(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
Gibsonらは、論文の“Application of Nanofiber Technology to Nonwoven Thermal Insulation”(Journal of Engineered Fibers and Fabrics,Vol 2,Issue 2−2007)において、ナノファイバーの熱的性質および低温環境に対するそれらの保護については比較的知られていないことに言及しており、文献調査では断熱用途でポリマーナノファイバーを使用する基礎的および応用研究が明らかにされていないことをさらに開示している。この論文では、軍人は自分たちの寒い気候用の衣類および寝袋を運ぶ必要があるので、軍事用衣類および寝袋に使用される断熱材料の現実世界での特徴の1つは重量であることを議論している。この論文では、ASTM C−518“Standard Test Method for Steady−State Thermal Transmission Properties by Means of the Heat Flow Meter Apparatus”を用いて種々の断熱材料の熱的性質を試験しており、この場合、典型的な条件によって、幾分穏やかな条件、および上部プレート上の50℃と下部プレート上の10℃との温度差において操作されるプレート間に配置された材料を流れる熱流を測定する。
【0003】
上記論文は、異なる繊維材料を互いに組み合わせることで、複合断熱材の断熱特性が向上しうることをさらに開示しており、一連の厚く高嵩高ポリエステルバット断熱材料を用いて電界紡糸不織布を試験できる積層技術を開示している。難燃性サーマルライナーを形成するためのナノファイバーを含む不織シートを使用できる方法の開示および教示は行われていない。
【0004】
Fanらの米国特許出願公開第2010/0003877号明細書には、織布または不織布基材によって支持されるポリマーナノファイバー上にコーティングされたIR反射材料である3層反射性ナノ繊維構造が開示されている。この発明も低温保護衣類に関するものであり、難燃性サーマルライナーを形成するためのナノファイバーを含む不織シートを使用できる方法の開示および教示は行われていない。
【0005】
Lauらの国際公開第2013/030658号にも、非常に寒冷な気候に使用できる断熱構造が開示されている。難燃性サーマルライナーを形成するためのナノファイバーを含む不織シートを使用できる方法の開示および教示は行われていない。
【0006】
Hubnerに付与された米国特許第7,284,398号明細書には、熱、火炎、またはアーク放電などの作用に対する保護のための作業着の物品を製造するための布が開示されている。この布は、「マイクロファイバー」ヤーンと呼ばれるものから製造された一層の織布を含み、このマイクロファイバーは、1.3dtex未満の個別の繊維のタイターを有する。同様に、Kruszewskiらに付与された米国特許第8,347,420号明細書には、高熱または火炎に応答して厚さが増加しうる捲縮短繊維でできた不織布を含む、サーマルライナー部分組立体、布、および保護衣服が開示されている。これらの刊行物はいずれも、難燃性サーマルライナーを形成するためのナノファイバーを含む不織シートを使用できる方法の開示および教示は行われていない。
【0007】
日本公開特許公報の特開2012−0216024号公報には、パラ系アラミドポリマーからなるナノファイバー繊維構造が開示されている。これを消防士が着用する保護衣服中に使用できるとの記載がこの刊行物に含まれている。特開2011−127234号公報およびタマルの特開2013−185273号公報などの別の日本公開特許公報には、消防士用の保護衣服中のナノファイバーの使用に対する研究が進展していることが開示されている。しかしこの場合も、これらの参考文献はいずれも、有用な難燃性サーマルライナーを形成するためのナノファイバーを含む不織シートを実際に使用できる方法に関する教示は行われていない。
【0008】
Marinらの米国特許出願公開第2008−0220676号明細書は、水蒸気を透過する能力を有する防水性で通気度の衣服を対象としている。この衣服は、布層および多孔質のコーティングされたナノファイバー層を含み、ナノファイバー層は、フルオロカーボンポリマー部分の繊維表面上のコーティングと、樹脂バインダーまたはエキステンダーとを有する。この特許には、種々の汎用「保護衣服」を形成することができると開示されているが、この場合も有用な難燃性サーマルライナーの形成に関する教示は行われていない。
【0009】
消防士の出動服に使用されるサーマルライナーまたはサーマルバリアは、互いに反対の2つの熱的性質が要求される。緊急状態で遭遇するような高温に曝露する場合には、サーマルライナーは、着用者をやけどから保護するために高い断熱性を有する必要がある。このような高レベルの断熱性が得られる出動服は嵩高になる場合がある。しかし、これらの出動服中に使用される布の重量によって、場合により使用者が疲労することがあり、および/または嵩高であるために効率的に行動する能力が抑制されることがある。したがって、出動服の重量および嵩高さを減少させながら十分な防火性が得られる必要がある。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は難燃性サーマルライナーに関する。サーマルライナーまたは布に関して、「難燃性」という語句は、ASTM D6413−99の垂直燃焼試験に準拠して、布が4以下の炭化長および2秒以下の残炎を有することを意味する。本発明のサーマルライナーは、少なくとも21の限界酸素指数(LOI)を有する合成ポリマーでできたナノファイバーを含む不織シートを含む。ポリマー、ナノファイバー、繊維、またはヤーンに関して、「難燃性」という用語は、ポリマー、ナノファイバー、繊維、またはヤーンは、空気中の火炎を支援しないことを意味する。好ましい実施形態では、合成ポリマーおよびナノファイバーは26以上のLOIを有する。
【0013】
「不織」シートは、機械的、化学的、熱的、または溶媒の手段、ならびにそれらの組合せによって行われた、不規則な配列の繊維の接合および/または絡み合いによるウェブまたはマットの形成によって製造された布地構造を意味する。
【0014】
「ナノファイバーを含む不織シート」は、不織シートが主としてナノファイバーから構成されることを意味する。「ナノファイバー」という用語は、数平均直径が1000nm未満、さらには800nm未満、さらには約50nm〜500nmの間、さらには約100〜400nmの間である繊維を意味する。非円形断面のナノファイバーの場合、本明細書において使用される「直径」という用語は、最大断面寸法を意味する。「主として」は、シート中の50%を超える繊維がナノファイバーであることを意味するが、不織シートは70%を超える、または90%を超えるナノファイバーを有することができる。ある好ましい実施形態では、ナノファイバーを含む不織シート中の繊維の実質的にすべて(100%)が実際にナノファイバーである。
【0015】
ナノファイバーを含む不織シートは、10マイクロメートル以下の平均流動細孔サイズ(または「平均流動細孔」(MFP))を有する。ある実施形態では平均流動細孔サイズは6以下であり、ある別の実施形態では平均流動細孔サイズは4以下である。
【0016】
不織シートの平均流動細孔サイズは、ASTM Designation E 1294−89、“Standard Test Method for Pore Size Characteristics of Membrane Filters Using Automated Liquid Porosimeter”に準拠して液体を用いて測定される量である。驚くべきことに、液体を使用するこの方法は、耐火性衣服用途に使用するためのナノファイバーを含む適切な不織シートの特性決定に非常に有用であることが分かった。10マイクロメートルを超える平均流動細孔サイズを有するものは、サーマルライナー中に使用すると好適となる十分な「緻密さ」を有さないと思われるという点で、ナノファイバーを含む不織シートが独特のものであると考えられる。さらに、1.5マイクロメートルの小さい平均流動細孔サイズを有するナノファイバーを含む不織シートがサーマルライナー中で有用となると考えられる。
【0017】
「厚さ通気度」が、サーマルライナー中で有用となるナノファイバーを含む不織シートの特徴付けに有用なパラメータとなることも分かった。本明細書において使用される場合、「厚さ通気度」は、ナノファイバーを含む不織シートの単層の平均厚さ(単位マイクロメートル)と、ナノファイバーを含む不織シートの単層の平均通気度(単位は、立方フィート/分(CFM)または立方メートル/平方メートル/分(m
3/m
2/分)のいずれか)との積である。少なくとも25立方フィート/分・マイクロメートル(12立方メートル/平方メートル/分・マイクロメートル)の最小厚さ通気度、および6000立方フィート/分・マイクロメートル(2880立方メートル/平方メートル/分・マイクロメートル)の最大厚さ通気度を有するナノファイバーを含む不織シートがサーマルライナー中で有用であると考えられる。ある実施形態では、3000立方フィート/分・マイクロメートル(1440立方メートル/平方メートル/分・マイクロメートル)の最大厚さ通気度を有するナノファイバーを含む不織シートが好ましい。ある実施形態では、最小厚さ通気度を有するナノファイバーを含む不織シートは、150立方フィート/分・マイクロメートル(72立方メートル/平方メートル/分・マイクロメートル)以上であり、好ましい。厚さ通気度によって、サーマルライナー中で有用となる層密度および嵩高性の指標が得られると考えられる。
【0018】
ナノファイバーを含む不織シートの単層の平均厚さは、好ましくは約45マイクロメートルを超える。ある実施形態では、ナノファイバーを含む不織シートの単層の最大平均厚さは好ましくは150マイクロメートル以下である。これは、数センチメートル程度の厚さとなりうる典型的な高嵩高断熱材、さらには典型的には約0.5ミリメートル(500マイクロメートル)以上の厚さである種の断熱布とは対照的である。
【0019】
ある実施形態では、ナノファイバーを含む不織シートは、テクスチャー加工された表面を形成する表面パターンを有することができる。テクスチャー加工は、製造中の空気ジェットまたは水ジェット、ならびにパターン化されたロールを用いたエンボス加工などの機械的押込によって行うことができる。しかし、好ましくは任意のこのような不織シートは、実質的に連続した繊維表面を維持し、すなわち、シートは開口部を有さず、すなわち、1ミリメートル程度の規模の直径を有する孔を全く有さない。ある別の実施形態では、ナノファイバーを含む不織シートは、非常に平滑で均一な表面を有するシートを形成するために、2つの平滑面のカレンダーロール間のニップ中でカレンダー加工することができる。ある実施形態では、ナノファイバーを含む不織シートは、高い弾性伸張および回復特性を有する不織布を含むことができる。
【0020】
ナノファイバーを含む不織シートの製造方法としては、代表的な刊行物として、国際公開第2003/080905号、米国特許第4,172,706号明細書、および米国特許出願公開第2005/0067732号明細書などに開示されるエレクトロブローイング法が挙げられるが、本明細書に記載されるようなナノファイバーを含む適切な不織シートが形成される任意の方法を使用することができる。エレクトロブローイング法は、混合室からの溶媒中のポリマーの溶液を、紡糸ビームを介して、高電圧が印加される紡糸ノズルに供給するステップを含み、同時に、ノズルを出るときの吹き込みガス流のポリマー溶液に圧縮ガスが向けられる。真空下のコレクタ接地上にウェブとしてナノファイバーが形成され収集される。
【0021】
収集されたナノファイバーは、有利には接合される。接合は、限定するものではないが、加熱された平滑またはエンボス加工されたニップロール間の熱カレンダー加工、超音波接合、およびスルーガス(through gas)接合などの周知の方法によって行うことができる。接合によって、ナノファイバーの不織シートの強度および圧縮抵抗が増加し、それによってシートは取り扱いに関連する力に耐えることができる。厚さ、密度、ならびに細孔の大きさおよび形状などの不織シートの物理的性質を調節することもできる。たとえば、熱カレンダー加工を使用することで、シートの厚さを減少させ、密度および中実性を増加させることができ、細孔の大きさを減少させることができる。好ましくはナノファイバーを含む不織シートの嵩密度は500kg/m
3未満、好ましくは120〜500kg/m
3の範囲内であり、多孔度は少なくとも60%、好ましくは75%〜95%である。次にこれによって、加えられた特定の圧力差において媒体を通過する流量が減少する。ある実施形態では、ナノファイバーを含む不織シートは、所望の厚さ、通気度、および平均流動細孔サイズを得るために必要な程度まで、加熱された平滑なニップロールの間でカレンダー加工される。必要なカレンダー加工の量は、ナノファイバーの製造に使用されるポリマーの種類、製造速度、繊維のサイズなどのいくつかの要因によって決定される。
【0022】
ある好ましい実施形態では、ポリアミド酸などのポリマー前駆体を紡糸して、ポリマー前駆体ナノファイバーのシートを形成し、次にこれを熱に曝露して、重合を完了させる(たとえば、イミド化によってポリイミドナノファイバーが得られる)。ナノファイバーを含む不織シート上にテクスチャー加工された表面が望ましい場合に、これが特に有用である。シート表面の粗さは、シート製造中のシート表面上に空気の流れを与える空気ジェットの使用によって制御することができる。シート表面に与えられる空気の温度および速度は、イミド化(および/または溶媒ストリッピング)中に希望通りに制御され、表面の三次元構造(典型的には収集スクリーン)上でイミド化/ストリッピングが行われる。ウェブ表面上のテクスチャー加工を誘導する別の有用な方法としては、ハイドロジェット、捲縮、エンボス加工などを挙げることができる。
【0023】
ある好ましい実施形態では、「平坦」表面を有するシートが望ましい場合、ポリマー前駆体ナノファイバーのシートを、クロスウェブ方向でウェブを制限せずに水平IRオーブンに通して、繊維のイミド化または溶媒のストリッピングを行うことができる。得られたシートは、配置されたナノファイバーの不規則な粗さ以外の表面テクスチャーを有さない。表面を平坦化する別の方法は、前述のような一連のカレンダーロールにウェブを通すことであった。種々のロール構成をウェブの作製に使用することができる:ある範囲の通気度、細孔サイズ、および多孔度を有する種々の構造を形成するためのニップおよびギャップカレンダリング(calendaring)方式の鋼/綿;鋼/ナイロン;鋼/複合材料。
【0024】
ナノファイバーを含む不織シートは、少なくとも21、好ましくは少なくとも26以上の限界酸素指数(LOI)を有する合成ポリマーから製造される。ナノファイバーの製造に有用なポリマーとしては、ポリイミド(完全芳香族ポリイミドを含む)、芳香族ポリアミド、ポリアレーンアゾール、メラミン、ポリアクリロニトリル、酸化ポリアクリロニトリル(polyacrilonitrile)、ポリエーテルスルホン、ポリシルホン(polysilphone)、ポリビジレンフルオリド(polyvidilenefluoride)、およびそれらの混合物などが挙げられる。ある実施形態では、ポリイミド、メタ系アラミド、パラ系アラミド、ポリベンザゾール、およびポリベンゾイミダゾールを含有するポリマーが特に好ましい。さらに、ナノファイバーを含む不織シートは、1種類のポリマーまたはポリマー混合物を含むナノファイバーを用いて製造することができ、または希望するなら、ナノファイバーを含む不織シートは、2つの異なる種類のポリマーナノファイバーを有することができる。
【0025】
ナノファイバーを含む不織シートの少なくとも1つの外面は、熱安定性難燃性布の表面に接触し取り付けられる。「熱安定性」は、そのような布の寸法が、150℃を超える温度に少なくとも5分間曝露した場合に縦方向および横方向で、10パーセント以下、より好ましくは6パーセント以下、最も好ましくは3パーセント以下だけ変化することを意味する(ISO 17493)。
【0026】
熱安定性難燃性布は、熱曝露後に比較的平坦で寸法安定性のままとなるので、布を安定化させる機能を果たし、ナノファイバーを含む不織シートとの十分な表面相互作用または摩擦が存在することで、熱が発生する状況の最中にナノファイバーを含む不織シートの横方向の収縮が最小限となる。好ましくは、熱安定性難燃性布は、ナノファイバーからはできていないが、短繊維、または短繊維のヤーン、または連続フィラメントからできている。好ましくはこれらの繊維またはフィラメントは、5マイクロメートル以上、最も好ましくは10マイクロメートル以上の直径を有する。
【0027】
熱安定性難燃性布用に適した難燃性繊維としては、芳香族ポリアミド、ポリアレーンアゾール、メラミン、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミド−イミド、ポリエーテル−イミド、ポリアクリレート、ポリエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、およびそれらの混合物から製造された繊維が挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましい繊維は、メタ系アラミド、パラ系アラミド、ポリベンザゾール、ポリベンゾイミダゾール、およびポリイミドポリマーから製造される。布が織布である場合、好ましくは難燃性繊維から製造されたヤーンは、ヤーンのテナシティが少なくとも3グラム/デニール(2.7グラム/dtex)である。不織布および織布に有用な特に好適な難燃性繊維としては、メタ系およびパラ系アラミドの混合繊維が挙げられる。E.I.DuPont de Nemours,Wilmington,DEより入手可能なNomex(登録商標)IIIAなどの93%のメタ系アラミド、5%のパラ系アラミド、および2%の炭素コアナイロン帯電防止繊維の好ましい混合繊維の1つ。
【0028】
熱安定性難燃性布は、織布もしくは不織布、または短繊維のニードルパンチフェルトであってよく、いずれも前述の難燃性繊維が使用される。ある実施形態では、この不織布は、好ましくは0.2〜3.0oz/yd
2(7〜101g/m
2)の範囲内の重量を有する。好適な熱安定性布の1つは、Nomex(登録商標)E89であり、これはDuPontより入手可能なNomex(登録商標)およびKevlar(登録商標)短繊維の混合繊維から製造されたスパンレース不織材料である。E89布は、公称厚さが19ミル(0.48mm)であり、坪量が1.5oz/yd
2(50.5g/m
2)である。
【0029】
熱安定性難燃性布の単層の平均厚さは、好ましくは約60マイクロメートルを超える。ある実施形態では、熱安定性難燃性布の単層の最大平均厚さは、好ましくは1.25ミリメートル以下である。
【0030】
本発明のサーマルライナーは、ナノファイバーを含む不織シートと、その不織シートの外面に取り付けられた熱安定性難燃性布とで構成される。不織シートと布は任意の方法によって取り付けることができるが、ある実施形態では、これらの層は機械的に取り付けることができる。一部の機械的な取り付け方法としては、縫製、縫合、および/またはキルティングが挙げられるが、これらに限定されるものではない。好適なキルトパターンとしては、ボックス、ジグザグ、直線対角、またはシェブロンが挙げられる。特に有用な方法の1つは、Nomex(登録商標)アラミド糸(Atlantic Thread and Supply,Baltimore,MDより入手可能)などの難燃性糸を用いて2つの層を互いに縫い付ける、またはキルティングすることである。このように縫い付けられた、またはキルティングされたサーマルライナーは、2つ以上の層を有するが、1枚のサーマルライナー布として衣服用途に切断して使用できるので、これは好ましい一実施形態となる。
【0031】
実際的な観点から、特に、両方の表面がパターン化およびエンボス加工が行われていない場合には、ナノファイバーを含む不織シートの1つの表面の実質的に全体が、熱安定性難燃性布の1つの表面全体と接触する。明らかなように、ナノファイバーを含む不織シートまたは熱安定性難燃性布の一方または両方がテクスチャー加工またはパターン化が行われる場合、好ましい一実施形態では、ナノファイバーを含む不織シートおよび熱安定性難燃性布の表面の主要部分(>50%)が接触し、好ましくはシートの間の接触領域は75%を超え、最も好ましくは80%を超える。
【0032】
ナノファイバーを含む不織シートの層の平均厚さT
1およびその不織シートの外面に取り付けられた熱安定性難燃性布の層の平均厚さT
2は、平均厚さT
1の平均厚さT
2に対する比が0.75未満となるように選択される。これは必ず平均厚さT
1が平均厚さT
2より小さくなることを意味し、サーマルライナーは、熱安定性難燃性布の複数の層を用いて作製したものよりも確実に薄くなり、嵩が低くなる。ある実施形態では、平均厚さT
1の平均厚さT
2に対する比は0.30未満である。多くの実施形態では、平均厚さT
1の平均厚さT
2に対する比は0.120を超える。
【0033】
1枚のナノファイバーを含む不織シートと1枚の熱安定性難燃性布との組合せから形成されたサーマルライナーの平均厚さは、好ましくは約100マイクロメートルを超える。ある実施形態では、このように形成されたサーマルライナーの最大平均厚さは、好ましくは1.4ミリメートル以下である。好ましいサーマル平均厚さの1つは、1ミリメートル未満である。ある実施形態では、好ましいサーマルライナーの平均厚さは0.4〜0.75ミリメートルの間である。
【0034】
希望するならある実施形態では、ナノファイバーを含む不織シートまたは熱安定性難燃性布のいずれかの取り付けが行われない表面は、さらに、保護フェースクロスを取り付けることができ、これはサーマルライナーの一部となる。好適なフェースクロスは、優先的には、少なくとも21の限界酸素指数を有する合成ポリマーでできた繊維またはフィラメントで構成され、たとえば非常に軽量の織布スクリムを含むことができる。任意のこのようなフェースクロス構造は、取り扱い中および複合衣服への組み込みの間に、ナノファイバーを含む不織シートおよび/または熱安定性難燃性布の表面の完全性を保護するのに有用となりうる。多くの場合、衣服中の内部裏地としての使用に適したフェースクロスが望ましい。
【0035】
本発明のサーマルライナーは、保護衣服の複合布系に使用することができる。このような衣服中、ナノファイバーを含む不織シートと、熱安定性難燃性布との組合せの使用によって、驚くべきことに、全体的な断熱および放射熱の断熱の性能が、熱安定性難燃性布単独の層の使用、または短繊維のバットの使用のいずれとも同等となるが、衣服の重量および嵩高性は少なくなる。
【0036】
特に、ナノファイバーを含む不織シートと熱安定性難燃性布とを含むサーマルライナーを使用する複合布は、ナノファイバーを含む不織シートを有さずに熱安定性難燃性布のみからなるサーマルライナーを有する対照の布と比較した場合に、熱保護性能(TPP)(直接火炎の断熱)が少なくとも約5%増加するが、複合布の重量増加は5%よりもはるかに少ないことが示された。おそらく、より重要なことには、ナノファイバーを含む不織シートと熱安定性難燃性布とを有するサーマルライナーを使用する複合布は、ナノファイバーを含む不織シートを有さずに熱安定性難燃性布のみからなるサーマルライナーを有する対照の布と比較した場合に、放射保護性能(RPP)(放射熱の断熱)が約5%を超えて(ほとんどの場合5%よりも大きく超えて)増加するが、複合布の重量増加は5%よりもはるかに少ないことが示された。
【0037】
さらに、本明細書に記載のサーマルライナーを含有する複合布は、洗浄後に驚くべき熱的性能を有する。驚くべきことに、5回の洗浄後、ナノファイバーを含む不織シートと熱安定性難燃性布とのサーマルライナーを用いてキルティングした複合布は、TPPおよびRPPの両方の性能が顕著に増加することが分かった。5回洗浄した複合布試料のTPPおよびRPPの性能は、洗浄前の同じ複合布のTPPおよびRPPよりも3パーセントを超えて増加しうることが分かった。
【0038】
一実施形態では、サーマルライナーは、森林消防士または軍人用のジャンプスーツなどの、外部シェル布である1つのみの追加層を複合布が実質的に有する難燃性衣服中に使用することができる。このようなスーツは、典型的には森林消防士の衣類の上に使用され、森林火災の消火のための領域中にパラシュートで降下するために使用することができる。
【0039】
好ましい一実施形態では、サーマルライナーは、保護衣服の複合布系に使用することができ、この複合布系は少なくとも3つの構成要素を有し、各構成要素は別個の機能を果たす。特に、サーマルライナーは、米国特許第5,468,537号明細書に開示されるような一般的構成を有する多層衣服である難燃性衣服に使用される。このような衣服は、一般に、3つの層または3種類の布構造を有し、それぞれの層または布構造は別個の機能を果たす。火炎を防御し、消防士の火炎からの主要な防御としての機能を果たす外部シェル布が存在する。外部シェルに隣接して、典型的には液体バリアであるが、水蒸気はそのバリアを透過できるように選択することができる湿気バリアが存在する。繊維不織布または織布のメタ系アラミドスクリム布上のGore−Tex(登録商標)PTFE膜またはネオプレン(登録商標)膜の積層体が、このような構造に典型的に使用される湿気バリアである。湿気バリアに隣接して、本明細書に記載されるような第3の構成要素のサーマルライナーが存在し、前述したようにこれは内面の布に取り付けることもできる。湿気バリアは、サーマルライナーを乾燥状態に維持し、サーマルライナーは、着用者が遭遇しうる火炎または熱の脅威による熱応力から着用者を保護する。
【0040】
外部シェルは任意の難燃性布からなることができる。ある実施形態では、このシェルはアラミド繊維を含む。好適なアラミドの1つは、ポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)であり、これはE.I.DuPont de Nemours,IncよりNomex(登録商標)の商品名で販売されている。別の布では、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)(E.I.DuPont de Nemours,Inc.よりKevlar(登録商標)の商品名で販売される)またはポリベンゾイミダゾール(PBI)などのポリアレーナゾール(polyarenazole)が使用される。上記繊維を2種類以上含有する布を使用することもできる(たとえば、Nomex(登録商標)/Kevlar(登録商標)またはKevlar(登録商標)/PBI)。
【0041】
湿気バリアは、液体に対するバリアとして機能するが、そのバリアを水蒸気は透過することができる構成要素である。消防士の出動服などの難燃性衣服において、これらのバリアは、消防士から水を引き離し、それによって消防士が支える重量が最小限となる。さらに、このバリアは水蒸気(汗)を逃すことができ、これは高温環境で作業する場合に重要な機能である。典型的には、湿気バリア構成要素は、不織布または織布に積層された膜を含む。布への積層に使用される膜材料としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)およびポリウレタンが挙げられる。このような積層体の例としては、繊維不織布または織布のメタ系アラミド布上のCrosstech(登録商標)PTFE膜またはネオプレン(登録商標)膜が挙げられる。
【0042】
複合布中の種々の層は、ナノファイバーを含む不織シートおよび熱安定性難燃性布を互いに取り付ける場合に本明細書で前述した方法などのあらゆる好適な方法を用いて互いに取り付けることができる。特に有用な方法の1つは、難燃性糸を用いて互いに層をキルティングすることである。明らかに、本発明の複合布は、衣服中で、外部シェル布が火災の可能性のある環境により近くなり、サーマルライナーが着用者または衣服により近くなるように使用される。ある好ましい実施形態では、複合布中にサーマルバリアを配置する場合、ナノファイバーを含む不織シートを有するサーマルライナーの側が、液体バリアにより近くなるように配置され、熱安定性難燃性布は着用者により近くなるように配置される。また、ナノファイバーを含む不織シートがサーマルライナーにとって有用であるので、希望するならナノファイバーを含む不織シートの追加層を、サーマルライナーに隣接して、またはいずれかの側で、サーマルライナーに組み込むことができる。
【0043】
試験方法
垂直燃焼試験
ASTMD6413−99を用いてサーマルライナーの垂直燃焼性能を測定した。炭化長を求めるための試験手順は、最低坪量が2〜6oz/yd
2(68〜203g/m
2)である材料に対して計画され、したがって、低坪量材料の場合、合わせた坪量が約135g/m
2である多層において求めた。
【0044】
平均流動細孔
不織シートの平均流動細孔サイズは、ASTM Designation E 1294−89、“Standard Test Method for Pore Size Characteristics of Membrane Filters Using Automated Liquid Porosimeter”に準拠して測定される量である。キャピラリーフローポロメーターCFP−2100AE(Porous Materials Inc.Ithaca,NY)を使用した。直径25mmの個別の試料を、低表面張力流体(表面張力が16ダイン/cmである1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロペン、または“Galwick”)でぬらし、ホルダー中に取り付け、空気の圧力差を生じさせ、流体を試料から除去した。湿式流が乾式流(溶媒でぬらさない場合の流れ)の2分の1になる圧力差を使用し、供給されるソフトウェアを用いて平均流動細孔サイズを計算する。
【0045】
厚さ
個別の材料の厚さ測定は、ASTM 5947に準拠し、10kPa(1.45psi)の圧力および直径15mmのフート(精密厚さゲージFT3 Hanatek Instruments,east Sussex,UK)を用いて行った。複合布の厚さ測定は、ASTM D1777−96 Option 1に準拠し、標準的な台に搭載された直径50.8mmのフートを有するマイクロメーター、および0.9kPa(0.13 psi)の圧力を使用して測定した。
【0046】
熱的性能
熱保護性能(TPP)は、NFPA 1971(ISO 17492)に準拠して2.0cal/cm
2sの熱流束において測定した。放射保護パーフォマンス(Perfomance)(RPP)は、NFPA 1971(ASTM F1939)に準拠して0.5cal/cm
2sの熱流束において測定した。
【0047】
坪量
ナノファイバーを含む不織シートを含む個別の層の坪量は、ASTM D−3776に準拠して測定した。複合布の坪量は、6.75インチ×6.75インチのTPP試験体の重量から測定した。
【0048】
多孔度
多孔度は、g/m
2の単位での試料の坪量を、g/cm
3の単位のポリマー密度およびマイクロメートルの単位の試料厚さで割り、100を乗じ、続いて100%から引くことによって計算し、すなわちパーセント多孔度=100−坪量/(密度×厚さ)×100であった。
【0049】
通気度
通気度は、ASTM D737に準拠し125Paの圧力差で測定した。
【0050】
熱安定性
熱安定性難燃性布の熱安定性は、NFPA 1971のNational Fire Protection Association’s 2007 editionに記載の方法に準拠して求めることができる。
【0051】
熱抵抗/熱伝導度
シートおよび布の耐熱性(R)および熱伝導度(k)は、ASTM E1530(Guarded Heat Flow)に準拠し、TA DTC 300試験機を用いて測定した。試験領域は20.3cm
2(直径50.8mm)であった。すべての試料は、表面接触を説明するためにヒートコンパウンドグリースを使用せずに試験した。試料は、12kPaの最小圧力および100℃までの温度設定で試験し、冷却板は10度低くした。一連の試料に対応するために種々の抵抗領域を使用した:低領域:0.0005〜0.010m2K/W;中間領域:0.0005〜0.010m2K/W、高領域0.01〜0.05m2K/W。抵抗は出力の1つであり、熱伝導度は同様の圧力下で既知の試料厚さを用いて計算した。
【実施例】
【0052】
実施例1
順番に外部シェル布、湿気バリア、サーマルライナー、および裏地布を有する複合衣服布の試料を以下の材料から作製した。外部シェル布、湿気バリア、および裏地は、すべて市販の布であり;外部シェル布は7.5oz/yd
2のKevlar(登録商標)/PBI(60%/40%)布であり、湿気バリアは6oz/yd
2のStedair(登録商標)3000布であり、裏地は3.3oz/yd
2のNomex(登録商標)パジャマチェック(pajamacheck)織布であった。
【0053】
試験用の多数の異なる複合衣服布を作製するために、多数の異なるサーマルライナーを作製した。各サーマルライナーは、この場合1.5oz/yd
2(51g/m
2)スタイル715 Nomex(登録商標)E−89(商標)スパンレースアラミド繊維不織布である熱安定性難燃性布の層を、ナノファイバーを含む不織シートの層と組み合わせることによって作製した。これらすべてのサーマルライナーは、ASTM D6413−99の垂直燃焼試験に合格可能である。
【0054】
米国特許出願公開第2005/0067732号明細書に詳細に記載されるエレクトロブローイング法を使用し、26を超えるLOIを有するポリマーを使用して、種々のナノファイバーを含む不織シートを作製した。使用した種々のナノファイバーを含む不織シートの性質を表1に示す。ナノファイバーを含む不織シートは、種々の量の表面テクチャーを有した。試料1−2は高度にテクスチャー加工された表面を有し、一方、試料1−1は中程度にテクスチャー加工された表面を有した。試料1−4および1−Bの両方は、少ないテクスチャー加工が行われた表面を有し、試料1−5は、非常に少ないテクスチャー加工が行われた表面を有し、ほぼ平滑であった。試料1−3は平滑で実質的に平坦な表面を有した。
【0055】
【表1】
* - PI = ポリイミド、PES = ポリエーテルスルホン、A= メタ系アラミドおよびパラ系アラミドのブレンド。
【0056】
複合衣服布の試料の性能は、多層構造を試作するために試験ホルダー中で個別の布層を積層することによって測定した。種々の層は、順に、外部シェル布、湿気バリア、サーマルライナー、および裏地布であり、外部シェル布が熱の脅威に最も近かった。サーマルライナーは、ナノファイバーを含む不織シートの側が湿気バリアに接触し、熱安定性難燃性布の側が裏地に接触するように配置した。外部シェル布、湿気バリア、サーマルライナー,および裏地布を有し、サーマルライナーの多孔度が90%である1.5oz/yd
2(51g/m
2)のスタイル715 Nomex(登録商標)E−89(商標)スパンレースアラミド繊維不織布の1層のみである対照試料も、追加の不織ナノファイバーシートならびに他のシートおよび布を使用せずに作製した。
【0057】
比較の複合衣服布の2つの試料も同様の方法で積層した。第1の比較試料は、外部シェル布、湿気バリア、サーマルライナー、および裏地布から作製し、サーマルライナーは、熱安定性難燃性布の2つの層からなり、その一方の層は1.5oz/yd
2(51g/m
2)のスタイル715 Nomex(登録商標)E−89(商標)スパンレースアラミド繊維不織布であり、他方の層は同じスパンレースアラミド繊維不織布の2.3oz/yd
2(80.4g/m
2)の種類のものであった。この2.3oz/yd
2(80.4g/m
2)のスパンレースアラミド繊維不織布の単層(1−A)の性質を表1に示している。第2の比較試料は、外部シェル布、湿気バリア、サーマルライナー、および裏地布から作製し、サーマルライナーは、1−Bと示されるナノファイバーを含む1つの不織シートと、1.5oz/yd
2(51g/m
2)のスタイル715 Nomex(登録商標)E−89(商標)スパンレースアラミド繊維不織布の1層とを組み合わせたものであった。ナノファイバーを含む不織シートの単層(1−B)の性質も表1に示している。
【0058】
次に複合衣服布の試料のNFPA 1971/ISO17492(2.0cal/cm
2・sにおける)に準拠した熱保護性能(TPP)およびASTM F1939(0.5cal/cm
2・sにおける)に準拠した放射保護性能(RPP)の熱的性能を試験した。種々のサーマルライナーを用いて作製した複合衣服の性質および熱的性能を表2に示す。
【0059】
複合衣服布試料1−1から1−4のいずれかと対照との比較から、ナノファイバーを含む不織シートを加えることで、TPP(直接火炎の断熱)が少なくとも約5%増加するが、重量増加は5%よりはるかに少なく、RPP(放射熱の断熱)も5%を超えて(ほとんどの場合で5%を大幅に超えて)増加し、重量増加は5%よりもはるかに少ないことが示されている。
【0060】
【表2】
【0061】
表2に示されるように、薄い試料を使用する複合布試料1−1〜1−4は、対照よりも改善されたTPP性能を有した。さらに、複合布試料のRPP性能も向上し、これらの複合布試料の一部は、試料1−Aによって示されるような短繊維を用いて作製した厚い標準的なサーマルライナーに対して、同等または改善された性能を示した。しかし、表1に示されるように、すべてのナノファイバーおよび比較シートは高い多孔度を有し、すべてが72〜92%の範囲であり、すべてが同様の重量であった。
【0062】
サーマルライナー中のナノファイバーを含む不織シートと熱安定性難燃性布(この場合はスパンレース不織布であった)との性質の間の相乗効果をさらに理解するため、不織ナノファイバーシートの別の性質、およびその熱安定性難燃性布との相乗効果を表3に示す。表中、T
1およびR
1は、この場合1.5oz/yd
2(51g/m
2)のスタイル715 Nomex(登録商標)E−89(商標)スパンレースアラミド繊維不織布の1層であった熱安定性難燃性布の平均厚さおよび熱抵抗を意味する。T
2およびR
2は、1つのシート上で測定したナノファイバーを含む不織シートの平均厚さおよび熱抵抗を意味する。
【0063】
この表は、異なる平均厚さを有する材料の構造の多孔度および細孔を表す新しい構造パラメータである「通気度×平均厚さ」も示している。単位は(cfm)×(マイクロメートル)または国際単位(m3/m2/分)×(マイクロメートル)である。
【0064】
【表3】
【0065】
対照試料(この場合も、1.5oz/yd
2(51g/m
2)のスタイル715 Nomex(登録商標)E−89(商標)スパンレースアラミド繊維不織布の1層の熱安定性難燃性布である)および比較例1−A(この場合も、対照と同じスパンレースアラミド繊維不織布の2.3oz/yd
2(80.4g/m
2)の種類のモノを加えている)の両方によって表3に示されるように、これらの従来の短繊維不織布は、ナノファイバーウェブよりも高い熱伝導度を有する傾向にあり、これらの布の増加した厚さによってそれらの熱抵抗も増加する傾向にある。しかし、表3中の最後の2列によって示されるように、ナノファイバーシートの厚さ通気度は、ナノファイバーシートを別の断熱シートと組み合わせる場合の重要なパラメータになると考えられる。たとえば、試料1−Bの場合のように、ナノファイバーシートが薄すぎ、通気度が高くなりすぎる場合、表2に示されるようにTPPおよびRPPの増加はわずかである。
【0066】
実施例2
実施例1において積層し試験した、ナノファイバーを含む不織シート1−1または1−3のいずれかを使用した複合衣服布試料を、Nomex(登録商標)アラミド糸(Atlantic Thread and Supply,Baltimore,MD)を用いてさらにキルティングして、2つのキルティングされた複合衣服布を形成した。これらの複合衣服布試料を、次に実施例1のように熱(TPP)および放射(RPP)の熱的性能の試験を行った。キルティングした複合衣服布の熱的性質は、実施例1のように単に積層した試料と同じであった。これらのキルティングした複合衣服布試料について、次に5回の洗浄サイクルを行い、熱的および放射的性能を再び測定した。これらの試料の性質を表4に示す。驚くべきことに、キルティングした複合布の熱的および放射的性能は洗浄とともに増加した。
【0067】
【表4】
【0068】
実施例3
複合衣服布試料を、ナノファイバーを含む不織シート1−1または1−3のいずれかを用いて作製し、実施例1と同じ外部シェル布、湿気バリア布、および裏地布を積層し試験したが、この場合サーマルライナーは、1.5oz/yd
2(51g/m
2)のスタイル715 Nomex(登録商標)E−89(商標)スパンレースアラミド繊維不織布の2つの層とともに、1−1または1−3のナノファイバーを含む不織シート1つの層を含んだ。対照試料は、同じ複合衣服布試料からなったが、サーマルライナーは1.5oz/yd
2(51g/m
2)のスタイル715 Nomex(登録商標)E−89(商標)スパンレースアラミド繊維不織布の2つの層のみであり、追加の不織ナノファイバーシートは有さなかった。これらの試料の性質を表5に示す。この場合も、ナノファイバーを含む不織シートを加えることで、TPPおよびRPPの性能が顕著に増加し(それぞれ6%を超え、10パーセントを超える)、布重量の増加は非常にわずか(3重量%未満)であった。
【0069】
【表5】
【0070】
実施例4
実施例3を繰り返したが、複合衣服布試料は、外部シェル布、サーマルライナー、および裏地布のみを含んだ。特に、外部シェル布は4.6oz/yd
2のNomex(登録商標)IIIA布であり、裏地布は2.7oz/yd
2のNomex(登録商標)編地であった。
【0071】
対照試料は、サーマルライナーが1.5oz/yd
2(51g/m
2)のスタイル715 Nomex(登録商標)E−89(商標)スパンレースアラミド繊維不織布の1層であり、追加の不織ナノファイバーシートは有さない複合衣服布からなった。次に、サーマルライナーが1つのスパンレース層ともに1−1または1−3のいずれかのナノファイバーを含む不織シートの1つの層を含む、2つのさらなる複合衣服布試料を作製した。これらの試料の性質を表6に示す。この場合も、ナノファイバーを含む不織シートを加えることでTPPおよびRPPの性能が顕著に増加し(それぞれ6%を超え、10パーセントを超える)、布重量の増加は非常にわずか(3重量%未満)であった。
【0072】
【表6】
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕難燃性サーマルライナーであって、
(a)少なくとも21の限界酸素指数、10マイクロメートル以下の平均流動細孔、25〜6000立方フィート/分・マイクロメートル(12〜2880立方メートル/メートル/分・マイクロメートル)の厚さ通気度、および平均厚さT1を有する合成ポリマーのナノファイバーを含む不織シートと;
(b)前記不織シートの外面に取り付けられた平均厚さT2を有する熱安定性難燃性布を含み;前記熱安定性布の表面は前記不織シートの表面に接触し;
T1のT2に対する比が0.75未満となるようにT1およびT2が選択される、
難燃性サーマルライナー。
〔2〕T1のT2に対する比が0.30未満となるようにT1およびT2が選択される、前記〔1〕に記載のサーマルライナー。
〔3〕T1のT2に対する比が0.120を超えるようにT1およびT2が選択される、前記〔1〕または〔2〕に記載のサーマルライナー。
〔4〕ASTM D6413−99に準拠して前記サーマルライナーを火炎に曝露した場合に、残炎が2秒以下である、前記〔3〕に記載のサーマルライナー。
〔5〕前記ナノファイバーを含む不織シートが、ポリイミド、メタ系アラミド、パラ系アラミド、ポリベンザゾール、ポリベンゾイミダゾール、またはそれらの混合物から製造されたナノファイバーを含み、前記熱安定性難燃性布が、ポリイミド、メタ系アラミド、パラ系アラミド、ポリベンザゾール、ポリベンゾイミダゾール、またはそれらの混合物から製造された短繊維および/または連続フィラメントを含む、前記〔4〕に記載のサーマルライナー。
〔6〕外部シェル布および難燃性サーマルライナーを含む難燃性複合布系であって、前記サーマルライナーが:
(a)少なくとも21の限界酸素指数、10マイクロメートル以下の平均流動細孔、25〜6000立方フィート/分・マイクロメートル(12〜2880立方メートル/メートル/分・マイクロメートル)の厚さ通気度、および平均厚さT1を有する合成ポリマーのナノファイバーを含む不織シートと;
(b)前記不織シートの外面に取り付けられた平均厚さT2を有する熱安定性難燃性布を含み;前記熱安定性布の表面は前記不織シートの表面に接触し;
T1のT2に対する比が0.75未満となるようにT1およびT2が選択される、
難燃性複合布系。
〔7〕T1のT2に対する比が0.30未満となるようにT1およびT2が選択される、前記〔6〕に記載の難燃性複合布系。
〔8〕T1のT2に対する比が0.120を超えるようにT1およびT2が選択される、前記〔6〕または〔7〕に記載の難燃性複合布系。
〔9〕前記〔8〕に記載の複合布系を含む難燃性保護衣服。
〔10〕前記外部シェル布と前記サーマルライナーとの間に配置された湿気バリアをさらに含む、前記〔6〕に記載の難燃性複合布系。
〔11〕前記ナノファイバーを含む不織シートが、ポリイミド、メタ系アラミド、パラ系アラミド、ポリベンザゾール、ポリベンゾイミダゾール、またはそれらの混合物から製造されたナノファイバーを含み、前記熱安定性難燃性布が、ポリイミド、メタ系アラミド、パラ系アラミド、ポリベンザゾール、ポリベンゾイミダゾール、またはそれらの混合物から製造された短繊維および/または連続フィラメントを含む、前記〔6〕または〔10〕に記載の難燃性複合布系。
〔12〕T1のT2に対する比が0.30未満となるようにT1およびT2が選択される、前記〔10〕に記載の難燃性複合布系。
〔13〕T1のT2に対する比が0.120を超えるようにT1およびT2が選択される、前記〔10〕または〔12〕に記載の難燃性複合布系。
〔14〕前記〔13〕に記載の複合布系を含む、難燃性保護衣服。