(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記カバー部は、前記底面部の前記上面部側の面に、前記溶媒供給穴の周囲に沿って突出するガイド部を有しており、前記弁軸部は、前記ガイド部の内周面を、前記延在方向に沿って移動可能である、請求項1又は請求項2に記載のボイラチューブの肉厚測定装置。
前記弁軸部は、前記末端部に弁ローラー部を有し、前記弁ローラー部は、前記カバー部が前記ボイラチューブに取付けられた際、前記ボイラチューブの外周面上を転動可能となる、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のボイラチューブの肉厚測定装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、溶媒は、カバー部に対して適切に供給が行われる必要がある。例えば測定を終えてカバーを外した場合にも溶媒が供給され続けた場合、内部の溶媒が外部に流出するおそれがある。また、例えば、測定の際に、溶媒が供給されないおそれもある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、ボイラチューブの肉厚測定の際に、溶媒を適切に供給することができるボイラチューブの肉厚測定装置を供給することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示のボイラチューブの肉厚測定装置は、全面にわたって開口する上面部がボイラチューブの外周面に取付けられて、底面部に溶媒供給穴が貫通しているカバー部と、前記カバー部の内部に設けられ、超音波を発生させて前記ボイラチューブの肉厚を検出する超音波探触部と、前記溶媒供給穴に接続されて、前記カバー部の内部に肉厚検出用の溶媒を供給する溶媒供給管と、前記溶媒供給穴に設けられる溶媒供給弁と、を有し、前記溶媒供給弁は、前記カバー部が前記ボイラチューブの外周面に取付けられた際に、前記溶媒供給穴を開いて、前記溶媒供給管からの溶媒を前記カバー部内に供給させ、前記カバー部を前記ボイラチューブの外周面から取り外した際に、前記溶媒供給穴を閉じて、前記溶媒の前記カバー部内への供給を停止させる。
【0008】
前記ボイラチューブの肉厚測定装置は、前記カバー部に取付けられるローラー部を更に有し、前記ローラー部は、前記カバー部が前記ボイラチューブの外周面に取付けられた際に、前記ボイラチューブの外周面に当接し、前記ボイラチューブの外周面上を転動可能となることが好ましい。
【0009】
前記ボイラチューブの肉厚測定装置において、前記溶媒供給弁は、前記上面部から前記底面部へ向かう延在方向に沿って前記カバー部の内部を延在し、前記延在方向と反対側の端部である末端部が前記カバー部の上面部よりも外側に突出し、前記延在方向側の端部である先端部が前記溶媒供給穴内に位置する弁軸部と、前記弁軸部の前記先端部に設けられる弁傘部と、を有し、前記溶媒供給弁は、前記カバー部が前記ボイラチューブに取付けられた際、前記弁軸部の前記末端部が前記ボイラチューブによって押圧されて前記延在方向に移動することで、前記弁傘部が前記溶媒供給穴を開き、前記カバー部が前記ボイラチューブから取り外された際、前記弁軸部の前記末端部への押圧が解除されて前記延在方向と反対側に移動することで、前記弁傘部が前記溶媒供給穴を閉じることが好ましい。
【0010】
前記ボイラチューブの肉厚測定装置において、前記溶媒供給穴は、前記底面部の前記溶媒供給管が接続されている側であって、前記底面部における前記上面部と反対側の面で開口する底面側穴と、前記底面部の前記上面部側の面に開口する上面側穴と、前記底面側穴と前記上面側穴とを導通する導通口と、前記上面側穴よりも外側に設けられ、前記底面部の前記上面部側の面から前記導通口までを貫通する複数の溶媒導通副穴と、を有し、前記溶媒供給弁は、前記弁軸部が前記上面側穴に挿通され、前記弁傘部が前記導通口内に位置しており、前記カバー部が前記ボイラチューブに取付けられた際、前記弁傘部が全ての前記溶媒導通副穴を開いて前記溶媒導通副穴から前記溶媒を供給させ、前記カバー部が前記ボイラチューブから取り外された際、前記弁傘部が全ての前記溶媒導通副穴を閉じて、前記溶媒の供給を停止させることが好ましい。
【0011】
前記ボイラチューブの肉厚測定装置において、前記カバー部は、前記底面部の前記上面部側の面に、前記溶媒供給穴の周囲に沿って突出するガイド部を有しており、前記弁軸部は、前記ガイド部の内周面を、前記延在方向に沿って移動可能であることが好ましい。
【0012】
前記ボイラチューブの肉厚測定装置において、前記弁軸部は、前記末端部に弁ローラー部を有し、前記弁ローラー部は、前記カバー部が前記ボイラチューブに取付けられた際、前記ボイラチューブの外周面上を転動可能となることが好ましい。
【0013】
前記ボイラチューブの肉厚測定装置において、前記溶媒は、粘性を有するジェルであることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ボイラチューブの肉厚測定の際に、溶媒を適切に供給することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。
【0017】
(第1実施形態)
(肉厚測定装置の構成)
図1及び
図2は、第1実施形態に係る肉厚測定装置の模式図である。
図1は、第1実施形態に係る肉厚測定装置1を正面から見た模式図であり、
図2は、肉厚測定装置1を上面から見た模式図である。
図1に示すように、肉厚測定装置1は、台座部10と、カバー部20と、超音波探触部30と、溶媒供給管40と、溶媒供給弁50と、ローラー部60とを有する。肉厚測定装置1は、例えば火力発電所などに設けられるボイラのボイラチューブT肉厚、すなわち管の厚みを測定する装置である。ボイラチューブは、ボイラ内に複数設けられ、内部に水蒸気を導通させ、ボイラ内の燃焼ガスと内部の水蒸気との熱交換を行う管である。以下、肉厚測定装置1における3軸直交方向を、方向X、方向Y、方向Zとする。方向Yは、方向Xに直交する方向であり、方向Zは、方向X及び方向Yに直交する方向である。
【0018】
台座部10は、肉厚測定装置1の各部を指示する台座である。カバー部20は、台座部10の方向Zに沿った下側に設けられている。カバー部20は、方向Zに沿った下側の面である上面部21が全面にわたって開口する容器である。カバー部20は、上面部21に対向する底面部22と、底面部22の周縁に沿って設けられた側面部23と、を有する。カバー部20は、内部に、底面部22と側面部23とに囲われた空間Sを形成する。カバー部20の上面部21の周縁、すなわち、側面部23の方向Zと反対側における先端には、接触部21Aが設けられている。接触部21Aは、円柱状のボイラチューブTの外周に沿った形状となっている。接触部21Aは、例えば、弾性変形可能な樹脂製であるが、その材質は任意である。
【0019】
カバー部20は、底面部22(の一部の領域)に、溶媒供給穴24が貫通している。
図3は、第1実施形態に係る溶媒供給穴の模式図である。
図1及び
図3に示すように、溶媒供給穴24は、底面側穴24Aと、上面側穴24Bと、導通口24Cとを有する。底面側穴24Aは、底面部22の方向Z側の表面である表面22A、すなわち上面部21と反対側の表面22Aに、方向Zに沿って開口する穴である。上面側穴24Bは、底面部22の方向Zと反対側の表面である表面22B、すなわち底面部22の上面部21側の表面に、方向Zに沿って開口する穴である。上面側穴24Bは、底面側穴24Aと方向Zに沿って同軸となっている。
【0020】
導通口24Cは、底面部22であって、底面側穴24Aと上面側穴24Bとの間に設けられ、底面側穴24Aと上面側穴24Bとを導通する穴である。すなわち、導通口24Cは、方向Zに沿った一方の端部が底面側穴24Aに接続され、他方の端部が上面側穴24Bに接続される。導通口24Cは、底面側穴24A側、すなわち方向Z側の端部24C1において開口径が大きく、上面側穴24B側、すなわち方向Zと反対側の端部24C2において開口径が小さい。導通口24Cは、端部24C1から端部24C2に向かうに従って、開口径が小さくなっている。言い換えれば、導通口24Cは、側面25が、方向Zと反対側に向かうに従って、中心軸側、すなわち径が小さくなる方向に傾斜する傾斜面となっている。導通口24Cは、端部24C1の開口径が、底面側穴24A及び上面側穴24Bの開口径よりも大きい。導通口24Cは、端部24C2の開口径は、上面側穴24Bと同じになっている。
【0021】
カバー部20は、
図1に示すように、弾性体14により、台座部10に取付けられる。具体的には、弾性体14は、バネである。弾性体14は、一方の端部が台座部10の方向Zと反対側の端部に固定され、他方の端部が底面部22の表面22Aに固定される。弾性体14は、方向Zに沿って弾性変形、すなわち伸縮可能となっている。弾性体14は、伸縮することにより、台座部10に対して、カバー部20を方向Zに移動可能に保持する。
【0022】
詳しくは後述するが、カバー部20は、上面部21がボイラチューブTの外周面に取付けられる。これにより、肉厚測定装置1は、ボイラチューブTの肉厚を測定する。
【0023】
図1に示すように、超音波探触部30は、本体部31と、本体部31の先端に設けられたヘッド部32とを有する。超音波探触部30は、本体部31が台座部10に固定されている。超音波探触部30は、ヘッド部32が、底面部22からカバー部20の内部に挿入され、カバー部20の内部、すなわち空間S内で固定されている。超音波探触部30は、ヘッド部32から超音波を発生させて、ボイラチューブTの肉厚を検出する。具体的には、超音波探触部30は、ヘッド部32から発生させた超音波に対するボイラチューブTからの反射波を取得する。超音波探触部30は、その反射波の情報を肉厚算出部34に入力し、肉厚算出部34により、その反射波に基づき、ボイラチューブTの肉厚を算出する。
【0024】
図1に示すように、溶媒供給管40は、溶媒Gを供給する管である。具体的には、溶媒供給管40は、一方の端部41が溶媒供給穴24、具体的には底面側穴24Aに接続されている。溶媒供給管40は、他方の端部42が溶媒供給装置44に接続されている。溶媒供給装置44は、溶媒Gを供給する装置、ここではポンプである。溶媒供給管40は、溶媒供給装置44から供給された溶媒Gを内部に導通させ、一方の端部41から、溶媒供給穴24に溶媒Gを導出する。ここで、溶媒Gは、超音波を伝達可能な粘性を有するジェル(ゲル)である。溶媒Gは、水を主成分として(例えば90%以上含)、樹脂や油などの有機物を含有する。溶媒Gは、粘度が、例えば5000cP以上50000cP以下となっているが、これに限られない。また、溶媒Gは、このようなジェルであることが好ましいが、例えば水やグリセリンなどであってもよい。
【0025】
図1及び
図3に示すように、溶媒供給弁50は、溶媒供給穴24内に設けられる。溶媒供給弁50は、弁軸部52と、弁傘部54と、弁ローラー部56とを有する。
【0026】
弁軸部52は、延在方向Aに沿って、カバー部20の内部、すなわち空間S内を延在する。延在方向Aは、カバー部20の上面部21から底面部22へ向かう方向であり、すなわち、方向Zに沿った方向である。弁軸部52は、延在方向Aと反対側の端部である末端部52Aが、上面部21よりも外側、すなわち上面部21よりも延在方向Aと反対側に突出している。弁軸部52は、延在方向A側の端部である先端部52Bが、溶媒供給穴24内に位置している。弁軸部52の径は、溶媒供給穴24の径、より詳しくは、上面側穴24Bより小さくなっている。従って、弁軸部52は、溶媒供給穴24、より詳しくは上面側穴24Bに、方向Z(延在方向A)に沿って移動可能に挿通されているということができる。
【0027】
弁傘部54は、弁軸部52の先端部52Bに設けられている。弁傘部54は、弁軸部52よりも径が大きい。具体的には、弁傘部54は、円錐台形状となっており、弁傘部54側の端部54Aから、延在方向A(方向Z)に沿った反対側の端部54Bに向かうに従って、径が大きくなっている。言い換えれば、弁傘部54は、側面55が、延在方向A(方向Z)と反対側に向かうに従って、中心軸側、すなわち径が小さくなる方向に傾斜する傾斜面となっている。弁傘部54は、端部54Bの径が、上面側穴24Bより大きく、導通口24Cの最大径よりも小さくなっている。また、弁傘部54は、側面55の傾斜角度θ1が、導通口24Cの側面25の傾斜角度θ2より小さい。傾斜角度θ1は、言い換えれば、端部54Bの端面と、側面55との間の角度である。傾斜角度θ2は、言い換えれば、方向X及び方向Yに平行な平面と、側面25との間の角度である。弁傘部54は、溶媒供給穴24、より詳しくは導通口24C内に位置している。
【0028】
弁ローラー部56は、弁軸部52の末端部52Aに設けられるローラーである。弁ローラー部56は、方向Xに沿って転動可能である。弁ローラー部56は、カバー部20がボイラチューブTに取付けられた際、ボイラチューブTの外周面上を転動可能となる。
【0029】
以上のように構成された溶媒供給弁50は、弾性体58により、カバー部20の底面部22に取付けられ、溶媒供給穴24内に移動可能に保持される。具体的には、弾性体58は、バネである。弾性体58は、一方の端部が弁傘部54の端部54の端面に固定され、他方の端部が、導通口24Cの端部24C1における底面部22の面に固定されている。弾性体58は、延在方向A(方向Z)に沿って弾性変形、すなわち伸縮可能となっている。弾性体58は、伸縮することにより、カバー部20に対して、溶媒供給弁50を延在方向A(方向Z)に移動可能に保持する。溶媒供給弁50は、弾性体58の伸縮により、弁傘部54が溶媒供給穴24内を移動する。
【0030】
ローラー部60は、台座部10に取付けられるローラーである。
図2に示すように、ローラー部60は、カバー部20の周囲に合計4つ設けられており、方向X、すなわち弁ローラー部56と同じ方向に沿って転動可能である。ローラー部60は、カバー部20がボイラチューブTに取付けられた際、ボイラチューブTの外周面上を転動可能となる。ローラー部60は、外側に向かうに従って、径が大きくなっている。従って、ローラー部60は、円柱形のボイラチューブTの外周に、より適切に追従することが可能となる。
【0031】
(肉厚測定の方法)
次に、肉厚測定装置1を使用したボイラチューブTの肉厚測定方法を説明する。
図4は、肉厚測定装置をボイラチューブに取付ける前の状態を示す模式図である。ボイラチューブTは、延在方向T1に沿って延在している。ボイラチューブTの肉厚を測定する際には、肉厚測定装置1のカバー部20を、ボイラチューブTの外周面に取付ける。具体的には、
図4に示すように、カバー部20を、上面部21側から、ボイラチューブTに接触させる。
【0032】
図4に示すように、カバー部20をボイラチューブTに取付ける前の状態では、弾性体58は、弁傘部54に対し延在方向Aと反対方向に力を加えている。この弾性体58からの力により、溶媒供給弁50は、弁傘部54の側面25が溶媒供給穴24(導通口24C)の側面25に接した状態で固定される。溶媒供給弁50は、弁傘部54の側面25を溶媒供給穴24の側面25に接した状態とすることで、溶媒供給穴24を閉じる。以下、この状態を閉弁状態と記載する。言い換えれば、溶媒供給弁50は、閉弁状態時には、弁傘部54により導通口24Cを塞ぎ、底面側穴24Aと上面側穴24Bとの導通を遮断する。閉弁状態では、底面側穴24Aと上面側穴24Bとの導通が遮断されているため、溶媒供給管40からの溶媒Gは、底面側穴24Aに留まり、上面側穴24Bを介してカバー部20の内部の空間Sには供給されない。
【0033】
また、閉弁状態は、溶媒供給弁50に対し、延在方向Aに沿った力が加えられていない状態であるということができる。溶媒供給弁50は、延在方向Aに沿った力が加えられていない状態では、弁軸部52の末端部52A(弁ローラー部56)が、上面部21よりも外側、すなわち上面部21よりも延在方向Aと反対側に突出している。
【0034】
図5は、肉厚測定装置をボイラチューブに取付けた状態を示す模式図である。
図5に示すように、カバー部20をボイラチューブTに取付けると、カバー部20は、上面部21が、ボイラチューブTの外周面に取付けられる。カバー部20は、接触部21Aが、ボイラチューブTの外周面に接触する。これにより、カバー部20の内部の空間Sは、ボイラチューブTの外周面により外部から閉じられる。なお、カバー部20は、方向XがボイラチューブTの延在方向T1に沿うように、ボイラチューブTに取付けられる。ローラー部60は、カバー部20をボイラチューブTに取付けた際に、ボイラチューブTの外周面に当接する。ローラー部60は方向Xに転動可能であるため、肉厚測定装置1は、カバー部20をボイラチューブTに取付けた状態で、ボイラチューブTの延在方向T1に沿って移動可能となる。
【0035】
なお、カバー部20の取付けは、例えば操作者が台座部10を保持して、台座部10をボイラチューブTに押し付けることによって行われる。台座部10をボイラチューブTに押し付けることにより、弾性体14は縮み、方向Xと反対方向の反発力を、カバー部20に伝達する。カバー部20は、この反発力により、ボイラチューブTの外周面に適切に押し当てられる。なお、カバー部20のボイラチューブTへの取付けは、操作者によって行われなくてもよく、機械駆動によって行われてもよい。
【0036】
ここで、溶媒供給弁50は、延在方向Aに沿った力が加えられていない状態(閉弁時)では、弁ローラー部56(末端部52A)が、カバー部20の上面部21よりも外側に突出している。従って、カバー部20の上面部21をボイラチューブTに取付けた際、ボイラチューブTは、弁ローラー部56に接触し、弁ローラー部56に対し、延在方向Aに沿った力を加える。これにより、溶媒供給弁50は、弾性体58を延在方向Aに押しつつ、延在方向Aに移動する。これにより、溶媒供給弁50は、弁傘部54の側面25と溶媒供給穴24の側面25との接触が解除され、弁傘部54の側面25と溶媒供給穴24の側面25との間に空間が生じる。溶媒供給弁50は、弁傘部54の側面25と溶媒供給穴24の側面25との間の空間で、底面側穴24Aと上面側穴24Bとを導通する。すなわち、溶媒供給弁50は、溶媒供給穴24を開く。以下、この状態を開弁状態と記載する。開弁状態では、底面側穴24Aと上面側穴24Bとが導通しているため、溶媒供給管40からの溶媒Gは、底面側穴24Aからこの空間を通り、上面側穴24Bに供給される。上面側穴24Bに供給された溶媒Gは、カバー部20の内部の空間Sに導入される。
【0037】
例えば操作者は、カバー部20の内部の空間Sに溶媒Gが充填された後に、超音波探触部30を操作し、ヘッド部32から超音波を発生させる。これにより、肉厚測定装置1は、肉厚算出部34により、超音波の反射波を解析して、ボイラチューブTの肉厚を算出する。
【0038】
また、操作者は、肉厚測定装置1をボイラチューブTの延在方向T1に移動させつつ、ヘッド部32から超音波を発生させることで、ボイラチューブTの肉厚を、延在方向T1に沿って連続的に計測することが可能となる。
【0039】
操作者は、肉厚測定終了後、カバー部20をボイラチューブTから取り外す。カバー部20をボイラチューブTから取り外すと、溶媒供給弁50に対する延在方向Aに沿った力は解除され、溶媒供給弁50は、延在方向Aと反対側に移動し、閉弁状態に戻る。溶媒供給弁50は、閉弁状態に戻ることで、カバー部20の内部の空間Sへの溶媒Gの供給が停止する。
【0040】
ここで、超音波をボイラチューブTに適切に伝えるためには、カバー部20内に溶媒Gが充填されている必要がある。カバー部20内の空間Sに溶媒Gが充填されていない場合、超音波がボイラチューブTに適切に伝わらず、肉厚の測定精度が低下する。第1実施形態に係る肉厚測定装置1は、カバー部20をボイラチューブTに取付けた際に、溶媒供給弁50が溶媒供給穴24を開いて、カバー部20内に溶媒Gを供給させる。肉厚測定装置1は、これにより、肉厚測定時に、溶媒Gを適切にカバー部20内の空間Sに供給することが可能となる。また、肉厚測定終了後、カバー部20をボイラチューブTから取り外した際、溶媒Gの供給が止まらないと、溶媒Gがカバー部20から外部に溢れ出し、他の作業などに影響を及ぼすおそれがある。しかし、この肉厚測定装置1は、カバー部20をボイラチューブTから取り外した際、溶媒供給弁50が溶媒供給穴24を閉じて、溶媒Gの供給を停止させる。これにより、肉厚測定装置1は、肉厚測定終了後にカバー部20から溶媒Gがあふれ出し、外部に溶媒Gが流出することを抑制することができる。このように、肉厚測定装置1は、溶媒供給弁50を有するため、溶媒をカバー部20内に適切に供給することができる。
【0041】
以上説明したように、第1実施形態に係るボイラチューブTの肉厚測定装置1は、カバー部20と、超音波探触部30と、溶媒供給管40と、溶媒供給弁50とを有する。カバー部20は、全面にわたって開口する上面部21がボイラチューブTの外周面に取付けられて、底面部22に溶媒供給穴24が貫通している。超音波探触部30は、カバー部20の内部に設けられ、超音波を発生させてボイラチューブTの肉厚を検出する。溶媒供給管40は、溶媒供給穴24に接続されて、カバー部20の内部に肉厚検出用の溶媒Gを供給する。溶媒供給弁50は、溶媒供給穴24内に設けられる。溶媒供給弁50は、カバー部20がボイラチューブTの外周面に取付けられた際、溶媒供給穴24を開いて、溶媒供給管40からの溶媒Gをカバー部20内に供給させる。溶媒供給弁50は、カバー部20をボイラチューブTの外周面から取り外した際に、溶媒供給穴24を閉じて、溶媒Gのカバー部20内への供給を停止させる。
【0042】
この肉厚測定装置1は、溶媒供給弁50により、カバー部20がボイラチューブTの外周面に取付けられた際には、溶媒Gをカバー部20内に供給させ、カバー部20をボイラチューブTの外周面から取り外した際には、溶媒Gのカバー部20内への供給を停止させる。従って、この肉厚測定装置1は、肉厚測定時には、溶媒Gをカバー部20内に供給させ、肉厚測定を行わない際には、溶媒Gのカバー部20内への供給を停止させる。従って、この肉厚測定装置1は、肉厚測定用の溶媒Gを適切に供給することができる。
【0043】
また、この肉厚測定装置1は、カバー部20に取付けられるローラー部60を更に有する。ローラー部60は、カバー部20がボイラチューブTの外周面に取付けられた際に、ボイラチューブTの外周面に当接し、ボイラチューブTの外周面上を転動可能となる。この肉厚測定装置1は、ローラー部60によってボイラチューブT上で移動可能となるため、ボイラチューブTの肉厚を、移動方向に沿って連続的に計測することが可能となる。
【0044】
また、溶媒供給弁50は、弁軸部52と、弁傘部54とを有する。弁軸部52は、延在方向Aに沿ってカバー部20の内部を延在し、延在方向Aと反対側の端部である末端部52Aが上面部21よりも外側に突出し、延在方向A側の端部である先端部52Bが溶媒供給穴24内に位置する。弁傘部54は、弁軸部52の先端部52Bに設けられる。溶媒供給弁50は、カバー部20がボイラチューブTに取付けられた際、弁軸部52の末端部52AがボイラチューブTによって押圧されて延在方向Aに移動することで、弁傘部54が溶媒供給穴24を開く。溶媒供給弁50は、カバー部20がボイラチューブTから取り外された際、弁軸部52の末端部52Aへの押圧が解除されて延在方向Aと反対側に移動することで、弁傘部54が溶媒供給穴24を閉じる。この溶媒供給弁50は、ボイラチューブTによって押圧されることで溶媒供給穴24を開くため、肉厚測定時に溶媒Gを適切に供給することができる。また、溶媒供給弁50は、押圧が解除されることで溶媒供給穴24を閉じるため、肉厚測定を行わない際に、溶媒Gのカバー部20内への供給を適切に停止させる。従って、この肉厚測定装置1は、肉厚測定用の溶媒Gを適切に供給することができる。
【0045】
また、弁軸部52は、末端部52Aに弁ローラー部56を有する。弁ローラー部56は、カバー部20がボイラチューブTに取付けられた際、ボイラチューブTの外周面上を転動可能となる。溶媒供給弁50は、弁ローラー部56を有するため、例えば、カバー部20をボイラチューブTに取付けたまま、肉厚測定装置1を移動させた際にも、弁軸部52の摩擦力を低減させ、より容易に肉厚測定装置1を移動させることができる。
【0046】
また、溶媒Gは、粘性を有するジェルである。肉厚測定装置1は、溶媒Gとして粘性を有するジェルを用いることで、溶媒Gが、カバー部20やボイラチューブTの表面などから流出することを抑制することができる。例えば溶媒Gとして水を用いた場合、水は粘性が低いため、カバー部20やボイラチューブTの表面などから、下方に水が落ちることがある。この場合、下方で他の作業が行われる場合の邪魔となる場合がある。この肉厚測定装置1は、溶媒Gとして粘性の高いジェルを用いることで、肉厚測定による他の作業への影響を低減することができる。
【0047】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態に係る肉厚測定装置1aは、溶媒供給穴24aが複数の溶媒導通副穴24Daを有する点で、第1実施形態とは異なる。第2実施形態において第1実施形態と構成が共通する箇所は、説明を省略する。
【0048】
図6は、第2実施形態に係る肉厚測定装置の模式図である。
図6に示すように、肉厚測定装置1aは、カバー部20aが、底面部22に溶媒供給穴24aを有している。
【0049】
図7及び
図8は、第2実施形態に係る溶媒供給穴の模式図である。
図7は、溶媒供給穴24aを正面から見た断面図である。
図8は、
図7の方向Kから溶媒供給穴24aを正面から見た図である。
図7に示すように、溶媒供給穴24aは、底面側穴24Aと、上面側穴24Bと、導通口24Cと、複数の溶媒導通副穴24Daと、を有する。底面側穴24Aと上面側穴24Bと導通口24Cとは、第1実施形態と同様の形状である。
【0050】
溶媒導通副穴24Daは、上面側穴24Bよりも外側に設けられている穴である。すなわち、溶媒導通副穴24Daは、上面側穴24Bよりも、上面側穴24Bの方向Zに沿った中心軸に対する放射方向の外側に設けられている。具体的には、溶媒導通副穴24Daは、導通口24Cの側面25に一方の端部24D1を有し、底面部22の表面22Aに他方の端部24D2を有する開口であり、側面25と表面22Aとを貫通する。すなわち、溶媒導通副穴24Daは、底面部22の上面部21側の表面22Aから導通口24Cまでを貫通する。
【0051】
図8に示すように、溶媒導通副穴24Daは、上面側穴24Bの周囲に計6個設けられているが、複数であれば、その設けられる数は任意である。ただし、溶媒導通副穴24Daは、一つであってもよい。
【0052】
また、カバー部20aは、底面部22の上面部21側の表面22Aに、溶媒供給穴24a、より具体的には上面側穴24Bの周囲に沿って、方向Zと反対側に突出するガイド部26aを有する。
【0053】
次に、第2実施形態における溶媒供給弁50の閉弁状態及び開弁状態について説明する。
図9は、第2実施形態における閉弁状態を示した図である。
図9に示すように、閉弁状態、すなわちカバー部20aをボイラチューブTに取付けていない状態では、弾性体58からの力により、溶媒供給弁50は、弁傘部54の側面25が導通口24Cの側面25に接した状態で固定される。ここで、弁傘部54の端部54Bは、側面25が導通口24Cの側面25に接した状態で、溶媒導通副穴24Daの一方の端部24D1よりも、方向Z側に位置する。従って、溶媒供給弁50は、この状態で、弁傘部54により、底面側穴24Aと全ての溶媒導通副穴24Daとの導通を遮断する。これにより、溶媒供給弁50は、溶媒供給穴24a、すなわち全ての溶媒導通副穴24Daを閉じる閉弁状態となる。閉弁状態では、底面側穴24Aと溶媒導通副穴24Daとの導通が遮断されているため、溶媒供給管40からの溶媒Gは、底面側穴24Aに留まり、溶媒導通副穴24Daには供給されない。従って、溶媒供給管40からの溶媒Gは、カバー部20内部の空間Sに供給されない。なお、溶媒供給弁50は、底面側穴24Aと上面側穴24Bとの導通も遮断している。
【0054】
図10は、第2実施形態における開弁状態を示した図である。
図10に示すように、開弁状態、すなわちカバー部20aをボイラチューブTに取付けた状態では、ボイラチューブTが弁ローラー部56に押し当てられるため、溶媒供給弁50が延在方向Aに移動する。これにより、媒供給弁50は、弁傘部54の側面25と溶媒供給穴24の側面25との接触が解除され、弁傘部54の側面25と溶媒供給穴24の側面25との間に空間が生じる。溶媒供給弁50は、この空間で、底面側穴24Aと全ての溶媒導通副穴24Daとを導通する。すなわち、溶媒供給弁50は、溶媒供給穴24、すなわち全ての溶媒導通副穴24Daが開いた開弁状態となる。開弁状態では、底面側穴24Aと溶媒導通副穴24Daとが導通しているため、溶媒供給管40からの溶媒Gは、底面側穴24Aからこの空間を通り、溶媒導通副穴24Daに供給される。溶媒導通副穴24Daに供給された溶媒Gは、カバー部20の内部の空間Sに導入される。
【0055】
なお、溶媒供給弁50は、開弁状態と閉弁状態とが切り替わる際、弁軸部52が、延在方向Aに沿って、上面側穴24Bの内部を移動する。上面側穴24Bの外周には、ガイド部26aが設けられている。従って、弁軸部52は、ガイド部26aの内周面を、延在方向Aに沿って移動可能となるため、ガイド部26aにガイドされて、より安定的に延在方向Aに沿って移動することが可能となる。
【0056】
以上説明したように、第2実施形態に係る溶媒供給穴24aは、底面側穴24Aと、上面側穴24Bと、導通口24Cと、複数の溶媒導通副穴24Daと、を有する。底面側穴24Aは、底面部22の溶媒供給管40が接続されている側であって、底面部22における上面部21と反対側の表面22Aで開口する。上面側穴24Bは、底面部22の上面部21側の表面22Bで開口する。導通口24Cは、底面側穴24Aと上面側穴24Bとを導通する。溶媒導通副穴24Daは、上面側穴24Bよりも外側に設けられ、底面部22の上面部21側の表面22Bから導通口24Cまでを貫通する。溶媒供給弁50は、弁軸部52が上面側穴24Bに挿通され、弁傘部54が導通口24C内に位置している。溶媒供給弁50は、カバー部20aがボイラチューブTに取付けられた際、弁傘部54が全ての溶媒導通副穴24Daを開いて溶媒導通副穴24Daから溶媒Gを供給させる。溶媒供給弁50は、カバー部20aがボイラチューブTから取り外された際、弁傘部54が全ての溶媒導通副穴24Daを閉じて、溶媒Gの供給を停止させる。
【0057】
第2実施形態に係る肉厚測定装置1aは、溶媒供給弁50により、カバー部20aがボイラチューブTの外周面に取付けられた際には、溶媒Gを複数の溶媒導通副穴24Daからカバー部20a内に供給させ、カバー部20aをボイラチューブTの外周面から取り外した際には、溶媒Gのカバー部20a内への供給を停止させる。この肉厚測定装置1aは、複数の溶媒導通副穴24Daから溶媒Gを供給するため、一部の穴が詰まるなどして供給不良が起きた場合でも、他の穴から溶媒Gを供給することが可能となる。従って、肉厚測定装置1aは、溶媒Gをより適切に供給することができる。特に、溶媒Gが粘性を有するジェルである場合、穴が詰まるおそれが高くなる。このような場合でも、肉厚測定装置1aは、複数の溶媒導通副穴24Daから溶媒Gを供給するため、溶媒Gをより適切に供給することができる。
【0058】
また、第2実施形態に係る肉厚測定装置1aは、底面部22の上面部21側の表面22Aに、溶媒供給穴24Aの周囲に沿って突出するガイド部26aを有している。弁軸部52は、ガイド部26aの内周面を、延在方向Aに沿って移動可能である。肉厚測定装置1aは、弁軸部52をガイド部26aでガイドすることにより、溶媒供給弁50を、より安定的に延在方向Aに沿って移動することが可能となる。
【0059】
なお、第2実施形態に係るカバー部20aは、溶媒導通副穴24Daで溶媒Gを導通させ、上面側穴24Bでは溶媒Gを導通させなくてもよい。従って、カバー部20aは、内部に弁軸部52を挿通する上面側穴24Bの径を、弁軸部52が摺動可能な程度の径まで小さくすることができる。上面側穴24Bの径を、弁軸部52が摺動可能な程度の径にし、かつ、ガイド部26aを設けることで、弁軸部52は、ガイド部26aにガイドされつつ、上面側穴24B及びガイド部26aの内面を、方向Zに沿って安定して摺動することが可能となる。
【0060】
以上、本発明の実施形態について説明したが、これら実施形態の内容によりこの発明が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。