特許第6743954号(P6743954)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6743954
(24)【登録日】2020年8月3日
(45)【発行日】2020年8月19日
(54)【発明の名称】導電材分散体およびその利用
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/62 20060101AFI20200806BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20200806BHJP
【FI】
   H01M4/62 Z
   H01M4/139
【請求項の数】8
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2019-138688(P2019-138688)
(22)【出願日】2019年7月29日
【審査請求日】2019年8月8日
(31)【優先権主張番号】特願2019-89540(P2019-89540)
(32)【優先日】2019年5月10日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】森田雄
(72)【発明者】
【氏名】星野智彦
(72)【発明者】
【氏名】青谷優
(72)【発明者】
【氏名】鈴木雄太
【審査官】 森 透
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2018/235722(WO,A1)
【文献】 特開2013−206759(JP,A)
【文献】 特表2018−533175(JP,A)
【文献】 特開2014−120411(JP,A)
【文献】 特開2011−134807(JP,A)
【文献】 特開2017−098240(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/151525(WO,A1)
【文献】 特許第5573966(JP,B2)
【文献】 国際公開第2017/195784(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第106220779(CN,A)
【文献】 国際公開第2018/032665(WO,A1)
【文献】 特開2017−84475(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第104538635(CN,A)
【文献】 特開2017−157481(JP,A)
【文献】 特開2019−3801(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/152164(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M4/00−4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電材(A)と、分散媒(B)と、分散剤(C)とを含む導電材分散体であって、導電材(A)がカーボンナノチューブおよび/またはケッチェンブラックであり、分散剤(C)が(メタ)アクリロニトリルに由来する単位、ならびに活性水素基含有モノマー、塩基性モノマー、および(メタ)アクリル酸アルキルエステルからなる群より選択される1種以上のモノマー単位を含む共重合体であり、前記共重合体中、前記(メタ)アクリロニトリルに由来する単位を80質量%を超えて99質量%以下含み、重量平均分子量が5000〜50000であることを特徴とする非水電解質二次電池用導電材分散体。
【請求項2】
分散剤(C)のアクリロニトリルに由来する単位が、環状構造を有することを特徴とする請求項1記載の非水電解質二次電池用導電材分散体。
【請求項3】
導電材(A)のBET比表面積が150〜1000m/gであることを特徴とする請求項1または2記載の非水電解質二次電池用導電材分散体。
【請求項4】
さらに、無機金属塩、無機塩基および有機塩基からなる群から選ばれる少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の非水電解質二次電池用導電材分散体。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか記載の導電材分散体と、バインダー樹脂(D)とを含む導電材含有樹脂組成物。
【請求項6】
請求項5記載の導電材含有樹脂組成物と、活物質(E)とを含むことを特徴とする合材スラリー。
【請求項7】
請求項6記載の合材スラリーを膜状に形成してなる電極膜(F)。
【請求項8】
正極と、負極と、イオンが移動可能な電解質とを具備してなる非水電解質二次電池であって、正極または負極の少なくとも一方が、請求項7記載の電極膜(F)を含むことを特徴とする非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電材分散体に関する。さらに詳しくは、導電材分散体、導電材分散体とバインダー樹脂とを含む導電材含有樹脂組成物、導電材分散体とバインダー樹脂と活物質とを含む合材スラリー、それを膜状に形成してなる電極膜、電極膜と電解質とを具備してなる非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車の普及や携帯機器の小型軽量化及び高性能化に伴い、高いエネルギー密度を有する二次電池、さらに、その二次電池の高容量化が求められている。このような背景の下で高エネルギー密度、高電圧という特徴から非水系電解液を用いる非水電解質二次電池が多くの機器に使われるようになっており、特にリチウムイオン二次電池が注目されている。
【0003】
リチウムイオン二次電池に用いられる負極材料としては、リチウム(Li)に近い卑な電位で単位質量あたりの充放電容量の大きい黒鉛に代表される炭素材料が用いられている。しかしながら、これらの電極材料は質量当たりの充放電容量が理論値に近いところまで使われており、電池のエネルギー密度は限界に近づいている。そこで、電池内部の放電容量には寄与しない導電材やバインダーを減らす試みが行われている。
【0004】
導電材としては、カーボンブラック、ケッチェンブラック、フラーレン、グラフェン、微細炭素材料等が使用されている。特に微細炭素繊維の一種であるカーボンナノチューブが多く使用されている。例えば、黒鉛やシリコン負極にカーボンナノチューブを添加することにより、電極抵抗を低減したり、電池の負荷抵抗を改善したり、電極の強度を上げたり、電極の膨張収縮性を上げることで、リチウムイオン二次電池のサイクル寿命を向上させている。(例えば、特許文献1、2および3参照)また、正極にカーボンナノチューブを添加することにより、電極抵抗を低減する検討も行われている。(例えば、特許文献4および5参照)中でも、外径10nm〜数10nmの多層カーボンナノチューブは比較的安価であり、実用化が期待されている。
【0005】
比表面積の大きな導電材を用いると、少量で効率的に導電ネットワークを形成することができ、リチウムイオン二次電池用の正極および負極中に含まれる導電材量を低減することができる。しかしながら、比表面積の大きな導電材は凝集力が強く分散が困難であるため、十分な分散性を有する導電材分散体を得ることができなかった。
【0006】
そこで、様々な分散剤を用いて導電材を分散安定化する方法が提案されている。例えば、水溶性高分子ポリビニルピロリドン等のポリマー系分散剤を用いた水及びNMP(N−メチル−2−ピロリドン)への分散が提案されている(特許文献4および5参照)。
【0007】
また、引用文献6では、ニトリル基含有単量体単位および(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を含む粒子状重合体を分散剤として用いた水系の導電材分散体が提案されているが、比表面積の大きな導電材を分散するためには多量の分散剤を使用する必要があった。
【0008】
したがって、比表面積の大きな導電材を分散媒に高濃度かつ均一に分散した導電材分散体を得ることは、用途拡大に向けた重要な課題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平4−155776号公報
【特許文献2】特開平4−237971号公報
【特許文献3】特開2004−178922号公報
【特許文献4】特開2011−70908号公報
【特許文献5】特開2005−162877号公報
【特許文献6】特開2017−10821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、密着性および導電性の高い電極膜を得るために、高い分散性を有する導電材分散体、導電材含有樹脂組成物および合材スラリーを提供することである。さらに詳しくは、優れたレート特性およびサイクル特性を有する非水電解質二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意検討を重ねた結果、導電材(A)と、分散媒(B)と、分散剤(C)とを含む導電材分散体であって、分散剤(C)が(メタ)アクリロニトリルに由来する単位、ならびに活性水素基含有モノマー、塩基性モノマー、および(メタ)アクリル酸アルキルエステルからなる群より選択される1種以上のモノマー単位を含む共重合体であり、前記共重合体中、前記(メタ)アクリロニトリルに由来する単位を40〜99質量%含み、重量平均分子量が5000〜50000であることを特徴とする非水電解質二次電池用導電材分散体を用いることで、密着性、導電性の高い電極膜および優れたレート特性およびサイクル特性を有する非水電解質二次電池を得ることを見出し、本発明に至った。
【0012】
すなわち、本発明は、導電材(A)と、分散媒(B)と、分散剤(C)とを含む導電材分散体であって、導電材(A)がカーボンナノチューブおよび/またはケッチェンブラックであり、分散剤(C)が(メタ)アクリロニトリルに由来する単位、ならびに活性水素基含有モノマー、塩基性モノマー、および(メタ)アクリル酸アルキルエステルからなる群より選択される1種以上のモノマー単位を含む共重合体であり、前記共重合体中、前記(メタ)アクリロニトリルに由来する単位を80質量%を超えて99質量%以下含み、重量平均分子量が5000〜50000であることを特徴とする非水電解質二次電池用導電材分散体に関する。
【0013】
また本発明は、分散剤(C)のアクリロニトリルに由来する単位が、環状構造を有することを特徴とすることを非水電解質二次電池用導電材分散体に関する。
【0015】
また本発明は、さらに、無機金属塩、無機塩基および有機塩基からなる群から選ばれる少なくとも一種を含むことを特徴とする二次電池用導電材分散体に関する。
【0016】
また本発明は、導電材分散体と、バインダー樹脂(D)とを含む導電材含有樹脂組成物に関する。
【0017】
また本発明は、導電材含有樹脂組成物と、活物質(E)とを含むことを特徴とする合材スラリーに関する。
【0018】
また本発明は、合材スラリーを膜状に形成してなる電極膜(F)に関する。
【0019】
また本発明は、正極と、負極と、イオンが移動可能な電解質とを具備してなる非水電解質二次電池であって、正極または負極の少なくとも一方が、電極膜(F)を含むことを特徴とする非水電解質二次電池に関する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の導電材分散体を使用することにより、導電性および密着性に優れた導電材含有樹脂組成物、合材スラリー、電極膜が得られる。また、レート特性およびサイクル特性に優れた非水電解質二次電池が得られる。よって、高い導電性、密着性、耐久性が求められる様々な用途分野において、本発明の非水電解質二次電池を使用することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の非水電解質二次電池用導電材分散体、導電材含有樹脂組成物、合材スラリーおよびそれを膜状に形成してなる電極膜、非水電解質二次電池について詳しく説明する。
【0022】
<非水電解質二次電池用導電材分散体>
本実施形態の非水電解質二次電池用導電材分散体は、少なくとも、導電材(A)と、分散媒(B)と、分散剤(C)とを含むことを特徴とする。
【0023】
(導電材(A))
本実施形態の導電材(A)は、例えば金、銀、銅、銀メッキ銅粉、銀−銅複合粉、銀−銅合金、アモルファス銅、ニッケル、クロム、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、インジウム、ケイ素、アルミニウム、タングステン、モルブテン、白金等の金属粉、これらの金属で被覆した無機物粉体、酸化銀、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ルテニウム等の金属酸化物の粉末、これらの金属酸化物で被覆した無機物粉末、およびカーボンブラック、グラファイト等を用いることができる。カーボンブラックについては中性、酸性、塩基性等のあらゆるカーボンブラックを使用することができる。これらの導電材は、1種または2種以上組み合わせて用いても良い。これらの導電材の中でも、カーボンブラックが好ましい。
【0024】
本実施形態のカーボンブラックとしては、市販のアセチレンブラック、ファーネスブラック、中空カーボンブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、ケッチェンブラックなど各種のものを用いることができる。また、通常行われている酸化処理されたカーボンブラックや、黒鉛化処理されたカーボンブラック、カーボンナノチューブやカーボンナノファイバーなども使用できる。
【0025】
本実施形態のカーボンナノチューブは、平面的なグラファイトを円筒状に巻いた形状を有している。カーボンナノチューブは単層カーボンナノチューブが混在するものであってもよい。単層カーボンナノチューブは一層のグラファイトが巻かれた構造を有する。多層カーボンナノチューブは、二又は三以上の層のグラファイトが巻かれた構造を有する。また、カーボンナノチューブの側壁はグラファイト構造でなくともよい。例えば、アモルファス構造を有する側壁を備えるカーボンナノチューブをカーボンナノチューブとして用いることもできる。
【0026】
本実施形態のカーボンナノチューブの形状は限定されない。かかる形状としては、針状、円筒チューブ状、魚骨状(フィッシュボーン又はカップ積層型)、トランプ状(プレートレット)及びコイル状を含む様々な形状が挙げられる。本実施形態においてカーボンナノチューブの形状は、中でも、針状、又は、円筒チューブ状であることが好ましい。カーボンナノチューブは、単独の形状、または2種以上の形状の組合せであってもよい。
【0027】
本実施形態のカーボンナノチューブの形態は、例えば、グラファイトウィスカー、フィラメンタスカーボン、グラファイトファイバー、極細炭素チューブ、カーボンチューブ、カーボンフィブリル、カーボンマイクロチューブ及びカーボンナノファイバーを挙げることができるが、これらに限定されない。カーボンナノチューブは、これらの単独の形態又は二種以上を組み合わせられた形態を有していてもよい。
【0028】
本実施形態の導電材(A)のBET比表面積は20〜1000m/gであることが好ましく、150〜800m/gであることがより好ましい。
【0029】
本実施形態の導電材(A)としてカーボンナノチューブを用いる場合、カーボンナノチューブの平均外径は1〜30nmであることが好ましく、1〜20nmであることがより好ましい。
【0030】
本実施形態の導電材(A)の平均粒径および平均外径は次のように求められる。まず透過型電子顕微鏡によって、導電材を観測するとともに撮像する。次に観測写真において、任意の300個の導電材を選び、それぞれの粒径および外径を計測する。次に外径の数平均として導電材の平均粒径(nm)および平均外径(nm)を算出する。
【0031】
本実施形態の導電材(A)の炭素純度は導電材中の炭素原子の含有率(質量%)で表される。炭素純度は導電材100質量%に対して、90質量%が好ましく、95質量%以上がより好ましく、98質量%以上がさらに好ましい。
【0032】
本実施形態の導電材(A)の体積抵抗率は1.0×10−3〜1.0×10−1Ω・cmであることが好ましく、1.0×10−3〜1.0×10−2Ω・cmであることがより好ましい。導電材の体積抵抗率は粉体抵抗率測定装置((株)三菱化学アナリテック社製:ロレスターGP粉体抵抗率測定システムMCP−PD−51))を用いて測定することができる。
【0033】
(分散媒(B))
本実施形態の分散媒(B)は、導電材(A)が分散可能な範囲であれば特に限定されないが、水、及びまたは、水溶性有機溶媒のいずれか一種、若しくは二種以上からなる混合溶媒であることが好ましい。
【0034】
水溶性有機溶媒としては、アルコール系(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール、ベンジルアルコールなど)、多価アルコール系(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコールなど)、多価アルコールエーテル系(エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテルなど)、アミン系(エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミンなど)、アミド系(N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N−エチル−2−ピロリドン(NEP)、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチルカプロラクタムなど)、複素環系(シクロヘキシルピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、γ−ブチロラクトンなど)、スルホキシド系(ジメチルスルホキシドなど)、スルホン系(ヘキサメチルホスホロトリアミド、スルホランなど)、低級ケトン系(アセトン、メチルエチルケトンなど)、その他、テトラヒドロフラン、尿素、アセトニトリルなどを使用することができる。この中でも、水またはアミド系有機溶媒であることがより好ましく、アミド系有機溶媒の中でもN−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドンが特に好ましい。
【0035】
(分散剤(C))
分散剤(C)は、(メタ)アクリロニトリルに由来する単位、ならびに活性水素基含有モノマー、塩基性モノマー、および(メタ)アクリル酸アルキルエステルからなる群より選択される1種以上のモノマー単位を含む共重合体であり、前記共重合体中、前記(メタ)アクリロニトリルに由来する単位を40〜99質量%含み、重量平均分子量が5000〜50000である。
【0036】
本実施形態の活性水素基含有モノマーについて説明する。
活性水素基含有モノマーは1分子に1つ以上の活性水素基を有していれば特に限定は無く、活性水素基とはヒドロキシル基、カルボキシル基、1級アミノ基、2級アミノ基、及びメルカプト基等が挙げられる。
【0037】
ヒドロキシル基含有モノマーとしては例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシビニルベンゼン、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレートまたはこれらモノマーのカプロラクトン付加物(付加モル数は1〜5)等が挙げられる。
【0038】
カルボキシル基含有モノマーは、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ダイマー、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルヘキサヒドロフタレート、エチレンオキサイド変性コハク酸(メタ)アクリレート、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、及び無水マレイン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸等の酸無水物基含有モノマーの単官能アルコール付加体等が挙げられる。
【0039】
1級アミノ基含有モノマーとしては例えば、アミノメチル(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート、アリルアミン塩酸塩、二水素アリルアミンリン酸塩、2−イソプロペニルアニリン、3−ビニルアニリン、4−ビニルアニリン等が挙げられる。
【0040】
2級アミノ基含有モノマーとしては例えば、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0041】
メルカプト基含有モノマーとしては例えば、アクリル酸2−(メルカプトアセトキシ)エチル、アリルメルカプタン等が挙げられる。
【0042】
原料の入手しやすさ、取り扱いやすさ、後述する分散媒との親和性の観点からヒドロキシル基含有モノマー及びカルボキシル基含有モノマーであるヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸が好ましく、さらに好ましくはヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸である。
【0043】
次に塩基性モノマーについて説明する。本発明における塩基性モノマーは1級アミノ基もしくは2級アミノ基を含有しない塩基性モノマーを示す。
【0044】
例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート類;
(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、及びアクリロイルモルホリン等のN置換型(メタ)アクリルアミド類;
1−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、1−ビニルイミダゾール等の複素環式芳香族アミン含有ビニルモノマー類;
N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、等のN−置換マレイミド類;N−(ジメチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド等のN−(アルキルアミノアルキル)(メタ)アクリルアミド類;
N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド等のN,N−アルキル(メタ)アクリルアミド類等が挙げられる。
【0045】
原料の入手しやすさ、取り扱いやすさ、後述する分散媒との親和性の観点からジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートが好ましく、最も好ましくはジメチルアミノエチルアクリレートである。
【0046】
次に、(メタ)アクリル酸アルキルエステルについて説明する。本発明の(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、C=C−CO−O−骨格を有しており、炭素数1以上のアルキル基を有し、活性水素もしくは塩基性基を含有しなければ特に限定は無く、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の鎖状脂肪族アルキル基含有(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソステアリル等の分岐状脂肪族アルキル基含有(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等の環状脂肪族アルキル基含有(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル等の芳香族基が置換された(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;
(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸テトラフルオロプロピル等のフルオロ基が置換された(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;
(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル等の脂環式エポキシ基が置換された(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;;
3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等のシリルエーテル基が置換された(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;
(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル基が置換された(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;
等が挙げられる。
【0047】
原料の入手しやすさ、取り扱いやすさ、後述する分散媒との親和性の観点から(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリルが好ましく、より好ましくはアクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリルである。
【0048】
本実施形態の分散剤(C)は、さらに上記の他のモノマー成分を共重合してもよい。その他のモノマーとしては例えば
スチレン、及びα−メチルスチレン等のスチレン類;
エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、及びイソブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;
酢酸ビニル、及びプロピオン酸ビニル等の脂肪酸ビニル類;
テトラヒドロフルフリール(メタ)アクリレート、又は3−メチルオキセタニル(メタ)アクリレート等の複素環式(メタ)アクリレート類;
等が挙げられる。
【0049】
本実施形態の分散剤(C)の製造方法は特に限定はされず、例えば、溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法、乳化重合法、沈殿重合などのいずれの方法を用いてもよく、本発明においては溶液重合または沈殿重合法が好ましい。重合反応系としては、イオン重合、フリーラジカル重合、リビングラジカル重合などの付加重合を用いることができ、本発明においてはフリーラジカル重合またはリビングラジカル重合が好ましい。また、ラジカル重合開始剤としては、過酸化物、アゾ系開始剤などから選ばれた化合物またはそれらの混合物が使用でき、必要に応じて連鎖移動剤等の分子量調整剤を使用しても良い。
【0050】
本実施形態の分散剤(C)は(メタ)アクリロニトリルに由来する単位を40〜99質量%含有し、さらに50〜99質量%含有することが好ましく、特に75〜99質量%含有することが好ましい。(メタ)アクリロニトリルに由来する単位を上記範囲で含有することで被分散物への吸着性、分散媒への親和性をコントロールすることができ、被分散物を分散媒中に安定に存在させることができる。
【0051】
また、本実施形態の分散剤(C)の分子量はポリスチレン換算の質量平均で、通常5000以上、50000以下の範囲であり、さらに6000以上40000以下の範囲が好ましく、特に7000以上30000以下の範囲が好ましい。分散剤の分子量が5000未満、または50000を超えると被分散物への吸着性、分散媒への親和性が低下し、分散体の安定性が低下する傾向がある。
【0052】
(メタ)アクリロニトリルを75質量%以上99質量%以下含有した樹脂はアルカリ処理によって水素化ナフチリジン等の環構造へ変化するため好ましい。この環構造もまた被分散物への吸着性と分散媒への親和性を高めることができる。本発明の分散剤のアルカリ処理としては、事前にアルカリ処理を施しても良く、使用時にアルカリ等を併用するなどして環構造への構造変化を促しても良い。
【0053】
また、共重合体は、(メタ)アクリル酸単位を有する場合、アルカリ処理によりアクリロニトリルに由来する単位とともに環状構造としてグルタルイミド環を形成するため、水素化ナフチリジン環等の環構造と、グルタルイミド環が併存する。(メタ)アクリル酸単位は、共重合体の全モノマー単位中、1〜25質量%が好ましく、10〜25質量%がより好ましい。また、アクリロニトリルに由来する単位は、共重合体の全モノマー単位中、40〜99質量%が好ましく、75〜99質量%がより好ましい。
【0054】
本発明の導電材分散体は、導電材(A)と、分散媒(B)と、分散剤(C)に加えて、無機塩基、無機金属塩及び有機塩基を含有してもよい。これにより、導電材分散体の分散安定性が向上する。無機塩基および無機金属塩としては、アルカリ金属、およびアルカリ土類金属の少なくとも一方を有する化合物であることが好ましく、詳しくは、アルカリ金属、およびアルカリ土類金属の、塩化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、タングステン酸塩、バナジウム酸塩、モリブデン酸塩、ニオブ酸塩、ならびにホウ酸塩等が挙げられる。また、これらの中でも容易にカチオンを供給できる面でアルカリ金属、アルカリ土類金属の塩化物、水酸化物、炭酸塩が好ましい。アルカリ金属の水酸化物は、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。アルカリ土類金属の水酸化物は、例えば、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。アルカリ金属の炭酸塩は、例えば、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等が挙げられる。アルカリ土類金属の炭酸塩は、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムが挙げられる。これらの中でも水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウムがより好ましい。なお、本発明の無機塩基および無機金属塩が有する金属は、遷移金属であってもよい。
【0055】
有機塩基としては、炭素数1〜40の1級、2級、3級アルキルアミンが挙げられる。
【0056】
炭素数1〜40の1級アルキルアミンとしては、プロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、オクチルアミン、2ーエチルヘキシルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、2−アミノエタノール、3−アミノプロパノール、3−エトキシプロピルアミン、3−ラウリルオキシプロピルアミン等が挙げられる。
【0057】
炭素数1〜40の2級アルキルアミンとしては、ジブチルアミン、ジイソブチルアミン、N−メチルヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ジステアリルアミン、2−メチルアミノエタノール等が挙げられる。
【0058】
炭素数1〜40の3級アルキルアミンとしては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N−ジメチルブチルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、ジメチルオクチルアミン、トリオクチルアミン、ジメチルデシルアミン、ジメチルラウリルアミン、ジメチルミリスチルアミン、ジメチルパルミチルアミン、ジメチルステアリルアミン、ジラウリルモノメチルアミン、トリエタノールアミン、2−(ジメチルアミノ)エタノール等が挙げられる。
【0059】
この内、炭素数1〜30の1級、2級または3級アルキルアミンが好ましく、炭素数1〜20の1級、2級または3級アルキルアミンがさらに好ましい。
【0060】
有機塩基としては、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、トリ−n−ブチルアミン、ジメチルベンジルアミン、モノエタノールアミン、イミダゾール、1−メチルイミダゾール等の塩基性窒素原子を含有する化合物類を用いても良い。
【0061】
無機塩基および無機金属塩、有機塩基の配合量は、分散剤(C)100質量部に対して、1〜50質量部がより好ましい。適量配合すると分散性がより向上する。
【0062】
本実施形態の導電材分散体は、導電材を、分散剤、バインダー樹脂などの被分散物担体及び/または分散媒中に、ニーダー、2本ロールミル、3本ロールミル、ボールミル、横型サンドミル、縦型サンドミル、アニュラー型ビーズミル、またはアトライター等の各種分散手段を用いて微細に分散して製造することができる。このとき、2種以上の被分散物等を同時に被分散物担体及び/または分散媒中に分散しても良いし、別々に分散したものを混合しても良い。
【0063】
本実施形態の導電材分散体の固形分の量は、導電材分散体100質量%に対して、0.05〜30質量%が好ましく、0.1〜20質量%がより好ましい。
【0064】
本実施形態の導電材分散体中の分散剤(C)の量は、導電材分散体100質量%に対して、3〜200質量%使用することが好ましく、5〜50質量%使用することがより好ましい。
【0065】
<導電材含有樹脂組成物>
本実施形態の導電材含有樹脂組成物とは、上記導電材分散体にさらに、少なくともバインダーを含むものである。
【0066】
(バインダー樹脂(D))
本実施形態のバインダー樹脂(D)は物質間を結合するための樹脂である。
【0067】
本実施形態のバインダー樹脂(D)としては、例えば、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル、スチレン、ビニルブチラール、ビニルアセタール、ビニルピロリドン等を構成単位として含む重合体または共重合体;ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂;カルボキシメチルセルロースのようなセルロース樹脂;スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴムのようなゴム類;ポリアニリン、ポリアセチレンのような導電性樹脂等が挙げられる。また、これらの樹脂の変性体や混合物、および共重合体でも良い。中でも、正極のバインダー樹脂として使用する場合は耐性面から分子内にフッ素原子を有する高分子化合物、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル、テトラフルオロエチレン等の使用が好ましい。また、負極のバインダー樹脂として使用する場合は密着性の良好なカルボキシメチルセルロース(CMC)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸が好ましい。
【0068】
本実施形態のバインダー樹脂(D)としてのこれらの樹脂類の重量平均分子量は、10,000〜2,000,000が好ましく、100,000〜1,000,000がより好ましく、200,000〜1,000,000が特に好ましい。
【0069】
<合材スラリー>
本実施形態の合材スラリーとは、上記導電材含有樹脂組成物にさらに、少なくとも活物質(E)を含むものである。
【0070】
(活物質(E))
本実施形態の活物質(E)とは、電池反応の基となる材料のことである。活物質は起電力から正極活物質と負極活物質に分けられる。
【0071】
正極活物質としては、特に限定はされないが、リチウムイオンをドーピングまたはインターカレーション可能な金属酸化物、金属硫化物等の金属化合物、および導電性高分子等を使用することができる。例えば、Fe、Co、Ni、Mn等の遷移金属の酸化物、リチウムとの複合酸化物、遷移金属硫化物等の無機化合物等が挙げられる。具体的には、MnO、V25、V613、TiO2等の遷移金属酸化物粉末、層状構造のニッケル酸リチウム、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケルマンガンコバルト酸リチウム、スピネル構造のマンガン酸リチウムなどのリチウムと遷移金属との複合酸化物粉末、オリビン構造のリン酸化合物であるリン酸鉄リチウム系材料、TiS2、FeSなどの遷移金属硫化物粉末等が挙げられる。また、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン等の導電性高分子を使用することもできる。また、上記の無機化合物や有機化合物を混合して用いてもよい。
【0072】
負極活物質としては、リチウムイオンをドーピングまたはインターカレーション可能なものであれば特に限定されない。例えば、金属Li、その合金であるスズ合金、シリコン合金、鉛合金等の合金系、LiXFe23、LiXFe34、LiXWO2(xは0<x<1の数である。)、チタン酸リチウム、バナジウム酸リチウム、ケイ素酸リチウム等の金属酸化物系、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレン等の導電性高分子系、ソフトカーボンやハードカーボンといった、アモルファス系炭素質材料や、高黒鉛化炭素材料等の人造黒鉛、あるいは天然黒鉛等の炭素質粉末、カーボンブラック、メソフェーズカーボンブラック、樹脂焼成炭素材料、気層成長炭素繊維、炭素繊維などの炭素系材料が挙げられる。これら負極活物質は、1種または複数を組み合わせて使用することもできる。
【0073】
本実施形態の合材スラリー中の導電材(A)の量は活物質100質量%に対して、0.01〜10質量%であることが好ましく、0.02〜5質量%であることが好ましく0.03〜3質量%であることが好ましい。
【0074】
本実施形態の合材スラリー中のバインダー樹脂(D)の量は活物質100質量%に対して、0.5〜30質量%であることが好ましく、1〜25質量%であることがさらに好ましく、2〜20質量%であることが特に好ましい。
【0075】
本実施形態の合材スラリーの固形分の量は、合材スラリー100質量%に対して、30〜90質量%であることが好ましく、30〜80質量%であることがより好ましく、40〜75質量%であることが好ましい。
【0076】
本実施形態の合材スラリーは従来公知の様々な方法で作製することができる。例えば、導電材(A)に活物質(E)を添加して作製する方法や、導電材分散体に活物質(E)を添加した後、バインダー樹脂(D)を添加して作製する方法が挙げられる。
【0077】
本実施形態の合材スラリーを得るには、導電材(A)に活物質を加えた後、分散させる処理を行うことが好ましい。かかる処理を行うために使用される分散装置は特に限定されない。合材スラリーは前記導電材分散体で説明した分散手段を用いて、合材スラリーを得ることができる。
【0078】
(電極膜(F))
本実施形態の電極膜(F)とは、合材スラリーを膜状に形成してなるものである。例えば、集電体上に合材スラリーを塗工乾燥することで、電極合材層を形成した塗膜である。
【0079】
本実施形態の電極膜に使用する集電体の材質や形状は特に限定されず、各種二次電池にあったものを適宜選択することができる。例えば、集電体の材質としては、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン、又はステンレス等の金属や合金が挙げられる。また、形状としては、一般的には平板上の箔が用いられるが、表面を粗面化したものや、穴あき箔状のもの、及びメッシュ状の集電体も使用できる。
【0080】
集電体上に合材スラリーを塗工する方法としては、特に制限はなく公知の方法を用いることができる。具体的には、ダイコーティング法、ディップコーティング法、ロールコーティング法、ドクターコーティング法、ナイフコーティング法、スプレーコティング法、グラビアコーティング法、スクリーン印刷法または静電塗装法等が挙げる事ができ、乾燥方法としては放置乾燥、送風乾燥機、温風乾燥機、赤外線加熱機、遠赤外線加熱機などが使用できるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0081】
また、塗布後に平版プレスやカレンダーロール等による圧延処理を行っても良い。電極合材層の厚みは、一般的には1μm以上、500μm以下であり、好ましくは10μm以上、300μm以下である。
【0082】
(非水電解質二次電池)
本実施形態の非水電解質二次電池とは正極と、負極と、電解質とを含むものである。
【0083】
正極としては、集電体上に正極活物質を含む合材スラリーを塗工乾燥して電極膜を作製したものを使用することができる。
【0084】
負極としては、集電体上に負極活物質を含む合材スラリーを塗工乾燥して電極膜を作製したものを使用することができる。
【0085】
電解質としては、イオンが移動可能な従来公知の様々なものを使用することができる。例えば、LiBF、LiClO、LiPF、LiAsF、LiSbF、LiCFSO、Li(CFSON、LiCSO、Li(CFSOC、LiI、LiBr、LiCl、LiAlCl、LiHF、LiSCN、又はLiBPh(ただし、Phはフェニル基である)等リチウム塩を含むものが挙げられるが、これらに限定されない。電解質は非水系の溶媒に溶解して、電解液として使用することが好ましい。
【0086】
非水系の溶媒としては、特に限定はされないが、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、及びジエチルカーボネート等のカーボネート類;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、及びγ−オクタノイックラクトン等のラクトン類;テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,2−メトキシエタン、1,2−エトキシエタン、及び1,2−ジブトキシエタン等のグライム類;メチルフォルメート、メチルアセテート、及びメチルプロピオネート等のエステル類;ジメチルスルホキシド、及びスルホラン等のスルホキシド類;並びに、アセトニトリル等のニトリル類等が挙げられる。これらの溶媒は、それぞれ単独で使用しても良いが、2種以上を混合して使用しても良い。
【0087】
本実施形態の非水電解質二次電池には、セパレーターを含むことが好ましい。セパレーターとしては、例えば、ポリエチレン不織布、ポリプロピレン不織布、ポリアミド不織布及びこれらに親水性処理を施したものが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0088】
本実施形態の非水電解質二次電池の構造は特に限定されないが、通常、正極及び負極と、必要に応じて設けられるセパレーターとから構成され、ペーパー型、円筒型、ボタン型、積層型等、使用する目的に応じた種々の形状とすることができる。
【実施例】
【0089】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。実施例中、「カーボンブラック」を「CB」、「カーボンナノチューブ」を「CNT」と略記することがある。なお、特に断らない限り、「部」は「質量部」、「%」は「質量%」を表す。
【0090】
(重量平均分子量(Mw)の測定方法)
重量平均分子量(Mw)は、RI検出器を装備したゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した。
装置としてHLC−8320GPC(東ソー株式会社製)を用い、分離カラムを3本直列に繋ぎ、充填剤には順に東ソー株式会社製「TSK−GELSUPER AW−4000
」、「AW−3000」、及び「AW−2500」を用い、オーブン温度40℃、溶離液として30mMトリエチルアミン及び10mM LiBrのN,N−ジメチルホルムアミド溶液を用い、流速0.6ml/minで測定した。サンプルは上記溶離液からなる溶剤
に1wt%の濃度で調製し、20マイクロリットル注入した。分子量はポリスチレン換算値である。
【0091】
(導電材分散体の粘度測定)
粘度値の測定は、B型粘度計(東機産業社製「BL」)を用いて、分散液温度25℃にて、分散液をヘラで充分に撹拌した後、B型粘度計ローター回転速度60rpmにて直ちに行った。測定に使用したローターは、粘度値が100mPa・s未満の場合はNo.1を、100以上500mPa・s未満の場合はNo.2を、500以上2000mPa・s未満の場合はNo.3を、2000以上10000mPa・s未満の場合はNo.4のものをそれぞれ用いた。低粘度であるほど分散性が良好であり、高粘度であるほど分散性が不良である。得られた分散体が明らかに分離や沈降しているものは分散性不良とした。
判定基準
◎:500mPa・s未満(優良)
○:500以上2000mPa・s未満(良)
△:2000以上10000mPa・s未満(可)
×:10000mPa・s以上、沈降または分離(不良)
【0092】
(分散体の安定性評価方法)
貯蔵安定性の評価は、分散体を50℃にて7日間静置して保存した後の、液性状の変化から評価した。液性状の変化は、ヘラで撹拌した際の撹拌しやすさから判断し、◎:問題なし(良好)、〇:粘度は上昇しているがゲル化はしていない(可)、×:ゲル化している(極めて不良)、とした。
【0093】
(負極用合材スラリーを用いた電極膜の導電性評価方法)
負極用合材スラリーを、アプリケーターを用いて、電極の単位当たりの目付量が10mg/cmとなるように銅箔上に塗工した後、電気オーブン中で120℃±5℃で25分間、塗膜を乾燥させた。その後、(株)三菱化学アナリテック社製:ロレスターGP、MCP−T610を用いて乾燥後の塗膜の表面抵抗率(Ω/□)を測定した。測定後、銅箔上に形成した電極合材層の厚みを掛けて、負極用の電極膜の体積抵抗率(Ω・cm)とした。電極合材層の厚みは、膜厚計(NIKON社製、DIGIMICRO MH−15M)を用いて、電極膜中の3点を測定した平均値から、銅箔の膜厚を引き算し、電極膜の体積抵抗率(Ω・cm)とした。電極膜の導電性評価は、電極膜の体積抵抗率(Ω・cm)が0.3未満を◎(優良)、0.3以上0.5未満を〇(良)、0.5以上を×(不良)とした。
【0094】
<負極用合材スラリーを用いた電極膜の密着性評価方法>
負極用合材スラリーを、アプリケーターを用いて、電極の単位当たりの目付量が10mg/cmとなるように銅箔上に塗工した後、電気オーブン中で120℃±5℃で25分間、塗膜を乾燥させた。その後、塗工方向を長軸として90mm×20mmの長方形に2本カットした。剥離強度の測定には卓上型引張試験機(東洋精機製作所社製、ストログラフE3)を用い、180度剥離試験法により評価した。具体的には、100mm×30mmサイズの両面テープ(No.5000NS、ニトムズ(株)製)をステンレス板上に貼り付け、作製した電池電極合材層を両面テープのもう一方の面に密着させ、一定速度(50mm/分)で下方から上方に引っ張りながら剥がし、このときの応力の平均値を剥離強度とした。電極膜の密着性(N/cm)の評価は0.5以上を◎(優良)、0.1以上0.5未満を〇(良)、0.1未満を×(不良)とした。
【0095】
(正極用合材スラリーを用いた電極膜の導電性評価方法)
正極用合材スラリーを、アプリケーターを用いて、電極の単位当たりの目付量が20mg/cmとなるようにアルミ箔上に塗工した後、電気オーブン中で120℃±5℃で25分間、塗膜を乾燥させた。その後、(株)三菱化学アナリテック社製:ロレスターGP、MCP−T610を用いて乾燥後の塗膜の表面抵抗率(Ω/□)を測定した。測定後、アルミ箔上に形成した電極合材層の厚みを掛けて、正極用の電極膜の体積抵抗率(Ω・cm)とした。電極合材層の厚みは、膜厚計(NIKON社製、DIGIMICRO MH−15M)を用いて、電極膜中の3点を測定した平均値から、アルミ箔の膜厚を引き算し、電極膜の体積抵抗率(Ω・cm)とした。電極膜の導電性評価は、電極膜の体積抵抗率(Ω・cm)が10未満を◎(優良)、10以上20未満を〇(良)、20以上を×(不良)とした。
【0096】
(正極用合材スラリーを用いた電極膜の密着性評価方法)
正極用合材スラリーを、アプリケーターを用いて、電極の単位当たりの目付量が20mg/cmとなるようにアルミ箔上に塗工した後、電気オーブン中で120℃±5℃で25分間、塗膜を乾燥させた。その後、塗工方向を長軸として90mm×20mmの長方形に2本カットした。剥離強度の測定には卓上型引張試験機(東洋精機製作所社製、ストログラフE3)を用い、180度剥離試験法により評価した。具体的には、100mm×30mmサイズの両面テープ(No.5000NS、ニトムズ(株)製)をステンレス板上に貼り付け、作製した電池電極合材層を両面テープのもう一方の面に密着させ、一定速度(50mm/分)で下方から上方に引っ張りながら剥がし、このときの応力の平均値を剥離強度とした。電極膜の密着性(N/cm)の評価は1以上を◎(優良)、0.5以上1未満を〇(良)、0.5未満を×(不良)とした。
【0097】
(非水電解質二次電池のレート特性評価方法)
非水電解質二次電池を25℃の恒温室内に設置し、充放電装置(北斗電工社製、SM−8)を用いて充放電測定を行った。充電電流10mA(0.2C)にて充電終止電圧4.3Vで定電流定電圧充電(カットオフ電流1mA(0.02C))を行った後、放電電流10mA(0.2C)にて、放電終止電圧3Vで定電流放電を行った。この操作を3回繰り返した後、充電電流10mA(0.2C)にて充電終止電圧4.3Vで定電流定電圧充電(カットオフ電流(1mA0.02C))を行い、放電電流0.2Cおよび3Cで放電終止電圧3.0Vに達するまで定電流放電を行って、それぞれ放電容量を求めた。レート特性は0.2C放電容量と3C放電容量の比、以下の式1で表すことができる。
(式1) レート特性 = 3C放電容量/3回目の0.2C放電容量 ×100 (%)
レート特性は、レート特性が80%以上のものを◎(優良)、60%以上80%未満のものを〇(良)、60%未満のものを×(不良)とした。
【0098】
(非水電解質二次電池のサイクル特性評価方法)
非水電解質二次電池を25℃の恒温室内に設置し、充放電装置(北斗電工社製、SM−8)を用いて充放電測定を行った。充電電流25mA(0.5C)にて充電終止電圧4.3Vで定電流定電圧充電(カットオフ電流2.5mA(0.05C))を行った後、放電電流25mA(0.5C)にて、放電終止電圧3Vで定電流放電を行った。この操作を200回繰り返した。サイクル特性は25℃における3回目の0.5C放電容量と200回目の0.5C放電容量の比、以下の式2で表すことができる。
(式2)サイクル特性 = 3回目の0.5C放電容量/200回目の0.5C放電容量×100(%)
サイクル特性は、サイクル特性が85%以上を◎(優良)、80%以上85%未満を〇(良)、80%未満を−(不良)とした。
【0099】
(製造例1)分散剤(A−1)の製造
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、アセトニトリル100部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を70℃に加熱して、アクリロニトリル50.0部、アクリル酸25.0部、スチレン25.0部および及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(日油社製;V−65)を5.0部の混合物を3時間かけて滴下し、重合反応を行った。滴下終了後、さらに70℃で1時間反応させた後、V−65を0.5部添加し、さらに70℃で1時間反応を続けた。その後、不揮発分測定にて転化率が98%超えたことを確認し、減圧濃縮して分散媒を完全に除去し、分散剤(A−1)を得た。分散剤(A−1)の重量平均分子量(Mw)は15,000であった。
【0100】
(製造例2〜10)分散剤(A−2)〜(A−10)の製造
使用するモノマーを表1に従って変更した以外は、製造例1と同様にして、それぞれ分散剤(A−2)〜(A−10)を作製した。各分散剤の重量平均分子量(Mw)は表1に示す通りであった。
【0101】
【表1】
【0102】
AA:アクリル酸
HEA:ヒドロキシエチルアクリレート
DMAEA:ジメチルアミノエチルアクリレート
BA:ブチルアクリレート
2EHMA:2エチルヘキシルアクリレート
【0103】
(製造例11)分散剤(A−11)の製造
製造例3で得られた分散剤(A−3)50部を、198部の精製水中に添加しディスパーで撹拌してスラリー状にした。次いで2.0部の1N水酸化ナトリウム水溶液を25℃で滴下し、ディスパーにて2時間攪拌した。IR測定(装置:FT/IR−410、日本分光社製)にてシアノ基由来のピーク強度が80%以下に減少したことを確認し、環状構造の形成を確認した。次いで、精製水で水洗、ろ過乾燥し、水素化ナフチリジン環、およびグルタルイミド環を有する分散剤(A−11)を得た。なお、重量平均分子量(Mw)は14,000であった。
【0104】
(製造例12)分散剤(A−12)の製造
用いる分散剤を(A−3)から(A−6)に変更した以外は製造例13と同様に行い水素化ナフチリジン環を有する分散剤(A−12)を得た。なお、重量平均分子量(Mw)は14,000であった。
【0105】
(製造例13)標準正極用合材スラリーの作製
正極活物質(BASF戸田バッテリーマテリアルズ合同会社製、HED(登録商標)NCM−111 1100)93質量部、アセチレンブラック(デンカ株式会社製、デンカブラック(登録商標)HS100)4質量部、PVDF(株式会社社クレハ・バッテリー・マテリアルズ・ジャパン社製、クレハKFポリマー W#1300)3質量部を容量150cmのプラスチック容器に加えた後、ヘラを用いて粉末が均一になるまで混合した。その後、NMPを20.5質量部添加し、自転・公転ミキサー(シンキー社製あわとり練太郎、ARE−310)を用いて、2000rpmで30秒間撹拌した。その後、プラスチック容器内の混合物をヘラを用いて、均一になるまで混合し、前記の自転・公転ミキサーを用いて、2000rpmで30秒間撹拌した。さらにその後、NMPを14.6質量部添加し、前記の自転・公転ミキサーを用いて、2000rpmで30秒間撹拌した。最後に、高速攪拌機を用いて、3000rpmで10分間撹拌し、標準正極用合材スラリーを得た。
【0106】
(製造例14)標準正極の作製
上述の標準正極用合材スラリーを集電体となる厚さ20μmのアルミ箔上にアプリケーターを用いて塗工した後、電気オーブン中で120℃±5℃で25分間乾燥して電極の単位面積当たりの目付量が20mg/cmとなるように調整した。さらにロールプレス(株式会社サンクメタル社製、3t油圧式ロールプレス)による圧延処理を行い、合材層の密度が3.1g/cmとなる正極を作製した。
【0107】
<導電材分散体の作製>
(実施例1〜23、比較例1〜5)
表2に示す組成と分散時間に従い、ガラス瓶(M−225、柏洋硝子株式会社製)に分散剤と、添加剤と、分散媒とを仕込み、十分に混合溶解、または混合した後、導電材を加え、ジルコニアビーズ(ビーズ径0.5mmφ)をメディアとして、ペイントコンディショナーで分散し、各導電材分散体(分散体1〜分散体23、比較分散体1〜5)を得た。表2に示す通り、本発明の導電材分散体(分散体1〜分散体23)はいずれも低粘度かつ貯蔵安定性が良好であった。
ただし、本明細書において実施例1、2、9、10、12、および19の導電材分散体、該分散体を使用した合材スラリー、電極膜、および電池は参考例である。
【0108】
【表2】
【0109】
・HS−100:デンカブラックHS−100(デンカ社製、アセチレンブラック、平均一次粒子径48nm、比表面積39m2/g)
・EC−300J:ケッチェンブラックEC−300J(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製、ケッチェンブラック、平均一次粒子径40nm、比表面積800m2/g)
・8S:JENOTUBE8S(JEIO社製、多層CNT、外径6〜9nm)
・100T:K−Nanos 100T(Kumho Petrochemical社製、多層CNT、外径10〜15nm)
・NTP3121:NTP3121(NTP社製、多層CNT、外径20〜35nm)
・PVP:ポリビニルピロリドンK−30(日本触媒製、固形分100%)
・PVA:Kuraray POVAL PVA403(クラレ社製、固形分100%)
・PVB:エスレック BL−10(積水化学工業社製、固形分100%)
・DMAE:東京化成工業株式会社,2−(ジメチルアミノ)エタノール
・NMP:N−メチルピロリドン
【0110】
<負極用合材スラリーの作製>
(実施例24)
容量150cmのプラスチック容器に導電材分散体(分散体1)と、CMCと、水とを加えた後、自転・公転ミキサー(シンキー社製あわとり練太郎、ARE−310)を用いて、2000rpmで30秒間撹拌し、導電性含有樹脂組成物1を得た。その後、活物質を添加し、前記の自転・公転ミキサーを用いて、2000rpmで150秒間撹拌した。さらにその後、SBRを加えて、前記の自転・公転ミキサーを用いて、2000rpmで30秒間撹拌し、負極用合材スラリー1を得た。負極用合材スラリー1の固形分は48質量%とした。負極用合材スラリー中の活物質:導電材:CMC:SBRの固形分比率は97:0.5:1:1.5とした。
【0111】
(実施例25〜43、比較例6〜9)
導電材分散体の種類を変更した以外は実施例24と同様の方法により、導電材含有樹脂組成物2〜18、21、22および比較導電材含有樹脂組成物1、3〜5と、負極用合材スラリー2〜18、21、22および負極用比較合材スラリー1、3〜5を得た。表3に示す通り、本発明の導電材分散体を用いた電極膜はいずれも導電性と密着性が良好であった。
【0112】
【表3】
【0113】
・人造黒鉛:CGB−20(日本黒鉛工業社製)、固形分100%
・CMC:#1190(ダイセルファインケム社製)、固形分100%
・SBR:TRD2001(JSR社製)、固形分48%
【0114】
<正極用合材スラリーの作製>
(実施例44)
容量150cmのプラスチック容器に導電材分散体(分散体19)と、8質量%PVDFを溶解したNMPとを加えた後、自転・公転ミキサー(シンキー社製あわとり練太郎、ARE−310)を用いて、2000rpmで30秒間撹拌し、導電材含有樹脂組成物19を得た。その後、活物質を添加し、前記の自転・公転ミキサーを用いて、2000rpmで150秒間撹拌した。さらにその後、NMPを添加し、前記の自転・公転ミキサーを用いて、2000rpmで30秒間撹拌して、正極用合材スラリー19を得た。正極用合材スラリー19の固形分は75質量%とした。正極用合材スラリー中の活物質:導電材:PVDFの固形分比率は98.5:0.5:1とした。
【0115】
(実施例45〜46、比較例10)
導電材分散体の種類を変更した以外は実施例44と同様の方法により、導電材含有樹脂組成物20、23および比較導電材含有樹脂組成物2と、正極用合材スラリー20、23および正極用比較合材スラリー2を得た。表4に示す通り、本発明の導電材分散体を用いた電極膜はいずれも導電性と密着性が良好であった。
【0116】
【表4】
【0117】
・NMC(ニッケルマンガンコバルト酸リチウム):HED(登録商標)NCM−111
1100(BASF戸田バッテリーマテリアルズ合同会社製)、固形分100%
・PVDF:Solef#5130(Solvey社製)、固形分100%
【0118】
<電極膜の作製>
(実施例47〜69、比較例11〜15)
表5に示す合材スラリーを、アプリケーターを用いて、金属箔上に塗工した後、電気オーブン中で120℃±5℃で25分間、塗膜を乾燥させて電極膜を作製した。その後、電極膜をロールプレス(株式会社サンクメタル社製、3t油圧式ロールプレス)による圧延処理を行った。正極用合材スラリーを塗工する際は、金属箔としてアルミ箔を用いて、電極の単位当たりの目付量が20mg/cmとなるように塗工し、乾燥後の電極膜の密度が3.1g/ccとなるように圧延した。負極用合材スラリーを塗工する際は、金属箔として銅箔を用いて、電極の単位当たりの目付量が10mg/cmとなるように塗工し、乾燥後の電極膜の密度が1.6g/ccとなるように圧延した。
【0119】
【表5】
【0120】
<非水電解質二次電池の作製>
表6に掲載した負極と正極とを各々50mm×45mm、45mm×40mmに打ち抜き、その間に挿入されるセパレーター(多孔質ポリプロプレンフィルム)とをアルミ製ラミネート袋に挿入し、電気オーブン中、70℃で1時間乾燥した。その後、アルゴンガスで満たされたグローブボックス内で、電解液(エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートを1:1:1(体積比)の割合で混合した混合溶媒を作製し、さらに添加剤として、VC(ビニレンカーボネート)を100質量部に対して1質量部加えた後、LiPFを1Mの濃度で溶解させた非水電解液)を2mL注入した後、アルミ製ラミネートを封口して非水電解質二次電池1〜23、比較用非水電解質二次電池1〜4を作製した。
【0121】
【表6】
【0122】
上記実施例では、分散剤が(メタ)アクリロニトリルに由来する単位、ならびに活性水素基含有モノマー、塩基性モノマー、および(メタ)アクリル酸アルキルエステルからなる群より選択される1種以上のモノマー単位を含む共重合体であり、前記共重合体中、前記(メタ)アクリロニトリルに由来する単位を40〜99質量%含み、重量平均分子量が5000〜50000である導電材分散体を用いた。実施例では、比較例に比べてサイクル特性に優れた非水電解質二次電池が得られた。特に、前記(メタ)アクリロニトリルに由来する単位を75質量%含み、重量平均分子量が5000〜50000である導電材分散体では、アクリロニトリルに由来する単位が、環状構造を有するため、比較例に比べてサイクル特性に優れた非水電解質二次電池が得られた。よって、本発明は従来の導電材分散体では実現しがたいサイクル特性を有する非水電解質二次電池を提供できることが明らかとなった。
【0123】
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記によって限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【要約】
【課題】密着性および導電性の高い電極膜を得るために、高い分散性を有する導電材分散体、導電材含有樹脂組成物および合材スラリーを提供することである。さらに詳しくは、優れたレート特性およびサイクル特性を有する非水電解質二次電池を提供すること。
【解決手段】導電材(A)と、分散媒(B)と、分散剤(C)とを含む導電材分散体であって、分散剤(C)が(メタ)アクリロニトリルに由来する単位、ならびに活性水素基含有モノマー、塩基性モノマー、および(メタ)アクリル酸アルキルエステルからなる群より選択される1種以上のモノマー単位を含む共重合体であり、前記共重合体中、前記(メタ)アクリロニトリルに由来する単位を40〜99質量%含み、重量平均分子量が5000〜50000であることを特徴とする非水電解質二次電池用導電材分散体を用いることで上記課題は解決する。
【選択図】なし