(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記照明光束(Fe)が、方向の異なる複数の個別照明光束(Fe1,Fe2,…)から成っており、前記回折格子は、前記個別照明光束(Fe1,Fe2,…)の方向に対応した周期並び方向を有する複数の成分の重ね合わせによって形成されていることを特徴とする請求項1に記載のカラー画像表示装置。
前記した方向の異なる複数の個別照明光束(Fe1,Fe2,…)の、それぞれが有する主たるスペクトル帯域が互いに相違することを特徴とする請求項2に記載のカラー画像表示装置。
前記した方向の異なる複数の個別照明光束は、1個の前記光源(Ge)から発した光をスペクトル帯域で分割した、短波長側の成分から成る短波長側光束(Feb)と長波長側の成分から成る長波長側光束(Fer)であることを特徴とする請求項3に記載のカラー画像表示装置。
前記広義ホログラム(H)の前記色相画素(Pxy)には、その色相画素に課せられた色相によって規定される色度座標が色度図上において位置する座標点(pxy)を通り、前記純紫軌跡(Lp)と平行な直線(lxy)が、スペクトル軌跡(Ls)と交差する2個の点(a,b)の座標に対応する色度を有する2種の単色光の加色混合によって実現されるような空間並び周期と方向を有する成分が重ね合わせられた回折格子が形成されていることを特徴とする請求項2に記載のカラー画像表示装置。
前記瞳通過光束(Fq)が入射されることにより、前記広義ホログラム(H)の共役像を結像して前記出力像(Dc)を形成する結像光学系(Of)をさらに有することを特徴とする請求項1に記載のカラー画像表示装置。
前記照明光束(Fe)が平行光束であり、前記広義ホログラム(H)によって回折された前記回折光束(Fd)に対する前記瞳(Q)が無限遠にあることを特徴とする請求項7に記載のカラー画像表示装置。
前記照明光束(Fe)が、方向の異なる2種類の個別照明光束を含んでおり、前記広義ホログラム(H)は、変調画素が縦と横の2方向に等ピッチで並ぶ空間光変調器であり、前記広義ホログラム(H)に形成される回折格子は2成分から成り、該回折格子それぞれの成分の周期並び方向が直交しており、かつ、回折格子それぞれの成分の周期並び方向と、空間光変調器の変調画素並び方向と、が成す角度が45度であることを特徴とする請求項10に記載のカラー画像表示装置。
前記色相画素(Pxy)の、隣接する色相画素との境界が、前記出力像(Dc)として表示しようとする画像の絵柄に適合する形状に設定されることを特徴とする請求項1に記載のカラー画像表示装置。
前記広義ホログラム(H)の前記色相画素(Pxy)には、回折格子の各成分が重ね合わせられた回折格子が形成されることによって加色混合が実現されることに替えて、前記広義ホログラム(H)を複数設けることとし、前記した回折格子の各成分それぞれを前記広義ホログラム(H)のそれぞれに形成し、前記照明光束(Fe)が前記広義ホログラム(H)のそれぞれによって回折されて形成された回折光束(Fd)を重ね合わせることによって加色混合が実現されることを特徴とする請求項1に記載のカラー画像表示装置。
前記広義ホログラム(H)が、前記出力像(Dc)として色度図像を表示するためのものであって、前記広義ホログラム(H)の前記色相画素(Pxy)には、その色相画素に課せられた色相によって規定される色度座標が色度図上において位置する座標点(pxy)を通り、前記純紫軌跡(Lp)と平行な直線(lxy)が、スペクトル軌跡(Ls)と交差する2個の点(a,b)の座標に対応する色度を有する2種の単色光の波長を含む、部分的帯域のスペクトル成分を有する照明光束が照射されることを特徴とする請求項5に記載のカラー画像表示装置。
請求項7に記載のカラー画像表示装置であって、テレセントリックの前記結像光束(Ff)を出力するよう構成したカラー画像表示装置によって実像の前記出力像(Dc)が結像される位置に、感光材料層(Rm)を設置し、該感光材料層(Rm)に前記出力像(Dc)を形成し、前記感光材料層(Rm)を感光させて所定の処理プロセスを施すことにより、リップマン法によって前記感光材料層(Rm)に前記出力像(Dc)が転写されたカラー画像複製物を作成することを特徴とするカラー画像複製物作成方法。
【背景技術】
【0002】
一般に、光源等から発せられる光の色を特定したいときは、CIE(国際照明委員会)の制定になるXYZ表色系に基づく色度座標によって表現される。
(参考文献:「色の性質と技術」1986年10月10日初版第1刷,応用物理学会・光学懇話会編,朝倉書店発行)
波長 λ をパラメータとする、パワースペクトル分布が S(λ) で表される光束があったとき、その光束の三刺激値 X,Y,Z は、CIEにより定められている等色関数 xe(λ),ye(λ),ze(λ) を用いて、以下の式(式1)
X = ∫S(λ)・xe(λ)・dλ
Y = ∫S(λ)・ye(λ)・dλ
Z = ∫S(λ)・ze(λ)・dλ
の積分計算で求める。
ただし、積分は380nmから780nmの領域で行うとされている。
このとき、明るさは、 Y の値によって表される。
これら三刺激値を用いて、前記した光束 S(λ) の色相を表す色度座標 x,y は、以下の式(式2)
x = X / (X+Y+Z)
y = Y / (X+Y+Z)
のように求められる。
なお、等色関数 xe(λ),ye(λ),ze(λ) の特性は、本発明のカラー画像表示装置の技術に関連する概念の概略図である
図14に示すようである。
(因みに、一般文献では、等色関数は、x,y,z 各文字の上に横棒を付した記号が使用されるが、本明細書では都合により前記したように表記する。)
【0003】
この表色系で表現可能な色相の全てを x,y 平面にプロットすると、本発明のカラー画像表示装置の技術に関連する概念の概略図である
図15に示した、釣鐘形状の領域の、周囲および内部に位置することになり、このような図を色度図と呼ぶ。
太陽光を分光器を用いてスペクトル分解して狭い帯域の部分を取り出した光、あるいはレーザ光のような単色光の場合、最も波長の長い赤色は点(A)にプロットされ、波長が短くなるに従ってプロットされる位置が釣鐘形状の周囲の逆U字形状の実線に沿って移動し、最も波長の短い青色(すみれ色)は点(B)にプロットされる。
そして、前記点(A)から前記点(B)に至る逆U字形状の実線を、スペクトル軌跡(Ls)と呼ぶ。
【0004】
色度図上においては、ある色度座標を有する第1の光と、別の色度座標を有する第2の光とを、何らかの比率で加色混合して生成した第3の光の色度座標は、混合前の第1と第2の光の各色度座標の2点を結ぶ線分上にプロットされ、その際、2点を結ぶ線分上の何処にプロットされるかは、加色混合時の混合比率で決まる、という性質がある(以降、この性質を混色座標則と呼ぶ)。
ただし、第1の光と第2の光の混合比率を、例えば1対0とし、実質的に一方の光しか含まれない場合も、広義として加色混合と呼ぶものとする。
そのため、前記点(A)にプロットされる光と、前記点(B)にプロットされる光とを、1対0から0対1まで、混合比率を連続的に変えた加色混合によって生成された光がプロットされる色度座標の集合は、前記点(A)から前記点(B)に至る破線で示した直線分を形成し、この直線分を純紫軌跡(Lp)と呼ぶ。
【0005】
なお、スペクトル軌跡(Ls)上において、緑色は、 y 座標が最も大きい部分(逆U字形状の頂上付近)に配置され、その補色であるマゼンタ色は純紫軌跡(Lp)上の中央付近に配置される。
さらに、点(B)の青色の補色である黄色は、緑色の箇所と点(A)との中間あたりに、また、点(A)の赤色の補色であるシアン色は、緑色の箇所と点(B)との中間あたりに、それぞれスペクトル軌跡(Ls)上に配置される。
一方、純白色は、色度座標が1/3,1/3 の位置に配置される。
このような色度図や色度座標に関する事項は、色彩を学ぶ者にとって、必須の知識である。
【0006】
そのため、いま述べた白色を中心として、反時計回りに赤から黄,緑,シアン,青,マゼンタそして赤へと、色度図を連続的に変化する色相で着色した図版が、色度図について解説した書籍やネット上の記事に多数掲載されている。
しかし実は、これらの図版は正しくない。
その理由は、印刷物の場合は、シアン,マゼンタ,黄色(と黒)のインクの減色混合によって全ての色が表現されているし、液晶モニタやプロジェクタの場合は、赤(R),緑(G),青(B)色のカラーフィルタからの透過光や発光素子からの光の加色混合によって全ての色が表現されているからである。
【0007】
以下、これを具体的に説明する。
この種のRGB3原色の加色混合により色相を表現するに際しては、標準としてsRGBと称する規格が存在して、
図16の色度図上のプロットに示すように、標準の赤,緑,青の各色の色度座標(sR,sG,sB)が定められている。
前記色度座標(sR,sG,sB)の具体的な座標値 (x,y) は、赤が (0.6000,0.3300) 、緑が (0.3000,0.6000) 、青が (0.1500,0.0600) である。
前記した混色座標則を考え合せると、sRGBに準拠する表示デバイスによって表現可能な色相は、前記色度座標(sR,sG,sB)を頂点とする3角形の周囲および内部の座標の色に限られることになるため、スペクトル軌跡(Ls)と純紫軌跡(Lp)とが囲む、色度図の有効領域のうちの一部分しか網羅していないことが判る。
よって、sRGBに準拠する表示デバイスでは、正しく着色された色度図を表示できないのである。
【0008】
これを、sRGBに準拠する表示デバイスではなく、例えば、赤は波長640nm(三菱電機),緑は波長524nm(日亜化学工業),青は波長465nm(日亜化学工業)の、実在の半導体レーザによって実現可能な、単色光の3原色を使用したプロジェクタを想定した場合、このプロジェクタによって表現可能な色相は、
図16に点線で示した、スペクトル軌跡上に頂点が位置する3角形領域となる。
これは、sRGBよりも表現可能な色相領域が拡大されているが、必要領域を網羅していないことに変わりが無い。
【0009】
以上のように3原色によって形成される3角形を幾ら大きくしても、曲線を周囲に持つ色度図の有効領域を網羅することは不可能であるため、3原色の加色混合や減色混合によって色相を表現する技術では、正しく着色された色度図を表示することは不可能であることが判る。
しかし、色彩を学ぶ者が、正しく着色された色度図を見ることができないことは、大きな問題である。
他にも、例えば単色光の波長と色の対応を教示する画像や、星の光などをスペクトル分解した様子を示す画像、化学物質に含有される金属イオンと炎色反応の色の対応を教示する画像、モルフォチョウやタマムシ、クジャクなどの羽根の、あるいはアワビなどの貝殻(内側)の、その色彩(構造色)を示す画像等々の場合も、同様に正しく表示されない問題に直面する。
【0010】
sRGBより広い色相領域のカラー画像を表示するための先行技術として、例えば、特開平09−051548号公報には、色相を表現する1個の画素内に2個の副画素を配置し、各副画素にピッチの異なる回折格子を設けることにより、適当に選ばれた2種の単色光の加色混合を行い、混色座標則によって、単色とは限らない任意の色度座標の色相を実現できるとするものが記載されている。
しかし、この技術の場合、回折格子記録媒体に垂直に白色照明光を照射するとして、垂直より例えば30度だけ手前側に倒れた視線で観察することを前提に、全ての画素に水平方向の直線から成る回折格子を形成するため、所謂レインボーホログラムと同様に、観察する視線角度が所定値から外れると、見える色が変化してしまうし、複数の光源からの光が当たっている場合は、意図しない色の混合が起きてしまう欠点がある。
また、RGBの3個の副画素を配置する従来のものよりも、副画素が2個に減るため、輝度や解像度の低下、色ずれの問題が3/2倍だけ解消される旨、この文献に述べられているが、それでも、副画素を設けないものには劣ることになる。
【0011】
さらに、特開2006−011141号および特表2007−527017号公報には、色相を表現する1個の画素内に3個またはそれ以上の個数の副画素を配置し、sRGBに限定されない、独自に選んだ3原色またはそれ以上の個数の原色の単色光が、回折によって生ずるようなピッチを有する回折格子を副画素に形成して加色混合を行い、混色座標則によって、sRGBより広い範囲の色を有する画像を表示できるとするものが記載されている。
しかし、これらの技術についても、前記した特開平09−051548号と同様に、観察する視線角度が所定値から外れると、見える色が変化してしまうし、複数の光源からの光が当たっている場合は、意図しない色の混合が起きてしまう欠点がある。
また、任意の3原色またはそれ以上の個数の原色を選べるとは言え、表示可能な色相領域は、色度図の逆U字形状のスペクトル軌跡(Ls)に内接する3角形または多角形であるから、スペクトル軌跡(Ls)上の全ての色相が1枚の画像に存在する色度図のようなカラー画像を正しく表示することは不可能である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明に関する説明において、共役という用語に関しては、幾何光学分野における一般用語として、例えば、AとBとは共役である、と言うとき、少なくとも近軸理論に基づき、結像機能を有するレンズ等の光学素子の作用によってAがBに、またはBがAに結像されることを意味する。
ここで、レンズとは、平面や球面(非球面を含む)の界面の前後の屈折媒質または屈折率が規定されたもので、レンズ等には、レンズの他に、前記界面を反射面としたものとして定義したミラーも含まれるし、任意個数のレンズやミラーの組合せによるものも含まれる。
このとき、A,Bは像であって、孤立した点像が対象として含まれることは当然として、複数の点像からなる集合や、点像が連続的に分布した拡がりのある像も対象として含める。
なお、自明の特別な状況として、レンズ等を全く含まない場合(レンズが前後の屈折媒質が空気である1個の界面である場合)は、Aと共役な像はA自身であるとする。
【0035】
ここで、点像あるいは像点(すなわち像)とは、幾何光学分野における一般用語として、実際に光がその点から放射されているもの、光がその点に向かって収束して行ってスクリーンを置くと明るい点が映るもの、光がその点に向かって収束して行くように見える(が、その点は光学系の内部にあってスクリーンを置けない)もの、光がその点から放射されているように見える(が、その点は光学系の内部にあってスクリーンを置けない)もの、の何れをも含み、区別しない。
【0036】
一般のカメラレンズを例にとると、通常は開口絞りがレンズの内部に存在するが、光が入る側からレンズを見たときに、レンズを通して見える開口絞りの像を入射瞳、光が出る側からレンズを見たときに、レンズを通して見える開口絞りの像を射出瞳、入射瞳の中心に向かう、または射出瞳の中心から出て来る光線(通常は子午光線)を主光線と呼ぶ。
また広義には、主光線以外の光線は周辺光線と呼ばれる。
ただし、レーザのような指向性を有する光を扱う光学系では、開口絞りによって光束を切り出す必要が無いために開口絞りが存在しない場合が多く、その場合は、光学系における光の存在形態によって、それらが定義される。
【0037】
通常は、放射点からの放射光束における、光の方向分布の中心光線を主光線とし、光学系に入射する主光線またはその延長線が光軸と交わる位置に入射瞳があり、光学系から射出する主光線またはその延長線が光軸と交わる位置に射出瞳があると考える。
ただし、厳密な話をすると、このように定義した主光線と光軸とが、例えば調整誤差のために交わらず、ねじれの位置にあるに過ぎない場合も考えられる。
しかし、このような現象は本質とは無関係であり、また議論しても不毛であるため、以下においては、このような現象は生じないと見なす、あるいは、主光線と光軸とが最接近する位置において交わっていると見なすことにする。
また、光学系のなかの隣接する2個の部分光学系AとBに注目し、Aの直後にBが隣接しているとしたとき、(Aの出力像がBの入力像となるのと同様に)Aの射出瞳はBの入射瞳となるし、そもそも光学系のなかに任意に定義した部分光学系の入射瞳・射出瞳は、(開口絞りが存在すれば全てそれの像であるし、存在しなくても)全て共役のはずであるから、特に区別が必要無ければ、入射瞳・射出瞳を単に瞳と呼ぶ。
【0038】
本発明の説明および図面においては、光学系の空間座標系を u,v,w と取り、光軸を w 軸と呼んでいるが、もし反射鏡によって光軸が折り曲げられた場合は、元の w 軸に沿う光線が反射されて進む方向も w 軸と呼び、新たな座標軸を取ることはしない。
【0039】
先ず、本発明のカラー画像表示装置を簡略化して示す模式図である
図1を参照して、本発明を実施するための形態について説明する。
また、表示対象のカラー画像として、前記したように色度図像を採り、これを表示する場合を例にとって説明する。
ただし、説明の理解が容易になるよう、最初に第7の発明について説明する。
【0040】
本カラー画像表示装置は、入力像が形成された広義ホログラム(H)を有している。
ホログラムとは、回折格子が記録された透過型または反射型の光学的情報媒体で、記録時に定めた条件の光束で照明することにより、照明光が回折格子によって回折され、何らかの像が出現するもので、通常は立体像を表示するために利用される。
本発明における前記広義ホログラム(H)も透過型または反射型の光学素子であり、これには、
図15の色度図に図形として対応した、
図2に記載の入力像(Pd)が、像として描画されており、照明光束の照射により像が出現するものではなく、したがって通常の意味でのホログラムとは相違する。
しかし入力像(Pd)の着色領域(Ci)に対応する部分には回折格子が設けられおり、それによって色が出現するため、「広義ホログラム」と称している。
なお、前記広義ホログラム(H)に設けられる回折格子の形態としては、当面は、モノクロの銀塩写真乾板を露光して形成される、光透過率が正弦波状に変化する、濃度格子と呼ばれるものを想定しておくこととするが、後述するように、位相格子等に拡張することができる。
なお補足すると、前記した「入力像の着色領域」とは、出力像(Dc)における着色された領域に対応する、すなわち共役な入力像(Pd)における領域を指し、言うまでもなく、例えば色素やインク等で着色されることを指すものではない。
【0041】
連続スペクトルを有する光源(Ge)から発した光源光束(Fs)は、照明光学系(Oe)を介して照明光束(Fe)となり、前記広義ホログラム(H)に照射される。
ただし、前記照明光束(Fe)の形態、すなわち前記照明光束(Fe)が平行光束であるか発散または集束光束であるかの別、平行光束である場合は前記広義ホログラム(H)への照射方向が、発散または集束光束であるる場合は発散点または集束点と前記広義ホログラム(H)と相対位置関係が、前記広義ホログラム(H)の作成時に定めた規定の条件を満足するよう、前記照明光学系(Oe)を設計し、これと前記光源(Ge)と前記広義ホログラム(H)とを配置する。
【0042】
前記広義ホログラム(H)の着色領域(Ci)は、2次元分布する色相画素(Pxy)に分割されており、それぞれの前記色相画素(Pxy)には、それが有すべき色相を、すなわち(表示する出力像が色度図像であるから)、前記色相画素(Pxy)が前記広義ホログラム(H)の入力像において占める位置に対応した色度座標 x,y の値に相応する色相を、本カラー画像表示装置が出力する出力像(Dc)の、前記色相画素(Pxy)に共役な箇所に与えるような回折格子が設けてある。
色相画素は、前記出力像(Dc)においては、最小単位の加色混合による色付き領域であり、それに対応する前記広義ホログラム(H)上の領域が、前記色相画素(Pxy)である。
色相画素は、広い意味での画素(広義画素)であるが、後述するように、通常の画素とは相違して、正方形などの矩形であるとは限らず、また画面内での大きさが一様であるとは限らない。
しかし、本発明を理解し易くするため、当面は、本発明の実施形態の一つでもある、色相画素が正方形で、画面内での大きさが一様である場合を想定して説明する。
【0043】
前記広義ホログラム(H)の後方には、開口(Aq)を有する開口絞リ板(Sq)が設けてあり、前記開口(Aq)が、それ以降の光学系の(入射)瞳(Q)として機能する。
そのため、前記広義ホログラム(H)の前記色相画素(Pxy)で回折した光のうち、前記開口(Aq)を通過した瞳通過光束(Fq)のみが、後方にある結像光学系(Of)に入射し、さらに後方にある結像面(Sf)上の実像として、前記出力像(Dc)の結像に寄与する。
ただし、前記開口(Aq)や前記結像光学系(Of)が光軸(w)に対して軸対称な構造を有しているとして、前記照明光束(Fe)のうち、前記広義ホログラム(H)で回折されなかった成分が前記開口(Aq)を通過しないよう、前記広義ホログラム(H)と前記開口(Aq)との距離と、前記照明光束(Fe)の太さと光軸(w)との成す角度との関係を決める。
ここで補足すると、前記した「回折されなかった成分」とは、前記照明光束(Fe)が、前記広義ホログラム(H)で正反射された成分(広義ホログラムが反射型の場合)や前記広義ホログラム(H)を素通しで透過した成分(広義ホログラムが透過型の場合)を指す。
【0044】
投射レンズとして機能する前記結像光学系(Of)によって、前記広義ホログラム(H)と共役な実像が結像される前記結像面(Sf)は、拡散反射スクリーンでもよく、あるいは前記結像面(Sf)は、その後方から前記出力像(Dc)を観察するための拡散透過スクリーンでもよい。
また、後述するように、前記結像面(Sf)を感光材料層とすることもできる。
さらに、後述するように、前記出力像(Dc)が虚像であって、前記結像面(Sf)が仮想の面である場合もある。
【0045】
次に、前記色相画素(Pxy)それぞれが有する回折格子として、どのようなものを設けるかについて説明する。
先ず、前記色相画素(Pxy)が、色度図像におけるスペクトル軌跡(Ls)上のものである場合、例えば、波長495nmのシアン色の色相画素を想定した場合は、この色相画素(Pxy)に入射される、連続スペクトルの前記照明光束(Fe)の光線うちの、対象波長の光線が、前記瞳(Q)の方向に回折されるような空間並び周期(すなわち周期並びピッチ)と周期並び方向を有する回折格子を設ければよい。
このようにすることにより、この色相画素で回折される光のうち、想定した波長のシアン色の光成分のみが前記瞳(Q)の方向に向かい、前記開口(Aq)を通過できるが、それ以外の波長の光は、全て前記開口絞リ板(Sq)に当たって通過を阻止されてしまうため、前記結像光学系(Of)によって前記結像面(Sf)に前記出力像(Dc)が結像されるとき、この色相画素に共役な箇所は、シアン色に着色される。
【0046】
一方、前記色相画素(Pxy)がスペクトル軌跡(Ls)上にないものの場合は、先に純紫軌跡(Lp)の由来について説明したものと同様に、混色座標則を使い、複数の単色光を加色混合して着色されるようにすればよい。
本発明のカラー画像表示装置の技術に関連する概念の概略図で、色相画素(Pxy)と、それに付与される色相が色度図において占める座標点(pxy)との対応を表した図である
図3に一例を示すように、対象とする前記座標点(pxy)を通る、適当な直線(lxy)を想定し、これがスペクトル軌跡(Ls)と交差する2個の点(a,b)を特定して、その色度座標に対応する波長 λa,λb を有する2種の単色光を選び、それらの波長それぞれについて、対象波長の光線が、前記瞳(Q)の方向に回折されるような空間並び周期と周期並び方向を有する回折格子の2成分を、前記色相画素(Pxy)に重ね合わせて、すなわち重畳して設ければよい。
【0047】
ただし、2成分の回折格子の各成分の回折強度は、前記点(a,b)それぞれと前記色相画素(Pxy)との位置関係に基づいて決める必要がある。
前記したように、いまは、光透過率が正弦波状に変化する濃度格子を想定しているため、回折強度は回折効率に比例し、濃度変化波形の振幅に比例すると近似できるものとする。なお、比例しない場合(非線形性)の扱いに関しては後述する。
したがって、当面は、回折格子のある成分と他の成分の回折強度の比を、例えば1対2に設定する場合は、振幅を1対2に設定すればよいものとする。
以下では、前記照明光束(Fe)のスペクトル分布が一様とは限らないことを前提として、どのような振幅の比率とするかについて説明する。
【0048】
前記点(a)に対応する前記照明光束(Fe)の波長 λa の成分についての、前記した式1の三刺激値の値は、スペクトル分布をデルタ関数と考えればよいから、以下の式(式3)
Xa = S(λa)・xe(λa)
Ya = S(λa)・ye(λa)
Za = S(λa)・ze(λa)
と表され、よってそれらの和は、以下の式(式4)
Ta = Xa+Ya+Za
= S(λa)・{ xe(λa)+ye(λa)+ze(λa) }
と表せる。
同様に、波長 λb の成分についての、三刺激値の和は、以下の式(式5)
Tb = Xb+Yb+Zb
= S(λb)・{ xe(λb)+ye(λb)+ze(λb) }
と表せる。
【0049】
いま、波長 λa の成分と波長 λb の成分とを、割合 f 対 1−f で混合した光について考える。
このとき、この混合光の色度座標が、前記点(a)と前記点(b)とを結ぶ線分を、 m 対 1−m で内分する位置に来るものとすると、 m の値は、以下の式(式6)
m = f・Ta / { f・Ta + (1−f)・Tb }
のように計算される。
したがって、逆に、前記色相画素(Pxy)が、前記点(a)と前記点(b)とを結ぶ線分を、 m 対 1−m で内分する位置にある場合は、以下の式(式7)
f = m・Tb / { (1−m)・Ta + m・Tb }
の f の値にて、波長 λa の成分と波長 λb の成分とを、割合 f 対 1−f で混合すればよいことになる。
【0050】
なお、
図3においては、前記直線(lxy)が前記純紫軌跡(Lp)に平行であるように描いてあるが、いまの場合、必ずしも平行でなくても構わない。
しかし、前記座標点(pxy)が前記純紫軌跡(Lp)の近傍にある場合は、前記直線(lxy)は前記純紫軌跡(Lp)にほとんど平行なものにならざるを得ないし、前記座標点(pxy)の位置に依存して前記直線(lxy)が前記純紫軌跡(Lp)に対して成す角度を変えるべき特段の理由が無い限り、前記座標点(pxy)の位置によらず、前記直線(lxy)は、前記純紫軌跡(Lp)に平行とすることが簡単で有利である。
【0051】
また、ここでは、前記色相画素(Pxy)の色相を2種の単色光の加色混合によって実現する場合を説明したが、3種以上の単色光の加色混合によって実現するようにしても構わない。
例えば、本発明のカラー画像表示装置の技術に関連する概念の概略図で、色相画素(Pxy)と、それに付与される色相が色度図において占める座標点(pxy)との対応を表した図である
図4に一例を示すように、対象とする前記座標点(pxy)と、前記スペクトル軌跡(Ls)上に適当にとった点(c)とを結ぶ直線(lxy’)を想定し、これが、前記スペクトル軌跡(Ls)上に適当にとった点(a”)と点(b”)とを結ぶ直線と交差する点(c”)の座標を求め、定量化した混色座標則を用いて、点(a”)と点(b”)の波長の光の加色混合によって前記点(c”)の色相を実現するための、点(a”)と点(b”)の波長の光回折する2成分の回折格子の各成分の振幅を決定する。
そして、前記点(c”)の光と前記点(c)の波長の光の加色混合によって、前記色相画素(Pxy)の色相を実現する前記点(c)の波長の光を回折する回折格子の振幅を決定すればよい。
【0052】
ところで、色度図について解説した書籍やネット上の記事に掲載されている図版の多くにおいて、純白色に向かって明るさが増して行くような明るさ分布で色度図が描かれているが、本来、色度図は、色相を座標で表したもので、明るさに関する情報を表すものではないため、そのような明るさ分布とするか、あるいは一様など、他の明るさ分布とするかについては、任意である。
本発明のカラー画像表示装置によって色度図像を表示する広義ホログラム(H)を作成する場合も、任意に選んだ明るさ分布としてよい。
ここでは、実現したい明るさ分布、すなわち Y 値の分布があるとき、各色相画素(Pxy)の Y 値を実現する回折強度の計算方法について説明する。
【0053】
ある色相画素(Pxy)に対して実現したい Y 値と色度座標 x,y が決まっているとして、その色相を発現するために、2成分の波長 λa,λb を使用し、また前記した式7に基づく計算によって各成分の回折強度の比率 f および 1−f を定めたとして、 Y 値に比例する明るさを有するよう、この比率を保ったまま、全体的な回折強度を調整すればよい。
具体的には、波長 λa,λb における照明光束(Fe)のパワー密度 f・S(λa) および (1−f)・S(λb) それぞれに、同じ倍率 κ を乗じて Y 値を求める以下の式(式8)
Y = κ・{f・S(λa)・ye(λa) + (1−f)・S(λb)・ye(λb)}
の値が実現したい Y 値となるよう、倍率 κ を定め、各成分の回折強度を κ・f および κ・(1−f) により求めることを、前記色相画素(Pxy)それぞれに対して実行すればよい。
【0054】
先に、対象波長の光線が、前記瞳(Q)の方向に回折されるような空間並び周期と周期並び方向を有する回折格子の2成分を、前記色相画素(Pxy)に重ね合わせて設ければよい旨を述べたが、重ね合わせる代わりに、前記色相画素(Pxy)を、回折格子の成分の個数に対応する個数のサブ画素、いまの場合は2個のサブ画素に分け、回折格子の一方の成分を一方のサブ画素に形成し、他方の成分を他方のサブ画素に形成することも原理的には可能である。
その際は、各サブ画素の面積を同じとし、各サブ画素の回折強度を κ・f および κ・(1−f) に設定すればよい。
あるいは、同じ面積の各サブ画素のうちの、回折格子として有効に機能する部分の面積を κ・f および κ・(1−f) に比例するものとし、回折格子として有効に機能する部分の回折格子の回折強度自体は、両方のサブ画素で同じに設定することも原理的には可能である。
ここで、サブ画素のうちの、回折格子として有効に機能する部分でない部分は、そこに回折格子を形成しないことで構成できる。
【0055】
さらにあるいは、前記色相画素(Pxy)を、面積の比率が、前記した比率 f および 1−f である2個のサブ画素に分割し、各サブ画素からの回折光量を κ・f および κ・(1−f) に比例する値とすべく、両方のサブ画素に共通の回折強度を設定することも原理的には可能である。
【0056】
しかし、当然ながら、サブ画素は、前記色相画素(Pxy)より小さいため、その小ささに起因する回折現象のため、回折格子によって前記瞳(Q)の方向に放射された、回折光束の拡がり角が過大になってしまう場合がある。
回折光束の拡がり角が大きくなれば、前記瞳(Q)を通過できる光量が減るため、光の利用効率が低下してしまう上に、前記瞳(Q)による色の選択の鋭さが低下して不要な色の光まで通過させてしまうため、スペクトル軌跡が曲がっていることに対応して、前記瞳(Q)を通過した光束の色度座標がスペクトル軌跡から離れてしまい、スペクトル軌跡上の色が正確に表現できなくなる問題が生ずる。
したがって、この観点から言えば、前記色相画素(Pxy)を回折格子の成分に対応してサブ画素に分割するのではなく、前記色相画素(Pxy)のそれぞれの全体に成分を重ね合わせて形成する構成が最も優れていることになる。
【0057】
因みに、前記色相画素(Pxy)の横×縦の寸法を a×b とし、前記色相画素(Pxy)すなわち前記広義ホログラム(H)から前記瞳(Q)までの距離を L として、前記瞳(Q)の瞳面に U,V 座標系を設けると、前記瞳(Q)における、前記色相画素(Pxy)の矩形開口がつくるフラウンホーファー回折パターンの光パワー密度分布は、以下の式(式9)
I(U,V)=sinc^2{π(a/λ)・(U/L)}・sinc^2{π(b/λ)・(V/L)}
のようになる。ただし、記号 ^2 は2乗を表す。
この回折パターンの主要部である、光パワーの大部分が集まる、最も内側の暗線で囲まれた矩形領域 2λL/a × 2λL/b の大きさを目安として採ることとし、例えば、波長 λ として長波長側の端(赤)の700nmを採り、実際の a,b,L の値に基づく計算によってこの矩形領域の寸法を求めた上で、この矩形領域が内接する大きさの円形を、前記瞳(Q)の大きさの、回折要因による目安とすればよい。
ただし、前記照明光束(Fe)の点光源性の程度に依存して前記した回折パターンの拡がりが追加されるため、この分も考慮して前記瞳(Q)の大きさを決める必要がある。
【0058】
ここまで述べてきたように、前記照明光束(Fe)のスペクトル分布が一様でない場合も含め、式3から式8を用いて説明した方法により、前記色相画素(Pxy)と共役な前記出力像(Dc)の画素における色と明るさとを正確に実現するための、前記色相画素(Pxy)に属する加色混合のパラメータ f と κ とを決定することができるが、この方法は、後述する、前記照明光束(Fe)が複数の個別照明光束から成る場合や、個別照明光束のそれぞれが有する主たるスペクトル帯域が互いに相違する場合にも適用できる。
なお、ここでは、2種類の波長によって色相を発現する場合について述べたが、波長が3種類以上の場合についても、先に色相を発現するための各成分の回折強度の比率をしておき、同様に比率を保ったまま、全体的な回折強度を調整すればよい。
【0059】
前記広義ホログラム(H)に描画するための、前記した、前記照明光束(Fe)の光線うちの、対象波長の光線が、前記瞳(Q)の方向に回折されるような空間並び周期と周期並び方向を有する回折格子の、単一または複数波長成分を、前記色相画素(Pxy)の全てについて決定した画像データを生成する必要があるが、その方法の一つとして、コンピュータホログラムの技法を応用するものがある。
通常のホログラムは、例えば、レーザ光などの可干渉の単色光で対象物体を照明したときの、対象物体からの散乱光である物体光と、それと可干渉な参照光とを、同時に写真乾板に入射して露光することにより、写真乾板上で物体光と参照光とが干渉して生じる干渉縞を記録し、それを現像定着した写真乾板として作成する。
再生時には、記録時と同じ条件の参照光をホログラム(写真乾板)に照射することにより、参照光が記録された干渉縞によって回折されて、記録時に写真乾板に当たっていた物体光が発生することにより、対象物体の立体像が再現されるものである。
【0060】
一方、コンピュータホログラムは、実在の物体や可干渉光を用いる代わりに、例えば、コンピュータ内の仮想の物体によって可干渉光が散乱されて物体光が生ずる様子、および生成された物体光が仮想の写真乾板まで伝播して電界分布が作られる様子、そして、それと参照光の電界分布とが干渉する様子をシミュレーションし、発生するであろう干渉縞画像を予測するものであり、干渉縞画像は、例えば、8ビットなどの明暗の諧調を有する画像データとして作成され、ビットマップなどのファイル形式で保存される。
そして、電子ビーム描画装置や高精細レーザ描画装置、高精細プロッタなどの干渉縞画像描画手段を用いて、感光材料に生成した干渉縞画像を描画露光し、所定の現像定着等の処理プロセスを施すことによって、実体としてのコンピュータホログラムが完成する。
それの再生の仕方は、通常のホログラムと同様であるが、実在しない物体の立体像を出現させることができるものである。
【0061】
本発明においてコンピュータホログラムの技法を利用する場合、干渉縞画像の画像データを作成する段階では、いま述べた、仮想の写真乾板が前記広義ホログラム(H)に、参照光が前記照明光束(Fe)に、物体光が前記瞳(Q)の中心に向かう回折光にそれぞれ対応するとし、次の各ステップを実行すればよい。
【0062】
すなわち、
[ステップ1]対象とする前記色相画素(Pxy)を1個選択する。
[ステップ2]前記したようにして、対象とする前記色相画素(Pxy)に発現させたい(単一または複数の)色と、その色の干渉縞の振幅を決定する。
[ステップ3]対象とする前記色相画素(Pxy)に発現させたい色に対応する波長を選択する。
[ステップ4]対象とする前記色相画素(Pxy)を2次元分割して設けた格子描画画素を1個選択し、その格子描画画素から前記瞳(Q)に向けて発する物体光の前記格子描画画素における位相と、同じ波長を有し、前記格子描画画素に到達する参照光の位相を算出する。
[ステップ5]対象とする前記色相画素(Pxy)内の全ての格子描画画素について前記ステップ4を実行し、物体光と参照光との光電界の干渉のシミュレーションを行い、干渉して生じた光電界のパワー密度分布、すなわち電界振幅の絶対値の2乗を算出することにより、前記色相画素(Pxy)内において発生するであろう干渉縞画像を算出した上で、それに前記ステップ2で決定した振幅を与えることにより、前記格子描画画素それぞれの値を決定する。
[ステップ6]対象とする前記色相画素(Pxy)に発現させたい他の色があれば、前記ステップ3から5を行ってその色に対する新たな干渉縞画像を算出し、それに前記ステップ2で決定した振幅を与え、先に作成した干渉縞画像の各格子描画画素の値に加算することを、発現させたい全ての色に対して実行する。
[ステップ7]前記ステップ1から6を、前記色相画素(Pxy)の全てに亘って行い、前記色相画素(Pxy)の全体を1枚の干渉縞画像の画像データとして保存する。
【0063】
なお、前記格子描画画素の1個は、濃度諧調を有し、それらが縦横に多数並ぶことにより、周期的な濃度変化を有する干渉縞が表現されるもので、前記格子描画画素の大きさは、干渉縞画像描画手段の分解能に応じて決めればよい。
また、前記ステップ4で行う物体光および参照光の位相の算出は、対象とする前記格子描画画素と物体光の波源との距離 Δ 、および前記格子描画画素と参照光の波源との距離 Δ を算出し、光電界の複素振幅 E が、以下の式(式10)
E = exp(−i・k・Δ)
の形式で求まることを利用すればよい。
ここで、 k=2π/λ は波数、 i は虚数単位である。
ただし、参照光の波源が無限遠、すなわち参照光が平面波である場合は、 Δ が無限大であるため、前記した式10をそのまま使うことは出来ない。
参照光の方向単位ベクトルを、 u,v,w の各方向の成分で表して (iu,iv,iw ) と書くとき、前記広義ホログラム(H)上の座標 (u,v) にある前記格子描画画素での位相 ψ(u,v) は、以下の式(式11)
ψ(u,v) = −k・(u・iu + v・iv)
で求められるので、前記した式10の代わりに、以下の式(式12)
E(u,v) =exp(i・ψ(u,v))
によって求められる。
【0064】
なお、参照光の波源が平面波でない場合でも、前記色相画素(Pxy)の代表点、例えばその中心に入射する前記照明光束(Fe)の方向と等しい方向を有する平面波が、その色相画素(Pxy)内の全ての前記格子描画画素に到達するものとして、前記式11,式12によって、前記ステップ4における参照光の位相の算出を行ってもよい。
同様に、物体光についても、前記色相画素(Pxy)の代表点から前記瞳(Q)の中心に向けて発する前記回折光束(Fd)の方向と等しい方向を有する平面波が、その色相画素(Pxy)内の全ての前記格子描画画素から発するものとして、前記式11,式12によって、前記ステップ4における物体光の位相の算出を行ってもよい。
【0065】
いま述べたコンピュータホログラムの技法を利用する方法の場合、前記色相画素(Pxy)内に形成すべき回折格子の空間並び周期と周期並び方向を値として陽に算出することなく、干渉縞画像として回折格子の形状を決定するものであったが、逆に、コンピュータホログラムの技法を応用しないで、前記色相画素(Pxy)内に形成すべき回折格子の空間並び周期と周期並び方向を値として陽に算出し、干渉縞画像の画像データを生成する方法もあり、以下、これについて説明する。
【0066】
先ず、2本の光束の、交差角および波長と、生ずる干渉縞のピッチとの関係について述べる。
本発明のカラー画像表示装置の技術に関連する概念の概略図である
図13に、伝播方向光軸(d1,d2)を有する、波長 λ の2本の光束が干渉縞(fr1,fr2,…)をつくる様子を表す。
図13の(a)に示すように、前記伝播方向光軸(d1,d2)は、共に紙面内に存在し、それらは角度 θ で交差しているものとする。
前記伝播方向光軸(d1,d2)それぞれに垂直な、2群の実線群は、2本の光束それぞれの波面を表している。
前記干渉縞(fr1,fr2,…)のそれぞれは空間的なものであって、電界強度の最も高い箇所に着目すると、前記伝播方向光軸(d1,d2)の対称軸たる w’軸方向に延びているのみならず、紙面に垂直の方向、すなわち u’軸方向にも延びた、面状の構造を有するものである。
ここで、隣接する2個の干渉縞(fr1,fr2)と2個の波面(wf1,wf2)に着目し、それらで形成される3角形(Tf)に注目する。
該3角形(Tf)を抽出した
図13の(b)から判るように、その斜辺の長さ Λ' と角度 θ 、波長 λ の関係は、以下の式(式13)
Λ' = λ / sinθ
のように表されるから、隣接する干渉縞(fr1,fr2)の間隔、すなわちピッチ Λ は、以下の式(式14)
Λ = Λ'・cos( θ/2 ) = λ / { 2・sin( θ/2 ) }
のように表すことができる。
【0067】
次に、いま求めた関係式を用いて、前記広義ホログラム(H)において、前記照明光束(Fe)のうちの前記色相画素(Pxy)に入射する成分の方向単位ベクトル<i> と、前記回折光束(Fd)のうちの前記色相画素(Pxy)から射出する成分の方向単位ベクトル<j> とに注目し、これらの方向に伝搬する平面波が、前記広義ホログラム(H)上につくる干渉縞の周期並び方向と空間並び周期を求める計算方法について説明する。
ただし、本明細書では、記号を山括弧 < > で囲んだ形式で書かれる量は、ベクトルを表すものとする。
また、 < > の中の記号に、添え字 u,v,w を付したものは、そのベクトルのそれぞれ u,v,w 成分を表すものとする。
方向単位ベクトル <i> と <j> が、
図13の(a)の前記伝播方向光軸(d1,d2)の方向を向くように見える方向から見たときの、 w’軸の方向を向くベクトル <f> 、および紙面に垂直な方向を向くベクトル<g> は、以下の式(式15)
<f> = <i> +<j>
<g> = <i> ×<j>
= (iv・jw − iw・jv ,
iw・ju − iu・jw ,
iu・jv − iv・ju )
のように表せる。
なお、記号 × はベクトル積(外積)を表す。
【0068】
先に、干渉縞が面状の構造を有する旨を述べた部分で説明したように、電界強度の最も高い箇所に着目した面(以降、これを干渉縞代表面と呼ぶ)は、ベクトル<f> と <g> の両方に平行である。
したがって、前記広義ホログラム(H)の原点を通り、ベクトル <f> と<g> の両方を含む平面(以降、これを干渉縞代表面 Ω と呼ぶ)と、前記広義ホログラム(H)とが交差する直線を見出せば、前記広義ホログラム(H)に形成すべき回折格子の角度が判ることになる。
干渉縞代表面 Ω の上に存在する任意の位置ベクトル <ω> は、任意の値のパラメータ α,β を用いて、以下の式(式16)
<ω> = α<f> + β<g>
のように表すことができる。
この位置ベクトルが前記広義ホログラム(H)上に存在するときは、その w 座標が零であるから、 α,β の関係として、 α・fw + β・gw =0 、すなわち以下の式(式17)
α = −( gw/fw )・β
が成立する。
前記広義ホログラム(H)と干渉縞代表面 Ω が交差する直線 Lf の上の、原点以外の1点が判ればよいから、その点の位置ベクトル <ω> の u,v 座標は、 β=1 を式17と式16に適用した、以下の式(式18)
ωu = −( gw/fw )・fu + gu
ωv = −( gw/fw )・fv + gv
により算出することができる。
よって、この点と原点とを結ぶ直線 Lf が、 u 軸に対して成す角度 Φ 、すなわち以下の式(式19)
Φ = atan( ωv/ωu )
により求めることができる。
そして、干渉縞の周期並び方向は、直線 Lf に垂直だから、角度 Φ を90度回転した角度として求めればよい。
【0069】
次に、前記広義ホログラム(H)上の干渉縞の空間並び周期を求める計算方法について説明する。
図13において干渉縞の周期並び方向である v’軸の方向を向くベクトルを、前記広義ホログラム(H)の座標系である u,v,w 座標系で<h> と書くとすると、以下の式(式20)
<h> = <i> −<j>
と表せるから、このベクトルの方向を向き、大きさが干渉縞のピッチ Λ に等しいベクトル <Λ> は、以下の式(式21)
<Λ> = (Λ/|<h>|)<h>
と表すことができる。
ここで、記号 | | は、ベクトルの長さ、または値の絶対値を表す。
いま、前記した前記広義ホログラム(H)の原点を通過する干渉縞代表面 Ω に対し、隣接する干渉縞代表面 Ω' を考える。
干渉縞代表面 Ω' の上に存在する任意の位置ベクトル <ω'> は、任意の値のパラメータ α',β' を用いて、以下の式(式22)
<ω'> = α'<f> + β'<g> + <Λ>
のように表すことができる。
この位置ベクトルが前記広義ホログラム(H)上の v 軸に存在するときは、 <ω'> の u および w 成分が零であるから、この条件を式22に適用した、以下の式(式23)
α'・fu + β'・gu = −Λu
α'・fw + β'・gw = −Λw
を得る。
これは、 α',β' に関する2元連立1次方程式であるから解けて、その解 α',β' の値を <ω'> の v 成分の表現、すなわち以下の式(式24)
ω'v = α'・fv + β'・gv + Λv
に代入することにより、干渉縞代表面 Ω' が前記広義ホログラム(H)上の v 軸と交差する点 Pf の v 座標 ω'v を求めることができる。
よって、前記広義ホログラム(H)上における干渉縞の空間並び周期 ρ は、点 Pf と、そこから直線 Lf に降ろした垂線の足との距離であるから、以下の式(式25)
ρ = |ω'v|・cosΦ
によって算出することができる。
【0070】
あるいは、空間並び周期 ρ は、以下に述べる、別の計算方法によって求めてもよい。
いま、 u,v,w 軸と
図13の u’,v’,w’軸とが一致している状態を考える。
ここで、 u’,v’,w’座標系を、 u 軸回りに角度 Ψ だけ回転させた状態をさらに考えると、
図13より直ちに理解できるように、干渉縞(fr1,fr2,…)の群を u,v 平面で切った断面における干渉縞のピッチは、 u’,v’平面でのピッチ Λ に対して 1/cosΨ 倍に伸びることが判る。
前記したように、 w’軸の方向を向くベクトルは<f> であるから、角度 Ψ は、 <f> が w’軸に対して成す角度として求めればよい。
一般に、任意のベクトルを単位ベクトル化する際は、それをその長さで除すればよく、そのようにして得られた単位ベクトルの w 成分は、 w 軸と成す角度の余弦であるから、ベクトル <f> と角度 Ψ との関係として、直ちに以下の式(式26)
cosΨ = fw / |<f>|
を得る。
したがって、 u,v 平面上、すなわち前記広義ホログラム(H)上における干渉縞の空間並び周期 ρ は、以下の式(式27)
ρ = Λ・|<f>| / fw
によって算出することができる。
【0071】
以上により、前記広義ホログラム(H)において、前記照明光束(Fe)のうちの前記色相画素(Pxy)に入射する成分の方向単位ベクトルと、前記回折光束(Fd)のうちの前記色相画素(Pxy)から射出する成分の方向単位ベクトルとに注目し、これらの方向に伝搬する平面波が、前記広義ホログラム(H)上につくる干渉縞の周期並び方向と空間並び周期を求める計算方法が示されたので、それを用いて、次の各ステップを実行すればよい。
【0072】
すなわち、
[ステップ1]対象とする前記色相画素(Pxy)を1個選択する。
[ステップ2]前記したようにして、対象とする前記色相画素(Pxy)に発現させたい(単一または複数の)色と、その色の干渉縞の振幅を決定する。
[ステップ3]対象とする前記色相画素(Pxy)に発現させたい色に対応する波長を選択する。
[ステップ4]前記色相画素(Pxy)の代表点に入射する前記照明光束(Fe)の方向と等しい方向を有する平面波が、その色相画素(Pxy)内の全ての前記格子描画画素に到達するものとして、また、前記色相画素(Pxy)の代表点から前記瞳(Q)の中心に向けて発する前記回折光束(Fd)の方向と等しい方向を有する平面波が、その色相画素(Pxy)内の全ての前記格子描画画素から発するものとして、前記した方法により、これらの方向に伝搬する平面波が、前記広義ホログラム(H)上につくる干渉縞の周期並び方向と空間並び周期を求める。
[ステップ5]求めた周期並び方向と空間並び周期、および前記ステップ2で決定した振幅を有する干渉縞画像となるよう、対象とする前記色相画素(Pxy)内の全ての前記格子描画画素の値を決定する。
[ステップ6]対象とする前記色相画素(Pxy)に発現させたい他の色があれば、前記ステップ3から5を行ってその色に対する新たな干渉縞画像を算出し、それに前記ステップ2で決定した振幅を与え、先に作成した干渉縞画像の各格子描画画素の値に加算することを、発現させたい全ての色に対して実行する。
[ステップ7]前記ステップ1から6を、前記色相画素(Pxy)の全てに亘って行い、前記色相画素(Pxy)の全体を1枚の干渉縞画像の画像データとして保存する。
【0073】
なお、ここでは、コンピュータホログラムの技法を利用する場合と同様に、前記広義ホログラム(H)の前記色相画素(Pxy)を2次元分割した前記格子描画画素を設け、それらの画素値を決定して画像データとする場合について説明した。
したがって、同様に、電子ビーム描画装置や高精細レーザ描画装置、高精細プロッタなどの干渉縞画像描画手段を用いて、感光材料に生成した干渉縞画像を描画露光し、所定の現像定着等の処理プロセスを施すことにより、前記広義ホログラム(H)を作成すればよい。
しかし、前記格子描画画素を設けるのではなく、例えば、前記色相画素(Pxy)のそれぞれが有すべき回折格子の、周期並び方向および空間並び周期、振幅から成る情報の組の1組または複数組(その色相画素の色相の発現に要する色数に応じた組数)を画像データとして生成・保持し、この画像データに基づいて、同様に、電子ビーム描画装置や高精細レーザ描画装置、高精細プロッタなどによって前記広義ホログラム(H)を作成する方法としてもよい。
【0074】
前記したコンピュータホログラムの技法を応用する方法、およびコンピュータホログラムの技法を応用しない方法の何れの場合でも、前記広義ホログラム(H)における前記色相画素(Pxy)の、 u 方向または v 方向に隣接する任意の2個に注目したとき、含まれる回折格子線が、前記色相画素(Pxy)の隣接境界を超えて(跨いで)可能な限り連続するように、前記色相画素(Pxy)それぞれにおける回折格子の、周期並び方向における位相を調節することが望ましい。
例えば、前記広義ホログラム(H)のある場所に位置する、 u 方向と v 方向それぞれある個数の前記色相画素(Pxy)から成る矩形領域が存在するとして、この矩形領域が一様な色を表現するように前記色相画素(Pxy)のそれぞれの回折格子を決定する状況を想定すると、この矩形領域内では、全ての回折格子線を連続とすることにより、あたかも色相画素間の境界の痕跡が現れず、この矩形領域全体で一体の回折格子に見えるようになる。
このとき、回折格子が複数成分あれば、それぞれの成分について連続にする。
このような状況は、後に参照する
図10に描かれている。
【0075】
実際の画像では、表現すべき色は一様という訳ではなく、回折格子の空間並び周期が位置に依存して変化するため、回折格子線を必ず連続させることはできないが、可能な限り連続するように構成することにより、前記広義ホログラム(H)から前記瞳(Q)に向かう回折光束の拡がりが、前記した式9よりも小さくなるため、前記した前記瞳(Q)による色の選択の鋭さを向上させることができるし、前記瞳(Q)の大きさを小さくできる可能性が生じる。
もし、いま述べた回折格子線の連続化処理を行わない場合は、前記色相画素(Pxy)の大きさ(後述する基本色相画素の大きさ)は、それに含まれる回折格子によって発現される回折現象が十分な波長選択能力を有するよう、十分な多さの回折格子の周期数を含み得る大きさである必要があるが、回折格子線の連続化処理を行うことを前提とするならば、前記色相画素(Pxy)の大きさを小さく設定することができるようになり、表示する前記出力像(Dc)の分解能の向上に貢献できる。
なお、後述する、前記照明光束(Fe)が方向の異なる複数の個別照明光束から成っているものの場合は、周期並び方向が異なる複数成分の回折格子について、各成分の回折格子線のそれぞれが可能な限り連続するように構成する。
【0076】
これまでの説明において、前記広義ホログラム(H)に設ける回折格子として、光透過率が正弦波状に変化する濃度格子を想定した。
しかし、これを、反射率が変化する反射格子とすることもできるし、屈折率が変化する位相格子(透過型または反射型)とすることもできる。
例えば、前記広義ホログラムが銀塩写真乾板の場合、通常の現像定着によるモノクロの回折格子を作った後、所定の漂白処理を施すことにより、濃度分布が屈折率分布に変換され、位相格子に改変することが可能で、この処理により回折効率が向上する。
【0077】
また、濃度格子または位相格子の濃度または屈折率の分布が、正弦波的となるものとして説明したが、これを正弦波以外の波形、例えば矩形波的なものとすることもでき、さらに、回折格子の複数成分の回折強度の比率を、振幅の調整ではなく、空間的周期波形のデューティサイクル比などの波形の特徴の調整によって実現するようにしてもよい。
なお、光透過率が正弦波状に変化する濃度格子の場合も含め、振幅や波形の特徴などと、実際の回折強度との相関、すなわち非線形性については、例えば実験的に確認し、干渉縞画像の画像データの作成時に、所望の回折強度が実現されるよう補正を加えることが望ましい。
【0078】
ここまで述べた、濃度格子や位相格子は、前記したように電子ビーム描画装置や高精細レーザ描画装置、高精細プロッタなどの干渉縞画像描画手段を用いて、感光材料に生成した干渉縞画像を描画露光し、所定の現像定着等の処理プロセスを施すことで作成することを想定したが、本発明では、このような静的なもののみならず、LCOS(シリコン液晶素子:Liquid Crystal On Silicon)やDMD(ディジタルミラー素子:Digital Mirror Device)などの技術を応用した、高精細の空間光変調器(SLM:Spatial Light Modulator)を用いて、動的に広義ホログラム(H)を作成するように構成することもできる。
これらの動的に広義ホログラム(H)を作成する技術の場合、前記した回折格子の各成分を、時分割で発生させ、時間的な加色混合によって重ね合わせるように制御することもできる。
したがって、そのようにする場合は、回折格子の各成分の回折強度を、各成分の振幅ではなく、その成分の回折格子を発生している時間長さに比例するよう制御して実現するよう構成することができる。
なお、このように回折格子の各成分を時分割で発生させる場合は、後述する、回折格子の各成分の周期並び方向が直交に近いようにする条件に対しては無頓着でよい。
【0079】
なお、
図1の光学系は、前記広義ホログラム(H)が透過型である場合を描いた。
しかし、前記したように、静的または動的な前記広義ホログラムを反射型とした場合は、前記広義ホログラムから反射的に回折した回折光束のうち、瞳を通過した、瞳通過光束が、結像光学系によって結像面に結像されるよう、本カラー画像表示装置の光学系を構成すればよい。
また、先述のLCOSを前記広義ホログラム(H)とする場合は、PBS(偏光ビームスプリッタ:polarization beam splitter)を使用して光学系を構成すればよく(例えば、佐藤浩: 光学, 35巻 6号 (2006) p318, 日本光学会(応用物理学会)発行 を参照)、例えばPBSで反射し、LCOSに到達した前記照明光束(Fe)のうちの、反射時に偏波方向が回転させられた干渉縞成分による回折光のみを、PBSで透過させて前記瞳(Q)に向かわせるようにすることができる。
【0080】
なお、
図2にあるように、回折格子による前記着色領域(Ci)に含まれない領域である非着色対象領域(Cx)がある場合、この領域について、前記広義ホログラム(H)をどのような状態とするかは、表示したい画像の目的に照らして任意に決めることができる。
例えば、前記照明光束(Fe)が白色光である場合、前記結像面(Sf)における前記非着色対象領域(Cx)に対応する領域を白色にしたければ、前記広義ホログラムが透過型の場合は前記非着色対象領域(Cx)を拡散透過面とし、前記広義ホログラムが反射型の場合は前記非着色対象領域(Cx)を拡散反射面とすればよい。
また、前記非着色対象領域(Cx)に対応する領域を黒色にしたければ、前記非着色対象領域(Cx)に回折格子を設けないようにすればよいが、前記広義ホログラムが透過型の場合は前記非着色対象領域(Cx)を不透過面(黒色)とし、前記広義ホログラムが反射型の場合は前記非着色対象領域(Cx)を無反射面(黒色)としてもよい。
さらに、前記非着色対象領域(Cx)に対応する領域に文字やスケール、絵柄を描きたければ、前記広義ホログラムが透過型の場合は透過型の、前記広義ホログラムが反射型の場合は反射型の文字やスケール、絵柄を所望の色彩で描けばよい。
【0081】
また、
図1の光学系においては、前記広義ホログラム(H)の直後に前記開口絞リ板(Sq)を設け、その後段に前記結像光学系(Of)を設けるものを描いた。
しかし、前記開口絞リ板を前記結像光学系(Of)の後段に設けるもの、あるいは、前記したカメラレンズのように、前記結像光学系(Of)が組合せレンズであって、前記開口絞リ板はその内部に設けるものであってもよい。
【0082】
ここでは、本発明のカラー画像表示装置が表示するカラー画像として、色度図像を表示するものを例にとって説明したが、例えば、前記した構造色を呈する何らかの物体など、色度図に限らないカラー画像を表示するための前記広義ホログラム(H)を作成する場合は、所謂ビットマップのようなRGBではなく、XYZで値付けされた画像データを取得し、各色相画素(Pxy)について色度座標 x,y を算出し、前記した方法によって回折格子の各成分の回折強度の比率を定めた上で、 Y 値に比例する明るさを有するよう、前記した式8に関連して説明した方法で、色相画素(Pxy)それぞれの回折格子の成分の回折強度を設定すればよい。
なお、XYZで値付けされた画像データを取得する手段は、例えば、通常のカラーカメラの、3個のイメージセンサの前段に設けられるR,G,Bの各フィルタを、前記した等色関数 xe(λ),ye(λ),ze(λ) それぞれに等しい分光感度のフィルタ(例えば、株式会社ニコン製の三刺激値フィルタ(等色関数フィルタ))に置き換えることにより実現可能である。 ただし、イメージセンサや他の光学素子の分光特性が平坦でない場合は、その補正分をフィルタに加えて所期の分光感度になるようにする必要がある。
実際、そのようなカメラ、すなわちXYZカメラの市販品が存在し、例えば、池上通信機株式会社製のRTC−21がある。
また、前記した空間光変調器を利用した、動的な広義ホログラム(H)を用いて構成した本発明のカラー画像表示装置であれば、そのような画像を動画として表示することも可能である。
【0083】
前記した空間光変調器を利用する場合について補足する。
当然、本カラー画像表示装置において、先述の空間光変調器を利用するためには、前記広義ホログラム(H)に対する変調情報たる、回折格子像である、画像データとしての広義ホログラムデータを、外部から受信するための広義ホログラムデータ受信インターフェースや、そのデータを一時記憶するための広義ホログラムデータバッファ、前記広義ホログラムデータに基づいて前記空間光変調器を動作させる空間光変調器駆動回路、そして、これらを統合制御する制御プロセッサなどの個別機能ユニットを備える必要がある。
しかし、先述の空間光変調器を搭載したプロジェクタが既に存在しているため、それらに使われる技術を利用して、前記した個別機能ユニットを構成することができる。
例えば、RGBの3板のLCOSを空間光変調器とするプロジェクタ(例えば、佐藤浩: 光学, 35巻 6号 (2006) p318, 日本光学会(応用物理学会)発行 を参照)では、RGB3チャンネル分のデータ系列について、受信、記憶、変調の処理を行うが、本カラー画像表示装置に対しては、そのうちの1チャンネル分を実装することにより実現することができる。
【0084】
なお、いま述べた空間光変調器の利用形態では、回折格子像である前記広義ホログラムデータを、外部から受信するものについて記載したが、代わりに、XYZで値付けされたディジタル画像データをデータ受信インターフェースで受信し、それを本カラー画像表示装置において前記広義ホログラムデータに変換するようにしてもよい。
ただしこの場合、その変換処理には大量の数値計算が必要であるため、専用の並列演算処理ユニットであるGPUを搭載するなどして、処理速度を高速化することが望ましい。
因みに、従来のプロジェクタをRGBプロジェクタと呼ぶならば、いま述べた構成によって、XYZプロジェクタと呼ぶべきものが実現できることが判る。
【0085】
これまで、前記結像光学系(Of)が前記結像面(Sf)に前記広義ホログラム(H)と共役な実像を結像するものについて説明して来たが、前記結像光学系(Of)が、接眼レンズとして機能するように設計され、出力像位置として無限遠(または w 座標が負の遠方)に前記広義ホログラム(H)と共役な虚像を結像するものとすることもできる(第6の発明の一形態)。
この場合、接眼レンズとしての前記結像光学系(Of)の直後に観察者の眼球が位置し、眼球の瞳孔が前記瞳(Q)として機能する。
そして、この場合は、眼球の虹彩が前記開口絞リ板(Sq)として機能するため、本カラー画像表示装置には、実体としての前記開口絞リ板(Sq)を設置する必要が無い。
【0086】
さらに、前記照明光束(Fe)で照明された前記広義ホログラム(H)そのもの(前記広義ホログラム(H)と共役な自明の虚像としての前記広義ホログラム(H)自身)を観察者が見るようにすることもでき(第1の発明の一形態)、この場合は、本カラー画像表示装置には、実体としての前記開口絞リ板(Sq)および前記結像光学系(Of)を設置する必要が無い。
ただし、前記照明光束(Fe)と前記広義ホログラム(H)からなる系に対し、設計上規定される相対位置に前記瞳(Q)が存在しなければならないため、観察者が眼を置く位置を判らしめる(強制する)工夫、例えば規定位置に接眼目当てを設けたり、本カラー画像表示装置を筐体で覆って規定位置に覗き穴を設けるなどすべきである。
【0087】
因みに、いま述べた、観察者が前記広義ホログラム(H)を直接見る状況は、観察者の眼球にある虹彩、水晶体、網膜が、それぞれ
図1における開口絞リ板(Sq)、結像光学系(Of)、結像面(Sf)に対応している。
したがって、
図1は、観察者が前記広義ホログラム(H)を直接見る状況をも表すものであることが判る。
【0088】
次に、本発明のカラー画像表示装置の一部を簡略化して示す模式図である
図5を参照して、本発明の他の形態について説明する。
先に
図1を参照して行った説明においては、前記照明光束(Fe)が1本であるものについて述べたが、本発明のカラー画像表示装置は、照明光束(Fe)が、方向の異なる複数の個別照明光束(Fe1,Fe2,…)から成るように構成することができ、
図5は、前記個別照明光束(Fe1,Fe2,…)を生成するための複数の照明光学系(Oe1,Oe2,…)を有することで、3本の個別照明光束によって広義ホログラム(H)を照明するものを例示している。
本図には、前記光源(Ge)および前記光源光束(Fs)に相当する光源および光源光束は記載が省略されているが、前記照明光学系(Oe1,Oe2,…)がそれぞれ個別の光源を備えるように構成することも可能であるし、1個の光源からの光源光束を分割して前記照明光学系(Oe1,Oe2,…)それぞれに供給するように構成することも可能である。
【0089】
このように、照明光束が、方向の異なる複数の個別照明光束(Fe1,Fe2,…)から成るようにすることの利点につき、以下に説明する。
照明光束の数が1本である場合、前記広義ホログラム(H)上の前記色相画素(Pxy)に入射する照明光束の方向は当然1種類であり、前記瞳(Q)は1個であるから回折格子から回折光が射出する方向も1種類であるため、前記色相画素(Pxy)に複数の回折格子の成分を設ける場合、回折格子の周期並び方向は全て同じとなる。
例えば、前記した光透過率が正弦波状に変化する濃度格子の場合で言うと、周期並び方向が同じで、空間並び周期が異なる成分が重畳される訳であるから、例えば2種の空間並び周期の濃度の高い位相が重なる箇所があっても、各成分の回折格子が独立に機能できるためには、濃度の線形性が保たれるよう、回折格子の各成分の振幅を十分小さく抑える必要がある。
【0090】
これに対し、前記広義ホログラム(H)上の前記色相画素(Pxy)に入射する照明光束の方向が、例えば2種類ある場合に、2種類の回折格子の成分を設けるならば、一方の回折格子の成分は一方の方向の照明光束を回折し、他方の回折格子の成分は他方の方向の照明光束を回折するように構成することができる。
この場合は、前記色相画素(Pxy)上の2種の回折格子の成分は、周期並び方向が異なるため、2種の空間並び周期の濃度の高い位相が重なる箇所において少々飽和傾向となり、濃度の線形性が多少低下する場合でも、各成分の回折格子が独立に機能できるため、回折格子の各成分の振幅をあまり小さく抑えなくてもよくなるため、回折効率を高くすることができる。
特に、周期並び方向が直交に近い場合は、前記した飽和傾向に対する耐性が強いため有利である。
そして、いま述べた事情は、位相格子の場合も同様である。
【0091】
以上、前記照明光束が、方向の異なる複数の個別照明光束(Fe1,Fe2,…)から成っており、前記広義ホログラム(H)の前記色相画素(Pxy)の回折格子の複数成分のそれぞれが、他の成分のものとは異なる前記個別照明光束(Fe1,Fe2,…)を回折するようにして、周期並び方向の重複が無いようにすることの利点を述べたが、照明光束が、方向の異なる複数の個別照明光束(Fe1,Fe2,…)から成る場合でも、少なくとも一部の色相画素(Pxy)において、1種の方向からの照明光束に対して回折させる回折格子の成分を複数設けることを、本発明は排除しない。
【0092】
先に、前記照明光束が、方向の異なる複数の個別照明光束(Fe1,Fe2,…)から成っており、前記広義ホログラム(H)の前記色相画素(Pxy)の回折格子の複数成分のそれぞれが、他の成分のものとは異なる前記個別照明光束(Fe1,Fe2,…)を回折するようにして、周期並び方向の重複が無いようにする構成について説明したが、このように構成するときには、前記個別照明光束(Fe1,Fe2,…)それぞれの主たるスペクトル帯域が互いに相違するようにすることができ、そのように構成することの利点につき、以下に説明する。
ここで、主たるスペクトル帯域が互いに相違する、とは、スペクトル帯域が互いに相違するように構成するに際し、部分的な重複があっても構わないことを意味する。
【0093】
いま、一例として、前記個別照明光束(Fe1,Fe2,…)として、第1,第2,第3の個別照明光束の3本がある場合を想定すると、このとき、前記広義ホログラム(H)の回折格子の成分として、第1,第2,第3の成分を存在せしめることと定めることができる。
そして、スペクトル帯域として、必要な可視光の連続スペクトル帯域を3つに分割した、例えば、495nm以下,495から570nm,570nm以上(以降、これらをそれぞれ第1帯域,第2帯域,第3帯域と呼ぶ)の3種類を想定し、前記した、回折格子の第1成分,第2成分,第3成分は、それぞれ第1帯域,第2帯域,第3帯域のなかから選択された波長の光を回折することと定めることができる(前記した混色座標則による)。
【0094】
そうであれば、第1,第2,第3の個別照明光束は、それぞれ第1帯域,第2帯域,第3帯域の光のみをスペクトル成分として有していれば十分であることになる。
何となれば、いま十分と称した成分以外のスペクトル帯域の光を第1,第2,第3の個別照明光束の何れかが有していても、それを回折するような回折格子は作られないからであり、逆に言えば、そのような成分を各個別照明光束に含有させることは無駄であることが判る。
したがって、前記個別照明光束(Fe1,Fe2,…)それぞれの主たるスペクトル帯域を相違させ、前記広義ホログラム(H)の前記色相画素(Pxy)の回折格子の成分を、前記個別照明光束(Fe1,Fe2,…)のそれぞれが有するスペクトル帯域と入射方向に適合した周期並び方向と空間並び周期とするように構成することにより、光源光束の利用効率を高めることができる。
【0095】
なお、前記個別照明光束(Fe1,Fe2,…)それぞれの主たるスペクトル帯域が互いに相違することを実現する形態として、前記個別照明光束(Fe1,Fe2,…)それぞれのための前記照明光学系(Oe1,Oe2,…)が、必要なスペクトル帯域以外の成分をあまり含有しない光源を用いて構成するもの、1個の光源からの光源光束を、フィルタを用いて分割することにより、個別照明光束とするもの、あるいは前者と後者とを組合せた仕方によるものが可能である。
【0096】
先に
図3を参照して述べたように、前記広義ホログラム(H)の前記色相画素(Pxy)が発現すべき色相が色度図において占める前記座標点(pxy)に対し、これを通過する前記直線(lxy)がスペクトル軌跡(Ls)と交差する前記点(a,b)に対応する2波長の単色光を選べば、前記した混色座標則に基づいて任意の色相を発現することができる。
したがって、前記した方向の異なる複数の個別照明光束のそれぞれの主たるスペクトル帯域が互いに相違するようにしたものを実現する形態として、1個の前記光源(Ge)から発した、必要な可視光の連続スペクトル帯域の光を、適当なスペクトル位置で帯域分割した、短波長側の成分から成る短波長側光束(Feb)と長波長側の成分から成る長波長側光束(Fer)とすることができる。
ここで、帯域分割するスペクトル位置としては、必要な可視光の連続スペクトル帯域を、前記点(A)に対応する700nmから前記点(B)に対応する400nmまでとして、その中央付近に位置する、510から530nmの範囲から選べば、前記した任意の色相を発現することに好適である。
また、この形態は、前記した、前記広義ホログラムの前記色相画素の回折格子の成分を、前記個別照明光束のそれぞれが有するスペクトル帯域と入射方向に適合した周期並び方向と空間並び周期とするように構成することにより、光源光束の利用効率を高めることができる特徴を利用可能である。
【0097】
前記短波長側光束(Feb)および前記長波長側光束(Fer)を実現する前記照明光学系の一例について、本発明のカラー画像表示装置の一部を簡略化して示す模式図である
図6を参照して説明する。
本図においては、前記光源(Ge)から発した光源光束(Fs)に対し、必要に応じて設けるコリメータレンズ(Lc)によって平行光束とし、それを長波長通過フィルタ(Bf)に入力し、透過した光を前記長波長側光束(Fer)として、また反射した光をミラー(M1)で方向を変えて前記短波長側光束(Feb)として、それぞれ前記広義ホログラム(H)に照射して照明するよう構成している。
なお、ここでは簡単のため、コリメータ素子として前記コリメータレンズ(Lc)を用いるものを例示したが、色消しを行うとしても、残存するレンズの色収差によってコリメート性能が低下することを防止するため、凹面ミラーを用いるようにしてもよい。
【0098】
前記長波長通過フィルタ(Bf)のフィルタとしての機能は、入射光束の波長が短波長では、ほぼ100%の反射、ほぼ0%の透過であるが、波長が長くなるに従って反射率の低下、透過率の上昇が始まり、設定した帯域分割するスペクトル位置の波長においてほぼ50%の反射、ほぼ50%の透過となり、さらに波長が長くなると反射率の低下、透過率の上昇が終わって、それ以上の長波長では、ほぼ0%の反射、ほぼ100%の透過となるよう設計する。
このとき、前記長波長通過フィルタ(Bf)のフィルタ特性の鋭さ、すなわち前記した、反射率の低下、透過率の上昇が始まる波長と、反射率の低下、透過率の上昇が終わる波長との波長差 Δλ の小ささについては、いまの場合、あまり鋭くない方が望ましく、前記した波長差 Δλ は、例えば5nm程度あることが望ましい。
理由は、帯域分割するスペクトル位置に相当する単色光の色度座標に対し、その近傍の色度座標を有する色相の再現性が、前記短波長側光束(Feb)および前記長波長側光束(Fer)の、前記広義ホログラム(H)への入射角度の調整誤差に対して敏感になるからである。
【0099】
先に、
図3を参照して、前記座標点(pxy)の位置によらず、前記直線(lxy)は、前記純紫軌跡(Lp)に平行とすることが簡単で有利である旨を説明した。
このことを実現するものとして、
図6に一例を示した、前記照明光学系(Oe)が、前記短波長側光束(Feb)および前記長波長側光束(Fer)からなる照明光束を生成する構造であるものに適用することが特に好適である。
その際、前記した帯域分割するスペクトル位置の波長としては、色度図において、純紫軌跡(Lp)に平行な直線が、逆U字形状のスペクトル軌跡の頂上部分で接する箇所に対応する波長、すなわち、約518nmを選ぶことが好適である。
【0100】
そして、前記したコンピュータホログラムの技法を応用する方法、もしくは前記したコンピュータホログラムの技法を応用しない方法等によって、前記広義ホログラム(H)の前記色相画素(Pxy)に対し、その色相画素に課せられた色相によって規定される色度座標が色度図上において位置する座標点(pxy)を通り、前記純紫軌跡(Lp)と平行な直線(lxy)が、スペクトル軌跡(Ls)と交差する2個の点(a,b)の座標に対応する色度を有する2種の単色光の加色混合によって実現されるような空間並び周期と方向を有する成分が重ね合わせられた回折格子を形成することによって前記広義ホログラム(H)を作成して、本発明のカラー画像表示装置を構成することができる。
【0101】
前記光源(Ge)としては、単独または複数のものの組合せによって、表示したい色度図領域に現れる色成分を網羅する、連続スペクトルを有する発光素子であれば、何れのものも適用可能である。
例えば、キセノン放電ランプ,白熱電球,放電励起蛍光ランプ,半導体光源励起蛍光ランプ等々が利用できる。
ただし、発光素子の発光スペクトルに、顕著な凸部や強い輝線が含まれる場合は、フィルタを用いて平坦化して使うとよい。
【0102】
なお、先の説明から明らかなように、前記照明光束(Fe)から発して前記色相画素(Pxy)に達するときの光線の立体的な角度(方向単位ベクトル)は、前記色相画素(Pxy)毎に(前記照明光束(Fe)が前記個別照明光束(Fe1,Fe2,…)である場合はそれぞれに対し)決まっていなければならず、それが実現できるためには、前記光源(Ge)は、点光源(または平行光束:無限遠の点光源)に近いものでなければならないが、前記したキセノン放電ランプは、点光源性が強い上に発光スペクトルが太陽光に近いため好適である。
蛍光ランプのような面発光的な光源の場合は、狭い領域で発生した光を選択して利用するよう、前記光源(Ge)は、視野絞りを備えるものとすればよく、また点光源性を高めるためには、光源からの出力光束をレンズ等によって集束し、集束点に設けた開口(ピンホール)を通過した光を前記光源光束(Fs)とする構成(空間フィルタ)が有効である。
【0103】
本カラー画像表示装置は、いま述べたような発光素子を前記光源(Ge)として内包するように構成することができるが、太陽光を利用することを前提として、前記光源(Ge)を内包しないように構成することも可能である。
この場合、前記した規定の条件の照明光束(Fe)によって前記広義ホログラム(H)を照明することを確実に実現するために、本カラー画像表示装置と太陽光の方向との相対関係が特定の関係にある場合以外では、前記広義ホログラム(H)に太陽光が当たらないよう、太陽光入力部に開口を設けたものを前記照明光学系(Oe)とする、などの工夫が必要である。
ただし、太陽光の方向は時間的に変化するため、本カラー画像表示装置の空間的設置方向を可変として、太陽光の方向に適合できるように操作するものとしたり、前記照明光学系(Oe)が反射面の法線方向が可変なミラーを有し、これに反射させた太陽光を利用するものとして、太陽光の方向と本カラー画像表示装置の太陽光入力方向とが整合するよう、前記法線方向を操作できるようにしても良い。
当然、太陽光の方向に合せて前記法線方向の自動可変機構を設け、太陽を自動追尾するように構成すれば、さらに好適である。
【0104】
前記広義ホログラム(H)に形成する回折格子のピッチが細かいほど、その形成のために必要な技術が高度化する。
特に前記広義ホログラム(H)が空間光変調器の場合は制約が厳しい。
したがって、前記広義ホログラム(H)に形成する回折格子のピッチが可及的粗くなるように、光学系の構造を工夫することが有利となるが、そのためには、前記広義ホログラム(H)のある色相画素(Pxy)に入射した前記照明光束(Fe)の光線が、回折されて前記瞳(Q)に向かう場合の光線と、回折されなかった場合の光線との成す角度が、可及的小さくなるようにすればよい。
その条件が成立している場合の、前記広義ホログラム(H)から見込んだ前記瞳(Q)およびその周辺の様子を、本発明のカラー画像表示装置の一部を簡略化して示す模式図である
図7に示す。
前記照明光束(Fe)の前記広義ホログラム(H)によって回折されなかった成分は、前記瞳(Q)が設定されている光軸(w)に垂直な面上の、前記瞳(Q)の外部で瞳外周(Qc)の近傍に光源像(Eq,Eq’)を形成するように光学系を構成する。
光源像を2個描いてあるのは、前記照明光束(Fe)が、例えば、前記した短波長側光束(Feb)と長波長側光束(Fer)から成る場合を想定したからであり、2個に限定されない。
なお、図の前記光源像(Eq,Eq’)が、したがって前記瞳(Q)も、実像であるとは限らず、虚像として構成することもできる。
【0105】
光源像の光パワー密度分布は裾野を伴っているため、前記光源像(Eq,Eq’)が前記瞳(Q)に近づくほど、前記瞳(Q)の内部への光の漏れが増加するので、前記光源像(Eq,Eq’)の位置は、前記光源像(Eq,Eq’)から前記瞳(Q)の内部への漏れ光の少なさに関する目標値を超えない範囲で前記瞳外周(Qc)に可及的近い位置とすればよい。
ここで、漏れ光の少なさに関する目標値は、本発明のカラー画像表示装置の仕様として設計者が決めるもので、前記広義ホログラム(H)に回折格子が全く形成されていないときの漏れ光のパワーが、前記光源像(Eq,Eq’)の全パワーの、例えば0.1%と決めればよい。
なお、図において2本の一点鎖線として描いてあるように、前記瞳(Q)の中心から前記光源像(Eq,Eq’)それぞれの中心とを結ぶ2本の直線の成す角度が直角になるように構成することが好適である。
何故なら、そのようにすると、前記色相画素(Pxy)に重畳して形成される2成分の回折格子の周期並び方向が概ね直交するため、前記した理由によって有利となるからである。
【0106】
図7に例示した光源像の条件を実現する光学系の一例を、本発明のカラー画像表示装置の一部を簡略化して示す模式図である
図8に示す。
本図の光学系においては、光源(Ge)から発した光源光束(Fs)を、コリメータレンズ(Lc)によって平行光束とし、それを長波長通過フィルタ(Bf)に入力し、透過した長波長側光束(Fer)と、また反射した短波長側光束(Feb)をミラー(M1,M2)によって方向を変えた光束とを、長波長通過フィルタ(Bf’)を用いて、1個の光束に合成した後、集光レンズ(Lf)を用いて収束光束に変換して照明光束(Fe)を生成する。
前記照明光束(Fe)は広義ホログラム(H)に照射され、回折されなかった照明光束(Fe’)は、前記瞳(Q)として機能する後方に設けた開口絞リ板(Sq)上に実像の光源像(Eq,Eq’)を形成する。
したがってこの場合は、前記光源像(Eq,Eq’)は集光スポットである。
ただし、図においては、前記広義ホログラム(H)による回折光束は、描くことを省略してある。
なお、前記光源像(Eq,Eq’)の間隔は、前記長波長通過フィルタ(Bf’)の位置と角度によって調整可能である。
当然、前記したように、前記開口絞リ板(Sq)の後段には、前記広義ホログラム(H)と共役な出力像(Dc)を、スクリーンに結像するための投影レンズとしての、あるいは無限遠に結像するための接眼レンズとしての前記結像光学系(Of)が、必要に応じて配置される。
【0107】
図8に例示した光学系によって、
図7に示した、前記瞳(Q)が設定されている光軸(w)に垂直な面上の前記光源像(Eq,Eq’)を形成する場合、容易に理解できるように、前記瞳(Q)の中心から前記光源像(Eq,Eq’)それぞれの中心までの距離を同じにしておけば、前記広義ホログラム(H)上のある色相画素(Pxy)が、それに入射した前記照明光束(Fe)のある波長の光を前記瞳(Q)の中心に向かわせるために、回折によって偏向させる角度の大きさは、前記色相画素(Pxy)の前記広義ホログラム(H)上での位置によらず一定である。
しかし、光を前記瞳(Q)の中心に向かわせるために、回折によって偏向させる方向は、前記色相画素(Pxy)の前記広義ホログラム(H)上での位置に依存して変化する。
【0108】
これを、光を前記瞳(Q)の中心に向かわせるために、回折によって偏向させる方向が、前記色相画素(Pxy)の前記広義ホログラム(H)上での位置によらず一定になるようにすることができれば、前記色相画素(Pxy)それぞれにおける回折格子の仕様の計算が簡略化できるため有利である。
このことを実現するには、前記照明光束(Fe)を平行光束とし、ただし、当然この場合、前記したように方向の異なる複数の個別照明光束から成る場合は、それぞれの個別照明光束を平行光束とし、前記広義ホログラム(H)から見込んだ前記瞳(Q)が、無限遠に位置するように構成すればよい。
言い換えれば、前記出力像(Dc)の形成に寄与する回折光束のみに注目するとき、前記広義ホログラム(H)がテレセントリックな像を生成するように構成すればよい。
このときは、前記瞳(Q)の中心から前記光源像(Eq,Eq’)それぞれの中心とを結ぶ2本の直線の成す角度が直角になるように構成しておけば、前記色相画素(Pxy)に重畳して形成される2成分の回折格子の周期並び方向が、前記色相画素(Pxy)の前記広義ホログラム(H)上での位置によらず、常に直交する。
そのための光学系は、先に例示した
図8においては、前記集光レンズ(Lf)が、前記広義ホログラム(H)の前段に配置されていたものを、前記広義ホログラム(H)の後段、例えば前記広義ホログラム(H)の直後に配置するように変更すれば実現でき、具体的なその様子は、本発明のカラー画像表示装置の一部を簡略化して示す模式図である
図9のようである。
言うまでもなく、このとき前記開口絞リ板(Sq)は、前記集光レンズ(Lf)の焦点面に配置する。
また、前記したように、前記開口絞リ板(Sq)の後段には、前記広義ホログラム(H)と共役な出力像(Dc)を、スクリーンに結像するための投影レンズとしての、あるいは無限遠に結像するための接眼レンズとしての前記結像光学系(Of)が、必要に応じて配置される。
【0109】
この光学系は、先述のLCOSを前記広義ホログラム(H)とする構成の場合に、特に好適である。
理由は、前記広義ホログラム(H)がテレセントリックな像を生成するため、前記色相画素(Pxy)それぞれから発する、出力像の形成に寄与する光束の主光線が、全て光軸(w)に平行であり、したがって、プリズム形状のPBSに対しても、主光線がプリズム面に垂直入射することになり、前記広義ホログラム(H)の全ての前記色相画素(Pxy)の結像に対し、PBSの挿入による余計な非対称収差発生が無いからである。
なお、
図9の光学系にPBSを設置する場合は、前記広義ホログラム(H)と前記集光レンズ(Lf)との間に挿入し、(図示された照明光束(Fe)とは逆方向の)右から左に向かう照明光束によって前記広義ホログラム(H)が照明されるようにする。
【0110】
先に述べた、前記広義ホログラム(H)を空間光変調器によって構成した本発明のカラー画像表示装置の場合は、いま述べた、前記色相画素(Pxy)に重畳して形成される2成分の回折格子の周期並び方向が、前記色相画素(Pxy)の前記広義ホログラム(H)上での位置によらず、常に直交するようになる構成とすることが特に有利である。
その場合、空間光変調器の変調画素、すなわち空間光変調の最小単位としての画素が縦と横の2方向に等ピッチで並ぶとして、回折格子それぞれの成分の周期並び方向と、空間光変調器の(例えば縦の)変調画素の並び方向が成す角度が45度となるように配置する。
この構成が有利である理由は、空間光変調器を、濃度格子を表現する素子として機能させる状況を想定するとして、その画素配置を、明と暗の画素を縦および横とも1個おきに並べた配置、すなわち市松模様の配置とした場合が、極限の最短空間並び周期を表現するからである。
もし、回折格子それぞれの成分の周期並び方向と、空間光変調器の変調画素の並び方向とを同じにした場合、最短空間並び周期は、例えば縦方向に明の画素が連なった明線と、縦方向に暗の画素が連なった暗線とが、横方向に交互に並んだ縞状の配置とした場合のものになるが、この空間並び周期は、前記した市松模様の配置とした場合に対し、2の平方根倍になってしまう。
【0111】
ここでは、前記した、色相画素が正方形などの矩形であるとは限らず、また画面内での大きさが一様であるとは限らない場合について、本発明のカラー画像表示装置の技術に関連する概念の概略図である
図10を参照して説明する。
説明を理解し易いよう、直前で述べた、前記広義ホログラム(H)が空間光変調器で、前記色相画素(Pxy)に重畳して形成される2成分の回折格子の周期並び方向が、前記色相画素(Pxy)の前記広義ホログラム(H)上での位置によらず、常に直交するように構成し、回折格子の周期並び方向と、空間光変調器の変調画素の並び方向が成す角度が45度である場合を想定するが、当然それ以外の場合に対しても、ここで述べる技術は適用可能である。
図の右上がり45度と、右下がり45度の直線は、前記色相画素(Pxy)内に形成される回折格子を象徴的に表している(例えば回折格子が濃度格子であるとして、濃度の最も高い箇所を表すと理解されたい)。
【0112】
図10において、(a)は、これまで想定してきた、正方形で、画面内での大きさが一様である場合の、(b)は、正方形などの矩形であるとは限らず、また画面内での大きさが一様であるとは限らない場合の、それぞれ色相画素(Pxy)の並びの様子を表す。
いま、前記出力像(Dc)として表示しようとする画像の絵柄において、図の(b)の太い右上がりの一点鎖線で示したような境界、すなわち絵柄境界線が存在し、その左と右で、画像の明るさや色が変化しているとする。
ただし、いまは簡単のため、絵柄境界の左と右では、画像の明るさや色が相違するが、絵柄境界の左では画像の明るさや色は一様、絵柄境界の右でも画像の明るさや色は一様であるとする。
【0113】
図の(a)に注目すると、二点鎖線は前記色相画素(Pxy)の境界を表し(したがって色相画素の4×4=16個が描かれている)、前記色相画素(Pxy)は正方形で、画面内での大きさが一様であるから、前記した絵柄境界線は、階段状の太い一点鎖線で示したように表現されることになる。
このような画像の表現方法の場合、特に前記広義ホログラム(H)が空間光変調器であるときは、空間光変調器の変調画素の複数個×複数個から成る領域によって前記色相画素(Pxy)の1個を形成しなければならないため、絵柄表現の最小単位が粗くなって、出力像がモザイク状に見えてしまう問題がある。
当然、絵柄境界などが存在せず、画像の明るさや色が滑らかに変化している画像領域では、このような問題は生じず、このような場合に適用できる大きさ、すなわち前記出力像(Dc)に対して必要な分解能を実現できる大きさの前記色相画素(Pxy)を、基本色相画素と呼ぶことにする。
図の(a)は、絵柄境界の存在に無頓着に、単純に基本色相画素を色相画素(Pxy)とした結果と言える。
【0114】
前記した出力像がモザイク状に見えてしまう問題を解決するため、前記出力像(Dc)として表示しようとする画像の絵柄境界が、基本色相画素内に存在する場合は、絵柄境界線で基本色相画素を分割して、絵柄境界線が、隣接する色相画素間の境界となるようにすることにより、図の(b)のように、色相画素の境界の形状が、前記出力像(Dc)として表示しようとする画像の絵柄に適合するようにすることができる。
なお(b)で、絵柄境界線が色相画素間の境界となっていることは、左半分と右半分の回折格子の空間並び周期が、絵柄境界線を境に変化していることで読み取れる。
このとき、例えば、左から3列目(Jx)で上から2行目(Jy)にある基本色相画素に注目したとき、絵柄境界線の左側の小さい三角形部分については、その左の基本色相画素と合体させて1個の色相画素とすればよく、また絵柄境界線の右側の比較的大きい台形部分については、これ単独で1個の色相画素としてもよいし、その右の基本色相画素と合体させて1個の色相画素としてもよく、実際、図における点線は、いま述べた合体処理により、色相画素の境界ではなくなる箇所を表す。
なお、図の(b)の絵柄境界線も、空間光変調器の変調画素の大きさで階段状化(モザイク状化)して描かれるべきであるが、これは、基本色相画素による階段状化に比べて細かいため、図は、そのように描く手間を省略してあると理解されたい(前記した、回折格子を象徴的に表した45度の線についても同様)。
【0115】
ところで、人間の視覚の画像認識上の分解能は、画像の明るさの位置的変化に対しては高いが、色の位置的変化に対しては低いため、いま述べた絵柄境界に関する処理は、画像の明るさ情報に対してのみ施すようにしてもよい。
このような絵柄境界の抽出処理については、一般的画像処理の分野における、輪郭抽出・輪郭強調で用いられる技術(例えばラプラシアン演算など)を利用することができる。
【0116】
以上においては、主として1個の空間光変調器を用いて、それに複数成分の回折格子を形成する場合を想定し、本発明のカラー画像表示装置を構成する場合について述べて来た。
通常のRGB方式のLCOSや透過型液晶、DMD等を用いたプロジェクタにおいては、それら空間光変調器を3枚使用し、R,G,Bそれぞれ個別に生成した画像をダイクロイックミラーを用いて重ね合わせ、各色画像の対応する画素を正確に重畳することにより、画素毎の加色混合が実現されるようにし、1枚のカラー画像として完成させることが普通に行われている。
本発明においても、複数の空間光変調器を用いて、これと同様のことを行うことができる。
すなわち、前記広義ホログラム(H)たる空間光変調器の前記色相画素(Pxy)に、回折格子の各成分が重ね合わせられた回折格子が形成されることによって加色混合が実現されるようにする代わりに、前記広義ホログラム(H)たる空間光変調器を複数枚設けることとし、前記した回折格子の各成分それぞれを、1成分づつに分けて前記広義ホログラム(H)のそれぞれに形成し、前記照明光束(Fe)が前記広義ホログラム(H)のそれぞれによって回折されて形成された回折光束(Fd)を、ダイクロイックミラーを用いて重ね合わせ、前記広義ホログラム(H)のそれぞれの対応する前記色相画素(Pxy)を正確に重畳することにより、加色混合が実現されるようにすればよい。
なお、この場合には、前記した、回折格子の各成分の周期並び方向が直交に近いようにする条件に対しては無頓着でよい。
【0117】
前記したように、正しく着色された色度図像が表示できるようにしたカラー画像表示装置を実現することは、本発明の応用の一つであるが、そのようなカラー画像表示装置について、その光学系を、色度図像の表示に特化した光学系とすることにより、光源光束の利用効率を高めることが可能である。
ここでは、前記した、前記照明光学系(Oe)が、前記短波長側光束(Feb)および前記長波長側光束(Fer)からなる照明光束を生成する構造であるものを採用する場合を想定して、前記広義ホログラム(H)の前記色相画素(Pxy)に対し、その色相画素に課せられた色相によって規定される色度座標が色度図上において位置する座標点(pxy)を通り、前記純紫軌跡(Lp)と平行な直線(lxy)が、スペクトル軌跡(Ls)と交差する2個の点(a,b)の座標に対応する色度を有する2種の単色光の加色混合によって実現されるような空間並び周期と方向を有する成分が重ね合わせられた回折格子を形成することによって前記広義ホログラム(H)を作成する本発明のカラー画像表示装置において色度図像を表示する場合について説明する。
【0118】
この本発明のカラー画像表示装置によって色度図像を表示する場合、前記広義ホログラム(H)上の前記入力像(Pd)を現した
図2に記載した、ある色相画素(Pxy)を表示する際は、その色相画素(Pxy)を通り、純紫軌跡に対応する直線に平行な直線(Lxy)が、スペクトル軌跡に対応する逆U字形状の曲線と交差する点(a’,b’)に対応する2種の波長 λa',λb' の光が利用される。
このことは、前記直線(Lxy)の上に存在する他の全ての色相画素についても同様であり、よって、前記直線(Lxy)に照射される照明光束のうち、波長 λa',λb' 以外の成分は全て無駄になることを意味する。
したがって、前記長波長側光束(Fer)のなかの前記直線(Lxy)を照射する部分は、波長 λa' を含む部分的帯域のスペクトル成分のみを含み、前記短波長側光束(Feb)のなかの前記直線(Lxy)を照射する部分は、波長 λb' を含む部分的帯域のスペクトル成分のみを含んでいればよいことが判る。
【0119】
いま述べた説明は、前記広義ホログラム(H)上の前記入力像(Pd)に照明光束(Fe)を照射する状態をイメージしたものであったが、これを色度座標に基づいて言えば、前記広義ホログラム(H)の前記色相画素(Pxy)には、その色相画素に課せられた色相によって規定される色度座標が色度図上において位置する座標点(pxy)を通り、前記純紫軌跡(Lp)と平行な直線(lxy)が、スペクトル軌跡(Ls)と交差する2個の点(a,b)の座標に対応する色度を有する2種の単色光の波長を含む、部分的帯域のスペクトル成分を有する照明光束を照射すればよい、と言うことができる。
そして、これが実現できれば、利用されない光を、無駄な箇所にできるだけ照射しないことになるため、光源光束の利用効率を高めることができる。
【0120】
これを実現する前記照明光学系(Oe)の具体的構成につき、本発明のカラー画像表示装置の一部を簡略化して示す模式図である
図11を参照して、以下において説明する。
上面図である
図11の(a)に記載するように、連続スペクトルを有する、コリメートされた光源光束(Fsc)を分光回折格子(Gs)に入射し、反射回折の角度(紙面内)に応じて波長が分布する発散光束に変換する。
この光束は紙面に垂直な方向では平行光束なので、シリンドリカルレンズ(SL1,SL2)によって紙面に垂直な方向のビーム太さを拡大した後、三角ミラー(Mss)を用いて、前記した帯域分割するスペクトル位置の波長である518nmの箇所で、短波長側光束(Feb1)と長波長側光束(Fer1)とに分割する。
これらの光束は、ミラー(Msr1,Msb1)によって反射させ、短波長側光束(Feb2)、長波長側光束(Fer2)として、正面図である
図11の(b)に記載のミラー(Msr2,Msb2)に入射させる。
【0121】
そして、これらの光束は、前記ミラー(Msr2,Msb2)で反射され、短波長側光束(Feb3)、長波長側光束(Fer3)から成る照明光束(Fe)として広義ホログラム(H)を照明する。
同図の(a)から判るように、前記広義ホログラム(H)は、前記短波長側光束(Feb3)、前記長波長側光束(Fer3)のスペクトル並び方向と直角の方向(同じ分光成分が続く方向)に純紫軌跡線(Lp’)の方向が一致するよう回転して設置してある。
また、側面図である
図11の(c)における光束軸(Asb3,Asr3)との相対関係から判るように、前記広義ホログラム(H)は、同図の(a)の紙面に対し、規定角度だけ傾けて設置してある。
これは、前記短波長側光束(Feb3)と前記長波長側光束(Fer3)の回折されなかった成分が、前記広義ホログラム(H)の中心付近おいて立てた、前記広義ホログラム(H)の面に対する法線の方向に存在する、不図示の瞳(Q)に入射しないようにするためである。
【0122】
図11に記載した光学素子の仕様や配置は、同図の(a)に記載の前記広義ホログラム(H)における逆U字形状のスペクトル軌跡線の頂上部には、前記短波長側光束(Feb3)と前記長波長側光束(Fer3)の、前記した帯域分割するスペクトル位置の波長である518nmを含む部分が入射するよう、また、前記純紫軌跡線(Lp’)には、前記長波長側光束(Fer3)の前記点(A)に対応する700nmを含む部分が入射し、前記短波長側光束(Feb3)の前記点(B)に対応する400nmを含む部分が入射するように設計する必要がある。
ただし、本図の光学系は、前記分光回折格子(Gs)に有限の太さの前記光源光束(Fsc)を入射し、回折された光束をそのまま前記広義ホログラム(H)に照射するものであるから、前記広義ホログラム(H)上の、照明光束が照射される各点における前記長波長側光束(Fer3)や前記短波長側光束(Feb3)のスペクトル幅は、あまり狭くできず、そのため光の利用効率を極限まで高めることができないが、逆に、前記長波長側光束(Fer3)や前記短波長側光束(Feb3)のスペクトル並び位置と、前記広義ホログラム(H)との相対位置関係をあまり厳密に設計しなくても済む利点がある。
なお、矢印p,qは、同図の(a),(b),(c)の相互の方向の関係を明示するために付した。
【0123】
これまで述べたようにして作成した前記広義ホログラム(H)は、その作成時に想定された設計条件に整合する構造を有する本発明のカラー画像表示装置の光学系、すなわち前記照明光学系(Oe)や前記瞳(Q)などから構成される系に組込まれて機能を発揮するものであって、当然ながら、前記広義ホログラム(H)単独では、作成時に意図したカラー画像を見ることはできない。
しかし、リップマン法を用いることによって、前記出力像(Dc)が転写されたカラー画像複製物を作成することができ、以下において、本発明のカラー画像複製物作成方法のための構成の一部を簡略化して示す模式図である
図12を参照して、その作成方法について説明する。
【0124】
本図における照明光束(Fe)や広義ホログラム(H)、瞳(Q)すなわち開口絞リ板(Sq)および開口(Aq)、結像光学系(Of)の機能や配置は、先に
図1を参照して説明したものと同様である。
ただし、
図12の光学系では、結像光束(Ff)がテレセントリック、すなわち、結像光学系(Of)の射出瞳が無限遠、言い換えれば出力像点(Ip’)を形成する出力像光束(Fp’)の主光線が光学系の光軸、すなわち w 軸と平行になるように構成する。
結像光束(Ff)をテレセントリックにするためには、前記開口(Aq)の中心が、前記結像光学系(Of)の前側焦点に位置するよう、前記開口(Aq)と前記結像光学系(Of)との相対配置を設計すればよく、そうすることにより、前記広義ホログラム(H)上の任意の入力像点(Ip)から発した光のうちの、前記開口(Aq)を通過した成分から成る入力像光束(Fp)が前記結像光学系(Of)を通過すると、前記出力像光束(Fp’)の主光線は w 軸と平行になる。
当然、先に述べた、前記広義ホログラム(H)がテレセントリックな像を生成するようにするための構成を、本図の光学系に適用することが可能である。
なお、図の前記入力像光束(Fp)および前記出力像光束(Fp’)において、一点鎖線は主光線を表す。
また、簡略化のため、前記入力像点(Ip)から発した光のうちの、前記開口(Aq)を通過しない成分は、前記開口(Aq)より前側の空間においても、描くことを省略してある。
【0125】
そして、 w 軸に垂直な結像面には、少なくとも前記広義ホログラム(H)が表現する色相全体の波長の光に感度がある感光材料層(Rm)を設置し、前記結像光束(Ff)によって露光する。
なお、同図では、前記感光材料層(Rm)は、ガラスなどの透明材料からなる感光材料基材(Rb)の表面に形成されていることを想定しており、前記感光材料基材(Rb)の側から前記感光材料層(Rm)に前記結像光束(Ff)を当てる。
また、本図は、前記感光材料層(Rm)に実質的に接するように、少なくとも前記広義ホログラム(H)が表現する色相全体の波長の光を反射するミラー(Mr)を設置する例を示している。
【0126】
このような構成によって前記感光材料層(Rm)を露光すると、出力像点(Ip’)を形成する出力像光束(Fp’)の主光線が前記感光材料層(Rm)の表面に垂直に入射し、また前記感光材料層(Rm)を透過した光は、前記ミラー(Mr)によって逆向きに反射されるため、前記感光材料層(Rm)内に定在波が形成されて、前記感光材料層(Rm)の表面に平行な干渉縞が記録されることになる。
例えば前記感光材料層(Rm)が銀塩写真乾板の場合、現像定着等の処理プロセスによって濃度干渉縞を形成した後、所定の漂白処理を施すことにより、濃度分布が屈折率分布に変換され、位相格子に改変することができる。
これは、太陽光などの連続スペクトルの光で照明して、位相格子からの反射光を観察すると、露光時に前記感光材料層(Rm)の各点に照射された前記結像光束(Ff)の光波動が、前記結像光束(Ff)の各点毎に再生されるから、前記結像光束(Ff)による出力像が転写された、リップマン法によるカラー画像複製物となる。
【0127】
なお、前記照明光束(Fe)は、レーザのような可干渉距離の長い光源によるものではないため、前記感光材料層(Rm)と前記ミラー(Mr)の反射面と間には、ほとんど距離を置くことはできない。
図における前記ミラー(Mr)については、太い直線が反射面を表しているが、このように、前記感光材料層(Rm)と前記ミラー(Mr)の反射面とを密着させるものの他に、前記感光材料層(Rm)の表面に、化学的方法(例えば銀鏡反応など)や蒸着等によって金属薄膜を形成しておき、露光して用済みとなった後に、化学的方法によってそれを除去する方法もある。
因みに、本発明で言うリップマン法とは、リップマン(Gabriel Lippmann)が1891年に発明したとされるカラー写真術(1908年にノーベル物理学賞を受賞)を指し、所謂リップマンホログラム(干渉縞の形態が類似しているためそう呼ばれる立体像再生体積ホログラムの一種で、カラーはRGBにより表現されるもの)とは相違する。
【0128】
前記感光材料層(Rm)を形成するための材料としては、従来からの銀塩写真乾板用のものの他にも、重クロム酸ゼラチンを用いたパンクロマティックな材料(K. Kurokawa et el.: Proc. SPIE, 2577 (1995))や、フォトポリマーを用いたフルカラーリップマンホログラム用感光材料(A. M. Weber et al.: Proc. SPIE, 1212 (1990),T. J. Trout et al.: Proc. SPIE, 2577 (1995),S. H. Stevenson: Proc. SPIE (1997))を利用することができる(例えば、松山哲也: 日本写真学会誌, 63巻 2号 (2000,平12) p96 を参照)。
【0129】
本発明につき、若干補足しておく。
本明細書においては、主として、XYZ表色系の色度座標 x,y 、およびそれに基づく色度図の概念を用いた計算により、前記広義ホログラム(H)の回折格子を作成する方法について説明して来たが、本発明に適用可能な色彩体系は、これに限定されず、他の表色系を用いる場合にも有効である。
例えば、 x,y を座標変換したL*u*v*表色系は当然として、他にもL*a*b*表色系、マンセル表色系、PCCS(日本色研配色体系)等々の表色系も適用可能である。
【0130】
また、言うまでもないが、本発明のカラー画像表示装置によって表示する色度図像として、前記したXYZ表色系のものに限らず、L*u*v*表色系の u',v' 色パターン(広義色度図)や、L*a*b*表色系、マンセル表色系、PCCS 、オストワルト表色系、ABCトーンシステム(日本塗料工業会標準色)、NCS(ナチュラル・カラー・システム)、RGB、色相環等々の色パターンにも適用可能である。