、上記のようにビードコアの周りに2層の金属補強層を設けるとビード部の剛性が高くなるため、リムフランジとの間で発生したせん断歪みがリムストリップ全体に分散されにくく局所的に作用しやくなり、リムストリップがリムフランジに擦れて摩耗しやすくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−155208号公報
【特許文献2】特開2008−195339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、リムフランジに対する耐摩耗性を損なうことなく、ビード部の耐久性を向上させることができる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る空気入りタイヤは、ビード部に埋設されたビードコアと、前記ビードコアのタイヤ径方向外側に配置されたビードフィラーと、前記ビードコアの周りをタイヤ軸方向内側から外側に巻き上げられたカーカスプライと、前記カーカスプライの外側においてタイヤ軸方向内側から外側に巻き上げられた内側金属補強層と、前記内側金属補強層の外側においてタイヤ軸方向内側から外側に巻き上げられた外側金属補強層と、前記内側金属補強層と前記外側金属補強層の間に設けられタイヤ軸方向内側から外側に巻き上げられた緩衝層と、を備え、前記カーカスプライはプライコードと前記プライコードを被覆するカーカスゴムとを備え、前記内側金属補強層及び外側金属補強層は金属コードと前記金属コードを被覆する被覆ゴムとを備え、前記緩衝層は前記カーカスゴム及び前記被覆ゴムより高硬度のゴムを備える。
【0008】
本発明の好ましい態様において、前記内側金属補強層のタイヤ軸方向外側端、前記緩衝層のタイヤ軸方向外側端、及び前記外側金属補強層のタイヤ軸方向外側端が、前記ビードコアのタイヤ径方向外側面を延長したビード上側ラインよりタイヤ径方向外方に位置し、前記内側金属補強層のタイヤ軸方向外側端が前記緩衝層のタイヤ軸方向外側端よりタイヤ径方向外方に位置し、前記緩衝層のタイヤ軸方向外側端が前記外側金属補強層のタイヤ軸方向外側端よりタイヤ径方向外方に位置してもよい。この場合において、前記カーカスプライの巻き上げ端が前記内側金属補強層のタイヤ軸方向外側端よりタイヤ径方向外方に位置してもよい。
【0009】
他の好ましい態様において、前記内側金属補強層のタイヤ軸方向内側端、前記緩衝層のタイヤ軸方向内側端、及び前記外側金属補強層のタイヤ軸方向内側端が、前記ビードコアのタイヤ径方向外側面を延長したビード上側ラインよりタイヤ径方向外方に位置し、前記内側金属補強層のタイヤ軸方向内側端が前記緩衝層のタイヤ軸方向内側端よりタイヤ径方向外方に位置し、前記緩衝層のタイヤ軸方向内側端が前記外側金属補強層のタイヤ軸方向内側端よりタイヤ径方向外方に位置してもよい。この場合において、前記内側金属補強層のタイヤ軸方向内側端が前記カーカスプライの巻き上げ端よりタイヤ径方向外方に位置し、前記カーカスプライの巻き上げ端が前記外側金属補強層のタイヤ軸方向内側端よりタイヤ径方向外方に位置してもよい。
【発明の効果】
【0010】
カーカスプライの外側においてタイヤ軸方向内側から外側に巻き上げられた内側金属補強層及び外側金属補強層との間に、カーカスプライを構成するカーカスゴムや、内側金属補強層及び外側金属補強層を構成する被覆ゴムより高硬度のゴムを含む緩衝層が設けられているため、内側金属補強層と外側金属補強層との間に生じるせん断歪みを緩衝層によって緩和することができ、ビード部の耐久性を向上させることができる。しかも、緩衝層によってリムフランジとの間で発生したせん断歪みがリムフランジとの接触部位全体に分散されやすくなり、リムフランジに対する耐摩耗性が低下しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態の空気入りタイヤを示すタイヤ子午線半断面図。
図2図1のビード部を拡大して示す図。
図3図1の空気入りタイヤのプライコードに対する内側金属補強層及び外側金属補強層が有する金属コードの傾斜角度と傾斜方向を示す模式図。
図4】第2実施形態の空気入りタイヤのビード部を拡大して示すタイヤ子午線断面図。
図5】比較例1の空気入りタイヤのビード部を拡大して示すタイヤ子午線断面図。
図6】比較例2の空気入りタイヤのビード部を拡大して示すタイヤ子午線断面図。
図7】比較例3の空気入りタイヤのビード部を拡大して示すタイヤ子午線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、第1実施形態の空気入りタイヤ(以下、「タイヤ」という)10の一例を示すタイヤ子午線断面図であり、規定リムのリムフランジ1に装着した状態での半断面を示している。
【0013】
本明細書において、タイヤ軸方向とは、タイヤ回転軸に平行な方向であって、タイヤ幅方向と同義であり、図において符号Yで示し、タイヤ軸方向内側及び外側をそれぞれ符号Y1及びY2で示す。また、タイヤ径方向(ラジアル方向)とは、タイヤ回転軸に垂直な方向であり、図において符号Zで示し、タイヤ径方向内側及び外側をそれぞれ符号Z1及びZ2で示す。
【0014】
また、本明細書において、カーカスプライ18の巻き上げ端18Eや、内側金属補強層32のタイヤ軸方向外側端32Eout及びタイヤ軸方向内側端32Einや、外側金属補強層34のタイヤ軸方向外側端34Eout及びタイヤ軸方向内側端34Einや、緩衝層36のタイヤ軸方向外側端36Eout及びタイヤ軸方向内側端36Einの位置は、タイヤを正規リムに装着して正規内圧を充填した無負荷の正規状態における位置である。正規リムとは、JATMA規格では「標準リム」、TRA規格では「Design Rim」、ETRTO規格では「Measuring Rim」である。正規内圧とは、JATMA規格では「最高空気圧」、TRA規格では「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の「最大値」、ETRTO規格では「INFLATION PRESSURE」である。
【0015】
実施形態に係るタイヤ10は、左右一対のビード部12と、ビード部12からタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォール部14と、左右のサイドウォール部14の径方向外方端部同士を連結するように両サイドウォール部14間に設けられたトレッド部16とを備える。
【0016】
タイヤ10の内部には、一対のビード部12間にまたがって延びるカーカスプライ18が埋設されている。カーカスプライ18は、トレッド部16からサイドウォール部14を通って延在し、ビード部12において両端部が係止されている。トレッド部16におけるカーカスプライ18の外周側にはベルト20が設けられており、カーカスプライ18の外周でトレッド部16を補強する。カーカスプライ18は、タイヤ周方向Fに対して略直交する方向(つまり、タイヤ軸方向Y)に沿って配列したプライコード19をカーカスゴムで被覆してなる。プライコード19としては、スチールコード等の金属コードや有機繊維コードが用いられる。
【0017】
カーカスプライ18の内側には、タイヤ10の内周面を構成する耐空気透過ゴム層としてのインナーライナー22が設けられている。サイドウォール部14では、カーカスプライ18の外側に、タイヤ10の外壁面を構成するサイドウォールゴム24が設けられている。また、サイドウォールゴム24のタイヤ径方向内側には、ビード部12のタイヤ軸方向外側においてリムフランジ1に接触するリムストリップ25が設けられている。
【0018】
図2に拡大して示すように、ビード部12には、ゴム被覆したビードワイヤを積層巻回した収束体よりなる環状のビードコア26と、このビードコア26のタイヤ径方向外側Z2に配置されたゴム製のビードフィラー28とが埋設されている。
【0019】
カーカスプライ18は、サイドウォール部14から延びる本体部18Aと、ビードコア26の周りにおいてタイヤ軸方向内側Y1から外側Y2に巻き上げられた巻き上げ部18Bとを備える。より具体的には、カーカスプライ18の本体部18Aは、ビードコア26及びビードフィラー28のタイヤ軸方向内側面に沿って配されている。そして、本体部18Aは、ビードコア26のタイヤ径方向内側(図1及び2の下側)Z1を通ってタイヤ軸方向外側Y2に巻き上げられ巻き上げ部18Bと一体に繋がっている。
【0020】
カーカスプライ18の巻き上げ部18Bは、ビードコア26及びビードフィラー28のタイヤ軸方向外側面に沿って配されており、その先端(即ち、巻き上げ部18Bのタイヤ径方向外側端)が巻き上げ端18Eとなる。
【0021】
ビード部12におけるカーカスプライ18の周りには、金属コード33,35を含む2層の金属補強層、具体的には、内側金属補強層32及び外側金属補強層34と、内側金属補強層32及び外側金属補強層34の間に設けられた緩衝層36とが設けられている。
【0022】
内側金属補強層32は、スチールコードなどの金属コード33に被覆ゴムを被覆することで形成されている。内側金属補強層32は、カーカスプライ18の外側をタイヤ軸方向内側Y1から外側Y2に巻き上げられ、ビードコア26の周りにおいてカーカスプライ18の外側を覆うように重ねて設けられている。
【0023】
外側金属補強層34は、スチールコードなどの金属コード35に被覆ゴムを被覆することで形成されている。外側金属補強層34は、緩衝層36の外側をタイヤ軸方向内側Y1から外側Y2に巻き上げられ、ビードコア26の周りにおいて緩衝層36の外側を覆うように重ねて設けられている。
【0024】
なお、この例では、外側金属補強層34を構成する金属コード35及び被覆ゴムは、内側金属補強層32を構成する金属コード33及び被覆ゴムと同じ材料からなるが、内側金属補強層32を構成する金属コード33及び被覆ゴムと異なるものであってもよい。
【0025】
緩衝層36は、内側金属補強層32の外側をタイヤ軸方向内側Y1から外側Y2に巻き上げられ、ビードコア26の周りにおいて内側金属補強層32の外側を覆うように重ねて設けられている。
【0026】
緩衝層36は、カーカスプライ18を構成するカーカスゴムや、内側金属補強層32を構成する被覆ゴムや、外側金属補強層34を構成する被覆ゴムより、加硫後のゴム硬度が大きい。本実施形態では、カーカスゴムや内側金属補強層32及び外側金属補強層34を構成する被覆ゴムのゴム硬度が75、緩衝層36を構成するゴムのゴム硬度が85に設定されている。もちろん、本発明はこれに限定されず、一例を挙げると、カーカスゴムや内側金属補強層32及び外側金属補強層34を構成する被覆ゴムのゴム硬度は、例えば、70〜79であってもよい。緩衝層36を構成するゴムのゴム硬度は、例えば、80〜90であってもよい。
【0027】
ここで、ゴム硬度は、JIS K6253に準拠して、23℃雰囲気において、タイプAデュロメータで測定される値(デュロメータ硬さ)である。
【0028】
このような硬度差をつける方法は、特に限定されない。例えば、使用するゴム成分の種類を変えたり、カーボンブラックやシリカ等の充填剤を増量したり、加硫剤や加硫促進剤を増量したりすることでゴム硬度を高めてもよい。
【0029】
内側金属補強層32、外側金属補強層34、及び緩衝層36は、ビードコア26(あるいはビードフィラー28)よりタイヤ軸方向外側Y2に位置する先端(以下、タイヤ軸方向外側端という)32Eout、34Eout、36Eoutが、ビードコア26のタイヤ径方向外側面26aを延長したビード上側ラインL1よりタイヤ径方向外方Z2に位置する。これにより、タイヤ10をリムフランジ1に装着した状態で、内側金属補強層32、外側金属補強層34、及び緩衝層36は、リムフランジ1においてリムストリップ25と接触する部分全体とリムストリップ25を挟んで対向している。
【0030】
内側金属補強層32のタイヤ軸方向外側端32Eoutは、外側金属補強層34のタイヤ軸方向外側端34Eoutや緩衝層36のタイヤ軸方向外側端36Eoutよりタイヤ径方向外方Z2に位置し、カーカスプライ18の巻き上げ端18Eよりタイヤ径方向内側Z1に位置している。緩衝層36のタイヤ軸方向外側端36Eoutは、外側金属補強層34のタイヤ軸方向外側端34Eoutよりタイヤ径方向外方Z2に位置している。
【0031】
これにより、タイヤ径方向外側Z2から順番にカーカスプライ18の巻き上げ端18E、内側金属補強層32のタイヤ軸方向外側端32Eout、緩衝層36のタイヤ軸方向外側端36Eout、外側金属補強層34のタイヤ軸方向外側端34Eoutが位置するように、各層のタイヤ軸方向外側端32Eout、34Eout、36Eoutがタイヤ径方向Zにずらして配置されている。
【0032】
また、内側金属補強層32、外側金属補強層34、及び緩衝層36においてビードコア26(あるいはビードフィラー28)よりタイヤ軸方向内側Y1に位置する先端(以下、タイヤ軸方向内側端という)32Ein、34Ein、36Einは、ビードコア26のタイヤ径方向内側面26bを延長したビード下側ラインL2よりタイヤ径方向外方Z2に位置する。内側金属補強層32及び緩衝層36のタイヤ軸方向内側端32Ein、36Einは、ビード上側ラインL1よりタイヤ径方向外方Z1に位置している。
【0033】
ここで、図1を参照してカーカスプライ18、内側金属補強層32、外側金属補強層34、及び緩衝層36の端部位置の一例を挙げると、ノミナル径Rnからカーカスプライ18の巻き上げ端18Eまでのタイヤ径方向Zの長さH0を38mm、ノミナル径Rnから内側金属補強層32のタイヤ軸方向内側端32Einまでのタイヤ径方向Zの長さH1inを45mm、ノミナル径Rnから内側金属補強層32のタイヤ軸方向外側端32Eoutまでのタイヤ径方向Zの長さH1outを30mm、ノミナル径Rnから外側金属補強層34のタイヤ軸方向内側端34Einまでのタイヤ径方向Zの長さH2inを5mm、ノミナル径Rnから外側金属補強層34のタイヤ軸方向外側端34Eoutまでのタイヤ径方向Zの長さH2outを20mm、ノミナル径Rnから緩衝層36のタイヤ軸方向内側端36Einまでのタイヤ径方向Zの長さH3inを15mm、ノミナル径Rnから緩衝層36のタイヤ軸方向外側端36Eoutまでのタイヤ径方向Zの長さH3outを25mmに設定することができる。
【0034】
内側金属補強層32及び外側金属補強層34が有する金属コード33,35の傾斜角度及び傾斜方向は、次のように設定されている。
【0035】
図3は、ビード部12におけるカーカスプライ18、内側金属補強層32、外側金属補強層34を展開した状態における、カーカスプライ18のプライコード19に対する金属コード33、35の傾斜角度と傾斜方向を示す。
【0036】
図3に示すように、内側金属補強層32の金属コード33及び外側金属補強層34の金属コード35は、カーカスプライ18のプライコード19に対して互いに逆方向に傾斜して交差している。本実施形態では、内側金属補強層32の金属コード33は、カーカスプライ18のプライコード19に対して+25°の角度αを有する。外側金属補強層34の金属コード35は、カーカスプライ18のプライコード19に対して−55°の角度βを有する。もちろん、本発明はこれに限定されない。内側金属補強層32の金属コード33は、カーカスプライ18のプライコード19に対して+15°〜+35°の角度αに設定することができる。外側金属補強層34の金属コード35は、カーカスプライ18のプライコード19に対して−40°〜−70°の角度βに設定することができる。また、内側金属補強層32及び外側金属補強層34の金属コード33及び金属コード35の交差角度は直角に近いことが好ましく、金属コード33及び金属コード35の交差角度が50〜105°の範囲となることが好ましい。
【0037】
なお、本実施形態では、内側金属補強層32の金属コード33は、カーカスプライ18の金属コード33に対して+15°〜+35°の角度を有するようにしているが、内側金属補強層32と外側金属補強層34とを入れ替えてもよい。すなわち、内側金属補強層32の角度αが−40°〜−70°であり且つ外側金属補強層34の角度βが+15°〜+35°となるようにしてもよい。
【0038】
以上のような本実施形態では、内側金属補強層32と外側金属補強層34の間に、内側金属補強層32及び外側金属補強層34を構成する被覆ゴムより加硫後のゴム硬度が大きい高硬度のゴムを含む緩衝層36が設けられているため、内側金属補強層32と外側金属補強層34との間に生じるせん断歪みを緩衝層36によって低減して内側金属補強層32及び外側金属補強層34の端部に応力が集中するのを抑えることができ、ビード部の耐久性を向上させることができる。
【0039】
しかも、走行時にリムフランジ1とリムストリップ25との間に発生するせん断歪みが、緩衝層36によってリムストリップ全体に分散されやすくなり、リムストリップ25の摩耗を抑えることができる。
【0040】
また、本実施形態では、内側金属補強層32のタイヤ軸方向外側端32Eout、緩衝層36のタイヤ軸方向外側端36Eout、及び外側金属補強層34のタイヤ軸方向外側端34Eoutが、ビードコア26のビード上側ラインL1よりタイヤ径方向外方に位置し、タイヤ10をリムフランジ1に装着した状態で、内側金属補強層32、外側金属補強層34、及び緩衝層36が、リムフランジ1においてリムストリップ25と接触する部分全体とリムストリップ25を挟んで対向している。そのため、緩衝層36が介在する内側金属補強層32及び外側金属補強層34を、リムフランジ1と接触し応力を受けやすい箇所全体に設けることができ、効果的に内側金属補強層32と外側金属補強層34との間に生じるせん断歪みを低減しつつリムストリップ25の摩耗を抑えることができる。
【0041】
さらにまた、本実施形態では、カーカスプライ18の巻き上げ端18E、内側金属補強層32のタイヤ軸方向外側端32Eout、緩衝層36のタイヤ軸方向外側端36Eout、外側金属補強層34のタイヤ軸方向外側端34Eoutが、タイヤ径方向Zにずらして位置されているため、カーカスプライ18、内側金属補強層32及び外側金属補強層34による補強効果をタイヤ径方向外側Z2に行くほど段階的に小さくすることができ、ビード部12のタイヤ軸方向外側における歪み応力の集中を抑え耐久性を向上させることができる。
【0042】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図4に基づいて説明する。なお、第1実施形態と同一の部分には説明は省略し、異なる部分について説明する。
【0043】
本実施形態では、ビード部12に設けられた外側金属補強層34のタイヤ軸方向内側端34Einの位置が上記した第1実施形態と異なっている。
【0044】
具体的には、内側金属補強層32、外側金属補強層34、及び緩衝層36は、タイヤ軸方向内側端32Ein、34Ein、36Einがビード上側ラインL1よりタイヤ径方向外方Z2に位置している。
【0045】
内側金属補強層32のタイヤ軸方向内側端32Einは、カーカスプライ18の巻き上げ端18Eや、外側金属補強層34のタイヤ軸方向内側端34Einや、緩衝層36のタイヤ軸方向内側端36Einよりタイヤ径方向外方Z2に位置している。緩衝層36のタイヤ軸方向内側端36Einは、外側金属補強層34のタイヤ軸方向内側端34Einよりタイヤ径方向外方Z2に位置している。
【0046】
これにより、内側金属補強層32、外側金属補強層34、及び緩衝層36は、ビードコア26のタイヤ径方向内側部分を包み込むように配置されるとともに、タイヤ径方向外側Z2から順番に内側金属補強層32のタイヤ軸方向内側端32Ein、カーカスプライ18の巻き上げ端18E、緩衝層36のタイヤ軸方向内側端36Ein、外側金属補強層34のタイヤ軸方向内側端34Einが位置するように、各層のタイヤ軸方向内側端32Ein、34Ein、36Einがタイヤ径方向Zにずらして配置されている。
【0047】
以上のような本実施形態では、内側金属補強層32、外側金属補強層34、及び緩衝層36のタイヤ軸方向外側端32Eout、34Eout、36Eoutに加え、内側金属補強層32、外側金属補強層34、及び緩衝層36のタイヤ軸方向内側端32Ein、34Ein、36Einもビード上側ラインL1よりタイヤ径方向外方Z2に位置しており、内側金属補強層32、外側金属補強層34、及び緩衝層36がビードコア26のタイヤ径方向内側部分をビードコア26のタイヤ径方向内側部分を包み込むように配置されている。そのため、内側金属補強層32及び外側金属補強層34による補強効果を高めることができ、ビード部の耐久性を向上させることができる。
【0048】
また、本実施形態では、内側金属補強層32のタイヤ軸方向内側端32Ein、緩衝層36のタイヤ軸方向内側端36Ein、外側金属補強層34のタイヤ軸方向内側端34Einが、タイヤ径方向Zにずらして位置されているため、内側金属補強層32及び外側金属補強層34による補強効果をタイヤ径方向外側Z2に行くほど段階的に小さくすることができ、ビード部12のタイヤ軸方向内側における歪み応力の集中を抑え耐久性を向上させることができる。
【0049】
なお、その他の構成及び作用効果については第1実施形態と同様であり、詳細な説明は省略する。
【0050】
(その他の実施形態)
上記した第1実施形態及び第2実施形態では、内側金属補強層32及び外側金属補強層34との間に設ける緩衝層36が、カーカスプライ18を構成するカーカスゴムや、内側金属補強層32及び外側金属補強層34を構成する被覆ゴムより加硫後のゴム硬度の大きいゴムのみからなる場合について説明したが、ナイロン66やナイロン6などで代表される汎用のナイロン繊維(脂肪族ポリアミド繊維)をカーカスゴムや内側金属補強層32及び外側金属補強層34を構成する被覆ゴムより高硬度のゴムで被覆してなる層であってもよい。
【0051】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【実施例】
【0052】
上記実施形態の構成と効果を具体的に示すために、タイヤサイズが11R22.5の空気入りタイヤを試作し、性能評価を行った、評価方法は以下のとおりである。
【0053】
(1)ビード耐久性試験
空気圧850kPa、荷重29.4kN、速度50km/hの条件にて、直径1700mmのドラム上でテストタイヤを故障するまで走行させた。比較例1の走行距離を100として指数で記載した。数値が大きいほど良好である。
【0054】
(2)リム接触部分の耐摩耗性試験
空気圧850kPa、荷重29.4kNの条件にて、テストタイヤを5万km走行させ、リムストリップ25におけるリム接触部分の厚みを測定した。走行開始前の厚みが4mmである。数値が4mmに近いほど、摩耗が少なく良好である。
【0055】
性能評価を行った試作タイヤは次のとおりです。なお、各試作タイヤにおける、カーカスプライ18、内側金属補強層32、外側金属補強層34、及び緩衝層36を構成するゴム材料のゴム硬度と、ノミナル径からカーカスプライ18、内側金属補強層32、外側金属補強層34、及び緩衝層36の端部までの長さは、表1に示すとおりである。
【0056】
<実施例1>
実施例1は、第1実施形態に係る図1及び図2に示すビード部構成を持つタイヤである。
【0057】
<実施例2>
実施例2は、第2実施形態に係る図4に示すビード部構成を持つタイヤである。ノミナル径から外側金属補強層34のタイヤ軸方向内側端34Einまでのタイヤ径方向の長さH2inが実施例1と異なるが、それ以外は、実施例1と同じとした。
【0058】
<比較例1>
比較例1は、図5に示すようなタイヤであり、ビードコア26の周りにおいてカーカスプライ18の外側を覆うように重ねて内側金属補強層32が設けられているが、外側金属補強層34や緩衝層36が設けられていない。それ以外は、実施例1と同じとした。
【0059】
<比較例2>
比較例2は、図6に示すようなタイヤであり、ビードコア26の周りにおいてカーカスプライ18の外側を覆うように重ねて内側金属補強層32が設けられているが、外側金属補強層34や緩衝層36が設けられていない。比較例2では、内側金属補強層32の外側を覆うようにナイロン繊維コードを被覆ゴムで被覆した第1ナイロン補強層50が設けられ、第1ナイロン補強層50のタイヤ軸方向内側Y1に沿わせてナイロン繊維コードを被覆ゴムで被覆した第2ナイロン補強層52が設けられている。それ以外は、実施例1と同じとした。
【0060】
<比較例3>
比較例3は、図7に示すようなタイヤであり、ビードコア26の周りにおいてカーカスプライ18の外側を覆うように重ねて内側金属補強層32が設けられ、内側金属補強層32の外側を覆うように外側金属補強層34が設けられているが、内側金属補強層32と外側金属補強層34の間に緩衝層36が存在しない。それ以外は、実施例1と同じとした。
【0061】
【表1】
【0062】
結果は表1に示す通りである。比較例1や、比較例1にナイロン補強層50、52や外側金属補強層34を追加的に設けた比較例2、3に比べて、内側金属補強層32及び外側金属補強層34の間に緩衝層36が設けられた実施例1及び2では、ビード耐久性及びリム接触部分の耐摩耗性能が大幅に改善された。外側金属補強層34のタイヤ軸方向内側端34Einをビード上ラインL1よりタイヤ径方向外方Z2に配置した実施例2では、実施例1に比べてビード耐久性が更に良好になった。
【符号の説明】
【0063】
10…タイヤ、12…ビード部、14…サイドウォール部、16…トレッド部、18…カーカスプライ、18A…本体部、18B…巻き上げ部、18E…巻き上げ端、19…プライコード、20…ベルト、22…インナーライナー、24…サイドウォールゴム、25…リムストリップ、26…ビードコア、28…ビードフィラー、32…第1金属補強層、33…金属コード、34…第2金属補強層、35…金属コード、36…緩衝層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7