(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の回路基板側ランドを有する回路基板を載置する天井壁を有し、該天井壁の前記第1の回路基板側ランドに対応する位置に第1の開口部を有する箱型の半導体装置用ケースと、
前記半導体装置用ケースの内部に収納され出力用電極を有する半導体チップと、
前記半導体装置用ケースの内部に収納され、下端が前記出力用電極の表面に接続された第1の導電性ブロックと、
断面が細長いU字状の部分を有するように互いに対向面を有して折れ曲がり、前記第1の開口部において前記U字の底に対応する上端を介して前記第1の回路基板側ランドに接続され、前記U字の頂部に対応する下端において前記対向面を介して前記第1の導電性ブロックの上部の両側を挟んで接触する第1の接続端子と、
前記半導体装置用ケースに固定され、前記半導体装置用ケースの内部において前記上端以外の前記第1の接続端子を覆う一対の支持側壁部と、
を備え、
前記一対の支持側壁部は、前記一対の支持側壁部の間に定義される幅が最も狭い狭窄部を、前記第1の接続端子及び前記第1の導電性ブロックの接触位置より上側の位置に有し、
前記狭窄部において、前記第1の接続端子の両側から前記第1の接続端子に前記一対の支持側壁部のそれぞれを接触させることにより、前記第1の導電性ブロックが前記第1の接続端子の内壁を押圧することを特徴とする半導体装置。
前記第1の接続端子のU字をなす一対の側壁には、同じ高さ位置で測ったときの外壁面間の長さが、前記狭窄部の幅より長い膨張部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
前記半導体チップを搭載する絶縁基板を更に備え、前記絶縁基板によって前記半導体装置用ケースの底部を閉じることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各装置や各部材の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判定すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0014】
また、以下の説明における「左右」や「上下」の方向は、単に説明の便宜上の定義であって、本発明の技術的思想を限定するものではない。よって、例えば、紙面を90度回転すれば「左右」と「上下」とは交換して読まれ、紙面を180度回転すれば「左」が「右」に、「右」が「左」になることは勿論である。
【0015】
(半導体装置の構造)
本発明の実施の形態に係る半導体装置は、
図1に示すように、回路基板側ランド31aを有する回路基板30を載置する天井壁60tを有し、この天井壁の回路基板側ランド31aに対応する位置に開口部を有する箱型のケース60を備える。また本発明の実施の形態に係る半導体装置は、ケース60の内部に収納され出力用電極21aを有する半導体チップ20aと、ケース60の内部に収納され、下端が出力用電極21aの表面に接続された導電性ブロック40aと、を備える。
【0016】
また本発明の実施の形態に係る半導体装置は、断面が細長いU字状の部分を有するように互いに対向面を有して折れ曲がった接続端子50aを備える。接続端子50aは、開口部においてU字の底に対応する上端を介して回路基板側ランド31aに接続され、U字の
頂部に対応する下端において対向面を介して導電性ブロック40aの上部の両側を挟んで接触する。
【0017】
絶縁基板10は、例えばDCB基板やアルミ基板等であって、銅箔等の導電性パターンが付加された領域を有し、半導体チップを搭載して回路を形成するベース部材である。絶縁基板10は、いわゆる銅ベースレスタイプと称されるような、コストダウンと熱抵抗の低減を図るために、冷却ベースを介さずに冷却体に直接固定される半導体装置を実現できる。
【0018】
半導体チップ20aである半導体素子としては、例えばFWDをIGBTに内蔵させた逆導通絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(RC−IGBT)等を採用できる。
図1中に例示された2枚の半導体チップ20a,20bは、平面パターンで矩形状であり、半導体チップ20aの上面には、出力用電極21aと共に、オープンエミッタ用電極22a及びゲート電極23aが設けられている。尚、半導体チップ20a,20bの内部の半導体領域の積層構造や配置状態の図示は省略する。
【0019】
出力用電極21a及びオープンエミッタ用電極22aは、いずれも平面パターンで矩形状の領域であり、半導体チップ20aの上面上に、
図1中の左下から右上に向かう奥行方向に沿って、間隔を空けて互いに平行に延びるようにそれぞれ設けられている。ゲート電極23aは、半導体チップ20aの上面上で、出力用電極21aのオープンエミッタ用電極22aと反対側に設けられている。出力用電極21a、オープンエミッタ用電極22a及びゲート電極23aのそれぞれの表面には、半田メッキ処理が施されている。出力用電極21aの表面には、導電性ブロック40aが、例えば半田付けにより電気的に接合されている。
【0020】
またオープンエミッタ用電極22a及びゲート電極23aのそれぞれの表面には、例えばリードフレーム等の接続部材が半田付け等によって設けられ、絶縁基板10の他の領域と電気的に接合されている。本発明の実施の形態に係る半導体装置の絶縁基板10上では、ボンディングワイヤーは使用されていない。
【0021】
ケース60は、樹脂等の絶縁性素材で構成され、本発明の「半導体装置用ケース」に相当する。ケース60は例えば直方体状であって、一面が開口した箱型である。ケース60の開口位置に絶縁基板10を底として嵌め合わせることにより、ケース60及び絶縁基板10は一体化される。
【0022】
ケース60の天井壁60tの上には、
図1に示すように、半導体チップ20aと電気的に接続される回路基板30が載置される。ケース60の天井壁60tには、
図2に示すように、平面パターンで外縁が矩形状に表れる複数の開口部が設けられている。
図2は、回路基板30を除いた状態におけるケース60の上面を示す。本発明の実施の形態に係る半導体装置は全体として、6個の半導体チップ20a〜20fが搭載された半導体モジュールである。
【0023】
ケース60には、
図1に示すように、開口部の矩形の長辺側から絶縁基板10側に向かって下に延び、ケース60の内側で接続端子50aを互いに対向する狭窄部61cによって支持する一対の支持側壁部61a,61bが設けられている。一対の支持側壁部61a,61bは、例えば、断面が対向する狭窄部61cをクランクピンとするクランクシャフトのように直角に折れ曲がった形状である。すなわち一対の支持側壁部61a,61bの上下の垂直方向に延びる板状の部分の断面形状は、クランクシャフトの場合であれば、クランクピンの上下のジャーナル部にそれぞれ対応する。一対の支持側壁部61a,61bは、ケース60と同じ素材が採用可能であり、例えば樹脂の押出成形等によりケース60と一体的に製造できる。
【0024】
一対の支持側壁部61a,61bは、接続端子50aのU字の一対の側壁に対応して設けられ、接続端子50aの一対の側壁のそれぞれを外側から支持する。一対の支持側壁部61a,61bが対向配置されることにより、ケース60の内側に第1格納空間60a1及び第2格納空間60a2が上下に並んで形成される。上側の第1格納空間60a1は直方体状であり、第1格納空間60a1内には接続端子50aの上部が格納される。下側の第2格納空間60a2も直方体状であり、第2格納空間60a2内には接続端子50aの下部及び導電性ブロック40aが格納される。
【0025】
一対の支持側壁部61a,61bの下端は、半導体チップ20aの表面を傷つけないように、半導体チップ20aの表面から離間している。尚、
図2中には、6個の半導体チップ20a〜20fのそれぞれに対応する位置の天井壁60tに開口する開口部を介して表れる6個の第1格納空間60a1〜60f1及び6個の接続端子50a〜50fが例示されている。
【0026】
次に、
図3を参照して、導電性ブロック40a、接続端子50a及び一対の支持側壁部61a,61bをそれぞれ具体的に説明する。導電性ブロック40aは例えば銅等の金属で構成できる。導電性ブロック40aは、断面形状が逆T字状に表れる角柱状の基台部41aと、この基台部41aの上に設けられた円柱状の突起部43aとを有する。基台部41aの下面の矩形の4辺は、
図1及び
図3に示すように、出力用電極21aの表面の矩形の外縁から僅かに離間した内側に配置される。
【0027】
すなわち導電性ブロック40aの基台部41aは、出力用電極21aの表面の大部分の領域を介して面接合している。突起部43aの外周面は湾曲し、この外周面に接続端子50aの開口部の内壁面が接触して、突起部43aの両側の外周面上にそれぞれ、線状又は面状に表れる一対の接触領域が形成される。
【0028】
一対の支持側壁部61a,61bは、
図3に示すように、それぞれケース60の天井壁60tの領域の一部から連続してほぼ鉛直下方に垂れ下がった後、上端から下端の間で、クランクシャフト状に折れ曲がっている。一対の支持側壁部61a,61bは、上端及び下端の間でそれぞれほぼ同じ厚みであり、断面形状が左右対称である。一対の支持側壁部61a,61bは、上端でケース60の天井壁60tに固定され、接続端子50aの上端以外の部分を両側から覆う。
【0029】
一対の支持側壁部61a,61bの狭窄部61cは、上下方向のほぼ中央の高さで、第1格納空間60a1と第2格納空間60a2の間に設けられている。狭窄部61cは、一対の支持側壁部61a,61bの間に定義される幅が最も狭い領域である。狭窄部61cは、接続端子50a及び導電性ブロック40aの接触位置より上側に位置する。
【0030】
第1格納空間60a1、狭窄部61cの内側及び第2格納空間60a2を貫通する上下方向の領域に、接続端子50aが差し込まれ、狭窄部61cにおいて接続端子50aに一対の支持側壁部61a,61bが両側から接触する。差し込まれた接続端子50aは、下側の導電性ブロック40a、上側の回路基板30の回路基板側ランド31a及び両側の一対の支持側壁部61a,61bの狭窄部61cのそれぞれから圧力を受けて、ケース60内での位置が堅固に保持されている。
【0031】
接続端子50aは、例えばバネ性を有する1枚の板状の金属部材を、U字状又は馬蹄形状に下側に向かって窄むように、長手方向の中央で折り曲げて製造できる。接続端子50aは、
図3に示すように、左右対称であり、上端以外の部分がケース60の内部に収納されている。接続端子50aの素材は例えば銅合金等であり、接続端子50aは一定の弾性力を有する。接続端子50aのU字の外壁面及び内壁面には表面保護を兼ねて、例えば銀メッキ等のメッキ処理が施されている。
【0032】
接続端子50aの上端には、第1接触部51a及び第2接触部51bが接続端子50aの開口部の幅方向に沿って並んで設けられている。第1接触部51a及び第2接触部51bは、
回路基板30側に突出する2個の凸部であり、それぞれ回路基板30の回路基板側ランド31aとの接点をなす。第1接触部51a及び第2接触部51bの間には凹部が形成され、第1接触部51a及び第2接触部51bによって接続端子50aのU字の底部が逆W字状に表れる。尚、接点をなす凸部の個数は2個に限定されない。
【0033】
図3中の接続端子50aのU字の左側壁において、第1接触部51aの第2接触部51bと反対側に、第1接触部51aから連続する第1湾曲部53aが設けられている。第1湾曲部53aは、第1接触部51aから、第1湾曲部53aに近接する支持側壁部61a側に近づくように湾曲している。第1湾曲部53aの下側には、第1湾曲部53aから連続する第1スライド部55aが設けられている。
【0034】
第1スライド部55aは、接続端子50aのU字の外壁面が、第1スライド部55aに近接する支持側壁部
61aの狭窄部61cの内壁面と摺動する領域である。第1スライド部55aの下側の領域は、第2格納空間60a2内で、導電性ブロック40aの突起部43aの上部の外周面に接触している。
【0035】
図3中で導電性ブロック40aとの接触部より左側に示される、接続端子50aの導電性ブロック40aとの接触部と板状の接続端子50aの端面との間の領域では、端面が上側を向いて反り返り、導電性ブロック40aから離れるように湾曲している。そのため、接続端子50aの導電性ブロック40aとの接触部より下側の領域には、導電性ブロック40aに対して突出する部位が設けられていない。
【0036】
第1接触部51aから第1湾曲部53a、第1スライド部55a及び導電性ブロック40aとの
図3中の左側の接触部に亘る側壁の領域は、半導体チップ20aの出力用電極21aと回路基板30の回路基板側ランド31aとの間を流れる電流の一方の導通経路をなす。
【0037】
一方、
図3中の接続端子50aのU字の右側壁においては、第2接触部51bの第1接触部51aと反対側に、第2接触部51bから連続する第2湾曲部53bと、この第2湾曲部53bに連続する第2スライド部55bとが設けられている。第2湾曲部53b及び第2スライド部55bは、それぞれの形状及び配置が、第1湾曲部53a及び第1スライド部55aのそれぞれと左右対称であるだけであるため、それぞれの構造に関する重複説明は省略する。
【0038】
第2接触部51bから、第2湾曲部53b、第2スライド部55b及び導電性ブロック40aとの
図3中の右側の接触部に亘る側壁の領域は、半導体チップ20aの出力用電極21aと回路基板30の回路基板側ランド31aとの間を流れる電流の他方の導通経路をなす。
【0039】
接続端子50aの第1湾曲部53a及び第2湾曲部53bによって、接続端子50aの一対の側壁において、外側に膨らむ膨張部(53a,53b)が形成される。接続端子50aが導電性ブロック40aと嵌合していない状態では、
図6に示すように、接続端子50aの膨張部(53a,53b)より下側の領域は下方に向かって窄み、全体で先細り形状である。
【0040】
膨張部(53a,53b)には、同じ高さ位置で測った対向する側壁の外壁面間の長さが、一対の支持側壁部61a,61bの互いに対向する狭窄部61cの間隔より長い領域が形成されている。すなわち接続端子50aの膨張部(53a,53b)は、支持側壁部の狭窄部61cよりも幅方向外側に張り出している。そのため、接続端子50aを第1格納空間60a1側からケース60の内側に差し込んだ際、膨張部(53a,53b)が狭窄部61cに引っ掛かって、接続端子50aは下方に落下せず狭窄部61cによって支持される。
【0041】
また接続端子50aの開口部の幅は、導電性ブロック40aの突起部43aの円の直径程度と同等又はやや短い長さである。また接続端子50aが導電性ブロック40aと嵌合した状態では、突起部43aが開口部を押し拡げることに伴って接続端子50aの下部の導電性ブロック40aとの接触領域と膨張部(53a,
53b)との間の領域も外側に拡がる。
【0042】
導電性ブロック40aとの接触領域及び膨張部(53a,
53b)間の領域が外側に拡がることにより、接続端子50aの一対の側壁の一部が、
一対の支持側壁部61a,61bの狭窄部61cの内壁面と、線状又は面状の接触領域を少なくとも1箇所以上形成して接触する。狭窄部61cとの接触により、接続端子50aの導電性ブロック40aの接触位置
では、導電性ブロック40a
から接続端子50aの内壁を押圧する力が付加される。
【0043】
また接続端子50aが導電性ブロック40aの突起部43aの円の上半分に対応する外周面上でのみ接触し、導電性ブロック40aとの接触領域が突起部43aの円の下側に位置しないように、接続端子50a及び導電性ブロック40aのそれぞれの寸法が設定されている。
【0044】
本発明の実施の形態に係る半導体装置によれば、半導体チップ20aの出力用電極21aの表面の内側の領域のみを用いて、出力用電極21aとこの出力用電極21aに対応する回路基板30の回路基板側ランド31aとを接続する。この点、従来であれば、例えば絶縁基板10上には、半導体チップ20aと、この半導体チップ20aの搭載位置の周囲に別途設けられたワイヤーボンディング等の出力端子用の接続領域とが配置される必要があった。
【0045】
しかし本発明の実施の形態に係る半導体装置によれば、このような出力端子用の接続領域を、半導体チップ20aの表面上に集約できるので、絶縁基板10の小型化が可能になると共に、絶縁基板10上の回路パターンの自由度を向上できる。その結果、接続端子50aの設置面積を減少させつつ大電流を流すことが可能になり、よりコンパクトな半導体装置の実現や更なる高電流密度化の実現を図ることができる。
【0046】
また本発明の実施の形態に係る半導体装置によれば、出力用電極21aの表面に沿って延在する導電性ブロック40aを出力電流の導通経路として用いる。導電性ブロック40aにより、冷却用の放熱面積として用いる表面積を大きく確保できるので、製品寿命の延長すなわちパワーサイクル耐量を向上できる。
【0047】
また本発明の実施の形態に係る半導体装置によれば、導電性ブロック40aの基台部41aは、出力用電極21aの表面の大部分の領域を介して面接合している。そのため、1個の接続端子
50aだけを使用しても、十分に大きな電流を導通させることができ、例えば複数の棒状の接続端子を用いて半導体チップ20a及び回路基板30間を接続する必要がない。
【0048】
また本発明の実施の形態に係る半導体装置によれば、接続端子50aが馬蹄形状又はU字状であることにより、出力電流の導通経路が2本形成される。よって主電流を出力する接続端子50a自体の抵抗は、接点が1箇所であって導通経路が1本である場合に比べて約1/2に低減できる。換言すれば、接続端子50aを通電した際の発熱量を同じと仮定したとき、本発明の実施の形態に係る半導体装置によれば、導通経路が1本の場合に比べて2倍の電流を流せる。よって、従来と同サイズであっても高電流密度の製品を実現できる。
【0049】
また本発明の実施の形態に係る半導体装置によれば、接続端子50aのU字の底部が逆W字状であるように、上端に第1接触部51a及び第2接触部51bの2箇所の接点が設けられている。よって回路基板30と接続端子50aとが、ワイヤーボンディング等を用いることなく接触のみで導通しても、接触不良を防止し、接続端子50a及び回路基板30を確実に接続することができる。
【0050】
また本発明の実施の形態に係る半導体装置によれば、接続端子50aの導電性ブロック40aとの接触部より下側に位置する左右両側の端部がそれぞれ外側に向かうように湾曲する。そのため、接続端子50aの導電性ブロック40aとの接触部より下側には、導電性ブロック40aに対して突出する部位が設けられていない。よって接続端子50aが一対の支持側壁部61a,61bの内側で上下にスライド移動しても、接続端子50aの左右両側の端部が導電性ブロック40aに干渉せず、接続端子50aが滑らかに移動できる。
【0051】
また本発明の実施の形態に係る半導体装置によれば、導電性ブロック40aの突起部43aの外周面が湾曲しているので、この外周面に接続端子50aの開口部を突起部43aに嵌合させる際、開口部の内壁面が滑らかに摺動できる。
【0052】
また本発明の実施の形態に係る半導体装置によれば、導電性ブロック40aと非接触状態の接続端子50aのU字の開口部の幅は、導電性ブロック40aの突起部43aの円の直径程度と同等又はやや短い長さに設定されている。そのため開口部を突起部43aに嵌合させた際、突起部43aが開口部を押し拡げることにより、開口部の内壁面が突起部43aの外周面に強く密着し、導電性ブロック40a及び接続端子50aの一体性が高まる。
【0053】
また本発明の実施の形態に係る半導体装置によれば、接続端子50aが導電性ブロック40aと嵌合した状態で、突起部43aが開口部を押し拡げることに伴って、接続端子50aの側壁が、一対の支持側壁部61a,61bの狭窄部61cと接触し、接続端子50aの拡がりを抑制するように狭窄部61の内壁を押圧する。この押圧力により、導電性ブロック40aとの接触領域において、接続端子50aの内壁面を突起部43a側に押し込むる接触圧が高まるので、導電性ブロック40a及び接続端子50aの一体性が更に高まる。
【0054】
また本発明の実施の形態に係る半導体装置によれば、接続端子50aが導電性ブロック40aの突起部43aの円の上半分に対応する外周面上でのみ接触するように、接続端子50a及び導電性ブロック40aのそれぞれの寸法が設定されている。よって例えば修理等により上側の回路基板30をケース60から分離して、接続端子50aに上側から付加される力が消失した場合、接続端子50aのU字の開口部を閉じようとする弾性力が生じる。この弾性力により、導電性ブロック40aから離れて上側に変位させ、スムーズに嵌合を解除することが可能に
なる。また修理後にはケース60と共に接続端子50aの再利用が可能になる。
【0055】
(半導体装置ケースを用いた半導体装置の製造方法)
次に、
図1〜
図3に示した本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を、
図4〜
図9を参照して、2個の半導体チップ20a,20bを例示して説明する。尚、説明の便宜のため、2個の半導体チップ20a,20bのうち、一方の半導体チップ20b側における符号の付記は簡略化する。
【0056】
まず印刷技術等により表面上の所定の領域に半田メッキ処理が施された絶縁基板10を用意し、この絶縁基板10上に、
図4に示すように、2個の半導体チップ20a,20b及びその他の所定の部品を搭載する。絶縁基板10の中央には、後の工程でケース60と接合するための固定用貫通孔10aが設けられている。
【0057】
次に2個の半導体チップ20a,20bのそれぞれの出力用電極21a,21bの表面に、印刷技術等により半田メッキ処理を施し、
図5に示すように、それぞれの表面上に導電性ブロック40a,40bを搭載する。このメッキ処理は、出力用電極21a,21b上のメッキ領域の形状が、導電性ブロック40a,40bの下面の形状に揃うように行う。また
オープンエミッタ用電極及び
ゲート電極の表面にも半田メッキ処理を施し、リードフレーム等を搭載する。そして例えば窒素ガス等を用いて半田付けを行い、所定の洗浄処理を施す。
【0058】
次に、
図6に示すように、2個の半導体チップ20a,20bのそれぞれに対応する接続端子50a,50bを、対応するそれぞれの一対の支持側壁部61a,61bに支持させて吊り下げた状態のケース60を用意する。ケース60の天井壁60tの中央には、後の工程で絶縁基板10と接合するための固定用貫通孔60aが設けられている。そして絶縁基板10のケース60の内壁面と接合する領域又はケース60の内壁面の絶縁基板10と接合する領域のいずれか一方或いは両方に接着剤を塗布する。
【0059】
次に
図7に示すように、ケース60を上側から絶縁基板10に嵌め込むと、接続端子50aの下端が導電性ブロック40aの突起部43aの上部に押し出され、接続端子50aの下部が突起部43aに両側から接触する。この接触により、接続端子50a及び導電性ブロック40aの第1段階の接合が確保される。また接続端子50aの上部は、ケース60の天井壁60tの開口部から突出する。
【0060】
次に
図8に示すように、ケース60の天井壁60tの上に、絶縁基板10と組み合わせる回路基板30及び蓋部材70を重ねて配置する。回路基板30の中央には、後の工程で絶縁基板10及びケース60と接合するための固定用貫通孔30aが設けられている。蓋部材70の中央にも、絶縁基板10、ケース60及び回路基板30と接合するための固定用貫通孔70aが設けられている。そして絶縁基板10、ケース60、回路基板30及び蓋部材70のそれぞれの固定用貫通孔10a,60a,30a,70aに固定用ボルト80を差し込んで、
図9に示すように、共締めして固定する。
【0061】
ケース60の天井壁60tの開口部から突出した、
図9中の左側の接続端子50aの上部には、回路基板30の左側の回路基板側ランド31aの表面が上側から接触し、回路基板30が上側から接続端子50aを押し下げる。また
図9中の右側の接続端子50bの上部には、回路基板30の右側の回路基板側ランド31bの表面が上側から接触し、回路基板30が上側から接続端子50bを押し下げる。
【0062】
接続端子50aは第1スライド部55a及び第2スライド部55bを、一対の支持側壁部
61a,61bの狭窄部61cの内壁面に摺動させながら下降する。そして接続端子50aのU字の開口部が押し拡げられながら、導電性ブロック40aの突起部43aの上部に圧入され嵌合する。この嵌合により、接続端子50a及び導電性ブロック40aを堅固に一体化する第2段階の接合が達成される。
【0063】
次に絶縁基板10及びケース60間の接着剤を硬化させ、絶縁基板10及びケース60を強固に接合する。そしてケース60の内側にシリコンゲルやエポキシ樹脂等の保護用の充填剤を流し込み、所定の硬度に硬化して封止する。上記の一連の工程により、半導体チップ20a,20bの出力用電極21a
,21bと回路基板30の回路基板側ランド31a,31bとの間の電気的な接続が導電性ブロック40a,40b及び接続端子50a,50bを介して確実に形成された半導体装置を製造できる。
【0064】
本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法によれば、
図6に示したような半導体装置用ケースを用いることにより、ワイヤーボンディングを用いることなく、半導体装置を簡易に組み立てることができる。よって、製造工程を短縮でき、半導体装置の製造に係る設備投資を削減することが可能になる。
【0065】
また本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法では、出力用電極21a
,21b上のメッキ領域の形状が、導電性ブロック40a
,40bの下面の形状に揃うようにメッキ処理が行われることにより、半田付け時に導電性ブロック40a
,40bの回転を防止できる。
【0066】
また本発明の実施の形態に係る半導体装置用ケースの接続端子50aの膨張部(53a,53b)は、一対の支持側壁部61a,61bの狭窄部61cよりも幅方向に張り出しているため、接続端子50aを
第1格納空間60a1側からケース60の内側に差し込んだ際、膨張部(53a,53b)が狭窄部61cに引っ掛かって、接続端子50aは下方に落下せず、狭窄部61cによって支持される。そのため一対の支持側壁部61a,61bに接続端子50aを支持させれば、絶縁基板10と接合する前であっても、接続端子50aとケース60との一体性が確保され、取扱いに優れる。
【0067】
また本発明の実施の形態に係る半導体装置用ケースの一対の支持側壁部61a,61bの狭窄部61cをなす領域では、対向するそれぞれの内壁面が互いに平行に配置され、一定の距離、垂直方向に延びるように設けられている。そのため、ケース60を絶縁基板10に組み合わせる際、狭窄部61cが、上下にスライド移動する接続端子50aの移動のガイド部材として機能し、接続端子50aを導電性ブロック40aにスムーズに嵌合できる。
【0068】
(その他の実施の形態)
本発明は上記の開示した実施の形態によって説明したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかになると考えられるべきである。
【0069】
例えば、
図10に示すように、半導体チップ20aの出力用電極21aに隣接するオープンエミッタ用電極22aの上に、導電性ブロック40zを設けてもよい。オープンエミッタ用電極22aの上の導電性ブロック40zは、出力用電極21aの上の導電性ブロック40aと等価な構造を有する。またオープンエミッタ用電極22a上のメッキ領域の形状は、出力用電極21aの場合と同様に、導電性ブロック40zの下面の形状に揃うようにメッキ処理が行われる。
【0070】
オープンエミッタ用電極22aの上には、一対の支持側壁部62a,62bが設けられ、この一対の支持側壁部62a,62bの間には、第1格納空間60z1及び第2格納空間60z2が設けられている。一対の支持側壁部62a,62bの上下方向の中央には、狭窄部62cが設けられている。
【0071】
オープンエミッタ用電極22aの上の一対の支持側壁部62a,62bは、出力用電極21aの上の一対の支持側壁部61a,61bと等価な構造を有する。また導電性ブロック
40zと回路基板30の回路基板側ランド31zとの間には、出力用電極21aの上の接続端子50aと等価な構造を有する接続端子50zが設けられる。
【0072】
図10に示した半導体装置の場合、
図1〜
図9で説明した半導体装置と同様に、出力用の接続端子50aの設置面積を減少できるだけでなく、更にオープンエミッタ用の接続端子50zの設置面積も減少させて、小型化及び高電流密度化を図ることができる。
図10に示した半導体装置のその他の効果については、
図1〜
図9で説明した半導体装置と同様である。
【0073】
その他にも、例えば
図2に示した半導体装置の例では、1個のケース60の内側に6個の半導体チップ20a〜20fが内蔵されたが、これに限定されず、半導体チップの個数は2個、4個等、適宜変更できる。また複数の半導体チップ20a〜20fのケース60の内側における配置パターンも、
図2に示したものに限定されない。
【0074】
また本発明の実施の形態に係る半導体装置で用いるケース60の一対の支持側壁部61a,61bは、断面形状がクランクシャフト状であるように、ほぼ一定の厚みの板状部材を折り曲げて、上下方向の中央に狭窄部61cを設けた。しかし
狭窄部の構造としてはこれに限定されることなく、例えば一対の支持側壁部61a,61bにおいて
狭窄部をなす領域の板厚を、上下の他の領域よりも上側に肥厚するように変化させて内壁間の距離を短くして実現することもできる。すなわち、一対の支持側壁部61a,61bの間の幅が上下方向において不均一であるように、一対の支持側壁部61a,61bが構成されればよく、クランクシャフト状に限定するものではない。
【0075】
また
図1〜
図10では、半導体チップ20a〜20fである半導体素子としてRC−IGBTを例として説明したが、本発明はRC−IGBTに限定されない。例えばMOSFET、ダイオード等、互いに離間する基板間の電気的な接続を実現する半導体モジュールに用いられる半導体素子であれば、種々の半導体素子が採用可能である。しかし、IGBT及びFWDを1チップ化したRC−IGBTに本発明を適用することにより、本発明の効果を最大化することができる。
【0076】
以上のとおり本発明は、上記に記載していない様々な実施の形態等を含むとともに、本発明の技術的範囲は、上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。