(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般に、吸収性物品において、吸収体を構成する高吸収性ポリマーが体液を吸収して膨潤した場合、膨潤した高吸収性ポリマーが、体液の吸収体内での拡散経路を塞いでしまうため、体液の吸収速度が低下する問題があった。このような問題は、不定形の高吸収性ポリマーを用いた場合と比較して、球形の高吸収性ポリマーを用いた場合に顕在化する傾向にあった。そして、このように体液の吸収速度が低下した場合、2回目以降の排泄により排泄される体液を迅速に吸収できず、体液の漏れにつながるおそれがあった。
【0006】
したがって、本発明は以上の課題に鑑みてなされたものであり、吸収速度に優れ、2回目以降の排泄による体液であっても、吸収体の全体に迅速に拡散させて吸収することができ、体液の漏れを生じにくい吸収性物品を提供することを目的とする。
【0007】
本発明の発明者は、上記課題に鑑み、鋭意研究を行った。その結果、吸収性物品における吸収体を、上層吸収体と下層吸収体の2層からなるものとするとともに、上層吸収体における一対の上層スリットを長手方向に直線状に延在するように排尿領域に設け、下層吸収体における一対のスリットを長手方向に直線状に延在するように下層吸収体の全長に、一対の上層スリットと重なるように設けることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 本発明の第1の態様は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、トップシート及びバックシートの間に配置された吸収体と、を有する吸収性物品であって、前記吸収体は、トップシート側の上層吸収体と、バックシート側の下層吸収体との2層からなり、前側領域、排尿領域、及び後側領域を有し、前記上層吸収体は、前記上層吸収体の幅方向中心線に対して左右対称に、長手方向に直線状に延在する一対の上層スリットを、排尿領域において、前記上層吸収体の長手方向の全長に対して10%以上65%以下の寸法で有し、前記下層吸収体は、前記下層吸収体の幅方向中心線に対して左右対称に、長手方向に直線状に延在する一対の下層スリットを、前記下層吸収体の長手方向の全長と同じ寸法で、一対の前記上層スリットと厚さ方向で重なるように有し、各前記上層スリットの幅方向の寸法aと、各前記下層スリットの幅方向の寸法bとが、a≦bの関係式で表され、かつ、bはaに対して、100%以上150%以下の寸法である吸収性物品である。
【0009】
(2) 本発明の第2の態様は、(1)に記載の吸収性物品であって、前記上層吸収体、及び前記下層吸収体は、吸収性繊維、及び高吸収性ポリマーを含有し、前記上層吸収体の全体の坪量は、200g/m
2以上500g/m
2以下であり、前記下層吸収体の全体の坪量は、250g/m
2以上600g/m
2以下であることを特徴とするものである。
【0010】
(3) 本発明の第3の態様は、(1)又は(2)に記載の吸収性物品であって、前記上層吸収体に含有される吸収性繊維の坪量は、前記上層吸収体の全体で、120g/m
2以上500g/m
2以下であり、前記下層吸収体に含有される吸収性繊維の坪量は、前記下層吸収体の全体で、150g/m
2以上600g/m
2以下であることを特徴とするものである。
【0011】
(4) 本発明の第4の態様は、(1)から(3)のいずれかに記載の吸収性物品であって、前記上層吸収体に含有される高吸収性ポリマーは、前記上層吸収体の全体で、15質量%以上50質量%以下であり、坪量は、前記上層吸収体の全体で、20g/m
2以上250g/m
2以下であり、前記下層吸収体に含有される高吸収性ポリマーは、前記下層吸収体の全体で、15質量%以上50質量%以下であり、坪量は、前記下層吸収体の全体で、30g/m
2以上300g/m
2以下であることを特徴とするものである。
【0012】
(5) 本発明の第5の態様は、(1)から(4)のいずれかに記載の吸収性物品であって、各前記上層スリットの長手方向の寸法は、30mm以上700mm以下であり、各前記上層スリットの幅方向の寸法aは、3mm以上40mm以下であり、各前記下層スリットの幅方向の寸法bは、3mm以上40mm以下であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の吸収性物品は、吸収体が上層吸収体と下層吸収体の2層からなるものとするとともに、上層吸収体における一対の上層スリットが長手方向に直線状に延在するように排尿領域に設けられ、下層吸収体における一対の下層スリットが長手方向に直線状に延在するように下層吸収体の全長に、一対の上層スリットと重なるように設けられている。このため、吸収体の排尿領域において、体液が迅速に吸収される。また、下層吸収体における一対の下層スリットが長手方向に直線状に延在するように下層吸収体の全長に上層スリットと重なるように設けられていることによって、1回目の排泄による体液の吸収により、吸収体中の高吸収性ポリマーが膨潤した場合においても、体液が吸収体全体の内部にまで拡散・浸透するので、2回目以降の排泄においても、体液の漏れを効果的に防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
<吸収性物品>
本明細書の説明において、吸収性物品1の着用時とは、吸収性物品1の装着時及び装着後の少なくとも一方をいう。吸収性物品1の長手方向とは、吸収性物品1が着用されたときに着用者の前後にわたる方向であり、図中、符号Yで示す方向である。また、吸収性物品1の幅方向とは、長手方向に対して横又は直交する方向であり、図中、符号Xで示す方向である。さらに、身体側表面とは、吸収体23等の各部材の表裏両面のうち、着用時に着用者の肌側に配される面であり、衣類側表面とは、吸収体23等の各部材の表裏両面のうち、着用時に着用者の肌側とは反対側に向けられる面である。体液とは、尿、血液、軟便中の水分等の体内から体外に排出された液体をいう。さらに、吸収性物品1の用途は、特に限定されるものではなく、一般には、幼児又は成人用を問わず、テープ止めタイプの使い捨ておむつ、パンツタイプの使い捨ておむつ、尿取りパッド、軽失禁パッド、生理用品等であってもよい。
【0017】
図1は、本発明の吸収性物品1の平面図であり、
図2は、(a)が
図1におけるA−A断面図、(b)が
図1におけるB−B断面図、(c)が
図1におけるC−C断面図である。吸収性物品1は、身体側表面に配された液透過性のトップシート21と、トップシート21に対向して配置された液不透過性のバックシート22と、トップシート21とバックシート22との間に配置された吸収体23と、を備えている。
【0018】
また、
図1及び
図2に示すように、吸収性物品1には、使用者の排泄した体液の横漏れを防止するため、吸収性物品1の長手方向に沿って、トップシート21上に、立体ギャザー用弾性部材26aを有する一対の立体ギャザー26を備えていてもよい。吸収性物品1の幅方向における立体ギャザー26の外端は、バックシート22に固定され、その内端はトップシート21に固着され、その中央はトップシート21に固定されない自由端となるように、立体ギャザーシート26bが配される。立体ギャザー用弾性部材26aを長手方向に沿って設けることで、立体ギャザー26が起立性を有し、着用者の体型に合わせて変形可能なものとなる。立体ギャザー用弾性部材26aとしては、例えば、ポリウレタン糸、帯状のポリウレタンフィルム、糸状又は帯状の天然ゴム等が使用され、立体ギャザーシート26bとしては、疎水性繊維にて形成された撥水性又は不透液性の不織布、例えば、スパンボンド不織布やメルトブロー不織布、スパンボンド/メルトブロー/スパンボンドを積層した複合不織布等が使用される。
【0019】
[トップシート]
トップシート21は、体液が吸収体23へと移動するような液透過性を備えた基材から形成されればよく、例えば、エアスルー不織布、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布等の不織布、サーマルボンド/スパンボンドを積層した複合不織布、開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム、あるいは、これらを積層した複合シートといった材料から形成される。また、トップシート21には、液透過性を向上させるために、表面にエンボス加工や穿孔加工を施してもよい。これらのエンボス加工や穿孔加工を施すための方法としては、公知の方法を制限なく実施することができる。また、肌への刺激を低減させるため、トップシート21には、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等を含有させてもよい。
【0020】
強度及び加工性の点から、トップシート21の坪量は、18g/m
2以上40g/m
2以下であることが好ましい。トップシート21の形状としては特に制限はないが、漏れがないように体液を吸収体23へと誘導するために必要とされる、吸収体23を覆う形状であればよい。
【0021】
[バックシート]
バックシート22は、吸収体23が保持している体液が衣類を濡らさないような液不透過性を備えた基材を用いて形成されればよく、樹脂フィルムや、樹脂フィルムと不織布とを積層した複合シートといった材料から形成される。複合シートに用いられる不織布としては、製法を特に限定せず、例えば、スパンボンド不織布やメルトブロー不織布、あるいは、スパンボンド/メルトブロー、スパンボンド/メルトブロー/スパンボンドを積層した複合不織布及びこれらの複合材料が挙げられる。また、樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンの複合フィルム等が挙げられる。
【0022】
強度及び加工性の点から、バックシート22の坪量は、15g/m
2以上40g/m
2以下であることが好ましい。また、装着時の蒸れを防止するため、バックシート22には、通気性を持たせることが好ましい。バックシート22に通気性を備えさせるためには、例えば、基材の樹脂フィルムにフィラーを配合したり、バックシート22にエンボス加工を施したりすればよい。なお、フィラーとしては炭酸カルシウムを挙げることができ、その配合方法は、公知の方法を制限なく行うことができる。
【0023】
[吸収体]
図1、
図2、及び
図3に示すとおり、本発明の吸収性物品1において、吸収体23は、トップシート21側の上層吸収体231と、バックシート22側の下層吸収体232の2層の層状吸収体からなり、前側領域23aと、排尿領域23bと、後側領域23cとを有する。
【0024】
吸収体23は、基材としての吸収性繊維と、高吸収性ポリマー(SAP)と、を含有する。上層吸収体231の全体の坪量は、200g/m
2以上500g/m
2以下であり、200g/m
2以上450g/m
2以下であることが好ましい。また、下層吸収体232の全体の坪量は、250g/m
2以上600g/m
2以下であり、270g/m
2以上530g/m
2以下であることが好ましい。これにより、肌触りを損なわずに、より多くの体液が吸収される。そのため、上記坪量である吸収体23全体において、吸収性能と肌触りが損なわれないようにすることができる。
【0025】
(吸収性繊維)
吸収性繊維は、一般に生理用ナプキンや紙おむつ、尿取りパッド等の吸収性物品に使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、フラッフパルプ、コットン、レーヨン、アセテート、ティシュ、吸収紙、親水性不織布等を挙げることができる。これらの中でも、吸収性の観点から、フラッフパルプを使用することが好ましい。フラッフパルプとしては、木材パルプ(例えば、サウザンパインやダグラスファー等の針葉樹晒クラフトパルプ(N−BKP))、合成繊維、樹脂繊維、非木材パルプ等を綿状に解繊したものを挙げることができる。
【0026】
上層吸収体231に、基材としての吸収性繊維にフラッフパルプを用いた場合、吸収繊維の坪量は、上層吸収体231全体で、120g/m
2以上500g/m
2以下であり、150g/m
2以上300g/m
2以下であることが好ましい。また、下層吸収体232に、基材としての吸収性繊維にフラッフパルプを用いた場合、吸収繊維の坪量は、150g/m
2以上600g/m
2以下であり、200g/m
2以上350g/m
2以下であることが好ましい。これにより、肌触りを損なわずに、より多くの体液が吸収されることができる。
【0027】
(高吸収性ポリマー)
吸収体23の高吸収性ポリマーとしては、体液を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に制限はなく、ポリアクリル酸ナトリウム系、ポリアスパラギン酸塩系、(デンプン−アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸−ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン−無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等の材料から形成されたものを使用することができる。これらの中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸ナトリウム系が好ましい。
【0028】
上層吸収体231に含有されるSAPは、球形の高吸収性ポリマーであり、下層吸収体232に含有されるSAPは、不定形の高吸収性ポリマーであることが好ましい。上層吸収体231おいては、比表面積が大きい球形のSAPが体液を迅速に吸収する。そして、下層吸収体232においては、比表面積が小さい不定形のSAPが繰り返し尿を吸収した後でも拡散性を維持し、長時間使用時でも体液を吸収する。そのため、上記SAPを含有する吸収体23は、2回目以降に排出される体液でも、吸収体全体を有効に用いて迅速に多量に吸収することができる。
【0029】
吸収体23において、吸収性繊維及びSAPの形態は、吸収性繊維中にSAP粒子を混合して形成したものであることが好ましい。また、SAP粒子の漏洩防止や吸収体23の形状の安定化の目的から、吸収体23をキャリアシートに包むことが好ましい。キャリアシートの基材としては親水性を有するものであればよく、ティシュ、吸収紙、エアレイド不織布等の親水性不織布を挙げることができる。キャリアシートを複数備える場合は、キャリアシートの基材は同一のものであっても異なるものであってもよい。
【0030】
上層吸収体231に含有されるSAPの坪量は、上層吸収体231全体で、20g/m
2以上250g/m
2以下であり、50g/m
2以上150g/m
2以下であることが好ましい。そして、上層吸収体231に含有されるSAP量は、上層吸収体231全体で、15質量%以上50質量%以下であり、20質量%以上35質量%以下であることが好ましい。一方で、下層吸収体232に含有されるSAPの坪量は、下層吸収体232全体で、30g/m
2以上300g/m
2以下であり、70g/m
2以上180g/m
2以下であることが好ましい。そして、下層吸収体232に含有されるSAP量は、下層吸収体232全体で、15質量%以上50質量%以下であり、30質量%以上50質量%以下であることが好ましい。上記範囲とすることで、上層吸収体231におけるゲルブロッキングを防止し、かつ、下層吸収体232において多量の体液を吸収させることができる。
【0031】
<スリット>
図1から
図3に示すとおり、上層吸収体231は、上層吸収体231の幅方向中心線に対して左右対称に、長手方向に直線状に延在する一対の上層スリット24を、排尿領域23bにおいて、上層吸収体231の長手方向の全長に対して10%以上65%以下の寸法で有し、下層吸収体232は、下層吸収体232の幅方向中心線に対して左右対称に、長手方向に直線状に延在する一対の下層スリット25を、下層吸収体232の長手方向の全長と同じ寸法で、一対の上層スリット24と厚さ方向で重なるように有している。上層吸収体231と下層吸収体232のそれぞれの排尿領域23bを貫通するようにスリットが設けられていることにより、吸収体23の排尿領域23bにおいて、体液が迅速に吸収される。また、2回目以降の排泄においても、下層吸収体232の壁面から吸収体23の全体の内部に体液が浸透して迅速に吸収される。そのため、上記スリットを有する吸収体23は、繰り返し排出される体液でも、安定して優れた吸収速度で吸収し、体液の漏れを効果的に防止することができる。
【0032】
各上層スリット24の幅方向の寸法aと、各下層スリット25の幅方向の寸法bとが、a≦bの関係式で表され、かつ、bはaに対して、100%以上150%以下の寸法である。これにより、繰り返しの吸収時においては、吸収体23の全体のより内部に体液が浸透して迅速に吸収される。そのため、上記スリットを有する吸収体23は、繰り返し排出される体液でも、安定して優れた吸収速度で吸収し、体液の漏れを効果的に防止することができる。
【0033】
各上層スリット24の幅方向の寸法aは、3mm以上40mm以下であり、5mm以上20mm以下であることが好ましい。また、各下層スリット25の幅方向の寸法bは、3mm以上40mm以下であり、7.5mm以上30mm以下であることが好ましい。そして、各上層スリット24の長手方向の寸法は、30mm以上700mm以下であり、50mm以上260mm以下であることが好ましい。これにより、吸収速度と吸収量のバランスを良好にすることができる。
【0034】
<吸収性物品の製造方法>
吸収性物品1の製造方法は、周知の方法を採用することができ、例えば、(A)吸収性繊維を高吸収性ポリマーとともに積繊して吸収体マットを作成し、吸収体23を形成する工程、(B)トップシート21と立体ギャザー26をホットメルト系接着剤で固定・一体化する工程、(C)トップシート21、立体ギャザー26、及びバックシート22の内側にホットメルト系接着剤を塗工する工程、(D)集合ドラムにおいて、吸収体23の上部にトップシート21を、吸収体23の下部にバックシート22を配置し、各構成部材を固定・一体化する工程、(E)吸収性物品1の半製品をカッター装置により製品寸法でカットし、個々の吸収性物品1を切り離す工程、を有する製造方法等を挙げることができる。そして、本発明において吸収性物品1の吸収体23を成形する際には、上層吸収体231の幅方向中心線に対して左右対称に、長手方向に直線状に延在する一対の上層スリット24が排尿領域23bにおいてのみ設けられた上層吸収体231と、一対の上層スリット24と厚さ方向に重なるように、下層吸収体232の長手方向の全長と同じ寸法の一対の下層スリット25が設けられた下層吸収体232とを積層して、吸収体23を形成すればよい。
【実施例】
【0035】
以下、本発明について、実施例を挙げて詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0036】
<実施例1>
(吸収性物品の作製)
パルプシートを粉砕して解繊したフラッフパルプ30gと、球形の高吸収性ポリマー20gとをともに積繊した吸収体マットを準備し、長さ550mm、幅280mmにカットして、表1のように、上層吸収体の幅方向中心線に対して左右対称に、長手方向に直線状に延在する一対の上層スリットが排尿領域においてのみ設けられた上層吸収体を用意した。また、フラッフパルプ13gと、不定形の高吸収性ポリマー10gとをともに積繊した吸収体マットを準備し、長さ550mm、幅200mmにカットして、表1のように、上層スリットと厚さ方向に重なるように、下層吸収体の長手方向の全長と同じ寸法の下層スリットが設けられた下層吸収体を用意した。これらの上層吸収体及び下層吸収体を積層させた吸収体を用いて、長さ650mm、幅350mmの尿取りパッドを作製し、実施例1のサンプルとした。なお、上層吸収体の一対の上層スリットは長さ200mm、幅20mm、下層吸収体の一対の下層スリットは長さ550mm、幅30mmとした。また、トップシートとしては、エアスルー不織布(坪量20g/m
2)を用い、バックシートとしては、通気性ポリエチレンフィルム(坪量35g/m
2)を用いた。得られた尿取りパッドの繰り返し吸収速度、及びウエットバックの評価を以下に従って実施した。得られた結果を表1及び表2に示す。
【0037】
<比較例1から3>
下層吸収体の排尿領域にのみ下層スリットを形成した点(比較例1)、下層吸収体にスリットを形成しなかった点(比較例2)、並びに上層吸収体及び下層吸収体にスリットを形成しなかった点(比較例3)以外は、実施例1と同様にして吸収性物品を作製し、各評価項目について評価を行った。
【0038】
[繰り返し吸収速度]
図3に示すように、尿取りパッドを水平な平滑面に広げた状態で固定し、尿取りパッド上にアクリル板を載せ、30g/cm
2の圧力をかけた状態で、内径30mmの筒より1回あたり150mLの生理食塩水を注水し、液面が尿取りパッドへ吸収されるまでの時間を計測した。次いで3分放置した後、150mLの生理食塩水を再び注水し、同様に時間を測定した。これを7回繰り返した。結果を表1及び
図5に示す。
【0039】
[ウエットバックの評価]
尿取りパッドを水平な平滑面に広げた状態で固定し、尿取りパッドの中央部に150mLの生理食塩水を注入し、10分経過後に尿取りパッドへ濾紙を置き、その上に重り500gを置いて静置させた。尿取りパッド表面より濾紙へ生理食塩水が染み込んだ重量をウエットバック量(g)とした。これを1回吸収後のウエットバックとする。2回吸収後は、150mLの1回目を注入後、10分経過後に2回目の注入(150ml)を行い、さらに10分経過後に同様にウエットバックを測定した。3回以降の吸収でも同様に、1回あたり150mlの注入を10分間隔で繰り返し、規定回数(3回吸収の場合、150ml×3回)を注入した後、10分後のウエットバックを測定した。
【0040】
【表1】
【表2】
【0041】
表1及び
図5から分かるように、吸収体の排尿領域を貫通する一対のスリットを配置した実施例1と、配置していない比較例2及び3とを比較すると、1回目の生理食塩水を注入した場合に、実施例1では、吸収速度をより優れたものとすることができた。吸収体の排尿領域に上層吸収体と下層吸収体を貫通する一対のスリットを設けたことで、生理食塩水が上層吸収体と下層吸収体の両方の壁面から内部に迅速に吸収されたことによる。また、下層吸収体において、下層吸収体の長手方向の全長と同じ寸法の一対の下層スリットを配置した実施例1と、配置していない比較例1とを比較すると、生理食塩水の繰り返しの注入に対して、安定して優れた吸収速度を得ることができた。下層吸収体の長手方向の全長と同じ寸法の一対の下層スリットを下層吸収体に設けたことで、繰り返して生理食塩水が注入された場合でも、吸収体全体の壁面から吸収体の全体の内部に体液が浸透して吸収されたことによる。
【0042】
表2から分かるように、下層吸収体の長手方向の全長と同一の寸法の一対の下層スリットを下層吸収体に配置した実施例1と、配置していない比較例1から3とを比較すると、生理食塩水を繰り返して注入した場合に、体液の漏れをより効果的に防止することができた。下層吸収体の長手方向の全長と同じ寸法の一対の下層スリットを下層吸収体に設けたことで、繰り返して生理食塩水が注入された場合でも、吸収体全体の壁面から吸収体の全体の内部に体液が浸透して吸収されたことによる。