【文献】
Int. Immunol., 2007, Vol.19, p.813-824
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ウイルスがヒト免疫不全ウイルス(HIV)、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、インフルエンザウイルス、デング熱ウイルス、又はB型肝炎ウイルス(HBV)である、請求項24に記載のPD-1結合剤又は医薬組成物。
癌が、メラノーマ、腎細胞癌、肺癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、結腸癌、胆嚢癌、喉頭癌、肝臓癌、甲状腺癌、胃癌、唾液腺癌、前立腺癌、膵臓癌、及びメルケル細胞癌からなる群から選択される、請求項32に記載のPD-1結合剤又は医薬組成物。
【背景技術】
【0001】
電子提出された物件の参照による組み込み
本明細書と同時提出され以下のとおり特定される、コンピューターで読み取り可能なヌクレオチド/アミノ酸配列表は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる:45,084バイトのASCII(テキスト)ファイル1件、名称「716746_ST25.TXT」、2014年5月1日作成。
【0002】
発明の背景
プログラム死1(Programmed Death 1)(PD-1)(プログラム細胞死1(Programmed Cell Death 1)としても知られる)は、268アミノ酸のI型膜貫通タンパク質であり、アポトーシスを受けたマウスT細胞株のサブトラクティブハイブリダイゼーションにより最初に同定された(Ishida et al., Embo J., 11:3887-95(1992))。PD-1は、T細胞レギュレーターのCD28/CTLA-4ファミリーのメンバーであり、活性化T細胞、B細胞及び骨髄系列細胞(myeloid lineage cells)上で発現される(Greenwald et al., Annu. Rev. Immunol., 23:515-548(2005);及びSharpe et al., Nat. Immunol., 8:239-245(2007))。
【0003】
PD-1に対する2つのリガンド(PDリガンド1(PD-L1)及びPDリガンド2(PD-L2))が同定されており、これらはともにB7タンパク質スーパーファミリーに属する(Greenwald et al., 上記)。PD-L1は、肺、心臓、胸腺、脾臓及び腎臓の細胞を含む様々な細胞タイプで発現される(例えば、Freeman et al., J. Exp. Med., 192(7):1027-1034(2000);及びYamazaki et al., J. Immunol., 169(10):5538-5545(2002)を参照)。PD-L1発現は、リポ多糖(LPS)及びGM-CSF処理に反応してマクロファージ及び樹状細胞(DCs)で上方制御され、T細胞及びB細胞受容体を介したシグナリングに際してT細胞及びB細胞で上方制御される。PD-L1はまた、様々なマウス腫瘍細胞株でも発現される(例えば、Iwai et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 99(19):12293-12297(2002);及びBlank et al., Cancer Res., 64(3):1140-1145(2004)を参照)。対照的に、PD-L2は、より制限された発現パターンを呈し、主として抗原提示細胞(例えば、樹状細胞及びマクロファージ)、及びいくつかの腫瘍細胞株により発現される(例えば、Latchman et al., Nat. Immunol., 2(3):261-238(2001)を参照)。腫瘍におけるPD-L1の高発現は、それが腫瘍細胞、間質又は腫瘍微小環境内の他の細胞上であるか否かにかかわらず、臨床予後不良と相関しており、これはおそらく腫瘍におけるエフェクターT細胞の阻害及び制御性T細胞(Treg)の上方制御によるものである。
【0004】
PD-1はT細胞活性化を負に制御し、この阻害性機能は、細胞質ドメイン中の免疫受容体チロシン依存性スイッチモチーフ(immunoreceptor tyrosine-based switch motif)(ITSM)と関連する(例えば、Greenwald et al., 上記;及びParry et al., Mol. Cell. Biol., 25:9543-9553(2005)を参照)。PD-1欠損は、自己免疫を引き起こし得る。例えば、C57BL/6 PD-1ノックアウトマウスは、ループス様症候群を発症することが示されている(例えば、Nishimura et al., Immunity, 11:141-1151(1999)を参照)。ヒトにおいて、PD-1遺伝子における一塩基多型(single nucleotide polymorphism)は、全身性エリテマトーデス、I型糖尿病、関節リウマチ、及び多発性硬化症の進行を高頻度に伴う(例えば、Nielsen et al., Tissue Antigens, 62(6):492-497(2003);Bertsias et al., Arthritis Rheum., 60(1):207-218(2009);Ni et al., Hum. Genet., 121(2):223-232(2007);Tahoori et al., Clin. Exp. Rheumatol., 29(5):763-767(2011);及びKroner et al., Ann. Neurol., 58(1):50-57(2005)を参照)。異常なPD-1発現はまた、腫瘍免疫回避や慢性ウイルス感染など、複数の病態におけるT細胞機能不全に関与している(例えば、Barber et al., Nature, 439:682-687(2006);及びSharpe et al., 上記を参照)。
【0005】
最近の研究により、PD-1により誘導されるT細胞の抑制が、抗腫瘍免疫の抑制にも役割を果たすことが実証されている。例えば、PD-L1は、ヒト及びマウスの様々な腫瘍上に発現されており、腫瘍上でPD-1とPD-L1とが結合することにより、T細胞抑制、並びに腫瘍免疫回避及び保護がもたらされる(Dong et al., Nat. Med., 8:793-800(2002))。腫瘍細胞によるPD-L1の発現は、in vitroにおいて、抗腫瘍T細胞による溶解に対するその抵抗性と直接関連している(Dong et al., 上記;及びBlank et al., Cancer Res., 64:1140-1145(2004))。PD-1ノックアウトマウスは、腫瘍チャレンジに対して抵抗性があり(Iwai et al., Int. Immunol., 17:133-144(2005))、PD-1ノックアウトマウス由来のT細胞は、腫瘍を有するマウスに養子移入された場合に、腫瘍拒絶に非常に効果的である(Blank et al., 上記)。PD-1の阻害性シグナルをモノクローナル抗体を用いてブロックすることにより、マウスにおいて、宿主の抗腫瘍免疫が増強され得(Iwai et al., 上記;及びHirano et al., Cancer Res., 65:1089-1096(2005))、腫瘍における高レベルのPD-L1発現は、多くのヒト癌タイプについて予後不良と関連する(Hamanishi et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 104:3360-335(2007), Brown et al., J. Immunol., 170:1257-1266(2003);及びFlies et al., Yale Journal of Biology and Medicine, 84(4):409-421(2011))。
【0006】
上記内容を考慮して、様々なタイプの癌を治療するため及び免疫増強のため(例えば、感染性疾患を治療するため)にPD-1活性を阻害するためのストラテジーが開発されている(例えば、Ascierto et al., Clin. Cancer. Res., 19(5):1009-1020(2013)を参照)。これに関して、PD-1を標的とするモノクローナル抗体が癌を治療するために開発されている(例えば、Weber, Semin. Oncol., 37(5):430-4309(2010);及びTang et al., Current Oncology Reports, 15(2):98-104(2013)を参照)。例えば、ニボルマブ(BMS-936558としても知られる)は、第I相臨床試験において、非小細胞肺癌、メラノーマ及び腎細胞癌で完全又は部分的な反応を生じ(例えば、Topalian, New England J. Med., 366:2443-2454(2012)を参照)、現在、第III相臨床試験にある。MK-3575は、PD-1に対するヒト化モノクローナル抗体であり、第I相臨床試験において抗腫瘍活性の証拠を示している(例えば、Patnaik et al., 2012 American Society of Clinical Oncology(ASCO)Annual Meeting, Abstract # 2512を参照)。さらに、最近の証拠から、PD-1を標的とする治療法が、HIVなどの病原体に対する免疫応答を増強し得ることが示唆される(例えば、Porichis et al., Curr. HIV/AIDS Rep., 9(1):81-90(2012)を参照)。しかし、これらの進歩にもかかわらず、これらのヒトにおける潜在的治療法の有効性は限定され得る。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の詳細な説明
本発明は、単離された免疫グロブリン重鎖ポリペプチド及び/若しくは単離された免疫グロブリン軽鎖ポリペプチド、又はそのフラグメント(例えば、抗原結合フラグメント)を提供する。本明細書で使用する場合、用語「免疫グロブリン」又は「抗体」とは、脊椎動物の血液又は他の体液中で見られるタンパク質をいい、細菌及びウイルスなどの異物を特定し中和するために免疫系によって使用される。ポリペプチドは、その天然環境から取り出されるという点で「単離される」。好ましい実施態様において、免疫グロブリン又は抗体は、少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含むタンパク質である。CDRsは、抗体の「超可変領域」を形成し、これは抗原結合に関与する(以下にさらに記載する)。免疫グロブリン全体は、典型的には、4つのポリペプチドからなる:重(H)鎖ポリペプチドの2つの同一コピー及び軽(L)鎖ポリペプチドの2つの同一コピー。重鎖の各々は、1つのN末端可変(V
H)領域及び3つのC末端定常(C
H1、C
H2及びC
H3)領域を含み、各軽鎖は、1つのN末端可変(V
L)領域及び1つのC末端定常(C
L)領域を含む。抗体の軽鎖は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、2つの別個のタイプの1つ(カッパ(κ)又はラムダ(λ)のいずれか)に割り当てられ得る。典型的な免疫グロブリンにおいて、各軽鎖は、ジスルフィド結合により重鎖と連結され、2つの重鎖は、ジスルフィド結合により互いに連結される。軽鎖可変領域は、重鎖の可変領域と整列し、軽鎖定常領域は、重鎖の第1の定常領域と整列する。重鎖の残りの定常領域は、互いに整列する。
【0019】
軽鎖及び重鎖の各ペアの可変領域は、抗体の抗原結合部位を形成する。V
H及びV
L領域は、同じ全体的構造を有し、各領域は、4つのフレームワーク(FW又はFR)領域を含む。本明細書で使用する場合、用語「フレームワーク領域」とは、超可変又は相補性決定領域(CDRs)間に位置する、可変領域内の比較的保存されたアミノ酸配列をいう。各可変ドメインには4つのフレームワーク領域が存在し、これらはFR1、FR2、FR3及びFR4と表される。フレームワーク領域は、可変領域の構造的フレームワークを提供するβシートを形成する(例えば、C.A. Janeway et al.(eds.), Immunobiology, 5th Ed., Garland Publishing, New York, NY(2001)を参照)。
【0020】
フレームワーク領域は、3つの相補性決定領域(CDRs)によりつながれる。上述のように、3つのCDRs(CDR1、CDR2及びCDR3として知られる)は、抗体の「超可変領域」を形成し、これが抗原結合に関与する。CDRsは、フレームワーク領域により形成されるβシート構造をつなぐ(場合によってはその一部を含む)ループを形成する。軽鎖及び重鎖の定常領域は、抗体の抗原への結合に直接関与しないが、定常領域は、可変領域の配置に影響を及ぼし得る。定常領域はまた、様々なエフェクター機能(例えば、エフェクター分子及び細胞との相互作用を介した、抗体依存性補体媒介性の溶解(antibody-dependent complement-mediated lysis)又は抗体依存性細胞傷害(antibody-dependent cellular toxicity)への関与など)も呈する。
【0021】
本発明の単離された免疫グロブリン重鎖ポリペプチド及び単離された免疫グロブリン軽鎖ポリペプチドは、望ましくはPD-1と結合する。上述のように、プログラム死1(PD-1)(プログラム細胞死1としても知られる)は、268アミノ酸のI型膜貫通タンパク質である(Ishida et al., 上記)。PD-1は、T細胞レギュレーターのCD28/CTLA-4ファミリーのメンバーであり、活性化T細胞、B細胞及び骨髄系列細胞上で発現される(Greenwald et al., 上記;及びSharpe et al., 上記)。PD-1は、細胞外IgVドメインとそれに続く短い細胞外ストーク(stalk)、膜貫通領域及び細胞内テイルを含む。細胞内テイルは、免疫受容体抑制性チロシンモチーフ(immunoreceptor tyrosine-based inhibitory motif)及び免疫受容体チロシン依存性スイッチモチーフに位置する2つのリン酸化部位を含み、これらが、T細胞受容体シグナリングを負に制御するPD-1の能力に役割を果たす(例えば、Ishida et al., 上記;及びBlank et al., 上記を参照)。本発明の単離された免疫グロブリン重鎖ポリペプチド及び本発明の単離された免疫グロブリン軽鎖ポリペプチドは、PD-1及び別の抗原と結合する作用剤(agent)を形成でき、これにより、「二重反応性(dual reactive)」結合剤(例えば、二重反応性抗体)がもたらされる。例えば、当該作用剤は、PD-1と結合でき、且つ免疫系の別の負のレギュレーター、例えば、リンパ球活性化遺伝子3(lymphocyte-activation gene 3(LAG-3))、及び/又はT細胞免疫グロブリンドメイン及びムチンドメイン3タンパク質(T-cell immunoglobulin domain and mucin domain 3 protein(TIM-3))などと結合できる。
【0022】
PD-1と結合する抗体、及びその構成要素は、当分野で既知である(例えば、米国特許第8,168,757号;Topalian et al., 上記;及びPatnaik et al., 上記を参照)。抗PD-1抗体はまた、例えば、Abcam(Cambridge, MA)などの供給源から市販される。
【0023】
アミノ酸「置換(replacement)」又は「置換(substitution)」とは、ポリペプチド配列内の所与の位置又は残基における1アミノ酸の、同じ位置又は残基における別のアミノ酸による置換をいう。
【0024】
アミノ酸は、「芳香族」又は「脂肪族」として大きく分類される。芳香族アミノ酸は、芳香環を含む。「芳香族」アミノ酸の例としては、ヒスチジン(H又はHis)、フェニルアラニン(F又はPhe)、チロシン(Y又はTyr)及びトリプトファン(W又はTrp)が挙げられる。非芳香族アミノ酸は、「脂肪族」として大きく分類される。「脂肪族」アミノ酸の例としては、グリシン(G又はGly)、アラニン(A又はAla)、バリン(V又はVal)、ロイシン(L又はLeu)、イソロイシン(I又はIle)、メチオニン(M又はMet)、セリン(S又はSer)、トレオニン(T又はThr)、システイン(C又はCys)、プロリン(P又はPro)、グルタミン酸(E又はGlu)、アスパラギン酸(A又はAsp)、アスパラギン(N又はAsn)、グルタミン(Q又はGln)、リジン(K又はLys)及びアルギニン(R又はArg)が挙げられる。
【0025】
脂肪族アミノ酸は、4つのサブグループに細分され得る。「大きな脂肪族非極性サブグループ」は、バリン、ロイシン及びイソロイシンからなる。「脂肪族微極性サブグループ」は、メチオニン、セリン、トレオニン及びシステインからなる。「脂肪族極性/荷電サブグループ」は、グルタミン酸、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン、リジン及びアルギニンからなる。「小さな残基サブグループ」は、グリシン及びアラニンからなる。荷電/極性アミノ酸のグループは、3つのサブグループに細分され得る:リジン及びアルギニンからなる「正荷電サブグループ」、グルタミン酸及びアスパラギン酸からなる「負荷電サブグループ」、並びにアスパラギン及びグルタミンからなる「極性サブグループ」。
【0026】
芳香族アミノ酸は、2つのサブグループに細分され得る:ヒスチジン及びトリプトファンからなる「窒素環サブグループ」、並びにフェニルアラニン及びチロシンからなる「フェニルサブグループ」。
【0027】
アミノ酸の置換(replacement)又は置換(substitution)は、保存的、半保存的又は非保存的であり得る。フレーズ「保存的アミノ酸置換(substitution)」又は「保存的変異」とは、1つのアミノ酸の、共通の特性を備えた別のアミノ酸による置換をいう。個々のアミノ酸間の共通の特性を定義する機能的な方法は、相同的な生物の対応するタンパク質間のアミノ酸変化の正規化された頻度を分析することである(Schulz and Schirmer, Principles of Protein Structure, Springer-Verlag, New York(1979))。そのような分析により、グループ内のアミノ酸が優先的に互いを交換し、それ故、タンパク質の全体構造への影響において互いに最も類似するアミノ酸のグループが定義され得る(Schulz and Schirmer, 上記)。
【0028】
保存的アミノ酸置換(substitutions)の例としては、上記サブグループ内でのアミノ酸の置換、例えば、アルギニンのリジンでの置換及びその逆(正電荷が維持され得るように);アスパラギン酸のグルタミン酸での置換及びその逆(負電荷が維持され得るように);トレオニンのセリンでの置換(遊離-OHが維持され得るように);並びにアスパラギンのグルタミンでの置換(遊離-NH
2が維持され得るように)、が挙げられる。
【0029】
「半保存的変異」は、上記に列挙した同一グループ内ではあるが、同一サブグループ内ではないアミノ酸のアミノ酸置換を含む。例えば、アスパラギンのアスパラギン酸での置換、又はリジンのアスパラギンでの置換は、同一グループ内ではあるが、サブグループが異なるアミノ酸を伴う。「非保存的変異」は、異なるグループ間のアミノ酸置換、例えば、トリプトファンのリジンでの置換、又はセリンのフェニルアラニンでの置換などを伴う。
【0030】
本発明は、配列番号1の相補性決定領域1(CDR)アミノ酸配列、配列番号2のCDR2アミノ酸配列及び配列番号3のCDR3アミノ酸配列を含む、免疫グロブリン重鎖ポリペプチドを提供する。本発明の一実施態様において、単離された免疫グロブリン重鎖ポリペプチドは、配列番号1の相補性決定領域1(CDR)アミノ酸配列、配列番号2のCDR2アミノ酸配列及び配列番号3のCDR3アミノ酸配列を含むか、該配列からなるか、又は本質的に該配列からなり、ここで、任意選択で、(a)配列番号1の残基9が異なるアミノ酸残基に置換されるか、(b)配列番号2の残基7、8及び9の1つ以上が異なるアミノ酸残基に置換されるか、(c)配列番号3の残基1、2及び5の1つ以上が異なるアミノ酸残基に置換されるか、又は(d)(a)〜(c)の任意の組み合わせである。本発明の免疫グロブリン重鎖ポリペプチドが、本質的に、配列番号1のCDR1アミノ酸配列、配列番号2のCDR2アミノ酸配列及び配列番号3のCDR3アミノ酸配列、並びに任意選択(optional)のアミノ酸置換からなる場合、ポリペプチドに物質的影響を及ぼさない追加の構成要素(例えば、精製又は単離を促進するビオチンなどのタンパク質部分)がポリペプチドに含まれ得る。本発明の免疫グロブリン重鎖ポリペプチドが、配列番号1のCDR1アミノ酸配列、配列番号2のCDR2アミノ酸配列及び配列番号3のCDR3アミノ酸配列、並びに任意選択のアミノ酸置換からなる場合、ポリペプチドは、いずれの追加の構成要素(すなわち、本発明の免疫グロブリン重鎖ポリペプチドに対して内因性でない構成要素)も含まない。
【0031】
本発明の一実施態様において、単離された免疫グロブリンポリペプチドは、配列番号1のCDR1アミノ酸配列、配列番号2のCDR2アミノ酸配列及び配列番号3のCDR3アミノ酸配列(但し、(a)配列番号1の残基9が異なるアミノ酸残基に置換されるか、(b)配列番号2の残基7、8及び9の1つ以上が異なるアミノ酸残基に置換されるか、(c)配列番号3の残基1、2及び5の1つ以上が異なるアミノ酸残基に置換されるか、又は(d)(a)〜(c)の任意の組み合わせである)を含む。例えば、単離された免疫グロブリン重鎖ポリペプチドは、配列番号1のCDR1アミノ酸配列、配列番号2のCDR2アミノ酸配列及び配列番号3のCDR3アミノ酸配列(但し、配列番号1の残基9が異なるアミノ酸残基に置換され、且つ配列番号2の残基7、8及び9の1つ以上が異なるアミノ酸残基に置換される)を含み得る。或いは、単離された免疫グロブリン重鎖ポリペプチドは、配列番号1のCDR1アミノ酸配列、配列番号2のCDR2アミノ酸配列及び配列番号3のCDR3アミノ酸配列(但し、配列番号1の残基9が異なるアミノ酸残基に置換され、配列番号2の残基7、8及び9の1つ以上が異なるアミノ酸残基に置換され、且つ配列番号3の残基1、2及び5の1つ以上が異なるアミノ酸残基に置換される)を含み得る。別の実施態様において、単離された免疫グロブリン重鎖ポリペプチドは、配列番号1のCDR1アミノ酸配列、配列番号2のCDR2アミノ酸配列及び配列番号3のCDR3アミノ酸配列(但し、配列番号3の残基1、2及び5の1つ以上が異なるアミノ酸残基に置換される)を含み得る。配列番号1の残基9、配列番号2の残基7、8及び9、並びに配列番号3の残基1、2及び5のそれぞれは、それぞれの位置において同一又は異なり得る任意の適切なアミノ酸残基に置換され得る。例えば、第一の位置のアミノ酸残基は第一の異なるアミノ酸残基に置換され得、第二の位置のアミノ酸残基は第二の異なるアミノ酸残基に置換され得、ここで、第一と第二の異なるアミノ酸残基は同一又は異なる。
【0032】
一実施態様において、単離された免疫グロブリン重鎖ポリペプチドは、配列番号1のCDR1アミノ酸配列、配列番号2のCDR2アミノ酸配列及び配列番号3のCDR3アミノ酸配列(但し、配列番号1の残基9がメチオニン(M)残基に置換される)を含む。別の実施態様において、単離された免疫グロブリン重鎖ポリペプチドは、配列番号1のCDR1アミノ酸配列、配列番号2のCDR2アミノ酸配列及び配列番号3のCDR3アミノ酸配列(但し、(a)配列番号2の残基7がアスパラギン(N)残基に置換されるか、(b)配列番号2の残基8がセリン(S)残基に置換されるか、(c)配列番号2の残基9がトレオニン(T)残基に置換されるか、又は(d)(a)〜(c)の任意の組み合わせである)を含む。別の実施態様において、単離された免疫グロブリン重鎖ポリペプチドは、配列番号1のCDR1アミノ酸配列、配列番号2のCDR2アミノ酸配列及び配列番号3のCDR3アミノ酸配列(但し、(a)配列番号3の残基1がグルタミン酸(E)残基に置換されるか、(b)配列番号3の残基2がチロシン(Y)残基に置換されるか、(c)配列番号3の残基5がセリン(S)残基に置換されるか、又は(d)(a)〜(c)の任意の組み合わせである)を含む。
【0033】
上記のような、例示的免疫グロブリン重鎖ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列のいずれか1つを含み得る:配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、又は配列番号11。
【0034】
本発明は、単離された免疫グロブリン重鎖ポリペプチドであって、配列番号12の相補性決定領域1(CDR)アミノ酸配列、配列番号13のCDR2アミノ酸配列及び配列番号14のCDR3アミノ酸配列を含むか、本質的に該配列からなるか、又は該配列からなり、ここで、任意選択で、(a)配列番号12の残基9が異なるアミノ酸残基に置換されるか、(b)配列番号13の残基8及び/若しくは残基9が異なるアミノ酸残基に置換されるか、(c)配列番号14の残基5が異なるアミノ酸残基に置換されるか、又は(d)(a)〜(c)の任意の組み合わせである、単離された免疫グロブリン重鎖ポリペプチドを提供する。本発明の免疫グロブリン重鎖ポリペプチドが、本質的に、配列番号12のCDR1アミノ酸配列、配列番号13のCDR2アミノ酸配列及び配列番号14のCDR3アミノ酸配列、並びに任意選択のアミノ酸置換からなる場合、ポリペプチドに物質的影響を及ぼさない追加の構成要素(例えば、精製又は単離を促進するビオチンなどのタンパク質部分)がポリペプチドに含まれ得る。本発明の免疫グロブリン重鎖ポリペプチドが、配列番号12のCDR1アミノ酸配列、配列番号13のCDR2アミノ酸配列及び配列番号14のCDR3アミノ酸配列、並びに任意選択のアミノ酸置換からなる場合、ポリペプチドは、いずれの追加の構成要素(すなわち、本発明の免疫グロブリン重鎖ポリペプチドに対して内因性でない構成要素)も含まない。
【0035】
一実施態様において、単離された免疫グロブリン重鎖ポリペプチドは、配列番号12のCDR1アミノ酸配列、配列番号13のCDR2アミノ酸配列及び配列番号14のCDR3アミノ酸配列(但し、(a)配列番号12の残基9が異なるアミノ酸残基に置換されるか、(b)配列番号13の残基8及び/若しくは残基9が異なるアミノ酸残基に置換されるか、(c)配列番号14の残基5が異なるアミノ酸残基に置換されるか、又は(d)(a)〜(c)の任意の組み合わせである)を含み得る。例えば、単離された免疫グロブリン重鎖ポリペプチドは、配列番号12のCDR1アミノ酸配列、配列番号13のCDR2アミノ酸配列及び配列番号14のCDR3アミノ酸配列(但し、配列番号12の残基9が異なるアミノ酸残基に置換され、配列番号13の残基8及び配列番号13の残基9が異なるアミノ酸残基に置換される)を含み得る。或いは、単離された免疫グロブリン重鎖ポリペプチドは、配列番号12のCDR1アミノ酸配列、配列番号13のCDR2アミノ酸配列及び配列番号14のCDR3アミノ酸配列(但し、配列番号12の残基9が異なるアミノ酸残基に置換され、且つ配列番号14の残基5が異なるアミノ酸残基に置換される)を含み得る。別の実施態様において、単離された免疫グロブリン重鎖ポリペプチドは、配列番号12のCDR1アミノ酸配列、配列番号13のCDR2アミノ酸配列及び配列番号14のCDR3アミノ酸配列(但し、配列番号12の残基9が異なるアミノ酸残基に置換され、配列番号13の残基8が異なるアミノ酸残基に置換され、配列番号13の残基9が異なるアミノ酸残基に置換され、且つ配列番号14の残基5が異なるアミノ酸残基に置換される)を含み得る。配列番号12の残基9、配列番号13の残基8及び9、並びに配列番号14の残基5のそれぞれは、それぞれの位置において同一又は異なり得る任意の適切なアミノ酸残基に置換され得る。例えば、第一の位置のアミノ酸残基は第一の異なるアミノ酸残基に置換され得、第二の位置のアミノ酸残基は第二の異なるアミノ酸残基に置換され得、ここで、第一と第二の異なるアミノ酸残基は同一又は異なる。一実施態様において、単離された免疫グロブリン重鎖ポリペプチドは、配列番号12のCDR1アミノ酸配列、配列番号13のCDR2アミノ酸配列及び配列番号14のCDR3アミノ酸配列(但し、配列番号12の残基9がロイシン(L)残基に置換される)を含む。別の実施態様において、単離された免疫グロブリン重鎖ポリペプチドは、配列番号12のCDR1アミノ酸配列、配列番号13のCDR2アミノ酸配列及び配列番号14のCDR3アミノ酸配列(但し、(a)配列番号13の残基8がチロシン(Y)残基に置換されるか、及び/又は(b)配列番号13の残基9がアラニン(A)残基に置換される)を含む。別の実施態様において、単離された免疫グロブリン重鎖ポリペプチドは、配列番号12のCDR1アミノ酸配列、配列番号13のCDR2アミノ酸配列及び配列番号14のCDR3アミノ酸配列(但し、配列番号14の残基5がトレオニン(T)残基に置換される)を含む。
【0036】
上記のような、例示的免疫グロブリン重鎖ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列のいずれか1つを含み得る:配列番号15、配列番号16、配列番号17、又は配列番号18。
【0037】
本発明は、配列番号19の相補性決定領域1(CDR)アミノ酸配列、配列番号20のCDR2アミノ酸配列及び配列番号21のCDR3アミノ酸配列を含むか、本質的に該配列からなるか、又は該配列からなる、単離された免疫グロブリン重鎖ポリペプチドを提供する。本発明の免疫グロブリン重鎖ポリペプチドが、本質的に、配列番号19のCDR1アミノ酸配列、配列番号20のCDR2アミノ酸配列及び配列番号21のCDR3アミノ酸配列からなる場合、ポリペプチドに物質的影響を及ぼさない追加の構成要素(例えば、精製又は単離を促進するビオチンなどのタンパク質部分)がポリペプチドに含まれ得る。本発明の免疫グロブリン重鎖ポリペプチドが、配列番号19のCDR1アミノ酸配列、配列番号20のCDR2アミノ酸配列及び配列番号21のCDR3アミノ酸配列からなる場合、ポリペプチドは、いずれの追加の構成要素(すなわち、本発明の免疫グロブリン重鎖ポリペプチドに対して内因性でない構成要素)も含まない。上記のような、例示的免疫グロブリン重鎖ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列のいずれか1つを含み得る:配列番号22、配列番号23、配列番号24、又は配列番号25。
【0038】
さらに、1個以上のアミノ酸が、前記免疫グロブリン重鎖ポリペプチドに挿入され得る。任意の数の任意の適切なアミノ酸が、免疫グロブリン重鎖ポリペプチドのアミノ酸配列に挿入され得る。これに関して、少なくとも1個のアミノ酸(例えば、2個以上、5個以上、又は10個以上のアミノ酸)であるが、20個以下のアミノ酸(例えば、18個以下、15個以下、又は12個以下のアミノ酸)が、免疫グロブリン重鎖ポリペプチドのアミノ酸配列に挿入され得る。好ましくは、1〜10個のアミノ酸(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個のアミノ酸)が、免疫グロブリン重鎖ポリペプチドのアミノ酸配列に挿入される。これに関して、アミノ酸(単数又は複数)は、任意の適切な場所において、前記免疫グロブリン重鎖ポリペプチドのいずれか1つに挿入され得る。好ましくは、アミノ酸(単数又は複数)は、免疫グロブリン重鎖ポリペプチドのCDR(例えば、CDR1、CDR2又はCDR3)に挿入される。
【0039】
本発明は、配列番号4〜11、配列番号15〜18、及び配列番号22〜25のいずれか1つと少なくとも90%同一である(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一である)アミノ酸配列を含む、単離された免疫グロブリン重鎖ポリペプチドを提供する。本明細書に記載するように、核酸又はアミノ酸配列の「同一性」は、関心のある核酸又はアミノ酸配列と、参照核酸又はアミノ酸配列との比較により決定され得る。同一性パーセントは、関心のある配列と参照配列との間で同じである(すなわち、同一である)ヌクレオチド又はアミノ酸残基の数を、最も長い配列の長さ(すなわち、関心のある配列又は参照配列のいずれかの長さであって、いずれか長い方)で除したものである。2以上の配列間での最適なアラインメントの取得及び同一性計算のためのいくつかの数学的アルゴリズムが既知であり、いくつかの利用可能なソフトウェアプログラムに組み込まれている。かかるプログラムの例としては、CLUSTAL-W、T-Coffee及びALIGN(核酸及びアミノ酸配列のアラインメントのため)、BLASTプログラム(例えば、BLAST 2.1、BL2SEQ、及びその後のバージョン)及びFASTAプログラム(例えば、FASTA3x、FASTM及びSSEARCH)(配列アラインメント及び配列類似性検索のため)が挙げられる。配列アラインメントアルゴリズムはまた、例えば、Altschul et al., J. Molecular Biol., 215(3):403-410(1990), Beigert et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 106(10):3770-3775(2009), Durbin et al., eds., Biological Sequence Analysis:Probalistic Models of Proteins and Nucleic Acids, Cambridge University Press, Cambridge, UK(2009), Soding, Bioinformatics, 21(7):951-960(2005), Altschul et al., Nucleic Acids Res., 25(17):3389-3402(1997)、及びGusfield, Algorithms on Strings, Trees and Sequences, Cambridge University Press, Cambridge UK(1997))にも開示される。
【0040】
本発明は、配列番号26の相補性決定領域1(CDR)アミノ酸配列及び配列番号27のCDR2アミノ酸配列を含む、免疫グロブリン軽鎖ポリペプチドを提供する。本発明の一実施態様において、単離された免疫グロブリン軽鎖ポリペプチドは、配列番号26のCDR1アミノ酸配列及び配列番号27のCDR2アミノ酸配列を含むか、本質的に該配列からなるか、又は該配列からなる。本発明の免疫グロブリン軽鎖ポリペプチドが、本質的に、配列番号26のCDR1アミノ酸配列及び配列番号27のCDR2アミノ酸配列からなる場合、ポリペプチドに物質的影響を及ぼさない追加の構成要素(例えば、精製又は単離を促進するビオチンなどのタンパク質部分)がポリペプチドに含まれ得る。本発明の免疫グロブリン軽鎖ポリペプチドが、配列番号26のCDR1アミノ酸配列及び配列番号27のCDR2アミノ酸配列からなる場合、ポリペプチドは、いずれの追加の構成要素(すなわち、本発明の免疫グロブリン軽鎖ポリペプチドに対して内因性でない構成要素)も含まない。上記のような、例示的免疫グロブリン軽鎖ポリペプチドは、配列番号28又は配列番号29を含み得る。
【0041】
本発明は、配列番号30の相補性決定領域1(CDR)アミノ酸配列及び配列番号31のCDR2アミノ酸配列を含む、単離された免疫グロブリン軽鎖ポリペプチドを提供する。本発明の一実施態様において、単離された免疫グロブリン軽鎖ポリペプチドは、配列番号30のCDR1アミノ酸配列及び配列番号31のCDR2アミノ酸配列を含むか、該配列からなるか、又は本質的に該配列からなり、ここで、任意選択で、配列番号30の残基12が異なるアミノ酸残基に置換される。本発明の免疫グロブリン軽鎖ポリペプチドが、本質的に、配列番号30のCDR1アミノ酸配列及び配列番号31のCDR2アミノ酸配列、並びに任意選択のアミノ酸置換からなる場合、ポリペプチドに物質的影響を及ぼさない追加の構成要素(例えば、精製又は単離を促進するビオチンなどのタンパク質部分)がポリペプチドに含まれ得る。本発明の免疫グロブリン軽鎖ポリペプチドが、配列番号30のCDR1アミノ酸配列及び配列番号31のCDR2アミノ酸配列、並びに任意選択のアミノ酸置換からなる場合、ポリペプチドは、いずれの追加の構成要素(すなわち、本発明の免疫グロブリン軽鎖ポリペプチドに対して内因性でない構成要素)も含まない。
【0042】
これに関して、例えば、単離された免疫グロブリン軽鎖ポリペプチドは、配列番号30のCDR1アミノ酸配列及び配列番号31のCDR2アミノ酸配列(但し、配列番号30の残基12が異なるアミノ酸残基に置換される)を含み得る。配列番号30の残基12は、任意の適切なアミノ酸残基に置換され得る。一実施態様において、単離された免疫グロブリン軽鎖ポリペプチドは、配列番号30のCDR1アミノ酸配列及び配列番号31のCDR2アミノ酸配列(但し、配列番号30の残基12が、トレオニン(T)残基に置換される)を含み得る。上記のような、例示的免疫グロブリン軽鎖ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列のいずれか1つを含み得る:配列番号32、配列番号33、又は配列番号34。
【0043】
本発明は、配列番号35の相補性決定領域1(CDR)アミノ酸配列、配列番号36のCDR2アミノ酸配列及び配列番号37のCDR3アミノ酸配列を含む、単離された免疫グロブリン軽鎖ポリペプチドを提供する。一実施態様において、免疫グロブリン軽鎖ポリペプチドは、配列番号35のCDR1アミノ酸配列、配列番号36のCDR2アミノ酸配列及び配列番号37のCDR3アミノ酸配列を含むか、本質的に該配列からなるか、又は該配列からなり、ここで、任意選択で、(a)配列番号36の残基5が異なるアミノ酸残基に置換されるか、及び/又は(b)配列番号37の残基4が異なるアミノ酸残基に置換される。本発明の免疫グロブリン軽鎖ポリペプチドが、本質的に、配列番号35のCDR1アミノ酸配列、配列番号36のCDR2アミノ酸配列及び配列番号37のCDR3アミノ酸配列、並びに任意選択のアミノ酸置換からなる場合、ポリペプチドに物質的影響を及ぼさない追加の構成要素(例えば、精製又は単離を促進するビオチンなどのタンパク質部分)がポリペプチドに含まれ得る。本発明の免疫グロブリン軽鎖ポリペプチドが、配列番号35のCDR1アミノ酸配列、配列番号36のCDR2アミノ酸配列及び配列番号37のCDR3アミノ酸配列、並びに任意選択のアミノ酸置換からなる場合、ポリペプチドは、いずれの追加の構成要素(すなわち、本発明の免疫グロブリン軽鎖ポリペプチドに対して内因性でない構成要素)も含まない。これに関して、例えば、単離された免疫グロブリン軽鎖ポリペプチドは、配列番号35のCDR1アミノ酸配列、配列番号36のCDR2アミノ酸配列及び配列番号37のCDR3アミノ酸配列を含み得る。或いは、単離された免疫グロブリン軽鎖ポリペプチドは、配列番号35のCDR1アミノ酸配列、配列番号36のCDR2アミノ酸配列及び配列番号37のCDR3アミノ酸配列(但し、(a)配列番号36の残基5が異なるアミノ酸残基に置換されるか、及び/又は(b)配列番号37の残基4が異なるアミノ酸残基に置換される)を含み得る。配列番号36の残基5及び配列番号37の残基4のそれぞれは、それぞれの位置において同一又は異なり得る任意の適切なアミノ酸残基に置換され得る。例えば、第一の位置のアミノ酸残基は第一の異なるアミノ酸残基に置換され得、第二の位置のアミノ酸残基は第二の異なるアミノ酸残基に置換され得、ここで、第一と第二の異なるアミノ酸残基は同一又は異なる。
【0044】
一実施態様において、単離された免疫グロブリン軽鎖ポリペプチドは、配列番号35のCDR1アミノ酸配列、配列番号36のCDR2アミノ酸配列及び配列番号37のCDR3アミノ酸配列(但し、(a)配列番号36の残基5がロイシン(L)残基に置換されるか、及び/又は(b)配列番号37の残基4がアスパラギン(N)残基に置換される)を含む。上記のような、例示的免疫グロブリン軽鎖ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列のいずれか1つを含み得る:配列番号38、配列番号39、配列番号40、又は配列番号41。
【0045】
さらに、1個以上のアミノ酸が、前記免疫グロブリン軽鎖ポリペプチドに挿入され得る。任意の数の任意の適切なアミノ酸が、免疫グロブリン軽鎖ポリペプチドのアミノ酸配列に挿入され得る。これに関して、少なくとも1個のアミノ酸(例えば、2個以上、5個以上、又は10個以上のアミノ酸)であるが、20個以下のアミノ酸(例えば、18個以下、15個以下、又は12個以下のアミノ酸)が、免疫グロブリン軽鎖ポリペプチドのアミノ酸配列に挿入され得る。好ましくは、1〜10個のアミノ酸(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個のアミノ酸)が、免疫グロブリン軽鎖ポリペプチドのアミノ酸配列に挿入される。これに関して、アミノ酸(単数又は複数)は、任意の適切な場所において、前記免疫グロブリン軽鎖ポリペプチドのいずれか1つに挿入され得る。好ましくは、アミノ酸(単数又は複数)は、免疫グロブリン軽鎖ポリペプチドのCDR(例えば、CDR1、CDR2又はCDR3)に挿入される。
【0046】
本発明は、配列番号28、配列番号29、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号38、配列番号39、配列番号40及び配列番号41のいずれか1つと少なくとも90%同一である(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一である)アミノ酸配列を含む、単離された免疫グロブリン軽鎖ポリペプチドを提供する。本明細書に記載するように、核酸又はアミノ酸配列の「同一性」は、本明細書に記載する方法を用いて決定され得る。
【0047】
本発明は、本明細書に記載する本発明の単離されたアミノ酸配列を含むか、本質的に該配列からなるか、又は該配列からなる、単離されたプログラム死1(programmed death 1)(PD-1)結合剤を提供する。「プログラム死1(PD-1)結合剤」とは、プログラム死1タンパク質(PD-1)と特異的に結合する分子、好ましくはタンパク性分子を意味する。好ましくは、PD-1結合剤は、抗体又はそのフラグメント(例えば、免疫原性フラグメント)である。本発明の単離されたPD-1結合剤は、本発明の単離された免疫グロブリン重鎖ポリペプチド及び/又は本発明の単離された免疫グロブリン軽鎖ポリペプチドを含むか、本質的に該ポリペプチドからなるか、又は該ポリペプチドからなる。一実施態様において、単離されたPD-1結合剤は、本発明の免疫グロブリン重鎖ポリペプチド又は本発明の免疫グロブリン軽鎖ポリペプチドを含むか、本質的に該ポリペプチドからなるか、又は該ポリペプチドからなる。別の実施態様において、単離されたPD-1結合剤は、本発明の免疫グロブリン重鎖ポリペプチド及び本発明の免疫グロブリン軽鎖ポリペプチドを含むか、本質的に該ポリペプチドからなるか、又は該ポリペプチドからなる。
【0048】
本発明は、本明細書に開示の特定のアミノ酸残基の置換、挿入及び/又は欠失を有する免疫グロブリン重鎖ポリペプチド及び/又は軽鎖ポリペプチドを含むか、本質的に該ポリペプチドからなるか、又は該ポリペプチドからなる、単離されたPD-1結合剤に限定されない。実際には、PD-1結合剤の生物学的活性がアミノ酸の置換、挿入及び/又は欠失の結果として高められるか又は改善される限り、本発明の免疫グロブリン重鎖ポリペプチド及び/又は本発明の免疫グロブリン軽鎖ポリペプチドの任意のアミノ酸残基は、任意の組み合わせで、異なるアミノ酸残基に置換され得、或いは欠失又は挿入され得る。PD-1結合剤の「生物学的活性」とは、例えば、PD-1又は特定のPD-1エピトープに対する結合親和性、そのリガンドであるPD-L1及びPD-L1とのPD-1タンパク質結合の中和又は阻害、in vivoにおけるPD-1タンパク質活性の中和又は阻害(例えば、IC
50)、薬物動態、並びに交差反応性(例えば、PD-1タンパク質の非ヒトホモログ若しくはオーソログとの、又は他のタンパク質若しくは組織との)をいう。当分野で認識される抗原結合剤の他の生物学的特性又は特徴には、例えば、アビディティ、選択性、溶解性、フォールディング、免疫毒性、発現、及び剤形(formulation)が含まれる。前記の特性又は特徴は、標準的な技術(ELISA、競合ELISA、表面プラズモン共鳴分析(BIACORE
TM)又はKINEXA
TM、in vitro又はin vivo中和アッセイ、受容体-リガンド結合アッセイ、サイトカイン又は成長因子の産生及び/又は分泌アッセイ、並びにシグナル伝達及び免疫組織化学アッセイを含むが、これらに限定されない)を用いて、観察、測定及び/又は評価され得る。
【0049】
用語「阻害する」又は「中和する」とは、PD-1結合剤の活性に関して本明細書で使用する場合、例えば、PD-1タンパク質の生物学的活性の又はPD-1タンパク質と関連する疾患若しくは状態の進行又は重症度を、実質的に拮抗、防止、予防、制限、遅延、中断、変更、排除、停止、又は逆転させる能力をいう。本発明の単離されたPD-1結合剤は、好ましくは、PD-1タンパク質の活性を少なくとも約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約100%、又は前記値のいずれか2つによって規定される範囲に阻害又は中和する。
【0050】
本発明の単離されたPD-1結合剤は、本明細書に記載するように、全抗体(whole antibody)、又は抗体フラグメントであり得る。用語「抗体のフラグメント」、「抗体フラグメント」及び「抗体の機能的フラグメント」は、本明細書において互換的に使用され、抗原と特異的に結合する能力を保持する、抗体の1つ以上のフラグメントを意味する(一般に、Holliger et al., Nat. Biotech., 23(9):1126-1129(2005)を参照)。単離されたPD-1結合剤は、任意のPD-1結合抗体フラグメントを含み得る。抗体フラグメントは、望ましくは、例えば、1つ以上のCDRs、可変領域(又はその部分)、定常領域(又はその部分)、又はその組み合わせを含む。抗体フラグメントの例としては、(i)V
L、V
H、C
L及びCH
1ドメインからなる一価のフラグメントである、Fabフラグメント、(ii)ヒンジ領域においてジスルフィド架橋によって連結された2つのFabフラグメントを含む二価のフラグメントである、F(ab’)
2フラグメント、(iii)抗体の単一アームのV
L及びV
HドメインからなるFvフラグメント、(iv)穏和な還元条件を用いたF(ab’)
2フラグメントのジスルフィド架橋の切断(breaking)から生じるFab’フラグメント、(v)ジスルフィド安定化Fvフラグメント(dsFv)、並びに(vi)抗原と特異的に結合する抗体シングル可変領域ドメイン(VH又はVL)ポリペプチドであるドメイン抗体(dAb)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
単離されたPD-1結合剤が免疫グロブリン重鎖又は軽鎖ポリペプチドのフラグメントを含む実施態様において、該フラグメントは、PD-1タンパク質と結合し、好ましくはその活性を阻害する限り、任意のサイズのものであり得る。これに関して、免疫グロブリン重鎖ポリペプチドのフラグメントは、望ましくは、約5個から18個の間のアミノ酸(例えば、約5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、又は前記値のいずれか2つによって規定される範囲)を含む。同様に、免疫グロブリン軽鎖ポリペプチドのフラグメントは、望ましくは、約5個から18個の間のアミノ酸(例えば、約5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、又は前記値のいずれか2つによって規定される範囲)を含む。
【0052】
PD-1結合剤が抗体又は抗体フラグメントである場合、該抗体又は抗体フラグメントは、望ましくは、任意の適切なクラスの重鎖定常領域(F
c)を含む。好ましくは、抗体又は抗体フラグメントは、野生型IgG1、IgG2若しくはIgG4抗体、又はそのバリアントに基づく重鎖定常領域を含む。
【0053】
PD-1結合剤はまた、一本鎖抗体フラグメントであり得る。一本鎖抗体フラグメントの例としては、(i)Fvフラグメントの2つのドメイン(すなわち、V
L及びV
H)が単一のポリペプチド鎖として合成されることを可能にする合成リンカーによって結合された、該2つのドメインからなる一価の分子である一本鎖Fv(scFv)(例えば、Bird et al., Science, 242:423-426(1988);Huston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85:5879-5883(1988);及びOsbourn et al., Nat. Biotechnol., 16:778(1998)を参照)、及び(ii)ダイアボディ(ポリペプチド鎖の二量体であって、各ポリペプチド鎖はペプチドリンカーによりV
Lと結合されたV
Hを含み、該ペプチドリンカーは同一ポリペプチド鎖上のV
HとV
L間で対合させるには短すぎるものであり、それにより、異なるV
H-V
Lポリペプチド鎖上の相補的なドメイン間での対合が促されて、2つの機能的な抗原結合部位を有する二量体分子が生じる)が挙げられるが、これらに限定されない。抗体フラグメントは、当分野で既知であり、例えば、米国特許出願公開公報第2009/0093024 A1号に、より詳細に記載される。
【0054】
単離されたPD-1結合剤はまた、イントラボディ又はそのフラグメントであり得る。イントラボディは、発現し、細胞内で機能する抗体である。イントラボディは、典型的には、ジスルフィド結合を欠き、その特異的な結合活性により標的遺伝子の発現又は活性を調節することができる。イントラボディは、単離されたV
H及びV
Lドメイン並びにscFvsなどのシングルドメインのフラグメントを含む。イントラボディは、標的タンパク質が位置する細胞内コンパートメントにおいて高濃度で発現させるために、イントラボディのN又はC末端に付加された細胞内輸送シグナルを含み得る。標的遺伝子と相互作用すると、イントラボディは、標的タンパク質の分解の促進及び非生理学的細胞内コンパートメントにおける標的タンパク質の隔離(sequestering)などのメカニズムにより、標的タンパク質の機能を調節し、及び/又は表現型/機能的ノックアウトを達成する。イントラボディ媒介性の遺伝子不活性化の他のメカニズムは、イントラボディが対象とするエピトープに依存し得る(標的タンパク質上の触媒部位との結合、又はタンパク質-タンパク質、タンパク質-DNA若しくはタンパク質-RNA相互作用に関与するエピトープとの結合など)。
【0055】
単離されたPD-1結合剤はまた、抗体コンジュゲートであり得る。これに関して、単離されたPD-1結合剤は、(1)抗体、代替スキャフォールド(alternative scaffold)、又はそのフラグメント、及び(2)PD-1結合剤を含むタンパク質又は非タンパク質部分、のコンジュゲートであり得る。例えば、PD-1結合剤は、ペプチド、蛍光分子又は化学療法剤とコンジュゲートされた抗体の全部又は一部であり得る。
【0056】
単離されたPD-1結合剤は、ヒト抗体、非ヒト抗体若しくはキメラ抗体であり得るか、又はそれから得られ得る。「キメラ(chimeric)」とは、ヒト及び非ヒト領域の両方を含む抗体又はそのフラグメントを意味する。好ましくは、単離されたPD-1結合剤はヒト化抗体である。「ヒト化」抗体は、ヒト抗体スキャフォールドと、非ヒト抗体から得られるか又はそれに由来する少なくとも1つのCDRとを含むモノクローナル抗体である。非ヒト抗体には、例えば、齧歯類(例えば、マウス又はラット)などの任意の非ヒト動物から単離された抗体が含まれる。ヒト化抗体は、非ヒト抗体から得られるか又はそれに由来する1つ、2つ又は3つのCDRsを含み得る。本発明の好ましい実施態様において、本発明のPD-1結合剤のCDRH3がマウスモノクローナル抗体から得られるか又はそれに由来する一方、本発明のPD-1結合剤の残りの可変領域及び定常領域はヒトモノクローナル抗体から得られるか又はそれに由来する。
【0057】
ヒト抗体、非ヒト抗体、キメラ抗体又はヒト化抗体は、in vitroソース(例えば、ハイブリドーマ、又は組換えにより抗体を産生する細胞株)及びin vivoソース(例えば、齧歯類)を介することを含む、任意の手段によって得られ得る。抗体を作製するための方法は、当分野で既知であり、例えば、Kohler and Milstein, Eur. J. Immunol., 5:511-519(1976);Harlow and Lane(eds.), Antibodies:A Laboratory Manual, CSH Press(1988);及びJaneway et al.(eds.), Immunobiology, 5th Ed., Garland Publishing, New York, NY(2001))に記載される。特定の実施態様において、ヒト抗体又はキメラ抗体は、1つ以上の内因性免疫グロブリン遺伝子が1つ以上のヒト免疫グロブリン遺伝子に置き換えられているトランスジェニック動物(例えば、マウス)を使用して作製され得る。内因性抗体遺伝子がヒト抗体遺伝子に効果的に置き換えられているトランスジェニックマウスの例としては、Medarex HUMAB-MOUSE
TM、Kirin TC MOUSE
TM、及びKyowa Kirin KM-MOUSE
TM(例えば、Lonberg, Nat. Biotechnol., 23(9):1117-25(2005), 及びLonberg, Handb. Exp. Pharmacol., 181:69-97(2008)を参照)が挙げられるが、これらに限定されない。ヒト化抗体は、例えば、非ヒトCDRsをヒト抗体スキャフォールド上にグラフトすること(例えば、Kashmiri et al., Methods, 36(1):25-34(2005);及びHou et al., J. Biochem., 144(1):115-120(2008)を参照)などを含む、当分野で既知の任意の適切な方法を用いて作製され得る(例えば、An, Z.(ed.), Therapeutic Monoclonal Antibodies: From Bench to Clinic, John Wiley & Sons, Inc., Hoboken, New Jersey(2009)を参照)。一実施態様において、ヒト化抗体は、例えば米国特許出願公開公報第2011/0287485 A1号などに記載の方法を用いて作製され得る。
【0058】
好ましい実施態様において、PD-1結合剤は、PD-1とPD-L1との結合をブロックする、PD-1タンパク質エピトープと結合する。本発明はまた、間接的又はアロステリックな様式でPD-1とPD-L1との結合をブロックする、単離又は精製されたPD-1タンパク質エピトープを提供する。
【0059】
本発明はまた、本発明の免疫グロブリン重鎖ポリペプチド、本発明の免疫グロブリン軽鎖ポリペプチ及び本発明のPD-1結合剤をコードする、1つ以上の単離又は精製された核酸配列を提供する。
【0060】
用語「核酸配列」は、DNA又はRNAのポリマー、すなわちポリヌクレオチドを包含するよう意図されており、一本鎖又は二本鎖であり得、非天然の又は改変されたヌクレオチドを含み得る。本明細書で使用する場合、用語「核酸」及び「ポリヌクレオチド」とは、リボヌクレオチド(RNA)又はデオキシリボヌクレオチド(DNA)のいずれかである、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態をいう。これらの用語は、分子の一次構造をいい、従って、二本鎖及び一本鎖DNA、並びに二本鎖及び一本鎖RNAを含む。当該用語は、等価物として、ヌクレオチドアナログ及び改変ポリヌクレオチド(例えば、メチル化及び/又はキャッピングされたポリヌクレオチドなどであるが、これらに限定されない)から作製されるRNA又はDNAいずれかのアナログを含む。核酸は、典型的には、ホスフェート結合を介して連結されて核酸配列又はポリヌクレオチドを形成するが、他にも多くの結合(linkages)が当分野で既知である(例えば、ホスホロチオエート、ボラノホスフェートなど)。本発明の免疫グロブリン重鎖ポリペプチドをコードする核酸配列には、例えば、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、及び配列番号55が含まれる。本発明の免疫グロブリン軽鎖ポリペプチドをコードする核酸配列には、例えば、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、及び配列番号64が含まれる。
【0061】
本発明はさらに、本発明の免疫グロブリン重鎖ポリペプチド、本発明の免疫グロブリン軽鎖ポリペプチド及び/又は本発明のPD-1結合剤、をコードする1つ以上の核酸配列を含むベクターを提供する。ベクターは、例えば、プラスミド、エピソーム、コスミド、ウイルスベクター(例えば、レトロウイルス又はアデノウイルス)又はファージであり得る。適切なベクター及びベクター調製の方法は、当分野で周知である(例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning, a Laboratory Manual, 3rd edition, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, N.Y.(2001), 及びAusubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Associates and John Wiley & Sons, New York, N.Y.(1994)を参照)。
【0062】
本発明の免疫グロブリン重鎖ポリペプチド、本発明の免疫グロブリン軽鎖ポリペプチド及び/又は本発明のPD-1結合剤、をコードする核酸配列に加えて、ベクターは、好ましくは、プロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、転写ターミネーター、内部リボソーム侵入部位(IRES)などの、宿主細胞におけるコーディング配列の発現を提供する発現調節配列を含む。例示的な発現調節配列は当分野で既知であり、例えば、Goeddel, Gene Expression Technology:Methods in Enzymology, Vol. 185, Academic Press, San Diego, Calif.(1990)に記載される。
【0063】
種々の異なるソースからの、構成的、誘導性及び抑制性プロモーターを含む多数のプロモーターが当分野で周知である。プロモーターの代表的なソースには、例えば、ウイルス、哺乳動物、昆虫、植物、酵母及び細菌が含まれ、これらソースからの適切なプロモーターは、容易に入手可能であるか、或いは、例えば、ATCCなどの寄託機関及び他の商業的又は個人的ソースなどから一般に入手可能な配列に基づいて合成的に作製され得る。プロモーターは、一方向性(すなわち、一方向で転写を開始させる)又は二方向性(すなわち、3’又は5’のいずれかの方向で転写を開始させる)であり得る。プロモーターの非限定的な例としては、例えば、T7バクテリア発現系、pBAD(araA)バクテリア発現系、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、SV40プロモーター、RSVプロモーターが挙げられる。誘導性プロモーターには、例えば、Tet系(米国特許第5,464,758号及び第5,814,618号)、エクジソン誘導性(Ecdysone inducible)系(No et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 93:3346-3351(1996))、T-REX
TM系(Invitrogen, Carlsbad, CA)、LACSWITCH
TM系(Stratagene, San Diego, CA)、及びCre-ERTタモキシフェン誘導性リコンビナーゼ系(Indra et al., Nuc. Acid. Res., 27:4324-4327(1999);Nuc. Acid. Res., 28:e99(2000);米国特許第7,112,715号;及びKramer & Fussenegger, Methods Mol. Biol., 308:123-144(2005))が含まれる。
【0064】
本明細書で使用する場合、用語「エンハンサー」とは、例えば、それが作動可能(operably)に連結された核酸配列などの転写を増加させるDNA配列をいう。エンハンサーは、核酸配列のコーディング領域から何キロベースも離れて位置することができ、制御因子の結合、DNAメチル化パターン、又はDNA構造の変化を仲介し得る。種々の異なるソースからの多数のエンハンサーが当分野で周知であり、クローニングされたポリヌクレオチドとして又はクローニングされたポリヌクレオチド内で(例えば、ATCCなどの寄託機関及び他の商業的又は個人的なソースなどから)入手可能である。プロモーター(一般に使用されるCMVプロモーターなど)を含む多くのポリヌクレオチドはまた、エンハンサー配列も含む。エンハンサーは、コーディング配列の上流、内部、又は下流に位置し得る。
【0065】
ベクターはまた、「選択可能マーカー遺伝子(selectable marker gene)」を含み得る。本明細書で使用する場合、用語「選択可能マーカー遺伝子」とは、核酸配列であって、該核酸配列を発現する細胞が、対応する選択剤の存在下、特異的に選択される又はされないようにすることを可能にするものをいう。適切な選択可能マーカー遺伝子は、当分野で既知であり、例えば、国際特許出願公開公報WO 1992/008796号及びWO 1994/028143号;Wigler et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:3567-3570(1980);O'Hare et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 78:1527-1531(1981);Mulligan & Berg, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 78:2072-2076(1981);Colberre-Garapin et al., J. Mol. Biol., 150:1-14(1981);Santerre et al., Gene, 30:147-156(1984);Kent et al., Science, 237:901-903(1987);Wigler et al., Cell, 11:223-232(1977);Szybalska & Szybalski, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 48:2026-2034(1962);Lowy et al., Cell, 22:817-823(1980);並びに米国特許第5,122,464号及び第5,770,359号に記載される。
【0066】
いくつかの実施態様において、ベクターは、「エピソーム発現ベクター」又は「エピソーム」であり、宿主細胞において複製可能であり、適切な選択圧の存在下で、宿主細胞内において、DNAの染色体外セグメントとして存続する(例えば、Conese et al., Gene Therapy, 11:1735-1742(2004)を参照)。代表的な市販のエピソーム発現ベクターには、エプスタイン・バーウイルス由来核抗原1(Epstein Barr Nuclear Antigen 1)(EBNA1)及びエプスタイン・バーウイルス(EBV)複製起点(oriP)を利用するエピソームプラスミドが含まれるが、これに限定されない。Invitrogen(Carlsbad, CA)のベクターpREP4、pCEP4、pREP7及びpcDNA3.1、並びにStratagene(La Jolla, CA)のpBK-CMVは、EBNA1及びoriPの代わりにT抗原及びSV40複製起点を使用するエピソームベクターの非限定的な例を示す。
【0067】
他の適切なベクターには、宿主細胞のDNA中にランダムに組み込まれ得るか、又は発現ベクターと宿主細胞染色体との間の特異的組換えを可能にする組換え部位を含み得る、組込み(integrating)発現ベクターが含まれる。かかる組込み発現ベクターは、所望のタンパク質の発現をもたらすために、宿主細胞染色体の内因性発現調節配列を利用し得る。部位特異的な様式で組込むベクターの例としては、例えば、Invitrogen(Carlsbad, CA)のflp-in系(例えば、pcDNA
TM5/FRT)、又はcre-lox系(例えば、Stratagene(La Jolla, CA)のpExchange-6 Core Vectors中に見出され得るものなど)の構成要素が挙げられる。宿主細胞染色体中にランダムに組込むベクターの例としては、例えば、Invitrogen(Carlsbad, CA)のpcDNA3.1(T抗原の非存在下で導入される場合)、Millipore(Billerica, MA)のUCOE、及びPromega(Madison, WI)のpCI又はpFN10A(ACT)FLEXI
TMが挙げられる。
【0068】
ウイルスベクターも使用され得る。代表的な市販のウイルス発現ベクターには、Crucell, Inc.(Leiden, The Netherlands)から入手可能なアデノウイルスベースのPer.C6系、Invitrogen(Carlsbad, CA)のレンチウイルスベースのpLP1、及びStratagene(La Jolla, CA)のレトロウイルスベクターpFB-ERVプラスpCFB-EGSHが含まれるが、これらに限定されない。
【0069】
本発明のアミノ酸配列をコードする核酸配列は、同じベクター上で(すなわち、cisで)細胞に提供され得る。一方向性プロモーターを用いて、各核酸配列の発現を調節することができる。別の実施態様において、二方向性プロモーターと一方向性プロモーターの組み合わせを用いて、複数の核酸配列の発現を調節することができる。或いは、本発明のアミノ酸配列をコードする核酸配列は、別々のベクター上で(すなわち、transで)細胞の集団に提供され得る。別々のベクターそれぞれにおける各核酸配列は、同一又は異なる発現調節配列を含み得る。別々のベクターは、同時に又は逐次的に細胞に提供され得る。
【0070】
本発明のアミノ酸配列をコードする核酸(単数又は複数)を含むベクター(単数又は複数)は、それによってコードされるポリペプチドを発現することが可能な宿主細胞(任意の適切な原核又は真核細胞を含む)へと導入され得る。従って、本発明は、本発明のベクターを含む単離された細胞を提供する。好ましい宿主細胞は、容易且つ確実に増殖でき、合理的に速い増殖速度を有し、充分特徴付けられた発現系を有し、容易且つ効率的に形質転換又はトランスフェクトされ得るものである。
【0071】
適切な原核細胞の例としては、Bacillus属(Bacillus subtilis及びBacillus brevisなど)、Escherichia属(E. coliなど)、Pseudomonas属、Streptomyces属、Salmonella属、及びErwinia属由来の細胞が挙げられるが、これらに限定されない。特に有用な原核細胞には、Escherichia coliの種々の株(例えば、K12、HB101(ATCC No. 33694)、DH5α、DH10、MC1061(ATCC No. 53338)及びCC102)が含まれる。
【0072】
好ましくは、ベクターは、真核細胞へと導入される。適切な真核細胞は、当分野で既知であり、例えば、酵母細胞、昆虫細胞及び哺乳動物細胞が含まれる。適切な酵母細胞の例としては、Kluyveromyces属、Pichia属、Rhino-sporidium属、Saccharomyces属、及びSchizosaccharomyces属由来のものが挙げられる。好ましい酵母細胞には、例えば、Saccharomyces cerivisae及びPichia pastorisが含まれる。
【0073】
適切な昆虫細胞は、例えば、Kitts et al., Biotechniques, 14:810-817(1993);Lucklow, Curr. Opin. Biotechnol., 4:564-572(1993);及びLucklow et al., J. Virol., 67:4566-4579(1993)に記載される。好ましい昆虫細胞には、Sf-9及びHI5(Invitrogen, Carlsbad, CA)が含まれる。
【0074】
好ましくは、哺乳動物細胞が本発明において利用される。多数の適切な哺乳動物宿主細胞が当分野で既知であり、多くがAmerican Type Culture Collection(ATCC, Manassas, VA)から入手可能である。適切な哺乳動物細胞の例としては、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)(ATCC No. CCL61)、CHO DHFR細胞(Urlaub et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 97:4216-4220(1980))、ヒト胚性腎臓(HEK)293又は293T細胞(ATCC No. CRL1573)、及び3T3細胞(ATCC No. CCL92)が挙げられるが、これらに限定されない。他の適切な哺乳動物細胞株は、サルCOS-1(ATCC No. CRL1650)及びCOS-7細胞株(ATCC No. CRL1651)、並びにCV-1細胞株(ATCC No. CCL70)である。更なる例示的な哺乳動物宿主細胞には、霊長類細胞株及び齧歯類細胞株(形質転換された細胞株を含む)が含まれる。正常な二倍体細胞、初代組織(primary tissue)及び初代外植片(primary explants)のin vitro培養物由来の細胞株も適切である。他の適切な哺乳動物細胞株には、マウス神経芽細胞腫N2A細胞、HeLa、マウスL-929細胞、及びBHK又はHaKハムスター細胞株(これらは全て、ATCCから入手可能である)が含まれるが、これらに限定されない。適切な哺乳動物宿主細胞を選択するための方法、並びに細胞の形質転換、培養、増幅、スクリーニング及び精製のための方法は、当分野で既知である。
【0075】
最も好ましくは、哺乳動物細胞はヒト細胞である。例えば、哺乳動物細胞は、ヒトリンパ系細胞株又はリンパ系由来細胞株、例えば、プレBリンパ球由来の細胞株などであり得る。ヒトリンパ系細胞株の例としては、RAMOS(CRL-1596)、Daudi(CCL-213)、EB-3(CCL-85)、DT40(CRL-2111)、18-81(Jack et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85:1581-1585(1988))、Raji細胞(CCL-86)、及びその誘導体(derivatives)が挙げられるが、限定されない。
【0076】
本発明のアミノ酸配列をコードする核酸配列は、「トランスフェクション」、「形質転換」又は「形質導入」により細胞に導入され得る。本明細書で使用する場合、「トランスフェクション」、「形質転換」又は「形質導入」とは、物理的又は化学的な方法を使用して、宿主細胞に1つ以上の外因性ポリヌクレオチドを導入することをいう。多くのトランスフェクション技術が当分野で既知であり、例えば、リン酸カルシウムDNA共沈殿(例えば、Murray E.J.(ed.), Methods in Molecular Biology, Vol. 7, Gene Transfer and Expression Protocols, Humana Press(1991)を参照);DEAE-デキストラン;エレクトロポレーション;カチオン性リポソーム介在トランスフェクション;タングステン粒子促進性の微粒子銃(microparticle bombardment)(Johnston, Nature, 346:776-777(1990));及びリン酸ストロンチウムDNA共沈殿(Brash et al., Mol. Cell Biol., 7:2031-2034(1987))が含まれる。ファージ又はウイルスベクターは、適切なパッケージング細胞(その多くが市販されている)内での感染粒子の増殖後に、宿主細胞に導入され得る。
【0077】
本発明は、本発明の免疫グロブリン重鎖ポリペプチド、本発明の免疫グロブリン軽鎖ポリペプチド、本発明のPD-1結合剤、前記いずれかをコードする本発明の核酸配列、又は本発明の核酸配列を含む本発明のベクター、の有効量を含む組成物を提供する。好ましくは、該組成物は、医薬上許容される(例えば、生理学上許容される)組成物であり、担体、好ましくは医薬上許容される(例えば、生理学上許容される)担体、及び本発明のアミノ酸配列、抗原結合剤又はベクターを含む。任意の適切な担体が本発明の文脈において使用され得、かかる担体は当分野で周知である。担体の選択は、部分的には、組成物が投与され得る特定の部位及び組成物を投与するために使用される特定の方法によって決定されるだろう。組成物は、任意選択で無菌であり得る。組成物は、保存のために凍結又は凍結乾燥され得、使用前に適切な無菌の担体で再構成され得る。組成物は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy, 21st Edition, Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, PA(2001)に記載される従来技術に従って作製され得る。
【0078】
本発明はさらに、任意の疾患又は障害であって、PD-1タンパク質の不適切な発現(例えば、過剰発現)又は活性の増加が該疾患の病理学的作用を引き起こすか又はこれに寄与する、或いはPD-1タンパク質レベル又は活性の低下が哺乳動物(好ましくはヒト)において治療的有用性を有する、疾患又は障害を治療する方法を提供する。本発明はまた、哺乳動物において癌又は感染性疾患を治療する方法を提供する。当該方法は、前記組成物を癌又は感染性疾患を有する哺乳動物に投与することを含み、その結果、該哺乳動物において癌又は感染性疾患が治療される。本明細書で述べるように、PD-1は様々な癌で異常発現されており(例えば、Brown et al., J. Immunol., 170:1257-1266(2003);及びFlies et. al., Yale Journal of Biology and Medicine, 84:409-421(2011)を参照)、複数の腎細胞癌患者におけるPD-L1発現は、腫瘍の攻撃性と相関する。本発明の方法は、当分野で既知の任意のタイプの癌、例えば、メラノーマ、腎細胞癌、肺癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、結腸癌、胆嚢癌、喉頭癌、肝臓癌、甲状腺癌、胃癌、唾液腺癌、前立腺癌、膵臓癌、又はメルケル細胞癌などを治療するために使用できる(例えば、Bhatia et al., Curr. Oncol. Rep., 13(6):488-497(2011)を参照)。本発明の方法は、任意のタイプの感染性疾患(すなわち、細菌、ウイルス、真菌又は寄生生物により引き起こされる疾患又は障害)を治療するために使用できる。本発明の方法により治療され得る感染性疾患の例としては、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、インフルエンザウイルス、デング熱ウイルス、B型肝炎ウイルス(HBV、又はC型肝炎ウイルス(HCV))により引き起こされる疾患が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の免疫グロブリン重鎖ポリペプチド、本発明の免疫グロブリン軽鎖ポリペプチド、本発明のPD-1結合剤、前記いずれかをコードする本発明の核酸配列、又は本発明の核酸配列を含む本発明のベクター、を含む組成物の投与により、哺乳動物において癌又は感染性疾患に対する免疫応答が誘導される。「免疫応答」は、例えば、抗体産生、及び/又は免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞)の活性化などを伴い得る。
【0079】
本明細書で使用する場合、用語「治療」、「治療すること」などとは、所望の薬理学的及び/又は生理学的効果を得ることをいう。好ましくは、該効果は治療的であり、すなわち、該効果は、疾患、及び/又は疾患に起因する有害な症状を部分的に又は完全に治癒する。このために、本発明の方法は、「治療上有効量」のPD-1結合剤を投与することを含む。「治療上有効量」とは、所望の治療結果を達成するために、必要な投与量及び期間で、有効な量をいう。治療上有効量は、個体の疾患状態、年齢、性別及び体重、並びにPD-1結合剤が個体における所望の応答を引き出す能力などの要因によって変化し得る。例えば、本発明のPD-1結合剤の治療上有効量は、ヒトにおいてPD-1タンパク質の生物活性を低下させる、及び/又は癌若しくは感染性疾患に対する免疫応答を高める量である。
【0080】
或いは、薬理学的及び/又は生理学的効果は予防的であり得、すなわち、該効果は、疾患又はその症状を完全に又は部分的に予防する。これに関して、本発明の方法は、「予防上有効量」のPD-1結合剤を投与することを含む。「予防上有効量」とは、所望の予防結果(例えば、疾患発症の予防)を達成するために、必要な投与量及び期間で、有効な量をいう。
【0081】
典型的な投与量(dose)は、例えば、1 pg/kgから20 mg/kg(動物又はヒトの体重)の範囲にあり得る;しかしながら、この例示的な範囲より少ない又は多い投与量も本発明の範囲内である。一日の非経口投与量は、約0.00001 μg/kgから約20 mg/kg(全体重)(例えば、約0.001 μg /kg、約0.1 μg /kg 、約1 μg /kg、約5 μg /kg、約10 μg/kg、約100 μg /kg、約500 μg/kg、約1 mg/kg、約5 mg/kg、約10 mg/kg、又は前記値のいずれか2つによって規定される範囲)、好ましくは約0.1 μg/kgから約10 mg/kg(全体重)(例えば、約0.5 μg/kg、約1 μg/kg、約50 μg/kg、約150 μg/kg、約300 μg/kg、約750 μg/kg、約1.5 mg/kg、約5 mg/kg、又は前記値のいずれか2つによって規定される範囲)、より好ましくは約1 μg/kgから5 mg/kg(全体重)(例えば、約3 μg/kg、約15 μg/kg、約75 μg/kg、約300 μg/kg、約900 μg/kg、約2 mg/kg、約4 mg/kg、又は前記値のいずれか2つによって規定される範囲)、なおより好ましくは1日当たり約0.5から15 mg/kg(体重)(例えば、約1 mg/kg、約2.5 mg/kg、約3 mg/kg、約6 mg/kg、約9 mg/kg、約11 mg/kg、約13 mg/kg、又は前記値のいずれか2つによって規定される範囲)であり得る。治療又は予防の有効性は、処置患者の定期的な評価によってモニタリングされ得る。状態に応じて、数日以上に亘る反復投与のために、病徴の所望の抑制が生じるまで処置を繰り返し得る。しかしながら、他の投与レジメンが有用な場合があり、それも本発明の範囲内である。所望の投与量は、組成物の単回ボーラス投与により、組成物の複数回ボーラス投与により、又は組成物の継続的注入投与により、デリバリーされ得る。
【0082】
本発明の免疫グロブリン重鎖ポリペプチド、本発明の免疫グロブリン軽鎖ポリペプチド、本発明のPD-1結合剤、前記いずれかをコードする本発明の核酸配列、又は本発明の核酸配列を含む本発明のベクター、の有効量を含む組成物は、標準的な投与技術(経口、静脈内、腹腔内、皮下、肺内、経皮、筋肉内、鼻腔内、口腔、舌下又は坐剤投与を含む)を使用して哺乳動物に投与され得る。組成物は、好ましくは、非経口投与に適している。本明細書で使用する場合、用語「非経口」は、静脈内、筋肉内、皮下、直腸、膣内及び腹腔内投与を含む。より好ましくは、組成物は、静脈内、腹腔内又は皮下注射による末梢全身性デリバリー(peripheral systemic delivery)を使用して哺乳動物に投与される。
【0083】
哺乳動物(例えば、ヒト)に投与されると、本発明のPD-1結合剤の生物学的活性は、当分野で既知の任意の適切な方法によって測定され得る。例えば、生物学的活性は、特定のPD-1結合剤の安定性を決定することによって評価され得る。本発明の一実施態様において、PD-1結合剤(例えば、抗体)は、約30分間から45日間の間(例えば、約30分間、約45分間、約1時間、約2時間、約4時間、約6時間、約10時間、約12時間、約1日間、約5日間、約10日間、約15日間、約25日間、約35日間、約40日間、約45日間、又は前記値のいずれか2つによって規定される範囲)のin vivo半減期を有する。別の実施態様において、PD-1結合剤は、約2時間から20日間の間(例えば、約5時間、約10時間、約15時間、約20時間、約2日間、約3日間、約7日間、約12日間、約14日間、約17日間、約19日間、又は前記値のいずれか2つによって規定される範囲)のin vivo半減期を有する。別の実施態様において、PD-1結合剤は、約10日間から約40日間の間(例えば、約10日間、約13日間、約16日間、約18日間、約20日間、約23日間、約26日間、約29日間、約30日間、約33日間、約37日間、約38日間、約39日間、約40日間、又は前記値のいずれか2つによって規定される範囲)のin vivo半減期を有する。
【0084】
特定のPD-1結合剤の生物学的活性はまた、PD-1タンパク質又はそのエピトープとの結合親和性を決定することによっても評価され得る。用語「親和性」とは、2つの作用物質(agents)の可逆的結合についての平衡定数をいい、解離定数(K
D)として表される。リガンドとの結合剤の親和性(エピトープに対する抗体の親和性など)は、例えば、約1ピコモーラー(pM)から約100マイクロモーラー(μM)(例えば、約1ピコモーラー(pM)から約1ナノモーラー(nM)、約1 nMから約1マイクロモーラー(μM)、又は約1 μMから約100 μM)であり得る。一実施態様において、PD-1結合剤は、1ナノモーラー以下(例えば、0.9 nM、0.8 nM、0.7 nM、0.6 nM、0.5 nM、0.4 nM、0.3 nM、0.2 nM、0.1 nM、0.05 nM、0.025 nM、0.01 nM、0.001 nM、又は前記値のいずれか2つによって規定される範囲)のK
DでPD-1タンパク質と結合し得る。別の実施態様において、PD-1結合剤は、200 pM以下(例えば、190 pM、175 pM、150 pM、125 pM、110 pM、100 pM、90 pM、80 pM、75 pM、60 pM、50 pM、40 pM、30 pM、25 pM、20 pM、15 pM、10 pM、5 pM、1 pM、又は前記値のいずれか2つによって規定される範囲)のK
DでPD-1と結合し得る。関心のある抗原又はエピトープに対する免疫グロブリンの親和性は、当分野で認識される任意のアッセイを使用して測定され得る。かかる方法には、例えば、蛍光活性化セルソーティング(FACS)、分離可能なビーズ(例えば、磁気ビーズ)、表面プラズモン共鳴(SPR)、液相競合(solution phase competition)(KINEXA
TM)、抗原パニング、及び/又はELISAが含まれる(例えば、Janeway et al.(eds.), Immunobiology, 5th ed., Garland Publishing, New York, NY, 2001を参照)。
【0085】
本発明のPD-1結合剤は、単独で、又は他の薬物と組み合わせて(例えば、アジュバントとして)投与され得る。例えば、PD-1結合剤は、本明細書に開示する疾患の治療又は予防のための他の薬剤と組み合わせて投与され得る。これに関して、PD-1結合剤は、例えば当分野で既知の任意の化学療法剤などを含む少なくとも1つの他の抗癌剤、電離放射線、小分子抗癌剤、癌ワクチン、生物学的療法(例えば、他のモノクローナル抗体、癌殺傷ウイルス(cancer-killing viruses)、遺伝子療法、及び養子T細胞移入)、及び/又は手術と組み合わせて使用され得る。本発明の方法が感染性疾患を治療する場合、PD-1結合剤は、少なくとも1つの抗菌剤又は少なくとも1つの抗ウイルス剤と組み合わせて投与され得る。これに関して、抗菌剤は、当分野で既知の任意の適切な抗生物質であり得る。抗ウイルス剤は、特定のウイルスを特異的標的とする任意の適切なタイプの任意のワクチン(例えば、弱毒生ワクチン、サブユニットワクチン、組換えベクターワクチン、及び小分子抗ウイルス療法(例えば、ウイルス複製阻害剤及びヌクレオシドアナログ)であり得る。
【0086】
別の実施態様において、本発明のPD-1結合剤は、免疫チェックポイント経路を阻害する他の薬剤と組み合わせて投与され得る。例えば、本発明のPD-1結合剤は、CTLA-4、TIM-3又はLAG-3経路を阻害する又は該経路に拮抗する薬剤と組み合わせて投与され得る。これらの免疫チェックポイント経路の2つ以上を同時に標的化する併用療法は、改善され且つ潜在的相乗性の抗腫瘍活性を実証している(例えば、Sakuishi et al., J. Exp. Med., 207:2187-2194(2010);Ngiow et al., Cancer Res., 71:3540-3551(2011);及びWoo et al., Cancer Res., 72:917-927(2012)を参照)。一実施態様において、本発明のPD-1結合剤は、TIM-3と結合する抗体及び/又はLAG-3と結合する抗体と組み合わせて投与される。これに関して、哺乳動物において癌又は感染性疾患を治療する本発明の方法は、(i)TIM-3タンパク質と結合する抗体と(ii)医薬上許容される担体とを含む組成物、又は(i)LAG-3タンパク質と結合する抗体と(ii)医薬上許容される担体とを含む組成物、を該哺乳動物に投与することをさらに含み得る。
【0087】
治療的使用に加えて、本明細書に記載のPD-1結合剤は、診断応用又は研究応用において使用され得る。これに関して、PD-1結合剤は、癌又は感染性疾患を診断するための方法において使用され得る。同様に、PD-1結合剤は、異常なPD-1発現と関連する疾患又は障害について試験される対象においてPD-1タンパク質レベルをモニタリングするためのアッセイにおいて使用され得る。研究応用には、例えば、PD-1結合剤及び標識を利用して、サンプル中(例えば、ヒト体液中、又は細胞若しくは組織抽出物中)のPD-1タンパク質を検出する方法が含まれる。PD-1結合剤は、修飾(例えば、検出可能部分との共有結合又は非共有結合標識など)されるか又はされないで使用され得る。例えば、検出可能部分は、放射性同位体(例えば、
3H、
14C、
32P、
35S又は
125I)、蛍光若しくは化学発光化合物(例えば、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン又はルシフェリン)、酵素(例えば、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ又は西洋ワサビペルオキシダーゼ)、又は補欠分子族であり得る。抗原結合剤(例えば、抗体)を検出可能部分と個別にコンジュゲートするための、当分野で既知の任意の方法が、本発明の文脈において用いられ得る(例えば、Hunter et al., Nature, 194:495-496(1962);David et al., Biochemistry, 13:1014-1021(1974);Pain et al., J. Immunol. Meth., 40:219-230(1981);及びNygren, J. Histochem. and Cytochem., 30:407-412(1982)を参照)。
【0088】
PD-1タンパク質レベルは、本発明のPD-1結合剤を使用して、当分野で既知の任意の適切な方法によって測定され得る。かかる方法には、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)及びFACSが含まれる。PD-1タンパク質の正常又は標準的な発現値は、任意の適切な技術を使用して、例えば、抗原-抗体複合体を形成するのに適切な条件下で、PD-1ポリペプチドを含むか又は含むことが疑われるサンプルをPD-1特異的抗体と組み合わせることなどにより確立され得る。抗体は、結合した抗体又は結合していない抗体の検出を容易にするために、検出可能物質で直接又は間接的に標識される。適切な検出可能物質には、種々の酵素、補欠分子族、蛍光材料、発光材料及び放射性材料が含まれる(例えば、Zola, Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques, CRC Press, Inc.(1987)を参照)。次いで、サンプル中で発現されるPD-1ポリペプチドの量を標準値と比較する。
【0089】
PD-1結合剤は、キット(すなわち、診断アッセイを実施するための説明書を備える、所定量の試薬の包装された組み合わせ)で提供され得る。PD-1結合剤が酵素で標識される場合には、キットは、望ましくは、酵素により必要とされる基質及び補因子(例えば、検出可能な発色団又はフルオロフォアを提供する基質前駆体)を含む。また、安定化剤、バッファー(例えば、ブロッキングバッファー又は溶解バッファー)などの他の添加剤がキットに含まれてよい。種々の試薬の相対量は、アッセイの感度を実質的に最適化する、試薬の溶液中濃度を提供するために変動し得るる試薬は、溶解時に適切な濃度を有する試薬溶液を提供する賦形剤を含む、乾燥粉末(典型的には、凍結乾燥されたもの)として提供され得る。
【0090】
以下の実施例は本発明を更に説明するが、当然のことながら、いかなる場合においてもその範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0091】
実施例1
本実施例は、ヒトPD-1に対するモノクローナル抗体を作製する方法を実証する。
【0092】
マウス免疫化、ハイブリドーマスクリーニング及びCDRグラフト化抗体の親和性成熟に使用するために、抗原として、ヒトPD-1並びにそのリガンドPD-L1及びPD-L2をコードする遺伝子を複数の形態で作製し、これを
図1に図式的に示す。全長ヒト及びカニクイザルPD-1遺伝子は、ハイグロマイシン選択性を有する遍在性クロマチンオープニングエレメント(ubiquitous chromatin opening element)(UCOE)単一発現ベクター(Millipore, Billerica, MA)を用いて、タグを付加せず、その天然のリーダー配列とともに発現させた。Lipofectamine LTX(Life Technologies, Carlsbad, CA)を用いて、製造者の指示に従い、CHO-K1細胞を安定的にトランスフェクトした。ハイグロマイシンで選択後、ヒトPD-1に対するPEコンジュゲート化マウス抗体(BD Bioscience, Franklin Lakes, NJ)を用いたフローサイトメトリーにより、細胞表面上にPD-1を発現する細胞を同定し、サブクローニングした。次いで、サブクローンを高レベル且つ均一なPD-1発現について選択した。
【0093】
ヒト及びカニクイザルPD-1の細胞外ドメイン(ECD)の可溶性単量体型をコードする核酸配列を、
図1に示すように、該ECDのC末端に付加されるHisタグとともに構築するか、又はマウスIgG2a Fcとの可溶性二量体融合タンパク質として構築した。ヒトPD-L1及びPD-L2のECDsの可溶性二量体型をコードする核酸配列を、
図1に示すように、マウスIgG1 Fcとの融合タンパク質として構築した。可溶性タンパク質は、標準的な技術を用いて、HEK 293細胞において一過的に発現させるか、又は安定発現CHO細胞株において発現させた。Hisタグ化タンパク質は、細胞培養上清からNi-アフィニティカラムクロマトグラフィー、それに続いてサイズ排除クロマトグラフィーを介して精製した。IgG-Fc融合タンパク質は、プロテインA/Gアフィニティクロマトグラフィーを用いて精製した。精製タンパク質は、SDS-PAGE及びサイズ排除クロマトグラフィーにより分析して、均一性を確保した。さらに、質量分析により同一性及びサイズを確認した。
【0094】
FACSソーティング実験のために、精製タンパク質をNHSエステルクロスリンカー(Thermo-Fisher Scientific, Inc., Waltham, MA)を用いてビオチンで標識するか、又は標準的な技術を用いて蛍光色素DyLight 650(Thermo-Fisher Scientific, Inc., Waltham, MA)で標識した。
【0095】
細胞表面上に全長PD-1を発現するCHO細胞、又はPD-1 ECD Hisタンパク質のいずれかでマウスを免疫した。具体的には、メスBALB/cマウス(7週齢)をHarlan Laboratories, Inc.(Indianapolis, IN)から購入し、2つのグループに分けた。馴化6日後、1つの動物グループを、4週間用量の精製ヒトPD-1 ECD-His(TITERMAX GOLD
TM(Sigma Aldrich, St. Louis, MO)との1:1エマルジョンとして)(50 μg/マウス)で免疫した。免疫は、腋窩及び鼠頸部周囲の皮下に実施した。2番目の動物グループには、全長ヒトPD-1を安定的に発現する、4週間用量のCHO-K1細胞(5×10
6細胞/マウス)を鼠頸部周囲の皮下に注入した。10日後、PD-1に対する血清力価測定のために動物から採血し、各グループから1匹の動物を、3週間休ませた後、可溶性ヒトPD-1でブーストした。3日後、各動物から脾臓、腋窩/上腕リンパ節、及び鼠頸リンパ節を回収した。両方の動物から回収した全ての組織由来の細胞の単細胞浮遊液をプールし、標準的な技術を用いた細胞融合によるハイブリドーマ作製のために使用した。2つの異なるミエローマ細胞株であるF0(de St. Groth and Scheidegger, J. Immunol. Methods, 35:1-21(1980)に記載されるように)及びP3X63Ag8.653(Kearney et al., J. Immunol., 123:1548-1550(1979)に記載されるように)を融合のために使用した。
【0096】
10の96ウェルプレートからのハイブリドーマ上清を、全長ヒトPD-1をコードする核酸配列が安定的にトランスフェクトされたCHO-K1細胞クローンとの結合についてスクリーニングし、トランスフェクトされていないCHO-K1細胞との結合と比較した。具体的には、ハイブリドーマ上清をPBS/2%FBSで1:1希釈し、同量のPD-1 CHO-K1細胞(PBS, 2%FBS中、2.5×10
5細胞)とともに4℃、30分間インキュベートした。細胞を遠心分離し、PBS/1%FBSで1回洗浄し、APCコンジュゲート化ヤギ抗マウスIgG(H+L)(Southern Biotechnology, Birmingham, AL)とともに4℃、30分間インキュベートした。細胞をPBS/2%FBSで2回洗浄し、PBS, 2%FBS, 1%パラホルムアルデヒドに再懸濁し、BD FACSARRAY
TMBioanalyzer(BD Biosciences, Franklin Lakes, NJ)で蛍光を分析した。ELISAによりマウスIgGレベルを定量化した。
【0097】
PD-1 CHO細胞との強結合に基づき、46の親ウェル(parental wells)を増大させ、その上清を、DyL650標識PD-L1-mIgG1 Fc融合タンパク質とPD-1 CHO細胞との結合をブロックする能力について試験した。具体的には、精製したマウスモノクローナル抗体を、PD-L1-DyL650(10 nM)のE
C30濃度での用量反応でインキュベートし、フローサイトメトリーにより阻害を定量化した。最良のPD-L1ブロッキング活性及び最も高いマウスIgGレベルを示すウェルからの細胞を、精製並びに重鎖及び軽鎖(V
H及びV
L)シーケンシングを含む更なる分析のためにサブクローニングした。PD-1/PD-L1相互作用の最も強いブロッカーのうち11をサブクローニングのために選択した。PD-1結合及びPD-L1ブロッキングを再確認した後、選択したサブクローンをスケールアップし、上清を抗体精製に供した。精製した抗体を、ヒト及びカニクイザルの両方のPD-1との結合、並びにPD-L1ブロッキング活性について検証した。BIACORE
TM T200装置(GE Healthcare, Waukesha, WI)での表面プラズモン共鳴によりK
D値を決定し、BIACORE
TM T200評価ソフトウェア(GE Healthcare, Waukesha, WI)を用いて速度定数を決定した。これに関して、GE抗マウスIgGが結合されたBIACORE
TM CM5チップ上で抗体を捕捉した。PD-1-Hisモノマーを、最高濃度500 nMで開始する2倍又は3倍の段階希釈を用いて、捕捉抗体上に流した。得られたセンサーグラムを、1:1結合モデルを用いてグローバルフィッティングして、オン及びオフレートを計算し、その後親和性(K
D)を計算した。
【0098】
本実施例の結果は、ヒト及びカニクイザルPD-1と結合し、PD-1リガンド結合をブロックするモノクローナル抗体の製造方法を実証する。
【0099】
実施例2
本実施例は、CDRグラフト化及びキメラ抗PD-1モノクローナル抗体の設計及び作製を記載する。
【0100】
実施例1に記載するように、PD-L1ブロッキング活性を有するPD-1結合抗体を産生したハイブリドーマのサブクローンをアイソタイピングし、抗体重鎖可変領域(V
H)及び軽鎖可変領域(V
L)をクローニングするためにRT-PCRに供し、シーケンシングした。具体的には、RNEASY
TMキット(Qiagen, Venlo, Netherlands)を用いて、ハイブリドーマクローンの細胞ペレット(5×10
5細胞/ペレット)からRNAを単離し、オリゴdTプライムド(oligo-dT-primed)SUPERSCRIPT
TM III First-Strand Synthesis System(Life Technologies, Carlsbad, CA)を用いてcDNAを調製した。V
LのPCR増幅は、9又は11の縮重マウスV
Lフォワードプライマープール(Kontermann and Dubel, eds., Antibody Engineering, Springer-Verlag, Berlin(2001)を参照)及びマウスκ定常領域リバースプライマーを利用した。V
HのPCR増幅は、SUPERSCRIPT
TM III First-Stand Synthesis System(Life Technologies, Carlsbad, CA)で推奨されるプロトコルで、12の縮重マウスV
Hフォワードプライマープール(Kontermann and Dubel, 上記)及びマウスγ1又はγ2a定常領域リバースプライマー(各クローンからの精製抗体のアイソタイピングに基づく)を利用した。PCR産物を精製し、pcDNA3.3-TOPO(Life Technologies, Carlsbad, CA)にクローニングした。各細胞ペレットからの個々のコロニー(24の重鎖及び48の軽鎖)を選択し、標準的なSangerシーケンシング方法論(Genewiz, Inc., South Plainfield, NJ)を用いてシーケンシングした。可変領域配列を検証し、最も近いヒト重鎖又は軽鎖V領域生殖細胞系列配列(germline sequence)とアラインメントした。CDRグラフティングのために3つの抗体を選択した:(1)9A2(配列番号4のV
H及び配列番号28のV
Lを含む)、(2)10B11(配列番号15のV
H及び配列番号32のV
Lを含む)、及び(3)6E9(配列番号22のV
H及び配列番号38のV
Lを含む)。
【0101】
CDRグラフト化抗体配列は、上記マウス抗体それぞれからのCDR残基を最も近いヒト生殖細胞系列ホモログにグラフトすることにより設計した。CDRグラフト化抗体可変領域を合成し、分析のためにヒトIgG1/κ定常領域とともに発現させた。さらに、上記マウス抗体の可変領域をヒトIgG1/κ定常領域と連結させたものを用いて、マウス:ヒトキメラ抗体を構築した。キメラ及びCDRグラフト化抗体は、ヒト及びカニクイザルPD-1抗原との結合、並びに上記のようなPD-1/PD-L1ブロッキングアッセイにおける活性を特徴とした。
【0102】
キメラ及びCDRグラフト化抗体の機能的アンタゴニスト活性はまた、抗PD-1抗体の存在下でのCD4+ T細胞の活性化をIL-2分泌の測定により評価するヒトCD4
+ T細胞混合リンパ球反応(mixed lymphocyte reaction)(MLR)アッセイでも試験した。PD-1は、T細胞機能の負のレギュレーターであるため、PD-1の拮抗作用は、IL-2産生の増加により測定されるように、T細胞活性化の増加をもたらすと予測された。9A2、10B11及び6E9 CDRグラフト化抗体は、アンタゴニスト活性を実証し、親和性成熟のためにこれらを選択した。
【0103】
本実施例の結果は、PD-1と特異的に結合し阻害するキメラ及びCDRグラフト化モノクローナル抗体の作製方法を実証する。
【0104】
実施例3
本実施例は、PD-1に対するモノクローナル抗体の親和性成熟を実証する。
【0105】
オリジナルのマウスモノクローナル抗体(9A2、10B11及び6E9)に由来するCDRグラフト化抗体を、in vitro体細胞超変異を介した親和性成熟に供した。SHM-XEL脱落(deciduous)システム(Bowers et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 108:20455-20460(2011);及び米国特許出願公開公報第2013/0035472号を参照)を用いて、各抗体をHEK 293c18細胞の表面上にディスプレイした。安定なエピソーム株(episomal lines)の樹立後、Bowers et al., 上記に記載されるように、活性化誘導シトシンデアミナーゼ(activation-induced cytosine deaminase)(AID)の発現のためのベクターを該細胞にトランスフェクトして、体細胞超変異を開始させた。抗原結合ストリンジェンシーを増加させる条件下での複数ラウンドのFACSソーティング後に、各抗体の可変領域において多くの変異が同定され、これを再結合して、改善された特性を有する成熟ヒト化抗体を作製した。
【0106】
6の親和性成熟されたヒト化重鎖及び軽鎖可変領域配列のパネルをペアにし(APE1922、APE1923、APE1924、APE1950、APE1963及びAPE2058と示す)、特性化のために選択し、表1に記載する。これら抗体配列それぞれのPD-1結合特性を表面プラズモン共鳴(SPR)及び溶液ベースのアフィニティ分析を用いて評価した。抗体は、ヒトIgG1抗体としてHEK 293細胞から発現され、これをBMS-936558のヒトIgG1バージョンである参照抗体(BMSと記す)と比較した。
【0107】
SPR分析は、BIACORE
TM T200装置を用いて実施し、BIACORE
TM T200評価ソフトウェアを用いて速度定数を決定した。実験パラメーターは、最も高い抗原濃度で飽和が達成されること、及びR
max値が30 RU未満に保たれることが確保されるように選択した。GE抗ヒトIgG(Fc特異的、およそ7,000 RU)を、EDC活性化アミンカップリング化学を用いてBIACORE
TM CM5チップ上に固定化した。次いで、この表面を用いて抗体(0.5 μg/mL、60秒間の捕捉時間)を捕捉した。次に、モノマーの可溶性ヒトPD1-Avi-Hisを500 nMから2 nMの3倍段階希釈系列を用いて捕捉抗体上に流した(300秒間の結合(association)、300秒間の解離)。各濃度の抗原について新たな(fresh)結合表面を確保するために、各サイクルの間に3 M MgCl
2(60秒間の接触時間)を用いて捕捉抗体及び抗原を除去した。オン及びオフレート(それぞれ、k
a及びk
d)並びに親和性(K
D)を計算するために、得られたセンサーグラムを1:1結合モデルを用いてグローバルフィッティングした。
【0108】
溶液ベースの親和性分析は、KINEXA
TM 3000アッセイ(Sapidyne Instruments, Boise, Idaho)を用いて実施し、KINEXA
TMPro Software 3.2.6を用いて結果を分析した。実験パラメーターは、0.8から1.2 Vの間に抗体単独で最大シグナルを達成するがバッファー単独での非特異的結合シグナルが最大シグナルの10%未満に制限されるように選択した。アズラクトンビーズ(50 mg)を、50 mM Na
2CO
3中PD-1-Avi-His(1 mL中50 μg/mL)の溶液中に希釈することにより抗原でコーティングした。該溶液を室温で2時間回転させ、picofugeにてビーズをペレット化し、ブロッキング溶液(10 mg/mL BSA, 1 M Tris-HCl, pH 8.0)で2回洗浄した。ビーズをブロッキング溶液(1 mL)に再懸濁し、室温で1時間回転させ、25倍量(volumes)のPBS/0.02%NaN
3中に希釈した。親和性測定のために、二次抗体はALEXFLUOR
TM647色素-抗ヒトIgG(500 ng/mL)であった。サンプル抗体濃度を一定(50 pM又は75 pM)に保つ一方、抗原PD1-Avi-Hisは、1 μMから17 pMの3倍希釈系列を用いてタイトレーションした。全てのサンプルをPBS, 0.2%NaN
3, 1 mg/mL BSA中に希釈し、室温で30時間平衡化させた。さらに、最大シグナル及び非特異的結合シグナルを決定するために、それぞれ抗体のみ及びバッファーのみを含むサンプルを試験した。親和性分析の結果を表1に記載する。選択した抗体は全て、BMS参照抗体よりもPD-1に対して高い親和性を呈し、最も高い親和性の抗体はAPE2058であった。
【0109】
【表1】
【0110】
抗体と細胞表面PD-1との結合を評価するために、ヒト又はカニクイザルのいずれかのPD-1を発現するCHO細胞との結合を、上記のようにフローサイトメトリー分析により決定した。さらに、PD-1/PD-L1相互作用のブロッキングを、上記のように、DyL650標識PD-L1(マウスIgG1 Fc融合タンパク質)及びPD-1発現CHO細胞を用いて評価した。細胞表面PD-1に対する高い結合親和性が、試験した全ての親和性成熟化抗体配列で観察され、カニクイザルPD-1に対してヒトの3〜4倍の範囲内の反応性を有した。PD-1/PD-L1相互作用のブロッキングも、試験した親和性成熟化抗体配列の全てで効率的であり、低nM範囲のIC
50値であった。これらの結果は、BIACORE
TM及びKINEXA
TMシステムの両方により評価される結合親和性、並びに細胞表面EC
50値と一致した。
【0111】
選択した抗体の熱安定性を、McConnell et al., Protein Eng. Des. Sel., 26:151(2013)に記載されるように、Thermofluorアッセイを用いて評価した。このアッセイは、疎水性蛍光色素が、タンパク質アンフォールドとして暴露される、タンパク質表面上の疎水性パッチと結合する能力を介して安定性を評価する。熱安定性を測定するために、タンパク質アンフォールドが50%となる温度を決定する(Tm)。このアッセイにより、試験した親和性成熟化抗体配列は全て高い熱安定性を有し、全てが参照抗体よりも安定的であったことが実証された。APE2058は最も安定した抗体であり、BMS-936558のIgG1バージョンのTmよりも10℃超高いTmを呈した。
【0112】
試験した抗体のin vivo薬物動態に関する潜在的問題のリスク回避(de-risking)は、(a)標的ネガティブ細胞との非特異的結合の評価(例えば、Hotzel et al., mAbs, 4:753-760(2012)を参照)及び(b)差別的(differential)な新生児型Fc受容体(FcRn)解離特性の測定(例えば、Wang et al., Drug Metab. Disp., 39:1469-1477(2011)を参照)を介して行った。非特異的結合を評価するために、フローサイトメトリーベースのアッセイを用いて、HEK 293f細胞との結合について抗体を試験した。試験した抗体を、2つのFDA認可抗体インフリキシマブ及びデノスマブと比較した。その結果、抗体全てについて非特異的結合が低いことが示された。FcRn結合及び解離を評価するために、ヒトFcRn及びカニクイザルFcRnの両方をBIACORE
TMベースのアッセイで試験した。抗体はFcRnとpH 6.0で結合し、pHを7.4に調整後、残存(residual)結合抗体を決定した。このアッセイの結果を表2に示す。
【0113】
【表2】
【0114】
本実施例の結果は、熱安定性及びPD-1に対する高親和性を呈する、本発明の免疫グロブリン重鎖及び軽鎖ポリペプチドの作製方法を実証する。
【0115】
実施例4
本実施例は、in vitroにおける、本発明の免疫グロブリン重鎖及び軽鎖ポリペプチドの活性を実証する。
【0116】
実施例3に記載のV
H及びV
L配列の機能的アンタゴニスト活性を、上記のように、ヒトCD4
+ T細胞MLRアッセイで試験した。機能的能力の決定のために、各抗体についてのEC
50を、異なるヒトドナーを用いて5つの別個の実験で決定した。結果を表3に示し、これにより、選択した抗体それぞれについて強力な活性が実証され、参照抗体の活性と区別できなかった。
【0117】
【表3】
【0118】
本実施例の結果は、本発明の免疫グロブリン重鎖及び軽鎖ポリペプチドが、PD-1シグナリングに拮抗でき、T細胞活性化の増加をもたらすことを実証する。
【0119】
実施例5
本実施例は、本発明のPD-1結合剤と、抗LAG-3抗体又は抗TIM-3抗体のいずれかとの組み合わせが、in vitroにおいてT細胞活性化を高めることを実証する。
【0120】
組み合わせ研究のためのパラメーターを確立するために、抗PD-1抗体APE2058を、上記のヒトCD4+ T細胞MLRアッセイにおいて用量反応でタイトレーションした。PD-1シグナリングの拮抗作用により、T細胞活性化の増加、及びIL-2産生における4から5倍の対応する増加がもたらされた。
【0121】
複数のMLRアッセイにおいてAPE2058抗体をタイトレーションした結果に基づき、20 ng/mLのEC
50値、及びおおよそEC
10値を示す10倍低い濃度(2 ng/mL)を、TIM-3又はLAG-3チェックポイント分子に対するアンタゴニスト抗体との組み合わせ研究のために選択した。
【0122】
完全なヒト抗TIM-3抗体は、CD4+ T細胞in vitroアッセイにおいて、低レベルの抗CD3及び抗CD28抗体の存在下、IL-2産生の増加により測定されるように、アンタゴニスト活性を有するものと特徴付けられた。抗TIM-3抗体は、
図2及び表4に示すように、MLRアッセイにおいて、およそ0.3 μg/mLのEC
50値を有し、活性を実証し、これは、抗PD-1 APE2058抗体単独(およそ0.02 μg/mLのEC
50)よりもおよそ15倍低い活性である。0.02 μg/mLのAPE2058と組み合わせた場合、抗TIM-3アンタゴニスト抗体は、
図2及び表4に示すように、APE2058又は抗TIM-3単独と比較してIL-2産生量の増加を刺激し、10倍低いEC
50値をもたらした。これらの結果は、T細胞活性化の高まりが、PD-1及びTIM-3チェックポイント経路の組み合わせ阻害に伴って生じることを実証する。
【0123】
完全なヒトアンタゴニスト抗LAG-3抗体(米国特許出願公開公報第2011/0150892号に記載される)は、組換え可溶性LAG-3とMHCクラスIIポジティブ細胞との結合のブロッキングにおいて強力な活性を実証している。この抗体(本明細書においてAPE03109と示す)をヒトCD4
+ T細胞MLRアッセイにおいて機能的活性について評価した。APE03109は、
図3及び表4に示すように、MLRにおいて、およそ0.05 μg/mLのEC
50値を有し、活性を実証し、これは、抗PD-1抗体単独の活性と同程度であった。0.02 μg/mLの抗PD-1 APE2058抗体と組み合わせた場合、APE03109抗体は、APE2058又はAPE03109単独を超えるIL-2産生量の増加を刺激し、5倍低いEC
50値をもたらした。
【0124】
抗LAG-3 APE03109抗体単独、及びAPE2058とAPE03109との組み合わせでのIL-2産生の経時変化もヒトCD4
+ MLRアッセイで特徴付けられた。
図3に示すように、培養72時間後、0.02 μg/mL APE2058とAPE03109との組み合わせについて、同様に低下したEC
50値が観察された。培養96時間後、EC
50値の差は顕著なものでなかった;しかしながら、0.02 μg/mLの抗PD-1 APE2058抗体及び抗LAG-3 APE03109抗体で処理された培養物で産生されたIL-2のレベルは、APE03109単独で処理された培養物と比較してほぼ倍であった(2,200 pg/mL対1,200 pg/mL)。LAG-3発現の経時変化と一致して、APE03109のAPE2058への添加からのIL-2産生の増加は、24時間後に観察されず、とはいえAPE2058単独では、この時間で用量反応性のIL-2産生の増加が生じた。別個のMLR実験において、APE2058とAPE03109との組み合わせが、48時間後にT細胞サイトカインIFN-γの産生レベルを50%超高めたことも実証された。
【0125】
CD4
+ T細胞MLRにおける抗TIM-3抗体又は抗LAG-3抗体の組み合わせ効果が標的特異性に起因したことを実証するために、無関係のヒトIgG1抗体APE0422を0.02 μg/mLの抗PD-1抗体APE2058と組み合わせて試験した。試験した最も高い濃度(30 μg/mL)でも、APE0422抗体は、IL-2産生に対して、抗PD-1単独を超えるいずれの効果も呈さなかった。
【0126】
【表4】
【0127】
本実施例の結果は、TIM-3又はLAG-3に対するアンタゴニスト抗体と組み合わされた本発明のPD-1結合剤が、in vitroにおいてCD4
+ T細胞活性化を高めることを実証する。
【0128】
刊行物、特許出願及び特許を含む、本明細書に引用した全ての参考文献は、それぞれの参考文献が参照によって組み込まれることが個々に且つ具体的に示され、その全体が本明細書に記載されているのと同程度まで、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0129】
本発明の説明に関して(特に、以下の特許請求の範囲に関して)、用語「a」及び「an」及び「the」及び「少なくとも1つ(at least one)」並びに同様の指示対象の使用は、本明細書に特記がないか文脈と明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方をカバーすると解釈すべきである。1つ以上の事項の列挙の後での用語「少なくとも1つ」の使用(例えば、「A及びBの少なくとも1つ」)は、本明細書に特記がないか文脈と明らかに矛盾しない限り、列挙した事項から選択される1つの事項(A又はB)、又は列挙した事項のうち2つ以上の任意の組み合わせ(A及びB)を意味すると解釈すべきである。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」及び「含む(containing)」は、特記のない限り、オープンエンドの用語(すなわち、「〜を含むが、それらに限定されない」を意味する)と解釈すべきである。本明細書中の値の範囲の記述は、本明細書に特記のない限り、その範囲内に入る各個別の値に個々に言及する省略方法として働くことのみを意図しており、各個別の値は、それが本明細書に個々に記述されているかのように本明細書に組み込まれる。本明細書に記載される全ての方法は、本明細書に特記がないか文脈と明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施できる。本明細書で提供される任意の及び全ての例又は例示的用語(例えば、「など(such as)」)の使用は、本発明をよりよく説明することのみを意図しており、特段特許請求されない限り、本発明の範囲に限定を課すものではない。本明細書の全ての用語は、特許請求されていない任意の要素を本発明の実施に必須のものとして示していると解釈すべきではない。
【0130】
発明を実施するために本発明者らが知る最良の形態を含む、本発明の好ましい実施態様が本明細書に記載される。これらの好ましい実施態様のバリエーションは、上述の説明を読めば当業者に明らかとなり得る。本発明者らは、当業者がかかるバリエーションを適宜使用することを予期しており、本発明者らは、本明細書に具体的に記載されたのとは異なる方法で本発明が実施されることを意図している。従って、本発明は、適用法によって許容されるとおり、本明細書に添付した特許請求の範囲に記載される主題の全ての改変及び等価物を含む。さらに、その全ての可能なバリエーションでの上記要素の任意の組み合わせが、本明細書に特記がないか文脈と明らかに矛盾しない限り、本発明によって包含される。