(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0018】
図1は、第1実施形態における変位測定装置100を示す図である。本例の変位測定装置100は、測定対象110のZ方向における変位zを測定する。
図1(a)は、測定対象110に変位が生じていない初期状態を示す図である。これに対して、
図1(b)は、測定対象110にZ方向の変位zが生じた状態を示す図である。
【0019】
本例において、X方向とY方向とは互いに直交する方向であり、Z方向はX‐Y平面に垂直な方向である。X方向、Y方向およびZ方向は、いわゆる右手系を成す。Z方向は、必ずしも地面に垂直な方向ではない。本例においては、説明を簡単にすることを目的として、測定対象110が変位する方向をZ方向として記載する。ただし、測定対象110が変位する方向は、X方向であってよく、Y方向であってもよい。これに対応して、変位測定装置100はX方向またはY方向における測定対象110の変位xまたは変位yを測定してもよい。
【0020】
図1(a)を用いて、本例の変位測定装置100の構成を説明する。変位測定装置100は、光源部10と、光走査部20と、反射部30と、受光部40と、制御部50とを備える。本例において、光源部10、光走査部20、受光部40および制御部50は、測定対象110から離間して設けられる。ただし、反射部30は、測定対象上に設けられる。反射部30は、測定対象110に直接接して設けられてよい。本例では、反射部30の第1の反射面32が少なくとも測定対象110に直接接して設けられる。本例では、測定対象110に受光部40を設けない。それゆえ、対象物が高温である場合、または、高電圧で帯電している場合であっても、受光部40が動作しないという問題を解消することができる。
【0021】
光走査部20から測定対象110までの最短直線距離を距離dとする。距離dは、測定対象110の変位zに対して十分に大きい値である。一例であるが、距離dは30[m]から50[m]である場合に、変位zは数[mm]から数[cm]であってよい。なお、光走査部20から測定対象110上に光が投影される位置は点として扱うことができる。当該点を射影点Pで示す。なお、測定対象110は、変位測定装置100の構成要素ではない。これを表すために、
図1において測定対象110を点線で示す。
【0022】
光源部10は、光源12を有する。本例の光源部10は、1つの光源12を有する。光源12は、レーザー光源であってよい。本例の光源12は、光走査部20に対して位置が固定される。
【0023】
光走査部20は、光走査装置22を有する。本例の光走査部20は、1つの光走査装置22を有する。本例の光走査装置22は、いわゆる光MEMSスキャナである。光走査装置22は、反射面25と、回転軸27とを有する。反射面25は所定の角度範囲において予め定められた回転軸27において回転可能である。例えば、反射面25は、X‐Y平面に対して±θの角度範囲内で回転軸27において回転する。このことは、反射面25が回転軸27において振動すると表現してもよい。
【0024】
反射面25は、光源12から照射された光を反射する。これにより、光源12から光走査装置22に入射する光は、測定対象110へと反射される。反射面25の回転により、測定対象110へと反射する光は、測定対象110上において走査される。
【0025】
測定対象110上には、反射部30が固定して設けられる。それゆえ、測定対象110がZ方向に変位すると、反射部30も測定対象110と共にZ方向に同じ長さだけ変位する。反射部30は、光走査部20から反射された光をさらに反射する。これにより、反射部30は、反射部30へ入射する光を受光部40へ反射する。
【0026】
反射部30は、2つ以上の非平行な反射面を有してよい。2つ以上の平行な反射面を用いる場合には、光源部10、光走査部20および受光部40が2組以上必要になる。これに対して本例では、2つ以上の非平行な反射面を用いることにより、1組の光源部10、光走査部20および受光部40により変位測定が可能となる。それゆえ、変位測定装置100の部品点数を減らすことができるので、2つ以上の平行な反射面を用いる場合と比較して、変位測定装置100のコストを削減することができる。
【0027】
本例の反射部30は、X‐Z平面に平行な第1の反射面32と、X‐Y平面に平行な第2の反射面34とを有する。第1の反射面32は、第2の反射面34に直交して配置される。第1の反射面32と第2の反射面34とは、Y‐Z平面においてL字型を成す。これにより、光走査部20から第1の反射面32への入射方向と平行に、第2の反射面34から受光部40へ反射光が出射される。
【0028】
本例の受光部40は、光走査部20に近接するが光走査部20とは異なる位置に配置される。例えば、光走査部20の筐体上において、光走査装置22からの光の出射方向と略同じ方向を向いて受光素子42を配置する。これにより、光走査装置22から出射された後に反射部30において再帰反射されて受光素子42に入射する。
【0029】
本例では、光走査部20からの入射光を反射部30において再帰反射させるので、1組の光源部10、光走査部20および受光部40を近接配してコンパクトな配置とすることができる。また、2組ではなく1組の光源部10、光走査部20および受光部40からの情報をデータ処理すればよいので、2組の場合と比較してデータ処理が簡単になるという効果を有する。
【0030】
受光部40は、互いに接続された受光素子42と電流電圧変換部43とを有する。本例の受光部40は、1つの受光素子42と1つの電流電圧変換部43とを有する。受光素子42は、フォトダイオードであってよい。受光素子42は、反射部30から反射された光を受光する。
【0031】
受光素子42は、入射光の光量に正比例して電流を生成する。つまり、入射光の光量が増加すると受光素子42が生成する電流が増加し、入射光の光量が減少すると受光素子42が生成する電流が減少する。受光素子42が生成する電流値は、制御部50によりモニタリングされてよい。受光素子42が生成する電流値がピークとなるタイミングは、反射部30から再帰反射した光が受光素子42に入射しているタイミングである。
【0032】
測定対象110に変位が生じていない場合、光走査装置22の所定の走査角θ
aにおいて、受光素子42が電流値のピークを示すとする。この場合、光走査部20のY方向への射影点Pから第1の反射面32までの距離は、d・tanθ
aとなる。受光素子42で生成された電流は、電流電圧変換部43において電圧信号に変換される。電圧信号は制御部50へ出力される。
【0033】
制御部50は、変位算出部52と駆動部54とを有する。変位算出部52は、光走査装置22の走査角θの情報と電流電圧変換部43からの電圧信号とをリアルタイムに得てよい。これにより、変位算出部52は、測定対象110上における反射部30の位置を特定することができる。なお、本例において、変位算出部52が特定する反射部30の位置は、正確な絶対位置ではなくてよい。変位算出部52が特定する反射部30の位置は、測定対象110の変位の前後における相対的位置を特定できればよい。本例において、測定対象110が初期位置にある場合、反射面25は走査角θ
aを有するとする。
【0034】
駆動部54は、光走査装置22を駆動する。駆動部54は、光走査部20に交流電源を印加する。これにより、光走査装置22の反射面25は、走査角±θの範囲で回転する。駆動部54は、交流電源の電圧振幅を増加することにより反射面25の走査角θの変動範囲を増加させることができる。また、駆動部54は、電圧振幅を減少させることにより反射面25の走査角θの変動範囲を減少させることもできる。
【0035】
次に、
図1(b)を用いて、測定対象110において生じたZ方向の変位zの算出方法を説明する。変位算出部52は、受光部40が受光する光に基づいて測定対象110の変位zを算出する。例えば、測定対象110に変位が生じていない初期状態においては、走査角θ
aで受光素子42の電流値がピークを示す。次に、測定対象110にZ方向の変位zが生じた場合に、走査角θ
bで受光素子42の電流値がピークを示すとする。ただし、θ
bはθ
aよりも大きい角度である。この場合、測定対象110の変位zはz=d・(tanθ
b−tanθ
a)と表すことができる。このように、受光素子42が電流ピークを示す走査角θを特定し、この走査角θを用いて変位を算出することができる。
【0036】
なお、測定対象110は、X方向およびY方向において振動することもある。X方向またはY方向における測定対象110の振動は、測定対象110におけるZ方向の変位zの測定に対してノイズとなる場合もある。そこで、レーザードップラー振動計により測定対象110における振動の有無を検知するべく、変位測定装置100はレーザードップラー振動計を有してもよい。レーザードップラー振動計は、ドップラー効果に基づいて、レーザーを照射したポイントにおける振動の速度および変位を検出することができる。レーザードップラー振動計の測定結果は、変位算出部52に出力されてよい。変位算出部52は測定対象110に振動が生じていた場合のZ方向の変位zを無視してよい。これにより、変位zの算出結果の精度をさらに向上させることができる。
【0037】
図2は、光走査装置22の上面図である。本例の光走査装置22は、櫛歯型の光MEMSスキャナである。光走査装置22は、SOI基板をエッチングすることにより形成することができる。光走査装置22は、反射面25および回転軸27に加えて、固定部26、駆動部28および櫛歯29を有する。
【0038】
反射面25は、SOI基板の表面シリコン層(活性層)上に厚さ100nmのアルミニウム等の金属層をさらに有してよい。当該金属層が、鏡として機能する。X方向において反射面25を挟んで1組の回転軸27が設けられる。回転軸27は一方の端部が反射面25に固定され、他方の端部が固定部26に固定される。反射面25の±Y方向の端部には複数の櫛歯29が設けられる。反射面25と、回転軸27と反射面25側の櫛歯29とは、SOI基板の表面シリコン層(活性層)のエッチングにより連続して一体形成されている。
【0039】
Y方向において反射面25を挟んで1組の駆動部28が設けられる。なお、駆動部28および固定部26は、SOI基板の裏面シリコン層(基板層)を介して連続して一体形成されている。駆動部28には複数の櫛歯29が設けられる。駆動部28と、駆動部28側の櫛歯29とは、SOI基板の表面シリコン層(活性層)のエッチングにより連続して一体形成されている。駆動部28側の櫛歯29と反射面25側の櫛歯29とは、噛み合うように配置される。ただし、両者は互いに接触しないように配置される。これにより、噛み合う櫛歯29同士が静電容量を形成することができる。
【0040】
固定部26の±X方向の端部には電極パッドが設けられる。固定部26の電極パッドには所定の直流電圧が印加されてよい。駆動部28の±X方向の端部には電極パッドが設けられる。駆動部28の電極パッドには所定の交流電圧が印加されてよい。これにより、反射面25側の櫛歯29と駆動部28側の櫛歯29との間の静電気力により、反射面25は所定の角度範囲で回転軸27に対して回転することができる。
図2においては、電極パッドを固定部26および駆動部28端部の四角枠で示す。
【0041】
図3は、走査角θに基づいて測定対象110の変位zを算出する原理を説明する図である。
図3(a)は走査角θの時間変化を示す図であり、
図3(b)は、受光素子42における光電変換電流Iの時間変化を示す図である。
図3(a)の縦軸は走査角θ[度]であり、
図3(b)の縦軸は光電変換電流I[a.u.]である。
図3(a)および(b)において、横軸はともに時間を示し、両者において共通する。
【0042】
本例の走査角θの周期は1[msec]である。つまり、本例の反射面25は60[kHz]で振動する。測定対象110は例えば建物等であるので、反射面25は測定対象110と比較して十分に高い振動周波数を有すると見なしてよい。それゆえ、変位測定装置100は、測定対象110のZ方向の振動に影響を受けない。したがって、本例の変位測定装置100は、測定対象110のZ方向の変位に加えて、測定対象110のZ方向の振動を測定することもできる。
【0043】
図3(a)における走査角θの時間変化に対応して、
図3(b)における光電変換電流Iが周期的にピークを示す。本例では、走査角θ=3.2[度]において、光電変換電流Iがt1、t2、t3およびt4でピークを示す。t1、t2、t3およびt4では、光源部10からの光が最も多く受光部40に再帰反射されている。
【0044】
変位算出部52は、走査角θの時間変化の情報を光走査装置22から得ることができる。本例の変位算出部52は、光走査装置22における反射面25の初期走査角度θ
iと櫛歯29の静電容量の変化とから走査角θを算出する。これにより、変位算出部52は、走査角θの時間変化の情報をリアルタイムに知ることができる。なお、光走査装置22において、反射面25の櫛歯29と駆動部28の櫛歯29とにより形成される静電容量は、反射面25の走査角θに応じて増減する。加えて、変位算出部52は、光電変換電流Iがピークを示す時間情報をリアルタイムに得ることができる。これにより、変位算出部52は、光電変換電流Iがピークを示す走査角θを特定することができる。したがって、本例では、ハーフミラーまたはスプリッタ―等の光学素子を用いずに簡易な構成で安価に変位測定装置100を構成することができる。
【0045】
変位算出部52は、光電変換電流Iがピークを示す走査角θを1回の電流ピーク測定結果から特定してよい。これに代えて、変位算出部52は、光電変換電流Iがピークを示す走査角θを複数回の電流ピーク測定結果から特定してもよい。
【0046】
本例の変位算出部52は、光電変換電流Iがピークを示す走査角θを100回の電流ピーク測定結果から特定する。具体的には、100回の電流ピークに対応する各走査角θを平均してよい。これにより、測定時のノイズが均されるので、測定対象110のZ方向の変位zの精度をさらに向上させることができる。なお、本例では、2回の電流ピーク測定に1[msec]を要するので、100回の電流ピーク測定には50[msec]を要する。100回の電流ピーク測定を1[sec]以下で迅速に行うことができる。
【0047】
図4は、反射部30の他の例を示す図である。本例の反射部30は、コーナーキューブである。
図4は、2つ以上の非平行な反射面である第1の反射面32および第2の反射面34を有するコーナーキューブの断面図である。本例においても、測定対象110に受光部40を設けないので、対象物が高温である場合、または、高電圧で帯電している場合であっても、受光部40が動作しないという問題を解消することができる。
【0048】
図5は、第2実施形態における変位測定装置200を示す図である。本例の反射部30は、再帰反射を実現する2つ以上の非平行な反射面ではなく、1つの反射面としての第1の反射面32を有する。これに起因して本例においては、X‐Y‐Zの配置が第1実施形態と異なる点に注意されたい。本例のZ方向は光走査部20から測定対象110に向かう方向である。しかしながら、Z方向の変位を測定する点は第1実施形態と同じである。
【0049】
本例の光源部10は、第1の光源12と、第2の光源14とを有する。また、光走査部20は、第1の光走査装置22と第2の光走査装置24とを有する。さらに、受光部40は、第1の受光素子42および電流電圧変換部43と、第2の受光素子44および電流電圧変換部45とを有する。当該構成により、本例の変位算出部52は、第1の受光素子42が受光する光と第2の受光素子44が受光する光とに基づいて、第1方向としてのZ方向における測定対象110の変位zと、第2方向としてのY方向における測定対象110の変位yとを算出する。
【0050】
第1の光源12から照射された光は、第1の光走査装置22において第1の反射面32へ反射される。そして、受光素子42は、第1の反射面32で反射された光を受光する。変位算出部52が、光電変換電流Iがピークを示すタイミングから光走査装置22における反射面25の走査角θ
1を特定する点は第1実施形態と同じである。ただし、本例では変位zの算出方法が異なる。
【0051】
変位zが無い場合における、光電変換電流Iがピークを示す走査角がθ
1aであるとする。また、変位zが生じた場合における、光電変換電流Iがピークを示す走査角がθ
1bであるとする。なお、θ
1aはθ
1bよりも大きい角度である。この場合、変位zは、z=d・(1/tanθ
1a−1/tanθ
1b)により算出する。
【0052】
第2の光源14は、反射部30に対する角度βが反射部30に対する第1の光源12の角度αとは異なる位置に設けられる。本例において、反射部30に対する角度とは、Z方向と光源からの入射光との成す角度を意味する。第2の光源14とZ方向とが成す角度βは、第1の光源12とZ方向とが成す角度αよりも十分に小さい角度であってよい。例えば、角度βは0[度]より大きく数[度]以下であってよい。角度βは0[度]に近いほど好ましい。また、本例において光走査装置24の走査角θ
2は、光走査装置22の走査角θ
1よりも小さい角度である。
【0053】
第2の光走査装置24は、第2の光源14から照射された光を第1の反射面32へ反射する。本例では、光走査装置24から反射される光は、X‐Y平面に対してほぼ垂直に入射する。第2の受光素子44は、第1の反射面32に対して対向して設けられる。本例では、第2の受光素子44と第1の反射面32とは、変位を測定するZ方向において対向して設けられる。第2の受光素子44は、第1の反射面32で反射された光を受光する。本例では、第2の光源14、第2の光走査装置24および第2の受光素子44を用いて、第1の反射面32のX方向およびY方向におけるずれを検知することができる。例えば、X方向における測定対象110の変位x、および、Y方向における測定対象110の変位yを検知することができる。
【0054】
Y方向における測定対象110の変位yを変位算出部52に出力することにより、変位算出部52は、測定対象110に変位yが生じていた場合のZ方向の変位zを無視してよい。例えば、変位yが測定されたタイミングにおける第1の光走査装置22の走査角θ
1は変位zの算出に用いないとしてよい。これにより、変位zの算出結果の精度をさらに向上させることができる。なお、変位yが生じたタイミングをより正確に把握するべく、第2の光走査装置24における走査角θ
2の周波数は、第1の光走査装置22における走査角θ
1の周波数よりも高くてよい。
【0055】
図6は、第3実施形態における変位測定装置300を示す図である。本例は、第2の光源14および第2の受光素子44の配置および構成が第2実施形態と異なる。本例の第2光源14は、半透過膜16を介して第1の反射面32に入射する。これにより、第2の光源14から入射する光は、X‐Y平面に対して完全に垂直に入射させることができる。
【0056】
第2の受光素子44は、第1の反射面32に対して対向して設けられる。本例において第2の受光素子44は、複数のフォトダイオードが平面状に配置されたフォトダイオードアレイである。フォトダイオードアレイにより構成される受光面がX‐Y平面に対して平行に設けられることにより、第2の受光素子44と第1の反射面32とが対向してよい。本例のフォトダイオードアレイは、電流電圧変換部45を内蔵してよい。
【0057】
本例のフォトダイオードアレイは、X‐Y平面に5×5個のフォトダイオードを有する。なお、5×5個は説明を簡単にするための例示であって、フォトダイオードの数は5×5個以上のフォトダイオードを有してよい。そして、X方向およびY方向の変位が無い場合における第1の反射面32からの入射光が、3行3列目のフォトダイオードに入射するよう予め設定しておいてよい。すなわち、X方向およびY方向の変位が無い場合、3行3列目のフォトダイオードが光電変換電流Iのピークを示す。
【0058】
これに対して、測定対象110がX方向に変位すると、フォトダイオードアレイのX方向の異なる位置におけるフォトダイオードが、最大の光電変換電流Iを示す。また同様に、測定対象110がY方向に変位すると、フォトダイオードアレイのY方向の異なる位置におけるフォトダイオードが、最大の光電変換電流Iを示す。このように、最大の光電変換電流を示すフォトダイオードの位置変化を検出することにより、第1の反射面32のX方向およびY方向における変位を検知することができる。
【0059】
なお、隣接する複数のフォトダイオードの電流の比を用いて、X方向およびY方向における変位を検知してもよい。例えば、X方向に隣接する2つのフォトダイオード、すなわち、D
X,Yとした場合のD
3,3:D
4,3における光電変換電流Iの比が、3:7である場合、D
3,3およびD
4,3間の距離を7:3に分割する位置に第1の反射面32からの反射光が照射されているとしてよい。Y方向においても同様にして第1の反射面32からの反射光の位置を特定してよい。
【0060】
図7は、異なる最大強度の波長を説明する図である。本例において、第1の光源12における最大強度の波長λ
1は、第2の光源14における最大強度の波長λ
2と異なる。これにより、第1の光源12が第2の受光素子44に及ぼす影響、および、第2の光源14が第1の受光素子42に及ぼす影響を低減することができる。したがって、同一の最大強度の波長を用いる場合と比較して、変位測定の精度を向上させることができる。
【0061】
図8は、第4実施形態における変位測定装置400を示す図である。本例では、測定対象110上に温度測定部60を設けて、測定対象110の温度を測定する。なお、本例の温度測定部60は接触型であるが、温度測定部60は非接触型であってもよい。すなわち、温度測定部60は、測定対象110から離れて測定対象110の温度を測定してもよい。
【0062】
測定対象110が高温になると、反射部30が熱膨張により変形することが想定される。反射部30の変形により、受光素子42へ入射する光の角度が変化し得る。そこで、変位算出部52は、測定対象110の温度に応じて、測定対象110の変位を補正してよい。本例は、係る点において第1実施形態と異なる。なお、測定対象110の温度を測定して測定対象110の変位を補正することを、第2実施形態および第2実施形態に適用してもよい。
【0063】
図9は、測定対象110の温度に応じて変位zを補正する例を説明する図である。
図9(a)は、反射部30が熱膨張していない状態を示す図である。
図9(b)は、反射部30が熱膨張した場合の反射光の変化を示す図である。
図9(c)は、反射部30が熱膨張した場合に、走査角θを補正することを説明する図である。
【0064】
図9(a)は、
図1から
図3の説明に対応しているので、説明を省略する。
図9(b)に示すように、測定対象110の温度がT
0からT
0+ΔTに変化することにより、反射部30が熱膨張する。このとき、第1の反射面32および第2の反射面34における反射角が
図9(a)と比較して変化する。これにより、走査角θ
aのタイミングでは光電変換電流Iがピークを示さなくなる。なお、熱膨張前における第1の反射面32、第2の反射面34および反射光を点線で示し、熱膨張後におけるこれらを実線で示す。
【0065】
熱膨張後は、
図9(c)に示すように走査角θ
cのタイミングで光電変換電流Iがピークを示すとする。なお、本例においてθ
cはθ
aよりも小さい角度である。この場合、本来ならば、長さd・tanθ
aとすべきところ、反射部30の熱膨張に起因してd・tanθ
a(<d・tanθ
c)と算出されるという問題が生じる。
【0066】
そこで、変位算出部52は、測定対象110の温度がΔTだけ上昇した場合に、光電変換電流Iがピークを示す走査角θがθ
aからθ
cに変化することを予め補正テーブルとして有してよい。変位算出部52は、反射部30の温度変化に対応する走査角θを予め補正テーブルとして有することにより、測定対象110の温度に応じて、測定対象110の変位を補正することができる。これにより、反射部30が熱膨張および熱収縮したとしても、変位測定を正確に行うことができる。なお、熱膨張時の変形量等および変形の形状は、反射部30の形状および材料により異なるので、補正テーブルは、個々の反射部30に応じて設けられてよい。
【0067】
図10は、1つの光源12が異なる複数のピーク波長を有する例を示す図である。本例のピーク波長とは、発光強度が極大値を示す波長を意味する。なお、1つの光源14が異なる複数のピーク波長を有してもよい。変位測定装置100、200、300および400は、屋外で使用される場合もある。例えば、使用環境において、夕日により強い赤色が存在している場合、赤色を発する光源12は使用できない。また、使用環境において、ライト等の外光により強い青色が存在している場合、青色を発する光源12は使用できない。
【0068】
本例の光源12は、λ
1、λ
2およびλ
3のピーク波長を有する。例えば、ピーク波長λ
1は380nm以上495nm未満であり、ピーク波長λ
2は495nm以上590nm未満であり、ピーク波長λ
3は590nm以上750nm以下である。これにより、使用環境によって、光源12が使用できず、変位測定装置100等が機能しないという事態を回避することができる。
【0069】
なお、
図7に記載の例を本例に適用することにより、光源12と光源14とが少なくとも一部異なるピーク波長を有してもよい。一例において、光源12がλ
1およびλ
2のピーク波長を有する場合、光源14はλ
2およびλ
3のピーク波長を有してよい。また、光源12がλ
1、λ
2およびλ
3のピーク波長を有する場合、光源14はλ
1、λ
2およびλ
3のいずれとも異なるピーク波長λ
4を有してもよい。
【0070】
図11Aから
図11Cは、光走査部20、反射部30および受光部40の1以上が、光源部10から照射された光を反射または透過する光学フィルムを有する例である。上述の様に、変位測定装置100等は、使用環境に応じて、特定の波長帯域を使用できない場合がある。そこで本例では、光源12から複数のピーク波長を出射させたうえで、使用できない波長は光学フィルムにより遮断する。これにより、使用環境に応じて使用する波長を選択することができる。それゆえ、使用環境に依らず変位測定の精度を保つことができる。
【0071】
図11Aは、光走査装置22の反射面25に反射膜72を設ける例を示す図である。反射膜72は、特定の波長帯域のみを反射し、他の波長帯域は反射しない機能を有する。
図11Bは、第1の反射面32に反射膜72を設ける例を示す図である。
図11Bの例は、反射膜72が光走査装置22の回転に影響を与えない。また、反射膜72は、反射部30への設置が容易である。それゆえ、
図11Aの例に比べて実現が容易である。
【0072】
図11Cは、第1の受光素子42に透過膜74を設ける例を示す図である。透過膜74は、特定の波長帯域のみを透過し、他の波長帯域は等価しない機能を有する。
図11Cの例においても、透過膜74が光走査装置22の回転に影響を与えない。また、透過膜74は、第1の受光素子42への設置が容易である。それゆえ、
図11Aの例に比べて実現が容易である。なお、
図11A、
図11Bおよび
図11Cの例のうち、任意の2つを組み合わせてもよい。
【0073】
図12Aから
図12Dは、変位測定装置100等を適用する例を示す。
図12Aは、ガスタービン500のケーシング502に反射部30を設ける例を示す図である。圧縮器503は、空気を圧縮して燃焼器501に圧縮した空気を送る。燃焼器501は、空気と燃料とを燃やしてガスタービン500を動かす。ガスタービン500、燃焼器501および圧縮器503は、ケーシング502に覆われている。ケーシング502は、例えば直径L
Yが3mであり、縦方向の長さL
Zが10mである。
【0074】
本例では、ケーシング502に反射部30を設けて、ケーシング502のZ方向の変位を測定する。ガスタービン500は1,000℃以上にもなるので、ケーシング502も相当の高い温度となる。本例では、ケーシング502の変位を測定することにより、発電機全体の異常を事前に把握することができる。
【0075】
図12Bは、変圧器510に反射部30を設ける例を示す図である。変圧器510は、数千[V]から数十万[V]の電圧を取り扱う機器である。変圧器510の側部および上部には、送電線および避雷線を設けるための鉄塔512が設けられる。本例では、変圧器510の表面に反射部30を設けて変圧器510のZ方向の変位を測定することにより、変圧器510の異常を事前に把握することができる。なお、鉄塔512の表面に反射部30を設けて鉄塔512のZ方向の変位を測定してもよい。
【0076】
図12Cは、建物520の昇降路522に反射部30を設ける例を示す図である。建物520は数十[m]から数百[m]の高さを有してよい。本例の建物520の内部には、エレベータ524が昇降することができる空間である昇降路522が設けられる。本例では、エレベータ524の上部に光走査部20および受光部40を設ける。なお、図面の見易さを考慮して制御部50の記載は省略しているが、制御部50もエレベータ524の上部に設けてよい。これに対して、反射部30は、昇降路522の最上部に設けられてよい。エレベータ524を停止した状態において変位測定を行うことにより、建物520のZ方向の変位を測定することができる。
【0077】
図12Dは、橋530に反射部30を設ける例を示す図である。本例の橋530は、吊橋形式であり、主桁532および主塔534を有する。主桁532と主塔534とは、ケーブル536により固定される。本例の反射部30は、主塔534の最上部に設けられる。本例では、主塔534のZ方向の変位を測定することができる。なお、反射部30を主桁532に設けることにより、主桁532のZ方向の変位を測定してもよい。
【0078】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0079】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順序で実施することが必須であることを意味するものではない。