(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
導電性炭素材料(A)が、カーボンブラック、グラフェン系炭素材料およびカーボンナノチューブからなる群から選ばれる一種以上の炭素材料である請求項1〜3いずれか記載の空気一次電池用電極ペースト組成物。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、詳細に本発明について説明する。尚、本明細書では、「空気電池用電極ペースト組成物」を、「電極ペースト組成物」あるいは「ペースト組成物」ということがある。また、「樹脂」を「重合体」ということがある。
【0017】
<空気電池用電極ペースト組成物>
本発明の電極ペースト組成物は、導電性炭素材料(A)及び/又は酸素還元触媒(B)と、水溶性樹脂型分散剤(C)、水性液状媒体(D)を含み、さらにバインダー、必要に応じて、支持電解質塩を含む。
導電性炭素材料(A)及び/又は酸素還元触媒(B)と、水溶性樹脂型分散剤(C)、水性液状媒体(D)、バインダー、支持電解質塩の割合は、特に限定されるものではなく、広い範囲内で適宜選択され得る。
【0018】
水溶性樹脂型分散剤(C)の含有量は、電極ペースト組成物中の導電性炭素材料(A)及び/又は酸素還元触媒(B)に対し、0.1〜40質量%、好ましくは1〜5質量%である。この範囲の含有量とすることにより、導電性炭素材料(A)及び/又は酸素還元触媒(B)の分散安定性を十分に達成できると同時に、導電性炭素材料(A)及び/又は酸素還元触媒(B)の凝集を効果的に防止でき、かつ電極ペースト組成物を塗工、乾燥後も、膜表面への水溶性樹脂型分散剤(C)の析出を防止できる。
【0019】
また、水溶性液状媒体(D)は、電極ペースト組成物を100質量%としたとき、60〜99質量部%、好ましくは65〜95質量%である。
【0020】
このような電極ペースト組成物は、種々の方法で得ることができる。
導電性炭素材料(A)及び/又は酸素還元触媒(B)と、水溶性樹脂型分散剤(C)とバインダーと水性液状媒体(D)とを含有する、電極ペースト組成物の場合を例にとって説明する。
例えば、
(X−1) 導電性炭素材料(A)及び/又は酸素還元触媒(B)と水溶性樹脂型分散剤(C)と水性液状媒体(D)とを含有する導電性炭素材料(A)及び/又は酸素還元触媒(B)の水性分散体を得、該水性分散体にバインダーとを加え、電極ペースト組成物を得ることができる。
(X−2) 導電性炭素材料(A)及び/又は酸素還元触媒(B)と水溶性樹脂型分散剤(C)とバインダーと水性液状媒体(D)と含有する導電性炭素材料(A)及び/又は酸素還元触媒(B)の水性分散体を得、電極ペースト組成物を得ることができる。
(X−3) 水溶性樹脂型分散剤(C)とバインダーと水性液状媒体(D)とを含有する溶液を得、さらに導電性炭素材料(A)及び/又は酸素還元触媒(B)を加え、電極ペースト組成物を得ることができる。
【0021】
<導電性炭素材料(A)>
本発明における導電性炭素材料(A)としては、導電性を有し、本発明でいうところの酸素還元活性を有さない炭素材料であれば特に限定されるものではないが、グラファイト、カーボンブラック、導電性炭素繊維(カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンファイバー)、フラーレン等を単独で、もしくは2種類以上併せて使用することができる。導電性、入手の容易さ、およびコスト面から、カーボンブラックの使用が好ましい。
【0022】
カーボンブラックとしては、気体もしくは液体の原料を反応炉中で連続的に熱分解し製造するファーネスブラック、特にエチレン重油を原料としたケッチェンブラック、原料ガスを燃焼させて、その炎をチャンネル鋼底面にあて急冷し析出させたチャンネルブラック、ガスを原料とし燃焼と熱分解を周期的に繰り返すことにより得られるサーマルブラック、特にアセチレンガスを原料とするアセチレンブラックなどの各種のものを単独で、もしくは2種類以上併せて使用することができる。また、通常行われている酸化処理されたカーボンブラックや、中空カーボン等も使用できる。
【0023】
カーボンの酸化処理は、カーボンを空気中で高温処理したり、硝酸や二酸化窒素、オゾン等で二次的に処理したりすることより、例えばフェノール基、キノン基、カルボキシル基、カルボニル基の様な酸素含有極性官能基をカーボン表面に直接導入(共有結合)する処理であり、カーボンの分散性を向上させるために一般的に行われている。しかしながら、官能基の導入量が多くなる程カーボンの導電性が低下することが一般的であるため、酸化処理をしていないカーボンの使用が好ましい。
【0024】
用いるカーボンブラックの比表面積は、値が大きいほど、カーボンブラック粒子どうしの接触点が増えるため、電極の内部抵抗を下げるのに有利となる。具体的には、窒素の吸着量から求められる比表面積(BET)で、20m
2/g以上、1500m
2/g以下、好ましくは50m
2/g以上、1500m
2/g以下、更に好ましくは100m
2/g以上、
1500m
2/g以下のものを使用することが望ましい。比表面積が20m
2/gを下回るカーボンブラックを用いると、十分な導電性を得ることが難しくなる場合があり、1500m
2/gを超えるカーボンブラックは、市販材料での入手が困難となる場合がある。
【0025】
また、用いるカーボンブラックの粒径は、一次粒子径で0.005〜1μmが好ましく、特に、0.01〜0.2μmが好ましい。ただし、ここでいう一次粒子径とは、電子顕微鏡などで測定された粒子径を平均したものである。
【0026】
導電性炭素材料(A)の電極ペースト組成物中の分散粒径は、0.03μm以上、5μm以下に微細化することが望ましい。炭素材料の分散粒径が0.03μm未満の組成物は、その作製が難しい場合がある。又、炭素材料の分散粒径が5μmを超える組成物を用いた場合には、電極ペースト塗膜の材料分布のバラつき、抵抗分布のバラつき等の不具合が生じる場合がある。
ここでいう分散粒径とは、体積粒度分布において、粒子径の細かいものからその粒子の体積割合を積算していったときに、50%となるところの粒子径(D50)であり、一般的な粒度分布計、例えば、動的光散乱方式の粒度分布計(日機装社製「マイクロトラックUPA」)等で測定される。
【0027】
市販のカーボンブラックとしては、例えば、トーカブラック#4300、#4400、#4500、#5500等(東海カーボン社製、ファーネスブラック)、プリンテックスL等(デグサ社製、ファーネスブラック)、Raven7000、5750、5250、5000ULTRAIII、5000ULTRA等、Conductex SC ULTRA
、Conductex 975 ULTRA等、PUER BLACK100、115、2
05等(コロンビヤン社製、ファーネスブラック)、#2350、#2400B、#2600B、#3050B、#3030B、#3230B、#3350B、#3400B、#5400B等(三菱化学社製、ファーネスブラック)、MONARCH1400、1300、900、VulcanXC−72R、BlackPearls2000等(キャボット社製、ファーネスブラック)、Ensaco250G、Ensaco260G、Ensaco350G、SuperP−Li(TIMCAL社製)、ケッチェンブラックEC−300J、EC−600JD(アクゾ社製)、デンカブラック、デンカブラックHS−100、FX−35(電気化学工業社製、アセチレンブラック)等、グラファイトとしては、例えば人造黒鉛や燐片状黒鉛、塊状黒鉛、土状黒鉛などの天然黒鉛が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0028】
導電性炭素繊維としては石油由来の原料から焼成して得られるものが良いが、植物由来の原料からも焼成して得られるものも用いることができる。例えば石油由来の原料で製造される昭和電工社製のVGCFなどを挙げることができる。
【0029】
<酸素還元触媒(B)>
本発明における酸素還元触媒(B)は、本発明でいうところの酸素還元活性を有していれば、特に限定されるものではないが、担持金属触媒、酸化物系触媒、非白金系炭素触媒、を単独で、もしくは2種類以上併せて使用することができる。
酸素還元触媒は酸素還元能、導電性、比表面積、細孔容積、細孔径、表面親水度、粒子径など物性が大きく異なるため、使用する用途における要求性能やコスト等に合った最適な材料が選択される。
【0030】
本発明でいうところの酸素還元活性を有しているとは、気体状態、若しくは液中溶解状態の酸素分子を電気化学的に還元する機能を有することであり、酸素が飽和した酸性水溶液中にて回転ディスク電極法によるリニアスイープボルタメトリーを測定したとき、酸素還元反応電位(ORR電位)が0.5V(vsRHE;可逆水素電極)以上であることを意味する。ORR電位は、酸素が飽和した酸性水溶液中、2000rpm回転で、電流密度が−10μA/cm
2時の電位とした。ORR電位は、その電圧が高いほど、酸素還元触媒(B)上での酸素分子の吸着や解離が起こりやすいことを意味し、反応に必要な活性化エネルギーを下げることができるため、反応におけるエネルギーロスを低減できる。そのため、空気電池用正極材には導電性炭素材料(A)だけなく、酸素還元触媒(B)も併用した方が好ましい場合がある。
【0031】
酸素還元触媒(B)としては、特に限定されるものではないが、担持金属触媒、酸化物系触媒、非白金系炭素触媒が好ましい。酸素還元触媒は酸素還元能、導電性、比表面積、細孔容積、細孔径、表面親水度、粒子径など物性が大きく異なるため、使用する用途における要求性能やコスト等に合った最適な材料が選択される。
【0032】
担持金属触媒としては、触媒となる金属としては、白金を始めとする貴金属元素やそれら以外の卑金属元素が使用される。触媒作用の高さから、白金、パラジウム、ロジウム、金等の貴金属が好ましく、また有効比表面積を増やすためにナノ粒子や合金化されて使用される場合がある。担体としては、炭素材料、酸化物、高分子等の材料が使用することができるが、電極としての機能を考慮すると導電性の炭素材料の使用が好ましい場合がある。
【0033】
酸化物系触媒としては、主成分として、遷移金属及び酸素元素を含有した酸化物粒子であり、従来公知のものを使用することができる。酸化物粒子の結晶構造や形状、粒子径の制御、酸素欠陥の導入、窒素などの異種元素のドープ、微粒径化などが、酸素の吸着能や電子伝導性等の触媒特性を向上させることに効果が有り、高い酸素還元能を発現するために重要な意味を成す。酸化物を構成する元素としては、Zr、Ta、Ti、Nb、V、Fe、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、Cr、W、及びMoからなる群より選択された少なくとも1種の遷移金属を含む酸化物を使用することが好ましい。
【0034】
非白金系炭素触媒(以下、炭素系触媒材料またはCACともいう)とは、炭素(C)原子の集合体を主体とした多成分系からなり、それらの構成単位間に物理的・化学的な相互作用(結合)を有し、異種元素、たとえばN、B、Pなどのヘテロ原子や卑金属元素が含まれる触媒材料で、1種または2種以上の、炭素材料または窒素元素および卑金属元素を有する化合物を混合、熱処理して、得ることができ、従来公知のものを使用することができる。ここでいう卑金属元素とは、遷移金属元素のうち貴金属元素(ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、オスミウム、イリジウム、白金、金)を除く金属元素であり、卑金属元素としては、コバルト、鉄、ニッケル、マンガン、銅、チタン、バナジウム、クロム、亜鉛、スズ、アルミニウム、マグネシウムから選ばれる一種以上を含有することが好ましい。
ヘテロ原子と卑金属元素を含有することは、酸素還元活性を有するうえで重要な意味をなす。一般的に炭素系触媒材料の場合、その触媒活性点として、炭素材料表面に卑金属元素を中心に、例えば、4個の窒素が平面上に並んだ構造(卑金属−N4構造と呼ぶ)部分における卑金属元素や、炭素材料表面のエッジ部に導入されたヘテロ原子近傍の炭素原子などが挙げられる。
【0035】
これら酸素還元触媒(B)自体に導電性を示さない場合では、導電性炭素材料(A)と併用する方が好ましい場合がある。
【0036】
<水溶性樹脂型分散剤(C)>
本発明において使用する水溶性樹脂型分散剤(C)は、導電性炭素材料(A)及び/又は酸素還元触媒(B)に対して分散剤として有効に機能し、その凝集を緩和することができる。水溶性樹脂型分散剤(C)は、導電性炭素材料(A)及び/又は酸素還元触媒(B)に対して凝集を緩和する効果が得られれば特に限定されるものではないが、導電性炭素材料(A)及び/又は酸素還元触媒(B)の分散性、塗工適性などを考慮するとポリビニル系樹脂が好ましく、中でもノニオン性樹脂が更に好ましい。
【0037】
本発明におけるポリビニル系樹脂とは、後述するビニル基を有する重合性単量体を重合することで得られる樹脂の総称である。
【0038】
塩基性官能基を有する樹脂としては、環状を含むアミノ基およびアミノ基の一部あるいは全て中和した骨格や4級アンモニウム塩を含有し、
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、メチルエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノスチレン、ジエチルアミノスチレン等の重合性単量体の単独重合物、または他の重合性単量体との共重合物およびそれらの酸中和物が挙げられる。
【0039】
酸性官能基を有する樹脂としては、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基およびそれらを一部あるいは全てを中和した骨格を含有し、
マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、けい皮酸等のカルボキシル基を有する重合性単量体や、
ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、(メタ)アクリロイルオキシエチルスルホン酸、イソプレンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アリルオキシベンゼンスルホン酸等のスルホ基を有する重合性単量体、
モノ(2−アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、モノ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、ジフェニル(2−アクリロイルオキシエチル)ホスフェート、ジフェニル(2−メタクリロイルオキシエチル)ホスフェート、フェニル(2−アクリロイルオキシエチル)ホスフェート、アシッド・ホスホオキシエチルメタクリレート、メタクロイル・オキシエチルアシッドホスフェート・モノエタノールアミン塩、3−クロロ−2−アシッド・ホスホオキシプロピルメタクリレート、アシッド・ホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノメタクリレート、アシッド・ホスホオキシポリオキシプロピレングリコールメタクリレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルアシッドホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシ−3−ヒドロキシプロピルアシッドホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシ−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルアシッドホスフェート、アリルアルコールアシッドホスフェート等のリン酸基を有する重合性単量体の単独重合物、または他の重合性単量体との共重合物およびそれらのアルカリ中和物が挙げられる。
【0040】
塩基性官能基及び酸性官能基を有する樹脂としては、前記塩基性骨格と前記酸性骨格を共に含有するものを意味し、スチレン−マレイン酸−N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの共重合物などが挙げられる。
【0041】
ノニオン性樹脂は、前記塩基性官能基を有する樹脂、酸性官能基を有する樹脂、塩基性官能基及び酸性官能基を有する樹脂以外の水溶性樹脂であり、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリ−N−ビニルアセトアミド、ポリアルキレングリコールなどが挙げられる。
【0042】
また、ノニオン性樹脂は、次に例示する複数の重合性単量体から構成される共重合体でも良い。
【0043】
芳香環を有する重合性単量体としては、スチレン、α−メチルスチレンもしくはベンジル(メタ)アクリレートを例示出来る。
【0044】
鎖式飽和炭化水素基を有する重合性単量体としては、具体的に例示すると、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜22のアルキル(メタ)アクリレートがあり、好ましくは炭素数2〜12、さらに好ましくは炭素数2〜8のアルキル基を有するアルキル基含有アクリレートまたは対応するメタクリレートが挙げられる。これらのアルキル基は分岐してもよく、具体例としては、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ブチルヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、酢酸ビニル、酪酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ヘキサン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリル酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等、脂肪酸ビニル化合物が挙げられる。
更に、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン等、α−オレフィン化合物が挙げられる。
【0045】
環状飽和炭化水素基を有する重合性単量体としては、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0046】
ポリオキシアルキレン構造を有する重合性単量体としては、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等、末端に水酸基を有し、ポリオキシアルキレン鎖を有するモノアクリレートまたはモノメタアクリレート等、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等、末端にアルコキシ基を有し、ポリオキシアルキレン鎖を有するモノアクリレートまたは対応するモノメタアクリレートがある。また、アルキルビニルエーテル化合物としては、ブチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等が挙げられる。
また、グリシジル(メタ)クリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等のように環式化合物を用いても良い。
【0047】
水酸基を有する重合性単量体としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシスチレン、ビニルアルコール、アリルアルコール等が挙げられる。
また、ビニルアルコールの誘導体である重合性単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステルが例示できる。これらのビニルエステルを共重合し、得られた共重合体を水酸化ナトリウムなどにより鹸化することで、水酸基を形成できる。
【0048】
窒素含有の重合性単量体としては、N−ビニル−2−ピロリドン、(メタ)アクリルアミド、N−ビニルアセトアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル−(メタ)アクリルアミド等のモノアルキロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(メチロール)アクリルアミド、N−メチロール−N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(メトキシメチル)アクリルアミド等を例示できる。
【0049】
更にその他の単量体としては、パーフルオロメチルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロエチルメチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜20のパーフルオロアルキル基を有するパーフルオロアルキルアルキル(メタ)アクリレート類;
パーフルオロブチルエチレン、パーフルオロヘキシルエチレン、パーフルオロオクチルエチレン、パーフルオロデシルエチレン等のパーフルオロアルキル、アルキレン類等のパーフルオロアルキル基含有ビニルモノマー、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシラノール基含有ビニル化合物及びその誘導体などを挙げることができ、これらの群から複数用いることができる。
【0050】
エチニル化合物としては、アセチレン、エチニルベンゼン、エチニルトルエン、1−エチニル−1−シクロヘキサノール等が挙げられる。これらは単独もしくは2種類以上を併用して使用することもできる。
【0051】
水溶性樹脂型分散剤(C)は、上記に記載したポリビニル系樹脂以外にもポリウレタン系、ポリエステル系、ポリエーテル系、カルボキシメチルセルロース等のセルロース樹脂、ホルマリン縮合物、シリコーン系、及びこれらの複合系ポリマー等が挙げられる。更に、これらの水溶性樹脂型分散剤(C)は2種類以上を併用してもよい。
【0052】
市販の水溶性樹脂型分散剤(C)としては、例えば、Disperbyk−180、183、184、185、187、190、191、192、193、194、198、199、2010、2012、2015、2090、2091、2095、2096等(ビックケミー社製)、SOLSPERSE20000、27000、40000、41090、44000、46000、47000、64000、65000、66000等(日本ルーブリゾール社製)、フローレンG−700AMP、G−700DMEA、WK−13E、GW−1500、GW−1640等(共栄社化学社製)、BorchiRGen1350、0851、1253、SN95、WNS等(松尾産業社製)、TEGODispers650、651、652、655、660C、715W、740W、750W、752W、755W、760W等(巴工業社製)、ポリビニルピロリドンPVP−K30、K85、K90等(ISPジャパン社製)、エスレックBL−1、BL−2、BL−5、BL−10、BL−1H、BL−2H、BL−S、BM−S、BM−1、BM−2、BM−5、BH−A、BX−1、BX−3、BX−5等(積水化学社製)、カルボキシメチルセルロースCMC1105、1110、1130、1140、1170、1190、1205、1210、1240、1250等 (ダイセル化学工業社製)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0053】
なお、水溶性樹脂型分散剤(C)の質量平均分子量は、導電性炭素材料(A)及び/又は酸素還元触媒(B)の分散性が良好な点から、3000以上、500000未満であり、好ましくは5000以上、400000未満である。
【0054】
<水性液状媒体(D)>
本発明に使用する水性液状媒体としては、水を使用することが好ましいが、必要に応じて、例えば、導電性支持体への塗工性向上のために、水と相溶する液状媒体を使用しても良い。
水と相溶する液状媒体としては、アルコール類、グリコール類、セロソルブ類、アミノアルコール類、アミン類、ケトン類、カルボン酸アミド類、リン酸アミド類、スルホキシド類、カルボン酸エステル類、リン酸エステル類、エーテル類、ニトリル類等が挙げられ、水と相溶する範囲で使用しても良い。アルコール類としては、例えば、沸点80〜200℃程度の1価のアルコールないし多価アルコールが利用でき、好ましくは炭素数が4以下のアルコール系溶剤が挙げられる。具体的には、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール等が挙げられる。これらの1価のアルコールの中でも、2−プロパノール、1−ブタノール及びt−ブタノールが好ましい。多価アルコールとしては具体的には、プロピレングリコール、エチレングリコール等が好ましく、中でもプロピレングリコールが特に好ましい。
【0055】
<バインダー>
本発明におけるバインダーとは、導電性炭素材料(A)及び/又は酸素還元触媒(B)などの粒子を結着させるために使用されるものであり、それら粒子を溶媒中へ分散させる効果は小さいものである。
バインダーとしては、従来公知のものを使用することができ、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、スチレン−ブタジエンゴムやフッ素ゴム等の合成ゴム、ポリアニリンやポリアセチレン等の導電性樹脂等、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、及びテトラフルオロエチレン等のフッ素原子を含む高分子化合物が挙げられる。又、これらの樹脂の変性物、混合物、又は共重合体でも良く、水溶性の樹脂であっても、水分散型の樹脂であっても良い。これらバインダーは、1種または複数を組み合わせて使用することも出来る。
【0056】
また、水性液状媒体(D)を使用する場合、一般的に水性エマルションとも呼ばれるバインダーも使用できる。水性エマルションとは、バインダー樹脂が水中で溶解せずに、微粒子の状態で分散されているものである。
【0057】
使用するエマルションは特に限定されないが、(メタ)アクリル系エマルション、ニトリル系エマルション、ウレタン系エマルション、ジエン系エマルション(SBRなど)、フッ素系エマルション(PVDFやPTFEなど)等が挙げられる。
【0058】
<分散機・混合機>
本発明の電極ペースト組成物を得る際に用いられる装置としては、顔料分散等に通常用いられている分散機、混合機が使用できる。
【0059】
例えば、ディスパー、ホモミキサー、若しくはプラネタリーミキサー等のミキサー類;エム・テクニック社製「クレアミックス」、若しくはPRIMIX社「フィルミックス」等のホモジナイザー類;ペイントシェーカー(レッドデビル社製)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、若しくはコボールミル等のメディア型分散機;湿式ジェットミル(ジーナス社製「ジーナスPY」、スギノマシン社製「スターバースト」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」等)、エム・テクニック社製「クレアSS−5」、若しくは奈良機械社製「MICROS」等のメディアレス分散機;または、その他ロールミル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、分散機としては、分散機からの金属混入防止処理を施したものを用いることが好ましい。
【0060】
例えば、メディア型分散機を使用する場合は、アジテーター及びベッセルがセラミック製又は樹脂製の分散機を使用する方法や、金属製アジテーター及びベッセル表面をタングステンカーバイド溶射や樹脂コーティング等の処理をした分散機を用いることが好ましい。そして、メディアとしては、ガラスビーズ、または、ジルコニアビーズ、若しくはアルミナビーズ等のセラミックビーズを用いることが好ましい。また、ロールミルを使用する場合についても、セラミック製ロールを用いることが好ましい。分散装置は、1種のみを使用しても良いし、複数種の装置を組み合わせて使用しても良い。
【0061】
<空気電池用正極層>
空気電池用正極層は、導電性支持体(カーボンペーパなど)に前記電極ペースト組成物の直接塗布し、乾燥することにより形成される。
電極ペースト組成物の塗布方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、ナイフコーター、バーコーター、ブレードコーター、スプレー、ディップコーター、スピンコーター、ロールコーター、ダイコーター、カーテンコーター、スクリーン印刷等の一般的な方法を適用できる。
【0062】
塗布した後、乾燥することにより、塗膜(空気電池用触媒層)が形成される。乾燥温度は、通常40〜200℃程度、好ましくは70〜120℃程度である。また、乾燥時間は、乾燥温度にもよるが、通常5分〜2時間程度、好ましくは30分〜1時間程度である。
【0063】
<導電性支持体>
導電性支持体は、特に限定されないが、金属空気電池では、正極側では空気中の酸素を取り込めるように気体が通過および拡散できるような多孔質または繊維状の支持体であることが好ましい。更に電子の出し入れが必要なため、導電性を有する材料を用いらなければならない。好ましくは炭素素材からなるカーボンペーパや、カーボンフェルト、カーボンクロスなどがよい。具体例としては東レ社製の「TGP−H−090」等が挙げられる。これら導電性支持体は、ガス拡散層あるいはGDLとも呼ばれる。
【0064】
<金属空気電池>
金属空気電池は、負極活物質として金属を使用し、発生したe
-(電子)および金属イオンにより、正極側の酸素還元反応を利用して発電することができ、充放電させることで2次電池としても機能する。
金属空気電池の構成としては、負極活物質としての金属を有する負極と、空気電池用電極ペースト組成物等を塗布した正極となる導電性支持体、前記正極と負極の間で金属イオンの伝導を担う電解質層、及びセパレータよりなる。
正極としては、本発明における空気電池用電極ペースト組成物を好適に使用することができる。
【0065】
<負極材料>
負極としては、金属単体又は合金から成る金属材料を使用できる。負極として使用できる金属材料は、例えばLi、Na、Mg、Al、S i 、Ca、T i 、V、C r、M n、Feなどを挙げることができ、これらの金属担体及び合金を適用することもできる。しかしながら、これらに限定されるものではなく、空気電池に適用される従来公知の材料を用いることができる。
【0066】
<電解質層>
電解質層は、上記の金属-空気電池の正極と負極の間で金属イオンの伝導を行うものである。金属イオンの種類は、上述した負極活物質の種類によって異なり、その形態も金属イオン伝導性が有するものであれば特に限定されるものではない。例えば、水溶液や非水溶液を適用することもできるし、それらをポリマーマトリクスで保持したゲル状高分子電解質や、ポリマー電解質及び無機固体電解質を使用してもよい。また、固体電解質やセパレータを使用して、正極側、負極側で異なる電解液を使用してもよい。
【0067】
<支持電解質塩>
支持電解質塩には従来公知のものを用いることができる。支持電解質塩としては、所望のイオン電導性を有すれば問題なく、塩化カリウム、塩化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が使用でき、それらの水溶液、非水溶液が好適に使用できる。
【0068】
特に、リチウムイオンの伝導を考えた場合、電解液としては、リチウムを含んだ支持電解質塩を水または非水系の溶剤に溶解したものを用いる。
支持電解質塩としては、LiBF
4、LiClO
4、LiPF
6、LiAsF
6、LiSbF
6、LiCF
3SO
3、Li(CF
3SO
2)
2N、LiC
4F
9SO
3、Li(CF
3SO
2)
3C、LiI、LiBr、LiCl、LiAlCl、LiHF
2、LiSCN、又はLiBPh
4(ただし、Phはフェニル基である。)等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0069】
非水系の溶剤としては特に限定はされないが、例えば、
エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、及びジエチルカーボネート等のカーボネート類;
γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、及びγ−オクタノイックラクトン等のラクトン類;
テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,2−メトキシエタン、1,2−エトキシエタン、及び
1,2−ジブトキシエタン等のグライム類;
メチルフォルメート、メチルアセテート、及びメチルプロピオネート等のエステル類;
ジメチルスルホキシド、及びスルホラン等のスルホキシド類;並びに、
アセトニトリル等のニトリル類等が挙げられる。又これらの溶剤は、それぞれ単独で使用しても良いが、2種以上を混合して使用しても良い。
【0070】
さらに上記電解液を、ポリマーマトリクスに保持しゲル状とした高分子電解質とする場合、ポリマーマトリクスとしては、ポリアルキレンオキシドセグメントを有するアクリレート系樹脂、ポリアルキレンオキシドセグメントを有するポリホスファゼン系樹脂、及びポリアルキレンオキシドセグメントを有するポリシロキサン等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0071】
<セパレータ>
セパレータとしては、空気電池に使用する従来公知の材料を用いることができる。具体
的には、液状の電解質としては、例えば、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ガラス繊維、樹脂不織布、ガラス不織布、濾紙等を用いることができる。
【実施例】
【0072】
以下に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお、実施例及び比較例中、特に断りの無い限り、「部」とは「質量部」、「%」とは「質量%」を意味する。
【0073】
(合成例1)
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、n−ブタノール200.0部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を110℃に加熱して、スチレン60.0部、アクリル酸140.0部、および重合開始剤としてV−601(和光純薬工業社製)12.0部の混合物を2時間かけて滴下し、重合反応を行った。滴下終了後、さらに110℃で3時間反応させた後、V−601(和光純薬工業社製)0.6部を添加し、さらに110℃で1時間反応を続けて、共重合体溶液を得た。さらに、水を400部添加して水性化した後、100℃まで加熱し、ブタノールを水と共沸させてブタノールを留去した。水で希釈し、不揮発分20%の水性樹脂型分散剤(1)の水溶液を得た。
(合成例2)
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、n−ブタノール200.0部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を110℃に加熱して、スチレン100.0部、アクリル酸60.0部、ジメチルアミノエチルメタクリレート40.0部、および重合開始剤としてV−601(和光純薬工業社製)12.0部の混合物を2時間かけて滴下し、重合反応を行った。滴下終了後、さらに110℃で3時間反応させた後、V−601(和光純薬製)0.6部を添加し、さらに110℃で1時間反応を続けて、共重合体溶液を得た。さらに、室温まで冷却した後、ジメチルアミノエタノール74.2部添加し中和した。これは、共重合体中のカルボキシル基を100%中和する量である。さらに、水を400部添加して水性化した後、100℃まで加熱し、ブタノールを水と共沸させてブタノールを留去した。
水で希釈し、不揮発分20%の水性樹脂型分散剤(2)の水溶液を得た。
【0074】
<非白金系炭素触媒(CAC)>
[製造例1]
グラフェンナノプレートレットxGnP−C−750(XGscience社製)と鉄フタロシアニン P−26(山陽色素社製)を、質量比1/0.5(グラフェンナノプレートレット/鉄フタロシアニン)となるようにそれぞれ秤量し、粒子複合化装置メカノフュージョン(ホソカワミクロン社製)にて乾式混合を行い、混合物を得た。上記混合物を、アルミナ製るつぼに充填し、電気炉にて窒素雰囲気下、800℃で2時間熱処理を行い、非白金系炭素触媒(CAC1)を得た。
【0075】
[製造例2]
ケッチェンブラックEC−300J(ライオン社製)と鉄フタロシアニン P−26(山陽色素社製)を、質量比1/0.5(ケッチェンブラック/鉄フタロシアニン)となるようにそれぞれ秤量し、粒子複合化装置メカノフュージョン(ホソカワミクロン社製)にて乾式混合を行い、混合物を得た。上記混合物を、アルミナ製るつぼに充填し、電気炉にて窒素雰囲気下、800℃で2時間熱処理を行い、非白金系炭素触媒(CAC2)を得た。
【0076】
<ORR活性評価>
以下のようにして、上記で得られたCACのORR(酸化還元反応)活性評価を実施し、酸素還元活性を有することを確認した。
1.インキ化
CAC0.01gを秤量し、バインダーとして、20質量%ナフィオン分散溶液(和光純薬工業社製、DE2020CStype)を0.02g、分散溶媒として、純水を0.02g、エタノール1.31g、ブタノール0.13gを添加した後、超音波(45kHz)で15分間分散処理を行ない評価用インキを作製した。
2.作用電極の作製
回転電極(グラッシーカーボン電極の半径0.15cm)表面を鏡面に研磨した後、電極表面に上記評価用インキ7.5μLを滴下し、1500rpmにてスピンコートしながら自然乾燥することにより作用電極を作製した。
3.リニアスイープボルタメトリー(LSV)測定
上記で作製した作用電極と、対極(白金)、参照電極(可逆水素電極RHE)が取り付けられた電解槽に電解液(0.5M硫酸水溶液)を入れ、電解液中に酸素を十分にバブリングした後、作用電極を2000rpmで回転させながら、+1.2V(vsRHE)から+0.05V(vsRHE)の走査範囲でLSV測定を行なった。
(電解液中に窒素でバブリングを行なった後、酸素雰囲気下での測定と同走査範囲でLSV測定を行なった数値をバックグランドとした。)
ORR活性電位は、電流密度は−10μA/cm
2到達時点の電位を読み取り、可逆水素電極(RHE)を基準とした電位に換算して算出した。
上記CACのORR活性電位は、0.8V(vsRHE)であったことから、酸素還元活性を有することを確認した。
【0077】
<電極ペースト組成物の調製>
[実施例1〜22]
表1に示す組成に従い、ガラス瓶に各種水性液状媒体(D)と水溶性樹脂型分散剤(C)を仕込み、次に、導電性炭素材料(A)と酸素還元触媒(B)の合計が10部となるよう各比率で加え、又、バインダーとして60質量%PTFE水分散溶液(三井・デュポンフロロケミカル社製、60%ポリテトラフルオロエチレン水系分散体;31−J)を5.0部加え、さらにメディアとしてジルコニアビーズを添加した後に、ペイントシェーカーで分散し、電極ペースト組成物(1)〜(22)をそれぞれ作製した。
ただし、実施例19は参考例である。
【0078】
[比較例1〜4]
表1に示す組成に従い、ガラス瓶に各種水性液状媒体(D)を仕込み、導電性炭素材料(A)と酸素還元触媒(B)の合計が10部となるよう各比率で加え、又、バインダーとして60質量%PTFE水分散溶液(三井・デュポンフロロケミカル社製、60%ポリテトラフルオロエチレン水系分散体;31−J)を5.0部加え、さらにメディアとしてジルコニアビーズを添加した後に、ペイントシェーカーで分散し、電極ペースト組成物(23)〜(26)をそれぞれ作製した。
【0079】
【表1】
【0080】
表1において、水/IPA=1/1とは、水とイソプロピルアルコールを質量比で同量混合した、混合溶剤を表す。水/BuOH=4/1、水/PGM=1/1に関しても同様である。
【0081】
<空気電池用正極層の作製>
【0082】
実施例1〜22の電極ペースト組成物(1)〜(22)と、比較例1〜4、の電極ペースト組成物(23)〜(26)を、ドクターブレードにより、導電性支持体として炭素繊維からなるカーボンペーパ基材(TGP−H−090、東レ社製)上に塗布した後、大気雰囲気中95℃、60分間乾燥し、空気電池用正極層(1)〜(26)を作製した。
【0083】
<塗工性評価>
空気電池用正極は、下記に示す塗工性評価によって評価した。空気電用正極を、ビデオマイクロスコープVHX−900(キーエンス社製)にて500倍で観察し、塗工ムラ(ムラ:正極層の濃淡により評価)およびピンホール(正極層が塗布されていない欠陥の有無により評価)について、下記の基準で判定した。評価結果を表2に示す。
【0084】
(ムラ)
○:正極層の濃淡が確認されない(良好)。
△:正極層の濃淡が2〜3箇所あるが極めて微小領域である(実用上問題ない)。
×:正極層の濃淡が多数確認される、または濃淡の縞の長さが5mm以上のもの1個以上(不良)。
(ピンホ−ル)
○:ピンホールが1つも確認されない(良好)。
△:ピンホールが2〜3個あるが極めて微小である(不良)。
×:ピンホールが多数確認される、または直径1mm以上のピンホールが1個以上(極めて不良)。
【0085】
【表2】
【0086】
<空気電池特性評価>
以下では、本発明の電極ペースト組成物より作製した正極を用いて、金属‐空気電池を作製する方法及び、特性評価について例示する。
【0087】
<マグネシウム空気一次電池用セルの作製>
負極としてMg板、正極として空気電池用正極層(1)〜(26)を使用し、両極でセパレータ(不織布)を挟み込み固定し、マグネシウム空気一次電池評価用セルを得た。
【0088】
<マグネシウム空気一次電池の特性評価:開放電圧、放電容量>
得られたマグネシウム空気一次電池評価用セルのセパレータに電解液(20%塩化ナトリウム水溶液)を浸し、構成セルの開放電圧(OCV)と放電容量を充放電評価装置(ポテンショスタット)により測定した。正極に空気電池用正極層(1)〜(22)を使用したものでは、開放電圧が1.5〜2.0V、放電容量が1100〜1500mAh/gであったのに対し、空気電池用正極層(23)〜(26)では、開放電圧が1.1〜1.3V、放電容量が500〜900mAh/gであった。
【0089】
<リチウム空気二次電池用評価セルの作製>
Li箔上へ、非水系電解液(1M LiPF
6、エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート=1/1、体積比)を含ませたセパレータ(多孔質ポリプロピレンフィルム)、固体電解質(オハラ社製、LiCGC Plate 1inch×150μmt)を配置し、アルミラミネートフィルムにて固定した。この際、固体電解質側のアルミラミネートフィルムを16mm角の大きさに切り抜き、固体電解質の露出面を作製し、空気電池用負極電極を作製した。
空気二次電池用負極電極の固体電解質上に、水性電解液として、1MのLiCl水溶液を含浸した不織布を、次いで、空気電池用正極層(1)〜(26)を配置し、アルミラミネートフィルムにより固定、熱圧着することで、リチウム空気二次電池用評価セルを得た。
【0090】
<リチウム空気二次電池の特性評価:容量維持率>
得られたリチウム空気二次電池評価セルを用いて、2.0―4.8Vのカットオフ電圧、0.5mA/cm
2の電流密度の条件で、3サイクルの慣らし運転を行った。その後、同条件にて、30サイクルの充放電テストを行うことで、容量保持率(1サイクル目の放電容量に対する30サイクル目の放電容量の百分率)を求めたところ、空気電池用正極層(1)〜(22)では容量維持率91〜95.5%であるのに対し、空気電池用正極層(23)〜(26)では容量維持率35〜65%であった。
【0091】
上述のように、実施例に比べ比較例で作製した空気電池用正極層では、いずれも高い電池特性を示した。実施例では、電極ペーストの分散性が著しく向上したことで、塗工ムラやピンホールが改善され、空気電池の反応に必要な酸素が正極層全体に供給出来たことに加え、酸素還元の反応場となる炭素材料や酸素還元触媒の反応表面積を増やすことが出来たために、電池特性が向上したと考えられる。