特許第6743687号(P6743687)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6743687電力変換装置、モータ駆動ユニット、および電動パワーステアリング装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6743687
(24)【登録日】2020年8月3日
(45)【発行日】2020年8月19日
(54)【発明の名称】電力変換装置、モータ駆動ユニット、および電動パワーステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20200806BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20200806BHJP
   B62D 6/00 20060101ALI20200806BHJP
【FI】
   H02M7/48 M
   B62D5/04
   B62D6/00
【請求項の数】15
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2016-251508(P2016-251508)
(22)【出願日】2016年12月26日
(65)【公開番号】特開2018-107891(P2018-107891A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年11月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】日本電産株式会社
(72)【発明者】
【氏名】和田 英司
(72)【発明者】
【氏名】大橋 弘光
【審査官】 柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】 特公平7−99959(JP,B2)
【文献】 特表2013−529055(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H02P 27/06
B62D 5/04
B62D 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源からの電力を、n相(nは3以上の整数)の巻線を有するモータに供給する電力に変換する電力変換装置であって
前記モータの各相の巻線の一端に接続される第1インバータと、
前記各相の巻線の他端に接続される第2インバータと、
前記各相の巻線の一端と前記第1インバータとの接続および非接続を切替える相分離リレー回路と、
前記各相の巻線の一端に接続され、かつ、前記各相の巻線の一端同士の接続および非接続を切替える中性点リレー回路と、
前記第2インバータと前記電源との接続・非接続を切替える第1スイッチ素子と、
前記第2インバータとグランドとの接続・非接続を切替える第2スイッチ素子と、
を有する電力変換装置。
【請求項2】
前記相分離リレー回路は、前記各相の巻線の一端と前記第1インバータとの接続および非接続を切替えるn個のスイッチ素子を有し、
前記中性点リレー回路は、前記各相の巻線の一端同士の接続および非接続を切替えるn個のスイッチ素子を有する、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記相分離リレー回路および前記中性点リレー回路の各回路におけるn個のスイッチ素子の各々は、還流ダイオードを有する半導体スイッチ素子であり、各回路において、n個の還流ダイオードは同一方向を向く、請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記相分離リレー回路および前記中性点リレー回路の各回路におけるn個のスイッチ素子の各々は、前記モータに向けて順電流が前記還流ダイオードに流れるよう配置される、請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
正常駆動時において、前記相分離リレー回路はオンして前記中性点リレー回路はオフし、かつ、前記第1および第2スイッチはオンする、請求項1から4のいずれかに記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記相分離リレー回路がオフして前記中性点リレー回路がオンすると、前記各相の巻線の一端同士の接続によって前記各相の巻線の中性点が構成される、請求項1から4のいずれかに記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記第1インバータが異常のとき、前記相分離リレー回路がオフして前記中性点リレー回路がオンすることにより前記中性点は構成され、かつ、前記第1および第2スイッチはオンする、請求項6に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記第2インバータが異常のとき、前記相分離リレー回路はオンして前記中性点リレー回路はオフする、請求項1から4のいずれかに記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記第2インバータのブリッジ回路は、各々がローサイドスイッチング素子およびハイサイドスイッチング素子を有するn個のレグを有し、
前記ブリッジ回路におけるn個のハイサイドスイッチング素子がオープン故障したスイッチング素子を含む場合、 前記第2スイッチ素子はオフし、かつ、前記ブリッジ回路において、前記n個のハイサイドスイッチング素子のうち、故障したスイッチング素子以外の他のスイッチング素子は全てオフして、前記n個のローサイドスイッチング素子は全てオンする、請求項8に記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記第2インバータのブリッジ回路は、各々がローサイドスイッチング素子およびハイサイドスイッチング素子を有するn個のレグを有し、
前記ブリッジ回路におけるn個のハイサイドスイッチング素子がショート故障したスイッチング素子を含む場合、前記第1および第2スイッチ素子はオフし、かつ、前記ブリッジ回路において、前記n個のハイサイドスイッチング素子のうち、故障したスイッチング素子以外の他のスイッチング素子は全てオフして、前記n個のローサイドスイッチング素子は全てオンする、請求項8に記載の電力変換装置。
【請求項11】
前記第2インバータのブリッジ回路は、各々がローサイドスイッチング素子およびハイサイドスイッチング素子を有するn個のレグを有し、
前記ブリッジ回路におけるn個のローサイドスイッチング素子がオープン故障したスイッチング素子を含む場合、 前記第1スイッチ素子はオフし、かつ、前記ブリッジ回路において、前記n個のローサイドスイッチング素子のうち、故障したスイッチング素子以外の他のスイッチング素子は全てオフして、前記n個のハイサイドスイッチング素子は全てオンする、請求項8に記載の電力変換装置。
【請求項12】
前記第2インバータのブリッジ回路は、各々がローサイドスイッチング素子およびハイサイドスイッチング素子を有するn個のレグを有し、
前記ブリッジ回路におけるn個のローサイドスイッチング素子がショート故障したスイッチング素子を含む場合、前記第1および第2スイッチ素子はオフし、かつ、前記ブリッジ回路において、前記n個のローサイドスイッチング素子のうち、故障したスイッチング素子以外の他のスイッチング素子は全てオフして、前記n個のハイサイドスイッチング素子は全てオンする、請求項8に記載の電力変換装置。
【請求項13】
前記電源は単一の電源である、請求項1から12のいずれかに記載の電力変換装置。
【請求項14】
前記モータと、
請求項1から13のいずれかに記載の電力変換装置と、
前記電力変換装置を制御する制御回路と、
を有するモータ駆動ユニット。
【請求項15】
請求項14に記載のモータ駆動ユニットを有する電動パワーステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動モータに供給する電力を変換する電力変換装置、モータ駆動ユニット、電動パワーステアリング装置およびリレーモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
ブラシレスDCモータおよび交流同期モータなどの電動モータ(以下、単に「モータ」と表記する。)は、一般的に三相電流によって駆動される。三相電流の波形を正確に制御するため、ベクトル制御などの複雑な制御技術が用いられる。このような制御技術では、高度な数学的演算が必要であり、マイクロコントローラ(マイコン)などのデジタル演算回路が用いられる。ベクトル制御技術は、モータの負荷変動が大きな用途、例えば、洗濯機、電動アシスト自転車、電動スクータ、電動パワーステアリング装置、電気自動車、産業機器などの分野で活用されている。一方、出力が相対的に小さなモータでは、パルス幅変調(PWM)方式などの他のモータ制御方式が採用されている。
【0003】
車載分野においては、自動車用電子制御ユニット(ECU:Electrical Contorl Unit)が車両に用いられる。ECUは、マイクロコントローラ、電源、入出力回路、ADコンバータ、負荷駆動回路およびROM(Read Only Memory)などを備える。ECUを核として電子制御システムが構築される。例えば、ECUはセンサからの信号を処理してモータなどのアクチュエータを制御する。具体的に説明すると、ECUはモータの回転速度やトルクを監視しながら、電力変換装置におけるインバータを制御する。ECUの制御の下で、電力変換装置はモータに供給する駆動電力を変換する。
【0004】
近年、モータ、電力変換装置およびECUが一体化された機電一体型モータが開発されている。特に車載分野においては、安全性の観点から高い品質保証が要求される。そのため、部品の一部が故障した場合でも安全動作を継続できる冗長設計が取り入れられている。冗長設計の一例として、1つのモータに対して2つの電力変換装置を設けることが検討されている。他の一例として、メインのマイクロコントローラにバックアップ用マイクロコントローラを設けることが検討されている。
【0005】
例えば特許文献1は、制御部と、2つのインバータとを備え、三相モータに供給する電力を変換する電力変換装置を開示している。2つのインバータの各々は電源およびグランド(以下、「GND」と表記する。)に接続される。一方のインバータは、モータの三相の巻線の一端に接続され、他方のインバータは、三相の巻線の他端に接続される。各インバータは、各々がハイサイドスイッチング素子およびローサイドスイッチング素子を含む3つのレグから構成されるブリッジ回路を備える。制御部は、2つのインバータにおけるスイッチング素子の故障を検出した場合、モータ制御を正常時の制御から異常時の制御に切替える。本願明細書において、「異常」とは、主としてスイッチング素子の故障を意味する。また、「正常時の制御」は、全てのスイッチング素子が正常な状態における制御を意味し、「異常時の制御」は、あるスイッチング素子に故障が生じた状態における制御を意味する。
【0006】
異常時の制御において、2つのインバータのうちの故障したスイッチング素子を含むインバータ(以下、「故障インバータ」と表記する。)には、スイッチング素子を所定の規則でオンまたはオフすることにより巻線の中性点が構成される。その規則によれば、例えば、ハイサイドスイッチング素子が常時オフとなるオープン故障した場合、インバータのブリッジ回路において、3つのハイサイドスイッチング素子のうちの故障したスイッチング素子以外のものはオフし、かつ、3つのローサイドスイッチング素子はオンする。その場合、中性点はローサイド側に構成される。または、ハイサイドスイッチング素子が常時オンとなるショート故障した場合、インバータのブリッジ回路において、3つのハイサイドスイッチング素子のうちの故障したスイッチング素子以外のものはオンし、かつ、3つのローサイドスイッチング素子はオフする。その場合、中性点はハイサイド側に構成される。特許文献1の電力変換装置によれば、異常時において、三相の巻線の中性点は、故障インバータの中に構成される。スイッチング素子に故障が生じても、正常な方のインバータを用いてモータ駆動を継続させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014−192950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した従来の技術では、正常時および異常時における電流制御のさらなる向上が求められていた。
【0009】
本開示の実施形態は、正常時および異常時のいずれにおいても適切な電流制御が可能な電力変換装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の例示的な電力変換装置は、電源からの電力を、n相(nは3以上の整数)の巻線を有するモータに供給する電力に変換する電力変換装置であって前記モータの各相の巻線の一端に接続される第1インバータと、前記各相の巻線の他端に接続される第2インバータと、前記各相の巻線の一端と前記第1インバータとの接続および非接続を切替える相分離リレー回路と、前記各相の巻線の一端に接続され、かつ、前記各相の巻線の一端同士の接続および非接続を切替える中性点リレー回路と、前記第2インバータと前記電源との接続・非接続を切替える第1スイッチ素子と、前記第2インバータとグランドとの接続・非接続を切替える第2スイッチ素子と、を有する。
【発明の効果】
【0011】
本開示の実施形態によると、第1相分離リレー回路、第1中性点リレー回路、第1および第2スイッチ素子によって正常時および異常時のいずれにおいても適切な電流制御が可能となる電力変換装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、例示的な実施形態1による電力変換装置100の回路構成を示す回路図である。
図2図2は、例示的な実施形態1による電力変換装置100の他の回路構成を示す回路図である。
図3図3は、例示的な実施形態1による電力変換装置100のさらなる他の回路構成を示す回路図である。
図4図4は、例示的な実施形態1による、電力変換装置100を備えるモータ駆動ユニット400の典型的なブロック構成を示すブロック図である。
図5図5は、正常時の三相通電制御に従って電力変換装置100を制御したときにモータ200のU相、V相およびW相の各巻線に流れる電流値をプロットして得られる電流波形(正弦波)を示す図である。
図6図6は、例えばモータ電気角270°における異常時の制御に応じた電力変換装置100内の電流の流れを示す模式図である。
図7図7は、異常時の制御に応じてモータ200のU相、V相およびW相の各巻線に流れる電流値をプロットして得られる電流波形を示す図である。
図8図8は、一組のリレー回路を備える電力変換装置100Aの回路構成を示す回路図である。
図9図9は、例示的な実施形態2による電動パワーステアリング装置500の典型的な構成を示す模式図である。
図10図10は、例示的な実施形態3によるリレーモジュール600の回路構成を示す回路図である。
図11図11は、一組のリレー回路を備えるリレーモジュール600Aの回路構成を示す回路図である。
図12A図12Aは、第1相分離リレー回路120において各FETが配置される様子を示す模式図である。
図12B図12Bは、第1中性点リレー回路130において各FETが配置される様子を示す模式図である。
図13図13は、例示的な実施形態4による電力変換装置100Bの回路構成を示す回路図である。
図14図14は、例示的な実施形態4の変形例による電力変換装置100Cの回路構成を示す回路図である。
図15図15は、第2インバータ140のハイサイドスイッチ素子が故障した場合の、例えばモータ電気角90°における電力変換装置100B内の電流の流れを示す模式図である。
図16図16は、第2インバータ140のローサイドスイッチ素子が故障した場合の、例えばモータ電気角90°における電力変換装置100B内の電流の流れを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の実施形態を説明する前に、本開示の基礎となった本願発明者の知見を説明する。
【0014】
特許文献1の電力変換装置においては、電源およびGNDと、2つのインバータの各々とが常時接続されたままである。その構成上、電源と故障インバータとの接続を切り離すことはできない。本願発明者は、異常時に故障インバータにおいて中性点が構成されても、故障インバータは電源から電流を引き込んでしまうという課題を見出した。これにより、故障インバータにおいて電力損失が発生することとなる。
【0015】
電源と同様に、故障インバータとGNDとの接続を切り離すこともできない。本願発明者は、異常時に故障インバータにおいて中性点が構成されても、正常な方のインバータを通じて各相の巻線に供給される電流は、供給元のインバータには戻らずに、故障インバータからGNDに流れてしまうという課題を見出した。換言すると、駆動電流の閉ループを形成することは不可能となる。正常な方のインバータから各相の巻線に供給される電流は、供給元のインバータを通じてGNDに流れることが望ましい。
【0016】
以下、添付の図面を参照しながら、本開示の電力変換装置、モータ駆動ユニット、電動パワーステアリング装置およびリレーモジュールの実施形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0017】
本願明細書においては、三相(U相、V相、W相)の巻線を有する三相モータに供給する電力を変換する電力変換装置を例にして、本開示の実施形態を説明する。ただし、四相または五相などのn相(nは4以上の整数)の巻線を有するn相モータに供給する電力を変換する電力変換装置も本開示の範疇である。
【0018】
(実施形態1)
図1は、本実施形態による電力変換装置100の回路構成を模式的に示している。
【0019】
電力変換装置100は、第1インバータ110と、第1相分離リレー回路120と、第1中性点リレー回路130と、第2インバータ140と、第2相分離リレー回路150と、第2中性点リレー回路160とを備える。電力変換装置100は種々のモータに供給する電力を変換することができる。モータ200は、三相交流モータである。モータ200は、U相の巻線M1、V相の巻線M2およびW相の巻線M3を備え、第1インバータ110と第2インバータ140とに接続される。具体的に説明すると、第1インバータ110はモータ200の各相の巻線の一端に接続され、第2インバータ140は各相の巻線の他端に接続される。本願明細書において、部品(構成要素)同士の間の「接続」とは、主に電気的な接続を意味する。
【0020】
第1インバータ110は、各相に対応した端子U_L、V_LおよびW_Lを有し、第2インバータ140は、各相に対応した端子U_R、V_RおよびW_Rを有する。第1インバータ110の端子U_Lは、U相の巻線M1の一端に接続され、端子V_Lは、V相の巻線M2の一端に接続され、端子W_Lは、W相の巻線M1の一端に接続される。第1インバータ110と同様に、第2インバータ140の端子U_Rは、U相の巻線M1の他端に接続され、端子V_Rは、V相の巻線M2の他端に接続され、端子W_Rは、W相の巻線M3の他端に接続される。このような結線は、いわゆるスター結線およびデルタ結線とは異なる。
【0021】
第1インバータ110(「ブリッジ回路L」と表記する場合がある。)は、3個のレグから構成されるブリッジ回路を含む。各レグは、ローサイドスイッチング素子およびハイサイドスイッチング素子を有する。図1に示されるスイッチング素子111L、112Lおよび113Lがローサイドスイッチング素子であり、スイッチング素子111H、112Hおよび113Hはハイサイドスイッチング素子である。スイッチング素子として、例えば電界効果トランジスタ(典型的にはMOSFET)または絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)を用いることができる。本願明細書において、インバータのスイッチング素子としてFETを用いる例を説明し、以下の説明ではスイッチング素子をFETと表記する場合がある。例えば、スイッチング素子111LはFET111Lと表記される。
【0022】
第1インバータ110は、U相、V相およびW相の各相の巻線に流れる電流を検出するための電流センサ(図4を参照)として、3個のシャント抵抗111R、112Rおよび113Rを備える。電流センサ170は、各シャント抵抗に流れる電流を検出する電流検出回路(不図示)を含む。例えば、シャント抵抗111R、112Rおよび113Rは、第1インバータ110の3個のレグに含まれる3個のローサイドスイッチング素子とグランドとの間にそれぞれ接続される。具体的には、シャント抵抗111RはFET111LとGNDとの間に接続され、シャント抵抗112RはFET112LとGNDとの間に接続され、シャント抵抗113RはFET113LとGNDとの間に接続される。シャント抵抗の抵抗値は、例えば0.5mΩ〜1.0mΩ程度である。
【0023】
第1インバータ110と同様に、第2インバータ140(「ブリッジ回路R」と表記する場合がある。)は、3個のレグから構成されるブリッジ回路を含む。図1に示されるFET141L、142Lおよび143Lがローサイドスイッチング素子であり、FET141H、142Hおよび143Hはハイサイドスイッチング素子である。また、第2インバータ140は、3個のシャント抵抗141R、142Rおよび143Rを備える。それらのシャント抵抗は、3個のレグに含まれる3個のローサイドスイッチング素子とグランドとの間に接続される。第1および第2インバータ110、140の各FETは、例えばマイクロコントローラまたは専用ドライバによって制御され得る。
【0024】
第1相分離リレー回路120は、各相の巻線の一端と第1インバータ110との間に接続される。具体的に説明すると、第1相分離リレー回路120は、各相の巻線の一端と第1インバータ110とに接続される3個の第1相分離リレー121、122および123を含む。第1相分離リレー121は、FET111Hおよび111Lの接続ノードとU相の巻線M1の一端との間に接続される。第1相分離リレー122は、FET112Hおよび112Lの接続ノードとV相の巻線M2の一端との間に接続される。第1相分離リレー123は、FET113Hおよび113Lの接続ノードとW相の巻線M3の一端との間に接続される。この回路構成により、第1相分離リレー回路120は、各相の巻線の一端と第1インバータ110との接続および非接続を切替える。
【0025】
第2相分離リレー回路150は、各相の巻線の他端と第2インバータ140との間に接続される。具体的に説明すると、第2相分離リレー回路150は、各相の巻線の他端と第2インバータ140とに接続される3個の第2相分離リレー151、152および153を含む。第2相分離リレー151は、FET141Hおよび141Lの接続ノードとU相の巻線M1の他端との間に接続される。第2相分離リレー152は、FET142Hおよび142Lの接続ノードとV相の巻線M2の他端との間に接続される。第2相分離リレー153は、FET143Hおよび143Lの接続ノードとW相の巻線M3の他端との間に接続される。この回路構成により、第2相分離リレー回路150は、各相の巻線の他端と第2インバータ140との接続および非接続を切替える。
【0026】
第1中性点リレー回路130は、各相の巻線の一端に接続される。第1中性点リレー回路130は、各々の一端が共通の第1ノードN1に接続され、他端は各相の巻線の一端に接続される3個の第1中性点リレー131、132および133を含む。具体的に説明すると、第1中性点リレー131の一端は第1ノードN1に接続され、他端はU相の巻線M1の一端に接続される。第1中性点リレー132の一端は第1ノードN1に接続され、他端はV相の巻線M2の一端に接続される。第1中性点リレー133の一端は第1ノードN1に接続され、他端はW相の巻線M3の一端に接続される。この回路構成により、第1中性点リレー回路130は、各相の巻線の一端同士の接続および非接続を切替える。
【0027】
第2中性点リレー回路160は、各相の巻線の他端に接続される。第2中性点リレー回路160は、各々の一端が共通の第2ノードN2に接続され、他端は各相の巻線の他端に接続される3個の第2中性点リレー161、162および163を含む。具体的に説明すると、第2中性点リレー161の一端は第2ノードN2に接続され、他端はU相の巻線M1の他端に接続される。第2中性点リレー162の一端は第2ノードN2に接続され、他端はV相の巻線M2の他端に接続される。第2中性点リレー163の一端は第2ノードN2に接続され、他端はW相の巻線M3の他端に接続される。この回路構成により、第2中性点リレー回路160は、各相の巻線の他端同士の接続および非接続を切替える。
【0028】
第1相分離リレー121、122、123、第1中性点リレー131、132、133、第2相分離リレー151、152、153、第2中性点リレー161、162および163のリレーのオンおよびオフは、例えばマイクロコントローラまたは専用ドライバによって制御され得る。これらのリレーとして、例えばFETまたはIGBTなどのトランジスタを広く用いることができる。また、リレーとして、メカニカルリレーを用いても構わない。本願明細書において、これらのリレーとして還流ダイオードを有するFETを用いる例を説明し、以下の説明では、各リレーをFETと表記する。例えば、第1相分離リレー121、122および123は、FET121、122および123とそれぞれ表記される。
【0029】
図12Aは、第1相分離リレー回路120において各FETが配置される様子を模式的に示している。図12Bは、第1中性点リレー回路130において各FETが配置される様子を模式的に示している。
【0030】
第1相分離リレー回路120において、3個のFET121、122および123は、還流ダイオードが同一方向を向き、かつ、モータ200に向けて順方向電流が還流ダイオードに流れるよう配置される。第1中性点リレー回路130において、3個のFET131、132および133は、還流ダイオードが同一方向を向き、かつ、モータ200に向けて順方向電流が還流ダイオードに流れるよう配置される。これと同様に、第2相分離リレー回路150において、3個のFET151、152および153は、還流ダイオードが同一方向を向き、かつ、モータ200に向けて順方向電流が還流ダイオードに流れるよう配置される。第2中性点リレー回路160において、3個のFET161、162および163は、還流ダイオードが同一方向を向き、かつ、モータ200に向けて順方向電流が還流ダイオードに流れるよう配置される。このような配置によると、オフ状態の相分離リレー回路および中性点リレー回路に流れる電流を遮断することができる。
【0031】
電力変換装置100は、電源101とGNDとに接続される。具体的に説明すると、第1および第2インバータ110、140の各々は、電源101およびGNDに接続される。電源101から第1および第2インバータ110、140に電力が供給される。
【0032】
電源101は所定の電源電圧を生成する。電源101として、例えば直流電源が用いられる。ただし、電源101は、AC−DCコンバータおよびDC―DCコンバータであってもよいし、バッテリー(蓄電池)であっても良い。電源101は、第1および第2インバータ110、140に共通の単一電源であってもよいし、第1インバータ110用の第1電源および第2インバータ140用の第2電源を備えていてもよい。
【0033】
電源101と電力変換装置100との間にコイル102が設けられている。コイル102は、ノイズフィルタとして機能し、各インバータに供給する電圧波形に含まれる高周波ノイズ、または各インバータで発生する高周波ノイズを電源101側に流出させないように平滑化する。また、各インバータの電源端子には、コンデンサ103が接続されている。コンデンサ103は、いわゆるバイパスコンデンサであり、電圧リプルを抑制する。コンデンサ103は、例えば電解コンデンサであり、容量および使用する個数は設計仕様などによって適宜決定される。
【0034】
図1には、インバータ毎の各レグに1個のシャント抵抗を配置する構成を例示している。ただし、第1および第2インバータ110、140は、6個以下のシャント抵抗を備えることができる。6個以下のシャント抵抗は、第1および第2インバータ110、140が備える6個のレグのうちの6個以下のローサイドスイッチング素子とGNDとの間に接続され得る。さらにこれをn相モータに拡張すると、第1および第2インバータ110、140は、2n個以下のシャント抵抗を備えることができる。2n個以下のシャント抵抗は、第1および第2インバータ110、140が備える2n個のレグのうちの2n個以下のローサイドスイッチング素子とGNDとの間に接続され得る。
【0035】
図2は、本実施形態による電力変換装置100の他の回路構成を模式的に示している。第1または第2インバータ110、140の各レグと、巻線M1、M2およびM3との間に3つのシャント抵抗を配置することも可能である。例えば、第1インバータ110と巻線M1、M2およびM3の一端との間にシャント抵抗111R、112Rおよび113Rが配置され得る。また例えば、図示されないが、シャント抵抗111R、112Rは第1インバータ110と巻線M1、M2の一端との間に配置され、シャント抵抗143Rは、第2インバータ140と巻線M3の他端との間に配置され得る。このような構成において、U、VおよびW相用に3個のシャント抵抗が配置されていれば十分であり、最低2個のシャント抵抗が配置されていればよい。
【0036】
図3は、本実施形態による電力変換装置100のさらなる他の回路構成を模式的に示している。例えば各インバータに、各相の巻線に共通のシャント抵抗を1つだけ配置してもよい。1個のシャント抵抗111Rは、例えば第1インバータ110のローサイド側のノードN3(各レグの接続点)とGNDとの間に接続され、他の1個のシャント抵抗141Rは、例えば第2インバータ140のローサイド側のノードN4とGNDとの間に接続され得る。なお、正常なインバータ側のシャント抵抗を使用してモータ電流は検出される。そのため、相分離リレー回路の配置に関係なく、モータ電流が検出できる位置にシャント抵抗を配置することができる。または、ローサイド側と同様に、1個のシャント抵抗111Rは、例えば第1インバータ110のハイサイド側のノードN5と電源101との間に接続され、他の1個のシャント抵抗141Rは、例えば第2インバータ140のハイサイド側のノードN6と電源101との間に接続される。このように、使用するシャント抵抗の数およびシャント抵抗の配置は、製品コストや設計仕様などを考慮して適宜決定される。
【0037】
図4は、電力変換装置100を備えるモータ駆動ユニット400の典型的なブロック構成を模式的に示している。
【0038】
モータ駆動ユニット400は、電力変換装置100、モータ200および制御回路300を備える。
【0039】
制御回路300は、例えば、電源回路310と、角度センサ320と、入力回路330と、マイクロコントローラ340と、駆動回路350と、ROM360とを備える。制御回路300は、電力変換装置100に接続され、電力変換装置100を制御することによりモータ200を駆動する。具体的には、制御回路300は、目的とするモータトルクや回転速度を制御してクローズドループ制御を実現することができる。
【0040】
電源回路310は、回路内の各ブロックに必要なDC電圧(例えば3V、5V)を生成する。角度センサ320は、例えばレゾルバやホールICである。角度センサ320は、モータ200のロータの回転角(以下、「回転信号」と表記する。)を検出し、回転信号をマイクロコントローラ340に出力する。入力回路330は、電流センサ170によって検出されたモータ電流値(以下、「実電流値」と表記する。)を受け取って、マイクロコントローラ340の入力レベルに実電流値のレベルを必要に応じて変換し、実電流値をマイクロコントローラ340に出力する。
【0041】
マイクロコントローラ340は、電力変換装置100の第1および第2インバータ110、140における各FETのスイッチング動作(ターンオンまたはターンオフ)を制御する。マイクロコントローラ340は、実電流値およびロータの回転信号などに従って目標電流値を設定してPWM信号を生成し、それを駆動回路350に出力する。また、例えばマイクロコントローラ340は、電力変換装置100における、第1相分離リレー回路120、第1中性点リレー回路130、第2相分離リレー回路150および第2中性点リレー回路160のオン・オフ状態を切替えることができる。または、駆動回路350がマイクロコントローラ340の制御の下で、各リレー回路のオン・オフ状態の切替えを実行してもよい。駆動回路350は、典型的にはゲートドライバである。駆動回路350は、第1および第2インバータ110、140における各FETのスイッチング動作を制御する制御信号(ゲート制御信号)をPWM信号に従って生成し、各FETのゲートに制御信号を与える。なお、マイクロコントローラ340は駆動回路350の機能を備えていてもよい。その場合、制御回路300に駆動回路350は存在しなくてよい。
【0042】
ROM360は、例えば書き込み可能なメモリ、書き換え可能なメモリまたは読み出し専用のメモリである。ROM360は、マイクロコントローラ340に電力変換装置100を制御させるための命令群を含む制御プログラムを格納している。例えば、制御プログラムはブート時にRAM(不図示)に一旦展開される。
【0043】
電力変換装置100には正常時および異常時の制御がある。制御回路300(主としてマイクロコントローラ340)は、電力変換装置100の制御を正常時の制御から異常時の制御に切替えることができる。制御の種類に応じて、第1相分離リレー回路120、第1中性点リレー回路130、第2相分離リレー回路150および第2中性点リレー回路160のオン・オフ状態が決定される。
【0044】
以下、各リレー回路のオン・オフ状態およびオン・オフ状態における第1および第2インバータ110、140とモータ200との電気的な接続関係を詳細に説明する。
【0045】
制御回路300は、第1相分離リレー回路120をオンすると、第1中性点リレー回路130をオフし、かつ、第1相分離リレー回路120をオフすると、第1中性点リレー回路130をオンするように両方のリレー回路を択一的に制御する。ここで、「第1相分離リレー回路120をオンする」とは、FET121、122および123の全てをオンすることを意味し、「第1相分離リレー回路120をオフする」とは、FET121、122および123の全てをオフすることを意味する。また、「第1中性点リレー回路130をオンする」とは、FET131、132および133の全てをオンすることを意味し、「第1中性点リレー回路130をオフする」とは、FET131、132および133の全てをオフすることを意味する。
【0046】
第1相分離リレー回路120がオンすると、第1インバータ110は各相の巻線の一端に接続され、第1相分離リレー回路120がオフすると、第1インバータ110は各相の巻線の一端から切り離される。第1中性点リレー回路130がオンすると、各相の巻線の一端同士は接続され、第1中性点リレー回路130がオフすると、各相の巻線の一端同士は非接続となる。
【0047】
制御回路300は、第2相分離リレー回路150をオンすると、第2中性点リレー回路160をオフし、かつ、第2相分離リレー回路150をオフすると、第2中性点リレー回路160をオンするように両方のリレー回路を択一的に制御する。ここで、「第2相分離リレー回路150をオンする」とは、FET151、152および153の全てをオンすることを意味し、「第2相分離リレー回路150をオフする」とは、FET151、152および153の全てをオフすることを意味する。また、「第2中性点リレー回路160をオンする」とは、FET161、162および163の全てをオンすることを意味し、「第2中性点リレー回路160をオフする」とは、FET161、162および163の全てをオフすることを意味する。
【0048】
第2相分離リレー回路150がオンすると、第2インバータ140は各相の巻線の他端に接続され、第2相分離リレー回路150がオフすると、第2インバータ140は各相の巻線の他端から切り離される。第2中性点リレー回路160がオンすると、各相の巻線の他端同士は接続され、第2中性点リレー回路160がオフすると、各相の巻線の他端同士は非接続となる。
【0049】
(1.正常時の制御)
先ず、電力変換装置100の正常時の制御方法の具体例を説明する。上述したとおり、正常とは、第1および第2インバータ110、140の各FETに故障が生じていない状態を指す。
【0050】
正常時において、制御回路300は、第1相分離リレー回路120をオンして第1中性点リレー回路130をオフし、かつ、第2相分離リレー回路150をオンして第2中性点リレー回路160をオフする。これにより、第1および第2中性点リレー回路130、160は各相の巻線から切り離され、かつ、第1インバータ110は、第1相分離リレー回路120を介して各相の巻線の一端に接続されて、第2インバータ140は、第2相分離リレー回路150を介して各相の巻線の他端に接続される。この接続状態において、制御回路300は、第1および第2インバータ110、140の両方を用いて三相通電制御することによってモータ200を駆動する。具体的に、制御回路300は、第1インバータ110のFETと第2インバータ140のFETとを互いに逆位相(位相差=180°)でスイッチング制御することにより三相通電制御を行う。例えば、FET111L、111H、141Lおよび141Hを含むHブリッジに着目すると、FET111Lがオンすると、FET141Lはオフし、FET111Lがオフすると、FET141Lはオンする。これと同様に、FET111Hがオンすると、FET141Hはオフし、FET111Hがオフすると、FET141Hはオンする。
【0051】
図5は、正常時の三相通電制御に従って電力変換装置100を制御したときにモータ200のU相、V相およびW相の各巻線に流れる電流値をプロットして得られる電流波形(正弦波)を例示している。横軸は、モータ電気角(deg)を示し、縦軸は電流値(A)を示している。図5の電流波形において、電気角30°毎に電流値をプロットしている。Ipkは各相の最大電流値(ピーク電流値)を表している。なお、図5に例示した正弦波以外に、例えば矩形波を用いてモータ200を駆動することは可能である。
【0052】
表1は、図5の正弦波において電気角毎に、各インバータの端子に流れる電流値を示している。表1は、具体的に、第1インバータ110(ブリッジ回路L)の端子U_L、V_LおよびW_Lに流れる、電気角30°毎の電流値、および、第2インバータ140(ブリッジ回路R)の端子U_R、V_RおよびW_Rに流れる、電気角30°毎の電流値を示している。ここで、ブリッジ回路Lに対しては、ブリッジ回路Lの端子からブリッジ回路Rの端子に流れる電流方向を正の方向と定義する。図5に示される電流の向きはこの定義に従う。また、ブリッジ回路Rに対しては、ブリッジ回路Rの端子からブリッジ回路Lの端子に流れる電流方向を正の方向と定義する。従って、ブリッジ回路Lの電流とブリッジ回路Rの電流との位相差は180°となる。表1において、電流値Iの大きさは〔(3)1/2/2〕*Ipkであり、電流値Iの大きさはIpk/2である。
【0053】
【表1】
【0054】
電気角0°において、U相の巻線M1には電流は流れない。V相の巻線M2にはブリッジ回路Rからブリッジ回路Lに大きさIの電流が流れ、W相の巻線M3にはブリッジ回路Lからブリッジ回路Rに大きさIの電流が流れる。
【0055】
電気角30°において、U相の巻線M1にはブリッジ回路Lからブリッジ回路Rに大きさIの電流が流れ、V相の巻線M2にはブリッジ回路Rからブリッジ回路Lに大きさIpkの電流が流れ、W相の巻線M3にはブリッジ回路Lからブリッジ回路Rに大きさIの電流が流れる。
【0056】
電気角60°において、U相の巻線M1にはブリッジ回路Lからブリッジ回路Rに大きさIの電流が流れ、V相の巻線M2にはブリッジ回路Rからブリッジ回路Lに大きさIの電流が流れる。W相の巻線M3には電流は流れない。
【0057】
電気角90°において、U相の巻線M1にはブリッジ回路Lからブリッジ回路Rに大きさIpkの電流が流れ、V相の巻線M2にはブリッジ回路Rからブリッジ回路Lに大きさIの電流が流れ、W相の巻線M3にはブリッジ回路Rからブリッジ回路Lに大きさIの電流が流れる。
【0058】
電気角120°において、U相の巻線M1にはブリッジ回路Lからブリッジ回路Rに大きさIの電流が流れ、W相の巻線M3にはブリッジ回路Rからブリッジ回路Lに大きさIの電流が流れる。V相の巻線M2には電流は流れない。
【0059】
電気角150°において、U相の巻線M1にはブリッジ回路Lからブリッジ回路Rに大きさIの電流が流れ、V相の巻線M2にはブリッジ回路Lからブリッジ回路Rに大きさIの電流が流れ、W相の巻線M3にはブリッジ回路Rからブリッジ回路Lに大きさIpkの電流が流れる。
【0060】
電気角180°において、U相の巻線M1には電流は流れない。V相の巻線M2にはブリッジ回路Lからブリッジ回路Rに大きさIの電流が流れ、W相の巻線M3にはブリッジ回路Rからブリッジ回路Lに大きさIの電流が流れる。
【0061】
電気角210°において、U相の巻線M1にはブリッジ回路Rからブリッジ回路Lに大きさIの電流が流れ、V相の巻線M2にはブリッジ回路Lからブリッジ回路Rに大きさIpkの電流が流れ、W相の巻線M3にはブリッジ回路Rからブリッジ回路Lに大きさIの電流が流れる。
【0062】
電気角240°において、U相の巻線M1にはブリッジ回路Rからブリッジ回路Lに大きさIの電流が流れ、V相の巻線M2にはブリッジ回路Lからブリッジ回路Rに大きさIの電流が流れる。W相の巻線M3には電流は流れない。
【0063】
電気角270°において、U相の巻線M1にはブリッジ回路Rからブリッジ回路Lに大きさIpkの電流が流れ、V相の巻線M2にはブリッジ回路Lからブリッジ回路Rに大きさIの電流が流れ、W相の巻線M3にはブリッジ回路Lからブリッジ回路Rに大きさIの電流が流れる。
【0064】
電気角300°において、U相の巻線M1にはブリッジ回路Rからブリッジ回路Lに大きさIの電流が流れ、W相の巻線M3にはブリッジ回路Lからブリッジ回路Rに大きさIの電流が流れる。V相の巻線M2には電流は流れない。
【0065】
電気角330°において、U相の巻線M1にはブリッジ回路Rからブリッジ回路Lに大きさIの電流が流れ、V相の巻線M2にはブリッジ回路Rからブリッジ回路Lに大きさIの電流が流れ、W相の巻線M3にはブリッジ回路Lからブリッジ回路Rに大きさIpkの電流が流れる。
【0066】
本実施形態による三相通電制御によれば、電流の向きを考慮した三相の巻線に流れる電流の総和は電気角毎に常に「0」になる。例えば、制御回路300は、図5に示される電流波形が得られるようなPWM制御によってブリッジ回路LおよびRの各FETのスイッチング動作を制御する。
【0067】
(2.異常時の制御)
電力変換装置100の異常時の制御方法の具体例を説明する。上述したように、異常とは主としてFETに故障が発生したことを意味する。FETの故障には、大きく分けて「オープン故障」と「ショート故障」とがある。「オープン故障」は、FETのソース−ドレイン間が開放する故障(換言すると、ソース−ドレイン間の抵抗rdsがハイインピーダンスになること)を指し、「ショート故障」は、FETのソース−ドレイン間が短絡する故障を指す。
【0068】
再び図1を参照する。電力変換装置100の動作時において、通常は、2つのインバータにおける12個のFETの中から1つのFETがランダムに故障するランダム故障が発生すると考えられる。本開示は、主としてランダム故障が発生した場合における電力変換装置100の制御方法を対象としている。ただし、本開示は、複数のFETが連鎖的に故障した場合などの電力変換装置100の制御方法も対象とする。連鎖的な故障とは、例えば1つのレグのハイサイドスイッチング素子およびローサイドスイッチング素子に同時に発生する故障を意味する。
【0069】
電力変換装置100を長期間使用すると、ランダム故障が起こる可能性がある。なお、ランダム故障は、製造時に発生し得る製造故障とは異なるものである。2つのインバータにおける複数のFETのうちの1つでも故障すると、正常時の三相通電制御はもはや不可能となる。
【0070】
故障検知の一例として、駆動回路350は、FETのドレイン−ソース間の電圧Vdsを監視し、所定の閾値電圧とVdsとを比較することによって、FETの故障を検知する。閾値電圧は、例えば外部IC(不図示)とのデータ通信および外付け部品によって駆動回路350に設定される。駆動回路350は、マイクロコントローラ340のポートと接続され、故障検知信号をマイクロコントローラ340に通知する。例えば、駆動回路350は、FETの故障を検知すると、故障検知信号をアサートする。マイクロコントローラ340は、アサートされた故障検知信号を受信すると、駆動回路350の内部データを読み出して、2つのインバータにおける複数のFETの中でどのFETが故障しているのかを判別する。
【0071】
故障検知の他の一例として、マイクロコントローラ340は、モータの実電流値と目標電流値との差に基づいてFETの故障を検知することも可能である。ただし、故障検知は、これらの手法に限られず、故障検知に関する公知の手法を広く用いることができる。
【0072】
マイクロコントローラ340は、故障検知信号がアサートされると、電力変換装置100の制御を正常時の制御から異常時の制御に切替える。例えば、正常時から異常時に制御を切替えるタイミングは、故障検知信号がアサートされてから10msec〜30msec程度である。
【0073】
異常時の制御の説明において、2つのインバータのうちの第1インバータ110を故障インバータとして扱い、第2インバータ140を正常インバータとして扱う。以下、ハイサイドスイッチング素子に故障が発生した場合と、ローサイドスイッチング素子に故障が発生した場合とに分けて制御を説明する。
【0074】
〔2−1.ハイサイドスイッチング素子の故障〕
第1インバータ110のハイサイドスイッチング素子(FET111H、112Hおよび113H)の中でFET111Hがオープン故障したとする。なお、FET112Hまたは113Hがオープン故障した場合においても、以下で説明する制御方法で電力変換装置100を制御することができる。
【0075】
FET111Hがオープン故障した場合、制御回路300は、第1相分離リレー回路120をオフして第1中性点リレー回路130をオンし、かつ、第2相分離リレー回路150をオンして第2中性点リレー回路160をオフする。これにより、故障したFET111Hを含む第1インバータ110は、モータ200(つまり、各相の巻線の一端)から切り離されて、正常な方の第2インバータ140だけが、モータ200(つまり、各相の巻線の他端)に接続される。この接続状態で、第1中性点リレー回路130がオンすることにより第1ノードN1は、各相の巻線の中性点として機能する。本願明細書において、あるノードが中性点として機能することを、「中性点が構成される」と表現することとする。なお、第2中性点リレー回路160に中性点は構成されない。第1インバータ110において、故障したFET111H以外の他のFET112H、113H、111L、112Lおよび113Lは全てオフ状態にしておくことが望ましい。制御回路300は例えば、第1インバータ110において、故障したFET111H以外の他のFET112H、113H、111L、112Lおよび113Lを全てオフ状態にする。制御回路300は、中性点が第1中性点リレー回路130に構成された状態で第2インバータ140を制御することによってモータ200を駆動する。
【0076】
この制御によれば、第1相分離リレー回路120によって第1インバータ110をモータ200から切り離すことができ、かつ、第1中性点リレー回路130を用いて駆動電流の閉ループを形成することがきるので、異常時においても適切な電流制御が可能となる。
【0077】
図6は、例えばモータ電気角270°における異常時の制御に応じた電力変換装置100内の電流の流れを模式的に示している。3つの実線のそれぞれは、電源101からモータ200に流れる電流を表し、破線は、モータ200の巻線M1に戻る回生電流を表している。図7は、異常時の制御に応じてモータ200のU相、V相およびW相の各巻線に流れる電流値をプロットして得られる電流波形を例示している。横軸は、モータ電気角(deg)を示し、縦軸は電流値(A)を示している。
【0078】
図6に示される状態において、第2インバータ140のFET141H、142Lおよび143Lはオン状態であり、FET141L、142Hおよび143Hはオフ状態である。第2インバータ140のFET141Hを流れた電流は、巻線M1および第1中性点リレー回路130のFET131を通って中性点に流れ込む。その電流の一部は、FET132を通って巻線M2に流れ、残りの電流は、FET133を通って巻線M3に流れる。巻線M2およびM3を流れた電流は、第2インバータ140のFET142Lおよび143Lをそれぞれ通ってGNDに流れる。また、FET141Lの還流ダイオードには回生電流がモータ200の巻線M1に向けて流れる。
【0079】
FET111Hはオープン故障し、かつ、第1インバータ110の、FET111H以外のFET112H、113H、111L、112Lおよび113Lはオフ状態であるので、電源101から第1インバータ110に電流は流れ込まない。また、第1インバータ110は、第1相分離リレー回路120によってモータ200から切り離されるので、第2インバータ140から第1インバータ110に電流は流れない。
【0080】
表2は、図7の電流波形における電気角毎に、第2インバータ140の端子に流れる電流値を例示している。表2は具体的に、第2インバータ140(ブリッジ回路R)の端子U_R、V_RおよびW_Rに流れる、電気角30°毎の電流値を例示している。電流方向の定義は上述したとおりである。なお、電流方向の定義によって、図7に示される電流値の正負の符号は、表2に示される電流値のそれとは逆の関係(位相差180°)になる。
【0081】
【表2】
【0082】
例えば、電気角30°において、U相の巻線M1にはブリッジ回路Lからブリッジ回路Rに大きさIの電流が流れ、V相の巻線M2にはブリッジ回路Rからブリッジ回路Lに大きさIpkの電流が流れ、W相の巻線M3にはブリッジ回路Lからブリッジ回路Rに大きさIの電流が流れる。電気角60°において、U相の巻線M1にはブリッジ回路Lからブリッジ回路Rに大きさIの電流が流れ、V相の巻線M2にはブリッジ回路Rからブリッジ回路Lに大きさIの電流が流れる。W相の巻線M3には電流は流れない。中性点に流れ込む電流と中性点から流れ出る電流との総和は電気角毎に常に「0」になる。制御回路300は、例えば図7に示される電流波形が得られるようなPWM制御によってブリッジ回路Rの各FETのスイッチング動作を制御する。
【0083】
表1および表2に示されるように、正常時および異常時の制御の間でモータ200に流れるモータ電流は電気角毎に変わらない。このため、異常時の制御において、正常時の制御におけるモータのアシストトルクが維持される。
【0084】
FET111Hがショート故障した場合も、オープン故障した場合と同様に、上述した制御方法に従って電力変換装置100を制御することができる。ショート故障の場合、FET111Hは常時オン状態となるが、第1相分離リレー回路120のFET121はオフ状態であり、かつ、FET111H以外のFET112H、113H、111L、112Lおよび113Lはオフ状態であるので、電源101から第1インバータ110に電流は流れ込まない。
【0085】
〔2−2.ローサイドスイッチング素子の故障〕
第1インバータ110のローサイドスイッチング素子(FET111L、112Lおよび113L)の中でFET111Lがオープン故障またはショート故障したとする。その場合の制御は、ハイサイドスイッチング素子が故障した場合の制御と同様である。つまり、制御回路300は、第1相分離リレー回路120をオフして第1中性点リレー回路130をオンし、かつ、第2相分離リレー回路150をオンして第2中性点リレー回路160をオフする。さらに、制御回路300は、第1インバータ110において、故障したFET111L以外の他のFET111H、112H、113H、112Lおよび113Lを全てオフ状態にする。制御回路300は、中性点が第1中性点リレー回路130に構成された状態で第2インバータ140を制御することによってモータ200を駆動する。
【0086】
FET111Lが故障した場合、第1インバータ110の、FET111L以外のFET111H、112H、113H、112Lおよび113Lはオフ状態であるので、電源101から第1インバータ110に電流は流れ込まない。また、第1インバータ110は、第1相分離リレー回路120によってモータ200から切り離されるので、第2インバータ140から第1インバータ110に電流は流れない。なお、FET112Lまたは113Lが故障した場合においても、上述した制御方法で電力変換装置100を制御することができる。
【0087】
このように、第1インバータ110が故障したFETを少なくとも1つ含む場合、第1相分離リレー回路120を用いて第1インバータ110をモータ200から切り離すことができ、かつ、第1中性点リレー回路130によって第1ノードN1を各相の巻線の中性点として機能させることができる。
【0088】
図8を参照しながら、電力変換装置100の回路構成の変形例を説明する。
【0089】
本実施形態において、電力変換装置100は、2つの相分離リレー回路と、2つの中性点リレー回路とを備える。しかしながら、本開示はこれに限定されない。例えば、電力変換装置100は、第1相分離リレー回路120および第1中性点リレー回路130(一組のリレー回路)を備えていてもよい。換言すると、電力変換装置100の1つのインバータに一組のリレー回路を設けた構成も選択され得る。
【0090】
図8は、一組のリレー回路を備える電力変換装置100Aの回路構成を示している。一組のリレー回路に接続されたインバータ、つまり、第1相分離リレー回路120および第1中性点リレー回路130に接続された第1インバータ110が故障したとする。その場合、制御回路300は、第1相分離リレー回路120をオフして第1中性点リレー回路130をオンする。この回路構成によれば、故障インバータをモータ200から切り離すことができ、かつ、第1ノードN1を中性点として機能させることができる。制御回路300は、中性点が第1中性点リレー回路130に構成された状態で、正常な方の第2インバータ140を制御することによってモータ200を駆動することができる。
【0091】
本実施形態によれば、異常時の制御において、電力損失を抑制することができ、かつ、駆動電流の閉ループを形成することにより適切な電流制御が可能となる。
【0092】
(実施形態2)
自動車等の車両は一般的に、電動パワーステアリング装置を備えている。電動パワーステアリング装置は、運転者がステアリングハンドルを操作することによって発生するステアリング系の操舵トルクを補助するための補助トルクを生成する。補助トルクは、補助トルク機構によって生成され、運転者の操作の負担を軽減することができる。例えば、補助トルク機構は、操舵トルクセンサ、ECU、モータおよび減速機構などから構成される。操舵トルクセンサは、ステアリング系における操舵トルクを検出する。ECUは、操舵トルクセンサの検出信号に基づいて駆動信号を生成する。モータは、駆動信号に基づいて操舵トルクに応じた補助トルクを生成し、減速機構を介してステアリング系に補助トルクを伝達する。
【0093】
本開示のモータ駆動ユニット400は、電動パワーステアリング装置に好適に利用される。図9は、本実施形態による電動パワーステアリング装置500の典型的な構成を模式的に示している。電動パワーステアリング装置500は、ステアリング系520および補助トルク機構540を備える。
【0094】
ステアリング系520は、例えば、ステアリングハンドル521、ステアリングシャフト522(「ステアリングコラム」とも称される。)、自在軸継手523A、523B、回転軸524(「ピニオン軸」または「入力軸」とも称される。)、ラックアンドピニオン機構525、ラック軸526、左右のボールジョイント552A、552B、タイロッド527A、527B、ナックル528A、528B、および左右の操舵車輪(例えば左右の前輪)529A、529Bから構成され得る。ステアリングハンドル521は、ステアリングシャフト522と自在軸継手523A、523Bとを介して回転軸524に連結される。回転軸524にはラックアンドピニオン機構525を介してラック軸526が連結される。ラックアンドピニオン機構525は、回転軸524に設けられたピニオン531と、ラック軸526に設けられたラック532とを有する。ラック軸526の右端には、ボールジョイント552A、タイロッド527Aおよびナックル528Aをこの順番で介して右の操舵車輪529Aが連結される。右側と同様に、ラック軸526の左端には、ボールジョイント552B、タイロッド527Bおよびナックル528Bをこの順番で介して左の操舵車輪529Bが連結される。ここで、右側および左側は、座席に座った運転者から見た右側および左側にそれぞれ一致する。
【0095】
ステアリング系520によれば、運転者がステアリングハンドル521を操作することによって操舵トルクが発生し、ラックアンドピニオン機構525を介して左右の操舵車輪529A、529Bに伝わる。これにより、運転者は左右の操舵車輪529A、529Bを操作することができる。
【0096】
補助トルク機構540は、例えば、操舵トルクセンサ541、ECU542、モータ543、減速機構544および電力変換装置545から構成され得る。補助トルク機構540は、ステアリングハンドル521から左右の操舵車輪529A、529Bに至るステアリング系520に補助トルクを与える。なお、補助トルクは「付加トルク」と称されることがある。
【0097】
ECU542として、実施形態1による制御回路300を用いることができ、電力変換装置545として、実施形態1による電力変換装置100を用いることができる。また、モータ543は、実施形態1におけるモータ200に相当する。ECU542、モータ543および電力変換装置545によって構成することが可能な機電一体型ユニットとして、実施形態1によるモータ駆動ユニット400を好適に用いることができる。
【0098】
操舵トルクセンサ541は、ステアリングハンドル521によって付与されたステアリング系520の操舵トルクを検出する。ECU542は、操舵トルクセンサ541からの検出信号(以下、「トルク信号」と表記する。)に基づいてモータ543を駆動するための駆動信号を生成する。モータ543は、操舵トルクに応じた補助トルクを駆動信号に基づいて発生する。補助トルクは、減速機構544を介してステアリング系520の回転軸524に伝達される。減速機構544は、例えばウォームギヤ機構である。補助トルクはさらに、回転軸524からラックアンドピニオン機構525に伝達される。
【0099】
電動パワーステアリング装置500は、補助トルクがステアリング系520に付与される箇所によって、ピニオンアシスト型、ラックアシスト型、およびコラムアシスト型等に分類することができる。図9には、ピニオンアシスト型の電動パワーステアリング装置500を示している。ただし、電動パワーステアリング装置500は、ラックアシスト型、コラムアシスト型等にも適用される。
【0100】
ECU542には、トルク信号だけでなく、例えば車速信号も入力され得る。外部機器560は例えば車速センサである。または、外部機器560は、例えばCAN(Controller Area Network)等の車内ネットワークで通信可能な他のECUであってもよい。ECU542のマイクロコントローラは、トルク信号や車速信号などに基づいてモータ543をベクトル制御またはPWM制御することができる。
【0101】
ECU542は、少なくともトルク信号に基づいて目標電流値を設定する。ECU542は、車速センサによって検出された車速信号を考慮し、さらに角度センサによって検出されたロータの回転信号を考慮して、目標電流値を設定することが好ましい。ECU542は、電流センサ(不図示)によって検出された実電流値が目標電流値に一致するように、モータ543の駆動信号、つまり、駆動電流を制御することができる。
【0102】
電動パワーステアリング装置500によれば、運転者の操舵トルクにモータ543の補助トルクを加えた複合トルクを利用してラック軸526によって左右の操舵車輪529A、529Bを操作することができる。特に、上述した機電一体型ユニットに、本開示のモータ駆動ユニット400を利用することにより、部品の品質が向上し、かつ、正常時および異常時のいずれにおいても適切な電流制御が可能となる、モータ駆動ユニットを備える電動パワーステアリング装置が提供される。
【0103】
(実施形態3)
図10は、本実施形態によるリレーモジュール600の回路構成を模式的に示している。
【0104】
リレーモジュール600は、第1相分離リレー回路120、第1中性点リレー回路130、第2相分離リレー回路150および第2中性点リレー回路160を備える。リレーモジュール600は、三相(U相、V相、W相)の巻線を有するモータ200を駆動し、各相の巻線の一端に接続される第1インバータ110および各相の巻線の他端に接続される第2インバータ140を備える電力変換装置700に接続可能である。
【0105】
リレーモジュール600は、モータ200と電力変換装置700との間に電気的に接続される。第1相分離リレー回路120、第1中性点リレー回路130、第2相分離リレー回路150および第2中性点リレー回路160の各リレー回路の構造は、実施形態1で説明したとおりである。すなわち、第1相分離リレー回路120は、各相の巻線の一端と第1インバータ120とに接続される3個のFET121、122および123を含み、第2相分離リレー回路150は、各相の巻線の他端と第2インバータ140とに接続される3個のFET151、152および153を含む。第1中性点リレー回路130は、各々の一端が共通の第1ノードN1に接続され、他端は各相の巻線の一端に接続される3個のFET131、132および133を含み、第2中性点リレー回路160は、各々の一端が共通の第2ノードN2に接続され、他端は各相の巻線の他端に接続される3個のFET161、162および163を含む。
【0106】
第1相分離リレー回路120は、各相の巻線の一端と第1インバータ110との接続および非接続を切替え、第2相分離リレー回路150は、各相の巻線の他端と第2インバータ140との接続および非接続を切替える。第1中性点リレー回路130は、各相の巻線の一端同士の接続および非接続を切替え、第2中性点リレー回路160は、各相の巻線の他端同士の接続および非接続を切替える。
【0107】
リレーモジュール600において、第1相分離リレー回路120がオンすると、第1中性点リレー回路130はオフし、かつ、第1相分離リレー回路120がオフすると、第1中性点リレー回路130はオンする。第2相分離リレー回路150がオンすると、第2中性点リレー回路160はオフし、かつ、第2相分離リレー回路150がオフすると、第2中性点リレー回路160はオンする。リレーモジュール600、具体的には各リレー回路は、例えば外付け制御回路または専用ドライバによって制御され得る。外付け制御回路は、例えば実施形態1による制御回路300である。本実施形態において、リレーモジュール600は制御回路300によって制御される。
【0108】
正常時において、制御回路300は、第1相分離リレー回路120をオンして第1中性点リレー回路130をオフし、かつ、第2相分離リレー回路150をオンして第2中性点リレー回路160をオフする。なお、各リレー回路のオン・オフ状態およびオン・オフ状態における第1および第2インバータ110、140とモータ200との電気的な接続関係は、実施形態1で説明したとおりである。例えば、制御回路300は、図5に示される電流波形が得られるようなPWM制御によって2つのインバータの各FETのスイッチング動作を制御することによりモータを駆動することができる。
【0109】
異常時において、第1インバータ110が故障しているとする。その場合、実施形態1と同様に、制御回路300は、第1相分離リレー回路120をオフして第1中性点リレー回路130をオンし、かつ、第2相分離リレー回路150をオンして第2中性点リレー回路160をオフする。この状態において、モータ200の各相の巻線の一端同士の接続によって各相の巻線の中性点がリレーモジュール600(具体的には第1中性点リレー回路130)に構成される。制御回路300は、中性点が構成された状態で第2インバータ140を制御することによってモータ200を駆動することができる。制御回路300は、例えば図7に示される電流波形が得られるようなPWM制御によって第2インバータ140の各FETのスイッチング動作を制御する。このように、リレーモジュール600を用いて駆動電流の閉ループを形成することができるので、異常時においても適切な電流制御が可能となる。
【0110】
図11を参照しながら、リレーモジュール600の回路構成の変形例を説明する。
【0111】
本実施形態において、リレーモジュール600は、2つの相分離リレー回路と、2つの中性点リレー回路とを備える。しかしながら、本開示はこれに限定されない。例えばリレーモジュール600は、第1相分離リレー回路120および第1中性点リレー回路130(一組のリレー回路)を備えていてもよい。換言すると、電力変換装置100の1つのインバータ用に一組のリレー回路を設けた構成も選択され得る。
【0112】
図11は、一組のリレー回路を備えるリレーモジュール600Aの回路構成を示している。リレーモジュール600Aは、第1および第2インバータ110、140の一方とモータ200との間に接続されている。図示する例では、一組のリレー回路(つまり、第1相分離リレー回路120および第1中性点リレー回路130)を第1インバータ110に接続している。
【0113】
一組のリレー回路が接続されたインバータ、つまり、第1インバータが故障したとする。その場合、制御回路300は、第1相分離リレー回路120をオフして第1中性点リレー回路130をオンする。制御回路300は、中性点が構成された状態で第2インバータ140を制御することによってモータ200を駆動することができる。この回路構成によれば、故障インバータをモータ200から切り離すことができ、かつ、第1ノードN1を中性点として機能させることができる。
【0114】
本実施形態によれば、電力変換装置700の異常時の制御において、電力損失を抑制することができ、かつ、駆動電流の閉ループを形成することにより適切な電流制御が可能となる。
【0115】
(実施形態4)
図13から図16を参照しながら、実施形態4による電力変換装置100Bの回路構成、正常時および異常時の動作を説明する。
【0116】
図13は、電力変換装置100Bの回路構成を模式的に示している。
【0117】
電力変換装置100Bは、第1および第2スイッチ素子801、802を備える点で、実施形態1による電力変換装置100Aとは異なる。以下、実施形態1との差異点を主に説明する。
【0118】
電力変換装置100Bは、第1インバータ110側に配置された一組のリレー回路(第1相分離リレー回路120および第1中性点リレー回路130)と、第2インバータ140側に配置された第1および第2スイッチ素子801、802と、を備える。
【0119】
電力変換装置100Bにおいて、第2インバータ140は、2つのスイッチ素子801、802によって電源101およびGNDに接続することが可能である。具体的には、第1スイッチ素子801は、第2インバータ140と電源101との接続・非接続を切替える。第2スイッチ素子802は、第2インバータ140とGNDとの接続・非接続を切替える。
【0120】
第1および第2スイッチ素子801、802のオンおよびオフは、例えばマイクロコントローラ340(図4)または専用ドライバによって制御され得る。第1および第2スイッチ素子801、802として、例えばMOSFETまたはIGBTなどの半導体スイッチ素子を広く用いることができる。ただし、メカニカルリレーを用いても構わない。本願明細書では、第1および第2スイッチ素子801、802として半導体スイッチ素子を用いる例を説明し、第1および第2スイッチ素子801、802を、FET801、802とそれぞれ表記することとする。
【0121】
2つのスイッチ素子801、802は、還流ダイオード801D、802Dをそれぞれ有する。FET801は、還流ダイオード801Dが電源101を向くよう配置され、FET802は、還流ダイオード802Dが第2インバータ140に向くよう配置される。より詳細には、FET801は、還流ダイオード801Dにおいて電源101に向けて順方向電流が流れるよう配置され、FET802は、還流ダイオード802Dにおいて第2インバータ140に向けて順方向電流が流れるよう配置される。
【0122】
図示する例に限られず、使用するスイッチ素子の個数は、設計仕様などを考慮して適宜決定される。特に車載分野においては、安全性の観点から高い品質保証が要求されるので、遮断用のスイッチ素子に複数のスイッチ素子を設けておくことが好ましい。
【0123】
図14は、本実施形態の変形例による電力変換装置100Cの回路構成を模式的に示している。
【0124】
電力変換装置100Cは、還流ダイオード803Dを有する逆接続保護用の第3スイッチ素子(FET)803をさらに備える。第2インバータ140の電源側において、FET801、803は、FET内の還流ダイオードの向きが互いに対向するよう配置される。具体的に説明すると、FET801は、還流ダイオード801Dにおいて電源101に向けて順方向電流が流れるよう配置され、FET803は、還流ダイオード803Dにおいて第2インバータ140に向けて順方向電流が流れるよう配置される。このような配置によると、電源101が逆向きに接続された場合でも、逆接続保護用のFET803によって逆電流を遮断することができる。
【0125】
正常時の制御において、制御回路300は、第1相分離リレー回路120をオンして第1中性点リレー回路130をオフし、かつ、FET801、802をオンする。これにより、第1中性点リレー回路130は各相の巻線から切り離され、かつ、第1インバータ110は、第1相分離リレー回路120を介して各相の巻線の一端に接続される。第2インバータ140は、電源101およびGNDに接続される。この接続状態において、制御回路300は、上述したように、第1および第2インバータ110、140の両方を用いて三相通電制御することによってモータ200を駆動することが可能である。
【0126】
第1インバータ110が故障したとき、制御回路300は、第1相分離リレー回路120をオフして第1中性点リレー回路130をオンし、かつ、FET801、802をオンする。この接続状態において、故障インバータはモータ200から切り離され、かつ、第1ノードN1を中性点として機能させることができる。制御回路300は、中性点が第1中性点リレー回路130に構成された状態で、正常な方の第2インバータ140を制御することによってモータ200の駆動を継続することができる。
【0127】
第2インバータ140が故障したとき、制御回路300は、第1相分離リレー回路120をオンして第1中性点リレー回路130をオフし、かつ、以下で説明する故障パターンに従って、FET801、802のオン・オフを制御する。
【0128】
〔4−1.ハイサイドスイッチング素子のオープン故障〕
第2インバータ140における3個のハイサイドスイッチング素子(FET141H、142Hおよび143H)がオープン故障したスイッチング素子を含む場合、制御回路300は原則、FET801、802をオフし、かつ、3個のハイサイドスイッチング素子のうち、故障したスイッチング素子以外の他のスイッチング素子を全てオフして、3個のローサイドスイッチング素子を全てオンする。
【0129】
3個のハイサイドスイッチング素子のうちのFET141Hが故障したと仮定する。なお、FET142Hまたは143Hが故障した場合においても、以下で説明する制御方法で電力変換装置100Bを制御することができる。
【0130】
制御回路300は、FET801、802をオフし、かつ、故障したFET141H以外の他のFET142H、143Hをオフして、FET141L、142Lおよび143Lをオンする。FET801は、第2インバータ140と電源101との接続を遮断し、FET802は、第2インバータ140とGNDとの接続を遮断する。FET141L、142Lおよび143Lをオンすることにより、ローサイド側のノードN4が各巻線の中性点として機能する。電力変換装置100Bは、第2インバータ140のローサイド側に構成された中性点および第1インバータ110を用いてモータ200を駆動することが可能である。
【0131】
図15は、電気角90°における電力変換装置100B内の電流の流れを模式的に示している。
【0132】
図15には、例えば図7に示される電流波形の電気角90°においてU相、V相およびW相の各巻線に流れる電流の流れを例示している。3つの実線のそれぞれは、電源101からモータ200に流れる電流を表し、破線は、モ―タ200の巻線M1に戻る回生電流を表している。
【0133】
電気角90°では、第1インバータ110において、FET111H、112Lおよび113Lはオン状態であり、FET111L、112Hおよび113Hはオフ状態である。第1インバータ110のFET111Hを流れた電流は、FET121、巻線M1および第2インバータ140のFET141Lを通って中性点に流れる。その電流の一部は、FET142Lを通って巻線M2に流れ、残りの電流は、FET143Lを通って巻線M3に流れる。巻線M2を流れた電流は、FET122、FET112Lを通ってGNDに流れる。巻線M3を流れた電流は、FET123、FET113Lを通ってGNDに流れる。また、FET111Lの還流ダイオードには回生電流がモータ200の巻線M1に向けて流れる。
【0134】
例えば、電気角30°においては、U相の巻線M1にはブリッジ回路Lからブリッジ回路Rに大きさIの電流が流れ、V相の巻線M2にはブリッジ回路Rからブリッジ回路Lに大きさIpkの電流が流れ、W相の巻線M3にはブリッジ回路Lからブリッジ回路Rに大きさIの電流が流れる。電気角60°においては、U相の巻線M1にはブリッジ回路Lからブリッジ回路Rに大きさIの電流が流れ、V相の巻線M2にはブリッジ回路Rからブリッジ回路Lに大きさIの電流が流れる。W相の巻線M3には電流は流れない。中性点に流れ込む電流と中性点から流れ出る電流との総和は電気角毎に常に「0」になる。制御回路300は、例えば図7に示される電流波形が得られるようなPWM制御によってブリッジ回路Lの各FETのスイッチング動作を制御することが可能である。なお、ブリッジ回路Lに流れる電流値の正負の符号は、表2に示されるブリッジ回路Rに流れる電流値のそれとは逆になる。
【0135】
ハイサイドスイッチング素子がオープン故障している場合、FET801はオン状態であっても構わない。換言すると、FET801はオン・オフ状態を問わない。FET801がオンしてもよい理由は、FET141Hがオープン故障の場合、FET142H、143Hをオフ状態に制御することによりハイサイドスイッチング素子は全て開放状態となる。その結果、FET801がオンしても、電源101から第2インバータ140に電流は流れないためである。
【0136】
〔4−2.ハイサイドスイッチング素子のショート故障〕
第2インバータ140における3個のハイサイドスイッチング素子(FET141H、142Hおよび143H)がショート故障したスイッチング素子を含む場合、制御回路300は、FET801、802をオフし、かつ、3個のハイサイドスイッチング素子のうち、故障したスイッチング素子以外の他のスイッチング素子を全てオフして、3個のローサイドスイッチング素子を全てオンする。なお、ショート故障の場合、FET801がオンすると、電源101からショートしたFET141Hに電流が流れ込むので、FET801のオン状態は禁止される。
【0137】
オープン故障と同様に、電力変換装置100Bは、第2インバータ140のローサイド側に構成される中性点および第1インバータ110を用いてモータ200を駆動することが可能である。
【0138】
なお、FET141Hがショート故障している場合、例えば、図7に示されるモータ電気角180°〜300°では、FET142Hの還流ダイオードを通ってFET141Hに回生電流が流れ、図7に示されるモータ電気角240°〜360°では、FET143Hの還流ダイオードを通ってFET141Hに回生電流が流れる。このように、ショート故障の場合、モータ電気角のある範囲では電流がFET142HまたはFET143Hを通ってハイサイド側にも分散し得る。
【0139】
〔4−3.ローサイドスイッチング素子のオープン故障〕
第2インバータ140における3個のローサイドスイッチング素子(FET141L、142Lおよび143L)がオープン故障したスイッチング素子を含む場合、制御回路300は原則、FET801、802をオフし、かつ、3個のローサイドスイッチング素子のうち、故障したスイッチング素子以外の他のスイッチング素子を全てオフして、3個のハイサイドスイッチング素子を全てオンする。
【0140】
3個のローサイドスイッチング素子のうちのFET141Lが故障したと仮定する。なお、FET142Lまたは143Lが故障した場合においても、以下で説明する制御方法で電力変換装置100Bを制御することができる。
【0141】
制御回路300は、FET801、802をオフし、かつ、故障したFET141L以外の他のFET142L、143Lをオフして、FET141H、142Hおよび143Hをオンする。FET801は、第2インバータ140と電源101との接続を遮断し、FET802は、第2インバータ140とGNDとの接続を遮断する。FET141H、142Hおよび143Hをオンすることにより、ハイサイド側のノードN6が各巻線の中性点として機能する。電力変換装置100Bは、第2インバータ140のハイサイド側に構成された中性点および第1インバータ110を用いてモータ200を駆動することが可能である。
【0142】
図16は、電気角90°における電力変換装置100B内の電流の流れを模式的に示している。
【0143】
図16には、例えば図7に示される電流波形の電気角90°においてU相、V相およびW相の各巻線に流れる電流の流れを例示している。3つの実線のそれぞれは、電源101からモータ200に流れる電流を表し、破線は、モ―タ200の巻線M1に戻る回生電流を表している。
【0144】
電気角90°では、第1インバータ110において、FET111H、112Lおよび113Lはオン状態であり、FET111L、112Hおよび113Hはオフ状態である。第1インバータ110のFET111Hを流れた電流は、FET121、巻線M1および第2インバータ140のFET141Hを通って中性点に流れる。その電流の一部は、FET142Hを通って巻線M2に流れ、残りの電流は、FET143Hを通って巻線M3に流れる。巻線M2を流れた電流は、FET122、FET112Lを通ってGNDに流れる。巻線M3を流れた電流は、FET123、FET113Lを通ってGNDに流れる。また、FET111Lの還流ダイオードには回生電流がモータ200の巻線M1に向けて流れる。
【0145】
制御回路300は、例えば図7に示される電流波形が得られるようなPWM制御によってブリッジ回路Lの各FETのスイッチング動作を制御することが可能である。
【0146】
ローサイドスイッチング素子がオープン故障している場合、FET802はオン状態であっても構わない。換言すると、FET802はオン・オフ状態を問わない。FET802がオンしてもよい理由は、FET141Lがオープン故障の場合、FET142L、143Lをオフ状態に制御することによりローサイドスイッチング素子は全て開放状態となり、FET802がオンしても、電流は第2インバータ140からGNDに流れないためである。
【0147】
〔4−4.ローサイドスイッチング素子のショート故障〕
第2インバータ140における3個のローサイドスイッチング素子(FET141L、142Lおよび143L)がショート故障したスイッチング素子を含む場合、制御回路300は、FET801、802をオフし、かつ、3個のローサイドスイッチング素子のうち、故障したスイッチング素子以外の他のスイッチング素子を全てオフして、3個のハイサイドスイッチング素子を全てオンする。なお、ショート故障の場合、FET802がオンすると、ショートしたFET141Lを介してGNDに電流が流れ込むので、FET802のオン状態は禁止される。
【0148】
オープン故障と同様に、電力変換装置100Bは、第2インバータ140のハイサイド側に構成された中性点および第1インバータ110を用いてモータ200を駆動することが可能である。
【0149】
例えば電気角90°では、オープン故障とは異なり、ショート故障したFET141Lにも電流が流れ、FET141Lを流れた電流は、ローサイド側のノードN4を通ってFET142L、143Lの還流ダイオードにそれぞれ分岐する。このように、ショート故障時では、第2インバータ140のハイサイドおよびローサイド側に電流を分散させることが可能となる。その結果、インバータに対する熱影響は低減され得る。
【0150】
本実施形態によると、相分離リレー回路および中性点リレー回路の代わりに、2つのスイッチ素子801、802を第2インバータ140に設けることにより、実施形態1と同様な効果が得られる。さらに、実施形態1と比べ、必要とされるFETの個数が少なく済むので、電力変換装置のコスト低減が期待される。
【産業上の利用可能性】
【0151】
本開示の実施形態は、掃除機、ドライヤ、シーリングファン、洗濯機、冷蔵庫および電動パワーステアリング装置などの、各種モータを備える多様な機器に幅広く利用され得る。
【符号の説明】
【0152】
100、100A、100B、100C :電力変換装置
101 :電源
102 :コイル
103 :コンデンサ
110 :第1インバータ
111H、112H、113H、141H、142H、143H :ハイサイドスイッチング素子(FET)
111L、112L、113L、141L、142L、143L :ローサイドスイッチング素子(FET)
111R、112R、113R、141R、142R、143R :シャント抵抗
120 :第1相分離リレー回路
121、122、123 :第1相分離リレー(FET)
130 :第1中性点リレー回路
131、132、133 :第1中性点リレー(FET)
140 :第2インバータ
150 :第2相分離リレー回路
151、152、153 :第2相分離リレー(FET)
160 :第2中性点リレー回路
161、162、163 :第2中性点リレー(FET)
170 :電流センサ
200 :電動モータ
300 :制御回路
310 :電源回路
320 :角度センサ
330 :入力回路
340 :マイクロコントローラ
350 :駆動回路
360 :ROM
400 :モータ駆動ユニット
500 :電動パワーステアリング装置
600、600A :リレーモジュール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
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図12A
図12B
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図15
図16