特許第6743957号(P6743957)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6743957フィルタパックおよびエアフィルタユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6743957
(24)【登録日】2020年8月3日
(45)【発行日】2020年8月19日
(54)【発明の名称】フィルタパックおよびエアフィルタユニット
(51)【国際特許分類】
   B01D 39/20 20060101AFI20200806BHJP
   B01D 46/52 20060101ALI20200806BHJP
【FI】
   B01D39/20 B
   B01D46/52 A
【請求項の数】10
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-177112(P2019-177112)
(22)【出願日】2019年9月27日
(65)【公開番号】特開2020-54993(P2020-54993A)
(43)【公開日】2020年4月9日
【審査請求日】2019年9月27日
(31)【優先権主張番号】特願2018-184327(P2018-184327)
(32)【優先日】2018年9月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】神田 理博
(72)【発明者】
【氏名】木村 孝
(72)【発明者】
【氏名】村上 千鶴
(72)【発明者】
【氏名】兵頭 孝之
(72)【発明者】
【氏名】新沼 仁
【審査官】 河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−047511(JP,A)
【文献】 特表平09−507155(JP,A)
【文献】 特表平09−507157(JP,A)
【文献】 特開2018−051547(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 39/00 − 39/20
B01D 46/00 − 46/54
D04H 1/00 − 18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
山折りおよび谷折りが交互に繰り返されたジグザグ形状に加工されたエアフィルタ濾材を備えており、
前記エアフィルタ濾材は、ガラス繊維を含むガラス濾材層を有しており、
前記ガラス濾材層は、100℃の雰囲気温度下において1時間放置したときの隆起高さの変化が70%以内である隆起部を有し、
前記隆起部は、前記エアフィルタ濾材のうちの互いに対向する部分の間隔を保持している、
フィルタパック。
【請求項2】
前記ガラス濾材層のガラス繊維の含有量が90重量%以上である、
請求項1に記載のフィルタパック
【請求項3】
前記ガラス濾材層のバインダの含有量が10重量%以下である、
請求項1または2に記載のフィルタパック
【請求項4】
100℃以上の環境下で用いられる、
請求項1から3のいずれか1項に記載のフィルタパック
【請求項5】
前記ガラス濾材層は、ガラス濾材層100重量部に対して300重量部の水を含ませた状態での引張伸度が3.0%以上である、
請求項1から4のいずれか1項に記載のフィルタパック
【請求項6】
前記隆起部の隆起高さは、前記ガラス濾材層の前記隆起部以外の部分である非隆起部分の厚み以上である、
請求項1から5のいずれか1項に記載のフィルタパック
【請求項7】
前記隆起部の隆起高さを半減するまでに必要な押圧荷重が0.3Nより大きい、
請求項1から6のいずれか1項に記載のフィルタパック
【請求項8】
前記ガラス濾材層について、前記隆起部を含む部分の捕集効率と、前記隆起部を含まない非隆起部の捕集効率と、の比(隆起部を含む部分の捕集効率/非隆起部の捕集効率)は、99.0%以上である、
請求項1から7のいずれか1項に記載のフィルタパック
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載のフィルタパックと、
前記フィルタパックを保持する枠体と、
を備えたエアフィルタユニット。
【請求項10】
前記エアフィルタ濾材のうちの互いに対向する部分の間隔を保持するための部材であって、前記エアフィルタ濾材とは別の部材である間隔保持部材を有しておらず、
前記エアフィルタ濾材のうちの互いに対向する部分の間隔は、前記隆起部のみによって保持されている、
請求項に記載のエアフィルタユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エアフィルタ濾材、フィルタパック、エアフィルタユニット、およびこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、空気中に浮遊する粉塵を捕捉するためのエアフィルタ濾材として、ガラス繊維から構成されたガラス濾材が用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1(国際公開第2016/185511号)では、ガラス繊維から形成されたエアフィルタ濾材であって、凹凸状の折り曲げられたエアフィルタ濾材の隙間にセパレータを挿入することで、エアフィルタ濾材の対向する部分同士の間隔を保持させることが提案されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上の凹凸状に折り曲げられたエアフィルタ濾材では、エアフィルタ濾材の対向する部分同士の間隔を確保することができているものの、各隙間にセパレータを設ける必要が生じている。
【0005】
これに対して、例えば、エアフィルタ濾材自体において部分的に隆起部を設けることで、対向する部分同士の間隔を確保できれば、セパレータの必要性を低減することができる。
【0006】
ところが、エアフィルタ濾材が用いられる環境によっては、隆起部の隆起高さが変化することで、エアフィルタ濾材の対向する部分同士の間隔を確保することが困難になる場合がある。
【0007】
本開示の内容は、上述した点に鑑みたものであり、セパレータを用いなくても折り曲げられた状態でエアフィルタ濾材の部分同士の間隔を保持することが可能なフィルタパックおよびエアフィルタユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本件発明者らは、隆起部におけるひずみの小さなエアフィルタ濾材を用いることで、エアフィルタ濾材の使用環境による隆起部の隆起高さの変化を小さく抑え、エアフィルタ濾材の対向する部分同士の間隔を確保しやすくなることを見出し、さらに検討を行って本開示内容を完成させた。
【0009】
第1観点に係るフィルタパックは、エアフィルタ濾材を備えている。エアフィルタ濾材は、山折りおよび谷折りが交互に繰り返されたジグザグ形状に加工されている。エアフィルタ濾材は、ガラス濾材層を含むガラス濾材層を有する。ガラス濾材層は、隆起部を有している。隆起部は、100℃の雰囲気温度下において1時間放置したときの隆起高さの変化が70%以内である。隆起部は、エアフィルタ濾材のうちの互いに対向する部分の間隔を保持している。
【0010】
エアフィルタ濾材におけるガラス繊維の含有割合は、特に限定されず、例えば、30重量%以上であってもよいし、50重量%以上であってもよいし、80%以上であってもよい。なお、エアフィルタ濾材が複数の層の積層体である場合には、少なくともそのうちの1つの層におけるガラス繊維の割合が50重量%以上であってよく、80重量%以上であることが好ましい。なお、エアフィルタ濾材におけるガラス繊維の含有割合の上限も、特に限定されず、例えば、99重量%であってもよいし、95重量%であってもよい。
【0011】
隆起部の形状は、特に限定されず、隆起側から見た形状が、円形、楕円形、正方形、長方形等の多角形、直線状、曲線状等であってよい。
【0012】
隆起部の隆起高さは、隆起部の隆起方向において、隆起部が隆起している側の面のうち最も低い部分の高さ位置と、隆起部の先端の高さ位置と、の間の長さをいう。
【0013】
エアフィルタ濾材は、100℃の雰囲気温度下において1時間放置したときの隆起高さの変化が70%以内となる隆起部を備えていればよく、当該変化が70%以上である隆起した部分をさらに備えていてもよい。隆起部が複数存在する場合において、100℃の雰囲気温度下において1時間放置したときの隆起高さの変化が70%以内となる隆起部の割合が50%以上であることが好ましい。
【0014】
なお、隆起高さの変化が70%以内となるとは、例えば、当初100であった隆起高さが30になる場合(70%の変化)、50になる場合(50%の変化)、80になる場合(20%の変化)をいずれも含み、25になる場合(75%の変化)は含まない意味である。
【0015】
なお、「フィルタパック」は、特に限定されるものではないが、例えば、フラットなシート状のものではなく、山折りおよび谷折りを交互に行うことで折り畳まれたジグザグ形状であり、任意の枠体に収容可能となるように整形されているものであってよい。
【0016】
このフィルタパックは、折り曲げられた状態で高温環境下において使用される場合であっても、エアフィルタ濾材の隆起部の隆起高さの変化が小さく抑えられるため、エアフィルタ濾材の対向する部分同士の間隔を確保することが可能になる。
【0017】
第2観点に係るフィルタパックは、第1観点のフィルタパックであって、ガラス濾材層のガラス繊維の含有量が90重量%以上である。
【0018】
このフィルタパックは、粉塵の捕捉に寄与するガラス繊維を多く含ませることができる。
【0019】
第3観点に係るフィルタパックは、第1観点または第2観点のフィルタパックであって、ガラス濾材層のバインダの含有量が10重量%以下である。
【0020】
なお、エアフィルタ濾材のガラス濾材層におけるバインダの含有量は、5重量%以下であってもよいし、1重量%以下であってもよいし、0重量%であってもよい(含まれていなくてもよい)。
【0021】
このフィルタパックは、エアフィルタ濾材が高温環境下で使用される場合であっても、隆起部の高さの変化を小さく抑えることが可能になる。
【0022】
第4観点に係るフィルタパックは、第1観点から第3観点のいずれかのフィルタパックであって、100℃以上の環境下で用いられる。
【0023】
100℃以上の環境下としては、100℃以上の状態が持続している環境下であってもよいし、一時的に100℃になることがある環境下であってもよい。
【0024】
このフィルタパックは、100℃以上の高温環境下で用いられても、エアフィルタ濾材の対向する部分同士の間隔を確保することが可能になる。
【0025】
第5観点に係るフィルタパックは、第1観点から第4観点のいずれかのフィルタパックであって、ガラス濾材層は、ガラス濾材層100重量部に対して300重量部の水を含ませた状態での引張伸度が3.0%以上である。
【0026】
このエアフィルタ濾材は、隆起部の形成が容易になる。
【0027】
第6観点に係るフィルタパックは、第1観点から第5観点のいずれかのフィルタパックであって、隆起部の隆起高さは、ガラス濾材層の隆起部以外の部分である非隆起部分の厚み以上である。
【0028】
このフィルタパックは、隆起部が十分な隆起高さを有している場合であっても、当該隆起部の隆起高さが減少することを抑制できる。
【0029】
第7観点に係るフィルタパックは、第1観点から第6観点のいずれかのフィルタパックであって、隆起部の隆起高さを半減するまでに必要な押圧荷重が0.3Nより大きい。
【0030】
このフィルタパックは、隆起部の隆起高さの減少を十分に抑制することができる。
【0031】
第8観点に係るフィルタパックは、第1観点から第7観点のいずれかのフィルタパックであって、ガラス濾材層について、隆起部を含む部分の捕集効率と、隆起部を含まない非隆起部の捕集効率と、の比(隆起部を含む部分の捕集効率/非隆起部の捕集効率)は、99.0%以上である。
【0032】
このフィルタパックは、隆起部が形成された場合であっても、当該隆起部におけるリークの発生を抑制できる。
【0033】
観点に係るエアフィルタユニットは、第1観点から観点のいずれかのフィルタパックと、フィルタパックを保持する枠体と、を備えている。
【0034】
10観点に係るエアフィルタユニットは、第観点のエアフィルタユニットであって、間隔保持部材を有しておらず、エアフィルタ濾材のうちの互いに対向する部分の間隔は、隆起部のみによって保持されている。ここでいう間隔保持部材は、エアフィルタ濾材のうちの互いに対向する部分の間隔を保持するための部材であって、エアフィルタ濾材とは別の部材である。
【0035】
このエアフィルタユニットは、エアフィルタ濾材の対向する部分同士の間隔を保持するためのセパレータのような間隔保持部材を用いることなく、当該間隔の保持が可能となっているため、間隔保持部材が存在することに伴う圧力損失の増大を回避することができている。
【0036】
11観点に係るエアフィルタ濾材の製造方法は、ガラス繊維を含んでおり、液体含有状態である隆起部を有するシートを用意する工程と、隆起部を有するシートの液体含有量を低減させる工程と、を備えている。
【0037】
エアフィルタ濾材におけるガラス繊維の含有割合は、特に限定されず、例えば、30重量%以上であってもよいし、50重量%以上であってもよいし、80重量%以上であってもよい。なお、エアフィルタ濾材におけるガラス繊維の含有割合の上限も、特に限定されず、例えば、99重量%であってもよいし、95重量%であってもよい。
【0038】
ガラス繊維を含んでおり、液体含有状態である隆起部を有するシートを用意する方法は、特に限定されず、例えば、水等の液体中に浮遊するガラス繊維をすいて(抄紙して)シートを得て、水等の液体で濡れている状態のままでシートの一部を部分的に厚み方向に押すことで隆起部を形成させてもよいし、水等の液体中に浮遊するガラス繊維をすくために(抄紙するために)用いる液体透過性板状部材自体が隆起部に対応した形状を有しており、その液体透過性板状部材を用いてガラス繊維をすいて(抄紙して)もよいし、凹凸が無く平坦である液体含有量が所定量より低いガラス濾材を水等の液体で湿らせた状態として隆起部を形成させるようにしてもよい。
【0039】
また、液体含有量を低減させる工程としては、特に限定されず、隆起部が液体含有状態よりも液体含有量が低減されればよく、熱風乾燥機等を用いた強制的な乾燥処理であってもよいし、これらの強制的な乾燥処理を伴わない自然乾燥(単なる放置)でもよい。
【0040】
このエアフィルタ濾材の製造方法で得られたエアフィルタ濾材は、隆起部におけるひずみを小さく抑えることができる。このため、折り曲げられた状態で高温環境下において使用される場合であっても、エアフィルタ濾材の隆起部の隆起高さの変化が小さく抑えられるため、エアフィルタ濾材の対向する部分同士の間隔を確保することが可能になる。
【0041】
12観点に係るエアフィルタ濾材の製造方法は、第11観点のエアフィルタ濾材の製造方法であって、液体含有状態である隆起部を有するシートは、液体を20重量%以上含んでいる。
【0042】
液体含有状態である隆起部を有するシートが含む液体としては、特に限定されず、例えば、水、沸点が85℃以下の極性分子を主として含む液体等およびこれらの混合物が挙げられる。なお、液体含有状態である隆起部を有するシートは、水を20重量%以上含んでいることが好ましい。また、液体を含有させる前の状態のシートの重量の25重量%以上の水をシートに含有させることが好ましく、液体を含有させる前の状態のシートの重量の30重量%以上の水をシートに含有させることがより好ましく、液体を含有させる前の状態のシートの重量と同じ重量(100重量%)以上の水をシートに含有させてもよい。なお、シートに含有させる水の量の上限は特に限定されないが、例えば、シートがもろくなることを抑制させて取り扱い性を高める観点から、液体を含有させる前の状態のシートの重量の1000重量%以下とすることが好ましく、500重量%以下としてもよい。
【0043】
このエアフィルタ濾材の製造方法は、液体含有量を低減させる工程の前の、液体含有状態である隆起部を有するシートが液体を20重量%以上含んでいる。これにより、得られるエアフィルタ濾材の液体含有量を低減させる工程後の隆起部におけるひずみを小さく抑えることが可能になる。
【0044】
13観点に係るエアフィルタ濾材の製造方法は、第11観点または第12観点のエアフィルタ濾材の製造方法であって、液体含有状態のシートに対して、液体含有状態のシートの厚み以上の隆起高さを有する隆起部を生じさせることで、シートを用意する。
【0045】
このエアフィルタ濾材の製造方法は、十分な隆起高さを有する隆起部を形成させた場合であっても、当該隆起部の隆起高さが減少することを抑制できる。
【0046】
14観点に係るエアフィルタ濾材の製造方法は、第13観点のエアフィルタ濾材の製造方法であって、バインダの固形分の含有量が15重量%以下の液体含有状態であるシートに対して隆起部を生じさせ、その後、隆起部にバインダを塗布する。
【0047】
このエアフィルタ濾材の製造方法は、隆起部を形成する際にガラス繊維が過度に拘束されることで隆起部に応力が残存することや隆起部を形成する際に受けるダメージを抑制させつつ、得られるエアフィルタ濾材の隆起部の強度を高めることが可能になる。
【0048】
15観点に係るエアフィルタ濾材の製造方法は、第11観点から第13観点のいずれかのエアフィルタ濾材の製造方法であって、バインダを含んでいる液体含有状態であるシートに対して、前記隆起部を生じさせる。
【0049】
このエアフィルタ濾材の製造方法は、隆起部を形成させる際に隆起部およびその周囲において破断が生じることを抑制できる。
【0050】
16観点係るエアフィルタ濾材の製造方法は、第14観点または第15観点のエアフィルタ濾材の製造方法であって、バインダを揮発させる工程を備えている。
【0051】
このエアフィルタ濾材の製造方法は、得られるエアフィルタ濾材におけるバインダが低減されているため、エアフィルタ濾材を高温環境下で用いた場合であってもバインダの変性や分解等の変化による不具合を抑制することができる。
【0052】
17観点に係るフィルタパックの製造方法は、第11観点から第16観点のいずれかのエアフィルタ濾材の製造方法で得られるエアフィルタ濾材を、隆起部がエアフィルタ濾材のうちの互いに対向する部分の間隔を保持するように、山折りおよび谷折りを交互に繰り返すことでジグザグ形状に加工する工程を備える。
【0053】
18観点に係るエアフィルタユニットの製造方法は、第11観点から第16観点のいずれかのエアフィルタ濾材の製造方法で得られるエアフィルタ濾材または第17観点のフィルタパックの製造方法で得られるフィルタパックを、枠体に保持させる工程を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】ガラス濾材層のみからなるエアフィルタ濾材を示す概略断面図である。
図2】ガラス濾材層を含む複数の層からなるエアフィルタ濾材の層構成を示す概略断面図である。
図3】エアフィルタ濾材に設けられた隆起部を示す概略斜視図である。
図4】フィルタパックの外観斜視図である。
図5】エアフィルタユニットの外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下、エアフィルタ濾材(以降、単に濾材ともいう)、フィルタパック、およびエアフィルタユニット、およびこれらの製造方法について、実施形態を例に挙げて説明する。
【0056】
(1)エアフィルタ濾材
エアフィルタ濾材としては、特に限定されず、例えば、図1に示すエアフィルタ濾材30のように、ガラス繊維を主として有しているガラス濾材層31aのみから構成されるものであってもよいし、図2に示すエアフィルタ濾材30のように、ガラス濾材層31aを含む複数の層が互いに積層されて構成されているものであってもよい。ガラス濾材層31aと共に積層して用いられる層としては、多孔膜31bや通気性支持層31c等が挙げられる。多孔膜31bや通気性支持層31cは、特に限定されないが、ガラス濾材層31aに対して気流の上流側または下流側に配置されてもよい。この多孔膜31bとしては、公知のフッ素樹脂多孔膜を用いてもよい。また、通気性支持層31cとしては、ポリオレフィン(PE、PP等)、ポリアミド、ポリエステル(PET等)、芳香族ポリアミド等で構成されたスパンボンド不織布等の不織布、織布、金属メッシュ、樹脂ネット等が挙げられる。
【0057】
エアフィルタ濾材は、山折りおよび谷折りが交互に繰り返されたジグザグ形状に加工されて、エアフィルタ濾材が有する隆起部が、エアフィルタ濾材のうちの互いに対向する部分の間隔を保持している状態で用いられることが好ましい。ここで、エアフィルタ濾材のうちの互いに対向する部分の間隔を保持するために、隆起部同士が当接した状態としてもよいし、隆起部と対向する隆起部以外の平面部分とが当接した状態としてもよい。特に限定されないが、例えば、図3に示すエアフィルタ濾材30のように、気流の上流側に位置する山折り部35において山折りされ、気流の下流側に位置する谷折部36において谷折された状態で用いられる場合において、エアフィルタパックやエアフィルタユニットとした場合の上流側の部分であってエアフィルタ濾材における気流の一次側において互いに対向した部分同士の間隔を保持するために隆起した複数の一次側隆起部32と、エアフィルタパックやエアフィルタユニットとした場合の下流側の部分であってエアフィルタ濾材における気流の二次側において互いに対向した部分同士の間隔を保持するために隆起した複数の二次側隆起部33と、を備えたものであってもよい。
【0058】
エアフィルタ濾材は、雰囲気温度が100℃以上になることがある環境下で用いられるものであってもよく、200℃以上になることがある環境下で用いられるものであってもよく、300℃以上になることがある環境下で用いられるものであってもよく、350℃以上になることがある環境下で用いられるものであってもよい。なお、特に限定されないが、500℃以下の環境下で用いられることが好ましい。
【0059】
ガラス濾材層は、ガラス繊維を含んでおり、100℃の雰囲気温度下において1時間放置したときの隆起高さの変化が70%以内である隆起部を備えている。
【0060】
ガラス濾材層におけるガラス繊維の含有量は、50重量%以上であってもよく、80%以上であってもよく、90重量%以上であってもよく、95重量%以上であってもよい。これにより、粉塵の捕捉に寄与するガラス繊維を多く含ませることができる。なお、ガラス濾材層におけるガラス繊維の含有量は、99重量%以下であってもよく、97重量%以下であってもよく、95重量%以下であってもよい。なお、ガラス濾材層には、ガラス繊維以外の繊維として、天然繊維や有機合成繊維が含まれていてもよいが、ガラス繊維の重量割合を超えないことが好ましい。
【0061】
上記ガラス繊維は、特に限定されないが、例えば、平均繊維径が0.1μm以上10.0μm以下であることが好ましく、平均繊維径が0.3μm以上7.0μ以下であってもよい。このようなガラス繊維としては、例えば、ジョンマンビル製のEガラスやチョップドガラスが挙げられる。なお、ガラス濾材層としては、1種類の平均繊維径のガラス繊維のみを含んで構成されていてもよいし、複数種類の平均繊維径のガラス繊維を含んで構成されていてもよい。
【0062】
なお、平均繊維径は、次のようにして定まるものである。まず、試験サンプルの表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で1000〜5000倍で撮影し、撮影した1画像上で直交した2本の線を引き、これらの線と交わった繊維の像の太さを繊維径として得る。ここで、測定する繊維数は200本以上とする。こうして得られた繊維径について、横軸に繊維径、縦軸に累積頻度を採って対数正規プロットし、累積頻度が50%となる値を平均繊維径とする。
【0063】
隆起部の形状は、特に限定されず、エンボス加工による形状であってもよいし、コルゲート加工による形状であってもよく、隆起部が隆起している側から見た場合の形状が、円形、楕円形、正方形、長方形等の多角形、直線状、曲線状等であってよい。なお、隆起部の形状としては、隆起部の断面形状がテーパー形状となっていることが好ましい。
【0064】
隆起部の隆起高さは、隆起部の隆起方向において、隆起部が隆起している側の面のうち最も低い部分の高さ位置と、隆起部の先端の高さ位置と、の間の長さをいう。
【0065】
なお、隆起部が複数設けられている場合の隆起部の平均高さは、特に限定されないが、例えば、1.0mm以上であることが好ましく、2.5mm以上であることがより好ましく、3.0mm以上であることがさらに好ましい。なお、隆起部の平均高さは、隆起部が設けられていない箇所の厚みを100%とした場合に、100%以上であることが好ましく、250%以上であることがより好ましく、300%以上であることがより好ましい。このように、隆起部の高さが高いガラス濾材層であっても、上述の構成を採用することにより、高温環境下での使用条件においても、隆起部の隆起高さが低減する程度を小さく抑えることができる。なお、隆起部が複数設けられている場合の隆起部の平均高さは、特に限定されないが、例えば、10.0mm以下であってよい。なお、隆起部の平均高さは、隆起部が設けられていない箇所の厚みを100%とした場合に、1000%以下であってよい。
【0066】
ガラス濾材層は、100℃の雰囲気温度下において1時間放置したときの隆起高さの変化が70%以内となる隆起部を備えていればよく、当該変化が70%以上である隆起した部分をさらに備えていてもよい。隆起部が複数存在する場合において、100℃の雰囲気温度下において1時間放置したときの隆起高さの変化が70%以内となる隆起部の割合が50%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。なお、ガラス濾材層は、200℃の雰囲気温度下において1時間放置したときの隆起高さの変化が70%以内である隆起部を有していることがより好ましく、300℃の雰囲気温度下において1時間放置したときの隆起高さの変化が70%以内である隆起部を有していることがさらに好ましい。
【0067】
ガラス濾材層は、バインダを含有していなくてもよいが、ガラス繊維の飛散を抑制させるためにバインダを含有していてもよい。ガラス濾材層がバインダを含有している場合には、ガラス濾材層におけるバインダの含有量が10重量%以下であることが好ましく、5重量%以下であることがより好ましく、1重量%以下であってもよい。
【0068】
バインダが熱可塑性の樹脂で構成されている場合には、エアフィルタ濾材が高温環境下で用いられる場合であっても、バインダの含有量を少なく抑えておくことで、エアフィルタ濾材が有する隆起部の隆起高さが減少することを抑制しやすく、バインダの変質により発煙や着色等の不良が生じることを抑制しやすく、難燃性の性質を確保しやすくなる。このようなバインダとしては、例えば、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリビニルアルコール等のバインダが挙げられる。
【0069】
なお、バインダとしては、上記種類以外にも、リン酸塩(例えば、リン酸アルミニウム)等の無機バインダを用いることができる。この無機バインダは、ガラス濾材層の耐熱性を高めることができる点で好ましい。
【0070】
ガラス濾材層の厚みとしては、特に限定されないが、例えば、300μm以上3000μm以下であってよく、プリーツ形状として用いられる場合においてプリーツ形状を維持させやすくする観点から500μm以上1500μm以下であることが好ましい。
【0071】
エアフィルタ濾材が、ガラス濾材層を含んだ複数の層の積層体で構成されている場合のエアフィルタ濾材の厚みとしては、特に限定されないが、例えば、300μm以上3000μm以下であってよく、プリーツ形状に折り畳んだ状態で用いる場合の圧力損失を小さく抑える観点から500μm以上1500μm以下であることが好ましい。
【0072】
ガラス濾材層のみから構成されたエアフィルタ濾材や、ガラス濾材層を含む複数の層が互いに積層されて構成されたエアフィルタ濾材は、例えば、以下のようにして製造することができる。
【0073】
まず、ガラス繊維を含んでおり、非乾燥状態である隆起部を有するシートを用意する工程と、隆起部を有するシートを乾燥させる工程を経ることで、ガラス濾材層を得ることができる。
【0074】
ガラス繊維を含んでおり、非乾燥状態である隆起部を有するシートを用意する工程は、特に限定されない。例えば、水等の液体中に浮遊するガラス繊維を含む繊維等をすいて(抄紙して)シートを得て、水等の液体で濡れている状態のままでシートの一部を部分的に厚み方向に押すことで隆起部を形成させるようにしてもよい。また、例えば、水等の液体中に浮遊するガラス繊維を含む繊維等をすくために(抄紙するために)用いる液体透過性板状部材自体が隆起部に対応した形状を有しており、その液体透過性板状部材を用いてガラス繊維等をすくことで(抄紙することで)隆起部が形成されるようにしてもよい。また、例えば、凹凸が無く平坦である乾燥しているガラス濾材を水等の液体で湿らせた状態として、シートの一部を部分的に厚み方向に押すことで隆起部を形成させるようにしてもよい。
【0075】
なお、隆起部およびその周囲での破損を抑制させる観点から、隆起部が形成される際のシートにおける水等の液体の含有率が20重量%以上であることが好ましく、30重量%以上であることがより好ましい。なお、隆起部を形成させやすくする観点から、隆起部が形成される際のシートにおける水等の液体の重量割合は、乾燥状態の濾材の重さに対する3倍以下であることが好ましい。
【0076】
また、隆起部およびその周囲での破損を抑制させる観点から、隆起部が形成される際のシートとしては、以下の条件の引張伸度を満たすシートを用いることが好ましい。具体的には、乾燥状態のシート100重量部に対して300重量部の水を含ませた場合におけるシートの引張伸度が、3.0%以上であるシートを用いることが好ましく、5.0%以上であるシートを用いることがより好ましい。なお、シートの引張伸度は、水分含有量が多いほど高まる傾向にあり、用いられるガラス繊維長が長いほど高まる傾向にあり、バインダの塗布の有無や塗布量や塗布するバインダの粘度を変えることで調節することも可能となる。
【0077】
また、隆起部およびその周囲での破損を抑制させる観点から、隆起部が形成される際のシートにおいてバインダが含有されていることが好ましい。なお、例えば、バインダを含まない乾燥状態のガラス濾材を水等の液体で湿らせた状態として隆起部を形成させる場合には、バインダをスプレーで吹き付ける等してガラス濾材にバインダが保持された状態にしつつ水等の液体で湿らせることが好ましい。また、隆起部を形成させようとする際のシートにおけるバインダの固形分の含有量は、例えば、1重量%以上15重量%以下であることが好ましく、2重量%以上7重量%以下であることがより好ましい。これにより、エンボス加工時にガラス繊維が過度に拘束されることで隆起部に応力が残存することやエンボス加工時に濾材がダメージを受けることを抑制しつつ、最終的に得られるガラス濾材層についてはエンボス隆起部の強度を高めることが可能になる。なお、バインダとして、含有水分量に応じて粘度が変化するバインダを用いる場合には、バインダの固形分の濃度が、0.1重量%以上3.0重量%以下の濃度の塗布液、より好ましくは0.3重量%以上1.0重量%以下の濃度の塗布液を用いてガラス濾材に塗布することが好ましい。
【0078】
また、乾燥させる工程としては、特に限定されず、隆起部が形成された際の非乾燥状態よりも乾燥すればよく、熱風乾燥機等を用いた強制的な乾燥処理であってもよいし、これらの強制的な乾燥処理を伴わない自然乾燥(単なる放置)でもよい。
【0079】
この製造方法で得られたガラス濾材層は、隆起部におけるひずみを小さく抑えることができるため、折り曲げられた状態で高温環境下において使用される場合であっても、隆起部の隆起高さの変化が小さく抑えることができる。したがって、ガラス濾材層のみからなるエアフィルタ濾材やガラス濾材層以外の層を含んで構成されるエアフィルタ濾材をプリーツ状に加工して用いる場合において、対向する部分同士の間隔を高温環境下においても確保することが可能になる。
【0080】
なお、上記乾燥させる工程の後に、ガラス濾材層を熱処理(ヒートクリーニング処理)することで、ガラス濾材層に残存しているバインダを揮発させるようにしてもよい。なお、熱処理は、特に限定されないが、例えば、エアフィルタ濾材を後述するフィルタパックとし、当該フィルタパックが枠体に収容させることでエアフィルタユニットを得た状態で、当該エアフィルタユニット自体を高温炉中で放置することで行うようにしてもよい。
【0081】
また、バインダは、エンボス加工により隆起部を形成させた後のシートに対して、少なくとも隆起部に塗布して設けるようにしてもよい。この場合、エンボス加工により隆起部を形成させようとするシートにおけるバインダの含有量は、乾燥工程等を経た最終的な濾材の状態における濾材の重量に対する重量割合が、5重量%以下でよく、1.5重量%以下でよく、0.7重量%以下であってもよいし、0.5重量%以下であってもよく、0.1重量%以上であるとよく、0.2重量%以上であるとより好ましい。これにより、最終的に得られるガラス濾材層におけるエンボス隆起部の強度を高めることが可能になる。このようにエンボス加工で形成された隆起部に対して塗布するバインダとしては、例えば、リン酸塩(例えば、リン酸アルミニウム)等の無機バインダを用いることができる。この無機バインダは、例えば、固形分濃度を1重量%以上20重量%以下、より好ましくは5重量%以上15重量%以下の含水状態の水溶液として塗布し、塗布後に加熱(例えば、400℃以上または500℃以上の雰囲気下で1時間等)することで水分を除去し、さらに水和物を除去して用いられるものであることが、エンボス隆起部の強度向上および塗布性の向上の点で好ましい。
【0082】
なお、エンボス突起部が形成された後に形成されたエンボス突起部に対してバインダを塗布することとし、エンボス突起部を形成させようとする段階ではバインダを用いない、あるいは、用いるバインダの量を低減させることで、エンボス突起部を形成させるための凸部を有する金型等の離型性を良好にすることができる。
【0083】
なお、特に限定されないが、熱処理後のガラス濾材層におけるバインダの含有量は、10重量%以下であってもよく、5重量%以下であってもよい。このようにして、バインダの含有量を低減させることで、エアフィルタ濾材を高温環境下で用いた場合であってもバインダの変性や分解等の変化による不具合を抑制することができる。
【0084】
なお、エアフィルタ濾材が、ガラス濾材層を含む複数の層が互いに積層されて構成されているものである場合には、例えば、上述のようにして得られたガラス濾材層に対して、更なる層を積層することで、当該エアフィルタ濾材を得ることができる。
【0085】
上述のようにして得られるエアフィルタ濾材は、エンボス加工により形成された隆起部の高さを半減させるまでに必要な押圧荷重Nが、0.3Nより大きいことが好ましく、0.5Nより大きいことがより好ましく、1.1Nより大きいことがさらに好ましい。これにより、プリーツ形状等に加工されて用いられる場合において、風圧を受けて隆起高さが低下する方向に力を受けた場合であっても、プリーツ間隔を適切に維持させることが可能となる。
【0086】
また、エアフィルタ濾材について、エンボス隆起部を含む部分の捕集効率と、エンボス隆起部を含まない非隆起部の捕集効率と、の比(エンボス隆起部を含む部分の捕集効率/非隆起部の捕集効率)は、99.0%以上であることが好ましく、99.9%以上であることがより好ましい。これにより、エンボス加工に伴い濾材が受けるダメージに起因して生じるリークが十分に小さく抑えられる。
【0087】
(2)フィルタパック
次に、図4を参照して、本実施形態のフィルタパックについて説明する。
【0088】
図4は、本実施形態のフィルタパック20の外観斜視図である。
【0089】
フィルタパック20は、上記説明したエアフィルタ濾材について、山折りおよび谷折りが交互に繰り返されたジグザグ形状に加工(プリーツ加工)された加工済み濾材である。プリーツ加工は、例えば、公知のロータリー式折り機によって行うことができる。プリーツ加工して得られるフィルタパックは、山折り谷折の折り目方向から見た場合に、V字が並ぶような形状となっている。濾材の折り幅は、特に限定されないが、例えば25mm以上280mm以下である。フィルタパック20は、プリーツ加工が施されていることで、エアフィルタユニットに用いられた場合の濾材の折り込み面積を増やすことができ、これにより、捕集効率の高いエアフィルタユニットを得ることができる。このように、折り込み加工されたフィルタパックにおいては、上述のエアフィルタ濾材の隆起部によって、互いに対向している部分同士の間隔が確保されている。
【0090】
なお、このようなフィルタパックにおいては、エアフィルタ濾材の対向部分同士の間隔を保持するためのホットメルト樹脂等がエアフィルタ濾材の表面に設けられておらず、対向部分同士は上述した隆起部のみによって確保されていることが好ましい。
【0091】
(3)エアフィルタユニット
次に、図5を参照して、エアフィルタユニット1について説明する。
【0092】
図5は、本実施形態のエアフィルタユニット1の外観斜視図である。
【0093】
エアフィルタユニット1は、上記説明したフィルタパック20と、フィルタパック20を収容する枠体25と、を備えている。
【0094】
なお、エアフィルタユニットは、温度変化に伴う膨張程度の相違により摩擦が生じ、粉塵が生じてしまうことを抑制するため、および、ユニットの軽量化のために、間隔保持部材が用いられていないことが好ましい。また、間隔保持部材を用いないことで、エアフィルタ濾材が受ける損傷を抑制することができる。なお、ここでいう間隔保持部材としては、例えば、エアフィルタ濾材の対向する部分同士の間隔を保持するためのエアフィルタ濾材とは別部材で構成されるセパレータが挙げられる。
【0095】
枠体25は、例えば、樹脂や金属等の板材を組み合わせて作られ、フィルタパック20と枠体25の間は好ましくはシール剤によりシールされる。シール剤は、フィルタパック20と枠体25の間のリークを防ぐためのものであり、例えば、エポキシ、アクリル、ウレタン系などの樹脂製のものが用いられる。
【0096】
フィルタパック20と枠体25とを備えるエアフィルタユニット1は、平板状に延在する1つのフィルタパック20を枠体25の内側に収納するように保持させたミニプリーツ型のエアフィルタユニットであってもよく、平板状に延在するフィルタパックを複数並べて枠体に保持させたVバンク型エアフィルタユニットあるいはシングルヘッダー型エアフィルタユニットであってもよい。
【実施例】
【0097】
以下、実施例および比較例を示して、本開示の内容を具体的に説明する。
【0098】
(実施例1)
乾燥状態において、平均繊維径0.65μmの極細ガラス繊維45重量%、平均繊維径3.0μmの極細ガラス繊維50重量%、平均繊維径6.0μmのチョップドガラス繊維5重量%を組成とするガラス繊維97重量%と、ガラス転移温度が30℃であるアクリル系エマルションを組成とするバインダ3重量%と、が含まれるシートを作成した。
【0099】
次に、上記シートを水に浸した後に、水の含有量が30重量%(乾燥状態のシートの重量の30重量%の水を含有した状態)となるまで乾燥させた。
【0100】
その後、乾燥状態のシートの重量の30重量%の水を含有した状態のシートに、凹凸高さ(平坦面から隆起部の頂部までの高さ)が3mmとなるように、複数の凹部と凸部が施された上下のロールで挟むことでエンボス加工を施した。さらに、このエンボス加工が施されたシートを、高温恒温槽内の100℃の雰囲気温度環境下にて1時間放置することで再度乾燥させ、上記ガラス繊維97重量%、上記バインダ付着量3重量%の、エンボス加工されたエアフィルタ濾材を得た。
【0101】
(比較例1)
比較例1として、実施例1と同じシート(平均繊維径0.65μmの極細ガラス繊維45重量%、平均繊維径3.0μmの極細ガラス繊維50重量%、平均繊維径6.0μmのチョップドガラス繊維5重量%を組成とするガラス繊維97重量%と、ガラス転移温度が30℃であるアクリル系エマルションを組成とするバインダ3重量%と、が含まれるシート)について、水の含有量が0重量%となるまで乾燥させた状態のものを、凹凸高さが3mmとなるように、複数の凹部と凸部が施された上下のロールで挟むことでエンボス加工を施した。さらに、このエンボス加工が施されたシートを、高温恒温槽内の100℃の雰囲気温度環境下にて1時間放置することで再度乾燥させ、上記ガラス繊維97重量%、上記バインダ付着量3重量%の、エンボス加工されたエアフィルタ濾材を得た。
【0102】
(実施例2)
乾燥状態において、平均繊維径0.65μmの極細ガラス繊維45重量%、平均繊維径3.0μmの極細ガラス繊維55重量%を組成とするガラス繊維100重量%が含まれるシートを作成した。
【0103】
次に、上記シートを水に浸した後に、水の含有量が乾燥状態のシートの重量と同じ重量(100重量%)となるまで乾燥させた。
【0104】
その後、乾燥状態のシートの重量の100重量%の水を含有した状態のシートに、凹凸高さ(平坦面から隆起部の頂部までの高さ)が3.5mmとなるように、複数の凹部と凸部が施された上下のロールで挟むことでエンボス加工を施した。さらに、このエンボス加工が施されたシートを、高温恒温槽内の100℃の雰囲気温度環境下にて1時間放置することで再度乾燥させた。
【0105】
さらに、乾燥して得られたシートに対して、エンボス隆起部の頂部に対して、リン酸アルミニウムを組成とするバインダ(多木化学製)を固形分34重量%の濃度の溶液に水を加え10重量%濃度に希釈し、塗布してしみこませ、高温乾燥機内の500℃の雰囲気温度環境下にて1時間放置することで水和物を脱水させ、実施例2のエンボス加工されたエアフィルタ濾材を得た。なお、最終的な乾燥後のバインダ含有量は、乾燥状態のシートにおける重量を99重量部とした場合のバインダの重量が1重量部であった。
【0106】
(比較例2)
比較例2として、乾燥状態において、平均繊維径0.65μmの極細ガラス繊維45重量%、平均繊維径3.0μmの極細ガラス繊維55重量%を組成とするガラス繊維100重量%が含まれるシートを作成した。
【0107】
次に、上記シートを水に浸した後に、水の含有量が乾燥状態のシートの重量と同じ重量(100重量%)となるまで乾燥させた。
【0108】
その後、乾燥状態のシートの重量の100重量%の水を含有した状態のシートに、凹凸高さ(平坦面から隆起部の頂部までの高さ)が3.5mmとなるように、複数の凹部と凸部が施された上下のロールで挟むことでエンボス加工を施した。さらに、このエンボス加工が施されたシートを、高温恒温槽内の100℃の雰囲気温度環境下にて1時間放置することで再度乾燥させることで、比較例2のエンボス加工されたエアフィルタ濾材を得た。
【0109】
(おもり無しの隆起高さ変化確認試験)
上記実施例1および比較例1の各エアフィルタ濾材について、15層が重なるようにジグザグに折り畳み、折り畳まれた濾材の15層分の高さ(使用前高さ)を求めた。ここでは、おもり等で押さえ付けることなく、折り畳まれた濾材の厚み方向の長さ(1層目の下部から15層目の上部までの長さ)を4か所測定し、その平均値を求めることで、折り畳まれた濾材の15層分の使用前の高さとした。なお、測定時において、各隆起部の頂部は、隣の層の反隆起側の面から隆起した隆起部の頂部に接した状態、すなわち、対向する面に形成された隆起部同士が互いの頂部において接した状態であった。
【0110】
ここで、使用前の15層分の高さからエアフィルタ濾材の厚み×15の値を差し引いて得られる値を、30(凹部15個分と凸部15個分の合計の個数)で除することで、使用前の隆起高さの平均値を求めた。
【0111】
そして、上記15層が重なるように折り畳まれた濾材について、おもりを用いて重なり方向に荷重を与えることはせずに、高温恒温槽で1時間放置し、放置後の折り畳まれた濾材の15層分の高さを4か所測定して平均値を求めることで、15層分の使用状況での高さとした。なお、高温恒温槽での1時間の放置は、高温恒温槽の温度雰囲気を100℃とした場合、200℃とした場合、350℃とした場合について、それぞれ評価した。
【0112】
そして、使用状況の15層分の高さからエアフィルタ濾材の厚み×15の値を差し引いて得られる値を、30(凹部15個分と凸部15個分の合計の個数)で除することで、使用状況の隆起高さの平均値を求めた。
【0113】
以上により得られた各値について、「(使用前の隆起高さの平均値−使用状況の隆起高さの平均値)/使用前の隆起高さの平均値」の%値を評価した。
【0114】
実施例1では、高温恒温槽の温度雰囲気を100℃とした場合について0%、高温恒温槽の温度雰囲気を200℃とした場合について0%、高温恒温槽の温度雰囲気を350℃とした場合について0%であった。これに対して、比較例1では、高温恒温槽の温度雰囲気を100℃とした場合について85%、高温恒温槽の温度雰囲気を200℃とした場合について85%、高温恒温槽の温度雰囲気を350℃とした場合について85%であった。
【0115】
(おもり有りの隆起高さ変化確認試験)
上記実施例1、比較例1、実施例2、および、比較例2の各エアフィルタ濾材について、おもり使用の有無以外の点において上記おもり無しの隆起高さ変化確認試験と同様にしつつ、おもりを用いて隆起高さの変化を評価した。
【0116】
具体的には、上記実施例1、比較例1、実施例2、および、比較例2の各エアフィルタ濾材について、15層が重なるようにジグザグに折り畳み、折り畳まれた濾材の15層分の荷重時高さ(使用前高さ)を求めた。ここでは、15層の積層方向が荷重方向となるように2.5kgのおもりで押さえ付けた状態で、折り畳まれた濾材の厚み方向の長さ(1層目の下部から15層目の上部までの長さ)を4か所測定し、その平均値を求めることで、折り畳まれた濾材の15層分の使用前の荷重時高さとした。なお、測定時において、各隆起部の頂部は、隣の層の反隆起側の面から隆起した隆起部の頂部に接した状態、すなわち、対向する面に形成された隆起部同士が互いの頂部において接した状態であった。
【0117】
ここで、使用前の15層分の荷重時高さからエアフィルタ濾材の荷重時の厚み×15の値を差し引いて得られる値を、30(凹部15個分と凸部15個分の合計の個数)で除することで、使用前の荷重時の隆起高さの平均値を求めた。ここで、エアフィルタ濾材の荷重時の厚みは、エンボス加工が施されていない同様のエアフィルタを15枚積層し、15層の積層方向が荷重方向となるように2.5kgのおもりで押さえ付けた状態(15cm×40cmの面積に対して2.5kgのおもりの荷重が作用する状態)で、15層分の厚みの合計を求め、これを15で除して1層分の荷重時の厚みを求めた。
【0118】
そして、上記15層が重なるように折り畳まれた濾材について、上記同様に15層の積層方向が荷重方向となるように2.5kgのおもりで押さえ付けた状態で、高温恒温槽で1時間放置し、放置後の折り畳まれた濾材の15層分の高さを4か所測定して平均値を求めることで、15層分の使用状況での荷重時の高さとした。なお、高温恒温槽での1時間の放置は、高温恒温槽の温度雰囲気を100℃とした場合、200℃とした場合、350℃とした場合について、それぞれ評価した。
【0119】
そして、使用状況の15層分の荷重時の高さからエアフィルタ濾材の荷重時の厚み×15の値を差し引いて得られる値を、30(凹部15個分と凸部15個分の合計の個数)で除することで、使用状況の荷重時の隆起高さの平均値を求めた。
【0120】
以上により得られた各値について、「(使用前の荷重時の隆起高さの平均値−使用状況の荷重時の隆起高さの平均値)/使用前の荷重時の隆起高さの平均値」の%値を評価した。
【0121】
実施例1では、高温恒温槽の温度雰囲気を100℃とした場合について0%、高温恒温槽の温度雰囲気を200℃とした場合について0%、高温恒温槽の温度雰囲気を350℃とした場合について12%であった。これに対して、比較例1では、高温恒温槽の温度雰囲気を100℃とした場合について100%、高温恒温槽の温度雰囲気を200℃とした場合について100%、高温恒温槽の温度雰囲気を350℃とした場合について100%であり、実質的に隆起部が消滅していた。
【0122】
以上より、実施例1のエアフィルタ濾材は、高温環境下で用いられる場合であっても、比較例1のエアフィルタ濾材よりも、隆起高さを維持することができ、プリーツ形状として用いる場合におけるプリーツ間隔を維持させやすいことが分かる。
【0123】
また、実施例2では、高温恒温槽の温度雰囲気を100℃とした場合について0%、高温恒温槽の温度雰囲気を200℃とした場合について0%、高温恒温槽の温度雰囲気を350℃とした場合について5%であった。これに対して、比較例2では、高温恒温槽の温度雰囲気を100℃とした場合について0%、高温恒温槽の温度雰囲気を200℃とした場合について0%、高温恒温槽の温度雰囲気を350℃とした場合について5%であった。
【0124】
(引張伸度)
上記実施例1、比較例1、実施例2、および、比較例2の各エアフィルタ濾材の製造途中のエンボス加工を施す直前の状態のシートを用いて、水を含まないシートの重量100重量部に対して300重量部の水を含浸させた状態のものをそれぞれ用意し、引張伸度を測定した。引張伸度の測定条件は、試験環境25℃、島津製作所製オートグラフAGS−5KNHを用いて、JIS P8113(2006)に準拠した条件とした。サンプルサイズの都合により、有効試験片サイズを幅2.5cm×長さ10cm、n=3とした。初期のひずみ速度をJIS準拠の0.11min‐1とするため、クロスヘッドスピードを11mm/minとした。水分調整はマルハチ産業株式会社製オートマチックスプレー#2を用いて所定の水分量を付加し、水分を30分以上浸透させてから測定を行った。
【0125】
実施例1のシートの引張伸度は3.5%、比較例1のシートの引張伸度は1.5%、実施例2のシートの引張伸度は5.5%、比較例2のシートの引張伸度は5.5%であった。これらによれば、エンボス加工時においてシートに液体を含有させた状態とすることで、引張伸度を高めることができていることが分かる。
【0126】
(エンボス隆起部の隆起高さ半減荷重N)
上記実施例1、比較例1、実施例2、および、比較例2の各エアフィルタ濾材について、エンボス隆起部に荷重を加えた場合に隆起高さが半減することとなる荷重の値を測定した。具体的には、イマダ製メカニカルフォースゲージFB10Nを同社製手動計測スタンドSVL−1000Nに固定し、測定子(サイズΦ13.3mm(138.9mm))が、山同士を突き合わせた状態で高さが半減となるまで押し込むようにストロークを調整し、その際の最大荷重/2(1山分)を5山分測定した平均値Nとして算出した。
【0127】
実施例1のエアフィルタ濾材の隆起高さ半減荷重Nは1.2N、比較例1のエアフィルタ濾材の隆起高さ半減荷重Nは1.0N、実施例2のエアフィルタ濾材の隆起高さ半減荷重Nは2.0N、比較例2のエアフィルタ濾材の隆起高さ半減荷重Nは0.3Nであった。実施例1は、隆起部においてひずみが残っている比較例1と比べて、隆起部の高さが減りにくいことが分かる。また、実施例2は、隆起部にバインダが含まれていることから、比較例2と比べて、隆起部の高さが減りにくいことが分かる。これにより、使用時に風圧を受けて隆起高さが低下する方向に力を受けた場合であっても、プリーツ間隔をより適切に維持させやすいことが分かる。
【0128】
(エンボス隆起部/非隆起部の捕集効率比)
上記実施例1、比較例1、実施例2、および、比較例2の各エアフィルタ濾材について、エンボス隆起部を含む部分の所定面積(エンボス隆起部が3箇所含まれる8cm×8cm)の捕集効率と、エンボス隆起部を含まない非隆起部の所定面積(8cm×8cm)の捕集効率と、の比(エンボス隆起部を含む部分の捕集効率/非隆起部の捕集効率)を測定した。具体的には、TSI社製オートフィルターテスター3160を用いて、有効測定面積65.01cm、測定条件:透過風速5.3cm/sとした時の最大透過時の粒形(MPPS)での捕集効率を測定した。
【0129】
実施例1のエアフィルタ濾材の捕集効率比は99.95%、比較例1のエアフィルタ濾材の捕集効率比は98%、実施例2のエアフィルタ濾材の捕集効率比は99.99%、比較例2の捕集効率比は99.99%であった。エンボス加工時に液体を含有させていない比較例1では、エンボス加工時に隆起部を形成させる際に、隆起部において濾材が損傷を受け、リークが生じやすくなっていることが分かる。
【0130】
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0131】
1 エアフィルタユニット
20 フィルタパック
25 枠体
30 エアフィルタ濾材
31a ガラス濾材層
31b 多孔膜
31c 通気性支持層
【先行技術文献】
【特許文献】
【0132】
【特許文献1】国際公開第2016/185511号
図1
図2
図3
図4
図5