(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記不釣合い量演算部が演算する不釣合い量が第1閾値を超えた場合に、その旨を報知する報知制御部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の遠心式流動場分画装置。
前記不釣合い量演算部が演算する不釣合い量が第2閾値を超えた場合に、前記回転部の回転を停止させる回転制御部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の遠心式流動場分画装置。
【発明を実施するための形態】
【0029】
1.分析システムの構成
図1は、本発明の第1実施形態に係る遠心式流動場分画装置1を備えた分析システムの構成例を示す概略図である。遠心式流動場分画装置1は、流動場分画法(Field Flow Fractionation)を用いて液体試料に含まれる粒子を比重に応じて分級する装置である。
図1の分析システムには、遠心式流動場分画装置1の他に、キャリア貯留部2、送液ポンプ3、ロータリーバルブ4、試料注入装置5、検出器6及びキャリア回収部7などが備えられている。
【0030】
キャリア貯留部2には、例えば水又は有機系溶媒などからなるキャリア流体が貯留されている。キャリア流体は、送液ポンプ3によりキャリア貯留部2内から送り出され、ロータリーバルブ4を介して遠心式流動場分画装置1に供給される。試料注入装置5は、ロータリーバルブ4と遠心式流動場分画装置1との間に設けられており、試料注入装置5から試料が注入されたキャリア流体が、液体試料として遠心式流動場分画装置1に供給されるようになっている。
【0031】
液体試料には、分析対象となる多数の粒子が含まれている。液体試料に含まれる粒子は、遠心式流動場分画装置1において遠心力が付与されることにより分級され、比重に応じて異なるタイミングで遠心式流動場分画装置1から流出する。遠心式流動場分画装置1から順次流出する粒子は、ロータリーバルブ4を介してキャリア流体とともに検出器6へと送られ、当該検出器6において検出された後、キャリア回収部7に回収される。遠心式流動場分画装置1に対する液体試料の供給の開始又は停止は、ロータリーバルブ4を回転させることにより切り替えることができる。
【0032】
2.遠心式流動場分画装置の構成
図2は、遠心式流動場分画装置1の構成例を示す概略正面図である。遠心式流動場分画装置1は、回転軸11を中心に回転する回転部10と、回転軸11を回転可能に保持する保持台20と、回転する回転部10に作業者が接触するのを防止するための保護壁23とが組み立てられることにより構成されている。
【0033】
回転部10は、例えば円筒形状に形成されており、その中心部に取り付けられた回転軸11が水平方向に延びるように保持台20により保持されている。保持台20には、それぞれ鉛直方向に延びる1対の保持板21が、互いに間隔を隔てて平行に設けられている。回転部10は、1対の保持板21の間に配置され、当該保持板21により回転軸11が回転可能に保持される。保持板21には、固定部25が固定され、当該固定部25によって回転軸11の端面が覆われる。保護壁23は、例えば回転部10の外周面に対応する形状に湾曲したU字状の部材であり、回転部10の外周面を覆うように、当該外周面に対して微小な間隔を隔てて対向した状態で保持台20に取り付けられている。
【0034】
回転軸11は中空状に形成されており、液体試料は、例えば回転軸11の一端部から回転軸11内に供給される。回転部10には、分級前の液体試料が導入される導入部12と、分級後の液体試料が導出される導出部13とが設けられている。導入部12及び導出部13は、それぞれ配管(図示せず)を介して回転軸11内に連通している。これにより、回転軸11内に供給された液体試料は、配管を介して導入部12から回転部10に導入され、当該回転部10において試料液体中の粒子が分級された後、導出部13から配管を介して回転軸11に導かれ、検出器6へと送られるようになっている。
【0035】
回転軸11には、回転駆動部の一例であるモータ24が連結されている。このモータ24の駆動により回転部10を回転させて、回転部10内の液体試料に遠心力を付与することができる。モータ24の駆動は、例えばCPU(Central Processing Unit)を含む制御部30によって制御される。ただし、回転部10は、モータ24以外の回転駆動部を用いて回転させることも可能である。
【0036】
3.回転部の構成
図3は、回転部10の構成例を示す分解斜視図である。回転部10は、例えばロータ14、スペーサ15、流路部材16、固定部材17及び楔状部材18などが組み立てられることにより、全体として円筒状の部材として構成されている。
【0037】
ロータ14は、円環状の部材であり、一方の端面が端面壁141により塞がれている。端面壁141は円板状に形成され、その中央部に回転軸11を挿通させるための挿通孔142が形成されている。回転軸11を挿通孔142に挿通させて端面壁141に固定することにより、回転軸11の回転に伴って、当該回転軸11と同軸上の回転軸線Lを中心にロータ14を回転させることができる。
【0038】
ロータ14の内側(回転軸線L側)の空間には、スペーサ15、流路部材16、固定部材17及び楔状部材18が収容される。スペーサ15、流路部材16及び固定部材17は、それぞれ長尺形状の部材が円弧状に湾曲された形状を有しており、ロータ14の内周面に沿って、この順序で積層された状態で固定される。スペーサ15、流路部材16及び固定部材17の曲率半径は、例えば50〜200mm程度である。
【0039】
流路部材16は、例えば厚みが1mm以下の薄板状であり、周方向の両端部が間隔を隔てて対向することによりC字状に形成されている。流路部材16の内部には、周方向に延びる流路161が形成されている。すなわち、流路部材16は、ロータ14側に形成された円弧状の外周面162と、回転軸線L側に形成された円弧状の内周面163とを有しており、外周面162と内周面163との間に流路161が形成されている。
【0040】
流路部材16の内周面163における周方向の一端部には、流路161への液体試料の流入口164が形成されている。一方、流路部材16の内周面163における周方向の他端部には、流路161からの液体試料の流出口165が形成されている。これにより、流入口164から流路161内に流入した液体試料は、流路161内を一端部から他端部まで周方向に沿って流通し、流出口165から流出するようになっている。
【0041】
液体試料中の粒子を分級する際には、まず、モータ24の駆動によって回転部10が回転し、回転部10の回転数が徐々に上昇する。そして、回転部10の回転数が一定の値(例えば5000rpm)に到達すれば、その回転数が維持された状態で流入口164から液体試料が注入される。
【0042】
流路161内に液体試料が一定時間だけ注入された後、ロータリーバルブ4の切替によって液体試料の供給が停止され、そのまま回転部10が回転されることにより、流路161内の液体試料中の粒子が遠心沈降する。その後、ロータリーバルブ4の切替によって液体試料の供給が再開され、一定時間後に回転部10の回転数が徐々に下降される。
【0043】
これにより、液体試料中の比重が小さい粒子から順に、流路161内の液体試料の流れに乗って下流側へと送られ、流出口165から順次流出する。このように、流路161内における液体試料中の粒子が遠心力によって分級され、比重に応じて異なるタイミングで流出口165から流出して検出器6へと送られるようになっている。
【0044】
固定部材17は、流路部材16よりも厚みが大きい部材であり、例えば厚みが10mm程度に形成されている。固定部材17は、流路部材16と同様に、周方向の両端部が間隔を隔てて対向することによりC字状に形成されている。固定部材17の周方向の長さは、流路部材16の周方向の長さとほぼ一致している。固定部材17は、流路部材16の内側(回転軸線L側)に、流路部材16の内周面163に沿って設けられる。
【0045】
固定部材17における周方向の両端部には、係止具の一例であるボルト19をねじ込むための複数のねじ孔171が形成されている。流路部材16における周方向の両端部には、固定部材17の各ねじ孔171に対向する位置に複数の挿通孔166が形成されている。これにより、各挿通孔166に外側からボルト19を挿通させ、各ねじ孔171にねじ込むことによって、流路部材16を固定部材17に取り付けることができる。ただし、係止具は、ボルト19に限らず、ピンなどの他の部材により構成されていてもよい。
【0046】
また、固定部材17における周方向の両端部には、流路部材16の内周面163に形成された流入口164及び流出口165に対向する位置に、それぞれ貫通孔172が形成されている。固定部材17の内周面には、各貫通孔172に連通するように導入部12及び導出部13が取り付けられている。これにより、導入部12から導入された液体試料は、一方の貫通孔172を介して流入口164から流路161内に流入し、流路161内を周方向に流通した後、流出口165から他方の貫通孔172及び導出部13を介して導出される。
【0047】
流路部材16内の流路161は、キャリア流体の種類や分析の条件などに応じて異なる高さに設定される。そのため、流路部材16は、流路161の高さに応じて異なる厚みに形成され、複数種類の流路部材16の中から最適な流路部材16が選択されて固定部材17に取り付けられることとなる。
【0048】
上記のようにして流路部材16が取り付けられた固定部材17は、ロータ14の内側の空間に挿入され、ロータ14との間に流路部材16を挟み込むようにしてロータ14の内周面に沿って固定される。このとき、C字状の固定部材17の両端部間に楔状部材18が取り付けられることにより、当該両端部を拡げる方向に力が加えられる。
【0049】
これにより、C字状の固定部材17がロータ14の内周面側に強く押し当てられ、流路部材16がロータ14側に押圧されて固定される。液体試料中の粒子を分級させる際には、ロータ14が高速で回転されることにより、流路161内が高圧(例えば1MPa程度)となり、流路161の内外の圧力差が大きくなるが、固定部材17とロータ14との間に流路部材16を挟持することにより、流路部材16の外周面162及び内周面163が上記圧力差で流路161側とは反対側に変形するのを防止することができる。
【0050】
本実施形態では、流路部材16とロータ14との間にスペーサ15が挟持されるようになっている。スペーサ15の材質は、特に限定されるものではないが、例えばPET(Polyethylene Terephthalate)などの樹脂又は金属により形成されている。スペーサ15は、流路部材16よりも若干長く形成されており、その周方向の両端部には、流路部材16の各挿通孔166に対向する位置に長孔151が形成されている。
【0051】
流路部材16の各挿通孔166に挿通されたボルト19の頭部は、スペーサ15の各長孔151内に収容される。各長孔151は、周方向に延びるように形成されている。これにより、各長孔151内に各ボルト19の頭部を収容させた状態で、楔状部材18により固定部材17の両端部が拡げられて、固定部材17がロータ14の内周面側に強く押し当てられた場合には、各長孔151内で各ボルト19の頭部が周方向にスライドしながら、固定部材17とロータ14との間にスペーサ15及び流路部材16が挟持されることとなる。
【0052】
スペーサ15は、例えば厚みが1mm以下の薄板状であり、流路部材16の厚みに応じて異なる厚みのものが選択される。すなわち、スペーサ15の厚みと流路部材16の厚みとの合計値がほぼ一定となるように、最適な厚みを有するスペーサ15が選択される。また、スペーサ15は、ロータ14の内周面の損傷を防止する機能も有している。ただし、スペーサ15は省略することも可能である。
【0053】
4.回転センサ、振動センサ及びロータの構成
図4は、遠心式流動場分画装置1の構成例を示す側断面図である。なお、
図4では、スペーサ15、固定部材17及び保護壁23を省略して示している。
遠心式流動場分画装置1は、回転センサ41と、第1振動センサ51と、第2振動センサ52とを備えている。ただし、回転センサ41は、1つに限らず、少なくとも1つ備えられていればよい。また、振動センサ51,52は、2つに限らず、少なくとも2つ備えられていればよい。
【0054】
回転センサ41は、保持板21に設けられている。具体的には、回転センサ41は、1対の保持板21のうち、ロータ14の内側の空間に対向する保持板21に設けられている。回転センサ41は、ロータ14における回転軸線L方向の端面に対向している。回転センサ41は、例えば光学センサであって、ロータ14(回転部10)の回転数を検出している。具体的には、ロータ14の端面の所定位置には、図示しない反射シールが貼付されている。そして、回転センサ41は、その反射シールに照射された光の反射光を検出することにより、ロータ14の回転数を検出している。
【0055】
第1振動センサ51は、1対の固定部25のうちの一方の固定部25上に設けられている。具体的には、第1振動センサ51は、1対の固定部25のうち、ロータ14の端面壁141に対向する固定部25上に設けられている。
【0056】
第2振動センサ52は、1対の固定部25のうちの他方の固定部25上に設けられている。具体的には、第2振動センサ52は、1対の固定部25のうち、ロータ14の内側の空間に対向する固定部25上に設けられている。すなわち、回転軸線L方向において、回転部10は、第1振動センサ51と第2振動センサ52との間に配置されている。
【0057】
第1振動センサ51及び第2振動センサ52は、例えば加速度センサ、速度センサ、又は、変位センサであって、固定部25の振動に伴う加速度、速度、又は、変位を検出することにより、固定部25の振動を検出している。また、固定部25は、回転軸11を回転可能に保持しており、回転軸11には回転部10が取り付けられている。そして、回転部10、回転軸11及び固定部25はともに振動する。すなわち、第1振動センサ51及び第2振動センサ52は、固定部25の振動を検出することにより、回転部10の振動を検出している。
【0058】
また、遠心式流動場分画装置1では、回転軸線L方向におけるロータ14の一方側端面14Aに、複数の第1穴143が周方向に沿って互いに間隔を隔てて形成されており、回転軸線L方向におけるロータ14の他方側端面14Bに、複数の第2穴144が周方向に沿って互いに間隔を隔てて形成されている。そして、各第1穴143には、第1試しオモリ91又は第1修正オモリ92を取り付けることが可能であり、各第2穴144には、第2試しオモリ93又は第2修正オモリ94を取り付けることが可能である。各第1穴143及び各第2穴144は、例えばねじ穴であり、第1試しオモリ91、第1修正オモリ92、第2試しオモリ93及び第2修正オモリ94は、例えば重さが分かっているねじである。ただし、第1試しオモリ91、第1修正オモリ92、第2試しオモリ93及び第2修正オモリ94は、ロータ14に取り付けられるような構成に限らず、例えば固定部材17などの回転部10を構成する他の部材に取り付けられてもよい。また、第1試しオモリ91、第1修正オモリ92、第2試しオモリ93及び第2修正オモリ94は、回転部10に取り付けることができるような構成であれば、ねじに限らず、ピンなどの他の部材により構成されていてもよい。
【0059】
遠心式流動場分画装置1では、通常の運転中において、回転センサ41が検出する回転部11の回転数が設定値に保たれるように、モータ24が制御されている。また、第1振動センサ51又は第2振動センサ52が検出する回転部11の振動が一定以上になると、モータ24が停止される。
【0060】
そして、後述するように、遠心式流動場分画装置1では、この回転センサ41、第1振動センサ51及び第2振動センサ52を用いて、回転部10の不釣合い量を算出する。回転部10の不釣合い量を算出する際には、各第1穴143に第1試しオモリ91が取り付けられ、各第2穴144に第2試しオモリ93が取り付けられる。回転部10の不釣合いを修正する際には、各第1穴143に第1修正オモリ92が取り付けられ、各第2穴144に第2修正オモリ94が取り付けられる。
【0061】
5.遠心式流動場分画装置の制御部の周辺の具体的構成
図5は、遠心式流動場分画装置1の制御部30の周辺の具体的構成を示すブロック図である。
【0062】
遠心式流動場分画装置1は、第1検出部40と、第2検出部50と、表示部60と、操作部70と、記憶部80と、上記した制御部30と、上記したモータ24とを備えている。
第1検出部40は、上記した回転センサ41により構成されている。
第2検出部50は、上記した第1振動センサ51及び第2振動センサ52により構成されている。
表示部60は、例えば液晶表示器などにより構成されている。
操作部70は、例えばキーボード及びマウスを含む構成である。
【0063】
記憶部80は、例えばROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びハードディスクなどにより構成されている。記憶部80は、影響係数行列Kを記憶している。
影響係数行列Kは、後述するように、遠心式流動場分画装置1についての装置関数を表わす行列であって、制御部30によって算出される。
【0064】
制御部30は、例えばCPU(Central Processing Unit)を含む構成である。制御部30は、モータ24、第1検出部40、第2検出部50、表示部60及び操作部70との間で、電気信号の入力又は出力が可能である。制御部30は、必要に応じて記憶部80に対するデータの入出力を行う。制御部30は、CPUがプログラムを実行することにより、例えば演算部31、表示制御部32及び回転制御部33として機能する。
演算部31は、影響係数行列演算部311及び不釣合い量演算部312として機能する。
【0065】
影響係数行列演算部311は、第1検出部40(回転センサ41)の検出信号、及び、第2検出部50(第1振動センサ51及び第2振動センサ52)の検出信号に基づいて、影響係数行列Kを算出する。また、影響係数行列演算部311は、算出した影響係数行列Kを記憶部80に格納する。
【0066】
不釣合い量演算部312には、第1検出部40(回転センサ41)の検出信号、及び、第2検出部50(第1振動センサ51及び第2振動センサ52)の検出信号が入力される。また、不釣合い量演算部312は、記憶部80から影響係数行列Kを読み出す。そして、不釣合い量演算部312は、入力された検出信号、及び、読み出した影響係数行列Kに基づいて、回転部10の不釣合い量を演算する。
【0067】
表示制御部32は、表示部60の表示を制御しており、不釣合い量の演算時には、不釣合い量演算部312が演算した回転部10の不釣合い量に基づいて、表示部60の表示を制御する。また、表示制御部32は、報知制御部321としても機能する。報知制御部321は、不釣合い量演算部312が演算した回転部10の不釣合い量が所定量以上である場合に、表示部60を制御してユーザに対する報知を行う。
回転制御部33は、第1検出部40(回転センサ41)の検出信号に基づいてモータ24を制御しており、不釣合い量の演算時には、不釣合い量演算部312が演算した回転部10の不釣合い量に基づいて、モータ24を制御する。
【0068】
6.不釣合い量の修正動作
図6は、遠心式流動場分画装置における処理の一例であって、不釣合い量を修正する際の処理の一例を示すフローチャートである。
【0069】
通常、遠心式流動場分画装置1は、使用する前、すなわち、工場から出荷される際に、回転部10の不釣合いが修正されている。そのため、遠心式流動場分画装置1では、振動や騒音が生じることなく、回転部1が円滑に回転される。
【0070】
一方、この状態から、遠心式流動場分画装置1において、例えば流路部材16(
図4参照)が交換されると、回転部10に不釣合いが発生してしまう。そして、回転部10に不釣合いが発生した状態のまま、回転部10を回転させると、振動や騒音が生じてしまう。
【0071】
そのため、遠心式流動場分画装置1では、流路部材16を交換した場合などのように、回転部10に不釣合いが発生する作業が行われた場合には、以下のようにして、その不釣合いが修正される。
具体的には、制御部30(
図5参照)において、下記式(1)を用いて回転部10の不釣合い量(動不釣合い量)が演算される。動不釣合いとは、静不釣合いと偶不釣合いとが組み合わせられた不釣合いである。静不釣合いとは、例えば、回転軸線Lに対して平行に重心がずれることにより発生する不釣合いを意味している。偶不釣合いとは、例えば、重心は回転軸線L上にあるが、質量中心軸が回転軸線Lに対して傾斜することにより発生する不釣合いを意味している。
【0073】
ここで、上記ベクトルFは、回転部10に第1試しオモリ91、第1修正オモリ92、第2試しオモリ93及び第2修正オモリ94が取り付けられていない状態で(回転部10が初期状態のときに)、回転部10を回転させた際に発生する初期振動ベクトルであって、回転センサ41の検出信号、及び、第1振動センサ51又は第2振動センサ52の検出信号に基づいて計測されるベクトルである。具体的には、上記ベクトルFは、回転センサ41の検出信号から得られる位相、及び、第1振動センサ51又は第2振動センサ52の検出信号から得られる振幅に基づいて計測されるベクトルである。
【0074】
上記Kは、回転部10の影響係数行列である。
上記ベクトルa
1は、回転部10の不釣合いを修正する際に、回転部10に取り付ける第1試しオモリ91(
図4参照)の重さ及び位置に基づいて計測されるベクトルである。
上記ベクトルa
2は、回転部10の不釣合いを修正する際に、回転部10に取り付ける第2試しオモリ93の重さ及び位置に基づいて計測されるベクトルである。
なお、「位置」とは、回転軸線Lを中心とする角度位置を意味している(以下同様)。
【0075】
上記ベクトルU
1は、回転部10に第1試しオモリ91を取り付けた後に、回転部10を回転させた際に発生する振動ベクトルであって、回転センサ41の検出信号、及び、第1振動センサ51又は第2振動センサ52の検出信号に基づいて計測されるベクトルである。具体的には、上記ベクトルU
1は、回転センサ41の検出信号から得られる位相、及び、第1振動センサ51又は第2振動センサ52の検出信号から得られる振幅に基づいて計測されるベクトルである。
【0076】
上記ベクトルU
2は、回転部10に第2試しオモリ93を取り付けた後に、回転部10を回転させた際に発生する振動ベクトルであって、回転センサ41の検出信号、及び、第1振動センサ51又は第2振動センサ52の検出信号に基づいて計測されるベクトルである。具体的には、上記ベクトルU
2は、回転センサ41の検出信号から得られる位相、及び、第1振動センサ51又は第2振動センサ52の検出信号から得られる振幅に基づいて計測されるベクトルである。
【0077】
まず、回転部10に不釣合いが発生した状態(初期状態)のまま、回転部10が回転される。そして、回転部10の回転数が一定の値に到達すると、影響係数行列演算部311は、回転センサ41からの検出信号、第1振動センサ51からの検出信号、及び、第2振動センサ52からの検出信号に基づいて、初期振動ベクトルであるベクトルFを計測する(ステップS101)。そして、回転部10が停止される。
【0078】
具体的には、影響係数行列演算部311は、回転センサ41からの検出信号、及び、第1振動センサ51からの検出信号に基づいて、ベクトルF
Aを計測する。また、影響係数行列演算部311は、回転センサ41からの検出信号、及び、第2振動センサ52からの検出信号に基づいて、ベクトルF
Bを計測する。すなわち、影響係数行列演算部311は、初期振動ベクトルとして、ベクトルF
A及びベクトルF
Bを計測する。ベクトルF
Aは、第1振動センサ51の検出信号から算出される振幅、及び、その振幅が表れる位置として回転センサ41の検出信号から算出される位相からなる行列である。ベクトルF
Bは、第2振動センサ52の検出信号から算出される振幅、及び、その振幅が表れる位置として回転センサ41の検出信号から算出される位相からなる行列である。
【0079】
その後、ユーザは、
図4に示すように、ロータ14の一方側端面14Aの複数の第1穴143のうち、所定の第1穴143に第1試しオモリ91を取り付ける(ステップS102)。そして、ユーザは、表示部60において、第1試しオモリ91の重さ及び位置を入力する。このとき入力された第1試しオモリ91の重さ及び位置の情報からなる行列が、ベクトルa
1となる。
【0080】
この状態で、回転部10が回転される。そして、回転部10の回転数が一定の値に到達すると、影響係数行列演算部311は、回転センサ41からの検出信号、第1振動センサ51からの検出信号、及び、第2振動センサ52からの検出信号に基づいて、振動ベクトルであるベクトルU
1を計測する(ステップS103)。そして、回転部10が停止される。
【0081】
具体的には、影響係数行列演算部311は、回転センサ41からの検出信号、及び、第1振動センサ51からの検出信号に基づいて、ベクトルU
1Aを計測する。また、影響係数行列演算部311は、回転センサ41からの検出信号、及び、第2振動センサ52からの検出信号に基づいて、ベクトルU
1Bを計測する。すなわち、影響係数行列演算部311は、第1試しオモリ91をローラ41に取り付けた状態の振動ベクトルとして、ベクトルU
1A及びベクトルU
1Bを計測する。ベクトルU
1Aは、第1振動センサ51の検出信号から算出される振幅、及び、その振幅が表れる位置として回転センサ41の検出信号から算出される位相からなる行列である。ベクトルU
1Bは、第2振動センサ52の検出信号から算出される振幅、及び、その振幅が表れる位置として回転センサ41の検出信号から算出される位相からなる行列である。
【0082】
そして、ユーザは、ロータ14から第1試しオモリを取り外し、さらに、ロータ14の他方側端面14Bの複数の第2穴144のうち、所定の第2穴144に第2試しオモリ93を取り付ける(ステップS104)。そして、ユーザは、表示部60において、第2試しオモリ93の重さ及び位置を入力する。このとき入力された第2試しオモリ93の重さ及び位置の情報からなる行列が、ベクトルa
2となる。
【0083】
この状態で、回転部10が回転される。そして、回転部10の回転数が一定の値に到達すると、影響係数行列演算部311は、回転センサ41からの検出信号、第1振動センサ51からの検出信号、及び、第2振動センサ52からの検出信号に基づいて、振動ベクトルであるベクトルU
2を計測する(ステップS105)。そして、回転部10が停止される。
【0084】
具体的には、影響係数行列演算部311は、回転センサ41からの検出信号、及び、第1振動センサ51からの検出信号に基づいて、ベクトルU
2Aを計測する。また、影響係数行列演算部311は、回転センサ41からの検出信号、及び、第2振動センサ52からの検出信号に基づいて、ベクトルU
2Bを計測する。すなわち、影響係数行列演算部311は、第2試しオモリ93をローラ41に取り付けた状態の振動ベクトルとして、ベクトルU
2A及びベクトルU
2Bを計測する。ベクトルU
2Aは、第1振動センサ51の検出信号から算出される振幅、及び、その振幅が表れる位置として回転センサ41の検出信号から算出される位相からなる行列である。ベクトルU
2Bは、第2振動センサ52の検出信号から算出される振幅、及び、その振幅が表れる位置として回転センサ41の検出信号から算出される位相からなる行列である。
そして、影響係数行列演算部311は、式(1)、及び、計測した上記ベクトルから、下記式(2)及び(3)を得る。
【0087】
影響係数行列演算部311は、式(2)及び(3)から、影響係数行列Kを演算により算出する(ステップS106)。そして、影響係数行列演算部311は、演算した影響係数行列Kを記憶部80に格納する。
【0088】
次いで、不釣合い量演算部312は、記憶部80から影響係数行列Kを読み出す。そして、不釣合い量演算部312は、式(1)、計測した上記ベクトル(初期振動ベクトル)、及び、影響係数行列Kに基づいて、下記式(4)及び(5)を用いた演算を行う。
【0091】
なお、式(4)及び(5)は、式(1)において、ベクトルa
1をベクトルX
1に置き換え、ベクトルa
2をベクトルX
2に置き換え、ベクトルU
1を0に置き換え、ベクトルU
2を0に置き換えている。すなわち、式(4)及び(5)は、初期振動ベクトルであるベクトルF
A及びベクトルF
Bが得られる回転部10に対して、ベクトルX
1及びベクトルX
2で表される位置及び量(重さ)でオモリを取り付けると、振動ベクトルが0になる(不釣合いが修正される)ことを示したものである。
【0092】
そして、不釣合い量演算部312は、式(4)及び(5)から、動不釣合い量(不釣合い量)としてベクトルX
1及びベクトルX
2を、演算(行列演算)により算出する(ステップS107)。
【0093】
また、表示制御部32は、不釣合い量演算部312が算出した動不釣合い量に基づいて、不釣合いの修正情報を表示部60に表示させる(ステップS108)。表示部60には、例えば複数の第1穴143から選択された所定の第1穴143の位置及び第1修正オモリ92の重さ、並びに、複数の第2穴144から選択された所定の第2穴144の位置及び第2修正オモリ94の重さなどが修正情報として表示される。この場合、不釣合いを修正するのに最適な位置の第1穴143、及び、最適な第1修正オモリ92の重さがある場合には、その第1穴143の位置及び第1修正オモリ92の重さが表示される。また、不釣合いを修正するのに最適な位置の第1穴143、及び、最適な第1修正オモリ92の重さがない場合には、不釣合いを修正するのに最適な組み合わせとなる2以上の第1穴143の位置、及び、これらに対応する第1修正オモリ92の重さが表示される。同様に、不釣合いを修正するのに最適な位置の第2穴144、及び、最適な第2修正オモリ94の重さがある場合には、その第2穴144の位置及び第2修正オモリ94の重さが表示される。また、不釣合いを修正するのに最適な位置の第2穴144、及び、最適な第2修正オモリ94の重さがない場合には、不釣合いを修正するのに最適な組み合わせとなる2以上の第2穴144の位置、及び、これらに対応する第2修正オモリ94の重さが表示される。
【0094】
ユーザは、表示部60の表示に従って、指定された第1穴143に第1修正オモリ92を取り付け、同様に、指定された第2穴144に第2修正オモリ94を取り付ける。そして、ユーザは、操作部70を操作して、修正完了の情報を入力する(ステップS109でYES)。
【0095】
次いで、回転部10が回転される。そして、回転部10の回転数が一定の値に到達すると、不釣合い量演算部312は、回転センサ41からの検出信号、第1振動センサ51からの検出信号、及び、第2振動センサ52からの検出信号に基づいて、不釣合い修正後の初期振動ベクトルであるベクトルFを計測(再計測)する(ステップS110)。
【0096】
具体的には、不釣合い量演算部312は、回転センサ41からの検出信号、及び、第1振動センサ51からの検出信号に基づいて、ベクトルF
Cを計測する。また、不釣合い量演算部312は、回転センサ41からの検出信号、及び、第2振動センサ52からの検出信号に基づいて、ベクトルF
Dを計測する。すなわち、不釣合い量演算部312は、初期振動ベクトルとして、ベクトルF
C及びベクトルF
Dを計測する。ベクトルF
Cは、第1振動センサ51の検出信号から算出される振幅、及び、その振幅が表れる位置として回転センサ41の検出信号から算出される位相からなる行列である。ベクトルF
Dは、第2振動センサ52の検出信号から算出される振幅、及び、その振幅が表れる位置として回転センサ41の検出信号から算出される位相からなる行列である。
【0097】
さらに、不釣合い量演算部312は、記憶部80から影響係数行列Kを読み出す。そして、不釣合い量演算部312は、上記と同様にして、式(1)、計測した上記初期振動ベクトル、及び、影響係数行列Kに基づいて、下記式(6)及び(7)を用いた演算を行う。
【0100】
そして、不釣合い量演算部312は、式(6)及び(7)から、動不釣合い量としてベクトルX
3及びベクトルX
4を、演算(行列演算)により算出する(ステップS111)。
【0101】
不釣合い量演算部312が算出した動不釣合い量(重さ)が、予め設定される第1閾値よりも大きい場合には(ステップS112でNO)、表示制御部32によって、不釣合い量演算部312が算出した動不釣合い量に基づいて、不釣合いの修正情報が表示部60に表示される(ステップS108)。そして、上記ステップS109以降の動作が繰り返される。
【0102】
一方、不釣合い量演算部312が算出した動不釣合い量が、予め設定される第1閾値以下であれば、不釣合いの修正動作が完了する(ステップS112でYES)。
【0103】
7.制御部による定期的な不釣合い量の演算
図7は、遠心式流動場分画装置における処理の一例であって、制御部が定期的に行う処理の一例を示すフローチャートである。
遠心式流動場分画装置1は、継続的に使用された結果、各部材の劣化などにより、回転部10に不釣合いが発生する場合がある。
そのため、遠心式流動場分画装置1では、定期的に不釣合い量が演算される。
【0104】
図5に示すように、不釣合い量演算部312は、例えば予め設定された期間が経過するたびに、回転センサ41からの検出信号、第1振動センサ51からの検出信号、及び、第2振動センサ52からの検出信号に基づいて、初期振動ベクトルであるベクトルFを計測する(ステップS201)。
【0105】
具体的には、不釣合い量演算部312は、回転センサ41からの検出信号、及び、第1振動センサ51からの検出信号に基づいて、ベクトルF
Eを計測する。また、不釣合い量演算部312は、回転センサ41からの検出信号、及び、第2振動センサ52からの検出信号に基づいて、ベクトルF
Fを計測する。すなわち、不釣合い量演算部312は、初期振動ベクトルとして、ベクトルF
E及びベクトルF
Fを計測する。ベクトルF
Eは、第1振動センサ51の検出信号から算出される振幅、及び、その振幅が表れる位置として回転センサ41の検出信号から算出される位相からなる行列である。ベクトルF
Fは、第2振動センサ52の検出信号から算出される振幅、及び、その振幅が表れる位置として回転センサ41の検出信号から算出される位相からなる行列である。
【0106】
さらに、不釣合い量演算部312は、記憶部80から影響係数行列Kを読み出す。そして、不釣合い量演算部312は、上記と同様にして、式(1)、計測した上記初期振動ベクトル、及び、影響係数行列Kに基づいて、下記式(8)及び(9)を用いた演算を行う。
【0109】
そして、不釣合い量演算部312は、式(8)及び(9)から、動不釣合い量としてベクトルX
5及びベクトルX
6を、演算(行列演算)により算出する(ステップS202)。
【0110】
不釣合い量演算部312が算出した動不釣合い量(重さ)が、予め設定される第1閾値よりも大きい場合には(ステップS203でNO)、さらに、その動不釣合い量が、予め定める第2閾値よりも大きいか否かが判別される。
【0111】
不釣合い量演算部312が算出した動不釣合い量が、第1閾値よりも大きく、第2閾値以下である場合には(ステップS204でYES)、報知制御部321によって、その旨が表示部60に表示されて報知される(ステップS205)。例えば表示制御部32によって、表示部60にエラー情報が表示されることにより、ユーザに対して、回転部10に不釣合いが発生していることが報知される。
【0112】
また、不釣合い量演算部312が算出した動不釣合い量が、第2閾値よりも大きい場合には(ステップS204でNO)、回転制御部33によってモータ24が停止されて、回転部10の回転が停止される(ステップS206)。
【0113】
一方、不釣合い量演算部312が算出した動不釣合い量が、予め設定される第1閾値以下であれば(ステップS203でYES)、遠心式流動場分画装置1における通常動作が継続される。そして、再度、設定された期間が経過すると、上記動作が再度行われる。
【0114】
8.作用効果
(1)本実施形態では、回転部10に不釣合いが生じた場合に、
図5に示すように、不釣合い量演算部312によって、回転センサ41の検出信号、第1振動センサ51の検出信号、及び、第2振動センサ52の検出信号に基づいて、その不釣合い量が演算される。すなわち、回転部10に不釣合いが生じた場合に、遠心式流動場分画装置1内の構成によってその不釣合い量を演算できる。
そのため、別途、装置や作業員を必要とすることなく、簡易に遠心式流動場分画装置1のみで不釣合い量を演算できる。
【0115】
(2)また、本実施形態では、不釣合い量演算部312は、回転センサ41の検出信号から得られる位相、及び、第1振動センサ51又は第2振動センサ52の検出信号から得られる振幅に基づいて回転部10の不釣合い量を演算する。
そのため、回転部10の位相及び振幅に基づいて、不釣合い量を精度よく演算できる。
すなわち、回転部10の位相と振幅との関係から、回転部10における不釣合いの位置及び量を精度よく特定することができる。
【0116】
(3)また、本実施形態では、不釣合い量演算部312は、影響係数行列Kを用いて行列演算を行うことにより、回転部10の不釣合い量を演算する。
そのため、不釣合い量演算部312によって、不釣合い量を一層精度よく演算できる。
【0117】
すなわち、回転部10の位相と振幅との関係を表す行列に対し、影響係数行列Kを用いて行列演算を行うことにより、回転部10における不釣合いの位置及び量を一層精度よく特定することができる。
【0118】
(4)また、本実施形態では、
図5及び
図6に示すように、表示制御部32は、不釣合い量演算部312が演算する不釣合い量に基づいて、その不釣合い量の修正情報を表示部60に表示させる。
そのため、ユーザに対して不釣合い量の修正情報を適切に認識させることができる。
その結果、ユーザは、表示部60に表示された修正情報に従って不釣合い量の修正作業を行うことにより、振動や騒音の発生を容易に抑制できる。
【0119】
(5)また、本実施形態では、
図5及び
図7に示すように、報知制御部321は、不釣合い量演算部312が演算する不釣合い量が第1閾値を超えた場合に、その旨を表示部60に表示させることにより報知する。
そのため、回転部10の不釣合い量を監視し、その不釣合い量が異常値(第1閾値)を超えたときに、その旨をユーザに対して適切に認識させることができる。
その結果、ユーザは、その報知に従って不釣合い量の修正作業を行うことにより、振動や騒音の発生を容易に抑制できる。
【0120】
(6)また、本実施形態では、
図5及び
図7に示すように、回転制御部33は、不釣合い量演算部312が演算する不釣合い量が第2閾値を超えた場合に、モータ24を停止させて、回転部10の回転を停止させる。
そのため、回転部10の不釣合い量を監視し、その不釣合い量が危険値(第2閾値)を超えたときに、自動的に回転部10の回転を停止させることができる。
その結果、不釣合い量が非常に大きい状態のまま回転部10を回転させることを抑制でき、回転部10が破損することを抑制できる。
【0121】
(7)また、本実施形態では、
図5に示すように、第1検出部40は、回転センサ41を少なくとも1つ備える。第2検出部50は、振動センサを少なくとも2つ備え、具体的には、第1振動センサ51及び第2振動センサ52を備える。そして、不釣合い量演算部312は、回転センサ41が検出する検出信号、第1振動センサ51が検出する検出信号、及び、第2振動センサ52が検出する検出信号に基づいて、回転部10の不釣合い量として、回転部10の動不釣合い量を演算する。
そのため、不釣合い量演算部312によって、回転部10の動不釣合い量を簡易に演算できる。
すなわち、回転センサ41、第1振動センサ51及び第2振動センサ52を設けるだけの簡易な構成により、回転部10の動不釣合い量を演算できる。
【0122】
9.第2実施形態
(1)記憶部の構成
上記した第1実施形態では、影響係数行列Kは、不釣合い量演算部312によって算出されて記憶部80に格納される。
対して、第2実施形態では、影響係数行列Kは、予め記憶部80に格納されている。
【0123】
具体的には、第2実施形態では、
図5に示す影響係数行列Kは、遠心式流動場分画装置1が工場から出荷される際に、予め記憶部80に格納される。
なお、このとき、影響係数行列Kは、工場における外部装置などによって、第1実施形態における影響係数行列演算部311が行う演算と同様の演算が行われることにより算出される。
【0124】
そして、遠心式流動場分画装置1において、回転部10に不釣合いが発生する作業が行われた場合には、上記と同様にして、回転部10が回転されて、初期振動ベクトルであるベクトルFが計測される(
図6のステップS101)。
次いで、第2実施形態では、不釣合い量演算部312は、予め記憶部80が記憶している影響係数行列Kを読み出す。そして、不釣合い量演算部312は、式(1)、計測した上記ベクトル(初期振動ベクトル)、及び、影響係数行列Kに基づいて、第1実施形態の式(4)及び(5)を用いた演算を行う。そして、不釣合い量演算部312は、式(4)及び(5)から、動不釣合い量としてベクトルX
1及びベクトルX
2を、演算(行列演算)により算出する(ステップS107)。
【0125】
その後は、上記第1実施形態と同様の処理が行われる。
このように、第2実施形態では、予め影響係数行列Kが記憶部80に格納されるため、第1実施形態におけるステップS102からステップS106までの処理が省かれる。
【0126】
(2)第2実施形態の作用効果
本実施形態では、影響係数行列Kは、遠心式流動場分画装置1が工場から出荷される際に、予め記憶部80に格納される。そして、不釣合い量演算部312は、予め記憶部80が記憶している影響係数行列Kを読み出して行列演算を行うことにより、回転部10の不釣合い量を演算する。
そのため、影響係数行列Kを求めるための作業を不釣合いの演算の度に行う必要がなく、不釣合い量演算部312が行う演算を簡易なものにすることができる。
なお、第2実施形態では、記憶部80に予め記憶される影響係数行列Kは、上記第1実施形態と同様の処理によって新たな影響係数行列Kが算出された場合には、その新たな影響係数行列Kに変更されてもよい。
【0127】
10.第3実施形態
(1)第2検出部の構成
上記した第1実施形態では、不釣合い量演算部312は、回転部10の不釣合い量として、回転部10の動不釣合い量を演算する。
対して、第3実施形態では、不釣合い量演算部312は、回転部10の不釣合い量として、回転部10の静不釣合い量を演算する。
【0128】
具体的には、第3実施形態では、遠心式流動場分画装置1は、
図4に示す第1振動センサ51及び第2振動センサ52のうち、一方の振動センサを備えておらず、例えば振動センサとして第1振動センサ51のみを備えている。
そして、遠心式流動場分画装置1において、回転部10に不釣合いが発生する作業が行われた場合には、演算部31によって、回転部10の不釣合い量として静不釣合い量が演算される。
【0129】
すなわち、上記第1実施形態と同様に、影響係数行列演算部311によって、回転センサ41の検出信号、及び、第1振動センサ51の検出信号に基づいて、初期振動ベクトルであるベクトルFが計測され、ロータ14に試しオモリが取り付けられた状態で振動ベクトルが計測される。さらに、影響係数行列演算部311によって、式(1)、計測したベクトルから影響係数行列Kが算出される。その後、不釣合い量演算部312によって、式(1)、初期振動ベクトル(ベクトルF)、及び、影響係数行列Kから、回転部10の静不釣合い量が演算される。なお、第3実施形態においても、第2実施形態と同様に影響係数行列Kが予め記憶部80に格納されていてもよい。
【0130】
(2)第3実施形態の作用効果
本実施形態では、第1検出部40は、
図4に示す第1振動センサ51のみを備える。そして、不釣合い量演算部312は、回転センサ41の検出信号、及び、第1振動センサ51の検出信号に基づいて、回転部10の静不釣合い量を演算する。
そのため、不釣合い量演算部312によって、回転部10の静不釣合い量を簡易に演算できる。
すなわち、遠心式流動場分画装置1には、通常、少なくとも回転センサ41及び第1振動センサ51が備えられている。よって、遠心式流動場分画装置1において、回転センサ41及び第1振動センサ51を用いることで、別途、部品を追加する必要がなく、簡易に回転部10の静不釣合い量を演算できる。
ただし、1つの振動センサからの検出信号を用いて演算を行うような構成であれば、遠心式流動場分画装置1に備えられた振動センサの数は1つに限らず、2つ以上備えられていてもよい。
【0131】
11.変形例
以上の実施形態では、ロータ14を通常の状態で回転させて初期振動ベクトルを計測し、ロータ14に試しオモリを取り付けた状態で回転部10を回転させることでベクトルU
1及びベクトルU
2を計測するとして説明したが、予めロータ14に試しオモリを取り付けた状態で初期振動ベクトルを計測し、ロータ14から試しオモリを取り外した状態で回転部10を回転させることでベクトルU
1及びベクトルU
2を計測してもよい。
【0132】
また、以上の実施形態では、ロータ14の不釣合いを修正するために、ロータ14に修正オモリを取り付けるとして説明したが、予めロータ14に修正オモリを取り付けておき、ロータ14の不釣合いを修正するために、ロータ14から修正オモリを取り外してもよい。あるいは、修正オモリのような個別の部材を用意するのではなく、回転部10の一部を削るなどして不釣合いを修正してもよい。
【0133】
また、以上の実施形態では、報知制御部321は、回転部10の不釣合い量が第1閾値を超えた場合に、その旨を表示部60に表示させることにより報知するとして説明したが、報知制御部321は、回転部10の不釣合い量が第1閾値を超えた場合に、その旨を音を発生させることにより報知してもよい。
【0134】
また、以上の実施形態では、不釣合い量演算部312は、影響係数行列Kを用いて行列演算を行うことにより、回転部10の不釣合い量を演算するとして説明したが、不釣合い量演算部312は、影響係数行列Kとは異なるパラメータを用いて演算を行ってもよい。このとき用いられるパラメータは、回転部10の振幅と位相を含むパラメータ、又は、回転部10の振幅と位相から算出されるパラメータであってもよいし、他のパラメータであってもよい。
【0135】
また、以上の実施形態では、不釣合いの修正時に回転部10を回転させ、その回転数を一定の値で維持するとして説明したが、これに限らず、他の各種方法を用いて不釣合いの修正を行うことができる。例えば、回転部10の回転数を変化させながら、異なる回転数における不釣合い量を演算し、予め定められた範囲の回転数において全体的に最も不釣合い量が小さくなるように不釣合いを修正するような構成であってもよい。