特許第6743822号(P6743822)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6743822
(24)【登録日】2020年8月3日
(45)【発行日】2020年8月19日
(54)【発明の名称】空気式防舷材用のエアー抜き取り治具
(51)【国際特許分類】
   E02B 3/26 20060101AFI20200806BHJP
【FI】
   E02B3/26 K
   E02B3/26 D
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-536467(P2017-536467)
(86)(22)【出願日】2016年8月24日
(86)【国際出願番号】JP2016074703
(87)【国際公開番号】WO2017033982
(87)【国際公開日】20170302
【審査請求日】2019年8月21日
(31)【優先権主張番号】特願2015-165511(P2015-165511)
(32)【優先日】2015年8月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】栗林 延全
【審査官】 高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−112198(JP,A)
【文献】 特開2000−88690(JP,A)
【文献】 特開2010−6235(JP,A)
【文献】 特開2003−127981(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性袋体と、前記弾性袋体に取着され強磁性体材料で形成された口金部とを有し、前記口金部は、空気注入用バルブが配置された底壁部と、前記底壁部の外周部から突設され前記弾性袋体の表面上に突出する環状壁部とを備え、前記底壁部と反対に位置する前記環状壁部の先部は環状端面とされた空気式防舷材のエアー抜き取り治具であって、
前記環状壁部の外周面に係脱可能に結合される筒部と、
前記筒部の軸方向の一端を閉塞する基板部と、
前記筒部の内周面の複数箇所または前記筒部の内側に位置する前記基板部の内面の複数箇所から突設された複数の支持部材と、
前記複数の支持部材の先部にそれぞれ取着され前記環状端面に吸着可能な複数の磁石と、
前記筒部の外周面または前記基板部の前記内面と反対に位置する前記基板部の外面に設けられバキュームホースが着脱可能に結合される結合部とを備え、
前記複数の磁石は、前記筒部を前記環状壁部の外周面に係脱可能に結合した状態を保持するに足る吸着力を有している、
ことを特徴とする空気式防舷材のエアー抜き取り治具。
【請求項2】
前記筒部の先部に前記環状壁部の周囲の前記弾性袋体の部分全周または前記環状壁部の外周面全周に接触するシール部材が設けられている、
ことを特徴とする請求項1記載の空気式防舷材のエアー抜き取り治具。
【請求項3】
前記底壁部に、前記空気式防舷材取り扱い用のフックが設けられ、
前記複数の支持部材は、前記フックの両側に位置している、
ことを特徴とする請求項1または2記載の空気式防舷材のエアー抜き取り治具。
【請求項4】
前記環状端面は、同一平面上に位置する平坦面で形成され、
前記磁石は、前記環状端面に吸着可能な平坦面を有している、
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項記載の空気式防舷材のエアー抜き取り治具。
【請求項5】
前記複数の支持部材は、前記筒部の内側に位置する前記基板部の内面の複数箇所から突設された複数の軸部材で構成されている、
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項記載の空気式防舷材のエアー抜き取り治具。
【請求項6】
前記結合部は、前記基板部の前記内面と反対に位置する前記基板部の外面に設けられている、
ことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項記載の空気式防舷材のエアー抜き取り治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気式防舷材用のエアー抜き取り治具に関する。
【背景技術】
【0002】
空気式防舷材は、弾性袋体と、弾性袋体に取着された口金部とを有し、口金部に空気注入用バルブが設けられている。
空気式防舷材は、その内部に空気注入用バルブを介してエアーが充填されることで一定の形状を保持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−21044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、空気式防舷材を保管あるいは搬送する際、空気式防舷材をコンパクトに折り畳むために、空気式防舷材からエアーを抜き取る必要がある。
一方、空気式防舷材の大きさが、直径が1mから2m、長さが1.5mから2mとなると、エアー抜き取り作業に際しては、1人の作業者が空気注入用バルブを開放しバキュームポンプに接続されたホースの先部を空気注入用バルブにあてがった状態を保持して防舷材内部の空気をバキュームポンプで抜き取りつつ、もう1人の作業者が防舷材を押しつぶすように圧迫することで空気の抜き取りを補助している。
そのため、2人の作業者が必要となり作業効率の向上を図る上で改善の余地がある。
本発明は前記事情に鑑み案出されたものであり、その目的は、エアーの抜き取り効率の向上を図る上で有利な空気式防舷材用のエアー抜き取り治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明は、弾性袋体と、前記弾性袋体に取着され強磁性体材料で形成された口金部とを有し、前記口金部は、空気注入用バルブが配置された底壁部と、前記底壁部の外周部から突設され前記弾性袋体の表面上に突出する環状壁部とを備え、前記底壁部と反対に位置する前記環状壁部の先部は環状端面とされた空気式防舷材のエアー抜き取り治具であって、前記環状壁部の外周面に係脱可能に結合される筒部と、前記筒部の軸方向の一端を閉塞する基板部と、前記筒部の内周面の複数箇所または前記筒部の内側に位置する前記基板部の内面の複数箇所から突設された複数の支持部材と、前記複数の支持部材の先部にそれぞれ取着され前記環状端面に吸着可能な複数の磁石と、前記筒部の外周面または前記基板部の前記内面と反対に位置する前記基板部の外面に設けられバキュームホースが着脱可能に結合される結合部とを備え、前記複数の磁石は、前記筒部を前記環状壁部の外周面に係脱可能に結合した状態を保持するに足る吸着力を有していることを特徴とする。
請求項2記載の発明は、前記筒部の先部に前記環状壁部の周囲の前記弾性袋体の部分全周または前記環状壁部の外周面全周に接触するシール部材が設けられていることを特徴とする。
請求項3記載の発明は、前記底壁部に、前記空気式防舷材取り扱い用のフックが設けられ、前記複数の支持部材は、前記フックの両側に位置していることを特徴とする。
請求項4記載の発明は、前記環状端面は、同一平面上に位置する平坦面で形成され、前記磁石は、前記環状端面に吸着可能な平坦面を有していることを特徴とする。
請求項5記載の発明は、前記複数の支持部材は、前記筒部の内側に位置する前記基板部の内面の複数箇所から突設された複数の軸部材で構成されていることを特徴とする。
請求項6記載の発明は、前記結合部は、前記基板部の前記内面と反対に位置する前記基板部の外面に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明によれば、磁石の吸着力により口金部に結合した状態が保持されるエアー抜き取り治具を設けたので、従来のバキュームホースを口金部にあてがった状態を保持する作業を不要とできる。したがって、1人の作業者により防舷材のエアー抜き取り作業を行なうことが可能となり、防舷材のエアー抜き取り作業の効率を格段に高める上で有利となる。
請求項2記載の発明によれば、シール部材を設けたので、エアー抜き取り治具を口金部に気密に結合する上で有利となり、防舷材のエアー抜き取り作業の効率を高める上で有利となる。
請求項3記載の発明によれば、空気式防舷材取り扱い用のフックが設けられている場合であっても、何ら支障なく防舷材のエアー抜き取りを行え、防舷材のエアー抜き取り作業の効率を高める上で有利となる。
請求項4記載の発明によれば、磁石が平坦な環状端面を吸着するので、エアー抜き取り治具の口金部への保持力を高める上で有利となり、防舷材のエアー抜き取り作業の効率を高める上で有利となる。
請求項5記載の発明によれば、支持部材の構成を簡単化する上で有利となる。
請求項6記載の発明によれば、結合部が弾性袋体からより離れるため、弾性袋体内部のエアーを抜き取る際、弾性袋体を押しつぶす作業を効率良く行なう上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施の形態における空気式防舷材の構成を示す断面図である。
図2】(A)は実施の形態における空気式防舷材の口金部とその周囲の断面図、(B)は(A)のB矢視図である。
図3】実施の形態に係るエアー抜き取り治具の斜視図である。
図4】(A)は実施の形態に係るエアー抜き取り治具の平面図、(B)は(A)のBB線断面図、(C)は(A)のC矢視図である。
図5】(A)実施の形態に係るエアー抜き取り治具が口金部に取り付けられた状態を示す断面図、(B)は(A)のB矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、本実施の形態の空気式防舷材用のエアー抜き取り治具(以下、単にエアー抜き取り治具という)について図面を参照して説明する。
まず、空気式防舷材について説明する。
図1に示すように、空気式防舷材10は、弾性袋体12と、口金部14とを備えている。
弾性袋体12は、円筒状の胴部12Aと、胴部12Aの両端に形成された鏡部12Bとを有し、それら胴部12Aと鏡部12Bは、内層ゴム、補強層、外層ゴムが積層されて構成されている。
図1図2(A)、(B)に示すように、鏡部12Bの中央には口金部14が設けられている。
【0009】
口金部14は、磁石に吸着される強磁性体材料で形成されている。
口金部14は、底壁部16と、環状壁部18と、取り付け壁部20とを有している。
底壁部16は、平坦面で円形に形成され、底壁部16の中心から変位した箇所に虫ゴムなどの逆止弁2202が配置されている。この逆止弁2202は空気注入用バルブ22の一部を構成しており、袋ナット2204によりバルブボディ2206に取着されている。この逆止弁2202を介して弾性袋体12内部へのエアーの充填が行われる。
環状壁部18は、底壁部16の外周部から突設され弾性袋体12の表面上に突出している。
底壁部16と反対に位置する環状壁部18の先部は環状端面1802とされている。
環状端面1802は、同一平面上に位置する平坦面1802Aで形成されている。
この環状端面1802に空気式防舷材取り扱い用のフック24が設けられている。
平面視した場合、図2(B)に示すように、フック24は、底壁部16の直径上に位置している。
取り付け壁部20は、底壁部16の外周部の半径方向外側に環状に設けられ、この取り付け壁部20は、弾性袋体12の内面に取着され、この取り付け壁部20を介して口金部14は、弾性袋体12に取り付けられている。
【0010】
実施の形態のエアー抜き取り治具26は、図3図4(A)、(B)、(C)に示すように、筒部28と、基板部30と、複数の支持部材32と、複数の磁石34と、結合部36と、シール部材38とを備えている。
筒部28と基板部30と複数の支持部材32と結合部36は、金属製または合成樹脂製である。
筒部28は、環状壁部18の外周面1804に係脱可能に結合される内周面2802を有している。
内周面2802は、環状壁部18の外周面1804に内周面2802が係脱可能に結合された状態でその内側にフック24を収容できる長さで形成されている。
この場合、筒部28の内周面2802は、環状壁部18の外周面1804に対して摺動しつつ軸方向に移動できる寸法で形成されている。
基板部30は、筒部28の軸方向の一端を閉塞している。
複数の支持部材32は、筒部28の内側に位置する基板部30の内面の複数箇所から筒部28の軸心に平行して突設された直線状の軸部材で構成されている。複数の支持部材32は、筒部28の内周面の複数箇所から突設してもよいが、この場合には、L字状に屈曲した形状となり、構造が複雑となるため、コストの削減化の観点からすると、複数の支持部材32は、基板部30の内面から突設させる方が有利となる。なお、軸部材はその断面が円形、矩形、多角形のロッドであってもよく、あるいは、L型などであってもよく、要するに磁石を保持できる形状であればよい。
複数の支持部材32は、図5(A)、(B)に示すように、フック24の両側に位置するように設けられ、本実施の形態では、フック24の両側にそれぞれ2本ずつ位置するように設けられている。
【0011】
磁石34は、複数の支持部材32の先部にそれぞれ接着剤を介して取着されている。
なお、磁石34の大きさおよび支持部材32の長さは、図5(A)に示すように、筒部28が環状壁部18の外周面1804に係脱可能に結合された状態で、複数の磁石34が環状端面1802を吸着するように設けられている。
磁石34は、環状端面1802に吸着可能な平坦面3402を有している。
複数の支持部材32の先部の磁石34の環状端面1802に対する吸着力は、筒部28を環状壁部18の外周面1804に結合した状態を保持するに足る大きさで設定されている。
結合部36は、図4(B)に示すように、内面と反対に位置する基板部30の外面の中央に設けられている。結合部36は、筒部28の外周面に設けてもよいが、実施の形態のように結合部36を基板部30の外面に配置すると、結合部36が弾性袋体12からより離れるため、弾性袋体12内部のエアーの抜き取る際、弾性袋体12を押しつぶす作業を効率良く行なう上で有利となる。
結合部36は、図5(A)に示すように、バキュームホース2が着脱可能に結合される箇所であり、本実施の形態では、内部が筒部28の内側に連通する中空状の雄ねじ部材3602で形成され、雄ねじ部材3602にはナット3604が一体に設けられている。雄ねじ部材3602の先部は、筒部28の内側に突出している。
この雄ねじ部材3602に開閉弁4が結合され、開閉弁4にバキュームホース2が接続される。
シール部材38は、筒部28の外周面の先部に設けられている。
シール部材38としてゴムなどの弾性材料が使用可能である。
シール部材38は、筒部28が環状壁部18の外周面1804に係脱可能に結合された状態で、環状壁部18の周囲の弾性袋体12の部分全周または環状壁部18の外周面1804全周に接触可能に設けられている。
【0012】
次に本実施の形態の使用方法について説明する。
まず、底壁部16から袋ナット2204を介して逆止弁2202を取り外す。逆止弁2202を取り外すと、図2(A)、図5(B)に示すように、底壁部16には、バルブボディ2206の逆止弁挿通用孔2210が露出する。
次に、図5(A)、(B)に示すように、フック24の両側に支持部材32が2本ずつ位置するように、筒部28を環状壁部18の外周面1804に係脱可能に結合する。
この状態で、シール部材38は、環状壁部18の周囲の弾性袋体12の部分全周または環状壁部18の外周面1804全周に接触する。
筒部28が環状壁部18の外周面1804に係脱可能に結合されると、フック24の両側において各支持部材32の先部の磁石34が環状端面1802を吸着する。
それら磁石34の吸着力によりエアー抜き取り治具26が口金部14に結合した状態が保持される。
そして、雄ねじ部材3602に開閉弁4を介してバキュームホース2を接続し、バキュームポンプの作動によりバキュームホース2、開閉弁4、雄ねじ部材3602、逆止弁挿通用孔2210を介して弾性袋体12内部のエアーを抜き取る。
エアーを抜き取ったならば、弾性袋体12を所望の形状に折り畳み、また、エアー抜き取り治具26を外し、逆止弁挿通用孔2210に袋ナット2204を介して逆止弁2202を取り付け、弾性袋体12のエアー抜き取り作業が終了する。
【0013】
本実施の形態によれば、磁石34の吸着力により口金部14に結合した状態が保持されるエアー抜き取り治具26を設けたので、従来のバキュームホース2を口金部14にあてがった状態を保持する作業を不要とでき、そのため、作業者は、空気式防舷材10を押しつぶし所望の形状に折り畳む作業を行えばよく、したがって、1人の作業者により空気式防舷材10のエアー抜き取り作業を行なうことが可能となり、空気式防舷材10のエアー抜き取り作業の効率を格段に高める上で有利となる。
【0014】
また、シール部材38を設けたので、エアー抜き取り治具26を口金部14に気密に結合する上で有利となり、空気式防舷材10のエアー抜き取り作業の効率を高める上で有利となる。
また、シール部材38によりエアー抜き取り治具26を口金部14に気密に結合できるので、筒部28の内周面2802の寸法精度を大まかにでき、エアー抜き取り治具26のコストダウンを図る上で有利となる。
【0015】
また、環状壁部18の外周面1804に筒部28を係脱可能に結合させる構造であるため、空気式防舷材10取り扱い用のフック24が設けられている場合であっても、何ら支障なく空気式防舷材10のエアー抜き取りを行え、空気式防舷材10のエアー抜き取り作業の効率を高める上で有利となる。
【0016】
また、磁石34は、平坦な環状端面1802を吸着するので、エアー抜き取り治具26の口金部14への保持力を高める上で有利となり、空気式防舷材10のエアー抜き取り作業の効率を高める上で有利となる。
【符号の説明】
【0017】
2 バキュームホース
4 開閉弁
10 空気式防舷材
12 弾性袋体
14 口金部
16 底壁部
18 環状壁部
1802 環状端面
1804 外周面
20 取り付け壁部
22 空気注入用バルブ
2202 逆止弁
2204 袋ナット
2206 バルブボディ
2210 逆止弁挿通用孔
24 フック
26 エアー抜き取り治具
28 筒部
2802 内周面
30 基板部
32 支持部材
34 磁石
36 結合部
38 シール部材
図1
図2
図3
図4
図5