【実施例】
【0039】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例によって限定されるものではない。なお、実施例中、部は重量部を、%は重量%をそれぞれ示す。
【0040】
[実施例1]
<硬化性樹脂組成物の調整>
JER828(三菱化学社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂)99.9部、CPI(サンアプロ社製、p−フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウムPF
6塩)0.01部を攪拌し硬化性樹脂組成物A―1を得た。
【0041】
<硬化速度の評価>
硬化性樹脂組成物A−1を、PET基材に膜厚100μmになるよう塗工した後、塗工面からLED光源UVライト(波長:365nm、照射強度:1000mW/cm
2)を、硬化性樹脂組成物の流動性がなくなるまで照射した。このときの照射時間を硬化時間として、以下の基準で評価した。評価結果は表1に示す。
○:硬化時間 15秒未満
△:硬化時間 15秒以上、1分未満
×:硬化時間 1分以上
【0042】
<寸法安定性の評価>
硬化性樹脂組成物A−1未硬化状態の比重を測定した後、硬化性樹脂組成物A−1をPET基材に膜厚100μmになるよう塗工し塗工面からLED光源UVライト(波長:365nm、照射強度:1000mW/cm
2)を10秒間照射して硬化させて硬化物を得た。硬化物の比重を測定し、以下の計算式から硬化収縮率を測定した。なお、比重測定は23℃で行った。
硬化収縮率(%)=100×(硬化物比重―未硬化物比重)/硬化物比重
得られた硬化収縮率を用いて、以下の基準で寸法安定性を評価した。評価結果は表1に示す。
○:硬化収縮率 1%未満
△:硬化収縮率 1%以上、3%未満
×:硬化収縮率 3%以上
【0043】
<耐熱性の評価>
硬化性樹脂組成物A−1を剥離処理PET基材に膜厚100μmになるよう塗工した後、塗工面からLED光源UVライト(波長:365nm、照射強度:1000mW/cm
2)を10秒照射した。得られた硬化物をPET基材から剥離し、10mm×20mmの大きさに切り出し、チャック間距離10mmになるように、引張試験機にセットし、25℃で1mm/minの速度で引張試験を行った。硬化物が破断した時の応力をT(25)とした。続いて、同様の試験を100℃にて行い、同様に硬化物が破断したときの応力をT(100)として、以下の計算式から強度比を計算した。
強度比=T(100)/T(25)
得られた強度比を用いて、以下の基準で耐熱性を評価した。評価結果は表1に示す。
○:強度比 0.95以上
△:強度比 0.85以上、0.95未満
×:強度比 0.85未満
【0044】
<硬化性評価>
硬化性樹脂組成物A―1を、PET基材に膜厚100μmになるよう塗工した後、塗工面からLED光源UVライト(波長:365nm、照射強度:1000mW/cm
2)を10秒間照射した。照射後の樹脂組成物をPET基材から剥離し、約1gをメチルエチルケトン(MEK)に浸漬40℃、24時間放置した。放置後、100℃のオーブンに1分間入れてMEKを揮発させた後、樹脂組成物の質量を測定し浸漬前後での樹脂組成物重量減少分を計算し、以下の基準で硬化性を評価した。評価結果を表1に示す。
5:樹脂組成物重量減少分0%以上5%未満
4:樹脂組成物重量減少分5%以上10%未満
3:樹脂組成物重量減少分10%以上20%未満
2:樹脂組成物重量減少分20%以上50%未満
1:樹脂組成物重量減少分50%以上
【0045】
<密着性評価>
密着性の評価は、マイクロドロップレット法にて行った。炭素単繊維に硬化性樹脂組成物A−1をドロップし、LED光源UVライト(波長:365nm、照射強度:1000mW/cm
2)を10秒間照射し、硬化樹脂付着炭素単繊維を得た。その後、硬化樹脂付着炭素単繊維から硬化樹脂付着物を引き抜くようにブレードで挟み、0.06mm/minで硬化樹脂付着炭素単繊維を引っ張った。このときの最大荷重Fを測定し、以下の式で界面せん断強度τを得た。
界面せん断強度τ= F/(πdL)
ただし、
F:試験時の最大荷重
d: 炭素単繊維径
L:硬化樹脂引き抜き方向の直径
得られた界面せん断強度から、以下の基準で密着性の評価をした。評価結果は表1に示す。
5:界面せん断強度 50MPa以上
4:界面せん断強度 40MPa以上50MPa未満
3:界面せん断強度 30MPa以上40MPa未満
2:界面せん断強度 20MPa以上30MPa未満
1:界面せん断強度 20MPa未満
【0046】
<接着性の評価>
炭素繊維を10mm×50mmに切り、末端10mmに硬化性樹脂組成物A−1を0.05g塗布した。その上に、炭素繊維を積層させ、LED光源UVライト(波長:365nm、照射強度:1000mW/cm
2)を上面下面各10秒間照射し、炭素繊維材料を得た。得られた炭素繊維材料の引張せん断接着力を25℃、10mm/minの条件で測定し、破断した際の最大荷重(N)を接着面積(1cm
2)で割り、接着力を計算し、以下の基準で評価した。評価結果は表1に示す。
5:接着力 50N/cm
2以上
4:接着力 40N/cm
2以上、50N/cm
2未満
3:接着力 30N/cm
2以上、40N/cm
2未満
2:接着力 20N/cm
2以上、30N/cm
2未満
1:接着力 20N/cm
2未満
【0047】
<圧力容器の作製>
硬化性樹脂組成物A―1を炭素繊維に含浸させ、アルミライナー(外径:100mm、長さ:400mm、肉厚:5mm)に、LED光源UVライト(波長:365nm、照射強度:1000mW/cm
2)を照射しながら第一層目にフープ層を1.0mm、第二層目にヘリカル層を2.0mm巻きつけ圧力容器T−1を得た。
【0048】
<耐圧性評価>
圧力容器T−1を加圧破壊試験機に設置し、圧力容器が破裂するまで容器内に負荷を与え、破裂した時点の圧力を破壊圧力とし、以下の基準で耐圧性を評価した。結果は表1に示す。
5:破壊圧力 45MPa以上
4:破壊圧力 41MPa以上45MPa未満
3:破壊圧力 38MPa以上41MPa未満
2:破壊圧力 35MPa以上38MPa未満
1:破壊圧力 35MPa未満
【0049】
<炭素繊維強化複合材料の作製>
硬化性樹脂組成物A―1を炭素繊維織物に含浸させ、LED光源UVライト(波長:365nm、照射強度:1000mW/cm
2)を前記硬化性樹脂組成物含浸炭素繊維の両面から各10秒照射し、炭素繊維強化複合材料C−1を得た。
<耐久性評価>
耐久性評価は、JIS K7074に準拠した3点曲げ試験にて行った。炭素繊維強化複合材料C−1を100×15×2mmに切り出し、支点間距離を80mm、R=2mmの支持支点台上に置き、R=5mmの圧子にて、試験速度5mm/minで荷重を与え、最大荷重を測定し、以下の基準で耐久性を評価した。結果は表1に示す。
5:曲げ強度 500MPa以上
4:曲げ強度 450MPa以上500MPa未満
3:曲げ強度 400MPa以上450MPa未満
2:曲げ強度 300MPa以上400MPa未満
1:曲げ強度 300MPa未満
【0050】
[実施例2〜20]
実施例1と同様に、表1に示す組成の硬化性樹脂組成物を調整し、つづいて圧力容器、炭素繊維材料、炭素繊維強化複合材料を作成し、実施例1と同様の評価を行った。結果は表1に示す。
【0051】
[実施例21]
炭素繊維を15mm×100mmに切り、末端10mmに硬化性樹脂組成物A−1を0.07g塗布した。その上に、炭素繊維を積層させ、LED光源UVライト(波長:365nm、照射強度:1000mW/cm
2)を上面下面各10秒間照射し、炭素繊維材料を得た。得られた炭素繊維材料を硬化性樹脂組成物A−1に含浸させLED光源UVライト(波長:365nm、照射強度:1000mW/cm
2)を前記硬化性樹脂組成物含浸炭素繊維の両面から各10秒照射し、炭素繊維強化複合材料D−1を得た。得られた炭素繊維強化複合材料を用いて耐久性評価と同様に、JIS K7074に準拠した3点曲げ試験にて行った。得られた炭素繊維強化複合材料を100×15×2mmに切り出し、支点間距離を80mm、R=2mmの支持支点台上に置き、R=5mmの圧子にて、試験速度5mm/minで荷重を与え、最大荷重を測定した。このとき、圧子部分の下に炭素繊維の接着部分が来るよう配置した。得られた最大荷重から、以下の基準で耐久性を評価した。結果は表3に示す。
○:曲げ強度 400MPa以上
×:曲げ強度 400MPa未満
【0052】
[実施例22]
実施例21と同様に炭素繊維材料を得て、得られた炭素繊維材料を表2のB−1に示される樹脂組成物に含浸させた後、120℃で24時間放置し硬化させ炭素繊維強化複合材料を得た。得られた炭素繊維強化複合材料を用いて、実施例21と同様の方法で耐久性評価を行った。結果は表3に示す。
【0053】
[実施例23]
実施例21と同様に炭素繊維材料を得て、得られた炭素繊維材料を表2のB−2に示される樹脂組成物に200℃、10MPaにて含浸させた後、室温まで冷却して炭素繊維強化複合材料を得た。得られた炭素繊維強化複合材料を用いて、実施例21と同様の方法で耐久性評価を行った。結果は表3に示す。
【0054】
[比較例1]
<硬化速度の評価>
表2に示す樹脂組成物B−1をPET基材に膜厚100μmになるよう塗工した後、120度のオーブンに入れ、樹脂組成物の流動性がなくなるまで加熱した。このときの加熱時間を硬化時間として、以下の基準で評価した。評価結果は表2に示す。
○:硬化時間 15秒未満
△:硬化時間 15秒以上、1分未満
×:硬化時間 1分以上
【0055】
<寸法安定性の評価>
樹脂組成物B−1未硬化状態の比重を測定した後、樹脂組成物B−1をPET基材に膜厚100μmになるよう塗工し120度で24時間加熱して硬化させて硬化物を得た。硬化物の比重を測定し、以下の計算式から硬化収縮率を測定した。なお、比重測定は23℃で行った。
硬化収縮率(%)=100×(硬化物比重―未硬化物比重)/硬化物比重
得られた硬化収縮率を用いて、以下の基準で寸法安定性を評価した。評価結果は表2に示す。
○:硬化収縮率 1%未満
△:硬化収縮率 1%以上、3%未満
×:硬化収縮率 3%以上
【0056】
<耐熱性の評価>
樹脂組成物B−1を剥離処理PET基材に膜厚100μmになるよう塗工した後、120度で24時間加熱し硬化物を得た。得られた硬化物をPET基材から剥離し、10mm×20mmの大きさに切り出し、チャック間距離10mmになるように、引張試験機にセットし、25℃で1mm/minの速度で引張試験を行った。硬化物が破断した時の応力をT(25)とした。続いて、同様の試験を100℃にて行い、同様に硬化物が破断したときの応力をT(100)として、以下の計算式から強度比を計算した。
強度比=T(100)/T(25)
得られた強度比を用いて、以下の基準で耐熱性を評価した。評価結果は表2に示す。
○:強度比 0.95以上
△:強度比 0.85以上、0.95未満
×:強度比 0.85未満
【0057】
[比較例2]
<耐熱性の評価>
樹脂組成物B−2を10mm×20mm×100μmの大きさに切り出し、チャック間距離10mmになるように、引張試験機にセットし、25℃で1mm/minの速度で引張試験を行った。硬化物が破断した時の応力をT(25)とした。続いて、同様の試験を100℃にて行い、同様に硬化物が破断したときの応力をT(100)として、以下の計算式から強度比を計算した。
強度比=T(100)/T(25)
得られた強度比を用いて、以下の基準で耐熱性を評価した。評価結果は表2に示す。
○:強度比 0.95以上
△:強度比 0.85以上、0.95未満
×:強度比 0.85未満
【0058】
[比較例3〜6]
実施例1と同様の方法で、表2に示す組成の硬化性樹脂組成物を調整し、つづいて圧力容器、炭素繊維材料、炭素繊維強化複合材料を作成し、実施例1と同様の評価を行った。結果は表2に示す。なお、硬化性、密着性、接着性、耐圧性、耐久性の評価は、硬化速度、寸法安定性及び耐熱性試験の全ての評価結果が「○」または「△」の場合のみ実施した。評価結果は表2に示す。
【0059】
[比較例7]
炭素繊維を切った後、硬化性樹脂組成物を塗布せずに積層したこと以外は、実施例21と同様の方法で耐久性評価を行った。結果は表3に示す。
【0060】
[比較例8]
炭素繊維を切った後、硬化性樹脂組成物を塗布せずに積層したこと以外は、実施例22と同様の方法で耐久性評価を行った。結果は表3に示す。
【0061】
[比較例9]
炭素繊維を切った後、硬化性樹脂組成物を塗布せずに積層したこと以外は、実施例23と同様の方法で耐久性評価を行った。結果は表3に示す。
【0062】
【表1】
なお、表1中に示す化合物は以下の通りである。
JER 828:三菱化学社製、ビスフェノールA型エポキシ化合物
JER 806:三菱化学社製、ビスフェノールF型エポキシ化合物
JER 152:三菱化学社製、フェノールノボラック型エポキシ化合物
N−660:DIC株式会社製、クレゾールノボラック型エポキシ化合物
EX−721:ナガセケムテックス株式会社製、フタル酸型エポキシ化合物
YX4000:三菱化学社製、ビフェニル型エポキシ化合物
HP−4770:DIC株式会社製、ナフタレン型エポキシ化合物
EX−211:ナガセケムテックス株式会社製、グリシジルエーテル型エポキシ化合物
EX−411:ナガセケムテックス株式会社製、グリシジルエーテル型エポキシ化合物
セロキサイド 2021P:ダイセル社製、2官能脂環式エポキシ化合物
CPI:サンアプロ社製、p‐フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウムPF
6塩
IRGACURE 250:BASF社製、ヨードニウム、(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]PF
6塩
DETX−S:日本化薬社製、チオキサントン系光増感剤
UVS−1331:川崎化成工業社製、アントラセン系光増感剤
OXT−121:東亞合成社製、オキセタン基含有化合物
BDVE:日本カーバイド工業社製、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル
【0063】
【表2】
なお、表2中に示す化合物は以下の通りである。
JER 828:三菱化学社製、ビスフェノールA型エポキシ化合物
EX−211:ナガセケムテックス株式会社製、グリシジルエーテル型エポキシ化合物
セロキサイド 2021P:ダイセル社製、2官能脂環式エポキシ化合物
TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート
J106G:プライムポリマー社製、ポリプロピレン化合物
CPI:サンアプロ社製、p―フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウムPF
6塩
ST11:三菱化学社製、アミン系熱硬化剤
TPO:2,4,6−トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド
【0064】
【表3】
【0065】
表1に示す通り、実施例1〜20で用いた硬化性樹脂組成物はエポキシ化合物(A)と、カチオン性光重合開始剤(B)とを含有しており、さらにエポキシ化合物(A)が芳香環含有エポキシ化合物(A−1)を含有しているため、硬化速度、寸法安定性、耐熱性、硬化性及び密着性に優れている。また、炭素繊維間に積層した場合の接着性にも優れる。さらに、炭素繊維を含浸させてアルミライナーに巻き付けて作製した圧力容器の破裂圧力も高く耐圧性に優れ、炭素繊維強化複合材料の耐久性にも優れている。特に、実施例7〜20では分子内に水酸基を少なくとも1つ以上含有する化合物(C)を含み、さらに、光増感剤、オキセタン基含有化合物、ビニル基含有化合物を含んでいるため、硬化性、密着性、耐圧性、耐久性いずれも非常に優れている。また、表3の実施例21〜23に示すように、本発明の樹脂組成物を炭素繊維間接着剤として用いて得た炭素繊維材料を使用して得られた炭素繊維強化複合材料は炭素繊維接続部の耐久性にも優れる。
一方、表2の比較例1、4では光カチオン性光重合開始剤を含有していないため、硬化速度が悪く生産性に優れない。また、比較例2では硬化性樹脂が含まれないため耐熱性が悪い。比較例3では、アクリル系化合物の光ラジカル硬化であるため、硬化速度と耐熱性に優れるものの、硬化収縮の影響により寸法安定性が悪い。また、比較例5、6では芳香環含有エポキシ化合物(A1)が含まれないため、炭素繊維との密着性が悪い、耐圧性や耐久性も悪い。また、表3の比較例7〜9では、炭素繊維強化複合材料の炭素繊維接続部に接着剤を使用していないため、耐久性が悪い。