特許第6743821号(P6743821)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6743821板状ハイドロタルサイト型粒子及びその用途
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6743821
(24)【登録日】2020年8月3日
(45)【発行日】2020年8月19日
(54)【発明の名称】板状ハイドロタルサイト型粒子及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C01G 9/00 20060101AFI20200806BHJP
   A61K 8/27 20060101ALI20200806BHJP
   A61Q 1/12 20060101ALI20200806BHJP
【FI】
   C01G9/00 B
   A61K8/27
   A61Q1/12
【請求項の数】5
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2017-534403(P2017-534403)
(86)(22)【出願日】2016年8月5日
(86)【国際出願番号】JP2016073042
(87)【国際公開番号】WO2017026379
(87)【国際公開日】20170216
【審査請求日】2019年7月12日
(31)【優先権主張番号】特願2015-159126(P2015-159126)
(32)【優先日】2015年8月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000174541
【氏名又は名称】堺化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小泉 寿夫
(72)【発明者】
【氏名】中尾 日六士
(72)【発明者】
【氏名】小林 恵太
【審査官】 森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−120783(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/185201(WO,A1)
【文献】 特開2012−246194(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/024919(WO,A1)
【文献】 J. Theo KLOPROGGE et al.,The effects of synthesis pH and hydrothermal treatment on the formation of zinc aluminum hydrotalcites,Journal of Solid State Chemistry,2004年11月,Volume 177, Issue 11,Pages 4047-4057
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 9/00
A61K 8/27
A61Q 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):
(Zn)1−x(Al)(OH)(An−x/n・mHO (1)
(式中、An−は、n価の層間アニオンを表す。x及びnは、それぞれ、0.2≦x≦0.4、1≦n≦4の整数、の条件を満たす数である。mは、0以上の数である。)で表され、平均板面径が150〜500nm、アスペクト比(平均板面径/平均厚み)が4.0〜20.0、JIS K5101−17−1(2004年)の顔料試験方法によるpH値が6.0〜8.5である
ことを特徴とする板状ハイドロタルサイト型粒子。
【請求項2】
BJH法による細孔容積が0.01〜1.0cm/gである
ことを特徴とする請求項1に記載の板状ハイドロタルサイト型粒子。
【請求項3】
表面の一部又は全部がケイ素化合物で被覆されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の板状ハイドロタルサイト型粒子。
【請求項4】
前記式(1)中、x及びnは、それぞれ、0.30≦x≦0.35、1≦n≦3の整数、の条件を満たす数であり、An−は炭酸イオン(CO2−)である
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の板状ハイドロタルサイト型粒子。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の板状ハイドロタルサイト型粒子を含む
ことを特徴とする化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状ハイドロタルサイト型粒子及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイドロタルサイトは層状粘土鉱物の一種であり、触媒や医薬品、樹脂用添加剤等の多種多様な用途に広く使用されている。化粧料用途でも、余分な皮脂の吸着等の機能付与や、化粧崩れ、テカリの防止を期待して、粒子状のハイドロタルサイト(ハイドロタルサイト型粒子と称す)が使用されている。
【0003】
従来のハイドロタルサイト型粒子の多くは、マグネシウム及びアルミニウムを構成元素とするMg−Al系のハイドロタルサイト型粒子である(例えば、特許文献1参照)。だが、マグネシウム及びアルミニウムに加え、亜鉛も構成元素とするMg−Zn−Al系のハイドロタルサイト型粒子(例えば、特許文献2参照)や、亜鉛及びアルミニウムを構成元素とするZn−Al系のハイドロタルサイト型粒子(例えば、特許文献3〜6参照)も開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−247633号公報
【特許文献2】特開2004−299931号公報
【特許文献3】特開2002−226826号公報
【特許文献4】特開平11−209258号公報
【特許文献5】特開平11−240886号公報
【特許文献6】特開平11−255973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のとおり、従来のハイドロタルサイト型粒子の多くは、Mg−Al系のハイドロタルサイト型粒子であるが、構成元素であるマグネシウムに由来して塩基性を示す。化粧料等の用途では、その塩基性が皮膚を刺激して肌に悪影響を与えるため、Mg−Al系のハイドロタルサイト型粒子を使用する場合は、添加量を制限したり、他の材料との組み合わせにより塩基性を低減させたりする等を行っているのが現状である。Mg−Al系のハイドロタルサイト型粒子の塩基性を低減する手段としては、両性金属である亜鉛(Zn)をマグネシウムの一部又は全部と置換させることが考えられるが、従来のMg−Zn−Al系のハイドロタルサイト型粒子では、亜鉛は、マグネシウムサイトの一部を置換しているに留まり、塩基性が充分に低減されていない。
【0006】
ところで、化粧料用途では、粒子の形状は、粒状よりも板状であることが望まれている。粒状粒子に比べ、滑り性が良好で、被覆性や配向性にも優れるためである。だが、従来のZn−Al系のハイドロタルサイト型粒子はアスペクト比が1〜2の粒状粒子であり、板状粒子の報告例はこれまでにない。これは、Zn−Al系のハイドロタルサイト型粒子は、Mg−Al系のハイドロタルサイト型粒子に比べ、層間の陰イオンを保持する能力が低いため、従来のMg−Al系又はMg−Zn−Al系の板状ハイドロタルサイト型粒子の合成方法をそのまま転用してZn−Al系の板状ハイドロタルサイト型粒子を製造すると、原料の水溶性亜鉛化合物(例えば、硫酸亜鉛)の一部が前駆体生成中に水酸化亜鉛になり、最終的に酸化亜鉛となってハイドロタルサイトの層状構造を維持することができないことが要因と考えられる。Zn−Al系のハイドロタルサイト型粒子を製造する方法としてはまた、前駆体スラリーをろ過することで水酸化亜鉛を取り除いた後、水熱反応等により粒子を成長させる手法(特許文献6等)もあるが、この方法でも板状粒子は得られない。
【0007】
本発明は、上記現状に鑑み、滑り性に優れ、皮膚への刺激性が充分に低減された板状ハイドロタルサイト型粒子を提供することを目的とする。また、このような板状ハイドロタルサイト型粒子を含む化粧料を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、ハイドロタルサイト型粒子について鋭意検討を進めるうち、亜鉛とアルミニウムとを構成元素とし、かつ板状形状を有するZn−Al系のハイドロタルサイト型粒子の製造に成功した。この板状ハイドロタルサイト型粒子は、平均板面径が大きく、適度な厚みも有するうえ、所定試験方法によるpH値も適度な範囲内にあり、板状形状を有する粒子の割合が高いことから滑り性や化粧料に含めた際の肌への塗布感触が良好で、かつ皮膚への刺激性が充分に低減されたものである。その他、アンモニアガスやリン化合物の吸着性能にも優れるため、種々様々な用途に有用であることも見いだし、上記課題を解決することができることに想到し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、下記式(1):
(Zn)1−x(Al)(OH)(An−x/n・mHO (1)
(式中、An−は、n価の層間アニオンを表す。x及びnは、それぞれ、0.2≦x≦0.4、1≦n≦4の整数、の条件を満たす数である。mは、0以上の数である。)で表され、平均板面径が150〜800nm、アスペクト比(平均板面径/平均厚み)が4.0〜20.0、JIS K5101−17−1(2004年)の顔料試験方法によるpH値が6.0〜8.5である板状ハイドロタルサイト型粒子である。
【0010】
上記板状ハイドロタルサイト型粒子は、BJH法による細孔容積が0.01〜1.0cm/gであることが好ましい。これにより、粒子粉体に触れたときの、さらさら感や、均一な伸び広がり性、平滑感の持続性がより向上する他、例えば、ハイドロタルサイト粒子を含む化粧料を肌上に塗布した際に粒子が潰れることがより抑制されて、結果として平滑感の持続性がより向上する。
【0011】
上記板状ハイドロタルサイト型粒子は、表面の一部又は全部がケイ素化合物で被覆されていることが好ましい。これにより、亜鉛イオンの過剰な溶出を抑制し、皮膚への刺激性を低減して適度な収斂作用を発現できることに加え、樹脂や溶媒との相溶性や分散性が向上する他、撥水性も向上するため、化粧料だけではなく、樹脂への添加剤等、各種用途により有用なものとなる。
【0012】
上記式(1)中、x及びnは、それぞれ、0.30≦x≦0.35、1≦n≦3の整数、の条件を満たす数であり、An−は炭酸イオン(CO2−)であることが好ましい。これにより、結晶形状がより安定するため、安定して優れた滑り性や化粧料に含めた際の肌への感触を与えることが可能になる。
【0013】
本発明はまた、上記板状ハイドロタルサイト型粒子を含む化粧料でもある。このような化粧料は、滑り性及び化粧料に含めた際の肌への塗布感触に優れ、皮膚への刺激性が充分に低減されたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の板状ハイドロタルサイト型粒子は、滑り性及び化粧料に含めた際の肌への塗布感触に優れ、皮膚への刺激性が充分に低減されたものであるため、特に化粧料用途に有用である。その他、アンモニアガスやリン化合物の吸着性能にも優れるため、これらの吸着性能が付加された化粧料や、吸着剤等の用途にも有用である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例11で得た板状ハイドロタルサイト型粒子のX線回折パターンである。
図2-1】実施例11で得た板状ハイドロタルサイト型粒子を、厚みが測定できるように撮影した電子顕微鏡写真である(倍率:50,000倍)。
図2-2】実施例11で得た板状ハイドロタルサイト型粒子を、厚みが測定できるように撮影した電子顕微鏡写真である(倍率:20,000倍)。
図2-3】実施例11で得た板状ハイドロタルサイト型粒子を、板面径が測定できるように撮影した電子顕微鏡写真である(倍率:50,000倍)。
図2-4】実施例11で得た板状ハイドロタルサイト型粒子を、板面径が測定できるように撮影した電子顕微鏡写真である(倍率:20,000倍)。
図3-1】実施例11及び参考例1で得たハイドロタルサイト型粒子をそれぞれ用いてリン酸水素カリウムを吸着させた場合のリン酸イオン濃度の経時変化を対比したグラフである(リン酸イオン濃度の初期値:50ppm)。
図3-2】実施例11及び参考例1で得たハイドロタルサイト型粒子をそれぞれ用いてリン酸水素カリウムを吸着させた場合のリン酸イオン濃度の経時変化を対比したグラフである(リン酸イオン濃度の初期値:25ppm)。
図3-3】実施例11及び参考例1で得たハイドロタルサイト型粒子をそれぞれ用いてリン酸水素カリウムを吸着させた場合のリン酸イオン濃度の経時変化を対比したグラフである(リン酸イオン濃度の初期値:5ppm)。
図4】実施例11、比較例18及び参考例1で得たハイドロタルサイト型粒子をそれぞれ用いてアンモニアガスを吸着させた場合のアンモニア濃度の経時変化を対比したグラフである。
図5-1】実施例11及び参考例1で得たハイドロタルサイト型粒子について、示差熱測定を行った結果を示すグラフである。
図5-2】実施例11及び参考例1で得たハイドロタルサイト型粒子について、熱重量測定を行った結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい形態について具体的に説明するが、本発明は以下の記載のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
【0017】
〔板状ハイドロタルサイト型粒子〕
本発明の板状ハイドロタルサイト型粒子は、下記式(1):
(Zn)1−x(Al)(OH)(An−x/n・mHO (1)
(式中、An−は、n価の層間アニオンを表す。x及びnは、それぞれ、0.2≦x≦0.4、1≦n≦4の整数、の条件を満たす数である。mは、0以上の数である。)で表される板状粒子である。
【0018】
上記式(1)中、n価の層間アニオンとしては特に限定されないが、反応性及び環境負荷低減の観点から、水酸化物イオン(OH)、炭酸イオン(CO2−)及び硫酸イオン(SO2−)からなる群より選択される少なくとも1種が好適である。中でも、炭酸イオンが好ましい。
【0019】
xは、0.2≦x≦0.4を満たす数であるが、この範囲内にあると、結晶構造が安定する。より安定性を向上させる観点から、〔(1−x)/x〕が1.5/1〜3/1となるようにxを調整することが好ましい。より好ましくは2/1となるように調整することである。この観点から、xは、0.25以上であることが好ましく、より好ましくは0.3以上であり、また、0.35以下であることが好ましい。特に好ましくは1/3(=約0.33)である。
【0020】
nは、1≦n≦4を満たす数であり、層間アニオンの価数によって適宜調整すればよい。好ましくは1〜3の整数、より好ましくは2である。
【0021】
mは、0以上の数である。このmは、結晶構造を解析することで理論上求めることができるが、実際には、付着水の存在等によって正確に測定することは困難である。理論上は、例えば、0以上、5未満であることが好ましい。
【0022】
本発明では特に、上記式(1)中、x及びnは、それぞれ、0.30≦x≦0.35、1≦n≦3の整数、の条件を満たす数であり、An−は炭酸イオン(CO2−)であることが好ましい。これにより、結晶形状がより安定するため、安定して、優れた滑り性や化粧料に含めた際の肌への良好な塗布感触を与えることが可能になる。
【0023】
上記板状ハイドロタルサイト型粒子として最も好ましくは、下記式(2):
(Zn)0.67(Al)0.33(OH)(CO2−0.165・mHO (2)
で表される板状粒子である。この構造では、結晶構造が極めて安定し、本発明の作用効果をより充分に発揮することが可能となる。この構造はJCPDSカード 00−048−1023から確認できる。
【0024】
上記板状ハイドロタルサイト型粒子の平均板面径は、150〜800nmである。平均板面径がこの範囲内にあると、粒子を含む粉体の流動性が安定することから、計量や包装時に取扱いやすいものとなり、化粧料に含めた際の肌への塗布感触や滑り性にも優れたものとなる。好ましくは180nm以上、より好ましくは190nm以上、更に好ましくは300nm以上であり、また、好ましくは500nm以下、より好ましくは470nm以下である。
【0025】
上記板状ハイドロタルサイト型粒子のアスペクト比(平均板面径/平均厚み)は、4.0〜20.0である。アスペクト比がこの範囲内にあると、粒子を含む粉体の流動性が安定することから、計量や包装時に取扱いやすいものとなり、化粧料に含めた際の肌への塗布感触や滑り性にも優れたものとなる。好ましくは4.5〜15.0、より好ましくは5.0〜10.0である。中でも、平均板面径及び平均厚みからアスペクト比を求める操作を10回繰り返した際の平均値(すなわちアスペクト比の平均値)が4.0〜20.0であることが好ましい。より好ましくは4.5〜15.0、更に好ましくは5.0〜10.0である。
本明細書中、平均板面径及び平均厚みは、走査電子顕微鏡写真に基づいて算出される値である。具体的には、後述の実施例に記載の方法に従って求められる。
【0026】
ここで、本発明の板状ハイドロタルサイト型粒子は、板状であり、かつ一定のアスペクト比をもつことに重要な特徴を有するが、同時に、粒子形状とアスペクト比のばらつきが少ないことにも特徴がある。化粧料に含めた際の肌への塗布感触や滑り性を向上又は維持するためには、アスペクト比を10回測定した際、測定したアスペクト比の値が4.0未満であるか又は20.0を超える回数が3回以下であることが好ましい。また、平均板面径と平均厚みを測定した際に算出される標準偏差の変動係数が、それぞれ0.5以下であることが好ましい。より好ましくは0.4以下である。
【0027】
上記板状ハイドロタルサイト型粒子は、JIS K5101−17−1(2004年)の顔料試験方法によるpH値(「顔料pH」とも称す)が6.0〜8.5となるものである。この顔料pHがこの範囲内にあると、皮膚への刺激性が充分に低減されるため、化粧料等の直接肌に触れる用途に特に有用なものとなる。顔料pHは、好ましくは7.0〜8.4、より好ましくは7.2〜8.2である。
本明細書中、顔料pHは、JIS K5101−17−1(2004年)の顔料試験方法による測定値である。具体的には、後述の実施例に記載の方法に従って求められる。
【0028】
上記板状ハイドロタルサイト型粒子は、その比表面積が0.1〜50m/gであることが好ましい。比表面積がこの範囲にあると、より充分な強度を有し、滑り性及び化粧料に含めた際の肌への塗布感触がより一層優れるものとなる。より好ましくは5〜40m/g、更に好ましくは10〜20m/gである。
【0029】
本明細書中、比表面積(SSAとも称する)は、BET比表面積を意味する。
BET比表面積とは、比表面積の測定方法の一つであるBET法により得られた比表面積のことをいう。比表面積とは、ある物体の単位質量あたりの表面積のことをいう。
BET法は、窒素等の気体粒子を固体粒子に吸着させ、吸着した量から比表面積を測定する気体吸着法である。具体的には、圧力Pと吸着量Vとの関係からBET式によって、単分子吸着量VMを求めることにより、比表面積を定める。本明細書中の比表面積の詳しい測定方法は後述の実施例において説明する。
【0030】
上記板状ハイドロタルサイト型粒子は、体積基準粒度分布のシャープさの指標となるD90のD10に対する比 (D90/D10)が2〜150であることが好ましい。D90/D10がこの範囲内にあると、粒子径のバラツキが少ないため、粒子を含む粉体の流動性が安定する。それゆえ、計量や包装時に取扱いやすいものとなり、化粧料に含めた際の肌への塗布感触や滑り性にも優れたものとなる。D90/D10の値が大きくなると化粧料に含めた際の肌への塗布感触が向上する傾向にあるので、D90/D10の値は10以上がより好ましく、30以上が更に好ましい。なお、D90/D10が大きい程、粒度分布がブロードであることを意味し、この値が小さい程、粒度分布がシャープであることを意味する。
本明細書中、D10とは体積基準での10%積算粒径を意味し、D90とは体積基準での90%積算粒径を意味する。D10、D90はそれぞれ、粒度分布を測定することにより得られる値である。具体的には、後述の実施例に記載の方法に従って求められる。
【0031】
上記板状ハイドロタルサイト型粒子は、二次粒子のメジアン径(D50)が1〜200μmであることが好ましい。メジアン径(D50)がこの範囲内にあると、粒子を含む粉体の流動性が安定することから、計量や包装時に取扱いやすいものとなり、化粧料に含めた際の肌への塗布感触や滑り性にも優れたものとなる。
本明細書中、メジアン径(D50)とは体積基準での50%積算粒径を意味し、粉体をある粒子径から2つに分けたとき、大きい側と小さい側が等量となる径をいう。具体的には、後述の実施例に記載の方法に従って求められる。
【0032】
上記板状ハイドロタルサイト型粒子はまた、化粧料に含めた際の肌への良好な塗布感触を損なわない範囲であれば、その表面の一部又は全部が表面被覆剤で被覆されていてもよい。表面被覆剤としては、無機化合物及び有機化合物のいずれも好適に用いることができる。無機化合物としては特に限定されないが、例えば、ケイ素、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、アルミニウム、ジルコニウム、セリウム、亜鉛等の酸化物、水酸化物、硫酸塩、炭酸塩等が挙げられる。有機化合物としては特に限定されないが、例えば、シリコーンオイル、脂肪酸及びその金属塩、アルキルシラン、アルコキシシラン、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、アミノ酸、ナイロン、カルボマー及びその金属塩、ポリアクリル酸、トリメチルプロパノール、トリエチルアミン、高級アルコール等が挙げられる。
【0033】
上記表面被覆剤の中でも、ケイ素原子を含む化合物(ケイ素化合物とも称す)が好ましい。すなわち上記板状ハイドロタルサイト型粒子は、表面の一部又は全部がケイ素化合物で被覆されていることが好適である。これにより、亜鉛イオンの過剰な溶出を抑制し、皮膚への刺激性を低減して適度な収斂作用を発現できることに加え、樹脂や溶媒との相溶性や分散性が向上する他、撥水性も向上するため、化粧料だけではなく、樹脂への添加剤等、各種用途により有用なものとなる。ケイ素化合物としてより好ましくは、シリカである。
【0034】
上記表面被覆剤を用いて板状ハイドロタルサイト型粒子の表面を被覆する方法としては特に限定されるものではない。例えば、シリカを用いる場合は、板状ハイドロタルサイト型粒子を含むスラリーに、珪酸ナトリウムと酸を加えて中和する方法等が挙げられる。表面被覆量は特に限定されないが、例えば、板状ハイドロタルサイト型粒子の総量100質量%に対し、シリカ等の表面被覆剤が占める割合が0.001〜30質量%であることが好ましい。より好ましくは5〜25質量%である。
【0035】
上記板状ハイドロタルサイト型粒子は、吸油量が20〜300mL/100gであることが好ましい。吸油量がこの範囲内にあると、皮膚の脂取り効果が適度に得られるため、肌を刺激してヒリヒリさせることがなく、化粧料原料としてより実用的なものとなる。より好ましくは25〜200mL/100gである。
本明細書中、吸油量は、後述の実施例に記載の方法に従って求められる。
【0036】
上記板状ハイドロタルサイト型粒子は、BJH法による細孔容積が0.01〜1.0cm/gであることが好ましい。細孔容積が0.01cm/g以上であると、粒子自体の多孔性が向上するため、粒子内部の細孔での吸油性が充分なものとなり、また、粒子自体が適度な重さとなるため、粒子粉体に触ったときの、さらさら感、均一な延び広がり性、平滑感の持続性がより向上する。一方、1.0cm/g以下であると、粒子自体の多孔性が適度なものとなるため粒子強度が充分なものとなり、ハイドロタルサイト粒子を含む化粧料を肌上に塗布した際に粒子が崩壊することが充分に抑制されて、結果として平滑性の持続性がより向上する。より好ましくは0.02〜0.5cm/gである。
本明細書中、細孔容積は、BJH(Barrett-Joyner-Halenda)法を用いて求められる。具体的には、後述の実施例に記載の方法に従って求められる。
【0037】
上記板状ハイドロタルサイト型粒子は、アンモニアガスやリン化合物の吸着性能にも優れるものである。したがって、これらの吸着剤用途にも好適に使用できる。特に本発明の板状ハイドロタルサイト型粒子は、ゴミ処分場から排出される排水や、下水処理場等の浄化槽から排出される一次処理水等に含まれるリン化合物の吸着性能に優れるため、吸着剤として極めて有用である。
【0038】
〔製造方法〕
本発明の板状ハイドロタルサイト型粒子を得るには、例えば、亜鉛化合物及びアルミニウム化合物を原料として用い、(003)面に由来するピークの半価幅が0.4以上である前駆体を得る工程(I)と、該前駆体を、温度75〜150℃で、かつ相対湿度75〜100%RHの雰囲気下で保持する工程(II)とを含む製造方法を採用することが好ましい。このような製造方法を採用することで、水熱合成等で必要になる圧力容器等の特殊な装置・設備を導入することなく容易かつ簡便に板状ハイドロタルサイト型粒子を得ることができる。
以下、各工程について更に説明する。
【0039】
<工程(I)>
工程(I)は、(003)面に由来するピークの半価幅が0.4以上である前駆体を得る工程である。この工程(I)ではハイドロタルサイトの結晶化を抑えて低結晶状態の前駆体を作製し、これを工程(II)に供することで、工程(II)では板状粒子への結晶成長が進み、これによって、容易かつ簡便に本発明の板状ハイドロタルサイト型粒子を得ることができる。なお、工程(I)で得られる前駆体にはハイドロタルサイト型粒子が含まれることがある。
【0040】
上記工程(I)では、原料として亜鉛化合物及びアルミニウム化合物をそれぞれ1種又は2種以上用いる。これら亜鉛化合物及びアルミニウム化合物としては特に限定されないが、製造を容易にする観点から、水溶性の塩、又は、酸を含む水に可溶の塩を用いることが好ましい。具体的には、亜鉛化合物は、水酸化亜鉛、酸化亜鉛、塩基性炭酸亜鉛及び硫酸亜鉛からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、アルミニウム化合物は、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム及び硫酸アルミニウムからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。これらの原料を用いることで、より容易かつ簡便に板状ハイドロタルサイト型粒子を得ることができる。
【0041】
上記原料の使用量は、得られる板状ハイドロタルサイト型粒子が上記式(1)を満たすものとなるように調整すればよい。例えば、アルミニウム化合物のアルミニウム換算量1モルに対し、亜鉛化合物が、亜鉛換算で1.5〜4モルとなるようにすることが好ましい。これにより、得られる板状ハイドロタルサイト型粒子の結晶構造が安定する。より安定性を向上させる観点から、アルミニウム化合物のアルミニウム換算量1モルに対し、亜鉛化合物が、亜鉛換算で1.5〜3モルとなるように調整することがより好ましく、更に好ましくは2モルである。
【0042】
上記工程(I)では、上記原料を、アルカリ成分を用いて中和することが好ましい。この中和を行うことで、前駆体を好適に得ることができる。この中和は、上記原料とアルカリ成分との混合溶液のpHが7以上になるように、上記原料とアルカリ成分とを混合することが好ましい。この際、必要に応じて後述する溶媒の存在下で行ってもよい。より好ましくは、上記原料とアルカリ成分との混合溶液のpHが7.5以上になるように中和反応させることである。
【0043】
上記アルカリ成分としては特に限定されないが、例えば、アルカリ金属塩等が挙げられ、1種又は2種以上を使用することができる。アルカリ金属塩とは、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の塩であり、塩として、水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、珪酸塩、アルミン酸塩、有機アミン塩等が挙げられる。中でも、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が好適である。
【0044】
上記溶媒としては特に限定されず、水、有機溶媒及びこれらの混合物が挙げられ、1種又は2種以上を使用することができる。有機溶媒としては、例えば、アルコール、アセトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられ、アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール等の1価の水溶性アルコール;エチレングリコール、グリセリン等の2価以上の水溶性アルコール;等が挙げられる。溶媒として好ましくは水であり、より好ましくはイオン交換水である。
【0045】
ここで、原料として炭酸塩を用いない場合、あるいは、炭酸塩を用いても生成した粒子が上記式(1)を満たさない場合は、別途炭酸ガスを用いてもよい。炭酸ガスは、工程(I)の中であればどの操作で用いてもよい。
【0046】
上記工程(I)ではまた、上記中和で溶媒を用いた場合、得られたスラリーを乾燥することが好適である。この乾燥は、スラリーから溶媒が除去されるように行えばよく、乾燥手段は特に限定されるものではない。例えば、減圧乾燥、加熱乾燥等が挙げられる。また、スラリーをそのまま乾燥してもよいし、ろ過し水洗してから乾燥してもよい。ろ過し水洗してから乾燥する場合は、一旦スラリーの状態にしてから噴霧乾燥で乾燥することも好ましい。
【0047】
上記乾燥の後、粉砕を行うことが好適である。すなわち上記工程(I)は、溶媒の存在下で原料を中和する中和と、該中和により得られたスラリーの乾燥と、乾燥したものの粉砕とを含むことが好ましい。粉砕方法及び粉砕条件は特に限定されず、例えば、ボールミル、ライカイ機、フォースミル、ハンマーミル、ジェットミル等を用いて行ってもよい。
【0048】
上記工程(I)で得られる前駆体は、ウエットケーキ状(例えば、105℃で18時間乾燥後、測定した固形分が15質量%以上である状態)であってもよいし、粉体状であってもよいが、中でも、粉体状であることが好適である。粉体状の前駆体を工程(II)に供すると、工程(II)では板状粒子への結晶成長がより進み、かつ一次粒子の過度の凝集を抑制できるため、好ましい。
【0049】
上記工程(I)で得られる前駆体が粉状態(粉体状)である場合、前記の方法で測定した固形分量が85重量%以上であることが好ましく、95重量%以上であることがより好ましい。
【0050】
上記前駆体は、(003)面に由来するピークの半価幅が0.4以上となるものである。半価幅が0.4未満であるような高結晶状態の前駆体であると、これを工程(II)に供しても充分に板状化が進まないため、平均板面径及びアスペクト比が本発明の範囲内となる板状ハイドロタルサイト型粒子を得ることができない。前駆体の(003)面に由来するピークの半価幅は、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.6以上、更に好ましくは0.7以上である。また、上限は、3以下であることが好ましい。より好ましくは2以下、更に好ましくは1.2以下である。
【0051】
上記前駆体はまた、(006)面に由来するピークの半価幅が0.4以上であることも好ましい。より好ましくは0.5以上、更に好ましくは0.6以上、特に好ましくは0.7以上である。また、上限は、3以下であることが好ましい。より好ましくは2以下、更に好ましくは1以下である。
本明細書中、半価幅は、X線回折法により求めることができる。具体的には、後述する実施例に記載の手法により求められる。
【0052】
上記前駆体は更に、その比表面積が20m/gを超えて300m/g以下であることが好ましい。このような前駆体を工程(II)に供することで、得られる板状ハイドロタルサイト型粒子の強度や滑り性、化粧料に含めた際の肌への塗布感触がより良好なものとなる。より好ましくは25m/g以上、更に好ましくは30m/g以上である。比表面積の上限値は、より好ましくは250m/g以下である。
【0053】
<工程(II)>
工程(II)は、上記工程(I)により得た前駆体を、温度75〜150℃で、かつ相対湿度75〜100%RHの雰囲気下で保持する工程(「湿潤雰囲気工程」とも称す)である。上記製造方法では、従来法のような水熱や常圧での反応とは異なり、前駆体を高温高湿雰囲気下に保持するだけの工程を経ることで、簡便な手段により板状ハイドロタルサイト型粒子を得ることができるため、圧力容器等の特別な装置を不要にすることができる。すなわち製造設備を簡単にすることができる。
【0054】
上記工程(II)では、温度75〜150℃で前駆体を保持する。板状化を促進させる観点から、温度は76℃以上であることが好ましく、より好ましくは78℃以上、更に好ましくは80℃以上である。また、製造コストや設備仕様の観点から、95℃以下とすることが好ましい。
本明細書中、工程(II)の保持温度は、当該工程での最高到達温度を意味する。
なお、温度の変動は板状粒子の結晶成長に変化をもたらす場合があるため、保持中の温度の上限と下限の差が10℃以下とすることが好ましい。
【0055】
上記工程(II)はまた、相対湿度が75〜100%RHの雰囲気で行う。板状化を促進させる観点から、相対湿度は76%RH以上であることが好ましく、より好ましくは77%RH以上、更に好ましくは78%RH以上、特に好ましくは79%RH以上、最も好ましくは80%RH以上である。また、製造コストや設備仕様の観点から、95%RH以下とすることが好ましく、より好ましくは90%RH以下である。
本明細書中、工程(II)の相対湿度は、当該工程での最高到達湿度を意味する。
なお、相対湿度の変動は板状粒子の結晶成長に変化をもたらす場合があるため、保持中の湿度の上限と下限の差を10%以下とすることが好ましい。
【0056】
上記条件下での保持時間は、前駆体が板状粒子に結晶成長するのに充分な時間であればよい。例えば、1〜300時間であることが好ましい。保持時間がこの範囲内であると、結晶化がより充分に進み、生産性にも優れる。より好ましくは3〜200時間、更に好ましくは6〜180時間である。
【0057】
<他の工程>
上記製造方法では、上述した工程(I)及び(II)に加え、必要に応じて1又は2以上の粉砕、分級、洗浄、水熱、熟成、焼成、層間イオンの置換、表面被覆等のその他の工程を含んでもよい。その他の工程は特に限定されない。
【0058】
〔用途〕
本発明の板状ハイドロタルサイト型粒子は、滑り性及び化粧料に含めた際の肌への塗布感触に優れ、皮膚への刺激性が充分に低減されたものであり、しかもアンモニアガスやリン化合物の吸着性能にも優れるものである。したがって、化粧料、医薬品、医薬部外品、吸着剤、触媒、樹脂用添加剤等の種々の用途に用いることができる。中でも、化粧料原料として特に有用であり、上記板状ハイドロタルサイト型粒子を含む化粧料は、本発明の1つである。
【0059】
上記化粧料は、本発明の板状ハイドロタルサイト型粒子を含むことで、肌への刺激性が低減され、滑りが良く、かつ化粧料に含めた際の肌への塗布感触に優れるうえ、ソフトフォーカス効果や皮脂吸着効果も期待できるものである。それゆえ、昨今の市場のニーズに特に適したものである。化粧料としては特に限定されず、例えば、ファンデーション、化粧下地、日焼け止め、アイシャドウ、頬紅、マスカラ、口紅、制汗剤、脂取り紙等が挙げられる。中でも、ファンデーションが特に好適である。
【0060】
上記化粧料はまた、必要に応じ、本発明の板状ハイドロタルサイト型粒子に加えて、他の成分を1種又は2種以上含んでいてもよい。他の成分は特に限定されないが、例えば、有機溶媒や分散剤の他、化粧料分野で通常使用されている任意の水性成分、油性成分が挙げられる。具体的には、油分;界面活性剤;保湿剤;高級アルコール;金属イオン封鎖剤;各種高分子(天然、半合成、合成若しくは無機の、水溶性又は油溶性高分子);紫外線遮蔽剤;その他薬剤成分;各種抽出液;無機及び有機顔料;無機及び有機粘土鉱物等の各種粉体;金属石鹸処理又はシリコーンで処理された無機及び有機顔料;有機染料等の色剤;防腐剤;酸化防止剤;色素;増粘剤;pH調整剤;香料;冷感剤;収斂剤;殺菌剤;皮膚賦活剤;等が挙げられる。これらの成分の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されない。
【0061】
油分としては特に限定されず、例えば、アボカド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、カカオ脂、ヤシ油、馬脂、パーム油、牛脂、羊脂、パーム核油、豚脂、牛骨脂、モクロウ核油、硬化牛脂、硬化ヤシ油、硬化ひまし油等の硬化油、牛脚脂、モクロウ、ミツロウ、カンデリラロウ、綿ロウ、カルナウバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カポックロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ジョジョバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエーテル、流動パラフィン、オゾケライト、プリスタン、パラフィン、セレシン、スクワレン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。
【0062】
界面活性剤としては、例えば、親油性非イオン界面活性剤、親水性非イオン界面活性剤の他、その他の界面活性剤が挙げられる。親油性非イオン界面活性剤としては特に限定されず、例えば、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート、ペンタ−2−エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン、テトラ−2−エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル類、モノ綿実油脂肪酸グリセリン、モノエルカ酸グリセリン、セスキオレイン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリン、α,α’−オレイン酸ピログルタミン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリンリンゴ酸等のグリセリンポリグリセリン脂肪酸類、モノステアリン酸プロピレングリコール等のプロピレングリコール脂肪酸エステル類、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル等が挙げられる。
【0063】
親水性非イオン界面活性剤としては特に限定されず、例えば、POEソルビタンモノオレエート、POEソルビタンモノステアレート、POEソルビタンテトラオレエート等のPOEソルビタン脂肪酸エステル類、POEソルビットモノラウレート、POEソルビットモノオレエート、POEソルビットペンタオレエート、POEソルビットモノステアレート等のPOEソルビット脂肪酸エステル類、POEグリセリンモノステアレート、POEグリセリンモノイソステアレート、POEグリセリントリイソステアレート等のPOEグリセリン脂肪酸エステル類、POEモノオレエート、POEジステアレート、POEモノジオレエート、システアリン酸エチレングリコール等のPOE脂肪酸エステル類、POEラウリルエーテル、POEオレイルエーテル、POEステアリルエーテル、POEベヘニルエーテル、POE2−オクチルドデシルエーテル、POEコレスタノールエーテル等のPOEアルキルエーテル類、POEオクチルフェニルエーテル、POEノニルフェニルエーテル、POEジノニルフェニルエーテル等のPOEアルキルフェニルエーテル類、ブルロニック等のプルアロニック型類、POE・POPセチルエーテル、POE・POP2−デシルテトラデシルエーテル、POE・POPモノブチルエーテル、POE・POP水添ラノリン、POE・POPグリセリンエーテル等のPOE・POPアルキルエーテル類、テトロニック等のテトラPOE・テトラPOPエチレンジアミン縮合物類、POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油、POE硬化ヒマシ油モノイソステアレート、POE硬化ヒマシ油トリイソステアレート、POE硬化ヒマシ油モノピログルタミン酸モノイソステアリン酸ジエステル、POE硬化ヒマシ油マレイン酸等のPOEヒマシ油硬化ヒマシ油誘導体、POEソルビットミツロウ等のPOEミツロウ・ラノリン誘導体、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸モノエタノールアミド、脂肪酸イソプロパノールアミド等のアルカノールアミド、POEプロピレングリコール脂肪酸エステル、POEアルキルアミン、POE脂肪酸アミド、ショ糖脂肪酸エステル、POEノニルフェニルホルムアルデヒド縮合物、アルキルエトキシジメチルアミンオキシド、トリオレイルリン酸等が挙げられる。
【0064】
その他の界面活性剤としては、例えば、脂肪酸セッケン、高級アルキル硫酸エステル塩、POEラウリル硫酸トリエタノールアミン、アルキルエーテル硫酸エステル塩等のアニオン界面活性剤、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、アルキル四級アンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、POEアルキルアミン、アルキルアミン塩、ポリアミン脂肪酸誘導体等のカチオン界面活性剤、イミダゾリン系両性界面活性剤、ベタイン系界面活性剤等の両性界面活性剤等が挙げられる。
【0065】
保湿剤としては特に限定されず、例えば、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ムコイチン硫酸、カロニン酸、アテロコラーゲン、コレステリル−12−ヒドロキシステアレート、乳酸ナトリウム、胆汁酸塩、dl−ピロリドンカルボン酸塩、短鎖可溶性コラーゲン、ジグリセリン(EO)PO付加物、イザヨイバラ抽出物、セイヨウノコギリソウ抽出物、メリロート抽出物等が挙げられる。
【0066】
高級アルコールとしては特に限定されず、例えば、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、セトステアリルアルコール等の直鎖アルコール、モノステアリルグリセリンエーテル(バチルアルコール)、2−デシルテトラデシノール、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール等の分枝鎖アルコール等が挙げられる。
【0067】
金属イオン封鎖剤としては特に限定されず、例えば、1−ヒドロキシエタン−1,1− ジフォスホン酸、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジフォスホン酸四ナトリウム塩、クエン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、グルコン酸、リン酸、クエン酸、アスコルビン酸、コハク酸、エデト酸等が挙げられる。
【0068】
天然の水溶性高分子としては特に限定されず、例えば、アラビアガム、トラガカントガム、ガラクタン、グアガム、キャロブガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、カンテン、クインスシード(マルメロ)、アルゲコロイド(カッソウエキス)、デンプン(コメ、トウモロコシ、バレイショ、コムギ)、グリチルリチン酸等の植物系高分子、キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、プルラン等の微生物系高分子、コラーゲン、カゼイン、アルブミン、ゼラチン等の動物系高分子を挙げることができる。
【0069】
半合成の水溶性高分子としては特に限定されず、例えば、カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプン等のデンプン系高分子、メチルセルロース、ニトロセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、結晶セルロース、セルロース末等のセルロース系高分子、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸系高分子等が挙げられる。
【0070】
合成の水溶性高分子としては特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン等のビニル系高分子、ポリエチレングリコール20000、40000、60000等のポリオキシエチレン系高分子、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体共重合系高分子、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチルアクリレート、ポリアクリルアミド等のアクリル系高分子、ポリエチレンイミン、カチオンポリマー等が挙げられる。
【0071】
無機の水溶性高分子としては特に限定されず、例えば、ベントナイト、ケイ酸A1Mg(ビーガム)、ラポナイト、ヘクトライト、無水ケイ酸等が挙げられる。
【0072】
紫外線遮蔽剤としては特に限定されず、例えば、パラアミノ安息香酸(以下PABAと略す)、PABAモノグリセリンエステル、N,N−ジプロポキシPABAエチルエステル、N,N−ジエトキシPABAエチルエステル、N,N−ジメチルPABAエチルエステル、N,N−ジメチルPABAブチルエステル等の安息香酸系紫外線遮蔽剤;ホモメンチル−N−アセチルアントラニレート等のアントラニル酸系紫外線遮蔽剤;アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、p−イソプロパノールフェニルサリシレート等のサリチル酸系紫外線遮蔽剤;オクチルシンナメート、エチル−4−イソプロピルシンナメート、メチル−2,5−ジイソプロピルシンナメート、エチル−2,4−ジイソプロピルシンナメート、メチル−2,4−ジイソプロピルシンナメート、プロピル−p−メトキシシンナメート、イソプロピル−p−メトキシシンナメート、イソアミル−p−メトキシシンナメート、2−エトキシエチル−p−メトキシシンナメート、シクロヘキシル−p−メトキシシンナメート、エチル−α−シアノ−β−フェニルシンナメート、2−エチルヘキシル−α−シアノ−β−フェニルシンナメート、グリセリルモノ−2−エチルヘキサノイル−ジパラメトキシシンナメート等のケイ皮酸系紫外線遮蔽剤;2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−4’−メチルベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸塩、4−フェニルベンゾフェノン、2−エチルヘキシル−4’−フェニル−ベンゾフェノン−2−カルボキシレート、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシ−3− カルボキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線遮蔽剤;3−(4’−メチルベンジリデン)−d,l−カンファー、3−ベンジリデン−d,l−カンファー、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチルエステル、2−フェニル−5−メチルベンゾキサゾール、2,2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニルベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ジベンザラジン、ジアニソイルメタン、4−メトキシ−4’−t−ブチルジベンゾイルメタン、5−(3,3−ジメチル−2−ノルボルニリデン)−3−ペンタン−2−オン等が挙げられる。
【0073】
その他薬剤成分としては特に限定されず、例えば、ビタミンA油、レチノール、パルミチン酸レチノール、イノシット、塩酸ピリドキシン、ニコチン酸ベンジル、ニコチン酸アミド、ニコチン酸DL−α−トコフェロール、アルコルビン酸リン酸マグネシウム、2−O−α−D−グルコピラノシル−L−アスコルビン酸、ビタミンD2(エルゴカシフェロール)、dl−α−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール、パントテン酸、ビオチン等のビタミン類;エストラジオール、エチニルエストラジオール等のホルモン;アルギニン、アスパラギン酸、シスチン、システイン、メチオニン、セリン、ロイシン、トリプトファン等のアミノ酸;アラントイン、アズレン等の抗炎症剤、アルブチン等の美白剤、;タンニン酸等の収斂剤;L−メントール、カンフル等の清涼剤;や、イオウ、塩化リゾチーム、塩化ピリドキシン等が挙げられる。
【0074】
各種の抽出液としては特に限定されず、例えば、ドクダミエキス、オウバクエキス、メリロートエキス、オドリコソウエキス、カンゾウエキス、シャクヤクエキス、サボンソウエキス、ヘチマエキス、キナエキス、ユキノシタエキス、クララエキス、コウホネエキス、ウイキョウエキス、サクラソウエキス、バラエキス、ジオウエキス、レモンエキス、シコンエキス、アロエエキス、ショウブ根エキス、ユーカリエキス、スギナエキス、セージエキス、タイムエキス、茶エキス、海藻エキス、キューカンバーエキス、チョウジエキス、キイチゴエキス、メリッサエキス、ニンジンエキス、マロニエエキス、モモエキス、桃葉エキス、クワエキス、ヤグリマギクエキス、ハマメリスエキス、プラセンタエキス、胸腺抽出物、シルク抽出液、甘草エキス等が挙げられる。
【0075】
各種粉体としては、例えば、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、雲母チタン、酸化鉄被覆雲母チタン、酸化チタン被覆ガラスフレーク等の光輝性着色顔料、マイカ、タルク、カオリン、セリサイト、二酸化チタン、シリカ等の無機粉末やポリエチレン末、ナイロン末、架橋ポリスチレン、セルロースパウダー、シリコーン末等の有機粉末等が挙げられる。好ましくは、官能特性向上や化粧持続性向上のため、粉末成分の一部又は全部をシリコーン類、フッ素化合物、金属石鹸、油剤、アシルグルタミン酸塩等の物質にて、公知の方法で疎水化処理したものである。
【実施例】
【0076】
本発明を詳細に説明するために以下に実施例を挙げるが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。特に断りのない限り、「%」とは「重量%(質量%)」を意味する。
【0077】
実施例1
(1)中和
硫酸亜鉛7水和物96.6gと、354g/Lの硫酸アルミニウム水溶液81.2mL(Al(SOとして28.7g)を混合し、全量が350mLとなるようにイオン交換水を加えた金属塩混合水溶液を得た。別途、720g/Lの水酸化ナトリウム水溶液46.7mLと、炭酸ナトリウム26.7gとを混合し、全量が350mLとなるようにイオン交換水を加えたアルカリ混合水溶液を得た。1Lの丸底フラスコにイオン交換水50mLを入れ、撹拌下において、これら水溶液を加えた。このときのスラリーのpHは9であった。その後、50℃で30分間撹拌することにより、スラリーを得た。
【0078】
(2)乾燥・粉砕
上記「(1)中和」により得られたスラリーをろ過し、洗液の電気伝導度が100μS/cm以下になるまで水洗した。得られたケーキを105℃の温度で18時間乾燥し、乾燥粉5gをフォースミル(大阪ケミカル社製、FM−1)にて20秒間粉砕することにより、ハイドロタルサイト前駆体の粉末を得た。
【0079】
(5)湿潤雰囲気工程
上記「(2)乾燥・粉砕」により得られた粉末のうち1gを、口内径27mm、高さ15mmのガラスシャーレに入れて、恒温恒湿器(エスペック社製、PR−1KT)に入れ、室温から85℃、相対湿度85%RHまで15分間かけて調整し、85℃、相対湿度85%RHにて3時間保持し、その後ヒーターへの通電を中止し室温まで冷却した。なお、この工程は大気中で行った。このようにして、ハイドロタルサイト型粒子を含む粉末(1)を得た。
【0080】
実施例2〜6
実施例1において、「(5)湿潤雰囲気工程」での保持時間を表1に示すとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてハイドロタルサイト型粒子を含む粉末(2)〜(6)を各々得た。
【0081】
実施例7〜11
実施例1において、「(1)中和」での反応時間(すなわち50℃での撹拌時間)を10分とし、かつ「(5)湿潤雰囲気工程」での保持時間を表1に示すとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてハイドロタルサイト型粒子を含む粉末(7)〜(11)を各々得た。
【0082】
実施例12
実施例10の「(1)中和」により得られたハイドロタルサイト前駆体スラリーをろ過し、洗液の電気伝導度が100μS/cm以下になるまで水洗した。得られたケーキ3.3g(固形分30%)を「(5)湿潤雰囲気工程」に供する際は表1の通りとした。このようにしてハイドロタルサイト型粒子を含む粉末(12)を得た。
【0083】
実施例13、14
(3)熟成
実施例7の「(1)中和」により得られたスラリーを、スラリー中の固形分換算で42gとなるように1Lの丸底フラスコに計り取り、全量が600mLとなるようにイオン交換水を加えた後、50℃で22時間撹拌した。このスラリーをろ過し、洗液の電気伝導度が100μS/cm以下になるまで水洗した。得られたケーキを、105℃の温度で18時間乾燥し、乾燥粉5gをフォースミル(大阪ケミカル社製、FM−1)にて20秒間粉砕することにより、ハイドロタルサイト前駆体の粉末を得た。得られた粉末のうち1gを、実施例1の「(5)湿潤雰囲気工程」に供した(但し、保持時間は表1に記載のとおりに変更した)。このようにしてハイドロタルサイト型粒子を含む粉末(13)、(14)を各々得た。
【0084】
比較例1
(1)中和
297g/Lの硫酸マグネシウム7水和物136.2mL(MgSOとして40.5g)と、354g/Lの硫酸アルミニウム水溶液81.2mL(Al(SOとして28.7g)を混合し、全量が350mLとなるようにイオン交換水を加えた金属塩混合水溶液を得た。別途、720g/Lの水酸化ナトリウム水溶液46.7mLと、炭酸ナトリウム26.7gとを混合し、全量が350mLとなるようにイオン交換水を加えたアルカリ混合水溶液を得た。1Lの丸底フラスコにイオン交換水50mLを入れ、撹拌下において、これら水溶液を加えた。このときのスラリーのpHは9であった。その後、50℃で30分間撹拌することにより、ハイドロタルサイト前駆体のスラリーを得た。
【0085】
(2)乾燥・粉砕
上記「(1)中和」により得られたスラリーをろ過し、洗液の電気伝導度が100μS/cm以下になるまで水洗した。得られたケーキを105℃の温度で18時間乾燥し、乾燥粉5gをフォースミル(大阪ケミカル社製、FM−1)にて20秒間粉砕することにより、ハイドロタルサイト前駆体の粉末を得た。得られた粉末のうち1gを、実施例1の「(5)湿潤雰囲気工程」に供した(但し、保持時間は表2に示すとおりに変更した)。このようにしてハイドロタルサイト型粒子を含む粉末(c1)を得た。
【0086】
比較例2
比較例1において、「(1)中和」で用いたMg原料を表2に示すZn原料及びMg原料に変更したこと以外は、比較例1と同様にして得たスラリーをろ過し、洗液の電気伝導度が100μS/cm以下になるまで水洗した。得られたケーキを、105℃の温度で18時間乾燥し、乾燥粉5gをフォースミル(大阪ケミカル社製、FM−1)にて20秒間粉砕することにより、ハイドロタルサイト前駆体の粉末を得た。得られた粉末のうち1gを、実施例1の「(5)湿潤雰囲気工程」に供した(但し、保持時間は表2に示すとおりに変更した)。このようにしてハイドロタルサイト型粒子を含む粉末(c2)を得た。
【0087】
比較例3
実施例1において、「(5)湿潤雰囲気工程」を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして、ハイドロタルサイト型粒子を含む粉末(c3)を得た。
【0088】
比較例4、6
実施例1において、「(1)中和」で用いたZn原料を表2に示すZn原料及びMg原料に変更し、かつ「(5)湿潤雰囲気工程」を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして、ハイドロタルサイト型粒子を含む粉末(c4)、(c6)を各々得た。
【0089】
比較例5、7
実施例1において、「(1)中和」で用いたZn原料を表2に示すZn原料及びMg原料に変更し、かつ「(5)湿潤雰囲気工程」での相対湿度及び保持時間を表2に記載のとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてハイドロタルサイト型粒子を含む粉末(c5)、(c7)を各々得た。
【0090】
比較例8、10〜12
実施例1において、「(5)湿潤雰囲気工程」での温度、相対湿度及び保持時間を表2に示すとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてハイドロタルサイト型粒子を含む粉末(c8)、(c10)〜(c12)を各々得た。
【0091】
比較例9
(4)水熱
実施例1の「(1)中和」により得られたスラリーを、スラリー中の固形分換算で5.3gとなるように100mLの圧力容器に計り取り、全量が75mLとなるようにイオン交換水を加えた後、180℃で2時間保持した。このスラリーをろ過し、洗液の電気伝導度が100μS/cm以下になるまで水洗することにより、ケーキを得た。得られたケーキを、105℃の温度で18時間乾燥し、乾燥粉5gをフォースミル(大阪ケミカル社製、FM−1)にて20秒粉砕することにより、粉末(c9)を得たが、大半が酸化亜鉛であったため、後述の評価を行わなかった。
【0092】
比較例13
(1)中和
硫酸亜鉛7水和物96.6gと、354g/Lの硫酸アルミニウム水溶液81.2mL(Al(SOとして28.7g)を混合し、全量が350mLとなるようにイオン交換水を加えた金属塩混合水溶液を得た。別途、720g/Lの水酸化ナトリウム水溶液46.7mLと、炭酸ナトリウム26.7gとを混合し、全量が350mLとなるようにイオン交換水を加えたアルカリ混合水溶液を得た。1Lの丸底フラスコにイオン交換水50mLを入れ、撹拌下において、これら水溶液を加えた。このときのスラリーのpHは9であった。その後、50℃で10分間撹拌することにより、スラリーを得た。
【0093】
(3)熟成
上記「(1)中和」により得られたスラリーを、スラリー中の固形分換算で42gとなるように1Lの丸底フラスコに計り取り、全量が600mLとなるようにイオン交換水を加えた後、50℃で22時間撹拌した。このスラリーをろ過し、洗液の電気伝導度が100μS/cm以下になるまで水洗した。得られたケーキを、105℃の温度で18時間乾燥し、乾燥粉5gをフォースミル(大阪ケミカル社製、FM−1)にて20秒間粉砕することにより、ハイドロタルサイト型粒子を含む粉末(c13)を得た。
【0094】
比較例14
実施例7において、「(5)湿潤雰囲気工程」を行わなかったこと以外は、実施例7と同様にして、ハイドロタルサイト型粒子を含む粉末(c14)を得た。
【0095】
比較例15
比較例13において、「(3)熟成」での熟成温度(50℃)を85℃に変更したこと以外は、比較例13と同様にして、ケーキを得た。得られたケーキを、105℃の温度で18時間乾燥し、乾燥粉5gをフォースミル(大阪ケミカル社製、FM−1)にて20秒間粉砕することにより、ハイドロタルサイト型粒子を含む粉末(c15)を得た。
【0096】
比較例16、17
比較例15の「(3)熟成」で得たハイドロタルサイトの粉末のうち1gを、実施例1の「(5)湿潤雰囲気工程」に供した(但し、保持時間は表2に示すとおりに変更した)。このようにしてハイドロタルサイト型粒子を含む粉末(c16)、(c17)を各々得た。
【0097】
比較例18
比較例13において、「(3)熟成」での熟成温度(50℃)を100℃に変更したこと以外は、比較例13と同様にして、ケーキを得た。得られたケーキを、105℃の温度で18時間乾燥し、乾燥粉5gをフォースミル(大阪ケミカル社製、FM−1)にて20秒間粉砕することにより、ハイドロタルサイト型粒子を含む粉末(c18)を得た。
【0098】
参考例1
参考のため、市販品であるハイドロタルサイト類化合物(STABIACE・HT−1−NC、(Mg)0.67(Al)0.33(OH)(CO2−0.17・0.5HO、堺化学工業社製)を、参考例1の粉末(参考例1で得たハイドロタルサイト型粒子)とした。
【0099】
各実施例及び比較例で得たハイドロタルサイト型粒子(粉体)、並びに、「(5)湿潤雰囲気工程」に供する際の前駆体(「(5)湿潤雰囲気工程」を行わない場合は生成物)について、以下の方法に従って、それぞれ、物性の測定と評価を行った。
【0100】
1、半価幅の測定
得られた各粉体について、以下の条件により粉末X線回折パターン(単にX線回折パターンともいう)を測定した。例えば、実施例11で得た粉体のX線回折パターンを図1に示す。その後、得られた各粉体のX線回折の測定により得られた回折パターンから、(003)及び(006)半価幅を測定した。結果を表3及び4に示す。
なお、実施例で得た全ての粉体のX線回折パターンは、JCPDSカード 00−048−1023と一致した。
【0101】
−分析条件−
使用機:リガク社製 RINT−UltimaIII
線源:CuKα
電圧:50kV
電流:300mA
試料回転速度:60rpm
発散スリット:1.00mm
発散縦制限スリット:10mm
散乱スリット:開放
受光スリット:開放
走査モード:FT
計数時間:2.0秒
ステップ幅:0.0200°
操作軸:2θ/θ
走査範囲:1.6000〜70.0000°
積算回数:1回
ハイドロタルサイト型粒子の同定に用いたのは以下の資料である。
Zn0.67Al0.33(OH)(CO0.165・xHO:JCPDSカード 00−048−1023
MgAl(OH)12CO・3HO:JCPDSカード 00−051−1525
なお、線源としてCuKα線を用いたX線回折において、ハイドロタルサイトの最大ピークである(003)面に由来するピークは2θ=11.6°付近に、(006)面に由来するピークは2θ=23.4°付近にある。
【0102】
2、比表面積(SSA)の測定
以下の条件により比表面積(SSA)の測定を行った。結果を表3及び4に示す。
使用機:マウンテック社製、Macsorb Model HM−1220
雰囲気:窒素ガス(N
外部脱気装置の脱気条件:105℃−15分
比表面積測定装置本体の脱気条件:105℃−5分
【0103】
3、メジアン径(D50)及び粒度分布のシャープさ(D90/D10
レーザー回折・散乱式粒度分析計(HORIBA社製、型番:LA−950−V2)により粒度分布測定を行った。
まずサンプル(試料粉体)0.1gに0.025wt%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液60mLを加え、超音波ホモジナイザー(US−600、日本精機製作所製)を用いて、強度をV−LEVEL3に設定して2分間分散処理を行うことにより、サンプルの懸濁液を準備した。この後、0.025wt%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を試料循環器に循環させ、透過率が80〜95%になるように上記懸濁液を滴下して、循環速度5、撹拌速度1にて、60秒間超音波分散してから測定を行った。結果を表3及び4に示す。
【0104】
4、元素分析
ハイドロタルサイト中のMg,Zn,Al含有量は、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法を用い、以下の方法により測定することができる。
具体的には、以下のように、分光器(SII社製、ICP SPS3100)を使用し、スカンジウム(Sc)を内標準元素とする内標準法により測定する。
まず、試料約0.2gをビーカーに精秤し、塩酸約5mLを加えて溶解させ、100mLメスフラスコに充填し、イオン交換水でメスアップする。これをMg含有量測定では20倍、Zn含有量測定では50倍、Al含有量測定では10倍希釈し、かつSc濃度が10ppmとなるようにSc標準溶液を添加した溶液を試験液とし、下記の測定条件により測定し、得られた生データを下記の計算条件で計算することによりMg,Zn,Al含有量を算出する。結果を表3及び4に示す。
【0105】
−測定条件−
分光器(SII社製、ICP SPS3100)を使用し、波長279.55nm(Mg)、213.86nm(Zn)、396.15nm(Al)、361.49nm(Sc)にてそれぞれ検量線を作成した後、試料を測定する。
検量線用試料の濃度としては、
Mg(ppm)=50,40,30,20,10、
Zn(ppm)=20,16,12,8,4、
Al(ppm)=50,40,30,20,10
の各5点を使用する。
なお、いずれの検量線用試料も、Sc濃度が10ppmとなるようにSc標準溶液を添加した。計算条件は以下の通りである。
各含有量(%)=生データ×100/試料重量(g)×希釈倍率/10000
【0106】
また、以上のように求めたMg,Zn,Al含有量(重量%)を用い、下記計算式;
x=(Al含有量/26.982)÷{(Mg含有量/24.305)+(Zn含有量/65.38)+(Al含有量/26.982)}
により、上記式(1)中のxに該当する値を求めた。結果を表3及び4に示す。
【0107】
5、細孔容積
自動比表面積/細孔分布測定装置(製品名「BEL SORP−miniII」、日本ベル社製)を用いて測定した。サンプル0.1gを測定セルに充填し、200℃にて脱ガス処理を行った後に測定を行った。
平均細孔直径、全細孔容積及び細孔分布を算出するための解析法は、BJH法を用いる。
平均細孔直径とは、全細孔容積の4倍を表面積で除した値のことを示す。これはサンプル中のすべての細孔を円筒形であると仮定し、その円筒型細孔が体積Vだとする。このとき円筒型細孔の体積は以下の式(i)で表される。
V=πDL/4 (i)
式中、Dは細孔直径、Lは円筒型細孔の長さとする。
次に、円筒型細孔の側面積Aを以下の式(ii)で表す。
A=πDL (ii)
上記式(i)及び(ii)から、次の式(iii)が得られる。
D=4V/A (iii)
上記式(iii)で算出されたDを平均細孔直径とする。
全細孔容積は、BJH法による細孔分布結果から得た全範囲の細孔の積算値である。結果を表3及び4に示す。
【0108】
6、平均板面径、平均厚み及びアスペクト比
各粉体につき、電界放出型走査電子顕微鏡(日本電子社製、JSM−7000F)により、粒子が50〜10000個程度写るように電子顕微鏡写真を撮影した。この電子顕微鏡写真上に無作為に引いた直線上にある粒子20個の板面径の平均値を、各粉体の平均板面径とした。同様の方法で平均厚み(粒子20個の厚みの平均値)を算出し、(平均板面径/平均厚み)によってアスペクト比を求めた。板面径、厚みが測定しにくい場合は、適宜倍率を上げて撮影したものを用いて測定した。実施例、比較例毎に撮影する粉体を換えてこの操作を10回繰り返し、求めたアスペクト比の平均値を算出した。結果を表3及び4に示す。また、実施例で得た粉体について、平均板面径と平均厚みを算出した際、同時に平均板面径と平均厚みの標準偏差(平均値との差の2乗を平均した値の平方根)とその変動係数(標準偏差を平均値で割った値)を算出した。結果を表3に示す。
【0109】
7、顔料pH
各粉体の顔料pHを、「JIS K5101−17−1:2004」の顔料試験方法に準拠した以下の方法により測定した。
栓付ガラス容器に蒸留水50gに試料5gを投入し、栓を外したまま、約5分間加熱して煮沸状態にした後、更に5分間煮沸した。煮沸後、栓をして常温まで放冷した後、栓を開き、減量に相当する蒸留水を加えて、再び栓をして1分間振り混ぜた後、5分間静置した。栓を取り外し、pH測定器にてpHを測定した。結果を表3及び4に示す。
【0110】
8、吸油量
JIS K5101−13−1(2004年)に準拠した以下の方法で、ミリスチン酸イソプロピルを用い、吸油量を測定した。
試料約0.5gを薬包紙に精秤し、ガラス板の中央10cmのスリガラス部分に試料を載せる。ミクロビュレットにミリスチン酸イソプロピル(「IPM」と称す)を入れ、0.2mLを試料に滴加し、金ベラで練る。その後、IPMを1〜2滴ずつ加え、滴加の都度、全体を金ベラで練る。全体が初めて硬いパテ状の塊になったときを終点とする。
吸油量は次式によって算出した。結果を表3(及び4)に示す。
吸油量(ml/100g)= {V(mL)÷ 試料重量(g)}× 100
【0111】
9、滑り性(MIU、MMD)
各試料の滑り性評価は次のような方法で行った。
スライドガラスに両面テープを貼り付け、粘着面に薬さじ半分程度の粉末(試料)を載せ、化粧用スポンジで粉末を展ばし、その上に摩擦子をセットした。スライドガラスを移動させて、摩擦子にかかる負荷から、平均摩擦係数MIUと平均摩擦係数の変動値MMDを測定した。測定は摩擦感テスター(カトーテック製、KES−SE)により行った。
比較対象として、板状硫酸バリウム・H(堺化学工業社製)、及び、市販のハイドロタルサイト類化合物であるSTABIACE・HT−1NC(堺化学工業社製)(参考例1)を用いた。
板状硫酸バリウム・Hの平均摩擦係数MIUは0.64、平均摩擦係数の変動値MMDは0.0103であり、STABIACE・HT−1NCの平均摩擦係数MIUは0.897、平均摩擦係数の変動値MMDは0.047であった。
なお、平均摩擦係数MIUは、数値が小さいほど粉体が滑ることを示す指標であり、摩擦係数の変動値MMDは、数値が小さいほど滑らかでざらつきが無いことを示す指標である。結果を表3(及び4)に示す。
【0112】
10、化粧料としての評価(官能評価)
(1)まず、実施例及び比較例で得たハイドロタルサイト20.00重量%、マイカ(製品名:Y−2300X、ヤマグチマイカ社製)24.83重量%、セリサイト(製品名:FSE、三信鉱工社製)29.79重量%、球状シリコーン(製品名:KSP-105、信越化学工業社製)6.44重量%、酸化チタン(製品名:R−3LD、堺化学工業社製)7.36重量%、酸化鉄(黄)(製品名:黄酸化鉄、ピノア社製)1.10重量%、酸化鉄(赤)(製品名:ベンガラ、ピノア社製)0.37重量%、金属石鹸(製品名:JPM−100、堺化学工業社製)0.92重量%、及び、オイル(製品名:KF96、信越化学工業社製)9.20重量%を、コーヒーミルを用いて1分30秒間撹拌混合した。
得られた粉体状の混合物を、直径20mmφの金型に0.8g測り採り、プレス機を用いて、200kgf/cmの圧力にて30秒間保持して、ハイドロタルサイト含有ファンデーションを作製した。
【0113】
(2)また、比較として、マイカ(製品名:Y−2300X、ヤマグチマイカ社製)31.03重量%、セリサイト(製品名:FSE、三信鉱工社製)37.24重量%、球状シリコーン(製品名:KSP-105、信越化学工業社製)8.05重量%、酸化チタン(製品名:R−3LD、堺化学工業社製)9.20重量%、酸化鉄(黄)(製品名:黄酸化鉄、ピノア社製)1.38重量%、酸化鉄(赤)(製品名:ベンガラ、ピノア社製)0.46重量%、金属石鹸(製品名:JPM−100、堺化学工業社製)1.15重量%、及び、オイル(製品名:KF96、信越化学工業社製)11.49重量%を、コーヒーミルを用いて1分30秒間撹拌混合した。
得られた粉体状の混合物を、直径20mmφの金型に0.8g測り採り、プレス機を用いて、200kgf/cmの圧力にて30秒間保持して、ハイドロタルサイト非含有ファンデーションを作製した。
【0114】
(3)上記(1)及び(2)それぞれで得たファンデーションを10人のパネラーに対して塗布し、化粧料に含めた際の肌への塗布感触について、以下に示す基準で選んでもらい評価した。なお、試験は盲検として行った。評価結果を表3及び表4に示す。
(塗布感触の評価基準)
◎:上記(1)のハイドロタルサイト含有ファンデーションを用いる方が、上記(2)のハイドロタルサイト非含有ファンデーションを用いるよりも塗布感触が良好である。
○: どちらも同じ塗布感触である。
×:上記(2)のハイドロタルサイト非含有ファンデーションを用いる方が、上記(1)のハイドロタルサイト含有ファンデーションを用いるよりも塗布感触が良好である。
【0115】
11、SEM画像
電界放出形走査電子顕微鏡(日本電子社製、JSM−7000F)にて粒子の形状を観察した。実施例11で得た粉体の電子顕微鏡写真を図2−1〜2−4に示す。
【0116】
12、水溶液中のリン化合物吸着率
リン酸水素カリウムを用いて、リン酸イオン濃度を50,25,5ppmにそれぞれ調整した溶液100gに対し、試料を1g添加して所定の時間撹拌した後、ろ過した溶液のリン酸イオン濃度を、イオンクロマトグラフ(Dionex社製、型番:ICS−2000)にて測定した。実施例11で得た粉体を用いた場合について経時で測定したリン酸イオン濃度を、図3−1、3−2及び3−3に示す。これらの図面では、比較のため、参考例1の粉末を用いた場合の経時でのリン酸イオン濃度を併記した。
以下の式により、a時間経過後のブランクに対するリン化合物吸着率を算出した。
リン化合物吸着率(%)=100×(a時間経過後のブランクのリン酸イオン濃度−a時間経過後の評価サンプル(試料)のリン酸イオン濃度)/(a時間経過後のブランクのリン酸イオン濃度)
なお、a時間経過後のブランクのリン酸イオン濃度は、リン酸水素カリウムを用いてリン酸イオン濃度を50,25,5ppmに調整した溶液100gに、評価サンプルを入れずに所定の時間撹拌し、a時間経過した後のろ過した溶液のリン酸イオン濃度である。1時間経過後,2時間経過後,4時間経過後のブランクのリン酸イオン濃度は、それぞれ50ppm,25ppm,5ppmとなり、初期値と同じ値であった。
【0117】
13、アンモニアガス吸着率
各試料粉末1.0gを、5Lのサンプリングバック(GLサイエンス社製)に入れ、ブランクとしてサンプルを入れていない5Lのサンプリングバックも用意した。アンモニアを100ppm含む窒素ガス3Lをサンプリングバック内に注入した後、直ちに密封し、20℃、湿度65%の条件下で1時間静置した。静置後、サンプリングバック内のガス100mLを吸引器で吸入し、アンモニアの濃度をガステック社製検知管(No.3La)で測定した。実施例11で得た粉体を用いた場合のアンモニア濃度の経時変化を、図4に示す。図4では、比較のため、比較例18及び参考例1で得た粉末を用いた場合のアンモニア濃度の経時変化を併記した。
以下の式により、ブランクに対するアンモニアガス吸着率を算出した。
アンモニアガス吸着率(%)=100×(ブランクのアンモニア濃度−評価サンプルのアンモニア濃度)/(ブランクのアンモニア濃度)
なお、ブランクのアンモニア濃度は、評価サンプルを入れずに、アンモニアを100ppm含む窒素ガス3Lのみを入れたサンプリングバックを密栓し、1時間静置した後に測定したアンモニア濃度である。ブランクのアンモニア濃度は100ppmであった。
【0118】
14、示差熱・熱重量測定
実施例11及び参考例1の粉末について、示差熱・熱重量測定(TG/DTA)を行った。具体的には、以下の条件により示差熱・熱重量測定(TG/DTA)を行った。測定結果を図5−1及び5−2に示す。
−測定条件−
測定機:日立ハイテクサイエンス社製、示差熱・熱重量測定装置(型番:TG/DTA6300)
昇温速度:10℃/分
測定温度範囲:30〜500℃
測定雰囲気:大気 200mL/分
リファレンス:Al
サンプル重量:10.0mg
試料容器:Al
【0119】
【表1】
【0120】
【表2-1】
【0121】
【表2-2】
【0122】
【表3-1】
【0123】
【表3-2】
【0124】
【表4-1】
【0125】
【表4-2】
【0126】
以上の実施例及び比較例より、以下のことを確認した。
実施例1〜14で得た粉体は、全て本発明の板状ハイドロタルサイト型粒子に該当し、参考例1にある市販のハイドロタルサイト粉末に対して滑り性(MIU、MMD)が著しく高かった。特に実施例11で得た粉体は、板状硫酸バリウム・H(堺化学工業社製、MIU=0.64、MMD=0.0103)とほぼ同等又はそれ以上の滑り性を示した。このことは、例えば、実施例11で得た粉体の電子顕微鏡写真(図2−1〜2−4)からも分かるように、得られた粉体が薄板状であり、かつ表面に細かいざらつきがない平滑な粒子であることに起因するものと推測できる。一方、比較例1〜18で得た粉体は、構造式、平均板面径、アスペクト比及び顔料pHのうち1以上が本発明で規定した範囲外となる点で、いずれも本発明の板状ハイドロタルサイト型粒子とは相違するが、このような比較例1〜18で得た粉体に対して、実施例1〜14で得た粉体は、化粧料に含めた際の肌への塗布感触がきわめて良好な結果となっている(表3、4参照)。
【0127】
また図3−1〜3−3及び図4より、本発明の板状ハイドロタルサイト型粒子は、アンモニアガス及びリン化合物の吸着能にも優れるものであることが分かった。例えば、実施例11で得た粉体を使用した場合、1時間後と22時間後でアンモニア濃度が変わらないため(図4参照)、1時間で吸着平衡に到達することが分かる。これに対し、比較例18で得た粉体はZn−Al型の粒状ハイドロタルサイトであり、その比表面積(SSA)は実施例11で得た粉体とほぼ同等であるものの、比較例18で得た粉体を使用した場合に比較して、実施例11で得た粉体を使用した場合はアンモニアガス吸着能が著しく高い(図4参照)。それゆえ、湿潤雰囲気で合成した本発明の板状ハイドロタルサイト型粒子(Zn−Al型)は、アンモニアガス吸着能が特異的に高いことが分かった。また、実施例11で得た粉体について、アンモニアガス吸着前後における粉体の色の変化は、目視では変化が見られなかった。更に、実施例11で得た粉体にアンモニアガスを22時間吸着させた粉を、ろ過・水洗・乾燥させ、再び同様のアンモニアガス吸着試験を行ったところ、初期と同様の吸着特性を示したことから、吸着後の再利用も可能であることが分かった。
【0128】
したがって、本発明の板状ハイドロタルサイト型粒子は、滑り性に優れ、皮膚への刺激性が充分に低減され、かつ化粧料に含めた際の肌への塗布感触が良好なものであるうえ、アンモニアガス及びリン化合物の吸着能に際立って優れることを確認した。
図1
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図2-4】
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図4
図5-1】
図5-2】