(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ジエン系ゴムと、エチレン、(メタ)アクリル酸エステル及び無水マレイン酸の三元共重合体と、酸変性ポリオレフィンと、カーボンブラック及び白色充填剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の充填剤とを含有し、
前記酸変性ポリオレフィンが、無水マレイン酸で変性された、エチレンとα−オレフィンとの共重合体であり、
前記三元共重合体と前記酸変性ポリオレフィンとの合計含有量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対して、10〜25質量部であるゴム組成物。
前記酸変性ポリオレフィンの含有量に対する前記三元共重合体の含有量の質量比(三元共重合体/酸変性ポリオレフィン)が、0.2〜29である、請求項1に記載のゴム組成物。
前記(メタ)アクリル酸エステルが、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル及びアクリル酸オクチルからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明について以下詳細に説明する。
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレートまたはメタクリレートを表し、(メタ)アクリロイルとは、アクリロイルまたはメタクリロイルを表し、(メタ)アクリルとは、アクリルまたはメタクリルを表す。
また、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、成分が2種以上の物質を含む場合、上記成分の含有量とは、2種以上の物質の合計の含有量を指す。
【0011】
本発明のゴム組成物(本発明の組成物)は、
ジエン系ゴムと、エチレン、(メタ)アクリル酸エステル及び無水マレイン酸の三元共重合体と、酸変性ポリオレフィンと、カーボンブラック及び白色充填剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の充填剤とを含有し、
前記三元共重合体と前記酸変性ポリオレフィンとの合計含有量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対して、3〜30質量部であるゴム組成物である。
【0012】
本発明の組成物はこのような構成をとるため、所望の効果が得られるものと考えられる。その理由は明らかではないが、およそ以下のとおりと推測される。
すなわち、上記所定の三元共重合体は、無水マレイン酸に由来するジカルボン酸無水物基及び(メタ)アクリル酸エステルに由来するエステル結合を有する。上記のジカルボン酸無水物基及びエステル結合は、シリカと相互作用ができる官能基である。
一方、酸変性ポリオレフィンは酸で変性されているため、シリカと相互作用することができる。
このように三元共重合体及び酸変性ポリオレフィンはそれぞれシリカと相互作用ができる官能基を有する。
そして、三元共重合体はエチレン、(メタ)アクリル酸エステル及び無水マレイン酸から形成されることからその主鎖はいわゆるポリオレフィンである。
一方、酸変性ポリオレフィンの主鎖もポリオレフィンである。
このように、三元共重合体と酸変性ポリオレフィンとは主鎖骨格がポリオレフィンで共通することから、相溶しやすいと考えられる。
したがって、本発明のゴム組成物は、上記の官能基と相溶性によって、酸変性ポリオレフィンを単独で使用する場合よりも、更に効果的にシリカを分散させることができると推察される。このことによって本発明は優れた低発熱性を発現させうると本発明者らは考える。
以下、本発明の組成物に含有される各成分について詳述する。
【0013】
[ゴム組成物]
<ジエン系ゴム>
本発明のゴム組成物が含有するジエン系ゴムは、主鎖に二重結合を有するものであれば特に限定されない。ジエン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、芳香族ビニル−共役ジエン共重合ゴム、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム(EPDM)、スチレン−イソプレンゴム、イソプレン−ブタジエンゴム、ニトリルゴム、水添ニトリルゴム等が挙げられる。
ジエン系ゴムはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
なかでも、芳香族ビニル−共役ジエン共重合ゴム、NR、BRが好ましい。
芳香族ビニル−共役ジエン共重合ゴムとしては、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンゴムが挙げられる。なかでもSBRが好ましい。
【0014】
ジエン系ゴムの重量平均分子量は特に限定されないが、加工性の観点から、50,000〜3,000,000であることが好ましく、100,000〜2,000,000がより好ましい。なお、ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は、テトラヒドロフランを溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定値をもとにした標準ポリスチレン換算値である。
【0015】
ジエン系ゴムが芳香族ビニル−共役ジエン共重合ゴム及びBRからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む場合、芳香族ビニル−共役ジエン共重合ゴム及びBRからなる群から選ばれる少なくとも1種の含有量は、低発熱性とウェットグリップ性のバランスに優れるという観点から、ジエン系ゴムに対して、5〜100質量%であることが好ましい。
【0016】
ジエン系ゴムが芳香族ビニル−共役ジエン共重合ゴム及びBRを含む場合、BRに対する芳香族ビニル−共役ジエン共重合ゴムの含有量の割合(芳香族ビニル−共役ジエン共重合ゴム/BR)は、10〜1000質量%であることが好ましい。
【0017】
<三元共重合体>
本発明のゴム組成物に含有される三元共重合体は、エチレン、(メタ)アクリル酸エステル及び無水マレイン酸からなる共重合体である。つまり、エチレン、(メタ)アクリル酸エステル及び無水マレイン酸にそれぞれ由来する繰り返し単位のみで構成される共重合体である。
本発明のゴム組成物は三元共重合体を含有することによって、低発熱性に優れるほか、加工性にも優れる。
【0018】
<エチレン>
三元共重合体中のエチレンに由来する繰り返し単位の含有量は、本発明の効果がより優れ、ジエン系ゴムへの分散に優れる点で、三元共重合体全体に対して、70〜98質量%であることが好ましく、75〜95質量%がより好ましい。
【0019】
<(メタ)アクリル酸エステル>
三元共重合体を形成する(メタ)アクリル酸エステルは、本発明の効果により優れるという観点から、アクリル酸エステルが好ましく、アクリル酸アルキルエステルがより好ましい。
(メタ)アクリル酸エステルのエステル残基は特に制限されない。例えば、炭化水素基が挙げられる。炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基(直鎖状、分岐状、環状を含む)、芳香族炭化水素基、これらの組合せが挙げられる。炭化水素基は不飽和結合を有してもよい。
アクリル酸アルキルエステルのエステルを構成するアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。アルキル基が有する炭素原子の数は1〜8が好ましく、2〜6がより好ましい。
【0020】
(メタ)アクリル酸エステルは、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル及びアクリル酸オクチルからなる群から選ばれる少なくとも1種のアクリル酸アルキルエステルであることが好ましい。
【0021】
三元共重合体中の(メタ)アクリル酸エステルに由来する繰り返し単位の含有量は、本発明の効果がより優れる点で、三元共重合体全体に対して、3〜40質量%であることが好ましく、5〜30質量%がより好ましい。
【0023】
三元共重合体中の無水マレイン酸に由来する繰り返し単位の含有量は、本発明の効果がより優れる点で、三元共重合体全体に対して、0.1〜10質量%であることが好ましく、0.2〜8質量%がより好ましい。
【0024】
・(メタ)アクリル酸エステル及び無水マレイン酸の繰り返し単位の合計量
(メタ)アクリル酸エステル及び無水マレイン酸の繰り返し単位の合計量は、本発明の効果がより優れる点で、三元共重合体全体に対して、3〜50質量%であることが好ましく、5〜40質量%がより好ましい。
【0025】
三元共重合体としては例えば、ランダム共重合体、ブロック重合体が挙げられる。
【0026】
本発明の効果がより優れ、ジエン系ゴムへの分散に優れる点で、無水マレイン酸に由来する繰り返し単位が、三元共重合体の主鎖の一部を構成することが好ましい態様の1つとして挙げられる。無水マレイン酸に由来する繰り返し単位が三元共重合体の主鎖の一部を構成する場合、無水マレイン酸がグラフトされている場合よりも、親水性が低下し、このことによって、上記の場合の三元共重合体は疎水的なジエン系ゴムとの馴染みがよくなるためと推察される。
【0027】
三元共重合体としては例えば、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。
【化1】
【0028】
式(1)中、X、Yはエチレンに由来する繰り返し単位数をそれぞれに表す。なおX、Yは同時に0ではない。
mは(メタ)アクリル酸エステルに由来する繰り返し単位数を表す。
nは無水マレイン酸に由来する繰り返し単位数を表す。
Rは炭化水素基を表す。炭化水素基は特に制限されない。なかでもアルキル基が好ましい。炭化水素基は、上記(メタ)アクリル酸エステルのエステル残基としての炭化水素基と同様である。アルキル基は上記アクリル酸アルキルエステルのエステルを構成するアルキル基と同様である。
なお、X及びYの合計量、m、nはそれぞれ、上述の各繰り返し単位の含有量に対応する数値範囲とすることができる。
【0029】
三元共重合体の融点は、本発明の効果がより優れ、ジエン系ゴムへの分散に優れる点で、50〜130℃であることが好ましく、60〜120℃がより好ましい。
また、三元共重合体の融点が本発明のゴム組成物を製造する際の混合温度(又は混練温度)よりも低い場合、ジエン系ゴムに対する三元共重合体の相溶性も高まるため、好ましい。
本発明において、融点は、ASTM D3418に準じて示差走査熱量測定(DSC)により、10℃/minの昇温速度で測定された。
【0030】
三元共重合体のメルトマスフローレート(MFR)は、本発明の効果がより優れ、加工性に優れる点で、1〜300g/10minであることが好ましく、2〜200g/10minがより好ましい。
本発明において、メルトマスフローレートは、ASTM D1238に準じてキャピラリーレオメーターにより、190℃、荷重2.16kgの条件下で測定された。
【0031】
三元共重合体はその製造方法について特に制限されない。例えば従来公知のものが挙げられる。
また三元共重合体として市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、BONDINE(登録商標)、LOTADER(登録商標)MAHグレード(いずれもアルケマ社製)が挙げられる。BONDINE、LOTADER MAHグレードは上記式(1)で表される化合物に該当する。
三元共重合体はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0032】
三元共重合体の含有量は、本発明の効果がより優れ、加工性に優れる点で、ジエン系ゴム100質量部に対して、3〜28質量部であることが好ましく、4〜25質量部がより好ましい。
【0033】
本発明において、後述する酸変性ポリオレフィンと三元共重合体との合計含有量は、ジエン系ゴム100質量部に対して、3〜30質量部である。上記合計含有量は、本発明の効果がより優れ、加工性に優れる点で、ジエン系ゴム100質量部に対して、4〜30質量部であることが好ましく、5〜25質量部がより好ましい。
【0034】
酸変性ポリオレフィンの含有量に対する三元共重合体の含有量の質量比(三元共重合体/酸変性ポリオレフィン)は、本発明の効果がより優れ、加工性又はコスト面に優れる点で、0.2〜29であることが好ましく、0.3〜20がより好ましい。
【0035】
<酸変性ポリオレフィン>
本発明のゴム組成物が含有する酸変性ポリオレフィンは、ポリオレフィン系樹脂を不飽和カルボン酸で変性した重合体である。ただし、本発明において、酸変性ポリオレフィンは上記三元共重合体を含まない。
【0036】
酸変性ポリオレフィンとしては、例えば、不飽和カルボン酸で変性された、エチレン及びα−オレフィンからなる群から選択される1種の繰り返し単位を有する共重合体が挙げられる。
酸変性ポリオレフィンを構成しうるα−オレフィンは、末端に不飽和結合を有する炭化水素化合物であれば特に制限されない。なお本発明においてα−オレフィンはエチレンを含まない。α−オレフィンは炭素原子及び水素原子のみから構成されることが好ましい態様の1つとして挙げられる。
α−オレフィンは、例えば、プロピレン、1−ブテン及び1−オクテンからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0037】
酸変性ポリオレフィンは、例えば、不飽和カルボン酸によって形成される変性基を有することが好ましい。
変性基としては、例えば、下記式(3)で表される基が挙げられる。
【化2】
式(3)中、*は結合点を表す。
酸変性ポリオレフィンは、無水マレイン酸による変性基を側鎖に有することが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0038】
酸変性ポリオレフィンは、無水マレイン酸で変性された、エチレンとα−オレフィンとの共重合体であることが好ましい。
【0039】
また、酸変性ポリオレフィンは、無水マレイン酸による変性基を側鎖に有し、主鎖としてエチレン及びα−オレフィンからなる群から選択される1種の繰り返し単位を有する共重合体であることが好ましい。
【0040】
酸変性ポリオレフィンとしては例えば下記式(2)で表される化合物が挙げられる。
【化3】
式(2)中、lは1以上であり、2〜10,000が好ましい。
mは1以上であり、2〜10,000が好ましい。
nは1以上であり、2〜10,000が好ましい。
【0041】
(ポリオレフィン)
上記酸変性ポリオレフィンの骨格を構成するポリオレフィンとしては、例えば、
ポリプロピレン、ポリブテン、ポリヘキセン、ポリオクテンなどの単独重合体(ホモポリマー);
プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・1−ヘキセン共重合体、プロピレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体、プロピレン・1−オクテン共重合体、プロピレン・1−デセン共重合体、プロピレン・1,4−ヘキサジエン共重合体、プロピレン・ジシクロペンタジエン共重合体、プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、プロピレン・2、5−ノルボルナジエン共重合体、プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、1−オクテン・エチレン共重合体、1−ブテン・エチレン共重合体、1−ブテン・プロピレン共重合体、1−ブテン・1−ヘキセン共重合体、1−ブテン・4−メチル−1−ペンテン共重合体、1−ブテン・1−オクテン共重合体、1−ブテン・1−デセン共重合体、1−ブテン・1,4−ヘキサジエン共重合体、1−ブテン・ジシクロペンタジエン共重合体、1−ブテン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、1−ブテン・2、5−ノルボルナジエン共重合体、1−ブテン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体などの2成分系の共重合体;
エチレン・プロピレン・1−ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・プロピレン・1−オクテン共重合体、エチレン・プロピレン・1−オクテン共重合体、エチレン・プロピレン・1,4−ヘキサジエン共重合体、エチレン・プロピレン・1,4−ヘキサジエン共重合体、エチレン・プロピレン・ジシクロペンタジエン共重合体、エチレン・プロピレン・ジシクロペンタジエン共重合体、エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、エチレン・プロピレン・2、5−ノルボルナジエン共重合体、エチレン・プロピレン・2、5−ノルボルナジエン共重合体、エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、1−ブテン・エチレン・プロピレン共重合体、1−ブテン・エチレン・1−ヘキセン共重合体、1−ブテン・エチレン・1−オクテン共重合体、1−ブテン・プロピレン・1−オクテン共重合体、1−ブテン・エチレン・1,4−ヘキサジエン共重合体、1−ブテン・プロピレン・1,4−ヘキサジエン共重合体、1−ブテン・エチレン・ジシクロペンタジエン共重合体、1−ブテン・プロピレン・ジシクロペンタジエン共重合体、1−ブテン・エチレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、1−ブテン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、1−ブテン・エチレン・2、5−ノルボルナジエン共重合体、1−ブテン・プロピレン・2、5−ノルボルナジエン共重合体、1−ブテン・エチレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、1−ブテン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体のような多成分系の共重合体;などが挙げられる。
【0042】
これらのうち、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリオクテン、プロピレン・エチレン共重合体、1−ブテン・エチレン共重合体、1−ブテン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・1−ブテン共重合体、1−オクテン・エチレン共重合体を用いることが好ましい。
【0043】
(不飽和カルボン酸)
一方、上述したポリオレフィンを変性する不飽和カルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、アクリル酸、クロトン酸、メタアクリル酸、イタコン酸、または、これらの各酸の酸無水物などが挙げられる。
これらのうち、無水マレイン酸、マレイン酸、アクリル酸を用いることが好ましい。
【0044】
上記酸変性ポリオレフィンは、通常行われる方法、例えば、上記ポリオレフィンに、通常行われる条件、例えば、加熱下での撹拌等により不飽和カルボン酸をグラフト重合させる方法で製造してもよく、また市販品を用いてもよい。
市販品としては、例えば、タフマーMA8510(三井化学社製)、MP0620(三井化学社製)などの無水マレイン酸変性プロピレン・エチレン共重合体;タフマーMH7020(三井化学社製)などの無水マレイン酸変性エチレン・1−ブテン共重合体;アドマーQE060(三井化学社製)などの無水マレイン酸変性ポリプロピレン;等が挙げられる。
【0045】
酸変性ポリオレフィンのメルトマスフローレート(MFR)は、本発明の効果がより優れ、硬度に優れる点で、0.1〜10g/10minであることが好ましく、0.2〜8g/10minがより好ましい。
本発明において、酸変性ポリオレフィンのMFRは、ASTM D1238に準じてキャピラリーレオメーターにより、230℃、荷重2.16kgの条件下で測定された。
【0046】
また、酸変性ポリオレフィンの融点は三元共重合体の融点よりも高いことが好ましい。この場合、本発明のゴム組成物を製造する際に三元共重合体が先に系内で溶融し、組成物が混合しやすくなり、次いで系内の温度が上がって酸変性ポリオレフィンが溶融することによって更に組成物が混合しやすくなり、シリカの分散がより良くなると考えられる。また、三元共重合体が先に溶融することによって酸変性ポリオレフィンの溶融、分散を誘発するのではないかと推察される。
酸変性ポリオレフィンのMFRが三元共重合体のMFRよりも小さい場合も、上記と同様の理由から好ましい。
【0047】
本発明においては、上記酸変性ポリオレフィンの含有量は、本発明の効果により優れるという観点から、ジエン系ゴム100質量部に対して、3〜29質量部であることが好ましく、4〜25質量部がより好ましい。
【0048】
<充填剤>
本発明のゴム組成物に含有される充填剤は、カーボンブラック及び白色充填剤からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
【0049】
(カーボンブラック)
充填剤としてのカーボンブラックは特に制限されない。例えば、ゴム組成物に一般的に使用することができるカーボンブラックと同様のものが挙げられる。具体的には例えば、SAF、ISAF、IISAF、N339、HAF、FEF、GPE、SRF等が挙げられる。なかでも、SAF、ISAF、IISAF、N339、HAF、FEFが好ましい。
【0050】
上記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N
2SA)は、ゴム組成物の加工性により優れるという観点から、30〜250m
2/gであることが好ましく、40〜240m
2/gがより好ましい。
ここで、N
2SAは、カーボンブラック表面への窒素吸着量をJIS K 6217−2:2001「第2部:比表面積の求め方−窒素吸着法−単点法」にしたがって測定した値である。
カーボンブラックはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0051】
(白色充填剤)
充填剤としての白色充填剤は特に制限されない。例えば、ゴム組成物に一般的に使用することができるものと同様のものが挙げられる。具体的には例えば、シリカ、炭酸カルシウム、タルク、マイカ等が挙げられる。なかでも、シリカが好ましい。
【0052】
・シリカ
シリカとしては、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ、コロイダルシリカ等が挙げられる。
【0053】
シリカは、シリカの凝集を抑制する観点から、CTAB吸着比表面積が50〜300m
2/gであることが好ましく、80〜250m
2/gがより好ましい。
ここで、CTAB吸着比表面積は、シリカ表面への臭化n−ヘキサデシルトリメチルアンモニウムの吸着量をJIS K6217−3:2001「第3部:比表面積の求め方−CTAB吸着法」にしたがって測定した値である。
白色充填剤はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0054】
充填剤の含有量は、ジエン系ゴム100質量部に対して、5〜150質量部であることが好ましく、10〜130質量部がより好ましい。
充填剤としてカーボンブラック及びシリカを併用する場合、カーボンブラックの含有量は、ジエン系ゴム100質量部に対して、1〜100質量部であることが好ましく、2〜80質量部がより好ましい。また、この場合、シリカの含有量は、ジエン系ゴム100質量部に対して、5〜150質量部であることが好ましく、10〜140質量部がより好ましい。
【0055】
(その他の成分)
本発明のゴム組成物は、目的、効果を損なわない範囲で必要に応じてその他の成分(添加剤)を更に含有することができる。添加剤としては、例えば、ジエン系ゴム、三元共重合体及び酸変性ポリオレフィン以外の重合体;シランカップリング剤、加硫剤、架橋剤、加硫促進剤、酸化亜鉛、ステアリン酸のような加硫促進助剤、加硫遅延剤、オイル、老化防止剤、可塑剤などのゴム組成物に一般的に配合されうるものが挙げられる。添加剤の含有量は適宜選択することができる。
【0056】
・シランカップリング剤
本発明のゴム組成物は、本発明の効果により優れるという観点から、更にシランカップリング剤を含有することが好ましい。
シランカップリング剤は特に制限されない。なかでも硫黄原子を有するシランカップリング剤(含硫黄シランカップリング剤)が好ましい態様の1つとして挙げられる。
含硫黄シランカップリング剤は、硫黄原子を有するシランカップリング剤であれば特に制限されない。例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドのようなポリスルフィド系シランカップリング剤;γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−[エトキシビス(3,6,9,12,15−ペンタオキサオクタコサン−1−イルオキシ)シリル]−1−プロパンチオール(エボニック・デグサ社製Si363)のようなメルカプト系シランカップリング剤;3−オクタノイルチオプロピルトリエトキシシランのようなチオカルボキシレート系シランカップリング剤;3−チオシアネートプロピルトリエトキシシランのようなチオシアネート系シランカップリング剤が挙げられる。
なかでも、ポリスルフィド系シランカップリング剤が好ましく、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドがより好ましい。
シランカップリング剤はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
シランカップリング剤として、上記シランカップリング剤の1種又は2種以上を予め縮合したものを使用してもよい。シランカップリング剤を縮合する方法は特に制限されない。例えば従来公知のものが挙げられる。
【0057】
本発明において、シランカップリング剤の含有量は、本発明の効果がより優れる点で、ジエン系ゴム100質量部に対して、1〜30質量部であることが好ましく、1〜25質量部であることがより好ましい。
【0058】
本発明のゴム組成物の製造方法としては、例えば、上記成分を混合する方法が挙げられる。
混合する際の温度(混合温度)は例えば10〜180℃とすることができ、50〜180℃が好ましく、100〜180℃がより好ましい。
上記成分に必要に応じて使用することができる添加剤を更に加えてもよい。
【0059】
また、加硫剤、加硫促進剤等のような加硫系成分以外の成分を予め混合し、これに加硫系成分を加えてもよい。このとき、予め混合する際及び加硫系成分を加えた後混合する際のうちの少なくともいずれか又は両方における混合温度は、上記の混合温度と同様とすることができる。
【0060】
上記成分を混合する際に使用される装置は特に制限されない。例えば従来公知のものが挙げられる。
本明細書において混合は混練を含むものとする。
【0061】
本発明のゴム組成物は例えば従来公知の加硫または架橋条件で加硫または架橋することができる。
【0062】
本発明のゴム組成物は、例えば、空気入りタイヤ用として使用することができる。
【0063】
[空気入りタイヤ]
次に、本発明の空気入りタイヤについて説明する。
本発明の空気入りタイヤは、上述した本発明のゴム組成物を用いて形成される空気入りタイヤである。
本発明の空気入りタイヤに使用されるゴム組成物は本発明のゴム組成物であれば特に制限されない。
【0064】
ゴム組成物を空気入りタイヤを構成する構造部材に使用することができる。
構造部材としては、例えば、タイヤトレッド部、サイドウォール部、ビード部、カーカス部が挙げられる。
【0065】
なかでも、タイヤトレッド部を本発明のゴム組成物で形成することが好ましく、キャップトレッド及びアンダートレッドからなる群から選ばれる少なくとも1種を本発明のゴム組成物で形成することがより好ましく、キャップトレッドがさらに好ましい。
【0066】
図1に、本発明の空気入りタイヤの実施態様の一例を表すタイヤの部分断面概略図を示す。なお本発明は添付の図面に限定されない。
図1において、空気入りタイヤは、ビード部1、サイドウォール部2及びタイヤトレッド部3を有する。左右一対のビード部1間においては、繊維コードが埋設されたカーカス層4が装架されており、このカーカス層4の端部はビードコア5およびビードフィラー6の廻りにタイヤ内側から外側に折り返されて巻き上げられている。タイヤトレッド部3においては、カーカス層4の外側に、ベルト層7がタイヤ1周に亘って配置されている。ビード部1においては、リム(図示せず。)に接する部分にリムクッション8が配置されている。
【0067】
本発明の空気入りタイヤは、例えば、従来公知の方法に従って製造することができる。また、タイヤに充填する気体としては、例えば、通常のまたは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスを用いることができる。
【実施例】
【0068】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし本発明はこれらに限定されない。
<ゴム組成物の製造>
下記の第1表に示す配合において、加硫系(硫黄、加硫促進剤)を除く各成分を同表に示す量(質量部)で用いて、これらを1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーで170℃の条件下で5分間混練した後、得られた混合物をミキサー外に放出させて室温冷却した。続いて、上記混合物に上記加硫系を同表に示す量(質量部)で加え、これらをオープンロールで140℃の条件下で混練し、ゴム組成物を製造した。
なお、ジエン系ゴム1は油展品である。第1表の各実施例においてジエン系ゴム1の量を2つ記載した。上段の値はジエン系ゴム1の油展品としての使用量であり、下段の値はジエン系ゴム1中の正味のSBRの量である。
【0069】
<加硫ゴム試験片の調製>
上記のとおり製造されたゴム組成物を所定の金型中で160℃で20分間プレス加硫して加硫ゴム試験片を調製した。
【0070】
<評価>
上記のとおり製造された加硫ゴム試験片について以下に示す試験法で物性を測定した。結果を各表に示す。
各例の評価の結果を、第1表では比較例1の結果を100とする指数で表示した。
【0071】
・硬度(20℃)(加硫物性)
上記のとおり製造された加硫ゴム試験片について、JIS K6253−3:2012に従って、20℃で硬度(タイプAデュロメータ硬さ)を測定した。
【0072】
・tanδ(60℃)
上記のとおり製造された加硫ゴム試験片について、粘弾性スペクトロメーター(岩本製作所社製)を用いて、伸張変形歪率10±2%、振動数20Hz、温度60℃の条件で、損失正接tanδ(60℃)を測定した。
tanδ(60℃)の指数が小さいほど、低発熱性に優れることを意味する。
【0073】
【表1】
【0074】
上記の各表に示した各成分の詳細は以下のとおりである。
・ジエン系ゴム1:スチレンブタジエンゴム、タフデンE581(油展品)、旭化成ケミカルズ社製
・ジエン系ゴム2:ブタジエンゴム(BR)、日本ゼオン社製 Nipol BR 1220
【0075】
・酸変性ポリオレフィン1:無水マレイン酸変性エチレン・1−ブテン共重合体(タフマーMH7020、三井化学社製)。無水マレイン酸による変性基を側鎖に有する。MFR1.5g/10min.
・酸変性ポリオレフィン2:無水マレイン酸変性プロピレン・エチレン共重合体(タフマーMP0620、三井化学社製)。無水マレイン酸による変性基を側鎖に有する。MFR0.3g/10min.
【0076】
・三元共重合体1(E−EA−MAH):エチレン−アクリル酸エチルエステル−無水マレイン酸の三元共重合体。三元共重合体中のアクリル酸エチルエステルに由来する繰り返し単位の含有量13質量%、無水マレイン酸に由来する繰り返し単位の含有量2.8質量%。無水マレイン酸に由来する繰り返し単位が主鎖の一部を構成する。融点95℃。MFR3g/min。商品名BONDINE TX8030、アルケマ社製。
【0077】
・三元共重合体2(E−BA−MAH):エチレン−アクリル酸ブチルエステル−無水マレイン酸の三元共重合体。三元共重合体中のアクリル酸ブチルエステルに由来する繰り返し単位の含有量6.5質量%、無水マレイン酸に由来する繰り返し単位の含有量3.6質量%。無水マレイン酸に由来する繰り返し単位が主鎖の一部を構成する。融点105℃。MFR9.5g/min。商品名LOTADER4210、アルケマ社製。
・三元共重合体3(E−MA−MAH):エチレン−アクリル酸メチルエステル−無水マレイン酸の三元共重合体。三元共重合体中のアクリル酸メチルエステルに由来する繰り返し単位の含有量19質量%、無水マレイン酸に由来する繰り返し単位の含有量0.3質量%。無水マレイン酸に由来する繰り返し単位が主鎖の一部を構成する。融点80℃。MFR8g/min。商品名LOTADER4503、アルケマ社製。
【0078】
・シランカップリング剤:ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド。スルフィド系シランカップリング剤、エボニック社製 Si69
【0079】
・シリカ:Zeosil(登録商標)1165MP、Solvay S.A.社製。CTAB吸着比表面積160m
2/g
・カーボンブラック:キャボットジャパン社製ショウブラックN339、N
2SA81m
2/g、HAF
・酸化亜鉛:正同化学社製亜鉛華3号
・ステアリン酸:日本油脂社製ステアリン酸
・老化防止剤:住友化学社製アンチゲン6C(S−13)
・オイル:昭和シェル石油社製エクストラクト4号S
・硫黄:軽井沢精錬所社製油処理硫黄
・加硫促進剤(CZ):N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、三新化学社製サンセラーCM−PO
・加硫促進剤(DPG):ジフェニルグアニジン、三新化学社製サンセラーD−G
【0080】
第1表に示すように、比較例1を基準として、更に酸変性ポリオレフィン1を含有する比較例2、3は、低発熱性の効果が高くなかった。
【0081】
これに対して、第1表において、本発明の組成物は低発熱性に優れた。
実施例5〜7と実施例1〜4とを比較すると、酸変性ポリオレフィンと三元共重合体との合計含有量が10質量部を超える実施例5〜7は、上記合計含有量が10質量部である実施例1〜4よりも、低発熱性により優れ、硬度が高くなった。
実施例1、6、7を比較すると、酸変性ポリオレフィンの含有量が多くなるほど、低発熱性により優れ、硬度が高くなった。