特許第6744105号(P6744105)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6744105
(24)【登録日】2020年8月3日
(45)【発行日】2020年8月19日
(54)【発明の名称】高耐圧オイルクーラ
(51)【国際特許分類】
   F28F 9/02 20060101AFI20200806BHJP
   F28F 9/18 20060101ALI20200806BHJP
【FI】
   F28F9/02 301A
   F28F9/02 301Z
   F28F9/02 301D
   F28F9/18
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-18012(P2016-18012)
(22)【出願日】2016年2月2日
(65)【公開番号】特開2017-138033(P2017-138033A)
(43)【公開日】2017年8月10日
【審査請求日】2019年1月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222484
【氏名又は名称】株式会社ティラド
(74)【代理人】
【識別番号】100082843
【弁理士】
【氏名又は名称】窪田 卓美
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 正明
【審査官】 石黒 雄一
(56)【参考文献】
【文献】 実開平04−063981(JP,U)
【文献】 特開2012−233615(JP,A)
【文献】 特開2009−041799(JP,A)
【文献】 特開2013−231579(JP,A)
【文献】 特開2014−163610(JP,A)
【文献】 特開平06−159980(JP,A)
【文献】 特開平09−296992(JP,A)
【文献】 特開2001−091185(JP,A)
【文献】 特開2015−227737(JP,A)
【文献】 特開2007−292360(JP,A)
【文献】 特開2004−218983(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 9/02
F28F 9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブ(1)が挿通されるヘッダプレート(2)と、そのヘッダプレート(2)に被嵌されるヘッダタンク(3)と、そのヘッダプレート(2)とヘッダタンク(3)の組み合わせ体の長手方向の両側に位置して、それらの間に介装される一対の側板(4)とを有し、
その各側板(4)は、両面にろう材が被覆された複数の平板(4a)の積層体よりなり、
前記各側板(4)は、平板(4a)の積層状態で得られる合計の厚みにより、高耐圧性が確保されており、
炉中ろう付で、各平板(4a)の層間から側板(4)の端面に溶出するろう材(5)により、前記複数の平板(4a)の積層体からなる側板(4)の端面とヘッダプレート(2)およびヘッダタンク(3)とが接合された高耐圧オイルクーラ
【請求項2】
請求項1に記載の高耐圧オイルクーラにおいて、
ヘッダプレート(2)およびヘッダタンク(3)には、ろう材が被覆されていないベア材が用いられた高耐圧オイルクーラ
【請求項3】
請求項1に記載の高耐圧オイルクーラにおいて、
少なくともヘッダプレート(2)には、その内面側にろう材が被覆されたクラッド材が用いられた高耐圧オイルクーラ
【請求項4】
請求項3に記載の高耐圧オイルクーラにおいて、
少なくともヘッダプレート(2)には、その両面にろう材が被覆されたクラッド材が用いられた高耐圧オイルクーラ
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の高耐圧オイルクーラにおいて、
ヘッダプレート(2)およびヘッダタンク(3)の内面に、側板(4)の外周に整合する嵌着溝(6)を形成した高耐圧オイルクーラ
【請求項6】
請求項5に記載の高耐圧オイルクーラにおいて、
ヘッダプレート(2)、ヘッダタンク(3)のいずれか一方の嵌着溝(6)に貫通孔(7)が形成され、前記側板(4)を構成する少なくとも一枚の端部に突出部(8)が形成され、その突出部(8)が貫通孔(7)に嵌着し、さらに、その突出部(8)がヘッダの外側に突出され、その外側に突出した端部をヘッダ外面に沿って折り曲げることにより、ろう付前に側板(4)がヘッダに仮固定される高耐圧オイルクーラ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐圧強度の高いオイルクーラ等に最適な熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
オイルクーラ等に利用される熱交換器として、特許文献1の発明が知られている。
特許文献1に記載のアルミニウム製熱交換器は、横断面が樋状に形成されたヘッダプレートおよびそこに嵌着するヘッダタンクと、その長手方向の両端に一対の側板が嵌着され、ヘッダ本体を形成するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−257493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ヘッダプレートとヘッダタンクと側板とから形成される熱交換器、例えばオイルクーラにおいて、その側板に高い耐圧強度(例えば、3MPaに耐える強度)が求められることがある。その場合、側板自体の板厚を十分に厚くする共に側板とヘッダタンク及びヘッダプレートとの接合強度の高いものが求められる。
特許文献1の側板を用いた場合、その板厚を厚くするとカシメ作業が困難となる。それと共に、ろう材が被覆された厚板の平板は高価なものとなる。
そこで、本発明は耐圧性が高く且つ、加工が容易でヘッダタンク及びヘッダプレートとのろう付が容易で、安価に入手できる側板を有する熱交換器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の本発明は、チューブ1が挿通されるヘッダプレート2と、そのヘッダプレート2に被嵌されるヘッダタンク3と、そのヘッダプレート2とヘッダタンク3の組み合わせ体の長手方向の両側に位置して、それらの間に介装される一対の側板4とを有し、
その各側板4は、両面にろう材が被覆された複数の平板4aの積層体よりなり、
前記各側板4は、平板4aの積層状態で得られる合計の厚みにより、高耐圧性が確保されており、
炉中ろう付で、各平板4aの層間から側板4の端面に溶出するろう材5により、前記複数の平板4aの積層体からなる側板4の端面とヘッダプレート2およびヘッダタンク3とが接合された高耐圧オイルクーラである。
【0006】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の高耐圧オイルクーラにおいて、
ヘッダプレート2およびヘッダタンク3には、ろう材が被覆されていないベア材が用いられた高耐圧オイルクーラである。
請求項3に記載の本発明は、請求項1に記載の高耐圧オイルクーラにおいて、
少なくともヘッダプレート2には、その内面側にろう材が被覆されたクラッド材が用いられた高耐圧オイルクーラである。
【0007】
請求項4に記載の本発明は、請求項3に記載の高耐圧オイルクーラにおいて、
少なくともヘッダプレート2には、その両面にろう材が被覆されたクラッド材が用いられた高耐圧オイルクーラである。
請求項5に記載の本発明は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の高耐圧オイルクーラにおいて、
ヘッダプレート2およびヘッダタンク3の内面に、側板4の外周に整合する嵌着溝6を形成した高耐圧オイルクーラである。
【0008】
請求項6に記載の本発明は、請求項5に記載の高耐圧オイルクーラにおいて、
ヘッダプレート2、ヘッダタンク3のいずれか一方の嵌着溝6に貫通孔7が形成され、前記側板4を構成する少なくとも一枚の端部に突出部8が形成され、その突出部8が貫通孔7に嵌着し、さらに、その突出部8がヘッダの外側に突出され、その外側に突出した端部をヘッダ外面に沿って折り曲げることにより、ろう付前に側板4がヘッダに仮固定される高耐圧オイルクーラである。
【発明の効果】
【0009】
第1の発明は、ヘッダプレート2とヘッダタンク3の組み合わせ体の両側に一対の側板4を配置し、その各側板4は、両面にろう材が被覆された複数の平板4aの積層体よりなり、炉中ろう付で、各平板4aの層間から溶出するろう材5により、側板4とヘッダプレート2およびヘッダタンク3とを接合するものである。そのため、側板4とヘッダプレート2およびヘッダタンク3との接合部にろう材を確実に供給して、ろう付の信頼性を向上できる。即ち、各平板4aの層間のろう材は円滑に側板4の端面に導かれて、効率よく側板4とヘッダプレート2およびヘッダタンク3との接合部に供給される。
また側板4は平板4aの積層体からなり、その厚みを十分確保し、耐圧性の高い熱交換器を提供できる。また、比較的薄い市販の金属板の積層体で、厚い側板4を構成できるため、経済的である。
【0010】
第2の発明は、第1の発明の構成において、ヘッダプレート2およびヘッダタンク3には、ろう材が被覆されていないベア材が用いられたものである。この場合にも、側板を構成する各平板4aの層間のろう材により、側板4とヘッダプレート2およびヘッダタンク3との間を確実にろう付できる。
第3の発明は、第1の発明の構成において、少なくともヘッダプレート2には、その内面側にろう材が被覆されたクラッド材が用いられたものである。そのため、その内面側のろう材により、ヘッダプレート2とヘッダタンク3とのろう付が可能となる。また、ヘッダプレート2と側板4のろう付がより確実になる。さらに、ヘッダプレート2とチューブ1とのろう付がより確実になる。
【0011】
第4の発明は、第3の発明の構成において、少なくともヘッダプレート2には、その両面にろう材が被覆されたクラッド材が用いられたものである。請求項3の発明の効果に加え、ヘッダプレート2とチューブ1とのろう付がよりいっそう確実になる。
第5の発明は、上記第1〜第4の発明のいずれかの構成において、ヘッダプレート2およびヘッダタンク3の内面に、側板4の外周に整合する嵌着溝6を形成したものである。この発明によれば、側板4を嵌着溝6に位置決めすると共に、その嵌着部にろう材を保持し、ろう付の信頼性を向上できる。
【0012】
第6の発明は、上記第5の発明の構成において、ヘッダプレート2、ヘッダタンク3のいずれかの嵌着溝6に貫通孔7を形成し、前記側板4の突出部8を貫通孔7に嵌着し、その突出部8を折り曲げて、ろう付前に側板4をヘッダに仮固定するものである。
この発明によれば、積層された平板からなる高強度の側板であっても、側板を構成する平板1枚の強度は低いので、その折り曲げ加工は容易であり、簡便に仮固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の熱交換器の要部分解図。
図2】同要部縦断面図。
図3図2のIII−III矢視断面図。
図4】本発明の熱交換器に用いられる側板の分解斜視図。
図5】同組立て状態を示す縦断面図。
図6】同第2実施例の熱交換器の要部縦断面図及びその部分拡大図。
図7】同要部斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、図面に基づいて本発明の実施の形態につき説明する。
【実施例1】
【0015】
図1図3は、本発明の第1実施例の要部を示す。
この熱交換器は、高耐圧(一例として3MPa)のオイルクーラに最適なものである。
この熱交換器は、アルミニウム(その合金を含む)、ステンレス等の金属材料や、それらにろう材が被覆されたクラッド材で形成することができる。そして、積層された多数の偏平なチューブ1およびそれらの層間に配置されたフィン(図示省略)からなるコアのチューブ1の長手方向両端には一対のヘッダが配置される。各ヘッダはヘッダプレート2とヘッダタンク3と一対の側板4とからなる。
【0016】
この例では、ヘッダプレート2は、図3に示す如く、横断面(ヘッダプレート2の多数のチューブ挿通孔10が並列される方向(この方向を長手方向として説明する)に対して垂直な面)がU字状に形成され、その両縁が僅かに外側に曲折されたフランジ部16を形成する。そして、ヘッダプレート2の長手方向の両端部の内面側には、図1に示す如く嵌着溝6が形成されている。そして多数の偏平なチューブ挿通孔10が定間隔に穿設される。
次に、ヘッダタンク3は、その開口部がヘッダプレート2の内側に嵌着され、その長手方向両縁部の内側に嵌着溝6が形成されている。なお、ヘッダプレート2とヘッダタンク3の各嵌着溝6の位置は整合している。
【0017】
次に、側板4は一対の平板4aを重ね合わせたものからなり、各平板4aに半押状に形成されたダボ9が図2に示す如く互いに嵌合されている。そして、側板4の一部がヘッダプレート2の嵌着溝6に整合し、別の一部がヘッダタンク3の嵌着溝6に整合する。
また、各平板4aの中段には段部14が設けられ、その段部14にヘッダタンク3の両端部に設けられた欠切部11が着座する。
なお、側板4は図4に示す如く、平板4aの両面にろう材5が被覆されたクラッド材からなる。
【0018】
ヘッダタンク3には、ろう材が被覆されていないベア材を用いることができる。
ヘッダプレート2にも、両面または内面側にろう材が被覆されたクラッド材のみならず、ベア材を用いることもできる。
その場合は、ヘッダタンク3とヘッダプレート2とは、当接部近傍に塗布されたろう材によって接合される。
【0019】
このようなヘッダプレート2のチューブ挿通孔10にそれぞれ偏平なチューブ1を挿通して組立て、さらにヘッダプレート2にヘッダタンク3および側板4を組合わせ、側板4がヘッダプレート2の嵌着溝6およびヘッダタンク3の嵌着溝6との間に嵌着された状態で、一体に炉内ろう付することにより全体が接合される。
【実施例2】
【0020】
図6図7は、本発明の第2実施例であり、この例が前記第1実施例と異なる点について説明する。
側板4は3枚の平板4aの積層体からなる。それと共に、ヘッダタンク3の頂部に貫通孔7が形成され、その貫通孔7に平板4aの端部に形成された突出部8が挿通される。そして、側板4の厚み方向両側に位置する平板4aの端部の突出部8がL字状に折り曲げられて折り曲げ部15を形成し、側板4をヘッダタンク3に仮固定する。その状態で、全体が炉内でろう付され熱交換器を完成する。
なお、偏平なチューブ1とヘッダプレート2とは、ヘッダプレート2に被覆されたろう材によりろう付され、或いは偏平なチューブ1の外周に被覆されたろう材によりろう付される。
【0021】
第1実施例の熱交換器においても、ヘッダタンク3に貫通孔7を設けることができる。その場合、突出部8が設けられた2枚の平板4aを用いる。即ち、第1実施例のヘッダプレート2、ヘッダタンク3の嵌着溝6は他の構成に変更できる。
第1実施例および第2実施例の平板4aのダボ9は設けることが好ましいが、なくてもよい。また、ヘッダタンク3の欠切部11も設けることが好ましいが、なくてもよい。
【0022】
側板4を構成する平板4aのろう材は、炉内で溶融して側板4の端縁に供給され、側板4とヘッダタンク3との間及び側板4とヘッダプレート2との間を確実にろう付する。
また、側板4を構成する平板4aの枚数は、積層状態で十分な耐圧性を有する数となっている。
【符号の説明】
【0023】
1 チューブ
2 ヘッダプレート
3 ヘッダタンク
4 側板
4a 平板
5 ろう材
6 嵌着溝
7 貫通孔
8 突出部
9 ダボ
10 チューブ挿通孔
11 欠切部
14 段部
15 折り曲げ部
16 フランジ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7