特許第6743677号(P6743677)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6743677ワイヤレスセンサ付き軸受及び軸受給電システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6743677
(24)【登録日】2020年8月3日
(45)【発行日】2020年8月19日
(54)【発明の名称】ワイヤレスセンサ付き軸受及び軸受給電システム
(51)【国際特許分類】
   F16C 41/00 20060101AFI20200806BHJP
   F16C 19/04 20060101ALI20200806BHJP
   G08C 17/00 20060101ALI20200806BHJP
   G08C 15/00 20060101ALI20200806BHJP
【FI】
   F16C41/00
   F16C19/04
   G08C17/00 B
   G08C15/00 G
【請求項の数】11
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2016-244343(P2016-244343)
(22)【出願日】2016年12月16日
(65)【公開番号】特開2018-96516(P2018-96516A)
(43)【公開日】2018年6月21日
【審査請求日】2019年7月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100108914
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 壯兵衞
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(72)【発明者】
【氏名】岡村 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】笹尾 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】小林 英樹
【審査官】 藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−092225(JP,A)
【文献】 特開2003−208688(JP,A)
【文献】 特開2003−097582(JP,A)
【文献】 特開2004−353735(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 41/00
F16C 19/04
G08C 15/00
G08C 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対回転する二つの軸受構成部品の一方に固定された磁石と、
前記二つの軸受構成部品の他方に前記磁石と対向して固定され、前記磁石との相対回転による電磁誘導を利用した発電用のコイルとして利用されるとともに、給電用電波の受信用のアンテナとしても利用されるコイルと、
前記電磁誘導で前記コイルに生じた電流及び前記給電用電波の受信で前記コイルに生じた電流が供給され、該電流を用いて駆動電力を生成する電源回路と、
無線信号を送信する送信用アンテナと、
前記電源回路から駆動電力が供給されるセンサと、
前記電源回路から駆動電力が供給され、前記センサの検出結果に基づく情報を前記送信用アンテナを介して無線送信する処理を行う無線処理回路と、を備えるワイヤレスセンサ付き軸受。
【請求項2】
外周面に第1軌道面を有する第1の軌道輪と、
前記第1軌道面に対向する第2軌道面を内周面に有する第2の軌道輪と、
前記第1軌道面と前記第2軌道面とで形成される軌道に配置された複数の転動体と、
前記第1の軌道輪と前記第2の軌道輪との間に設けられ、前記複数の転動体を転動自在に周方向に間隔を空けて保持する環状の保持器と、
前記第1の軌道輪及び前記第2の軌道輪のうち固定支持される方の軌道輪に支持され、前記第1の軌道輪と前記第2の軌道輪との間を密封する環状のシールと、
前記保持器の前記シールと対向する側の端面に、N極及びS極が周方向に交互に並ぶように配置された磁石と、
前記シールの前記磁石と対向する側の面に設けられ、前記磁石との相対回転による電磁誘導を利用した発電用のコイルとして利用されるとともに、給電用電波の受信用アンテナとしても利用されるコイルと、
前記固定支持される方の軌道輪の外表面より内側に設けられ、該軌道輪を含む構成部品に生じる物理現象に係る物理量を検出するセンサと、
前記シールに設けられた送信用アンテナと、
前記シールの前記磁石と対向する側の面に設けられ、前記センサの検出結果に基づく情報を、前記送信用アンテナを介して無線送信する処理を行う無線処理回路と、
前記シールの前記磁石と対向する側の面に設けられ、前記電磁誘導で前記コイルに生じた電流及び前記給電用電波の受信で前記コイルに生じた電流を用いて前記センサ及び前記無線処理回路に駆動電力を供給する電源回路と、を備えるワイヤレスセンサ付き軸受。
【請求項3】
前記保持器は、円環状のリム部と、前記リム部の軸方向の一方に突出しかつ周方向に間隔を空けて複数個形成された柱部と、各柱部の間に形成されかつ前記複数の転動体を転動自在に保持する複数のポケットと、を有する冠型保持器であり、
前記磁石は、前記保持器の前記柱部に、該柱部を軸方向に貫通しかつ各磁石のN極とS極とが周方向に交互に並ぶように固定された複数の磁石から構成されている請求項2に記載のワイヤレスセンサ付き軸受。
【請求項4】
前記保持器の前記コイルと対向する側とは反対側の端面に設けられ、強磁性体材料から形成された環状のヨークを備える請求項3に記載のワイヤレスセンサ付き軸受。
【請求項5】
前記磁石は、N極及びS極が周方向に交互に連続して配置された環状かつ薄板状の多極リング磁石から構成され、
前記多極リング磁石の一方の端面に重ね合わせて固定され、強磁性体材料から形成された環状かつ薄板状のヨークを備え、
前記磁石及び前記ヨークは、前記保持器の前記シールと対向する側の端面に前記ヨーク側の面を接合して設けられている請求項2に記載のワイヤレスセンサ付き軸受。
【請求項6】
前記シールは環状の芯材を有しており、
前記芯材は樹脂材料から形成されている請求項2から5のいずれか1項に記載のワイヤレスセンサ付き軸受。
【請求項7】
前記コイルの表面は金属製薄膜が形成されている請求項6に記載のワイヤレスセンサ付き軸受。
【請求項8】
前記シールは環状の芯材を有しており、
前記芯材は、金属材料から形成されているとともに、前記コイルの形成位置と対応する位置に複数のスリットが形成されている請求項2から5のいずれか1項に記載のワイヤレスセンサ付き軸受。
【請求項9】
前記電源回路は、前記電磁誘導による発電用に回路特性が調整された第1電源回路と、前記給電用電波による発電用に回路特性が調整された第2電源回路とを備え、
前記コイルとの電気的接続を、前記電磁誘導による発電時は前記第1電源回路に切り替え、前記給電用電波による発電時は前記第2電源回路に切り替える切替部を備える請求項1から8のいずれか1項に記載のワイヤレスセンサ付き軸受。
【請求項10】
前記電源回路は、前記コイルと当該電源回路とのインピーダンスを整合するインピーダンスマッチング回路を備える請求項1から9のいずれか1項に記載のワイヤレスセンサ付き軸受。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載のワイヤレスセンサ付き軸受と、
給電開始信号の受信に応じて前記ワイヤレスセンサ付き軸受に向けて前記給電用電波を送信する無線給電機と、を備え、
前記センサは、軸受の回転速度を検出する速度センサを備え、
前記無線処理回路は、前記回転速度が予め設定した設定速度以下となったときに、前記送信用アンテナを介して、前記無線給電機に給電開始信号を送信する軸受給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電機能を備えたワイヤレスセンサ付き軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冗長化した発電部を有するワイヤレスセンサ付き軸受として、例えば、特許文献1に記載の技術がある。この技術は、発電部として、磁石とコイルの相対回転により発電する発電機と、給電電力送信部からワイヤレス送信される駆動電力を受信して発電する電力受信部とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−301645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の従来技術は、発電機(回転機構)による発電と、電力受信部による発電とが分離された構成となっている。かかる構成では、交流電流を直流電流に変換するための直流変換回路をそれぞれが備える必要があり、また、電磁誘導のためのコイルと、電力受信のためのアンテナもそれぞれ必要となる。そのため、部品点数が増加することに加えて、実装容積及び実装面積の増加が避けられないものであった。
そこで、本発明は、このような従来の技術の有する未解決の課題に着目してなされたものであって、発電部を電磁誘導発電と無線給電発電とで二重化(冗長化)するに際して、部品点数、実装容積及び実装面積の増加を抑えるのに好適な構成のワイヤレスセンサ付き軸受及びこの軸受を備えた軸受給電システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係るワイヤレスセンサ付き軸受は、相対回転する二つの軸受構成部品の一方に固定された磁石と、前記二つの軸受構成部品の他方に前記磁石と対向して固定され、前記磁石との相対回転による電磁誘導を利用した発電用のコイルとして利用されるとともに、給電用電波の受信用のアンテナとしても利用されるコイルと、前記電磁誘導で前記コイルに生じた電流及び前記給電用電波の受信で前記コイルに生じた電流が供給され、該電流を用いて駆動電力を生成する電源回路と、無線信号を送信する送信用アンテナと、前記電源回路から駆動電力が供給されるセンサと、前記電源回路から駆動電力が供給され、前記センサの検出結果に基づく情報を前記送信用アンテナを介して無線送信する処理を行う無線処理回路と、を備える。
【0006】
また、上記課題を解決するために、本発明の第2の態様に係るワイヤレスセンサ付き軸受は、外周面に第1軌道面を有する第1の軌道輪と、前記第1軌道面に対向する第2軌道面を内周面に有する第2の軌道輪と、前記第1軌道面と前記第2軌道面とで形成される軌道に配置された複数の転動体と、前記第1の軌道輪と前記第2の軌道輪との間に設けられ、前記複数の転動体を転動自在に周方向に間隔を空けて保持する環状の保持器と、前記第1の軌道輪及び前記第2の軌道輪のうち固定支持される方の軌道輪に支持され、前記第1の軌道輪と前記第2の軌道輪との間を密封する環状のシールと、前記保持器の前記シールと対向する側の端面に、N極及びS極が周方向に交互に並ぶように配置された磁石と、前記シールの前記磁石と対向する側の面に設けられ、前記磁石との相対回転による電磁誘導を利用した発電用のコイルとして利用されるとともに、給電用電波の受信用アンテナとしても利用されるコイルと、前記固定支持される方の軌道輪の外表面より内側に設けられ、該軌道輪を含む構成部品に生じる物理現象に係る物理量を検出するセンサと、前記シールに設けられた送信用アンテナと、前記シールの前記多極リング磁石と対向する側の面に設けられ、前記センサの検出結果に基づく情報を、前記送信用アンテナを介して無線送信する処理を行う無線処理回路と、前記シールの前記多極リング磁石と対向する側の面に設けられ、前記電磁誘導で前記コイルに生じた電流及び前記給電用電波の受信で前記コイルに生じた電流を用いて前記センサ及び前記無線処理回路に駆動電力を供給する電源回路と、を備える。
【0007】
また、上記課題を解決するために、本発明の第3の態様に係る軸受給電システムは、上記第1の形態又は上記第2の形態のワイヤレスセンサ付き軸受と、給電開始信号の受信に応じて前記ワイヤレスセンサ付き軸受に向けて前記給電用電波を送信する無線給電機とを備える。そして、前記センサは、軸受の回転速度を検出する速度センサを備え、前記無線処理回路は、前記回転速度が予め設定した設定速度以下となったときに、前記送信用アンテナを介して、前記無線給電機に給電開始信号を送信する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電磁誘導による発電(以下、「電磁誘導発電」と記載する場合がある)に用いるコイルと、給電用電波の受信による発電(以下、「無線給電発電」と記載する場合がある)とに用いるアンテナとを共通のコイルで兼用する構成とした。これによって、電磁誘導発電と無線給電発電とで発電部を二重化する際に、従来と比較して、部品点数、実装容積及び実装面積の増加を抑えることが可能となる。その結果、装置の小型化及びコスト低減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る第1の軸受給電システムの構成を示すブロック図である。
図2】(a)及び(b)は、第1実施形態に係る第1のワイヤレスセンサ付き軸受の部分断面図であり、(a)は、磁石と第1のコイルとの対向状態の一例を模式的に示した図であり、(b)は、第1の回路部と検出センサとの接続関係の一例を模式的に示した図である。
図3】第1実施形態に係る第1のワイヤレスセンサ付き軸受を構成する磁石、第1の保持器、およびヨークを示す斜視図である。
図4】(a)は、第1実施形態に係る第1のワイヤレスセンサ付き軸受から第1シールを外した状態を示す斜視図であり、(b)は、第1のシールをコイル形成面側から見た斜視図である。
図5】第1実施形態に係る第1の無線通信ユニットの具体的な構成を示すブロック図である。
図6】(a)は、第1実施形態に係る電源回路の具体的な構成を示すブロック図であり、(b)は、第1実施形態に係る検出センサの具体的な構成を示すブロック図である。
図7】第2実施形態に係る第2のワイヤレスセンサ付き軸受の部分断面図であり、磁石と第1のコイルとの対向状態の一例を模式的に示した図である。
図8】第3実施形態に係る第3のワイヤレスセンサ付き軸受の部分断面図であり、磁石と第1のコイルとの対向状態の一例を模式的に示した図である。
図9】(a)は、第4実施形態に係る第4のワイヤレスセンサ付き軸受の部分断面図であり、磁石と第1のコイルとの対向状態の一例を模式的に示した図であり、(b)は、第4実施形態に係る第3のシールの芯金の構成を示す平面図である。
図10】第5実施形態に係る第2の軸受給電システムにおける給電用電波の回折現象を説明する図である。
図11】(a)は、第6実施形態に係る第5のワイヤレスセンサ付き軸受から第1のシールを取り外しかつ外輪の一部を切り取った状態の斜視図であり、(b)は、第6実施形態に係る第1のシールをコイル形成面側から見た斜視図である。
図12】第6実施形態に係る第1のシールに磁気シールドを装着した一例を示す斜視図である。
図13】第6実施形態に係る多極リング磁石の構成例を示す図である。
図14】第6実施形態に係る第5のワイヤレスセンサ付き軸受の部分断面図であり、多極リング磁石とコイルとの対向状態の一例を模式的に示した図である。
図15】第7実施形態に係る第3の軸受給電システムの構成を示すブロック図である。
図16】第8実施形態に係る第4の軸受給電システムの構成を示すブロック図である。
図17】第9実施形態に係る第5の軸受給電システムの構成を示すブロック図である。
図18】第10実施形態に係る第2の無線通信ユニット16Bの具体的な構成を示すブロック図である。
図19】第10実施形態に係る第1及び第2電源回路の具体的な構成を示すブロック図である。
図20】第11実施形態に係る電源回路の具体的な構成を示すブロック図である。
図21】第12実施形態に係る第3電源回路の具体的な構成を示すブロック図である。
図22】第13実施形態に係る第6の軸受給電システム1Fの構成を示すブロック図である。
図23】(a)〜(d)は、検出センサの配設位置の変形例を模式的に示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、図面を参照して、本発明の第1〜第13実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、部材ないし部分の縦横の寸法や縮尺は実際のものとは異なることに留意すべきである。従って、具体的な寸法や縮尺は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
また、以下に示す第1〜第13実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0011】
(第1実施形態)
(構成)
第1実施形態に係る第1の軸受給電システム1Aは、図1に示すように、第1の無線給電機2Aと、第1の上位装置3Aと、第1のワイヤレスセンサ付き軸受4Aとを備える。
以下、第1のワイヤレスセンサ付き軸受4Aを、単に「第1の軸受4A」と記載する場合がある。
第1の無線給電機2Aは、第1の軸受4Aから無線送信されてくる給電開始信号CSを受信したことに応じて、予め設定された電力を電波に変換してなる給電用電波200の送信を開始する。一方、第1の軸受4Aから無線送信されてくる給電停止信号CEを受信したことに応じて給電用電波200の送信を停止する。
【0012】
第1の無線給電機2Aは、無線信号を送受信するアンテナの他に、給電用電波200の送信用アンテナを備え、この送信用アンテナを介して、後述する第1の軸受4Aの第1のコイル13の長さ(λ/2)に応じた周波数の給電用電波200を送信する。
第1の上位装置3Aは、無線送受信機3wを備え、第1の軸受4Aから無線送信されてくるセンサの検出結果に基づく情報を含む無線信号であるセンサ検出信号300を受信する。そして、受信したセンサ検出信号300に含まれる情報に基づき、第1の軸受4Aが装着された装置の動作を制御する。
【0013】
第1の軸受4Aは、図2(a)及び(b)に示すように、第1の軌道輪である内輪5(軸受構成部品)と、内輪5の外側に内輪5と同心に配置された第2の軌道輪である外輪6(軸受構成部品)とを備える。更に、内輪5及び外輪6の間の隙間を密封する第1のシール7(軸受構成部品)及び第2のシール8を備える。本実施形態では、内輪5が回転軸(不図示)に固定され回転軸と共に回転する回転輪となり、外輪6が軸受ハウジング(不図示)等に固定されて回転しない静止輪となる。
【0014】
第1の軸受4Aは、更に、球状の複数の転動体9と、第1の保持器10と、複数の磁石11と、ヨーク12と、第1のコイル13と、検出センサ141を含む第1の回路部14Aと、磁気シールド15とを備える。
内輪5は、その外周面の軸方向中央部に内輪軌道面51が形成され、軸方向両端部に第1及び第2のシール配置溝52及び53が形成されている。外輪6は、その内周面の軸方向中央部に外輪軌道面61が形成され、軸方向両端部に第1及び第2のシール取付溝62及び63が形成されている。
【0015】
この第1の軸受4Aは、内輪軌道面51と外輪軌道面61とが対向配置され、内輪軌道面51と外輪軌道面61とで形成される軌道に、転動体9が配置されている。
なお、本実施形態では、第1の軸受4Aを、転動体9が球状の玉軸受から構成しているが、この構成に限らず、転動体9の形状が、円錐形状、円筒形状、針状、たる状などのころ軸受から構成してもよい。
第1の保持器10は、図3に示すように、円環状のリム部100と、リム部100の軸方向一方に突出し、円周方向に所定の間隔に配置された複数の柱部101とを備える。隣り合う柱部101間には転動体9を転動可能に保持するポケット102が形成されており、複数の転動体9が円周方向に略等間隔に配置されている。
【0016】
ポケット102は、第1の保持器10の周面を貫通しており、ポケット102の第1の保持器10の軸方向一端面が開口している。つまり、第1の保持器10は冠型保持器である。ポケット102は第1の保持器10の周方向に複数個(第1実施形態では8個)形成されている。第1の保持器10の隣り合うポケット102の間の柱部101には、磁石11を挿入するための軸方向に伸びる貫通穴103が形成されている。
この貫通穴103の内面は、第1の保持器10の外周側の大径面103aと、内周側の小径面103bと、第1の保持器10の径方向に沿う一対の対向面103c,103dとからなる。貫通穴103は全ての柱部101に1つずつ形成されている。
【0017】
第1の保持器10は、更に、その軸方向他端面に、軸方向に凹む円環状の凹部104が形成されている。
磁石11は、ネオジム磁石であり、全ての貫通穴103に1つずつ、第1の保持器10の軸方向に沿ってN極とS極が並び、第1の保持器10の周方向で各磁石のN極とS極が隣り合うように配置されている。磁石11の形状は第1の保持器10の貫通穴103の内面に対応する形状である。
【0018】
磁石11は、貫通穴103の大径面103aに対応する外面110と、貫通穴103の小径面103bに対応する内面111と、貫通穴103の一対の対向面103c,103dに対応する外面112,113と、第1の保持器10の軸方向一端面105側の軸方向一端面114と、その反対側の面である軸方向他端面115とを有する。
磁石11の軸方向一端面114と軸方向他端面115との距離(軸方向に沿った寸法)は、第1の保持器10の軸方向寸法より大きく形成されている。そのため、図2(a)、図2(b)および図4(a)に示すように、貫通穴103に配置された磁石11は第1の保持器10の軸方向一端面114から突出している。
【0019】
ヨーク12は、図3に示すように、円環状の金属板であって、第1の保持器10の凹部104に嵌合する寸法を有する。図2(a)及び(b)に示すように、ヨーク12は凹部104に嵌合されて、貫通穴103に配置された磁石11の軸方向他端面115に接触している。ヨーク12は電磁鋼等の比透磁率の高い材料で形成されている。
磁石11およびヨーク12の劣化を防ぐために、磁石11およびヨーク12の表面をフッ素ゴム被膜またはパリレン(ポリパラキシレンの通称)の蒸着膜で覆うことが好ましい。第1の保持器10は6,6−ナイロン(登録商標)等の非磁性材料で形成されている。第1の保持器10を射出成形で作製する際に、磁石11とヨーク12を金型に配置して一体成形することが好ましい。射出成形された第1の保持器10の貫通穴103に磁石11を入れて接着し、凹部104にヨーク12を嵌めて接着してもよい。
【0020】
第1のシール7は、図2(a)及び(b)に示すように、芯金71とゴム製のシール部72とからなる。図2(a)、図2(b)及び図4(b)に示すように、第1のシール7の芯金71の内側面(磁石11との対向面)71aに、複数個の第1のコイル13と1つの第1の回路部14Aを構成する構成部品の一部とが固定されている。芯金71は電磁鋼等の比透磁率の高い材料で形成されている。すなわち、芯金71は、ヨークとしての役割を果たす。また、芯金71の内側面71aには絶縁膜が形成されている。
【0021】
第1のコイルは、芯金131と、芯金131を囲む巻線部132とから構成されている。第1のコイル13の芯金131は電磁鋼等の比透磁率の高い材料で形成されている。第1のコイル13と磁石11の相対回転で生じる電磁誘導による発電量を向上させるために、第1のコイル13は、巻線部132として、薄膜コイルが積層されたものを使用してもよいし、直径が0.01mm以下の金属線が巻かれたものを使用してもよい。
第1実施形態において、この第1のコイル13は、電磁誘導による発電用のコイルとしての役割と、第1の無線給電機2Aからの給電用電波200を受信する受信用のアンテナとしての役割とを兼任するものである。第1のコイル13は、これらの役割を両立するために、電磁誘導による発電量と、無線給電による発電量とが最大効率となるように形成されている。
【0022】
具体的に、電磁誘導発電を行う際の発電用コイルの設計指針としては、以下の(1)〜(3)が挙げられる。
(1)電磁誘導発電は、第1の回路部14Aの動作電源として用いるために、発電に求められる電力を見積もることが可能である。
(2)発電に必要な電力が解れば、磁石とコイルの仕様が必然的に決まる。具体的に、磁石の表面磁束密度や回転数、コイルの巻数、エアギャップ、発電が許容される面積などが決まる。
(3)電磁誘導による発電(回転機構による発電)は、コイルの巻数が多いほど発電量が増加する。
【0023】
次に、無線給電用のアンテナコイルの設計指針としては、以下の(4)〜(5)が挙げられる。
(4)アンテナの長さは無線給電する電波波長の「整数分の1」の長さのとき、電気的共振が起こり、エネルギーを取り出すことが可能となる。ここで、分母の値が小さいほど効率が良く、通常は1/2又は1/4が使用される。
(5)電気的共振が起こる周波数は「f=v/(λ/2)」により算出可能である。ここで、fは無線給電するための周波数[Hz]、vは電波の速度(約3.0×10[m/s])、λ/2はアンテナの長さ(コイルの長さ)[m]である。
【0024】
例えば、コイルの長さ(λ/2)が10[m]のとき、無線給電するための周波数(f)は15[MHz]となる。すなわち、アンテナの長さ(コイルの長さ)によって給電用電波200の送電周波数が決まる。換言すると給電用電波200の送電周波数からコイルの長さが決まる。
上記(1)〜(5)の設計指針を踏まえ、第1の回路部14Aの駆動に必要な電力が得られ、かつ給電用電波200からエネルギーを取り出すことができる範囲で、電磁誘導及び無線給電による発電効率が最高効率となる最適点を見つけ出す。そして、この最適点の発電効率となるように第1のコイル13が設計されている。
第1のシール7は、図2(a)及び(b)に示すように、シール部72の内周部を内輪5の第1のシール配置溝52に配置し、シール部72の外周部を外輪6の第1のシール取付溝62に弾性変形状態で嵌め入れることで、内輪5と外輪6との間に設置されている。つまり、第1のシール7は外輪6に固定されている。
【0025】
第2のシール8は、 図2(a)及び(b)に示すように、芯金81とゴム製のシール部82とからなる通常のシールである。第2のシール8は、シール部82の内周部を内輪5の第2のシール配置溝53に配置し、シール部82の外周部を外輪6の第2のシール取付溝63に弾性変形状態で嵌め入れることで、内輪5と外輪6との間に設置されている。つまり、第2のシール8は外輪6に固定されている。
第1の回路部14Aは、図4(b)および図5に示すように、電源回路140Aと、検出センサ141と、制御回路142と、無線回路143と、アンテナ144とを備える。第1のコイル13と、第1の回路部14Aとから第1の無線通信ユニット16Aが構成される。
【0026】
電源回路140A、制御回路142、無線回路143及びアンテナ144は、第1のシール7の芯金71の内側面71aにおける、第1のコイル13の形成部分以外の残りの部分に形成されている。そして、本実施形態では、電源回路140A、制御回路142、及び無線回路143は、図2(b)及び図4(b)に示すように、これらをグリースや摩耗粉から保護するための磁気シールド15で覆われている。
ここで、磁気シールド15は、透磁率が高い金属(例えば、鉄、パーマロイ、珪素鋼)または透磁率が高い金属からなる粒子を含有する合成樹脂で形成された部品である。
【0027】
なお、アンテナ144については、第1のシール7の第1のコイル13の形成面とは反対側の面に設ける構成としてもよい。この場合、アンテナ144が第1のシール7の表面から突出しないように、第1のシール7の表面に収容部を設け、アンテナ144を収容部に収容する構成としてもよい。
また、第1のコイル13、電源回路140、制御回路142、無線回路143及びアンテナ144は、内側面71aの絶縁膜上に直接設ける構成に限らず、別基板に形成して、絶縁膜上に接着又は嵌合等の取付手段によって取り付ける構成としてもよい。
【0028】
電源回路140Aは、図6(a)に示すように、整流回路140aと、平滑回路140bと、蓄電回路140cと、蓄電用二次電池140dと、定電圧出力回路140eとを備える。
整流回路140aは、第1のコイル13から入力される、電磁誘導によって生じた交流電力を整流して直流電力へと変換し、この直流電力を平滑回路140bへと出力する。加えて、第1のコイル13から入力される給電用電波200の受信によって生じる交流電力を整流して直流電力へと変換し、この直流電力を平滑回路140bへと出力する。例えば、第1のコイル13から入力される交流電流Icを全波整流する。
【0029】
平滑回路140bは、整流回路140aからの直流電力を平滑化して該直流電力から交流成分を低減し、この低減後の直流電力を蓄電回路140cに出力する。
蓄電回路140cは、制御回路142の演算処理及び無線回路143の無線送信処理の実行期間は、平滑回路140bから入力された直流電力を定電圧出力回路140eに出力する。一方、制御回路142の演算処理及び無線回路143の無線送信処理が実行されない期間は、平滑回路140bから入力された直流電力によって蓄電用二次電池140dを充電する。
【0030】
蓄電用二次電池140dは、例えば、リチウムイオン二次電池やニッケル・水素二次電池等の二次電池から構成される。
定電圧出力回路140eは、蓄電回路140cからの直流電力、又は蓄電用二次電池140dからの直流電力を一定電圧Vbの駆動電力として制御回路142、無線回路143及び検出センサ141に供給する。なお、本実施形態では、蓄電用二次電池140dに蓄電された電力は、検出センサ141、制御回路142及び無線回路143の起動後のサポート用の駆動電力として用いられる。
【0031】
検出センサ141は、図2(b)に示すように、外輪6の内周面における転動体9を挟んで第1のシール7側に設けられている。検出センサ141は、第1の軸受4Aの構成部品に生じる物理現象(例えば、発熱、振動、変形、回転等)に係る物理量を検出する1つ以上のセンサから構成されている。
具体的に、本実施形態の検出センサ141は、図6(b)に示すように、温度を検出する温度センサ141a、加速度(振動)を検出する加速度センサ141b、荷重を検出する荷重センサ141c及び回転速度を検出する速度センサ141dから構成されている。
【0032】
本実施形態では、図5に示すように、第1のコイル13で発電された電力が、電源回路140を介して駆動電力として、検出センサ141、制御回路142及び無線回路143に供給されるように電気的な配線等が構成されている。また、検出センサ141の検出結果は、制御回路142へと入力されるように電気的な配線等が構成されている。
制御回路142は、検出センサ141の検出結果を演算処理し、この演算結果と制御信号とを無線回路143に送信する。この制御信号は、無線回路143の無線送信動作を制御する信号である。本実施形態では、予め設定した周期で検出結果を無線送信し、送信時以外はスリープ状態となるように無線回路143の動作を制御する。
【0033】
制御回路142は、更に、速度センサ141dの検出結果に基づき、第1の軸受4Aの回転速度が予め設定した速度閾値未満になったか否かを判定する。そして、速度閾値未満になったと判定すると、給電開始信号CSを第1の無線給電機2Aに向けて無線送信するように無線回路143の動作を制御する。また、給電開始信号CSを送信後(無線給電中)に、第1の軸受4Aの回転速度が予め設定した速度閾値以上となったと判定すると、給電停止信号CEを第1の無線給電機2Aに向けて無線送信するように無線回路143の動作を制御する。
【0034】
ここで、1回の判定に限らず、速度閾値未満になる判定がN回(Nは2以上の自然数)連続したときに給電開始信号CSを送信する構成としてもよい。また、同様に速度閾値以上となる判定がN回連続したときに給電停止信号CEを送信する構成としてもよい。また、速度閾値は、電磁誘導による発電によって、検出センサ141、制御回路142及び無線回路143を駆動するのに十分な電力を供給できる回転速度の最低値である。
すなわち、第1の軸受4Aが速度閾値以上の速度で回転時は、電磁誘導による発電で十分な駆動電力を供給することができるので、この期間は第1の無線給電機2Aの送電動作を停止する。一方、第1の軸受4Aが速度閾値未満で回転時又は回転停止時は、電磁誘導による発電では電力が不足する又は発電が行えないため、この期間は第1の無線給電機2Aに給電用電波200の送電を行わせて、給電用電波200の受信による発電によって各回路へ駆動電力を供給する。
【0035】
無線回路143は、制御回路142からの制御信号に従って、予め設定した周期で演算結果を含むセンサ検出信号300をアンテナ144を介して外部に無線送信し、送信タイミング以外ではスリープ状態となるように動作する。この無線送信されたセンサ検出信号300は、第1の上位装置3Aの備える無線送受信機3wによって受信される。
無線回路143は、更に、制御回路142からの制御信号に従って、給電開始信号CS及び給電停止信号CEをアンテナ144を介して外部に無線送信する。この無線送信された給電開始信号CS及び給電停止信号CEは、第1の無線給電機2Aによって受信される。
アンテナ144は、本実施形態において、例えばアルミニウム等の抵抗率の小さい金属材料から形成されたマイクロストリップアンテナから構成されている。なお、マイクロストリップアンテナに限らず、ダイポールアンテナ等の他の薄型のアンテナから構成してもよい。
【0036】
(動作)
次に、第1実施形態に係る第1の軸受給電システム1Aの動作を説明する。
いま、第1の軸受4Aの支持する回転軸(不図示)が回転することで内輪5が回転し、この回転に伴って転動体9が転動し、転動体9からの駆動力によって第1の保持器10が回転したとする。これにより、第1の保持器10に設けられた磁石11の磁極面(軸方向一端面114)と第1のシール7の芯金71の内側面71aに設けられた第1のコイル13とが対面しつつ回転軸回りに相対的に回転運動を行う。
この相対的な回転運動によって、第1のコイル13に交流の起電力が発生する。この起電力は、電源回路140に入力され、電源回路140において、整流及び平滑化されて直流電力に変換され、この直流電力が蓄電回路140cを経て定電圧出力回路140eから一定電圧Vbの駆動電力として、制御回路142、無線回路143及び検出センサ141へと供給される。
【0037】
これにより、所定電力以上の駆動電力が供給されることで、検出センサ141、制御回路142及び無線回路143が起動する。
検出センサ141は、温度センサ141aが外輪6の温度検出を開始し、加速度センサ141bが外輪6に生じる振動に応じた加速度の検出を開始し、荷重センサ141cが外輪6にかかる荷重の検出を開始する。また、速度センサ141dが、例えば、磁石11の磁束変化に基づき第1の軸受4A(厳密には第1の保持器10)の回転速度の検出を開始する。
【0038】
これらセンサ141a〜141dで検出した温度、加速度、荷重及び回転速度の検出結果は、制御回路142に入力される。
制御回路142は、検出センサ141から入力された、温度、加速度、荷重及び回転速度の検出結果を演算処理する。そして、この演算結果を含む制御信号を予め設定した周期で無線回路143に出力する。
無線回路143は、制御回路142からの制御信号に従って、演算結果を含むセンサ検出信号300を、アンテナ144を介して無線送信する。なお、無線回路143は、制御信号が入力されていない期間はスリープ状態となって消費電力を抑える。
【0039】
このセンサ検出信号300は、第1の上位装置3Aの無線送受信機3wで受信される。第1の上位装置3Aは、受信したセンサ検出信号300に含まれる演算結果に基づき、第1の軸受4Aの装着された装置の動作を制御する。
一方、制御回路142は、検出センサ141から入力された回転速度に基づき、この回転速度が予め設定した速度閾値未満であるか否かを判定する。
この判定により、速度閾値未満ではないと判定した場合は、電磁誘導発電による動作を継続して行う。
【0040】
また、制御回路142による演算処理及び無線回路143による無線送信処理が実行されない期間は、蓄電回路140cによって蓄電用二次電池140dの充電が行われる。即ち、余剰分の電力を蓄電する。蓄電用二次電池140dに蓄電された電力は、検出センサ141、制御回路142及び無線回路143の起動後の駆動サポートに用いられる。
また、制御回路142は、回転軸の回転数が低くなって、速度センサ141dで検出される回転速度が速度閾値未満になると、給電開始信号CSの送信指示を含む制御信号を無線回路143に出力する。
【0041】
無線回路143は、制御回路142からの制御信号に従って、給電開始信号CSをアンテナ144を介して無線送信する。
この給電開始信号CSは、第1の無線給電機2Aによって受信される。第1の無線給電機2Aは、給電開始信号CSを受信すると、給電用電波200の送信を開始する。
これにより、第1の軸受4Aは、第1のコイル13によって、給電用電波200を受信し、この受信によって第1のコイル13に交流電力が発生する。この交流電力は、電源回路140に入力され、電源回路140において、整流及び平滑化されて直流電力に変換され、この直流電力が蓄電回路140cを経て定電圧出力回路140eから一定電圧Vbの駆動電力として、制御回路142、無線回路143及び検出センサ141へと供給される。
【0042】
これにより、所定電力以上の駆動電力が供給されることで、検出センサ141、制御回路142及び無線回路143が起動する。
その後、回転軸の回転数が高くなって、速度センサ141dで検出される回転速度が速度閾値以上になると、制御回路142は、給電停止信号CEの送信指示を含む制御信号を無線回路143に出力する。
無線回路143は、制御回路142からの制御信号に従って、給電停止信号CEをアンテナ144を介して無線送信する。
この給電停止信号CEは、第1の無線給電機2Aによって受信される。第1の無線給電機2Aは、給電停止信号CEを受信すると、給電用電波200の送信を停止する。
ここで、第1実施形態において、制御回路142及び無線回路143は、無線処理回路に対応し、アンテナ144は、送信用アンテナに対応する。
【0043】
(第1実施形態の効果)
(1)上記第1実施形態に係る第1のワイヤレスセンサ付き軸受4Aは、外周面に内輪軌道面51を有する内輪5と、内輪軌道面51に対向する外輪軌道面61を内周面に有する外輪6とを備える。更に、内輪軌道面51と外輪軌道面61とで形成される軌道に配置される複数の転動体9と、内輪5と外輪6との間に設けられ、複数の転動体9を転動自在に周方向に間隔を空けて保持する環状の第1の保持器10と、を備える。更に、外輪6に支持され、内輪5と外輪6との間を密封する環状の第1のシール7及び第2のシール8と、第1の保持器10の第1のシール7と対向する側の端面に、N極及びS極が周方向に交互に並ぶように配置された磁石11とを備える。更に、第1のシール7の芯金71の内側面71aに設けられ、磁石11との相対回転による電磁誘導を利用した発電用のコイルとして利用されるとともに、給電用電波200の受信用アンテナとしても利用される第1のコイル13を備える。
【0044】
更に、外輪6の外表面より内側に設けられ、外輪6を含む構成部品に生じる物理現象に係る物理量を検出する検出センサ141と、第1のシール7に設けられたアンテナ144と、を備える。更に、第1のシール7の内側面71aに設けられ、検出センサ141の検出結果に基づく情報を、アンテナ144を介して無線送信する処理を行う制御回路142及び無線回路143と、を備える。更に、第1のシール7の内側面71aに設けられ、電磁誘導で第1のコイル13に生じた電流及び給電用電波の受信で第1のコイル13に生じた電流を用いて検出センサ141、制御回路142及び無線回路143に駆動電力を供給する電源回路140Aと、を備える。
【0045】
この構成であれば、電磁誘導発電に用いるコイルと、無線給電発電に用いるアンテナとを共通のコイルで兼用することができるので、この共通のコイルに生じる交流電力を共通の電源回路140Aにて直流電力に変換することが可能である。
これによって、電磁誘導発電と無線給電発電とで発電部を二重化(冗長化)する際に、従来と比較して、部品点数、実装容積及び実装面積の増加を抑えることが可能となる。その結果、装置の小型化及びコストの低減が可能となる。
【0046】
また、第1の軸受4Aが低速回転時又は停止時でも無線給電によって、検出センサ141、制御回路142及び無線回路143に駆動電力を供給することが可能となる。これによって、第1の軸受4Aが低速回転時又は停止時でもセンサ検出信号300を送信することが可能となり、低速回転時又は停止時の第1の軸受4Aの状態を把握することが可能となる。
また、ワイヤレスセンサ部を構成する検出センサ141、制御回路142、無線回路143及びアンテナ144と、電源部を構成する磁石11、第1のコイル13及び電源回路140とを第1の軸受4Aの内部に収容することが可能となる。即ち、本実施形態に係る第1の軸受4Aは、軸受外部に突出して形成されたワイヤレスセンサ部や電源部等の突出部のないセンサレス軸受と同等の外観構成とすることが可能である。
【0047】
これによって、例えば、軸受ハウジングの形状変更等なしに既存の軸受との置き換えを容易に行うことが可能となる。また、既存のセンサレス軸受の構成部品に対して検出センサ141、第1のコイル13、電源回路140、制御回路142、無線回路143及びアンテナ144を付加することで構成することが可能である。すなわち、構成部品の少なくとも一部を既存の軸受部品で流用できるため、製造を容易に行うことが可能となる。
【0048】
(2)上記第1実施形態に係る第1のワイヤレスセンサ付き軸受4Aは、更に、第1の保持器10が、円環状のリム部100と、リム部100の軸方向の一方に突出しかつ周方向に間隔を空けて複数個形成された柱部101と、各柱部101の間に形成されかつ複数の転動体9を転動自在に保持する複数のポケット102と、を有する冠型保持器である。更に、磁石11が、第1の保持器10の柱部101に、該柱部101を軸方向に貫通しかつ各磁石のN極とS極とが周方向に交互に並ぶように固定された複数の磁石から構成されている。
【0049】
この構成であれば、第1のシール7に第1のコイル13と第1の回路部14Aの一部を固定するとともに、第1の保持器10の柱部101に貫通穴103を設けて、この貫通穴103に配置した磁石11を第1のシール7側に突出させているため、既存の転がり軸受と比較した軸受内部空間の低下量を少なくすることが可能となる。
また、磁石11の大部分が第1の保持器10に埋め込まれた構造となっているため、第1のコイル13に対して垂直磁場変化の強い磁石を使用することが可能となる。その結果、磁石の埋め込み量が少ない構造のものと比較して発電効率が高くすることが可能となる。
【0050】
(3)上記第1実施形態に係る第1のワイヤレスセンサ付き軸受4Aは、更に、第1の保持器10の第1のコイル13と対向する側とは反対側の端面に設けられた、強磁性体材料から形成された環状のヨーク12を備える。
この構成であれば、ヨーク12によって、磁石11の磁束密度を高めることが可能となり、電磁誘導発電による発電量を向上することが可能となる。
【0051】
(4)上記第1実施形態に係る第1の軸受給電システム1Aは、上記第1のワイヤレスセンサ付き軸受4Aと、給電開始信号CSの受信に応じて第1の軸受4Aに向けて給電用電波200を送信する第1の無線給電機2Aとを備える。検出センサ141は、第1の軸受4Aの回転速度を検出する速度センサ141dを備える。制御回路142及び無線回路143が、回転速度が予め設定した設定速度未満となったときに、アンテナ144を介して、第1の無線給電機2Aに給電開始信号CSを送信する。一方、回転速度が設定速度以上となったときに、第1の無線給電機2Aに給電停止信号CEを送信する。
【0052】
この構成であれば、第1の軸受4Aの回転速度が低速となって、電磁誘導による発電量が低減又は発電できなくなったときに、第1の無線給電機2Aに対して給電開始信号CSを送信して、給電用電波200を送信を開始させることが可能となる。一方、電磁誘導によって十分な発電ができるときは、給電用電波200の送信を停止させることが可能となる。
これによって、電磁誘導による発電が困難となるタイミングで、給電用電波200による発電が可能となるので、無駄な電波発信を抑え効率的な給電を行うことが可能となる。
【0053】
(第2実施形態)
第2実施形態は、上記第1実施形態と比較して、第1のシール7に代えて、第3のシール7Aを備える点が異なるのみで、それ以外は上記第1実施形態と同様の構成となる。
以下、上記第1実施形態と同様の構成部には同じ符号を付して適宜説明を省略し、異なる点のみを詳細に説明する。
第2実施形態に係る第2のワイヤレスセンサ付き軸受4Bは、図7に示すように、第3のシール7Aを備える。第3のシール7Aは、上記第1実施形態の第1のシール7の芯金71に代えて、樹脂材料から形成された環状の芯材71Aを備えた構成となっている。
【0054】
ここで、上記第1実施形態の芯金71は、ヨークとしての役割を果たすために電磁鋼等の金属材料から構成されている。そのため、給電用電波200のエネルギーを吸収してしまい、発電効率が低下する。
また、電磁誘導発電は、コイルを貫く磁束の変化により発電を行うため、電磁誘導発電にヨークは必須ではない。このため、第1のコイル13を空芯コイルとしても発電が可能である。
以上のことに基づき、第2実施形態では、第3のシール7Aの芯材71Aを樹脂材料から形成し、ヨークとしての役割を除去した。
【0055】
(第2実施形態の効果)
(1)第2実施形態に係る第2のワイヤレスセンサ付き軸受4Bは、上記第1実施形態の第1の軸受4Aにおいて、第1のシール7に代えて、樹脂材料から形成された芯材71Aを有する第3のシール7Aを備える。
この構成であれば、給電用電波200を受信した際に、この電波のエネルギーが第3のシール7Aの芯材71Aで吸収されるのを防ぐことが可能となる。これによって、上記第1実施形態の第1の軸受4Aと比較して、無線給電における発電効率を向上することが可能となる。
【0056】
(第3実施形態)
第3実施形態は、上記第2実施形態と比較して、第1のコイル13の表面に金属薄膜を形成した点が異なる。それ以外は上記第2実施形態と同様の構成となる。
以下、上記第2実施形態と同様の構成部には同じ符号を付して適宜説明を省略し、異なる点のみを詳細に説明する。
第3実施形態に係る第3のワイヤレスセンサ付き軸受4Cは、図8に示すように、上記第2実施形態の第2のワイヤレスセンサ付き軸受4Bの第1のコイル13の表面に、ヨークとしての役割を果たす金属薄膜133が形成された構成となっている。
この金属薄膜133は、例えば、コイルパターンが形成されたフレキシブル基板に、鉄などの磁性材料などを蒸着させて形成してもよいし、磁性材料を金属箔状にしてコイル表面に接着して形成してもよい。
【0057】
(第3実施形態の効果)
(1)第3実施形態に係る第3のワイヤレスセンサ付き軸受4Cは、上記第2実施形態の第2のワイヤレスセンサ付き軸受4Bにおいて、第1のコイル13の表面に金属薄膜133が形成されている。
ここで、電波は、その波長に対して金属の厚みが十分に薄い場合に金属を透過する性質がある。この原理に基づき、コイルの表面に金属薄膜を形成した。これによって、金属薄膜が、ヨークとして機能して電磁誘導時の磁束を集中させ、その薄膜形状によって給電用電波のエネルギー吸収を低減することが可能となる。その結果、上記第2実施形態と比較して、総合的な発電効率を向上することが可能となる。
【0058】
(第4実施形態)
第4実施形態は、上記第1実施形態と比較して、第1のシール7に代えて、第4のシール7Bを備える点が異なるのみで、それ以外は上記第1実施形態と同様の構成となる。
以下、上記第1実施形態と同様の構成部には同じ符号を付して適宜説明を省略し、異なる点のみを詳細に説明する。
第4実施形態に係る第4のワイヤレスセンサ付き軸受4Dは、図9(a)及び(b)に示すように、第4のシール7Bを備える。
この第4のシール7Bは、上記第1実施形態の第1のシール7の芯金71に代えて、芯金71Bを備えた構成となっている。
【0059】
この芯金71Bは、環状かつ薄板状のベース部711と、ベース部711の板面の一部に周方向に等間隔に形成された複数のスリット712と、スリット712上に設けられたコイル形成用の基板部713とを有している。スリット712は、矩形の貫通穴から構成されている。芯金71Bの構成素材は、上記第1実施形態の芯金71と同様となる。基板部713は樹脂材料から形成され、第1のコイル13は、基板部713上に形成されている。
ここで、スリット712の周方向の幅dsは、給電用電波200が通過できるように設けられている。具体的に、スリット712は、給電用電波200の送電周波数の波長以上の幅に形成されている。また、スリット712は、ベース部711の第1のコイル13の形成範囲と対応する範囲に形成されている。
【0060】
(第4実施形態の効果)
(1)第4実施形態に係る第4のワイヤレスセンサ付き軸受4Dは、上記第1実施形態の第1の軸受4Aにおいて、第1のシール7に代えて、第1のコイル13の形成位置と対応する位置に複数のスリット712が形成された環状の芯金71Bを有する第4のシール7Bを備える。
この構成であれば、給電用電波200がスリット712を通って第1のコイル13に到達することが可能となる。これによって、芯金71Bでの給電用電波のエネルギー吸収を抑え、無線給電による発電効率を向上することが可能となる。
【0061】
(第5実施形態)
第5実施形態は、上記第1実施形態と比較して、第1の無線給電機2Aに代えて第2の無線給電機2Bを備える点が異なる。それ以外は、上記第1実施形態と同様の構成となる。
以下、上記第1実施形態と同様の構成部には同じ符号を付して適宜説明を省略し、異なる点のみを詳細に説明する。
第5実施形態に係る第2の軸受給電システム1Bは、図10に示すように、上記第1実施形態の第1の軸受給電システム1Aにおいて、第1の無線給電機2Aに代えて、第2の無線給電機2Bを備えた構成となっている。
この第2の無線給電機2Bは、第1の軸受4Aから無線送信されてくる給電開始信号CSを受信したことに応じて超長波帯又は長波帯の周波数帯域の給電用電波200Aの送信を開始する。一方、第1の軸受4Aから無線送信されてくる給電停止信号CEを受信したことに応じて給電用電波200Aの送信を停止する。
【0062】
ここで、電波は、周波数が低く(波長が長く)なるほど物体を回り込む回折の性質がある。この性質に基づき、第5実施形態では、超長波帯又は長波帯の周波数帯域の給電用電波200Aを送電するように構成した。
この構成とすることで、図10に示すように、給電用電波200Aの波面Wf間の距離(波長)Lwが長くなって、図10中の大矢印に示す方向に直進していた波が、回折現象によって芯金71を回り込み図10中の小矢印に示す方向に伝搬する。これによって、回折により回り込んだ給電用電波200Aが第1のコイル13に到達するようになる。
但し、第1のコイル13のコイル長を変更せずに、給電用電波の送電周波数のみを変更する場合には、第1のコイル13の共振周波数を変更する必要がある。そのため、第1の無線通信ユニット16Aに、共振回路を追加する必要がある。
【0063】
(第5実施形態の効果)
(1)第5実施形態に係る第2の軸受給電システム1Bは、第2の無線給電機2Bが、給電開始信号CSを受信したことに応じて超長波帯又は長波帯の周波数帯域の給電用電波200Aを送信する。
この構成であれば、回折現象によって、給電用電波200Aを芯金71を回り込ませて第1のコイル13へと到達させることが可能となる。これによって、芯金71での給電用電波のエネルギー吸収を抑え、無線給電による発電効率を向上することが可能となる。
なお、上記第3実施形態の金属薄膜133の構成と組み合わせて、金属薄膜133の透過と回折によって受電効率を向上させ、無線給電による発電効率をより高める構成としてもよい。
また、上記第4実施形態のスリット712の構成と組み合わせて、スリット712の通過と回折によって受電効率を向上させ、無線給電による発電効率をより高める構成としてもよい。
【0064】
(第6実施形態)
第6実施形態は、上記第1実施形態と比較して、第1の軸受4Aに代えて、第5のワイヤレスセンサ付き軸受4Eを備える点が異なる。それ以外の構成は、上記第1実施形態と同様の構成となる。
以下、上記第1実施形態と同様の構成部には同じ符号を付して適宜説明を省略し、異なる点のみを詳細に説明する。
第6実施形態に係る第5のワイヤレスセンサ付き軸受4Eは、図11(a)及び(b)に示すように、上記第1実施形態の第1の軸受4Aにおいて、第1の保持器10、第1のコイル13、磁石11及びヨーク12に代えて、第2の保持器17、多極リング磁石18及び第2のコイル19を備えた構成となっている。
【0065】
第2の保持器17は、上記第1実施形態の第1の保持器10のように磁石11を配置するための貫通穴等が形成されていない通常の冠型保持器から構成される。
第2のコイル19は、例えば、銅等の導体を材料としてエッチング法等の薄膜パターン形成方法を用いて第1のシール7の芯金71の内側面71aに設けられている。
第2のコイル19は、図11(b)に示すように、磁束密度(起電力)を大きくするための第1パターン191及び第2パターン192と、巻線部分である第3パターン193とから構成される。
【0066】
第1パターン191は、第1のシール7の内側面71aの外周側端部から内周側に向かって伸びる直線状のパターンが周方向に円弧状に等間隔に形成された櫛状のパターンである。
第2パターン192は、第1のシール7の内側面71aの内周側端部から外周側に向かって伸びる直線状のパターンが第1パターン191の直線状のパターンと互い違いとなるように周方向に円弧状に等間隔に形成された櫛状のパターンである。
第3パターン193は、始端194から終端195に向かって、第1パターン191及び第2パターン192の直線状のパターン間の隙間を縫うように矩形に折り返しながら周方向に向かって蛇行する形状のパターンである。
なお、本実施形態では、第2のコイル19を一層の構成としたが、発電力向上のために多層構造としてもよい。
【0067】
また、第2のコイル19は、上記第1実施形態の第1のコイル13と同様に、電磁誘導による発電用のコイルとしての役割と、第1の無線給電機2Aからの給電用電波200を受信する受信用のアンテナとしての役割とを兼任するものである。従って、上記第1実施形態と同様の設計指針に基づき、第1の回路部14Aの駆動に必要な電力が得られ、かつ給電用電波200からエネルギーを取り出すことができる範囲で、電磁誘導及び無線給電による発電効率が最高効率となるように第1のコイル13が設計されている。
【0068】
多極リング磁石18は、図11(a)に示すように、第2の保持器17の軸方向の端面のうち第1のシール7の内側面71aと対向する側の端面に設けられている。
この多極リング磁石18は、図13に示すように、電磁鋼板等の強磁性体材料から形成された環状かつ薄板状のヨーク181と、S極とN極とが周方向に交互に連続して配置された環状かつ薄板状のマグネットゴムシート182とを重ね合わせた構成となっている。このようにヨーク181とマグネットゴムシート182とを重ね合わせることによって、多極リング磁石18の磁束密度を高めている。
【0069】
そして、このような構成の多極リング磁石18を、例えば6,6−ナイロン等の非磁性材料で形成された第2の保持器17の内側面71aと対向する側の端面に、ヨーク181側の面を接合して取り付けている。
第6実施形態では、高速回転中のマグネットゴムシート182等の離脱による破損を防止するために、第2の保持器17、ヨーク181及びマグネットゴムシート182を、射出成型によって一体成型している。
【0070】
なお、強度の観点からは、射出成型によって一体成型することが望ましいが、ヨーク181及びマグネットゴムシート182を一体成型してなる多極リング磁石18を、第2の保持器17の端面に接着や嵌合等の取付手段で取り付ける構成としてもよい。この構成とすることで、既存のセンサレス軸受の保持器をそのまま用いることが可能となる。
また、マグネットゴムシート182に代えて、これと同じ構成のプラスチックマグネットを用いる構成としてもよい。
また、多極リング磁石18の劣化を防ぐために、マグネットゴムシート182又はプラスチックマグネットと、ヨーク181との表面をフッ素ゴム被膜またはパリレン(ポリパラキシレンの通称)の蒸着膜等で被覆する構成としてもよい。
また、マグネットゴムシート182又はプラスチックマグネットは、磁束密度を向上させるために、ネオジム磁石又はサマリウムコバルト磁石を含有していることが望ましい。
【0071】
上記構成によって、軸受4Eは、図14に示すように、軸受内部において、第2の保持器17に設けられた多極リング磁石18の磁極面と、第1のシール7に設けられた第2のコイル19のパターン面とが軸方向に対向して配置される。この対向間隔は、一般に磁石とコイルとの距離が離れるほど磁力が小さくなることから可能な限り小さくすることが望ましい。
そして、回転軸が回転し内輪5が回転すると転動体9が転動し、転動体9から駆動力を受けて第2の保持器17が回転する。これにより、第2の保持器17と共に多極リング磁石18が回転して、多極リング磁石18と静止状態にある第2のコイル19とが相対回転する。
【0072】
多極リング磁石18と第2のコイル19とが相対回転すると、マグネットゴムシート182の各磁極対の周りに形成されている磁場が多極リング磁石18と共に移動し、第2のコイル19の第3パターン193の蛇行する面を横切る磁場の向きが第3パターン193に対して交番的に変化する。そのため、第3パターン193の内部には、それぞれの矩形状に折返した部分が囲う内側を通過する磁場を打ち消す方向に電流が流れるように起電力が発生する。磁場は、第3パターン193に対して交番的に変化するので、第3パターン193に発生する起電力も交番的に変化する。従って、第3パターン193の始端194及び終端195の間には交流の起電力が発生する。
このとき、多極リング磁石18と第3パターン193とは、相対的に回転するので、それぞれの真円度、相対的距離、磁極の間隔及び蛇行の間隔などに多少寸法的なばらつきがあっても、始端194及び終端195の間に生じる起電力の変動が少なく、安定した電力を発生することが可能である。
【0073】
(第6実施形態の効果)
(1)第6実施形態に係る第5のワイヤレスセンサ付き軸受4Eは、多極リング磁石18が、N極及びS極が周方向に交互に連続して配置された環状かつ薄板状のマグネットゴムシート182と、マグネットゴムシート182の一方の面に重ね合わせて固定された、強磁性体材料から形成された環状かつ薄板状のヨーク181とを有する。加えて、第2の保持器17の第1のシール7の内側面71aと対向する側の端面にヨーク181側の面を接合して設けられている。
この構成であれば、ヨーク181によって、マグネットゴムシート182の磁束密度を高めることが可能となり、第2のコイル19の発電量を向上することが可能となる。また、多極リング磁石18は、既存の保持器の端面に設けることが可能となっているので、製造時に既存の保持器をそのまま利用することが可能となる。
【0074】
(第7実施形態)
第7実施形態は、上記第1実施形態と比較して、第1の軸受給電システム1Aの第1の無線給電機2Aに代えて第3の無線給電機2Cを備える点と、第1の軸受4Aの制御回路142及び無線回路143が、給電開始信号CS及び給電停止信号CEの送信処理を行わない点とが異なる。これら以外は、上記第1実施形態と同様の構成となる。
以下、上記第1実施形態と同様の構成部には同じ符号を付して適宜説明を省略し、異なる点のみを詳細に説明する。
第7実施形態に係る第3の軸受給電システム1Cは、図15に示すように、上記第1実施形態の第1の軸受給電システム1Aにおいて、第1の無線給電機2Aに代えて、第3の無線給電機2Cを備えた構成となっている。更に、第1の軸受4Aが、モータ20と負荷21とこれらを接続する回転軸22とを備える装置に適用されている。具体的に、第1の軸受4Aは、回転軸22の両端に設けられている。なお更に、この装置には、回転軸22の回転速度を検出する速度センサ23が設けられており、第3の無線給電機2Cと無線又は有線で接続されている。
第3の無線給電機2Cは、速度センサ23で検出される回転速度に基づき、この回転速度が予め設定した速度閾値未満になったか否かを判定する。そして、速度閾値未満になったと判定すると、給電用電波200の送信を開始する。一方、給電用電波200の送信を開始後に、回転速度が速度閾値以上になったと判定すると、給電用電波200の送信を停止する。
【0075】
(第7実施形態の効果)
第7実施形態に係る第3の軸受給電システム1Cは、第3の無線給電機3Cが、第1の軸受4Aが装着された回転軸22の回転速度に基づき、回転速度が予め設定した速度閾値未満となったときに、給電用電波200の送信を開始する。一方、送信開始後に、回転速度が速度閾値以上になったときに、給電用電波200の送信を停止する。
この構成であれば、第1の軸受4Aの回転速度が低速となって、電磁誘導による発電量が低減又は電磁誘導による発電ができなくなったときに、給電用電波200の送信を開始することが可能となる。一方、電磁誘導によって十分な発電ができるときは、給電用電波200の送信を停止することが可能となる。
これによって、電磁誘導による発電が困難となるタイミングで、給電用電波200の送信が開始され、電磁誘導による十分な発電が可能なタイミングで給電用電波200の送信を停止することが可能となる。その結果、無駄な電波発信を抑え効率的な送電を行うことが可能となる。
【0076】
(第8実施形態)
第8実施形態に係る第4の軸受給電システム1Dは、上記第1実施形態と比較して、上記第1実施形態の第1の軸受給電システム1Aの第1の上位装置3Aに代えて第2の上位装置3Bを備える点と、第1の軸受4Aの制御回路142及び無線回路143が、給電開始信号CS及び給電停止信号CEの送信処理を行わない点とが異なる。これら以外は、上記第1実施形態と同様の構成となる。
【0077】
以下、上記第1実施形態と同様の構成部には同じ符号を付して適宜説明を省略し、異なる点のみを詳細に説明する。
第8実施形態に係る第4の軸受給電システム1Dは、図16に示すように、上記第1実施形態の第1の軸受給電システム1Aにおいて、第1の上位装置3Aに代えて、第2の上位装置3Bを備えた構成となっている。更に、第1の軸受4Aが、モータ20と負荷21とこれらを接続する回転軸22とを備える装置に適用されている。具体的に、第1の軸受4Aは、回転軸22の両端に設けられている。なお更に、この装置には、回転軸22の回転速度を検出する速度センサ23が設けられており、第2の上位装置3Bと無線又は有線で接続されている。
【0078】
第2の上位装置3Bは、速度センサ23で検出される回転速度に基づき、この回転速度が予め設定した速度閾値未満になったか否かを判定する。そして、速度閾値未満になったと判定すると、給電開始信号CSを、無線送受信機3wを介して第1の無線給電機2Aに向けて無線送信する。また、給電開始信号CSを送信後(無線給電中)に、回転速度が予め設定した速度閾値以上となったと判定すると、給電停止信号CEを無線送受信機3wを介して第1の無線給電機2Aに向けて無線送信する。
【0079】
(第8実施形態の効果)
第8実施形態に係る第4の軸受給電システム1Dは、第2の上位装置3Bが、第1の軸受4Aが装着された回転軸22の回転速度に基づき、回転速度が予め設定した速度閾値未満となったときに、給電開始信号CSを無線給電機2Aに送信する。一方、無線給電中に、回転速度が速度閾値以上になったときに、給電停止信号CEを無線給電機2Aに送信する。
この構成であれば、第1の軸受4Aの回転速度が低速となって、電磁誘導による発電量が低減又は電磁誘導による発電ができなくなったときに、給電用電波200の送信を開始させることが可能となる。一方、電磁誘導によって十分な発電ができるときは、給電用電波200の送信を停止させることが可能となる。
これによって、電磁誘導による発電が困難となるタイミングで、給電用電波200の送信が開始され、電磁誘導による十分な発電が可能なタイミングで給電用電波200の送信を停止することが可能となる。その結果、無駄な電波発信を抑え効率的な送電を行うことが可能となる。
【0080】
(第9実施形態)
第9実施形態は、上記第1実施形態と比較して、第1の無線給電機2Aに代えて第4の無線給電機2Dを備える点と、第1の軸受4Aの制御回路142及び無線回路143が、給電開始信号CS及び給電停止信号CEの送信処理を行わない点とが異なる。これら以外は、上記第1実施形態と同様の構成となる。
以下、上記第1実施形態と同様の構成部には同じ符号を付して適宜説明を省略し、異なる点のみを詳細に説明する。
第9実施形態に係る第5の軸受給電システム1Eは、図17に示すように、上記第1実施形態の第1の軸受給電システム1Aにおいて、第1の無線給電機2Aに代えて、第4の無線給電機2Dを備えた構成となっている。
【0081】
この第4の無線給電機2Dは、送電制御ボタン2bと、第1の無線給電機2Aとを備える。
送電制御ボタン2bは、図示省略するが、送電開始ボタンと、送電停止ボタンとを備える。送電制御ボタン2bは、オペレータによって、送電開始ボタンが押下されると給電開始信号CSを第1の無線給電機2Aに送信し、送電停止ボタンが押下されると給電停止信号CEを第1の無線給電機2Aに送信するように構成されている。
【0082】
(第9実施形態の効果)
第9実施形態に係る第5の軸受給電システム1Eは、送電制御ボタン2bが、送電開始ボタンが押下されたときに、給電開始信号CSを無線給電機200Aに送信する。一方、無線給電中に、送電停止ボタンが押下されたときに、給電停止信号CEを無線給電機200Aに送信する。
この構成であれば、オペレータの任意のタイミングで、給電用電波200の送信を開始又は停止させることが可能となる。
これによって、例えば、第1の軸受4Aの静止時において、オペレータの任意のタイミング(例えば、センサ検出情報が欲しいタイミングなど)で、給電用電波200による発電が可能となる。その結果、無駄な電波発信を抑え効率的な送電を行うことが可能となるとともに、任意のタイミングでセンサ検出情報を得て故障等の検査を行うことが可能となる。
【0083】
(第10実施形態)
第10実施形態に係る軸受4F(図示略)は、上記第1実施形態と比較して、第1の回路部14Aに代えて、第2の回路部14Bを備える点が異なる。それ以外は、上記第1実施形態と同様の構成となる。
以下、上記第1実施形態と同様の構成部には同じ符号を付して適宜説明を省略し、異なる点のみを詳細に説明する。
第10実施形態に係る第6のワイヤレスセンサ付き軸受4F(図示略)は、図18に示すように、第1実施形態の第1の軸受4Aにおいて、第1の無線通信ユニット16Aに代えて、第2の無線通信ユニット16Bを備えた構成となっている。この第2の無線通信ユニットは、第1実施形態の第1の回路部14Aに代えて、第2の回路部14Bを備えた構成となっている。
【0084】
この第2の回路部14Bは、第1実施形態の第1の回路部14Aにおいて、電源回路140Aに代えて、電磁誘導発電用の第1電源回路140Bと、無線給電発電用の第2電源回路140Cとを備えた構成となっている。
更に、第2の回路部14Bは、制御回路142からの切替信号に基づき、第1のコイル13と第1電源回路140B及び第2電源回路140Cとの電気的な接続を切り替える切替スイッチ145と、蓄電用二次電池146とを新たに備える。
【0085】
第1電源回路140Bは、図19に示すように、第1整流回路140Baと、第1平滑回路140Bbと、第1蓄電回路140Bcと、第1定電圧出力回路140Bdとを備える。
第1電源回路140Bは、各回路の特性が、電磁誘導発電に対して発電効率が最適となるように調整された回路である。回路特性が異なる以外は、蓄電用二次電池が第2電源回路140Cと共用の蓄電用二次電池146となる点を除いて、上記第1実施形態の電源回路140Aと同様の構成及び動作内容となる。
【0086】
第2電源回路140Cは、図19に示すように、第2整流回路140Caと、第2平滑回路140Cbと、第2蓄電回路140Ccと、第2定電圧出力回路140Cdとを備える。
第2電源回路140Cは、各回路の特性が、無線給電発電に対して発電効率が最適となるように調整された回路である。回路特性が異なる以外は、蓄電用二次電池が第2電源回路140Cと共用の蓄電用二次電池146となる点を除いて、上記第1実施形態の電源回路140Aと同様の構成及び動作内容となる。
【0087】
ここで、無線給電において微弱な電力しか発電できない場合、方向降下電圧(VF)の特性が低い値のダイオードを使用した整流回路にした方がエネルギー損失を減らすことが可能となる。このことから、第10実施形態では、第2整流回路140Caを構成するダイオードを、第1整流回路140Baを構成するダイオードと比較して方向降下電圧(VF)の特性が低い値のダイオードから構成している。
一方、第10実施形態の制御回路142は、速度センサ141dの検出結果に基づき、回転速度が予め設定した速度閾値未満となったときに、第1のコイル13と第2電源回路140Cとを電気的に接続させる切替信号B2を切替スイッチ145に出力する。一方、回転速度が予め設定した速度閾値未満となったときに、第1のコイル13と第1電源回路140Bとを接続させる切替信号B1を切替スイッチ145に出力する。
【0088】
切替スイッチ145は、切替信号B1の入力に応じて、第1のコイル13と第1電源回路140Bとが電気的に接続するようにスイッチを切り替える。一方、切替信号B2の入力に応じて、第1のコイル13と第2電源回路140Cとが電気的に接続するようにスイッチを切り替える。
また、蓄電用二次電池146は、上記第1実施形態の蓄電用二次電池140dと同様の構成を有する二次電池である。
【0089】
(第10実施形態の効果)
(1)第10実施形態に係る第6のワイヤレスセンサ付き軸受4Fは、電磁誘導による発電用に回路特性が調整された第1電源回路140Bと、給電用電波200による発電用に回路特性が調整された第2電源回路140Cとを備える。切替スイッチ145が、制御回路142からの切替信号B1又はB2に基づき、第1のコイル13との電気的接続を、電磁誘導による発電時は第1電源回路140Bに切り替え、給電用電波による発電時は第2電源回路140Cに切り替える。
この構成であれば、電磁誘導時と無線給電時とで回路特性が適切に調整された電源回路を用いて発電を行うことが可能となる。これによって、電源回路での無駄なエネルギー消費を低減することが可能となり、発電効率を向上することが可能となる。
【0090】
(第11実施形態)
第11実施形態は、上記第1実施形態と比較して、電源回路140Aに代えて、電源回路140Dを備える点が異なる。それ以外は、上記第1実施形態と同様の構成となる。
以下、上記第1実施形態と同様の構成部には同じ符号を付して適宜説明を省略し、異なる点のみを詳細に説明する。
第11実施形態に係る第7のワイヤレスセンサ付き軸受4G(図示略)は、上記第1実施形態の電源回路140Aに代えて、電源回路140Dを備えた構成となっている。
この電源回路140Dは、図20に示すように、上記第1実施形態の電源回路140Aにおいて、整流回路140aの前段にインピーダンスマッチング回路140fを追加した構成となっている。
【0091】
このインピーダンスマッチング回路140fは、第1のコイル13の出力インピーダンスと、電源回路140Dの入力インピーダンスとを整合(マッチング)する回路である。
ここで、高周波である給電用電波200の伝送において、第1のコイル13の出力インピーダンスと電源回路140Dの入力インピーダンスとが整合していないと、受信した給電用電波200の電源回路側へのエネルギー伝達効率が低下する。
インピーダンスマッチング回路140fは、例えば、給電用電波200の送電周波数や第1のコイル13及び電源回路140Aのインピーダンス特性などから、スミスチャートを用いて素子値が計算される。そして、計算された素子値を有する例えばインダクタ(コイル)やコンデンサ等の素子を直列又は並列接続して構成される。
【0092】
(第11実施形態の効果)
(1)第11実施形態に係る第7のワイヤレスセンサ付き軸受4Gは、電源回路140Dのインピーダンスマッチング回路140fが、第1のコイル13と当該電源回路140Dとのインピーダンスを整合する。
この構成であれば、インピーダンスマッチング回路140fによって、第1のコイル13の出力インピーダンスと、電源回路140Dの入力インピーダンスとが整合され、給電用電波200を受信時の電源回路側へのエネルギー伝達効率を向上することが可能となる。
【0093】
(第12実施形態)
第12実施形態は、上記第10実施形態と比較して、第2電源回路140Cに代えて、第3電源回路140Eを備える点が異なる。それ以外は、上記第10実施形態と同様の構成となる。
以下、上記第10実施形態と同様の構成部には同じ符号を付して適宜説明を省略し、異なる点のみを詳細に説明する。
第12実施形態に係る第8のワイヤレスセンサ付き軸受4H(図示略)は、上記第10実施形態の第6のワイヤレスセンサ付き軸受4Fにおいて、第2電源回路140Cに代えて第3電源回路140Eを備えた構成となっている。
この第3電源回路140Eは、図21に示すように、上記第10実施形態の第2電源回路140Cに対して、第2整流回路140Caの前段にインピーダンスマッチング回路140Ceを追加した構成となっている。
【0094】
このインピーダンスマッチング回路140Ceは、第1のコイル13の出力インピーダンスと、第3電源回路140Eの入力インピーダンスとを整合(マッチング)する回路である。
インピーダンスマッチング回路140Ceは、上記第11実施形態のインピーダンスマッチング回路140fと同様に、例えば、給電用電波200の送電周波数や第1のコイル13及び第2電源回路140Cのインピーダンス特性などから、スミスチャートを用いて素子値が計算される。そして、計算された素子値を有する例えばインダクタ(コイル)やコンデンサ等の素子を直列又は並列接続して構成される。
【0095】
(第12実施形態の効果)
(1)第12実施形態に係る第8のワイヤレスセンサ付き軸受4Hは、第3電源回路140Eのインピーダンスマッチング回路140Ceが、第1のコイル13と当該第3電源回路140Eとのインピーダンスを整合する。
この構成であれば、インピーダンスマッチング回路140Ceによって、第1のコイル13の出力インピーダンスと、第3電源回路140Eの入力インピーダンスとが整合され、給電用電波200を受信時の電源回路側へのエネルギー伝達効率を向上することが可能となる。
【0096】
(第13実施形態)
第13実施形態は、上記第1実施形態と比較して、第1の無線給電機2Aに代えて、第5の無線給電機2Eを備える点が異なる。それ以外は、上記第1実施形態と同様の構成となる。
以下、上記第1実施形態と同様の構成部には同じ符号を付して適宜説明を省略し、異なる点のみを詳細に説明する。
第13実施形態に係る第6の軸受給電システム1Fは、図22に示すように、上記第1実施形態の第1の軸受給電システム1Aにおいて、第1の無線給電機2Aに代えて、第5の無線給電機2Eを備えた構成となっている。
【0097】
この第5の無線給電機2Eは、その送電部の出力インピーダンスと第1の無線通信ユニット16Aの入力インピーダンスとを整合するインピーダンスマッチング回路2mを備える。
このインピーダンスマッチング回路2mは、上記第11実施形態のインピーダンスマッチング回路140fと同様に、例えば、給電用電波200の送電周波数、第5の無線給電機2E及び第1の無線通信ユニット16Aのインピーダンス特性などから、スミスチャートを用いて素子値が計算される。そして、計算された素子値を有する例えばインダクタ(コイル)やコンデンサ等の素子を直列又は並列接続して構成される。
【0098】
(第13実施形態の効果)
(1)第13実施形態に係る第6の軸受給電システム1Fは、第5の無線給電機2Eのインピーダンスマッチング回路2mが、当該第5の無線給電機2Eと第1の無線通信ユニット16Aとのインピーダンスを整合する。
この構成であれば、インピーダンスマッチング回路2mによって、第5の無線給電機2Eの出力インピーダンスと、第1の無線通信ユニット16Aの入力インピーダンスとが整合され、給電用電波200を受信時の電源回路側へのエネルギー伝達効率を向上することが可能となる。
また、無線給電機側にインピーダンスマッチング回路を設け、第1の無線通信ユニット16Aには設けない構成としたので、第1の軸受4A側の部品点数の増加を抑えることが可能となる。
【0099】
(変形例)
(1)上記第各実施形態では、検出センサ141を、静止輪である外輪6の内周面に設ける構成としたが、この構成に限らない。例えば、図23(a)に示すように、外輪6の肩の部分に第1の溝64を形成し、この第1の溝64の内側に検出センサ141を設ける構成としてもよい。また、図23(b)に示すように、外輪6の外周面に第2の溝65を形成し、この第2の溝65の内側に検出センサ141を設ける構成としてもよいし、図23(c)に示すように、外輪6の軸方向端面に第3の溝66を形成し、この第3の溝66の内側に検出センサ141を設ける構成としてもよい。また、例えば、図23(d)に示すように、検出センサ141を、第1のシール7の芯金71の内側面71aに設ける構成としてもよい。この構成によって、制御回路142と検出センサ141との間の配線を外部に伸ばす必要が無くなると共に、配線長を短くすることが容易となり、簡易にセンサ信号へのノイズ混入等の影響を低減できる配線構成とすることが可能となる。
【0100】
(2)上記各実施形態では、磁石11として、ネオジム磁石を使用しているが、この構成に限らず、サマリウムコバルト磁石等の他の磁石を使用してもよい。
(3)上記各実施形態では、温度センサ141a、加速度センサ141b、荷重センサ141c及び速度センサ141dの4種類のセンサを設ける構成としたが、この構成に限らない。例えば、湿度を検出するセンサなど他の種類のセンサを設ける構成としてもよい。
(4)上記各実施形態では、振動を検出するセンサとして、加速度センサを例に挙げて説明したが、この構成に限らない。例えば、AE(acoustic emission)センサ、超音波センサ、ショックパルスセンサ、マイクロホン等や、あるいは、速度、加速度、歪み、応力、変位型等、振動に起因して発生する物理量を電気信号化できるものであれば他のセンサを用いる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0101】
1A〜1F…第1〜第6の軸受給電システム、2A〜2E…第1〜第5の無線給電機、3A〜3B…第1〜第2の上位装置、4A〜4H…第1〜第8のワイヤレスセンサ付き軸受、5…第1の軌道輪(内輪)、6…第2の軌道輪(外輪)、7,7A,7B…第1,第2,第3のシール、9…転動体、10,17…第1,第2の保持器、11…磁石、12,18a…ヨーク、13,19…第1,第2のコイル、第1〜第2の回路部…14A〜14B、15…磁気シールド、16A〜16B…第1〜第2の無線通信ユニット、18…多極リング磁石、18b…マグネットゴムシート、23,141d…速度センサ、71,71B…芯金、71A…芯材、100…リム部、101…柱部、102…ポケット、103…貫通穴、133…金属薄膜、140A,140D…電源回路、140B〜140C…第1〜第2電源回路、141…検出センサ、142…制御回路、143…無線回路、144…アンテナ、200,200A…給電用電波、712…スリット
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