【実施例】
【0112】
本開示は、以下の実施例を参照することによりさらに理解される。実施例は、本開示の単なる例示的なものであるとする。本開示は、例示された実施形態によって範囲が限定されるものではなく、これらは、本開示の一態様の単なる実例として意図される。機能的に等価な任意の方法は、本開示の範囲内にある。本明細書に記載されるものに加えて本開示のさまざまな改変物が前述の説明及び添付の図から当業者には明らかになるであろう。そのような改変物は、添付の特許請求の範囲内にある。
【0113】
別に明記されない限り、すべての温度は摂氏温度である。また、これらの実施例及び別の場所において、略語は以下の意味を有する:
【化2】
【化3】
【0114】
実施例1.r−Antidoteの調製
イオン強度が0.15のクエン酸リン酸(20mM)緩衝液(NaClで調節した)を、クエン酸一水和物(Fisher、ピッツバーグ、ペンシルベニア州)及びリン酸ナトリウム二塩基性、無水物(Sigma、セントルイス、ミズーリ州)を使用して調製し、6MのHClまたは6MのNaOHのいずれかを使用してpHを調節した。追加の塩を含まないリン酸(20mM)緩衝液を、6.61gのリン酸ナトリウム二塩基性無水物を2.0LのMili−Q水に溶解させることによって調製し、pHを7.5に調節した。塩を含有するリン酸(20mM)緩衝液に関しては(I=0.15M)、14.8gのNaClを上記のリン酸緩衝液に添加した。他に記載がない限り、すべての他の試薬をSigma(セントルイス、ミズーリ州)から購入した。
【0115】
r−Antidoteのポリペプチド(配列番号3)を、2%のアルギニンを含有するpH8.0の10mMのトリス中でおよそ5mg/mlの濃度の原液として保存した。r−Antidoteの透析を、4℃でSlide−A−Lyzer(登録商標)透析カセット、3000 MWCO(Pierce、ロックフォード、イリノイ州)を使用して選択したpH値のクエン酸リン酸緩衝液に対して行った。透析中の凝集を防ぐために、タンパク質原液を、カセットに充填する前にろ過した透析緩衝液で0.5mg/mlに希釈した。透析後、r−Antidoteを0.3mg/mlに希釈し、タンパク質濃度を1.16ml・mg
−1・cm
−1の吸光係数を使用したUV吸収分光法(A
280)で測定した。この方法によって生成したr−Antidoteを以下の実施例に使用した。
【0116】
実施例2.安定性監視のための示差走査熱量測定(DSC)
温度制御されたサンプル充填チャンバーを備えたMicrocalキャピラリーオート−DSCを使用して示差走査熱量測定(DSC)を行った。60℃/hrのスキャン速度及び25分のスキャン前平衡化時間を用いて6〜100℃の熱的変動を行った。適切な適合バッファーをリファレンスセルに使用したと同時に、適合バッファー中の典型的なサンプル濃度を約0.6mg/mLとした。解析に先立って、すべてのサンプルスキャンから、バッファー対バッファーリファレンススキャンを差し引いて、サーモグラムを濃度により正規化した。Microcalから供給されたソフトウェアを使用してデータを処理した。非2状態フィッティング関数を使用して吸熱反応のピークを単一のピークにフィッティングし、転移温度(Tm)値をフィッティング関数によって算出した。開始温度(Tonset)値を、低温ベースラインとの吸熱反応のピークのずれによって求めた。
【0117】
不均質なサンプル中の複数の集団の存在を示すためにDLSが利用されることが多い。WyattプレートリーダーDLS機器を使用して、異なるpH条件における10〜20μLのタンパク質溶液(0.3mg/mL)を1セットの実験として20℃で測定した。そのサンプルを5分間、3000rpmで遠心分離して、あらゆる気泡を除去し、それぞれ20秒の5回のスキャンをして、平均サンプル半径を得た。pH5.0〜7.5において、流体力学的半径約3nmの1つの集団を確認した。
【0118】
実施例3.安定剤の特定
実施例2のデータは、r−AntidoteがpH7.5で全体的に安定であることを示した。したがって、賦形剤スクリーニング試験を、pH7.5で20mMのリン酸緩衝液中において行った。Dynapro動的光散乱プレートリーダー機器(Wyatt Technology、サンタバーバラ、カリフォルニア州)を使用してタンパク質の流体力学的直径を測定した。流体力学的直径を拡散係数からキュムラントの方法を使用してStokes−Einsteinの式によって算出した(対数分布型数値に基づく)。与えられたサンプルの均質性を評価するために測定を使用した。
【0119】
賦形剤がある状態またはない状態で0.3mg/mlのタンパク質を用いて60℃、pH7.5におけるタンパク質凝集反応速度を観察することによって安定化賦形剤の可能性を特定するためにSpectraMax M3プレートリーダーをまず利用した。表4.1で挙げたとおりGenerally−Regarded−As−Safe(GRAS)賦形剤のライブラリーの、全部で32の賦形剤を試験した。
【表4-1】
【0120】
試験した賦形剤、スクロース、ソルビトール及びシトラートが最も大きな安定化効果を有することが確認された。タンパク質の安定性に対する賦形剤の組み合わせの効果の次の試験は、表4.2に概要が示されるこれら3つの賦形剤に基づくものとした。OD350nmでの融解を二連で行って、各製剤に対するΔT値を上記のとおり算出した。表2に示したΔT値に基づいて、製剤3、4、5及び6の安定効果が最も大きいことを特定した。
【表4-2】
ΔTは、pH7.5におけるタンパク質単独と、賦形剤のさまざまな組み合わせを伴うタンパク質との間の転移温度の差である。重量オスモル濃度は3連の測定値を平均し、ΔTは2連の測定値を平均する。
【0121】
これらの製剤中の治療タンパク質の凝集特性を、これらの組み合わせ製剤においてNaClを含まないpH7.5の20mMのリン酸緩衝液中でOD350nmでの融解法を使用してさらに試験した。一般に、凝集の程度は、NaClがないとかなり低くなる。実際、OD350nmでの融解を初めに35〜75℃で行い、明らかな凝集が観察されなかったので、同じサンプルを用いて75から100℃で再び融解実験を行った。それにより、75℃における約10分間の停滞ため、この温度でOD350nm曲線に急な変化が見られた。100℃まで上昇させた後でも、製剤3、4、5及び6中のタンパク質に関しては明らかな凝集が観察されなかった。付加的なNaClを除去することの別の利益は、製剤の対応する重量オスモル濃度がNaClを含むこれらの製剤と比較してはるかに低いことである。
【0122】
実施例4.溶解性試験
この実施例は、r−Antidoteの溶解性に対するpH、温度、安定剤(例えば、シトラート、アルギニン、グリシン及びリシン)ならびにイオン強度の影響を試験した。
【0123】
材料及び方法
使用した材料は、pH8.0の10mMのトリス中のr−Antidote(4.8mg/ml)及び2%のアルギニンの溶液とした。室温(RT)における溶解性に関しては、少なくとも1〜2時間の物理的な観察により試験を行った。5℃における溶解性に関しては、サンプルを5℃で一晩平衡化し、サンプルに対して物理的な観察を行った。さらに、そのサンプルを5℃で15分間遠心分離し、上清のタンパク質濃度をUV A280nmにより分析した(二倍希釈)。元の原液を対照として日毎に分析した。
【0124】
タンパク質の沈殿が観察された場合、上清濃度から決定される溶解性を、<XXmg/mLと解釈した(対応する図の影付きの棒)。これは、過剰量のタンパク質の存在及び緩衝液のpHに近いPIを有するタンパク質の部分集団の選択的沈殿によるものである。タンパク質の沈殿が観察されない場合、溶液濃度から決定される溶解性を、>XXmg/mLと解釈した(図中の空白の棒)。
【0125】
室温での溶解性に対するpHの影響を、5.0、6.0、7.0及び8.0を含むさまざまなpHを用いて試験した。
図1Aに示されるとおり、r−Antidoteは、pH8.0で溶解性が最も高かった(42.2mg/mLで目に見える沈殿がなかった)。それに反して、それぞれpH5.0、6.0及び7.0における溶解性は、3.5mg/mL(沈殿なし)、12.3mg/mL(沈殿が観察された)及び24.4mg/mL(沈殿が観察された)であった。
【0126】
表5.1は、5℃における溶解性に関して試験したサンプルを列記する。示したとおり、UF緩衝液は、42mMのMES、4mMのリン酸ナトリウム、833mMのNaCl、8mMのトリス及び58mMの約5mg/mLに濃縮されたアルギニンから成る。
【表5-1】
【0127】
pH7.3において、10mMのシトラートは、解毒剤の5℃における溶解性をわずかに改善した。シトラートまたはアルギニンがないと、5℃における溶解性は以下の順序であった:pH7.55>pH7.80>pH7.30(
図1B)。UF緩衝液(pH7.48)が最も溶解性が高いようであった(50mg/mL)。これは、適したpH7.5において58mMのArg+833mMのNaClが存在していたことによる可能性が高い(
図1B)。
【0128】
表5.2は、pH7.55におけるアルギニン対シトラートの効果を試験するためのサンプルを列記する。
図1Cに示されるとおり、pH7.55において、シトラート及びアルギニンはともに、r−Antidoteの5℃における溶解性を著しく改善した。さらに、シトラートは、同じモル濃度においてアルギニンよりも有効なようであった:10mMのシトラート≒50mMのアルギニン>20mMのアルギニン>10mMのアルギニン。
【表5-2】
【0129】
表5.3のサンプルを使用して、アルギニン対シトラートの効果をpH7.8及び8.0でさらに試験した。
図1Dは、r−Antidoteは、5℃においてpH8.0でpH7.8よりもわずかに可溶性が高かったことを示している。10mMのシトラート及び20mMのアルグニン(Argnine)はともに、pH7.8及び8.0において溶解性を少なくとも15mg/mLに改善した。
【表5-3】
【0130】
pH7.8におけるアルギニンの効果をグリシン及びリシンとも比較し(表5.4)、結果を
図1Eに示した。図に示されるとおり、5℃においてグリシン及びリシンは、r−Antidoteの溶解性に対して効果がなく、5℃においてpH7.55に対してpH8.0で20mMのArgに、より可溶化効果が観察された。
【表5-4】
【0131】
r−Antidoteの溶解性に対するイオン強度の影響も試験した(表5.5)。
図1Fに示されるとおり、イオン強度は、5℃でアルギニンまたはシトラートの非存在下においてr−Antidoteの溶解性を高め、その効果は、イオン強度>0.10Mで顕著なようであった。
【表5-5】
【0132】
要約すると、この実施例は、室温、アルギニン及びシトラートなどの可溶化剤の非存在下においてr−AntidoteがpH8.0で溶解性が最も高いことを示している。5℃においては、pH8.0がr−Antidoteに対して最も良い。さらに、シトラート及びアルギニンはともに、r−Antidoteの5℃における溶解性を著しく改善する。グリシン及びリシンはともにr−AntidoteのTmを増加させるが、溶解性には影響がない。全体的に、r−Antidoteの5℃における最も高い溶解性は、pH7.8で95mMのアルギニンにより達成された。10日後にも沈殿は観察されなかった。
【0133】
実施例5.最初の凍結乾燥プロセス
凍結乾燥プロセスを、凍結乾燥サイクルのさまざまな段階における製剤構成成分の物理的性質の理解に基づいて合理的なアプローチを使用して開発した。DSC及びフリーズドライ顕微鏡法(FDM)を含む熱的性質決定法を使用して、Tg’(凍結濃縮物のガラス転移温度)及びTc(一次乾燥中の崩壊温度)を測定した。表6に示すサイクルを本凍結乾燥製剤の凍結乾燥に選択した。アニーリング工程はマンニトールの結晶化を可能にし、確実に生成物温度が一次乾燥中の崩壊温度未満に下がらないようにする。一次乾燥温度を、適度な一次乾燥の継続時間とともにケーク崩壊を避けるよう選択した。水分レベルが<1%の凍結乾燥製剤を生成するために2工程の二次乾燥条件を開発した。
【表6】
【0134】
実施例6.結晶化構成成分を用いない凍結乾燥
実験/試験デザイン
10の異なる製剤を調製して、r−Antidoteの溶解性及び安定性に対する緩衝剤組成物、pH、安定剤及び薬物濃度の影響を試験した(表7)。製剤を、pH7.8及び8.2のトリスまたはリン酸緩衝剤を使用して調製した。溶液を、遠心ろ過を使用して、10mg/mL及び25mg/mLに濃縮した。
【0135】
トリスまたはリン酸緩衝液中で調製した濃縮溶液のサンプルを短期安定性に関して2〜8℃及び25℃で2週間評価した。同時に、各溶液のサンプルを凍結/解凍試験に使用し、沈殿及び凝集に関して調べた。凍結/解凍試験のためのサンプルは、2mLのI型ガラス管バイアルに入った0.5mLの各製剤から成るものとした。0.5mLのサンプルを、凍結前及び各凍結/解凍サイクルの後に視覚的に調べた。各サンプルを−80℃でおよそ2時間置き、室温でおよそ15から30分間解凍し、およそ1〜2分間視覚的に調べ、−80℃の冷凍庫に戻した。各製剤の250Lのサンプルを、3回目の凍結サイクルの後に取り出し、アッセイのために研究室に提出した。残りの溶液を2回のさらなる凍結サイクルに供した後、アッセイのために研究室に提出した。
【0136】
すべての残りの溶液を0.25mLのサンプルとして保存的サイクルを使用して凍結乾燥し、サンプルを25℃及び40℃における加速安定性に関して評価した。
【0137】
ポリソルベートを含まない溶液を使用して2つのさらなる製剤を調製して、保護剤の存在がない場合の分子に対する凍結/解凍及び凍結乾燥の影響を試験した(表7の製剤5及び6)。溶液のサンプルを残しておき、変調型DSC及びフリーズドライ顕微鏡法を使用した熱的性質決定のために使用した。
【表7】
ポリソルベート80(PS80)を含む製剤及び含まない製剤を、3mg/mL、3.3mg/mL及び4.8mg/mLで供給される原薬を使用して調製した。
【0138】
製剤5及び6を、まず19mLの各製剤の原薬溶液を使用して調製した。その体積の原体を10K膜を備えた透析カセットに入れ、カセットをpH7.8の2Lの10mMのトリスまたは10mMのリン酸ナトリウム緩衝液に入れた。その溶液をおよそ2時間透析し、その透析溶液を新しい別の2Lの緩衝液で置き換え、少なくともさらに2時間透析した。その溶液を各カセットから取り出し、Amicon Ultra Ultracel 10K遠心式フィルター管に入れた。その溶液を、3/4の速度でおよそ30分間遠心分離した。残りの溶液を遠心管から取り出し、95mMのアルギニンを添加した後、濃縮溶液のpH及び体積を調節した。
【0139】
同じ手順を使用して、製剤1Aから4A及び1Bから4Bを調製した。製剤を、3mg/mLの原体溶液を使用して10mg/mLの溶液を調製するために13.5mLの原体及び25mg/mLの溶液を調製するために33.5mLの原体を使用して調製した。4.8mg/mLの原体溶液を使用した製剤は、10mg/mLの溶液を調製するために8.4mLの原体及び25mg/mLの溶液を調製するために20.9mLの原体を使用した。
【0140】
最終体積のサンプル溶液に必要とされるスクロース及びアルギニンの濃縮物を溶液の濃縮後に原体溶液に添加した後、溶液を適切なpH及び最終体積に調節した。1%のPS80溶液を使用してPS80を最終サンプル溶液に加えて、0.01%の濃度にした。
【0141】
その溶液を0.22μmのシリンジフィルターによりろ過した後、バイアルに分けた。2mLのバイアルをそれぞれ250Lの溶液で満たし、以下の条件を使用して凍結乾燥した。
1.1℃/分で−40℃まで冷却する
2.−40℃で1時間保持した後、100mTorrの真空にする
3.0.5℃/分で−35℃まで上昇させ、ピラニ真空計測定値が100mTorrのキャパシタンスマノメータ測定値と一致し、生成物温度が棚温度に達するまで保持する。
4.0.5℃/分で20℃まで上昇させ、ピラニ真空計測定値が100mTorrのキャパシタンスマノメータ測定値と一致し、生成物温度が棚温度に達するまで保持する。
凍結乾燥後に、栓をしバイアルにキャップを付けた。最初の時点(T0)の試験のためにサンプルを提出し、残りのバイアルの安定性を評価した。
【0142】
変調型示差走査熱量測定(DSC)
溶液サンプルの熱挙動を変調型及び標準DSCを使用して調べた。12Lの溶液をTzeroパンに入れ密封することによってサンプルを調べた。溶液を1℃/分で−40℃まで冷却し、等温的に5分間保持した。サンプルの温度を120秒毎に1℃の変調で0.5℃/分で10℃まで上昇させた。アニーリング工程を使用して一部のサンプルを調べた。これらのサンプルを、1℃/分で−40℃まで冷却し、等温的に5分間保持し、温度を1から5℃/分で−15℃または−20℃まで上昇させ、等温的に少なくとも60分間保持することによって調べた。サンプルの温度を5℃/分で−40℃に戻し、等温的に5分間保持し、120秒毎に1℃の変調で0.5℃/分で上昇させた。
【0143】
フリーズドライ顕微鏡法
サンプルを、Linkamフリーズドライ顕微鏡ステージにある2枚のカバーガラスの間に2から4Lの溶液を置くことによってフリーズドライ顕微鏡法を使用して調べた。サンプルを1℃/分で−40℃以下に冷却し、等温的に2分間保持した。100マイクロメートルで真空にし、サンプルを偏光顕微鏡に搭載されたビデオカメラを使用して視覚的に調べた。乾燥した材料が認められ、撮影されるまでサンプルをその温度でフリーズドライした。その後、サンプルの温度を2℃ずつ上昇させ、フリーズドライしたサンプルを観察するために各温度で保持した。サンプルの温度を完全な崩壊が観察されるまで上昇させた。
【0144】
分析方法
A.紫外可視による濃度
溶液の濃度をNano Drop 2000分光光度計(Thermo Scientific)を使用して測定した。2Lの溶液を試験プラットフォームに置き、280nmの範囲でスキャンすることによってスキャンを行った。
【0145】
B.pH
Orion pHメーターモデル920Aを使用して溶液のpHを測定した。Thermo Scientificから購入した予め作製された緩衝液を使用してメーター/プローブをpH7からpH10の範囲に較正した。
【0146】
C.SEC−HPLC
Agilent 1100シリーズのHPLCを使用してサイズ排除HPLC分析を行った。0.1Mのリン酸ナトリウム、0.75Mの塩酸アルギニンで調製したpH7.4の移動相を分離に使用した。分析カラムは、YMC−Packジオール−200、300×4.6mm、平均粒子径5μmを使用した。カラムを含むHPLC系の適合性を、基準材料の6回の繰り返し測定を使用して検証し、主なタンパク質ピークに対する保持時間、面積及びパーセント面積に関して評価した。さらに、ゲルろ過スタンダードを使用して、カラムの分離能を評価した。サンプルを、製剤緩衝液を使用して1mg/mLのタンパク質に希釈し、1回の注入当たり50μgのタンパク質のカラム負荷となるよう注入した。
【0147】
D.RP−HPLC
Agilent 1100シリーズのHPLC使用して逆相HPLC分析を行った。この方法は、HPLCグレードの水に0.1%のトリフルオロ酢酸及びアセトニトリル中に0.08%のトリフルオロ酢酸で調製した移動相を使用した分離のためにグラジエントを利用した。分析カラムは、Vydac C18カラム、150×4.6mm、平均粒子径5μmを使用した。カラムを含むHPLC系の適合性は、基準材料の6回の繰り返し測定ならびに主なタンパク質ピークに関する保持時間、面積及びパーセント面積の評価を使用して検証した。サンプルを、製剤緩衝液を使用して1mg/mLのタンパク質に希釈し、1回の注入当たり25μgのタンパク質のカラム負荷になるよう注入した。
【0148】
E.IEX
Agilent 1100シリーズのHPLCを使用してイオン交換HPLC分析を行った。この方法は、pH6.5において20mMのリン酸ナトリウム及びpH6.5において20mMのリン酸ナトリウム、1Mの塩化ナトリウムで調製した移動相を使用してグラジエントを利用した。分析カラムは、Dionex Propac WCX−10、250×4mmを使用した。カラムを含むHPLC系の適合性を、基準材料の6回の反復導入ならびにピーク#2としてラベルされたピークの保持時間、面積及びパーセント面積の評価を使用して検証した。サンプルを、製剤緩衝液を使用して1mg/mLのタンパク質に希釈し、1回の注入当たり50μgのタンパク質のカラム充填となるよう注入した。
【0149】
結果:
溶液サンプルの一部を、保存的サイクルを使用して凍結乾燥し、25℃及び40℃で2か月間安定性を評価した。凍結乾燥サイクルは、充填体積が小さいためおよそ20時間以内に完了した。場合によってフィルターが破れるため製剤2Aを除いて、すべての凍結乾燥ケークは許容されるように見えた。
【0150】
全般的に、SEC及びRPを使用して得たデータは、製剤間の差異を区別しているように見えた。これは、この方法が安定性を示すものであり、サンプルを比較するために使用することができることを示唆している。このデータは、r−Antidoteの安定性がpHの影響を受けることを裏付けている。このデータは、pH7.8で調製した製剤の安定性が、pH8.2で調製した製剤の安定性よりも良好であることを示している。これは、40℃で保管されたサンプルに特にあてはまる。
【0151】
この試験には、r−Antidoteの安定性に対する緩衝剤のタイプの比較が含まれていた。緩衝剤は、pH7.8及び8.2で調製したトリス及びリン酸塩を含むものとした。このデータは、緩衝剤のタイプがr−Antidoteの安定性に影響を及ぼさず、安定性の差は主にpHの働きであったことを示唆している。
【0152】
この試験の2つの製剤(製剤5及び6)は、スクロース及びポリソルベート80を用いずに調製した。スクロースは、凍結乾燥保護物質として使用し、ポリソルベート80は、バイアルの壁との相互作用及び凍結工程中の氷との相互作用によるタンパク質の凝集を防ぐために使用する。保護物質なしで調製した製剤は、40℃で1か月保管した後にSECによって測定したパーセント凝集体が増加した。このデータは、タンパク質の安定性を向上させるためには製剤中に賦形剤が必要であることを裏付けている。
【0153】
安定性試験はまた、凍結乾燥サンプルが溶液として調製した製剤よりも安定していることを裏付けている。溶液サンプルの比較は、溶液サンプルの安定性が5℃よりも高い温度で保管された場合よりも5℃で保管された場合に良好であることを示している。
【0154】
安定性試験のためのサンプルは、2mLの各バイアル当たり0.25mLを使用して調製した。崩壊は、サンプル2Aにおいてケークを支えるための十分な固体が存在していなかった場合にのみ観察された。他のすべてのサンプルは許容できるように見えたが、そのような小さな充填体積を使用する場合、ケーク収縮の程度を判定するのには適していなかった。完全な規模における製剤の凍結乾燥の実現性を判定するために熱的性質決定試験を安定性試験と同時に行った。
【0155】
変調型DSCを使用して製剤5及び6を調べた。両製剤ともおよそ25mg/mLのr−Antidote及び95mMのアルギニンHClを含むが、製剤5は10mMのトリスを用いて調製し、製剤6は10mMのリン酸塩を用いて調製した。トータルヒートフロー、ノンリバーシングヒートフローまたはリバーシングヒートフローを使用して観察した場合、加温変動中に熱現象は観察されなかった。トータルヒートフローサーモグラムは、動力学的に関連する現象及び非動力学的に関連する現象の両方を示すことになる。ノンリバーシングヒートフローサーモグラムは、結晶化などの動力学的に関連する現象を示すことになり、リバーシングヒートフローサーモグラムは、ガラス転移などの非動力学的に関連する現象を示すことになる。観察可能な現象がないのは、構成成分の濃度が十分な強度の信号を生成するには低過ぎることを示唆している可能性もある。
【0156】
崩壊温度がMDSCを使用して測定したTg’に対して観察された結果と一致するかどうかを判定するためにフリーズドライ顕微鏡実験を行った。すべて同じ賦形剤を同様の濃度で含んでいたため、すべてのサンプルの熱挙動は同様であると予測した。
【0157】
製剤5及び6を、およそ25mg/mLのr−Antidote濃度で調製し、ともにpH7.8の95mMのアルギニンを含むものとした。これらの製剤間の差異は緩衝剤だけであった。製剤5は10mMのトリスを含み、製剤6は10mMのリン酸塩を含んでいた。製剤5は−40℃で崩壊し、製剤6は−39℃で崩壊した。このデータは、許容できる凍結乾燥サンプルを得るためには、生成物の温度が測定された崩壊温度未満に維持される必要があることを裏付けている。そのような低い生成物温度を維持することは、実験室またはフルスケールの凍結乾燥機では実現できない。
【0158】
凍結乾燥製剤に関する安定性データは許容できるように見えるが、熱的性質決定データは、崩壊温度が低いために製剤がスケールアップに適していないことを示した。MDSC及びフリーズドライ顕微鏡法を使用して得た熱的性質決定は、本製剤が凍結及び乾燥後、非結晶のままであること及び構成成分の組み合わせが低い崩壊温度につながることを示唆している。スケールアップに適した製剤を作り出す唯一の方法は、フリーズドライの間及び後に非結晶の材料を所定の位置に保持することができる足場として働く結晶化構成成分を添加することである。医薬製剤に添加される最も一般的な結晶化構成成分はマンニトールである。すべてのさらなる製剤及びプロセスの開発研究では、さまざまな濃度のマンニトールの添加を調べた。マンニトールを含有する製剤の開発及び製剤の安定性試験については、個別の開発報告に記載している。
【0159】
結論
r−Antidoteの安定性に対する緩衝剤のタイプ、pH、安定剤及びタンパク質濃度の影響を溶液製剤及び凍結乾燥製剤として調べた。溶液サンプルを5℃及び25℃で最大2週間保管し、凍結乾燥サンプルを25℃及び40℃で最大2か月保管した。2mLのバイアルに0.25mLとして凍結乾燥した製剤は、2か月後に許容できる安定性を示した。しかしながら、熱的性質決定実験は、すべての製剤が−37℃以下の崩壊温度を有し、スケールアップに適していないことを示した。このデータは、崩壊を防ぐため及びさらに高温での凍結乾燥を可能にするために製剤中に結晶化構成成分が必要とされることを示唆している。
【0160】
実施例7.製剤の熱挙動及び安定性に対する緩衝剤のタイプ及びマンニトールの影響。
実施例6のデータは、フリーズドライ中の崩壊を防ぐためにr−Antidote製剤中に結晶化構成成分が必要とされることを示唆していた。この実施例は、製剤の熱挙動及び凍結乾燥ケークの外観に対するマンニトール及びアルギニン濃度の影響を調べた。2%から4%のマンニトールを含有する製剤をアルギニンの濃度を低減しながら試験した。アルギニンは、濃度が47.5mM以下にならない限りマンニトールの結晶化を妨げた。試験は、10mMのトリス、10mg/mLのr−Antidote、45mMのアルギニン、2%のスクロース、5%のマンニトール及び0.01%のポリソルベート80を含有する製剤が結果として許容される外観ならびに物理的及び化学的安定性を有する凍結乾燥ケークをもたらすことを発見した。凍結乾燥の試験は、−25℃での3時間のアニーリング後に−25℃の一次乾燥棚温度を使用することを裏付けるデータをもたらした。2工程の二次乾燥プロセスは、残存水分値が1%未満のケークをもたらす。
【0161】
実験/試験デザイン
同時に製剤の熱挙動を調べ、保存サイクルを使用して凍結乾燥した製剤の化学的安定性を比較するための試験を設計した。最初の製剤を、95mMのアルギニン、2%のスクロース、2%のマンニトール及び10mMのトリスまたは10mMのリン酸緩衝剤のいずれかを用いてpH7.8で調製した。この製剤はまた、活性成分を10または25mg/mLのいずれかで含むものとした(表8.1)。
【表8-1】
【0162】
解凍した薬物溶液のアリコートを、3K分画分子量(MWCO)膜を備えた透析カセットに入れた。このカセットを、アルギニン、スクロース及びマンニトールとともにトリスまたはリン酸塩のいずれかを含有する緩衝液に入れた。薬物溶液を収容したそれぞれのカセットを、2Lの緩衝液に入れ、4時間透析した。2時間後に緩衝液を新しく足し、その溶液をさらに4時間または一晩、2〜8℃で透析した。その溶液を、18G注射針を備えたBDシリンジを使用して透析カセットから取り出し、3K MWCO膜を備えた遠心ろ過チューブに入れた。そのチューブを、およそ3000RPMで20から30分間遠心分離し、NanoDrop 2000分光光度計を使用して溶液の濃度を確認した。溶液を、10mg/mLまたは25mg/mL超に濃縮し、適切な緩衝液を使用して適切な濃度に希釈し、1%のポリソルベート80の溶液を使用してポリソルベート濃度を0.01%に調節した。その溶液を0.22μmのシリンジフィルターによりろ過し、3mLのガラス管バイアルに各バイアル当たり0.25mL及び0.8mLで入れた。その溶液を保存的サイクル(表8.2)を使用してフリーズドライし、25℃及び40℃で最大2か月間安定性を評価した。
【表8-2】
【0163】
各溶液のサンプルのフリーズドライに先立ってDSC及びFDMを使用した熱分析のために取っておいた。
【0164】
追加の熱解析及び凍結乾燥サイクルの開発試験は、タンパク質を用いずに調製した緩衝液を使用して完了した。マンニトールの結晶化を妨げないと同時にタンパク質を可溶化するのに製剤中に必要とされるアルギニンの最小濃度を求めるために実験を行った。タンパク質を可溶化するために必要とされるアルギニンの最小濃度を求めるために取引先が溶解性試験を行った。
1熱挙動、凍結乾燥サイクル条件及びケークの外観に対するアルギニン及びマンニトール濃度の影響を試験するためにBaxterが実験を行った。緩衝液には、pH7.8の2%のスクロースとともに10mMのトリス緩衝剤が含まれた。アルギニン濃度は95mMから9.5mMまで変動させ、マンニトール濃度は2%から5%の間で変動させた。
【0165】
熱挙動、ケークの外観及び短期間加速安定性データに基づいて優良な製剤候補を特定した。さらなる開発のために提示した製剤は、10〜25mg/mLのr−Antidote、pH7.8の10mMのトリス、45mMのアルギニン、2%のスクロース、5%のマンニトール及び0.01%のポリソルベート80を含む。初期の試験は、3mLの各バイアル当たり0.2mLから1mLを使用した。低アルギニン製剤を使用した最初の安定性試験を、25mg/mLの薬物濃度を使用して行い、保存的サイクルを使用して凍結乾燥した。サンプルの安定性を25℃及び40℃で最大3か月間評価した。
【0166】
プロセスを確認するために行ったサイクルは、各バイアル当たり5mLで10mLのバイアルに入れた薬物溶液を使用した。二次乾燥の試験の間に水分含有量の影響を試験するために同じバイアル及び充填体積を使用した。これらの試験のための製剤を、実験室規模のタンジェンシャルフローろ過(TFF)ユニットを使用し、適切な緩衝剤に交換した薬物溶液を使用して調製した。TFFユニットは、管を備えたタンジェンシャルフローフィルターに接続された溶液の収容容器を備えているものとした。その容器を薬物溶液で満たし、適切な緩衝剤に交換し、10KDa MWCO膜によりろ過することによって10から25mg/mLに濃縮した。十分な量の1%のポリソルベート80(PS80)を添加して0.01%のPS80濃度を作り出した。最終溶液を0.22μmのシリンジフィルターまたは真空ろ過システムによりろ過した。
【0167】
凍結乾燥サイクルは、冷却変動速度及び一次乾燥と二次乾燥の間の変動速度ならびにアニーリング及び一次乾燥中の棚温度などのプロセスパラメータを調べた。二次乾燥の開始時ならびに40℃における4、8及び10時間後にサンプルを取り出すことによって残存水分試験を行った。40℃における8時間後ならびに50℃における1及び2時間後にサンプルを取り出すことによって第2の試験を行った。Karl Fischer分析を使用してサンプルを残存水分に関して試験した、残存水分に関する値がプラトーに達したら乾燥が完了したと見なした。二次乾燥中の特定の残存水分値に対応する時点にサンプルを取り出すことによって製剤の安定性に対する残存水分の影響を試験した。40℃において最大2か月間及び50℃において1週間、サンプルの安定性を評価した。
【0168】
10mg/mLのr−Antidote、10mMのトリス、45mMのアルギニン、2%のスクロース、5%のマンニトール及び0.01%のポリソルベート80、pH7.8を含有する提示した薬物製剤のための凍結乾燥サイクルデザインスペースを作り出した。製剤を各バイアル当たり5mLの溶液を使用して10mLのガラス管バイアルに入れた。デザインスペースの開発には、製剤の崩壊温度及びバイアルの熱伝達係数と組み合わせた設備能力の知識が必要とされる。製品に使用されるまさにそのガラス管バイアルを使用し、水でバイアルを満たし、生成物を乾燥するための対象棚温度を使用して氷を昇華させてバイアルの熱伝達係数を測定した。チャンバー圧力をおよそ25mTorrからおよそ400mTorrまで変化させながら生成物温度及び質量流量データを収集した。波長可変半導体レーザ吸収分光法(TDLAS)を使用して各圧力における質量流量データを収集し、圧力とともに質量流量の変化を使用してバイアルの熱伝達係数を算出した。
【0169】
結果:
1.示差走査熱量測定(DSC)
緩衝剤製剤の熱挙動に対するそれぞれの構成成分の影響を判定するために、各緩衝剤構成成分の個々の溶液を調製し、DSCを使用して試験した。一般に、製剤の熱挙動は、最も高い濃度で存在する構成成分によって決まる。熱挙動の変化は、他の賦形剤または薬物の添加により起こる可能性がある。例えば、塩の添加により、製剤中の非結晶の材料のTg’が低下することがある。提示する薬物製剤は、マンニトールを含む。結晶化増量剤として働くようマンニトールを賦形剤として凍結乾燥製剤に添加する。マンニトールは、溶液中で初めに凍結されると非結晶である。マンニトールがケークのための構造体を提供できるようマンニトールの結晶化を促進するために凍結中にアニーリング工程が一般に含まれる。製剤中のその他の賦形剤及び/または活性成分がマンニトールの結晶化を妨げるか、または遅延させる場合がある。本セクションで論述する試験は、マンニトールの結晶化及び溶液の熱挙動に対するトリス、リン酸塩及びアルギニンの影響を試験した。
【0170】
pH7.8で調製した10mMのトリス溶液を、DSCを使用して1℃/分で−50℃まで冷却した(
図2)。サーモグラムは、およそ−20℃で開始した氷の結晶化発熱に続き、−32℃のトリスの結晶化発熱を示している。
【0171】
製剤中に95mMのアルギニンが含まれる場合、結晶化発熱がもはや存在しない(
図3)。この試験の温度範囲では氷の融解吸熱の他に熱現象が観察されなかった。
【0172】
10mMのトリス、95mMのアルギニン製剤が4%のスクロースを含む場合、およそ−42℃の中間点のTg’が観察される。スクロース単独のTg’の中間点は、一般におよそ−33℃である。この試験は、トリス/アルギニン混合物がスクロースのTg’を低下させることを示している。Tg’が−40℃未満の溶液は、凍結乾燥に好適な候補ではない。一次乾燥中にそのような低い生成物温度を維持するのは難しい。マンニトールなどの結晶化構成成分の添加は、一次乾燥の開始前にマンニトールが結晶化する限り、構造体をもたらし、凍結乾燥の可能性を向上させることができる。
【0173】
製剤中の合計糖含有量が4%に維持されるようマンニトールを製剤に2%W/Vで添加し、スクロース濃度を2%まで低減した。10mMのトリス、2%のスクロース及び2%のマンニトールを用いて調製した溶液は、マンニトールがおよそ−20℃で結晶化し始めることを示している(
図4)。その溶液に95mMのアルギニンを添加した場合、マンニトールの結晶化が妨げられる(
図5)。凍結溶液を−20℃で最大5時間アニーリングした場合でもマンニトールは結晶化しなかった(
図6)。
【0174】
製剤の熱挙動に対する緩衝剤の影響を試験するために同じセットの熱解析を10mMのリン酸ナトリウムを用いて調製した溶液に対して行った。10mMの溶液としてpH7.8で調製した場合、リン酸ナトリウムは冷却工程中に結晶化した(
図7)。
【0175】
10mMのリン酸ナトリウムと95mMのアルギニン及び4%のスクロースとの混合物は、およそ−38℃の中間点を有するTg’を示す。
【0176】
トリス溶液と同様に、スクロース及びマンニトールを含有するリン酸塩溶液は、マンニトールの結晶化発熱を示す(
図8)。その混合物に95mMのアルギニンを添加した場合、結晶化発熱は観察されない(
図9)。トリスを用いて調製した製剤と同様に、リン酸塩製剤を−20℃で5時間アニーリングした場合でもマンニトールの結晶化発熱は観察されなかった。
【0177】
この試験は、トリスまたはリン酸塩のいずれかを含有する製剤に95mMのアルギニンを添加すると、スクロースのTg’が激しく低下することになり、マンニトールの結晶化が妨げられることになることを示している。このデータは、成功した凍結乾燥ケークのためにマンニトールの結晶化を促進するのに製剤の変更が必要であることを示した。この試験の時点において、データは、タンパク質の溶解性を維持するために95mMのアルギニンまたは10mMから20mMのシトラートのいずれかが必要であることを示唆していた。よって、製剤中のアルギニンの代用として、2%のスクロース及び5%のマンニトールとともに10mMのトリス中に10mMまたは20mMのシトラートを含有する溶液を使用して試験を行った。マンニトールの結晶化の可能性を高めるために、マンニトール濃度を増加し、スクロース濃度を低減した。アルギニンとともに2%のスクロース及び5%のマンニトールを使用した試験については、この報告の後に記載する。
【0178】
シトラートを含有する溶液を−25℃でアニーリングした。10mMのシトラートでは−25℃で24分に開始した結晶化発熱(
図10)、及び20mMのシトラートでは−25℃で30分に開始した結晶化発熱(
図11)が観察された。
【0179】
2.フリーズドライ顕微鏡法(FDM)
10mg/mLのr−Antidote、95mMのアルギニン、2%のスクロース及び2%のマンニトールとともに10mMのリン酸塩または10mMのトリスを用いてpH7.8で調製した製剤を、FDMを使用して調べた。トリス製剤を用いて行った実験は、−25℃で最大3時間アニーリングした場合、およそ−34℃で製剤崩壊の開始を示していた。
【0180】
10mMのリン酸塩を含有する製剤は、さらに高い崩壊温度を有した。−32℃で安定した乾燥層が観察され、−30℃で崩壊の開始が観察された。
【0181】
FDMデータは、両製剤が機械的生産に適用できる条件を使用して凍結乾燥することができることを示唆している。これは、DSCを使用して得たデータと対応していない。FDMを使用して行った実験は、温度制御されたステージと直接接触した2枚のカバーガラスの間の溶液の薄層を利用する。これらの条件は、乾燥が容易であるためDSCデータと対応せず、DSCデータをその関連性を得る次の試験のために信用することとした。
【0182】
3.凍結乾燥及び安定性
95mMのアルギニン、2%のスクロース及び2%のマンニトールとともに10mg/mL及び25mg/mLのr−Antidoteを用いてpH7.8で調製したリン酸塩製剤及びトリス製剤を溶液及び凍結乾燥サンプルとして安定性に関して調べた。それぞれの溶液を各バイアル当たり0.20mLで3mLのバイアルに入れた。サンプルの一部を5℃及び25℃で最大2週間保管し、サンプルの残りの部分を保存的サイクルを使用して凍結乾燥し、25℃で最大3か月間及び40℃で最大2か月間安定性を評価した。
【0183】
−30℃で凍結乾燥する前にサンプルを−25℃で1時間アニーリングした。二次乾燥も20℃の棚温度を用いた保存的条件を使用して行った。タンパク質の温度感受性についてほとんどわかっていなかったため、保存的で非従来的なサイクルを使用した。凍結乾燥サイクルは、およそ21時間以内に完了した。そのバイアルを凍結乾燥機から取り出す前に栓で封をし、キャップを付けて、安定性を評価した。
【0184】
凍結乾燥ケークは、崩壊の形跡がなく許容できるように見え、精製水で速やかに再構成された。確実にマンニトールの結晶化が生じる場合、それがバイアルを破損しないようにするために、薬物を含まない同じ製剤を使用した第2の試験を同時に行った。プラセボ製剤を20mLのバイアルにそれぞれ10mLの溶液で入れた。バイアルを一杯にした1つのトレーを1℃/分で−40℃まで冷却し、120分間等温的に保持した後、3時間のアニーリングのために1℃/分で−25℃まで上昇させた。バイアルの第2のセットを−25℃まで冷却し、3時間等温的に保持し、−35℃まで冷却した後、バイアルを一杯にしたトレーを収容する乾燥機に移した。すべてのバイアルを−30℃で凍結乾燥し、二次乾燥のために25℃で乾燥した。両製剤が入ったバイアルで崩壊が観察された。
【0185】
これは、マンニトールが結晶化しなかったことを示唆し、アルギニンがマンニトールの結晶化を妨げていたというDSCを使用した熱分析中に出された結論を裏付けている。したがって、製剤開発に対するその関連性からFDMの結果よりもDSC及び凍結乾燥データをその後の実験のために信用することとした。
【0186】
次の実施例に記載されている試験は、アルギニンの低減ならびにタンパク質の溶解性及びマンニトールの結晶化に対するその影響に焦点を当てた。上記の95mMのアルギニンを用いて調製したリン酸塩製剤及びトリス製剤は、安定したままであり、初期データを得た。
【0187】
5℃及び25℃で最大2週間保管した場合、溶液サンプルの濃度の低下は観察されず、液体サンプルと凍結乾燥サンプルの間にT0における濃度の差はなかった(
図12及び13)。
【0188】
同様に、25℃で最大3か月間(
図14)または40℃で最大2か月間保管したいずれの凍結乾燥製剤でも濃度の低下は観察されなかった。
【0189】
SECデータは、溶液製剤を5℃で最大2週間保管した場合に主ピークの低下がなかったことを示している。25℃で最大2週間保管した場合、10mg/mLのサンプルで1%を超えて、25mg/mLのサンプルで3%を超えてパーセント主ピークが低下した。
【0190】
したがって、製剤の化学的安定性は許容できるように見えるが、凍結乾燥中に物理的安定性が不十分なため製剤に対して変更が必要であった。不十分な物理的安定性は、プラセボ製剤に対して観察された崩壊したケークが示していた。DSC実験のデータは、アルギニン濃度を低下させ、マンニトール濃度を増加させると、マンニトールの結晶化が促進され、凍結乾燥ケークの物理的安定性が改善されるであろうことを示唆している。
【0191】
実施例8.凍結乾燥サンプルの熱挙動及び外観に対するアルギニン及びマンニトール濃度の影響
熱挙動及びケークの外観に対するアルギニン濃度及びマンニトール濃度の影響を試験するためにプラセボ製剤を使用してこの実施例を行った。この試験は、トリス緩衝剤を用いて調製したプラセボ製剤に焦点を当てた。トリス緩衝剤は原薬溶液を調製するために使用される緩衝剤であり、トリス及びリン酸ナトリウムを用いて調製したサンプルの化学的安定性に差がなかったためトリス緩衝剤を選択した。
【0192】
以下の試験は、9.5mMから95mMのアルギニン濃度範囲及び2%から5%のマンニトール濃度範囲を使用して調べた。
【0193】
1.熱分析
熱分析実験の目的は、製剤中の固体の濃度を実質的に増加させることなくマンニトールの結晶化を促進するアルギニンの濃度及びマンニトールの濃度を求めることであった。高濃度の固体は、凍結乾燥中の物質移動に対する抵抗力を増加させ、極端に長い凍結乾燥サイクルをもたらす可能性がある。
【0194】
マンニトール濃度を一定に維持しながら10mMのトリス、2%のスクロース、2%のマンニトール及び0.01%のPS80製剤中のアルギニン濃度を低下させた。結晶化を促進するために製剤を−15℃から−25℃で最大5時間アニーリングした。マンニトールの結晶化は、アルギニン濃度が9.5mMに低減され、アニーリング温度が−22℃以上であった場合にのみ観察された。マンニトールの結晶化は、−22℃におけるアニーリングの開始時に始まった(
図15)。
【0195】
マンニトールの結晶化の開始は、濃度が4%に増加され、アルギニン濃度が95mMから47.5mMに低減されると−25℃のアニーリングの30分後に起こる(
図16)。より高温でアニーリングが行われた場合の凍結乾燥ケークの外観に対する変化は観察したため、より低いアニーリング温度を試験した。アニーリングが−15℃で行われた場合、外観に対する変化には、ケークの収縮が含まれた。
【0196】
製剤に2%の濃度を使用した場合のマンニトールの結晶化は、アルギニンの濃度が47.5mMより高い場合、遅延されるか、または妨げられる。マンニトールの結晶化に影響を及ぼすことなく製剤に含ませることができるアルギニンの最高濃度は47.5mMである。2%のマンニトール及び47.5mM、71mMまたは85.5mMのアルギニンを含むプラセボ製剤を使用して行った凍結乾燥実験を使用してこの主張を確認した。47.5mMのアルギニンを用いて調製したサンプルは、薬学的に許容されたが、さらに多くのアルギニンを用いて調製したサンプルは崩壊を示した。マンニトールの濃度を増加させると、結晶化の可能性を高めることができる。アルギニンの濃度が47.5mMを超える場合にマンニトールの濃度を4%及び5%に増加させると、結晶化を促進するために凍結溶液のアニーリングが必要とされる。
【0197】
5%のマンニトール及び47.5mMのアルギニンを含有する製剤中でマンニトールは容易に結晶化した。10mMのトリス、47.5mMのアルギニン、2%のスクロース、5%のマンニトール及び0.01%のPS80を含有する製剤を1℃/分で−40℃までゆっくりと冷却した(
図17)。製剤を1℃/分で冷却した場合、冷却工程中にマンニトールの結晶化発熱が観察された。
【0198】
製剤のサンプルを−40℃まで急速に冷却した(10℃/分よりも速く冷却した)後−25℃でアニーリングした(
図18)。溶液を−25℃でアニーリングした場合、マンニトールは23分後に結晶化した。この実験は、アルギニン濃度が47.5mM未満である限り、製剤中でマンニトールは容易に結晶化することを示している。
【0199】
熱分析データは、アルギニン濃度が47.5mM以下である場合、4%以上の濃度のマンニトールは、凍結乾燥プロセスの適度な時期において容易に結晶化することを裏付けている。
【0200】
2.凍結乾燥
熱分析実験と同時に凍結乾燥の試験を行った。10mMのトリス、9.5mMから23.75mMのアルギニン、2%のスクロース及び2%から4%のマンニトールを用いて、または4%のスクロースあり、もしくはなしで47.5mMのアルギニンとともに10mMのトリスを用いてプラセボ溶液を調製した。10mMのトリス、47.5mMのアルギニン、2%のスクロース及び5%のマンニトールを含有する製剤も含まれた。その溶液を、各バイアル当たり3mLの溶液を使用して20mLのバイアルに入れた。保存的で非従来的な凍結乾燥サイクルを、許容できるケークが生成できるか判定するために使用した。サンプルを1℃/分で−20℃まで冷却し、3時間アニーリングし、1℃/分で−40℃まで冷却し、2時間保持した。100mTorrの真空にし、棚温度を0.5℃/分で−30℃まで上昇させた。ピラニ真空計の値がキャパシタンスマノメータ(CM)の値と一致するまでサンプルを−30℃に保持し、その後、0.5℃/分で25℃の二次乾燥に進んだ。ピラニ真空計の値がCMの値と一致したとき二次乾燥が完了した。およそ30時間後に一次乾燥が完了し、二次乾燥は数時間だけ必要とされた。
【0201】
トリス及びアルギニンだけを用いて調製したサンプルは完全に崩壊し、4%のスクロースを含んだサンプルはケークが収縮した。
【0202】
47.5mM以下のアルギニン及び2%から5%のマンニトールを含有するすべての製剤は許容できるケークであるように見えた。
【0203】
10mLの充填体積を使用した冷却変動中のアニーリングの影響を試験するための試験が含まれた。この試験は、23.75mM及び47.5mMのアルギニンとともに10mMのトリス、2%のスクロースならびに2%から5%のマンニトールを用いて調製したサンプルを使用した。その溶液を1℃/分で−25℃まで冷却し、3時間保持し、100mTorrの真空にし、棚温度を0.5℃/分で−20℃まで上げた。そのサンプルを−20℃で乾燥し、二次乾燥のために棚を25℃にまで温めた。すべてのサンプルは、崩壊の形跡がなく許容できるように見えた。
【0204】
凍結乾燥ケークの外観に対する冷却速度の影響を調べるために同じ製剤を使用した。1セットのサンプルを1℃/分で−25℃まで冷却し、3時間アニーリングした。第2のセットのサンプルを5℃/分で−25℃まで冷却し、3時間アニーリングした。これらのセットのサンプルを1つの乾燥機中で組み合わせ、一次乾燥のために−30℃で、続いて二次乾燥のために25℃で凍結乾燥した。
【0205】
すべてのサンプルは、崩壊の形跡がなく許容できるように見えた。このデータは、1℃/分から5℃/分の間の冷却速度がサンプルの外観に影響を及ぼさないことを裏付けている。
【0206】
取引先が行った溶解性試験は、7.5から8.2のpH範囲でアルギニンの濃度が36mM以上の場合、溶液中のタンパク質が可溶性のままであることを裏付けた。45mMのアルギニンを含有する溶液を使用することを決めた。その理由は、それがマンニトールの結晶化を妨げることになる濃度よりも十分に低いと同時にタンパク質の完全な溶解性を確保するであろうからである。マンニトール濃度は、サイクル中に確実にマンニトールが容易に結晶化するよう5%と選択した。したがって、最良の製剤候補は、pH7.8で調製された0.01%のPS80を伴う10mMのトリス、10mg/mLまたは25mg/mLのr−Antidote、45mMのアルギニン、2%のスクロース、5%のマンニトールであった。
【0207】
プラセボ溶液を用いて完了した凍結乾燥の試験は、アルギニン濃度が47.5mM以下で2%以上のマンニトールである場合に許容できるケークが生成できることを示した。その溶液を、−20℃と高い棚温度を使用して凍結乾燥し、崩壊の形跡はなかった。サンプルを、冷却工程中または−40℃の凍結工程の後に−20℃で3時間アニーリングし、ケークの外観に影響がなかった。保存的で従来のアプローチは、サンプルを−40℃で最初に凍結し、一次乾燥とともにアニーリング工程が続くことになる。凍結乾燥サイクルのためにこのアプローチを選択した。−20℃におけるアニーリング工程の後に一次乾燥を行った後、続いて二次乾燥のために棚温度を0.5℃/分で25℃まで上げた。それに続く凍結乾燥開発試験は、適切な二次乾燥の棚温度及び継続時間に焦点を当てた。
【0208】
凍結乾燥製剤の開発の目的には以下のものが含まれた(1)少なくとも10mg/mLのタンパク質濃度、(2)2〜8℃における改善された安定性、(3)≦5分の再構成時間、及び(4)堅牢な凍結乾燥プロセス。
【0209】
製剤スクリーニングのいくつかの過程は、タンパク質の安定性(凍結乾燥ケーク及び溶液の両方として)及び5℃における溶解性に対する個々の変化する要素の影響を評価するために行った。製剤スクリーニングの間は保存的な凍結乾燥サイクルを使用した。凍結乾燥プロセス開発を平行して行った。
【0210】
この試験は、タンパク質濃度に関して、高い濃度(例えば、25mg/mL)の溶液ほど、低い溶液(例えば、10mg/mL)よりも室温で2日後に安定していなかった(すなわち、SECによる合計凝集体及びRP−HPLCによる%ベータピークがより大きく増加)ことを示した。r−Antidoteの安定性に最適なpH(凍結乾燥生成物及び溶液)は、pH7.80±0.3であることが確認された。
【0211】
他の安定化構成成分(すなわち、スクロース及びアルギニン)の存在下ではトリス緩衝剤とリン酸緩衝剤の間で安定性に有意な差は見られなかった。
【0212】
安定剤のタイプ及び濃度に関して、2%及び4%w/wのスクロース双方とも良好な安定効果をもたらした。5℃、pH7.80±0.3において≧50mg/mLのr−Antidoteの溶解性を維持するためには、≧36mMのアルギニン濃度が必要とされる。
【0213】
≧4%w/wの濃度の結晶性構成成分(増量剤)であるマンニトール(10mMのトリス、2%w/wのスクロース、45mMのアルギニンの存在下)は、一次乾燥中のケーク崩壊を回避するのに重要である。さらに、少量のポリソルベート80の存在が剪断条件下(室温における振盪)における溶液中のr−Antidoteの安定性を確保するのに重要である
【0214】
以下に示す組成は凍結乾燥に適した溶液を例示する。
【表8-3】
1凍結乾燥中に除去される。
24.70mLの注射用の滅菌水(SWFI)で再構成される。
【0215】
凍結乾燥製剤は、r−Antidote医薬品の安定性を向上させ、2〜8℃で保管することができる。以下の表は、凍結した液体医薬品の組成と再構成された凍結乾燥医薬品とを比較する。100mg/バイアル及び400mg/バイアルの凍結乾燥医薬品の組成の例ならびに例の再構成された組成を提示する。
【表8-4】
【表8-5】
【表8-6】
【表8-7】
【0216】
フリーズドライ顕微鏡法を2つの異なる製剤に対して行った。およそ0.15mLの溶液をガラスセルに分注し、それを温度制御されたフリーズドライステージに置いた。サンプル温度を監視するために熱電温度計をセルの底部及び真ん中に置いた。その液体を0.5℃/分の速度で−50℃まで冷却し、−20℃で1時間アニーリングし、−50℃に再凍結した。チャンバーを真空にし、0.5℃/分の速度で加熱した。この崩壊温度に基づいて、崩壊温度未満の生成物温度をもたらすフリーズドライ温度と圧力の組み合わせが、崩壊しないケークを生成することになる。例えば、崩壊しないケークを生成するために100mTorrで最大20℃の生成物温度が使用できるであろう。
【表9】
【0217】
再構成後、SWFIを含む注射用r−Antidote、50mg/バイアルは、pH7.8で約480mOsm/kgの重量オスモル濃度である。したがって、再構成したDPは静脈内投与に許容される。
【0218】
r−Antidote BDSは、10mMのトリス、pH7.8±0.3、4%のスクロース、95mMのアルギニン中3.0mg/mLで製剤化され、−60℃以下で凍結保管される。注射用のr−Antidoteの製造は、3mg/mLのr−Antidote BDSを解凍及びプールすること、製剤緩衝液(10mMのトリス、2%のスクロース、5%のマンニトール、45mLのアルギニン HCl、pH7.8)に対して限外ろ過/透析ろ過し10mg/mLの最終濃度にすること、ポリソルベート80を添加して0.01%w/wにすること、r−Antidote注射用容器施栓系に無菌充填すること、凍結乾燥、栓をすること、キャップを付けること及びラベルを貼ることから成る。
【0219】
注射用r−Antidote製造プロセスは、他の殺菌液体医薬品の生産のために開発された手順を利用する。注射用r−Antidoteを生産するために使用される滅菌の方法は0.2μmろ過である。r−Antidoteは熱不安定性であるため、0.2μmろ過が注射用殺菌r−Antidoteを生産する最も適した手段である。
【0220】
凍結乾燥プロセスを、凍結乾燥サイクルのさまざまな段階における製剤構成成分の物理的性質の理解に基づいて合理的なアプローチを使用して開発した。Tg’(凍結濃縮物のガラス転移温度)及びTc(一次乾燥中の崩壊温度)を測定するために示差走査熱量測定(DSC)及びフリーズドライ顕微鏡法(FDM)を含む熱的性質決定を使用した。下記表で示したサイクルを、プロトタイプバッチJ7128の凍結乾燥のために選択した。アニーリング工程はマンニトールの結晶化を可能にし、確実に一次乾燥中の生成物温度が崩壊温度未満に下がらないようにする。一次乾燥温度を、適度な一次乾燥の継続時間とともにケーク崩壊を避けるよう選択した。水分レベルが<1%の凍結乾燥DPを生産するために2工程の二次乾燥条件を開発した(例えば、表6を参照)。