(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御手段が、前記取得手段で取得される特性値が予め定めた許容範囲外の場合は、前記混合液内の赤外線吸収剤の濃度の補正量を求め、得られた補正量に応じて前記第2の液体の供給量を増やすように前記調整手段を制御する、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の液体供給装置。
前記制御手段が、前記取得手段で取得された特性値が予め定めた許容範囲外の場合は、前記混合液内の赤外線吸収剤の濃度の補正量を求め、得られた補正量に応じて前記第2の液体の供給量を増やすように前記調整手段を制御する、請求項6から請求項9までのいずれか1項に記載の液滴吐出装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、赤外線吸収剤を含有する液体と他の液体との混合液を貯留する場合に比べて、赤外線吸収剤の劣化が抑制される液体供給装置及び液滴吐出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、第1の液体を貯留する第1の貯留手段と、赤外線吸収剤を含有する第2の液体を前記第1の液体とは別に貯留する第2の貯留手段と、前記第1の液体の供給量と前記第2の液体の供給量とを調整する調整手段と、前記調整手段により調整された供給量で前記第1の液体と前記第2の液体とを混合して混合液を生成する混合手段と、前記混合液を外部に供給する供給手段と、外部に供給後または外部に供給前の混合液内の赤外線吸収剤の濃度と相関関係を有する特性値を取得する取得手段と、前記取得手段で取得される特性値が予め定めた許容範囲内となるように前記調整手段を制御する制御手段と、を備えた液体供給装置である。
【0008】
請求項2の発明は、前記混合手段が、前記第1の液体と前記第2の液体とを撹拌して混合する、
請求項1に記載の液体供給装置である。
【0009】
請求項3の発明は、前記第2の貯留手段が、前記第2の液体を、赤外線吸収剤が劣化しない第1の温度に調整する第1の温度調整手段を更に備えた、
請求項1または請求項2に記載の液体供給装置である。
【0010】
請求項4の発明は、前記供給手段が、前記外部に供給する前記混合液を、前記混合液の粘度が閾値以下となる第2の温度に調整する第2の温度調整手段を更に備えた、
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の液体供給装置である。
【0011】
請求項5の発明は、前記制御手段が、前記取得手段で取得される特性値が予め定めた許容範囲外の場合は、前記混合液内の赤外線吸収剤の濃度の補正量を求め、得られた補正量に応じて前記第2の液体の供給量を増やすように前記調整手段を制御する、
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の液体供給装置である。
【0013】
請求項6の発明は、ノズルから液滴を吐出して記録媒体上に画像を形成する液滴吐出ヘッドと、第1の液体を貯留する第1の貯留手段と、赤外線吸収剤を含有する第2の液体を前記第1の液体とは別に貯留する第2の貯留手段と、前記第1の液体の供給量と前記第2の液体の供給量とを調整する調整手段と、前記調整手段により調整された供給量で前記第1の液体と前記第2の液体とを混合して混合液を生成する混合手段と、前記混合液を前記液滴吐出ヘッドに供給する供給手段と、前記記録媒体に形成された前記画像にレーザ光を照射する照射手段と、前記液滴吐出ヘッドから吐出後または吐出前の混合液内の赤外線吸収剤の濃度と相関関係を有する特性値を取得する取得手段と、前記取得手段で取得される特性値が予め定めた許容範囲内となるように前記調整手段を制御する制御手段と、を備えた液滴吐出装置である。
【0014】
請求項7の発明は、前記混合手段が、前記第1の液体と前記第2の液体とを撹拌して混合する、
請求項6に記載の液滴吐出装置である。
【0015】
請求項8の発明は、前記第2の貯留手段が、前記第2の液体を、赤外線吸収剤が劣化しない第1の温度に調整する第1の温度調整手段を更に備えた、
請求項6または請求項7に記載の液滴吐出装置である。
【0016】
請求項9の発明は、前記供給手段が、前記液滴吐出ヘッドに供給する前記混合液を、前記混合液の粘度が吐出に適した粘度となる第2の温度に調整する第2の温度調整手段を更に備えた、
請求項6から請求項8までのいずれか1項に記載の液滴吐出装置である。
【0017】
請求項10の発明は、前記制御手段が、前記取得手段で取得された特性値が予め定めた許容範囲外の場合は、前記混合液内の赤外線吸収剤の濃度の補正量を求め、得られた補正量に応じて前記第2の液体の供給量を増やすように前記調整手段を制御する、
請求項6から請求項9までのいずれか1項に記載の液滴吐出装置である。
【0018】
請求項11の発明は、前記取得手段が、前記特性値として前記照射手段によるレーザ光照射後の画像の温度を取得し、前記制御手段が、予め求めた画像の温度と赤外線吸収剤の濃度との関係に基づいて、前記取得手段により取得された画像の温度と予め定めた閾値温度との差分から、前記液滴吐出ヘッドから吐出後の前記混合液内の赤外線吸収剤の濃度の補正量を求める、
請求項10に記載の液滴吐出装置である。
【0019】
請求項12の発明は、前記取得手段が、前記特性値として前記照射手段によるレーザ光照射後の画像の定着性を表す評価値を取得し、前記制御手段が、予め求めた評価値と赤外線吸収剤の濃度との関係に基づいて、前記取得手段により取得された評価値と予め定めた閾値評価値との差分から、前記液滴吐出ヘッドから吐出後の前記混合液内の赤外線吸収剤の濃度の補正量を求める、
請求項10に記載の液滴吐出装置。
【0020】
請求項13の発明は、前記取得手段が、前記特性値として前記液滴吐出ヘッドに供給される混合液の特性を表す物理量を取得し、前記制御手段が、予め求めた物理量と赤外線吸収剤の濃度との関係に基づいて、前記取得手段により取得された物理量と予め定めた閾値物理量との差分から、前記液滴吐出ヘッドから吐出後の前記混合液内の赤外線吸収剤の濃度の補正量を求める、
請求項10に記載の液滴吐出装置である。
【0021】
請求項14の発明は、前記混合液の特性を表す物理量が、pH、導電率、粘度、及び近赤外吸光度のいずれか1つである、
請求項13に記載の液滴吐出装置である。
【0022】
請求項15の発明は、前記液滴吐出ヘッドに供給される混合液の温度を調整する温度調整手段と、前記照射手段によるレーザ光照射後の画像濃度を検出する濃度検出手段と、を更に備え、前記制御手段は、前記濃度検出手段により検出される画像濃度が予め定めた閾値以上となるように、前記温度調整手段を制御する、
請求項6から請求項13までのいずれか1項に記載の液滴吐出装置である。
【発明の効果】
【0023】
請求項1に記載の発明によれば、第1の液体と第2の液体とが混合された混合液を貯留する場合に比べて、赤外線吸収剤の劣化が抑制される。
【0024】
また、フィードバック制御を行わない場合に比べて、赤外線吸収剤の劣化に伴う特性値の悪化が抑制される。
【0025】
請求項2に記載の発明によれば、撹拌を行わない場合に比べて、混合液の濃度むらが低減される。
【0026】
請求項3に記載の発明によれば、温度調整を行わない場合に比べて、貯留される第2の液体中の赤外線吸収剤の劣化が抑制される。
【0027】
請求項4記載の発明によれば、温度調整を行わない場合に比べて、混合液の温度むらが低減される。
【0028】
請求項5に記載の発明によれば、補正量に応じて第2の液体が追加され混合液内の赤外線吸収剤の濃度が調整される。
【0029】
請求項6に記載の発明によれば、第1の液体と第2の液体とが混合された混合液を貯留する場合に比べて、赤外線吸収剤の劣化が抑制される。
【0030】
また、フィードバック制御を行わない場合に比べて、赤外線吸収剤の劣化に伴う特性値の悪化が抑制される。
【0031】
請求項7に記載の発明によれば、撹拌を行わない場合に比べて、混合液の濃度むらが低減される。
【0032】
請求項8に記載の発明によれば、温度調整を行わない場合に比べて、貯留される第2の液体中の赤外線吸収剤の劣化が抑制される。
【0033】
請求項9に記載の発明によれば、温度調整を行わない場合に比べて、混合液の温度むらが低減される。
【0034】
請求項10に記載の発明によれば、補正量に応じて第2の液体が追加され混合液内の赤外線吸収剤の濃度が調整される。
【0035】
請求項11に記載の発明によれば、レーザ光照射後の画像の温度と閾値温度との差分から混合液内の赤外線吸収剤の濃度の補正量が求められる。
【0036】
請求項12に記載の発明によれば、レーザ光照射後の画像の画質特性と閾値画質特性との差分から混合液内の赤外線吸収剤の濃度の補正量が求められる。
【0037】
請求項13に記載の発明によれば、液滴吐出ヘッドに供給される混合液の特性を表す物理量と閾値物理量との差分から混合液内の赤外線吸収剤の濃度の補正量が求められる。
【0038】
請求項14に記載の発明によれば、液滴吐出ヘッドに供給される混合液のpH、導電率、粘度、及び近赤外吸光度のいずれか1つを物理量として取得して、混合液内の赤外線吸収剤の濃度の補正量が求められる。
【0039】
請求項15に記載の発明によれば、レーザ光照射後の画像濃度が、予め定めた閾値以上に維持される。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。本実施の形態では、本発明の液滴吐出装置の一例として、インク滴を吐出して記録媒体上に画像を形成するインクジェット記録装置について説明する。なお、液滴吐出ヘッドは、「インクジェット記録ヘッド」または「記録ヘッド」と称する。また、液体供給装置は、「インク供給装置」と称する。
【0042】
<第1の実施の形態>
(インクジェット記録装置)
まず、本実施の形態に係るインクジェット記録装置について説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態に係るインクジェット記録装置の構成の一例を示す概略構成図である。
図1に示すように、インクジェット記録装置10は、記録ヘッド12、レーザ乾燥装置14、画像温度センサ16、画像濃度センサ18、給紙ロール20、巻取ロール22、搬送ロール24、及びインク供給装置28(容器30のみ図示する)を備えている。なお、インク供給装置28については、
図2、
図3を参照する。
【0043】
給紙ロール20には、記録媒体として長尺状の連続紙Pが巻きつけられている。給紙ロール20から引き出された連続紙Pは、搬送ロール24の回転に伴って矢印A方向に搬送される。搬送ロール24により搬送された連続紙Pは、最終的には巻取ロール22の回転により巻き取られる。なお、以下では、連続紙Pの搬送方向を単に「搬送方向」という。給紙ロール20と巻取ロール22との間には、記録ヘッド12、レーザ乾燥装置14、画像温度センサ16、及び画像濃度センサ18の各々が、連続紙Pと対向するように配置されている。レーザ乾燥装置14は「照射手段」の一例である。
【0044】
記録ヘッド12は、本実施の形態では、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の各色に対応したインクジェット記録ヘッド(以下、「記録ヘッド」と略称する。)12Y、12M、12C、及び12Kを備えている。記録ヘッド12Y、12M、12C、及び12Kは、搬送方向の上流側から下流側に向かって記載した順序で配置されている。記録ヘッド12Y、12M、12C、及び12Kの各々は、複数のノズルから対応する色のインク滴を吐出して、記録媒体上に対応する色の画像を形成する。なお、記録ヘッド12は、サーマル方式や圧電方式など公知の駆動方法により駆動される。また、YMCK各色を区別する必要がない場合には「記録ヘッド12」と総称する。
【0045】
レーザ乾燥装置14は、記録ヘッド12に対して搬送方向下流側に配置される。レーザ乾燥装置14は、複数のレーザ素子を備え、記録ヘッド12により画像が形成された連続紙Pに対し複数のレーザ素子からレーザ光を照射し、連続紙Pに形成された画像のインク滴を乾燥させて、連続紙Pへの画像の定着を図るものである。
【0046】
本実施の形態では、YMCK各色のインク滴は赤外線吸収剤を含有している。画像が形成された連続紙Pに赤外線レーザ光(以下、単に「レーザ光」という。)を照射すると、赤外線吸収剤がレーザ光を吸収することにより、インク滴のレーザ光に対する吸収効率が向上し、インク滴の温度が上昇して乾燥される。ここで「赤外線」とは、赤色光よりも波長が長く、およそ700nm以上の長波長の光である。
【0047】
画像温度センサ16は、レーザ乾燥装置14に対して搬送方向下流側に配置される。画像温度センサ16は、連続紙P上に形成された画像の温度を検出するセンサである。ここで「画像の温度」とは、画像が形成された連続紙Pの表面の温度であり、連続紙Pに吐出されたインク滴の温度でもある。画像温度センサ16としては、非接触方式の温度センサが好ましく、例えば、測定対象の物体から放射される赤外線等の強度を測定して、物体の温度を測定する放射温度計が用いられる。
【0048】
画像濃度センサ18は、画像温度センサ16に対して搬送方向下流側に配置される。画像濃度センサ18は、連続紙P上に形成された画像の濃度を検出するための光学的読取装置である。例えば、投光部及び受光部を備え、投光部から投光された光の反射光を受光部で受光して、反射光の強度を測定する反射型の光学的センサ等が用いられる。
【0049】
上記のインクジェット記録装置では、給紙ロール20から引き出された連続紙P上に、記録ヘッド12によりインク滴が吐出されて画像が形成される。記録ヘッド12により画像が形成された連続紙Pに、レーザ乾燥装置14によりレーザ光を照射して、連続紙P上に形成された画像のインク滴を乾燥させる。次に、画像温度センサ16により連続紙P上に形成された画像の温度を検出し、画像濃度センサ18により連続紙P上に形成された画像の濃度を検出する。最後に、画像が形成され乾燥された連続紙Pを巻取ロール22により巻き取って、連続紙Pへの画像形成が終了する。
【0050】
また、インクジェット記録装置10は、インクを貯留する容器30を備えている。本実施の形態では、記録ヘッド12Y、12M、12C、及び12Kの各々に対応して、容器30Y、30M、30C、及び30Kを備えている。容器30Y、30M、30C、及び30Kの各々は、対応する色のインクを貯留し、対応する記録ヘッド12に貯留しているインクを供給する。また、YMCK各色を区別する必要がない場合には「容器30」と総称する。なお、以下では他の容器と区別するため「第1容器30」と称する。
【0051】
本実施の形態では、次に説明するインク供給装置により、インクと、赤外線吸収剤を分散した分散液(以下、「IR吸収剤分散液」という。)と、を別々の容器に貯留しておく。そして、記録ヘッド12への供給直前に、インクとIR吸収剤分散液とを混合して混合液を生成し、生成した混合液を記録ヘッド12に供給する。赤外線吸収剤は保管安定性が悪く、特にインク中で劣化する。インクとIR吸収剤分散液とを別々の容器に貯留しておくことで、赤外線吸収剤を含有するインクを貯留して記録ヘッド12に供給する場合に比べて、赤外線吸収剤の劣化が抑制される。
【0052】
(インク供給装置)
次に、インク供給装置について説明する。
図2は本発明の第1の実施の形態に係るインク供給装置の構成の一例を示す概略構成図である。
図2に示すように、インク供給装置28は、インク32を貯留する第1容器30、IR吸収剤分散液42を貯留する第2容器40、及びインクとIR吸収剤分散液とを混合して混合液52を貯留する第3容器50を備えている。供給管60の一端は第1容器30に接続され、他端は第3容器50に接続されている。第1容器30内のインク32は、供給管60を通って第3容器50に供給される。供給管60には、インク32の供給量を調整する第1ポンプ62が設けられている。第1容器30は「第1の貯留手段」の一例であり、第2容器40は「第2の貯留手段」の一例である。また、第3容器50及びその混合機構は「混合手段」の一例である。
【0053】
また、供給管64の一端は第2容器40に接続され、他端は第3容器50に接続されている。第2容器40内のIR吸収剤分散液42は、供給管64を通って第3容器50に供給される。供給管64には、IR吸収剤分散液42の供給量を調整する第2ポンプ66が設けられている。供給管68の一端は第3容器50に接続され、他端は記録ヘッド12に接続されている。第3容器50内の混合液52は、供給管68を通って記録ヘッド12に供給される。供給管68には、混合液52の供給量を調整する第3ポンプ70が設けられている。供給管68は「供給手段」の一例である。
【0054】
インク32を貯留する第1容器30には、第1温度センサ34、第1温度調整器36、及び第1液量センサ38が設けられている。第1温度センサ34は、第1容器30内のインク32の温度を検出する。第1温度調整器36は、第1容器30内のインク32の温度を調整する。第1液量センサ38は、第1容器30内のインク32の液量を検出する。
【0055】
IR吸収剤分散液42を貯留する第2容器40には、第2温度センサ44、第2温度調整器46、及び第2液量センサ48が設けられている。第2温度センサ44は、第2容器40内のIR吸収剤分散液42の温度を検出する。第2温度調整器46は、第2容器40内のIR吸収剤分散液42の温度を調整する。第2液量センサ48は、第2容器40内のIR吸収剤分散液42の液量を検出する。
【0056】
混合液52を貯留する第3容器50には、第3温度センサ53、第3温度調整器54、第3液量センサ55、粘度計56、及び撹拌機58が設けられている。第3温度センサ44は、第3容器50内の混合液52の温度を検出する。第3温度調整器54は、第3容器50内の混合液52の温度を調整する。第3液量センサ55は、第3容器50内の混合液52の液量を検出する。粘度計56は、第3容器50内の混合液52の粘度を測定する。撹拌機58は、モータにより回転駆動されて第3容器50内の混合液52を撹拌する。
【0057】
なお、インク供給装置28は、後述するインク供給装置駆動制御部90を備えている。インク供給装置28の各部は、後述する制御部80に接続されたインク供給装置駆動制御部90により駆動制御される。
【0058】
上記のインク供給装置28では、第1容器30内のインク32の温度は、第1温度センサ34及び第1温度調整器36により、室温(例えば、25℃)に調整される。一方、第2温度センサ44及び第2温度調整器46により、第2容器40内のIR吸収剤分散液42の温度は、赤外線吸収剤が劣化しない第1の温度(例えば、10℃)に調整される。即ち、IR吸収剤分散液42は、保管中の劣化を抑制するために冷却される。
【0059】
次に、第1ポンプ62により供給管60の供給量を調整し、第2ポンプ66により供給管64の供給量を調整する。そして、第1容器30内のインク32と第2容器40内のIR吸収剤分散液42とを、調整された供給量で第3容器50に供給する。インク32とIR吸収剤分散液42とは、第3容器50内で撹拌機58により撹拌混合されて混合液52が生成される。第3容器50内で混合することで圧力調整機構が不要となる。インク32の粘度とIR吸収剤分散液42の粘度は等しいと混合液52の調整が容易である。インク32の粘度とIR吸収剤分散液42の粘度が異なる場合は、撹拌混合することで濃度むらが抑制される。
【0060】
次に、第3容器50内の混合液52の温度は、第3温度センサ53及び第3温度調整器54により、混合液52の粘度が吐出に適した粘度(以下、「吐出粘度」という。)となる第2の温度(例えば、30℃)に調整される。即ち、混合液52は、混合後の濃度むらを低減するために供給前に加熱される。加熱により混合液52の粘度も吐出粘度まで低下する。そして、第3ポンプ70により供給管68の供給量を調整し、第3容器50内の混合液52を、予め定めた供給量で記録ヘッド12に供給する。
【0061】
なお、供給管68に第4温度センサ72及び第4温度調整器74を更に設け、第3容器50内の混合液52の温度に代えて、供給管68を通過する混合液52の温度を、第4温度センサ72及び第4温度調整器74により、混合液52の粘度が吐出粘度となる第2の温度(例えば、30℃)に調整してもよい。この場合は、第4温度調整器74の下流側に、スタティックミキサー等のラインミキサーを挿入して撹拌混合を促進してもよい。
【0062】
(電気的な構成)
次に、インクジェット記録装置の電気的な構成について説明する。
図3は本発明の第1の実施の形態に係るインクジェット記録装置の電気的な構成の一例を示すブロック図である。
図3に示すように、インクジェット記録装置10は、コンピュータである制御部80を備えている。即ち、制御部80は、CPU80A、ROM80B、RAM80C、不揮発性のメモリ80D、及び入出力インターフェース(I/O)80Eを備えている。CPU80A、ROM80B、RAM80C、メモリ80D、及びI/O80Eの各々は、バス80Fを介して互いに接続されている。CPU80Aは、ROM80Bに記憶された各種プログラムを読み出し、RAM80Cをワークエリアとして使用してプログラムを実行する。
【0063】
制御部80のI/O80Eには、ヘッド駆動部82、レーザ駆動部84、搬送駆動部86、画像温度センサ16、画像濃度センサ18、操作表示部87、通信部88、及びインク供給装置駆動制御部90が接続されている。
【0064】
ヘッド駆動部82は、制御部80からの制御情報に従って、記録ヘッド12を駆動する。即ち、ヘッド駆動部82は、複数のノズル毎のインク滴の吐出量及び吐出タイミングに従って、記録ヘッド12の複数のノズルからインク滴を吐出させて連続紙P上に画像を形成する。レーザ駆動部84は、制御部80からの制御情報に従って、レーザ乾燥装置14を駆動する。即ち、レーザ駆動部84は、複数のレーザ素子毎の照射強度及び点消灯タイミングに従って、レーザ乾燥装置14の複数のレーザ素子から、画像が形成された連続紙Pにレーザ光を照射する。搬送駆動部86は、制御部80からの制御情報に従って、連続紙Pを搬送するために複数の搬送ロール24を回転駆動する。
【0065】
画像温度センサ16及び画像濃度センサ18の検出結果は、制御部80に出力される。操作表示部87は、例えば、表示ボタンや各種情報が表示されるタッチパネル式のディスプレイ、及びテンキーやスタートボタンなどのハードウェアキー等を有する。操作表示部87は、上記の構成により、ユーザからの指示を受け付けると共に、ユーザに対して各種情報を表示する。通信部88は、図示しない通信回線に接続されて、外部装置と通信データの送受信を行う通信インターフェースである。
【0066】
インク供給装置駆動制御部(以下。「駆動制御部」という。)90は、CPU等を備えたコンピュータで構成されている。駆動制御部90は、制御部80からの制御情報に従って、インク供給装置28の各部を駆動制御する。駆動制御部90には、第1ポンプ62、第1温度センサ34、第1温度調整器36、第1液量センサ38、撹拌機58、第2ポンプ66、第2温度センサ44、第2温度調整器46、第2液量センサ48、粘度計56、第3ポンプ70、第3温度センサ53、第3温度調整器54、及び第3液量センサ55が接続されている。
【0067】
駆動制御部90は、制御部80により設定された供給量に従って、第1ポンプ62、第2ポンプ66、及び第3ポンプ70の各々を駆動する。また、駆動制御部90は、制御部80により設定された撹拌速度に従って、撹拌機58を駆動する。また、第1温度センサ34、第1液量センサ38、第2温度センサ44、第2液量センサ48、粘度計56、第3温度センサ53、及び第3液量センサ55の各々は、検出結果または計測結果を駆動制御部90と制御部80とに出力する。
【0068】
ここで、インク等の温度を設定温度にするためのフィードバック制御は、駆動制御部90により実行される。駆動制御部90は、第1温度センサ34から検出温度を取得し、制御部80により設定された温度に従って、第1温度センサ34の検出温度が設定温度となるように、第1温度調整器36を駆動制御する。同様に、駆動制御部90は、第2温度センサ44の検出温度が設定温度となるように、第2温度調整器46を駆動制御する。また、同様に、第3温度センサ53の検出温度が設定温度となるように、第3温度調整器54を駆動制御する。
【0069】
(赤外線吸収剤濃度調整処理)
次に、「赤外線吸収剤濃度調整処理」について説明する。ここで「赤外線吸収剤の濃度」とは、記録ヘッドから吐出後または吐出前の混合液内の赤外線吸収剤の濃度である。例えば、記録ヘッドから記録媒体上に吐出された混合液のインク滴内の赤外線吸収剤の濃度、または、容器に貯留された混合液内の赤外線吸収剤の濃度である。なお、本実施の形態では、赤外線吸収剤を含有する混合液のインク滴を用いて画像を形成することで、レーザ光を照射してインク滴を乾燥させる際のレーザ光の吸収効率を向上させている。
【0070】
上記の通り、本実施の形態では、インクとIR吸収剤分散液とを別々の容器に貯留しておいて、記録ヘッドへの供給直前にインクとIR吸収剤分散液とを混合して混合液を生成することで、赤外線吸収剤の劣化を抑制している。しかしながら、混合液を生成した後は、赤外線吸収剤の劣化を抑制することが困難である。赤外線吸収剤が劣化すると、レーザ光の吸収効率の低下によりインク滴の乾燥が不十分となる。このため、記録媒体上のインクが擦れる「スマッジ」やインクが他の記録媒体等に付着する「オフセット」等が発生する虞がある。そこで、「赤外線吸収剤濃度調整処理」により、記録ヘッドから吐出後または吐出前の混合液内の赤外線吸収剤の濃度を調整する。
【0071】
図4は本発明の第1の実施の形態で実行される「赤外線吸収剤濃度調整処理」の処理手順の一例を示すフローチャートである。「赤外線吸収剤濃度調整処理」は、インクジェット記録装置10の立ち上げや点検の際または画像形成の合間等に、制御部80のCPU80Aにより実行される。本実施の形態では、操作表示部87を介したユーザからの実行指示に応じて「赤外線吸収剤濃度調整処理」が開始される。なお、「画像濃度調整処理」を行う場合は、ユーザにより「画像濃度調整処理」の実行が併せて指示されている。
【0072】
まず、ステップ100で、赤外線吸収剤濃度調整用画像(以下、「調整用画像1」という。)の画像情報に基づいて、ヘッド駆動部82を介して記録ヘッド12を駆動して、連続紙P上に調整用画像1を形成する。次に、ステップ102で、レーザ駆動部84を介してレーザ乾燥装置14を駆動して、調整用画像1が形成された連続紙Pにレーザ光を照射し、連続紙Pに形成された画像のインク滴を乾燥させる。
【0073】
次に、ステップ104で、画像温度センサ16で計測された画像温度を取得する。ここで「赤外線吸収剤の濃度」は、記録ヘッド12から連続紙P上に吐出された混合液のインク滴内の赤外線吸収剤の濃度である。混合液内の赤外線吸収剤の濃度が高いほど、レーザ光の吸収効率が高くなり、画像温度は上昇する。
【0074】
次に、ステップ106で、ステップ104で取得した画像温度が予め定めた閾値温度未満か否かを判断する。混合初期の画像温度と赤外線吸収剤の濃度との関係は予め取得されており、混合初期の段階で赤外線吸収剤の濃度が目標値となる場合の画像温度が閾値温度(狙い温度)として設定されている。計測された画像温度が閾値温度未満の場合は、ステップ108に進む。一方、計測された画像温度が閾値温度以上の場合は、ステップ114に進む。
【0075】
なお、赤外線吸収剤の濃度の目標値は、記録媒体の種類、含水率、反射率、光沢度等に応じて設定してもよい。連続紙の場合は、巻き出しや巻き終わりで目標値を変更してもよい。また、赤外線吸収剤の濃度の目標値は、例えば、白インク、特色インク、汎用インクなど、インクの種類に応じて設定してもよい。
【0076】
ステップ108では、混合初期の画像温度と赤外線吸収剤の濃度との関係に基づいて、計測された画像温度に対応する混合液内の赤外線吸収剤の濃度を取得する。画像温度が閾値温度未満の場合は、赤外線吸収剤の濃度が低く不十分であるため、IR吸収剤分散液の供給量を増やす必要がある。そこで、次のステップ110で、計測された画像温度と閾値温度との差分から、混合液内の赤外線吸収剤の濃度の補正量を求め、得られた補正量に応じてインクの供給量とIR吸収剤分散液の供給量とを算出する。なお、精密な計算においては、第3液量センサ55で検出された第3容器50内の混合液の液量、第3ポンプ70の設定供給量なども考慮される。本実施の形態では、インクの供給量は変更せずにIR吸収剤分散液の供給量を増量する。
【0077】
図9(A)及び(B)は、混合液内の赤外線吸収剤の濃度を調整する方法を説明するためのグラフである。混合初期の「画像温度と赤外線吸収剤の濃度との関係」を実線で表し、赤外線吸収剤が劣化後の「画像温度と赤外線吸収剤の濃度との関係」を点線で表す。
図9(A)に示すように、混合初期の関係から分かるように、赤外線吸収剤の濃度が狙い濃度C
0になるように画像温度について狙い温度T
0が設定されている。また、点線で図示した通り、赤外線吸収剤が劣化するとインク性能も低下し、「画像温度と赤外線吸収剤の濃度との関係」も変化する。このため、赤外線吸収剤の濃度を狙い濃度C
0にしても、画像温度が狙い温度T
0に到達しない場合がある。
【0078】
この場合には、
図9(B)に示すように、推測した劣化後の関係から、画像温度が狙い温度T
0になる赤外線吸収剤の濃度C
2(収束濃度)を求める。この例では、推測した劣化後の関係から収束濃度C
2が1回で求められるように説明されているが、劣化後の関係を正確に推測することは困難である。実際には、画像温度の補正量ΔTと赤外線吸収剤の濃度の補正量ΔCとは略比例関係にあるものとして、画像温度の補正量ΔTがゼロに近づくようにフィードバック制御(補正)を繰り返し行うと、赤外線吸収剤の濃度の補正量ΔCもゼロに近づき、赤外線吸収剤の濃度が収束濃度C
2に収束する。
【0079】
図9(A)に示すように、混合初期の関係から、画像温度の補正量ΔT
0(=狙い温度T
0−計測温度T
1)、赤外線吸収剤の濃度の補正量ΔC
0(=狙い濃度C
0−算出濃度C
1)が取得される。
図9(B)に示すように、混合初期の関係に基づく補正により、赤外線吸収剤の濃度が狙い濃度C
0、計測温度T
2(<狙い温度T
0)となった場合、画像温度の補正量はΔT
1(=狙い温度T
0−計測温度T
2)である。ΔTとΔCとの比例関係から、赤外線吸収剤の濃度の補正量ΔC
1(=ΔC
0×(ΔT
1/ΔT
0))が求められる。
【0080】
補正量ΔC
1は狙い濃度C
0からのずれ量であり、赤外線吸収剤の濃度の新たな狙い濃度は(C
0+ΔC
1)となる。次の補正で、赤外線吸収剤の濃度が新たな狙い濃度(C
0+ΔC
1)、計測温度T
3(<狙い温度T
0)となった場合は、画像温度の補正量はΔT
2(=狙い温度T
0−計測温度T
3)である。ΔTとΔCとの比例関係から、赤外線吸収剤の濃度の補正量ΔC
2(=ΔC
1×(ΔT
2/ΔT
1))が求められる。これを繰り返すことで、画像温度が狙い温度T
0に収束し、赤外線吸収剤の濃度が収束濃度C
2に収束する。
【0081】
次に、ステップ112で、第1ポンプ62及び第2ポンプ66の設定供給量を変更する。第1ポンプ62及び第2ポンプ66の各々は、駆動制御部90により変更後の設定供給量に従って駆動されるようになり、混合液内の赤外線吸収剤の濃度が調整されて画像温度が閾値温度に維持される。次に、ステップ114で「画像濃度調整処理」を実行するか否かを判断する。「画像濃度調整処理」を実行する場合はステップ116に進んで、「画像濃度調整処理」を実行してルーチンを終了する。一方、「画像濃度調整処理」を実行しない場合は、そのままルーチンを終了する。
【0082】
本実施の形態では、画像温度センサ16で計測された画像温度が閾値温度未満になると、画像温度が閾値温度以上に維持されるように、インクの供給量とIR吸収剤分散液の供給量とが再設定される。これにより、記録ヘッド12から連続紙P上に吐出される混合液(インク滴)内の赤外線吸収剤の濃度が調整される。
【0083】
(画像濃度調整処理)
次に、「画像濃度調整処理」について説明する。
図5は「画像濃度調整処理」の処理手順の一例を示すフローチャートである。まず、ステップ200で、画像濃度調整用画像(以下、「調整用画像2」という。)の画像情報に基づいて、ヘッド駆動部82を介して記録ヘッド12を駆動して、連続紙P上に調整用画像2を形成する。次に、ステップ202で、レーザ駆動部84を介してレーザ乾燥装置14を駆動して、調整用画像2が形成された連続紙Pにレーザ光を照射し、連続紙Pに形成された画像のインク滴を乾燥させる。
【0084】
次に、ステップ204で、画像濃度センサ18で計測された画像濃度を取得する。調整用画像2は目標濃度となるように形成されるが、混合液の粘度上昇に伴う吐出量の減少、赤外線吸収剤の添加による顔料濃度の減少等の原因により、目標濃度が達成されない場合がある。このため、目標濃度を基準として画像濃度の下限値と上限値とが設定されており、下限値以上上限値以下なら許容範囲とみなして画像濃度の調整は行わない。
【0085】
そこで、ステップ206で、計測された画像濃度が下限値以上か否かを判断する。画像濃度が下限値以上の場合はステップ208に進み、ステップ208で、計測された画像濃度が上限値を超えたか否かを判断する。ステップ206で、計測された画像濃度が下限値未満の場合は、ステップ210に進み、ステップ210で、混合液の温度を調整する第3温度調整器54の設定温度(加熱温度の設定値)を上げてルーチンを終了する。
【0086】
また、ステップ208で、計測された画像濃度が上限値を超えた場合は、ステップ212に進み、ステップ212で、混合液の温度を調整する第3温度調整器54の設定温度(加熱温度の設定値)を下げてルーチンを終了する。なお、ステップ208で、計測された画像濃度が上限値以下である場合は、画像濃度を調整する必要が無いのでそのままルーチンを終了する。なお、本実施の形態では、例えば、YMCK各色のパッチ画像を含む調整用画像2を連続紙P上に形成し、色毎に画像濃度を調整する。
【0087】
以上の通り、赤外線吸収剤を含有するインクでは画像濃度が低下する場合があるが、本実施の形態では、画像濃度センサ18で計測された画像濃度が許容範囲から外れると、画像濃度の調整が行われる。例えば、混合液の粘度上昇に伴い画像濃度が低下した場合には、混合液の温度を上げて粘度を下げることにより、混合液の吐出量を増加させて画像濃度を増加させる。また、混合液の粘度低下に伴い画像濃度が増加した場合には、混合液の温度を下げて粘度を上げることにより、混合液の吐出量を減少させて画像濃度を低下させる。
【0088】
なお、画像濃度と混合液の温度との関係を予め求めておいて、この関係を用いて、計測された画像濃度に対応する混合液の温度(第3温度調整器54の設定温度)を求めてもよい。
【0089】
また、調整用画像1と調整用画像2とを同じ画像としてもよい。調整用画像1と調整用画像2とが同じ場合は、画像形成工程とレーザ照射工程とが共通化され、画像温度の計測工程と画像濃度の計測工程とが続けて行われる。即ち、「赤外線吸収剤濃度調整処理」と「画像濃度調整処理」とが並列に実行される。
【0090】
<第2の実施の形態>
第2の実施の形態は、「赤外線吸収剤濃度調整処理」において、画像温度に代えて「画像のオフセット量」を取得する以外は、第1の実施の形態と同様であるため、「赤外線吸収剤濃度調整処理」以外は説明を省略する。
図6は本発明の第2の実施の形態で実行される「赤外線吸収剤濃度調整処理」の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0091】
まず、ステップ300で、調整用画像1の画像情報に基づいて、ヘッド駆動部82を介して記録ヘッド12を駆動して、連続紙P上に調整用画像1を形成する。次に、ステップ302で、レーザ駆動部84を介してレーザ乾燥装置14を駆動して、調整用画像1が形成された連続紙Pにレーザ光を照射し、連続紙Pに形成された画像のインク滴を乾燥させて画像を定着する。
【0092】
次に、ステップ304で、レーザ光が照射され定着された調製用画像1に部材を当接させた後に、調整用画像1または当接させた部材を画像濃度センサ18で読み取って、画像濃度を取得する。調製用画像1に部材が当接されて擦れることにより、インクの定着強度が低い場合は、調整用画像1が剥がれる。したがって、調整用画像1または当接させた部材の画像濃度を測定することで画像の定着性が評価される。当接させる部材や当接する圧力は定着性が評価できるよう選定する必要があるが、0.01MPa〜1MPaの圧力で、ロールに巻かれた紙を部材に当接し、連続紙Pの搬送方向とは逆方向となるように連続的に回転させ、紙を巻き取れる構成にしておくことが好ましい。
【0093】
続くステップ306で、読み取った画像濃度から画像の定着性を表す評価値としてオフセット量を算出する。ここで「オフセット」とは、画像に圧力が加わり擦れ引き離されることにより、連続紙上のインク画像が剥がれて当接させた部材に転移することであり、インクの定着強度が低い場合に発生する。具体的には巻きとられた連続紙Pを再度巻き出す場合に、画像と当接した連続紙Pの裏面側にインク画像が転移してしまい、画像濃度が低下して問題となることがある。「オフセット量」はそれを定量的に評価したものであり、部材当接後の調整用画像1または当接させた部材の画像濃度として計測される。
【0094】
ここで「赤外線吸収剤の濃度」とは、記録ヘッド12から連続紙P上に吐出された混合液のインク滴内の赤外線吸収剤の濃度である。混合液内の赤外線吸収剤の濃度が低いほど、レーザ光の吸収効率が低下してインク滴の乾燥が不十分となり、オフセット量が増加する。
【0095】
次に、ステップ308で、ステップ306で算出されたオフセット量が予め定めた上限閾値を超えたか否かを判断する。混合初期のオフセット量と赤外線吸収剤の濃度との関係は予め取得されており、混合初期の段階で赤外線吸収剤の濃度が閾値(目標値)となる場合のオフセット量が上限閾値として設定されている。算出されたオフセット量が上限閾値を超えた場合は、ステップ310に進む。一方、算出されたオフセット量が上限閾値以下の場合は、ステップ316に進む。
【0096】
ステップ310では、混合初期のオフセット量と赤外線吸収剤の濃度との関係に基づいて、算出されたオフセット量に対応する混合液内の赤外線吸収剤の濃度を取得する。オフセット量が上限閾値を超えた場合は、赤外線吸収剤の濃度が低く不十分であるため、IR吸収剤分散液の供給量を増やす必要がある。そこで、次のステップ312で、算出されたオフセット量と上限閾値との差分から、混合液内の赤外線吸収剤の濃度の補正量を求め、得られた補正量に応じてインクの供給量とIR吸収剤分散液の供給量とを算出する。
【0097】
次に、ステップ314で、第1ポンプ62及び第2ポンプ66の設定供給量を変更する。なお、続くステップ316、318は、
図4の「画像濃度調整処理」に関するステップ114、116に相当するので説明は省略するが、画像濃度調整処理がユーザにより選択されると、画像濃度が許容範囲から外れた場合にはYMCK各色毎に画像濃度の調整が行われる。
【0098】
本実施の形態では、画像濃度センサ18で読み取った画像濃度から算出されたオフセット量が上限閾値を超えると、オフセット量が上限閾値以下に維持されるように、インクの供給量とIR吸収剤分散液の供給量とが再設定される。これにより、記録ヘッド12から連続紙P上に吐出される混合液(インク滴)内の赤外線吸収剤の濃度が調整される。
【0099】
また、本実施の形態では、オフセット量が上限閾値以下に維持され最終的に形成される画像の画質が安定する。例えば、レーザ強度低下等によりオフセット量が増加した場合でも、赤外線吸収剤の濃度の増加によりオフセット量が低減される。なお、上記では、画像濃度からオフセット量を算出したが、画像の定着性を表す評価値であって赤外線吸収剤の濃度と相関関係がある評価値であればよく、オフセット量に代えて画像濃度、にじみ、浸透率等を算出してもよい。オフセット量と同様に、最終的に形成される画像の画質が安定する。
【0100】
<第3の実施の形態>
第3の実施の形態は、「赤外線吸収剤濃度調整処理」において、画像温度に代えて「混合液のpH値」を取得し、第3容器50に貯留された混合液内の赤外線吸収剤の濃度を調整する以外は、第1の実施の形態と同様であるため、「赤外線吸収剤濃度調整処理」以外は説明を省略する。なお、第3の実施の形態では、
図2に示す粘度計56が「pHメータ56A」としても機能するものとする。
図7は本発明の第3の実施の形態で実行される「赤外線吸収剤濃度調整処理」の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0101】
まず、ステップ400で、pHメータ56Aで計測されたpH値を取得する。次に、ステップ402で、ステップ400で取得したpH値が許容範囲内か否かを判断する。赤外線吸収剤の劣化に伴いpH値が増加する場合とpH値が減少する場合とがあるので、いずれの場合にも対応するように、混合初期の段階で赤外線吸収剤の濃度が閾値(目標値)となる場合のpH値を基準値として許容範囲(上限閾値及び下限閾値)が設定されている。
【0102】
pH値が許容範囲から外れた場合は、ステップ404に進む。一方、pH値が許容範囲内にある場合は、ステップ410に進む。
【0103】
ステップ404では、混合初期のpH値と赤外線吸収剤の濃度との関係を予め取得しておいて、混合初期のpH値と赤外線吸収剤の濃度との関係に基づいて、計測されたpH値に対応する混合液内の赤外線吸収剤の濃度を取得する。pH値が許容範囲から外れた場合は、赤外線吸収剤の濃度が低く不十分であるため、IR吸収剤分散液の供給量を増やす必要がある。そこで、次のステップ406で、計測されたpH値が下限閾値より小さい場合は、計測されたpH値と下限閾値との差分から混合液内の赤外線吸収剤の濃度の補正量を求め、計測されたpH値が上限閾値より大きい場合は、計測されたpH値と上限閾値との差分から混合液内の赤外線吸収剤の濃度の補正量を求める。そして、得られた補正量に応じてインクの供給量とIR吸収剤分散液の供給量とを算出する。
【0104】
次に、ステップ408で、第1ポンプ62及び第2ポンプ66の設定供給量を変更する。なお、続くステップ410、412は、
図4の「画像濃度調整処理」に関するステップ114、116に相当するので説明は省略するが、画像濃度調整処理がユーザにより選択されると、画像濃度が許容範囲から外れた場合にはYMCK各色毎に画像濃度の調整が行われる。
【0105】
本実施の形態では、pHメータ56Aで計測されたpH値が許容範囲から外れると、pH値が許容範囲内となるように、インクの供給量とIR吸収剤分散液の供給量とが再設定される。これにより、第3容器50に貯留された混合液内の赤外線吸収剤の濃度が調整される。
【0106】
また、本実施の形態では、混合液の物性を計測するのでフィードバックが容易である。例えば、pH値に代えて、導電率、近赤外吸光度を計測してもよい。この場合は、
図2に示す粘度計56が「導電率計」や「近赤外吸光度計」として機能するものとする。また、近赤外吸光度を計測する場合は、雑音を排除するために、赤外線吸収剤の吸収ピーク波長での計測、可視光域での吸光度との比の演算等を行ってもよい。
【0107】
<第4の実施の形態>
第4の実施の形態は、「赤外線吸収剤濃度調整処理」において、画像温度に代えて「混合液の粘度」を取得し、第3容器50に貯留された混合液内の赤外線吸収剤の濃度を調整する以外は、第1の実施の形態と同様であるため、「赤外線吸収剤濃度調整処理」以外は説明を省略する。
図8は本発明の第4の実施の形態で実行される「赤外線吸収剤濃度調整処理」の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0108】
まず、ステップ500で、粘度計56で計測された粘度を取得する。第3容器50に貯留された混合液の温度は、第3温度センサ53及び第3温度調整器54により、混合液の粘度が吐出粘度となる第2の温度(例えば、30℃)に調整されている。即ち、混合液の粘度が吐出粘度となるように調整されている。しかしながら、赤外線吸収剤の劣化に伴い混合液の粘度は増減する。
【0109】
次に、ステップ502で、ステップ500で取得した粘度が許容範囲内か否かを判断する。赤外線吸収剤の劣化に伴い粘度が増加する場合と粘度が減少する場合とがあるので、いずれの場合にも対応するように、赤外線吸収剤の濃度が閾値(目標値)となる場合の粘度を基準値として許容範囲(上限閾値及び下限閾値)が設定されている。
【0110】
粘度が許容範囲から外れた場合は、ステップ504に進む。一方、粘度が許容範囲内にある場合は、ステップ510に進む。
【0111】
ステップ504では、混合初期の粘度と赤外線吸収剤の濃度との関係を予め取得しておいて、混合初期の粘度と赤外線吸収剤の濃度との関係に基づいて、計測された粘度に対応する混合液内の赤外線吸収剤の濃度を取得する。粘度が許容範囲から外れた場合は、赤外線吸収剤の濃度が低く不十分であるため、IR吸収剤分散液の供給量を増やす必要がある。そこで、次のステップ506で、計測された粘度が下限閾値より小さい場合は、計測された粘度と下限閾値との差分から混合液内の赤外線吸収剤の濃度の補正量を求め、計測された粘度が上限閾値より大きい場合は、計測された粘度と上限閾値との差分から混合液内の赤外線吸収剤の濃度の補正量を求める。そして、得られた補正量に応じてインクの供給量とIR吸収剤分散液の供給量とを算出する。
【0112】
次に、ステップ508で、第1ポンプ62及び第2ポンプ66の設定供給量を変更してルーチンを終了する。なお、図示は省略するが、本実施の形態でも「画像濃度調整処理」を実行してもよい。
【0113】
本実施の形態では、粘度計56で計測された粘度が許容範囲から外れると、粘度が許容範囲内となるようにインクの供給量とIR吸収剤分散液の供給量とが再設定される。これにより、第3容器50に貯留された混合液内の赤外線吸収剤の濃度が調整される。
【0114】
<変形例>
なお、上記実施の形態で説明した液体供給装置及び液滴吐出装置の構成は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内においてその構成を変更してもよいことは言うまでもない。
【0115】
上記の実施の形態では、液滴吐出装置の一例としてインクジェット記録装置について説明したが、液滴吐出装置はインクジェット記録装置に限定されるものではない。液滴吐出装置としては、例えば、フィルムやガラス上にインク等を吐出してカラーフィルタを製造するカラーフィルタ製造装置、有機EL溶液を基板上に吐出してELディスプレイパネルを形成する装置、溶解状態の半田を基板上に吐出して部品実装用のバンプを形成する装置、金属を含む液体を吐出して配線パターンを形成する装置及び液滴を吐出して膜を形成する各種の成膜装置であってもよく、液滴を吐出するものであればよい。
【0116】
また、液体供給装置の一例としてインク供給装置について説明したが、液体供給装置はインク供給装置に限定されるものではない。第1の液体と赤外線吸収剤を含有する第2の液体とを混合すると、赤外線吸収剤の劣化が懸念される用途に広く使用される。