【課題を解決するための手段】
【0009】
これらの目的のうちの少なくとも1つは、少なくとも部分的に、特許請求の範囲における少なくとも1つの請求項に記載されている位置決めデバイスによって達成される。
【0010】
ベースに対してキャリアを制御式に動作させるための画像スタビライザの位置決めデバイスは、
・第1のサスペンションによってベースに対し動作可能式に組み立てられかつ第1の駆動装置によって動作可能な第1の結合素子と、
・第2のサスペンションによってベースに対し動作可能式に組み立てられかつ第2の駆動装置によって動作可能な第2の結合素子と、
・第1の結合素子の動作をキャリア上へ伝達することができる第1の伝動ユニットと、
・第2の結合素子の動作をキャリア上へ伝達することができる第2の伝動ユニットと、を備え、
・第1の駆動装置および第2の駆動装置は、線形駆動装置であり、かつ第1の結合素子および第2の結合素子は、各々、(ベースに対して)略正確な1並進自由度の可動性を有する。
【0011】
サスペンションおよび伝動ユニットは、駆動装置および結合素子の動作が直線運動に限定されるという事実に起因して、同じ数の自由度を有する既知の位置決めデバイスより安定した方法で、かつより大きいばね定数で(よって、より硬いばねで)実現することができる。これにより、システムの自然周波数は、より大きくなり、したがってより大きい外乱周波数を有する動作を補正することが可能である。
【0012】
少なくとも1つの実施形態において、少なくとも第1のサスペンションおよび/または第2のサスペンションは、個々の結合素子をベースへ接続する少なくとも2つの薄板ばね素子を有するサスペンションによって実現される。これにより、一方向に、具体的には、薄板ばね素子の平面内に、高い剛性を有し、かつこの平面に対して垂直な動作では低い剛性を有するサスペンションを実現することが可能である。薄板ばね素子は、例えば、ばね板である。
【0013】
少なくとも1つの実施形態において、少なくとも第1の駆動装置および第2の駆動装置は、圧電線形駆動装置であり、具体的にはこれらにより平面共振器は、能動素子の平面に対して平行な2つのアームによって、音叉式に延びる。この場合共振器は、被給電ピエゾ素子によって揺動状態にされることが可能であって、共振器の接触領域は、揺動運動に起因して、駆動装置の受動素子を能動素子に対して駆動する。
【0014】
より高い駆動力は、コイル駆動装置の移動に対照されるような方式で展開される駆動装置の適用に起因して集められることが可能であり、かつこのことも同様に、より硬いばねの使用、および既に述べた自然周波数の増加に有利に働く。
【0015】
少なくとも1つの実施形態において、少なくとも一方の駆動装置は、能動的な駆動部と、受動的な被駆動部とを備える。駆動装置は、具体的には、共振器を被給電ピエゾ素子によって揺動させる圧電駆動装置であり、共振器の接触領域は、揺動運動に起因して、駆動装置の受動部を駆動部に対して駆動する。したがって、超小型で精確に制御可能なサスペンションを作成することができる。ピエゾモータの供給周波数、さらには共振器および例えば接触領域の振動周波数は、450kHzから500kHzまでの間である。
【0016】
駆動部は、平坦な形状を有することが可能であり、よって、構造サイズを超小型に設計することができる。好ましくは、さらに、受動部は、キャリア素子上へ固定される。平坦な駆動部の、その最大延設部の平面における延設部は、好ましくは、この平面に対する垂直方向より少なくとも3倍から5倍大きい。位置決めデバイスは、好ましくは、各方向に20mm未満であり、好ましくは、各方向に10mm未満である。
【0017】
少なくとも1つの実施形態において、少なくとも一方の駆動装置は、圧電(線形)駆動装置として構成され、これにより、平面共振器は、駆動部の平面に対して平行な2つのアームによって音叉式に延び、かつ共振器は、被給電ピエゾ素子によって振動させられることが可能であり、共振器の接触領域は、揺動運動に起因して、駆動装置の受動部を駆動部に対して駆動する。これにより、受動部は、駆動部であれば適すると思われる正確な直線運動をするわけではないが、キャリア軸を中心とする円形経路上で動作する。
【0018】
平面共振器は、駆動部の平面内に存在し、または、この平面を画定する。好ましくは、第2の駆動装置もこのように構成される。対応する圧電駆動装置は、国際公開出願第2006/000118号パンフレットにおいて、例えば、
図35〜
図40における実施形態、具体的には、唯一の駆動板または共振器板を有する実施形態によって開示されている。これにより、純粋なピエゾ素子、または場合によりレバー経由で作用する素子よりも、駆動装置の比較的長いたわみ、よって第1および第2の軸を中心とする比較的大きい偏向角度をも実現することができる。
【0019】
少なくとも一方の駆動装置は、同じく被給電状態において保持力を有し、よって、自動ロック式である。これは、例えば、所定の位置を保持するために絶えずエネルギーを供給されなければならない運動するコイル駆動装置とは対照的である。これにより、省エネルギー操作を実現することができる。
【0020】
少なくとも1つの実施形態において、第1のサスペンションは、結合素子の、ベースに対する平行変位を許容し、かつ第2のサスペンションは、第2の結合素子の、ベースに対する平行変位を許容する。
【0021】
少なくとも1つの実施形態において、第1の伝動ユニットは、キャリアの、第1の結合素子に対する平行変位を許容し、かつ第2の伝動ユニットは、キャリアの、第2の結合素子に対する平行変位を許容する。
【0022】
2つの物体間の、これらの物体の互いに対する方向性を変えない運動または相対運動は、平行変位として示される。したがって、これには、回転自由度がない(実質的な意味合いにおいて、さしたる回転自由度はない)。平行変位は、物体の、互いに直交する一方向または二方向または三方向に沿った互いに対する平行移動を許容することができる。これにより、運動は、平行移動自由度1、2または3を有することができる。例えば、平行変位は、下記の特性を有することができ、かつ下記のように実現されることが可能である。
【0023】
・一方向のみの平行移動、1平行移動自由度:スライドジョイント。これにより実現される相対運動は、1平行移動自由度を有する平行変位である。
【0024】
・二方向の平行移動、1平行移動自由度:回転ジョイントによる平行四辺形サスペンション。より一般的に考察すれば、回転ジョイントは、1回転自由度のジョイント位置である。このタイプの平行四辺形サスペンションを、以後、1平行移動自由度の平行四辺形サスペンションとして示す。これにより実現される相対運動も、同様に、1平行移動自由度の平行変位である。
【0025】
・三方向の平行移動、2平行移動自由度:ボールジョイントによる平行四辺形サスペンション。より一般的に考察すれば、これらのボールジョイントは、2回転自由度のジョイント位置である。このタイプの平行四辺形サスペンションを、以後、2平行移動自由度の平行四辺形サスペンションとして示す。これにより実現可能な平行移動相対運動は、2平行移動自由度の平行変位である。所定の状況下におけるこのようなサスペンションは、回転をも許容する。このような回転自由度は、さらなるサスペンションとの組合せで再度除去することができる。このさらなるサスペンションは、本明細書で言及している平行四辺形サスペンションに対して平行な連鎖を形成する。
【0026】
1回転自由度のジョイント位置の実現には、回転ジョイントの代わりに、平坦素子を用いることもできる。これらの素子の湾曲部は、回転ジョイントの機能を想定している。湾曲部または湾曲位置は、平坦素子の最大延設部の方向を横断する、またはこれに略垂直である、平坦素子のより薄く設計される部分によって、または細長い形状を有しかつ軸を中心にして湾曲可能な平坦素子によって、形成されることが可能である。平坦素子が平面に存在すれば、前記軸は、この平面内に延びる。
【0027】
また、2回転自由度のジョイント位置を実現するためには、ボールジョイントの代わりに、湾曲部において二方向に湾曲可能な素子も用いることができる。これらは、弾性ロッドまたは弾性ワイヤであってもよい。これらは、プラスチックまたは金属またはこれらの組合せより成ってもよい。湾曲部は、ロッドまたはワイヤのテーパリングとして設計されてもよいが、そのように設計される必要はない。
【0028】
少なくとも1つの実施形態において、1つまたは複数の平行変位は、何れの場合も、平行四辺形サスペンションによって実現される。よって、これにより、1平行移動自由度の平行変位は、1平行移動自由度の平行四辺形サスペンションによって実現される。よって、これにより、2平行移動自由度の平行変位は、2平行移動自由度の平行四辺形サスペンションによって実現される。
【0029】
少なくとも1つの実施形態において、少なくとも第1のサスペンションおよび/または第2のサスペンションは、互いに対して平行に配置されかつ個々の結合素子をベースへ接続する少なくとも2つの薄板ばね素子を有する平行四辺形サスペンションによって実現される。
【0030】
少なくとも1つの実施形態において、第1の結合素子の、ベースに対する平行変位は、正確に1平行移動自由度を有し、かつ第2の結合素子の、ベースに対する平行変位は、正確に1平行移動自由度を有する。
【0031】
少なくとも1つの実施形態において、キャリアの、第1の結合素子に対する平行変位は、正確に2平行移動自由度を有し、かつキャリアの、第2の結合素子に対する平行変位は、正確に2平行移動自由度を有する。
【0032】
少なくとも1つの実施形態において、キャリアの、第1の結合素子に対する平行変位は、正確に1平行移動自由度を有し、かつキャリアの、第2の結合素子に対する平行変位は、正確に1平行移動自由度を有する。
【0033】
少なくとも1つの実施形態において、位置決めデバイスは、
・第3のサスペンションによって第1の結合素子に対し動作可能式に組み立てられかつ第3の駆動装置によって動作可能な第3の結合素子、ならびに、
・第3の結合素子の動作をキャリア上へ伝達することができる第3の伝動ユニット、を備える。
【0034】
第3の結合素子は、第1の結合素子におけるリセス内に配置することができる。3つの駆動装置は、何れの場合も、略長方形の位置決めデバイスの4つの角のうちの1つに配置することができる。
【0035】
少なくとも1つの実施形態において、キャリアがベースより上に配置され(よって、ベースに対してZ方向へシフトされ)ていれば、第1の結合素子および第2の結合素子は、キャリアの横に配置される(よって、キャリアに対してX方向またはY方向へシフトされる)。
【0036】
第1の結合素子は、位置決めデバイスの第1の側面に沿って延び、かつこの第1の側面に対して直角方向への運動を実行する。第2の結合素子は、位置決めデバイスの第2の側面に沿って延び、かつこの第2の側面に対して直角方向への運動を実行する。
【0037】
少なくとも1つの実施形態において、キャリアがベースより上に配置され(よって、ベースに対してZ方向へシフトされ)ていれば、第1の結合素子は、キャリアを少なくとも部分的に包含(包囲)し、かつキャリアの下側領域に配置される。第2の結合素子は、これに対して、キャリアを少なくとも部分的に包含し、かつキャリアの上側領域に配置される。
【0038】
ある実施形態において、位置決めデバイスは、
・第3のサスペンションによってベースに対し動作可能式に組み立てられかつ第3の駆動装置によって動作可能な第3の結合素子と、
・第3の結合素子の動作をキャリア上へ伝達することができる第3の伝動ユニットと、を備え、
・3つの伝動ユニットは各々、異なる接触位置でキャリアの周縁に係合し、かつ3つの伝動ユニットは全て、個々の接触位置の略並進運動を実行する。
【0039】
少なくとも1つの実施形態において、第1のサスペンションは、第1の結合素子の、ベースに対する回転を許容し、かつ第2のサスペンションは、第2の結合素子の、ベースに対する回転を許容する。
【0040】
これにより、2つのサスペンションの回転軸は、互いに異なる。回転軸は、具体的には、2つの回転軸の最短接続部に対して直角である平面上への突出部において、互いに直交していてもよい。
【0041】
少なくとも1つの実施形態において、第1の伝動ユニットは、キャリアの、第1の結合素子に対する回転を許容し、かつ第2の伝動ユニットは、キャリアの、第2の結合素子に対する回転を許容する。
【0042】
少なくとも1つの実施形態において、キャリアの基準位置では、
・第1のサスペンションの回転軸は、第2の伝動ユニットの回転軸に対して平行に延び、または、この回転軸に一致し、かつ、
・第2のサスペンションの回転軸は、第1の伝動ユニットの回転軸に対して平行に延び、または、この回転軸に一致する、と言える。
【0043】
少なくとも1つの実施形態において、一方のサスペンションの幾つかの弾性素子は、当初の平坦部の一部として一体式に形成される。少なくとも1つの実施形態において、幾つかの弾性素子は、異なる方のサスペンションによって、当初の平坦部の一部として一体式に形成される。少なくとも1つの実施形態において、少なくとも一方のサスペンションの、かつ伝動ユニットのうちの少なくとも1つの幾つかの弾性素子は、当初の平坦部の一部として一体式に形成される。製造の簡易化は、弾性素子を一体部分にするこれらの1つまたは複数の組合せによって可能である。
【0044】
少なくとも1つの実施形態において、キャリアは、光学レンズ系を有するレンズホルダを支え、かつ光学センサーまたは画像センサーのベースを支える。(光学)画像スタビライザは、これによって実現されてもよい。
【0045】
少なくとも1つの実施形態において、マウンティングデバイスは、キャリア内に配置されるマイクロ・カメラ・モジュール、したがって、位置決めデバイスにより互いに移動されるレンズ系ならびに光学センサーを有するユニット、を備える。これにより、マイクロ・カメラ・モジュールまたはマイクロ・カメラ・モジュール自体のハウジングまたはホルダは、キャリアを形成してもよい。(光学)画像スタビライザは、これによって実現されてもよい。
【0046】
マイクロ・カメラ・モジュール自体またはレンズホルダは、例えば、鮮明さおよび/またはズーム設定値を設定するために、1つまたは複数のモータを備えてもよい。駆動装置としては、本明細書に記載されている、かつ国際公開出願第2006/000118号パンフレットに既に引用されているもの、または異なる様式で、例えば、可動コイルアクチュエータまたはボイス・コイル・アクチュエータ等の電磁アクチュエータの様式で形成される駆動装置を用いることができる。
【0047】
実施形態によっては、駆動装置の能動素子は、ベース上に組み立てられ、かつ受動素子は、ベースに対して移動されるパーツ上に組み立てられる。他の実施形態では、空間条件に依存して、かつ空間要件を低減するために、逆に、能動素子が可動部上でも組み立てられ、かつ受動素子がベース上に組み立てられる。同じ実施形態では、能動素子は、一方の駆動装置と共にベース上へ組み立てられてもよく、かつもう一方の駆動装置と共に可動部上へ組み立てられてもよい。
【0048】
先の実施例において、サスペンションは、各々、ベースと結合素子との間に配置され、かつ伝動ユニットは、何れの場合も、結合素子とキャリアとの間に配置される。しかしながら、その順序は、逆であってもよく、よって、伝動ユニットは、何れの場合も、ベースと結合素子との間に配置され、かつ(駆動される)サスペンションは、何れの場合も、結合素子とキャリアとの間に配置される。したがって、言い替えれば、ベースおよびキャリアは各々の役割を交換することができ、キャリアとして示されるパーツがベースとして機能してもよく、かつベースとして示されるパーツがキャリアとして機能してもよい。
【0049】
本文書において、所定数の自由度を有するサスペンションまたは伝動ユニットに言及する場合、これは、それが弾性素子によって実現されていれば、自由度(よって、サスペンションまたは伝動ユニットが準拠している自由度)に対応する一または複数の次元における運動に対するばね定数が、他の(直交する)次元(よって、サスペンションまたは伝動ユニットが剛性である次元)におけるより少なくとも5分の1、または10分の1、または20分の1、または50分の1、または100分の1であることを意味してもよい。
【0050】
さらなる好適な実施形態は、従属する特許請求項から推測される。
以下、本発明の主題を、添付の図面に表現されている好適な実施形態例によって、より詳細に説明する。何れの場合も、下記が、一部を略示して示されている。