(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記スペーサの前記壁部は、前記電極体の前記湾曲部の頂部に対向する中央領域と前記中央領域に隣接する角部領域を有し、前記角部領域に、前記複数の凹部が形成されている
請求項1〜3のいずれか一項に記載の蓄電素子。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態における蓄電素子について説明する。なお、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示したものではない。
【0022】
また、以下で説明する実施の形態は、本発明の一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、製造工程の順序などは一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0023】
まず、
図1〜
図3を用いて、実施の形態における蓄電素子10の全般的な説明を行う。
【0024】
図1は、実施の形態に係る蓄電素子10の外観を示す斜視図である。
図2は、実施の形態に係る蓄電素子10の分解斜視図である。
図3は、実施の形態に係る蓋構造体180の分解斜視図である。
【0025】
また、
図1及び以降の図について、説明の便宜のため、Z軸方向を上下方向として説明しているが、実際の使用態様において、Z軸方向と上下方向とが一致しない場合もある。
【0026】
蓄電素子10は、電気を充電し、また、電気を放電することのできる二次電池である。具体的には、蓄電素子10は、リチウムイオン二次電池などの非水電解質二次電池である。蓄電素子10は、例えば、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)またはプラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)等に適用される。なお、蓄電素子10は、非水電解質二次電池には限定されず、非水電解質二次電池以外の二次電池であってもよいし、キャパシタであってもよい。
【0027】
図1に示すように、蓄電素子10は、容器100と、正極端子200と、負極端子300とを備えている。また、
図2に示すように、容器100内方には電極体400が収容されており、電極体400の上方に、蓋構造体180が配置されている。
【0028】
蓋構造体180は、容器100の蓋板110、集電体、及び、絶縁部材を有する。具体的には、蓋構造体180は、上記集電体として、電極体400の正極側のタブ部410と電気的に接続された正極集電体140を有している。同様に、蓋構造体180は、上記集電体として、電極体400の負極側のタブ部420と電気的に接続された負極集電体150を有している。
【0029】
また、蓋構造体180は、上記絶縁部材として、蓋板110と正極集電体140との間に配置された下部絶縁部材120を有している。同様に、蓋構造体180は、上記絶縁部材として、蓋板110と負極集電体150との間に配置された下部絶縁部材130とを有している。
【0030】
本実施の形態に係る蓋構造体180はさらに、正極端子200、負極端子300、上部絶縁部材125、及び、上部絶縁部材135を有している。
【0031】
上部絶縁部材125は、蓋板110と正極端子200との間に配置されている。上部絶縁部材135は、蓋板110と負極端子300との間に配置されている。
【0032】
上記構成を有する蓋構造体180と、電極体400との間には、上部スペーサ500と緩衝シート600とが配置されている。
【0033】
上部スペーサ500は、電極体400の、タブ部410及び420が設けられた側と蓋板110との間に配置される。具体的には、上部スペーサ500は全体として平板状であり、かつ、タブ部410及び420が挿入される2つの挿入部520を有している。本実施の形態では、挿入部520は、上部スペーサ500において切り欠き状に設けられている。上部スペーサ500は、例えば、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)または、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)等の絶縁性を有する素材によって形成されている。
【0034】
上部スペーサ500は、例えば、電極体400の上方(蓋板110の方向)への移動を直接的もしくは間接的に規制する部材、または、蓋構造体180と電極体400との間における短絡を防止する部材として機能する。
【0035】
緩衝シート600は、発泡ポリエチレンなどの、柔軟性の高い多孔質の素材で形成されており、電極体400と上部スペーサ500との間の緩衝材として機能する部材である。
【0036】
また、本実施の形態では、電極体400の、電極体400と蓋板110との並び方向(Z軸方向)に交差する方向の側面(本実施の形態ではX軸方向の両側面)と、容器100の内周面との間にサイドスペーサ700が配置されている。サイドスペーサ700は、例えば、電極体400の位置を規制する役割を果たしている。サイドスペーサ700は、例えば上部スペーサ500と同様に、PC、PP、PE、またはPPS等の絶縁性を有する素材によって形成されている。
【0037】
なお、蓄電素子10は、
図1〜
図3に図示された要素に加え、電極体400と容器100(本体111)の底113との間に配置された緩衝シートなど、他の要素を備えてもよい。また、蓄電素子10の容器100の内部には電解液(非水電解質)が封入されているが、電解液の図示は省略する。
【0038】
容器100は、角型ケースであり、本体111と、蓋板110とを備える。本体111及び蓋板110の材質は、特に限定されないが、例えばステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金など溶接可能な金属であるのが好ましい。
【0039】
本体111は、上面視矩形状の筒体であり、一端部に開口112を備えるとともに、他端部に底113を備える。組み立て時において、容器100の本体111には、開口112を介して、電極体400とサイドスペーサ700などが挿入される。この開口112に対して電極体400とサイドスペーサ700などが挿入される方向を挿入方向(Z軸方向)とする。
【0040】
本体111の内方には、電極体400を覆う絶縁シート350が設けられている。絶縁シート350は、例えばPC、PP、PE、またはPPS等の絶縁性を有する素材によって形成されている。絶縁シート350は、本体111の内周面に重ねられており、電極体400と本体111との間に位置している。具体的には、絶縁シート350は、上面視で開口112の長辺をなす本体111の一対の内周面と、底113の内面とに重ねて配置されている。
【0041】
本体111は、電極体400、絶縁シート350等を内部に収容後、蓋板110が溶接等されることにより、内部が密封されている。
【0042】
蓋板110は、本体111の開口112を閉塞する板状部材である。蓋板110には、
図2及び
図3に示されるように、ガス排出弁170、注液口117、貫通孔110a及び110b、並びに、2つの膨出部160が形成されている。ガス排出弁170は、容器100の内圧が上昇した場合に開放されることで、容器100の内部のガスを放出する役割を有する。
【0043】
注液口117は、蓄電素子10の製造時に電解液を注液するための貫通孔である。また、蓋板110には、注液口117を塞ぐように、注液栓118が配置されている。つまり、蓄電素子10の製造時に、注液口117から容器100内に電解液を注入し、注液栓118を蓋板110に溶接して注液口117を塞ぐことで、電解液が容器100内に収容される。
【0044】
なお、容器100に封入される電解液としては、蓄電素子10の性能を損なうものでなければその種類に特に制限はなく様々なものを選択することができる。
【0045】
2つの膨出部160のそれぞれは、本実施の形態では、蓋板110の一部が膨出状に形成されていることで蓋板110に設けられており、例えば、上部絶縁部材125または135の位置決めに利用される。また、膨出部160の裏側には上方に凹状の部分である凹部(図示せず)が形成されており、凹部の一部に、下部絶縁部材120または130の係合突起120bまたは130bが係合する。これにより、下部絶縁部材120または130も位置決めされ、その状態で蓋板110に固定される。
【0046】
上部絶縁部材125は、正極端子200と蓋板110とを電気的に絶縁する部材である。下部絶縁部材120は、正極集電体140と蓋板110とを電気的に絶縁する部材である。上部絶縁部材135は、負極端子300と蓋板110とを電気的に絶縁する部材である。下部絶縁部材130は、負極集電体150と蓋板110とを電気的に絶縁する部材である。上部絶縁部材125及び135は、例えば上部ガスケットと呼ばれる場合もあり、下部絶縁部材120及び130は、例えば下部ガスケットと呼ばれる場合もある。つまり、本実施の形態では、上部絶縁部材125及び135並びに下部絶縁部材120及び130は、電極端子(200または300)と容器100との間を封止する機能も有している。
【0047】
なお、上部絶縁部材125及び135、並びに、下部絶縁部材120及び130は、例えば上部スペーサ500と同様に、PC、PP、PE、またはPPS等の絶縁性を有する素材によって形成されている。
【0048】
図3に示すように、また、下部絶縁部材130の上面には、膨出部160に係合する係合突起130bが突出している。また、下部絶縁部材130の下面には凹部が形成されており、この凹部で負極集電体150を収容する。下部絶縁部材130の一端部には、負極集電体150の貫通孔150aと連通する貫通孔130aが形成されている。この貫通孔130a、150aに対して、負極端子300の締結部310が挿入される。
【0049】
下部絶縁部材120の上面には、膨出部160に係合する係合突起120bが突出している。また、下部絶縁部材120の下面には凹部が形成されており、この凹部で正極集電体140を収容する。下部絶縁部材120の一端部には、正極集電体140の貫通孔140aと連通する貫通孔120aが形成されている。この貫通孔120a、140aに対して、正極端子200の締結部210が挿入される。また、下部絶縁部材120の、注液口117の直下に位置する部分には、注液口117から流入する電解液を電極体400の方向に導く貫通孔126が設けられている。
【0050】
図1〜
図3に示すように、正極端子200は、正極集電体140を介して、電極体400の正極に電気的に接続された電極端子である。負極端子300は、負極集電体150を介して、電極体400の負極に電気的に接続された電極端子である。つまり、正極端子200及び負極端子300は、電極体400に蓄えられている電気を蓄電素子10の外部空間に導出し、また、電極体400に電気を蓄えるために蓄電素子10の内部空間に電気を導入するための金属製の電極端子である。なお、正極端子200及び負極端子300は、アルミニウムまたはアルミニウム合金などの金属で形成されている。
【0051】
また、正極端子200には、容器100と正極集電体140とを締結する締結部210が設けられている。負極端子300には、容器100と負極集電体150とを締結する締結部310が設けられている。
【0052】
締結部210は、正極端子200から下方に延設された軸部材(リベット)であり、正極集電体140の貫通孔140aに挿入されてかしめられる。具体的には、締結部210は、上部絶縁部材125の貫通孔125a、蓋板110の貫通孔110a、下部絶縁部材120の貫通孔120a、及び、正極集電体140の貫通孔140aに挿入されてかしめられる。これにより、正極端子200と正極集電体140とが電気的に接続され、正極集電体140は、正極端子200、上部絶縁部材125及び下部絶縁部材120とともに、蓋板110に固定される。
【0053】
締結部310は、負極端子300から下方に延設された軸部材(リベット)であり、負極集電体150の貫通孔150aに挿入されてかしめられる。具体的には、締結部310は、上部絶縁部材135の貫通孔135a、蓋板110の貫通孔110b、下部絶縁部材130の貫通孔130a、及び、負極集電体150の貫通孔150aに挿入されてかしめられる。これにより、負極端子300と負極集電体150とが電気的に接続され、負極集電体150は、負極端子300、上部絶縁部材135及び下部絶縁部材130とともに、蓋板110に固定される。
【0054】
なお、締結部310は、負極端子300との一体物として形成されていてもよく、負極端子300とは別部品として作製された締結部310が、かしめまたは溶接などの手法によって負極端子300に固定されていてもかまわない。また、締結部310は、銅または銅合金などの、負極端子300と異なる材質の金属で形成されてもかまわない。締結部210と正極端子200との関係についても同様である。
【0055】
正極集電体140は、電極体400と容器100との間に配置され、電極体400と正極端子200とを電気的に接続する部材である。正極集電体140は、アルミニウムまたはアルミニウム合金などの金属で形成されている。具体的には、正極集電体140は、電極体400の正極側のタブ部410に電気的に接続されるとともに、正極端子200の締結部210に電気的に接続されている。
【0056】
負極集電体150は、電極体400と容器100との間に配置され、電極体400と負極端子300とを電気的に接続する部材である。負極集電体150は、銅または銅合金などの金属で形成されている。具体的には、負極集電体150は、電極体400の負極側のタブ部420に電気的に接続されるとともに、負極端子300の締結部310に電気的に接続されている。
【0057】
次に、電極体400の構成について、
図4を用いて説明する。
【0058】
図4は、実施の形態に係る電極体400の構成を示す斜視図である。なお、
図4では、電極体400の巻回状態を一部展開して図示している。
【0059】
電極体400は、電気を蓄えることができる発電要素である。電極体400は、正極450及び負極460と、セパレータ470a及び470bとが交互に積層されかつ巻回されることで形成されている。つまり、電極体400は、正極450と、セパレータ470aと、負極460と、セパレータ470bとがこの順に積層され、かつ、断面が長円形状になるように巻回されることで形成されている。
【0060】
正極450は、アルミニウムまたはアルミニウム合金などからなる長尺帯状の金属箔である正極基材層の表面に、正極活物質層が形成された極板である。なお、正極活物質層に用いられる正極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵放出可能な正極活物質であれば、適宜公知の材料を使用できる。例えば、正極活物質として、LiMPO
4、LiMSiO
4、LiMBO
3(MはFe、Ni、Mn、Co等から選択される1種または2種以上の遷移金属元素)等のポリアニオン化合物、チタン酸リチウム、マンガン酸リチウム等のスピネル化合物、LiMO
2(MはFe、Ni、Mn、Co等から選択される1種または2種以上の遷移金属元素)等のリチウム遷移金属酸化物等を用いることができる。
【0061】
負極460は、銅または銅合金などからなる長尺帯状の金属箔である負極基材層の表面に、負極活物質層が形成された極板である。なお、負極活物質層に用いられる負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵放出可能な負極活物質であれば、適宜公知の材料を使用できる。例えば、負極活物質として、リチウム金属、リチウム合金(リチウム−アルミニウム、リチウム−鉛、リチウム−錫、リチウム−アルミニウム−錫、リチウム−ガリウム、及びウッド合金等のリチウム金属含有合金)の他、リチウムを吸蔵・放出可能な合金、炭素材料(例えば黒鉛、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、低温焼成炭素、非晶質カーボン等)、金属酸化物、リチウム金属酸化物(Li
4Ti
5O
12等)、ポリリン酸化合物などが挙げられる。
【0062】
セパレータ470a及び470bは、樹脂からなる微多孔性のシートである。なお、蓄電素子10に用いられるセパレータ470a及び470bの素材としては、蓄電素子10の性能を損なうものでなければ適宜公知の材料を使用できる。
【0063】
正極450は、巻回軸方向の一端において外方に突出する複数の突出部411を有する。負極460も同様に、巻回軸方向の一端において外方に突出する複数の突出部421を有する。これら、複数の突出部411及び複数の突出部421は、活物質が塗工されず基材層が露出した部分(活物質未塗工部)である。
【0064】
なお、巻回軸とは、正極450及び負極460等を巻回する際の中心軸となる仮想的な軸であり、本実施の形態では、電極体400の中心を通るZ軸方向に平行な直線である。
【0065】
複数の突出部411と複数の突出部421とは、巻回軸方向の同一側の端(
図4におけるZ軸方向プラス側の端)に配置され、正極450及び負極460が積層されることにより、電極体400の所定の位置で積層される。具体的には、複数の突出部411は、正極450が巻回によって積層されることにより、巻回軸方向の一端において周方向の所定の位置で積層される。また、複数の突出部421は、負極460が巻回によって積層されることにより、巻回軸方向の一端において、複数の突出部411が積層される位置とは異なる周方向の所定の位置で積層される。
【0066】
その結果、電極体400には、複数の突出部411が積層されることで形成されたタブ部410と、複数の突出部421が積層されることで形成されたタブ部420とが形成される。タブ部410は、例えば積層方向の中央に向かって寄せ集められて、正極集電体140と、例えば超音波溶接によって接合される。また、タブ部420は、例えば積層方向の中央に向かって寄せ集められて、負極集電体150と、例えば超音波溶接によって接合される。
【0067】
なお、タブ部(410、420)は、電極体400において、電気の導入及び導出を行う部分であり、「リード(部)」、「集電部」等の他の名称が付される場合もある。
【0068】
ここで、タブ部410は、基材層が露出した部分である突出部411が積層されることで形成されているため、発電に寄与しない部分となる。同様に、タブ部420は、基材層が露出した部分である突出部421が積層されることで形成されているため、発電に寄与しない部分となる。一方、電極体400のタブ部410及び420と異なる部分は、基材層に活物質が塗工された部分が積層されることで形成されているため、発電に寄与する部分となる。以降、当該部分を本体部430と称する。本体部430のX軸方向における両端部は、その外周面が湾曲した湾曲部431及び432となる。また、電極体400における湾曲部431及び432の間の部分は、外側面が平坦な平坦部433となる。このように、電極体400は、2つの湾曲部431及び432の間に平坦部433が配置された長円状に形成されている。
【0069】
次に、サイドスペーサ700の具体的な構成について説明する。ここでは、負極側のサイドスペーサ700を例示するが、正極側のサイドスペーサ700についても同様の構成であるので、正極側の説明については省略する。
【0070】
図5は実施の形態に係るサイドスペーサ700を外方から見た正面図である。
図6は実施の形態に係るサイドスペーサ700を内方から見た背面図である。
図7は実施の形態に係るサイドスペーサ700の上面図である。
図8は、実施の形態に係るサイドスペーサ700を、
図5のXIII−XIII切断線を含むX−Y面から見た断面図である。
【0071】
図5〜
図8に示すように、サイドスペーサ700は、挿入方向(Z軸方向)に延在する長尺状の部材であり、PC、PP、PE、またはPPS等の絶縁性を有する素材によって形成されている。サイドスペーサ700は、容器100の本体111における内側面のうち、一対の短側面に対向するように配置されている。
【0072】
サイドスペーサ700は、壁部710と、壁部710の上端部に連結された基部720とを一体的に有する。なお、壁部710の下端部においては開放されている。
【0073】
壁部710は、挿入方向に沿って延在して電極体400の一側部を覆う部位である。具体的には、壁部710は、電極体400の湾曲部432の頂部及び当該頂部に隣接する隣接部を覆う。隣接部とは、湾曲部432における頂部に連続して隣り合う部位である。
図7及び
図8に示すように、壁部710における容器100の内方側の内側面711は、電極体400の湾曲部432に対向する面であり、当該湾曲部432に対応した滑らかな湾曲面となっている。サイドスペーサ700が電極体400に組み付けられると、壁部710の内側面711は、電極体400に湾曲部432に当接する。つまり、壁部710の内側面711は、湾曲部432に当接する当接部である。
【0074】
また、壁部710における容器100側の外側面712は、容器100の内部形状に対応して一対の角部がR形状に形成されている。この一対のR形状部分は、矩形状の容器100内部の隣り合う一対の角部に対向する。壁部710における一対のR形状部分を角部領域713とし、一対の角部領域713に挟まれて隣接する部分を中央領域714とする。中央領域714は、電極体400の湾曲部432における頂部を覆う領域であり、角部領域713は、湾曲部432における頂部の側方を覆う領域である。
【0075】
また、
図5及び
図8に示すように、角部領域713の外側面712は、リブ部730を有しており、このリブ部730によって複数の凹部716が形成されている。具体的には、リブ部730は、挿入方向に沿って延在する複数の第一リブ731と、挿入方向に交差する方向(Y軸方向)に延在する複数の第二リブ732とを備えている。この複数の第一リブ731と、第二リブ732とによって、有底の複数の凹部716が、それぞれ矩形状に形成され、行列状に配列される。このようにサイドスペーサ700に複数の凹部716が形成されているので、サイドスペーサ700を軽量化することができる。また、複数の凹部716がリブ部730によって囲まれることで形成されているので、凹部716があることにより強度が低下した部分をリブ部730によって補強することができる。
【0076】
そして、前述したように内側面711が湾曲面であり、さらに中央領域714には凹部716が設けられていない。このため、中央領域714の厚みT2を、角部領域713の厚みT1よりも概ね薄くすることができる。なお、ここで言う厚みT1、T2とは、内側面711の法線方向における厚みである。このように、中央領域714においては凹部716の影響を受けず薄くすることができる。したがって、電極体400の設置空間を広くすることができ、容器100の本体111の内寸を大きくしなくとも電極体400の外寸を大きくすることができる。
【0077】
なお、凹部716の形状は矩形状に限定されず、如何様でもよい。例えば、凹部716の形状は、円形状や、楕円形状、あるいは矩形以外の多角形状であってもよい。また、複数の凹部716が全て同じ形状であっても、異なっていてもよい。また、複数の凹部716の配列は行列状に限定されず、如何様でもよい。例えば一列あるいは一行のみ配列されていてもよいし、千鳥状あるいはランダムに配列されていてもよい。
【0078】
また、凹部716の底部7161の厚みT3は、第一リブ731と第二リブ732の厚み(
図8では、第一リブ731の厚みT4を図示)とは同等である。これにより、サイドスペーサ700全体として厚みのばらつきを抑えることができる。厚みにばらつきがあると、サイドスペーサ700を樹脂成形する際に、樹脂の硬化にともなって、成形収縮により変形する場合がある。しかしながら、サイドスペーサ700全体として厚みのばらつきが抑えられているので、厚みのばらつきを起因とした成形収縮による変形を抑制することができ、サイドスペーサ700の形状を安定化することができる。
【0079】
図5〜
図7に示すように、基部720は、天板721と、周壁722とを有する。
【0080】
天板721は、隣り合う一対の角部がR形状となった板体である。天板721は、壁部710の上端部(一端部)に連結されており、電極体400における開口112側の一端部を上方から覆う部位である。
【0081】
なお、天板721に対してスリットが設けられていてもよい。
【0082】
天板721の上面には周壁722が設けられている。周壁722は、天板721の一辺723に対応する部分を開放し、その他の天板721の辺に沿って天板721から立設している。周壁722における中央部には、凹部715が形成されている。
【0083】
図9は、実施の形態に係るサイドスペーサ700と電極体400とを組付けた状態を模式的に示す断面図である。また、説明の便宜上、電極体400は外形線のみを図示しており、ハッチングを施していない。
【0084】
なお、サイドスペーサ700における角部領域713においては、第二リブ732によってY軸方向における剛性が高められているので、当該部分においては電極体400が膨張・収縮したとしても、変形しにくくなっている。
【0085】
次に、蓄電素子10の製造方法を説明する。
【0086】
まず、電極体形成工程では、正極450及び負極460と、セパレータ470a及び470bとを交互に積層して巻回して、
図4に示す電極体400を形成する。
【0087】
巻回が完了すると、電極体400が展開しないように、当該電極体400の平坦部433に接着テープ(図示省略)を貼り付ける。
【0088】
一方、蓋構造体組立工程では、まず、負極集電体150となる板体を準備する。この板体は略90度曲げられている。そして、この板体における第一接続部151に対応する部位に対して、蓋板110と、下部絶縁部材130と、上部絶縁部材135と、負極端子300とを組み付ける。具体的には、負極端子300の連結部310を、上部絶縁部材135の貫通孔135a、蓋板110の貫通孔110b、下部絶縁部材130の貫通孔130a、及び、板体の貫通孔150aに挿入してかしめる。これにより、蓋構造体180に負極集電体150用の板体が取り付けられる。
【0089】
次いで、負極集電体150となる板体に対して、電極体400のタブ部420を溶接して固定する。溶接後においては、板体をさらに略90度折り曲げることで、
図3に示すような負極集電体150を形成する。
【0090】
正極側においても同様の手順で、正極集電体140が蓋板構造体180に取り付けられるとともに、電極体400のタブ部410に接合される。
【0091】
次いで、サイドスペーサ取付工程では、電極体400の本体部430に対してサイドスペーサ700を取り付ける。具体的には、本体部430の湾曲部431及び432毎に個別にサイドスペーサ700を取り付ける。取り付け後においては、サイドスペーサ700を本体部430に接着テープ(図示省略)で固定する。
【0092】
次いで、電極体収容工程では、一体化された電極体400及びサイドスペーサ700を容器100の本体111に収容する。このとき、本体111の開口112から、電極体400及びサイドスペーサ700が挿入される。挿入時においては、サイドスペーサ700は、蓋構造体180側から押されるために、壁部710に対して大きな力が作用する。これにより、壁部710が広がろうとするが、壁部710の一端部に天板721が連結されているので、この天板721によって壁部710の変形が抑制される。さらに、サイドスペーサ700は、挿入方向に沿って延在する第一リブ731によって、当該方向における剛性が高められている。このため、サイドスペーサ700が挿入時に変形しにくくなっている。これらのことにより、電極体400及びサイドスペーサ700をスムーズに本体111内に押し入れることができる。
【0093】
次いで、蓋板溶接工程では、本体111に蓋板110を溶接して、容器100を組み立てる。
【0094】
その後、注液工程では、注液口117から電解液を注液する。
【0095】
ここで、注液後に電解液の液面が高いと、注液工程の予備充電時又は脱泡工程時に注液口117から電解液がふき出してしまい、注液口に電解液が付着して、注液口117の封止を確実に行えないおそれがある。
【0096】
しかしながら、サイドスペーサ700に複数の凹部716が設けられているので、この凹部716内に電解液を進入させることができ、容器100内の液面を下げることができる。したがって、注液工程で発生した泡がはじけたとしても電解液が注液口からふき出しにくくなり、注液口117に対する封止の確実性を高めることができる。
【0097】
その後、注液栓118を蓋板110に溶接して注液口117を塞ぐことで、蓄電素子10が製造される。
【0098】
以上のように、本実施の形態によれば、サイドスペーサ700の壁部710における容器100側の表面に複数の凹部716が形成されているので、その凹内716に電解液を進入させることができる。これにより、容器100内の電解液の液面を下げることができる。したがって、注液工程で発生した泡がはじけたとしても電解液が注液口からふき出しにくくなり、電解液が注液口に付着することが抑制される。よって、注液口117に対する封止の確実性を高めることができる。
【0099】
また、複数の凹部716がリブ部730によって囲まれることで形成されているので、凹部716があることにより強度が低下した部分をリブ部730で補強することができる。
【0100】
また挿入方向に沿って延在する第一リブ731がサイドスペーサ700に備えられているので、挿入方向におけるサイドスペーサ700の剛性を第一リブ731によって高めることができる。また、挿入方向に交差する方向に延在する第二リブ732がサイドスペーサ700に備えられているので、電極体400が膨張・収縮することによるサイドスペーサ700の変形を第二リブ732によって抑制することができる。
【0101】
また、凹部716の底部7161の厚みT3と、リブ部730の厚みT4とが同等であるので、サイドスペーサ700全体として厚みのばらつきを抑えることができる。したがって、厚みのばらつきを起因とした成形収縮による変形を抑制することができ、サイドスペーサ700の形状を安定化することができる。なお、厚みT3と厚みT4とが完全に一致することが好ましいが、所定の範囲内で異なっていることも「同等」とする。所定の範囲とは、成形収縮による変形量がサイドスペーサ700として許容される変形量となる範囲であればよい。
【0102】
また、サイドスペーサ700の壁部710における中央領域714以外の角部領域713に、複数の凹部716が形成されているので、中央領域714においては凹部716の影響を受けず薄くすることができる。したがって、電極体400の設置空間を広くすることができ、容器100の内寸を大きくしなくとも電極体400の外寸を大きくすることができる。
【0103】
ここで、角型ケースである容器110の本体111においては、巻回型の電極体400を収容すると、ケース内部の角部に余剰空間がどうしても形成される。しかしながら、本実施の形態のように、サイドスペーサ700が容器100の本体111における一対の短側面に対向するように配置されていると、当該サイドスペーサ700の角部領域713を余剰空間に配置することができる。したがって、サイドスペーサ700の角部領域713の厚みを余剰空間に応じて厚くすることができ、剛性を高めることができる。
【0104】
(他の実施の形態)
以上、本発明に係る蓄電素子について、実施の形態に基づいて説明した。しかしながら、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を上記実施の形態に施したものも、あるいは、上記説明された複数の構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【0105】
なお、以下の説明において、上記実施の形態と同一の部分は、同一の符号を付してその説明を省略する場合がある。
【0106】
例えば、蓄電素子10が備える電極体400の個数は1には限定されず、2以上であってよい。蓄電素子10が複数の電極体400を備える場合においては、各電極体400に対して一対のサイドスペーサ700を取り付ければよい。
【0107】
また、電極体400が有する正極側のタブ部410と負極側のタブ部420との位置関係は特に限定されない。例えば、巻回型の電極体400において、タブ部410とタブ部420とが巻回軸方向の互いに反対側に配置されていてもよい。また、蓄電素子10が、積層型の電極体を備える場合、積層方向から見た場合において、正極側のタブ部と負極側のタブ部とが異なる方向に突出して設けられていてもよい。この場合、正極側のタブ部と負極側のタブ部にそれぞれ対応する位置に、下部絶縁部材、集電体等が配置されていればよい。
【0108】
また、上記実施の形態では、サイドスペーサ700の壁部710の下端部が開放された形態を例示して説明した。しかし、サイドスペーサ700の壁部710の下端部が底板で閉塞されていてもよい。