特許第6744209号(P6744209)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6744209
(24)【登録日】2020年8月3日
(45)【発行日】2020年8月19日
(54)【発明の名称】電気接触子及び電気部品用ソケット
(51)【国際特許分類】
   G01R 1/067 20060101AFI20200806BHJP
   H01R 13/33 20060101ALI20200806BHJP
   H01R 33/76 20060101ALI20200806BHJP
   G01R 1/073 20060101ALI20200806BHJP
   G01R 31/26 20200101ALI20200806BHJP
【FI】
   G01R1/067 C
   H01R13/33
   H01R33/76 Z
   G01R1/073 D
   G01R31/26 J
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-254011(P2016-254011)
(22)【出願日】2016年12月27日
(65)【公開番号】特開2018-105785(P2018-105785A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年11月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208765
【氏名又は名称】株式会社エンプラス
(74)【代理人】
【識別番号】100104776
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 弘
(72)【発明者】
【氏名】羽中田 吏
【審査官】 永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−266869(JP,A)
【文献】 特開2014−191960(JP,A)
【文献】 特開2013−205188(JP,A)
【文献】 特開2015−38455(JP,A)
【文献】 特表平10−510947(JP,A)
【文献】 特表2016−507751(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 1/067
G01R 1/073
G01R 31/26
G01R 31/28
H01R 13/33
H01R 33/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電気部品と第2の電気部品の間に配設されて、両者を電気的に接続する電気接触子であって、
前記第1の電気部品に接触する第1接触部と、前記第2の電気部品に接触する第2接触部と、板状かつ波状に形成された導電材料が筒状に形成されたばね部と、を有し、前記ばね部を介して前記第1接触部と前記第2接触部とが互いに伸縮自在となるように構成されており、
前記ばね部は、前記第1接触部と前記第2接触部を結ぶ軸を中心として前記軸の一側と他側に波形状部が交互に連続して波形状を形成しており、一側の前記波形状部の凸部が他側の前記波形状部の前記凸部同士の間の凹部に対向して前記ばね部が筒状に形成されており、
一側の前記波形状部の前記凸部が、他側の前記波形状部同士の間の前記凹部に入り込むことで、前記ばね部の収縮時に一側の前記凸部と他側の前記波形状部の前記凹部に隣接する前記凸部とが当接することにより、収縮動作を停止させると共に互いに当接する前記凸部同士の導通状態を形成するように構成されたことを特徴とする電気接触子。
【請求項2】
前記凸部に、前記軸に対する直交方向に向けて突起部が設けられており、該突起部が前記凹部に入り込むように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電気接触子。
【請求項3】
第2の電気部品上に配置され、第1の電気部品が収容される収容部を有するソケット本体と、
該ソケット本体に配設されて前記第1の電気部品に設けられた端子及び前記第2の電気部品に設けられた端子に接触する請求項1又は2に記載の電気接触子とを有することを特徴とする電気部品用ソケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体装置(以下「ICパッケージ」という)等の電気部品に電気的に接続される電気接触子、及び、この電気接触子が配設された電気部品用ソケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電気接触子としては、電気部品用ソケットとしてのICソケットに設けられたコンタクトピンが知られている。このICソケットは、配線基板上に配置されると共に、検査対象であるICパッケージが収容されるようになっており、このICパッケージの端子と、配線基板の電極とが、そのコンタクトピンを介して電気的に接続されて、導通試験等の試験を行うようになっている。
【0003】
そのようなコンタクトピンとしては、両端が板状で中央が板状かつ波状に形成された部材を折り曲げることで、配線基板に接触させる接触部と、ICパッケージに接触させる接触部と、接触部同士を離間する方向に付勢するばね部とが一体に構成されたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−266869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記した特許文献1のようなコンタクトピンにおいては、ばね部の付勢力に抗して収縮させた結果、ばね部の弾性変形の限界を超えて収縮させてしまい、ばね部が塑性変形を起こして元の状態に戻らなくなってしまうという不具合が生じる虞があった。
【0006】
そこで、この発明は、電気接触子(コンタクトピン)のばね部の塑性変形を防止して耐久性を向上させることができる電気接触子及び電気部品用ソケット(ICソケット)を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を達成するために、請求項1に記載の発明は、第1の電気部品と第2の電気部品の間に配設されて、両者を電気的に接続する電気接触子であって、前記第1の電気部品に接触する第1接触部と、前記第2の電気部品に接触する第2接触部と、板状かつ波状に形成された導電材料が筒状に形成されたばね部と、を有し、前記ばね部を介して前記第1接触部と前記第2接触部とが互いに伸縮自在となるように構成されており、前記ばね部は、前記第1接触部と前記第2接触部を結ぶ軸を中心として前記軸の一側と他側に波形状部が交互に連続して波形状を形成しており、一側の前記波形状部の凸部が他側の前記波形状部の前記凸部同士の間の凹部に対向して前記ばね部が筒状に形成されており、一側の前記波形状部の前記凸部が、他側の前記波形状部同士の間の前記凹部に入り込むことで、前記ばね部の収縮時に一側の前記凸部と他側の前記波形状部の前記凹部に隣接する前記凸部とが当接することにより、収縮動作を停止させると共に互いに当接する前記凸部同士の導通状態を形成するように構成された電気接触子としたことを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明に加えて、前記凸部に、前記軸に対する直交方向に向けて突起部が設けられており、該突起部が前記凹部に入り込むように構成されている電気接触子としたことを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に記載の発明は、第2の電気部品上に配置され、第1の電気部品が収容される収容部を有するソケット本体と、該ソケット本体に配設されて前記第1の電気部品に設けられた端子及び前記第2の電気部品に設けられた端子に接触する請求項1又は2に記載の電気接触子とを有する電気部品用ソケットとしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、一側の波形状部の凸部が、他側の波形状部同士の間の凹部に入り込むことで、ばね部の収縮時に一側の凸部と他側の波形状部の凹部に隣接する凸部とが当接することにより、収縮動作を停止させると共に互いに当接する凸部同士の導通状態を形成するように構成されているため、ばね部が弾性変形の限界を超えることなく、塑性変形を起こすことを防止することができる。その結果、電気接触子の耐久性を向上させることができる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、凸部に、軸に対する直交方向に向けて突起部が設けられており、突起部が凹部に入り込むように構成されているため、突起部が確実に凹部に入り込んで、確実にばね部の弾性変形の限界を超えないようにすることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2に記載の電気接触子を有しているため、電気接触子のばね部が弾性変形の限界を超えることなく、塑性変形を起こすことを防止した電気部品用ソケットとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】この発明の実施の形態1に係るICソケットのソケット本体を示す斜視図である。
図2】同実施の形態1に係るICソケットのソケット本体の分解斜視図である。
図3】同実施の形態1に係るICソケットのソケット本体における図2と別角度の分解斜視図である。
図4】同実施の形態1に係るICソケットのソケット本体におけるコンタクトモジュールを示す正面図である。
図5】同実施の形態1に係るICソケットのソケット本体におけるコンタクトモジュールの縦断面図である。
図6】同実施の形態1に係るICソケットにおけるコンタクトピンを示す正面図である。
図7】同実施の形態1に係るICソケットにおけるコンタクトピンを示す背面図である。
図8】同実施の形態1係るICソケットにおけるコンタクトピンの図6の一部拡大縦断面図である。
図9】同実施の形態1に係るICソケットにおけるコンタクトピンの展開図である。
図10】この発明の実施の形態2に係るICソケットにおけるコンタクトピンを示す正面図である。
図11】同実施の形態2に係るICソケットにおけるコンタクトピンを示す背面図である。
図12】同実施の形態2に係るICソケットにおけるコンタクトピンの縦断面図である。
図13】同実施の形態2に係るICソケットにおけるコンタクトピンの図12の一部拡大縦断面図である。
図14】同実施の形態2に係るICソケットにおけるコンタクトピンの図10の一部拡大正面図である。
図15】同実施の形態2に係るICソケットにおけるコンタクトピンの展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態について説明する。
[発明の実施の形態1]
図1図9には、この発明の実施の形態1を示す。
【0015】
この実施の形態の「電気部品用ソケット」としてのICソケット10は、図1図4図5に示すように、「第1の電気部品」としての配線基板1上に配置され、上面に「第2の電気部品」としてのICパッケージ2が収容されて、配線基板1の「端子」としての電極(図示省略)とICパッケージ2の「端子」としての半田ボール(図示省略)に接触して両者を電気的に接続させるように構成されている。そして、このICソケット10は、例えばICパッケージ2に対するバーンイン試験等の導通試験の試験装置などに用いられる。
【0016】
この実施の形態のICパッケージ2(図5参照)は、略方形状のパッケージ本体3の下面の略方形の所定の範囲に、複数の球状の半田ボールがマトリックス状に設けられている。
【0017】
また、ICソケット10は、図1に示すように、配線基板1上に配置されてICパッケージ2を収容するように構成されたソケット本体20と、ソケット本体20に対して回動して開閉可能に配設された一対のカバー部材(図示省略)と、カバー部材の回動を操作するための枠状の操作部材(図示省略)とを備えている。なお、カバー部材及び操作部材については、詳細な説明を省略する。
【0018】
ソケット本体20は、図2図3に示すように、四角形の枠状に形成されてカバー部材や操作部材を支持するように構成された支持部材21内に、四角形の枠状に形成された枠部材22が配設され、さらに当該枠部材22内にコンタクトモジュール30が配設されている。このコンタクトモジュール30には、複数の「電気接触子」としてのコンタクトピン60(図5等参照)がマトリックス状に配設されており、その上面側にICパッケージ2が収容される「収容部」としてのフローティングプレート40を有する構成となっている。
【0019】
このコンタクトモジュール30は、図4図5に示すように、上側保持部材31,中央保持部材32,下側保持部材33,フローティングプレート40等を備えている。この上側保持部材31と中央保持部材32と下側保持部材33とは所定の間隔で保持され、この上側保持部材31の上側には、フローティングプレート40が、スプリング(図示省略)によりソケット本体20の上方に付勢されて、所定間隔で保持された上側保持部材31,中央保持部材32,下側保持部材33に対して、上下動可能となっている。
【0020】
そして、これら上側保持部材31,中央保持部材32,下側保持部材33,フローティングプレート40の上下方向に貫通するように設けられた貫通孔(図示省略)に、コンタクトピン60が挿通されて配設されており、上下方向に伸縮自在に構成されている。なお、本実施の形態では、前記したように、コンタクトモジュール30に対して複数のコンタクトピン60がマトリックス状に配設されているが、図5上では、便宜的にコンタクトピン60を3本だけ記載している。
【0021】
各コンタクトピン60は、図6図8に示すように、軸Lに沿って筒状に形成された導電性を有する一部材で構成されている。また、コンタクトピン60は、配線基板1の電極と接触する第1接触部71と、ICパッケージ2の半田ボールと接触する第2接触部81と、第1接触部71と第2接触部81の間に設けられたばね部91とを有している。また、この実施の形態では、中央保持部材32の貫通孔に安定してばね部91が保持できるように、ばね部91の略中間位置に非ばね状の筒状に形成された中間部96を有しており、これによりばね部91が2つに分割されている。
【0022】
このコンタクトピン60は、図9に示す導電材料60Aから形成されている。この導電材料60Aは、板状の部材で構成されており、板状部分60Bの一部に波状部分60Cが形成されている。ここでは、両端側に板状部分60Bが形成されており、それぞれの板状部分60Bと繋がる中央部に波状部分60Cが形成されている。また、波状部分60Cの略中間位置に、他の板状部分60Dが形成されている。
【0023】
そして、図9に示す下方の板状部分60Bが当該板状部分60Bから波状部分60Cに向かう長手方向の軸Lに沿って筒状に湾曲又は折り曲げられることで、図6に示すような、下方の配線基板1に接触する細径の第1先端部72と、第1先端部72の上部側に繋がる太径部73とを有する筒状の第1接触部71が形成されている。
【0024】
また、図9に示す上方の板状部分60Bが軸Lに沿って筒状に湾曲又は折り曲げられることで、図6に示すような、上方のICパッケージ2に接触する細径の第2先端部82と、第2先端部82の下部側に繋がる太径部83とを有する筒状の第2接触部81が形成されている。
【0025】
また、図9に示す波状部分60Cが軸Lに沿って筒状に湾曲又は折り曲げられることで、図6に示すような、第1接触部71及び第2接触部81の中央に連続して、第1接触部71と第2接触部81を軸Lに沿って離間する方向に付勢する筒状のばね部91が形成されている。
【0026】
また、図9の展開した状態に基づいて説明すると、ばね部91は、第1接触部71から第2接触部81に向かう長手方向の軸Lを中心として、軸Lの両側に軸Lに直交する方向に同じ距離Hだけ突出する波形状部92が交互に連続しており、これらがそれぞれ半筒状に湾曲又は折り曲げられることで、筒状のばね部91を構成するようになっている。
【0027】
さらに図9を用いて詳述すると、このばね部91は、波形状部92における外側に突出した凸部93が軸Lの一側と他側に交互に連続するようになっている。また、軸Lから一側に突出して半筒状に形成された波形状部92の凸部93が、軸Lから他側に突出して半筒状に形成された波形状部92の凸部93同士の間の凹部94に対向するようになっている。また、軸Lから他側に突出して半筒状に形成された波形状部92の凸部93が、軸Lから一側に突出して半筒状に形成された波形状部92の凸部93同士の間の凹部94に対向するようになっている。これを交互に繰り返して図6に示すようなばね部91を形成している。
【0028】
また、図9に示すように、各波形状部92の凸部93における軸Lから最も離間した位置である頂点部分には、さらに軸Lと直交する方向に突出した突起部95が形成されている。そして、この突起部95は、図8に示すように、対向する凹部94の間に入り込むように構成されている。
【0029】
また、他の板状部分60Dが軸Lに沿って筒状に湾曲又は折り曲げられることで、図6に示すように、ばね部91の略中間位置に非ばね状の筒状に形成された中間部96が設けられている。
【0030】
これらによって第1接触部71と第2接触部81と中間部96と2つに分割されたばね部91を有するコンタクトピン60が構成されている。
【0031】
このように形成されたコンタクトピン60は、コンタクトモジュール30の下側保持部材33の貫通孔に、第1接触部71における細径の第1先端部72が挿通されて下側保持部材33の下方に突出させる。また、フローティングプレート40の貫通孔に、第2接触部81における細径の第2先端部82が挿通される。また、コンタクトモジュール30の中央保持部材32の貫通孔に、ばね部91の略中間位置の中間部96が挿通される。これにより、コンタクトピン60がコンタクトモジュール30に保持されるようになっている。
【0032】
次に、このような一部材で構成されたコンタクトピン60を備えたICソケット10の作用について説明する。
【0033】
このICソケット10を使用する際には、複数のコンタクトピン60をそれぞれソケット本体20のコンタクトモジュール30に装着し、第1接触部71の第1先端部72を下側保持部材33の下方に突出させると共に、第2接触部81の第2先端部82をフローティングプレート40に挿通させ、中間部96を中央保持部材32に挿通させた状態で配置する。
【0034】
そして、このICソケット10を配線基板1に位置決め固定し、第1接触部71の第1先端部72を配線基板1の電極に接触させる。このとき、第1先端部72が配線基板1によって上方に押し上げられることで、コンタクトピン60全体が上方に押し上げられ、第2接触部81も上方に押し上げられた状態となる。
【0035】
その後、ICパッケージ2をフローティングプレート40上に収容して、半田ボールを第2接触部81の第2先端部82に接触させる。その状態で操作部材を操作してカバー部材でICパッケージ2を下方に押圧することで、ICパッケージ2と共にフローティングプレート40を上方への付勢力に抗して下降させて、半田ボールにより第2先端部82が押圧され、ばね部91の付勢力に抗して下方に押し込まれる。
【0036】
ここで、突起部95が凹部94に入り込むようになっていることで、ばね部91を、その付勢力に抗して軸Lに沿って収縮させる方向に力が働いたときに、所定の収縮量で突起部95が入り込んだ凹部94の両脇の凸部93の側壁93aと突起部95とが当接する。これによって、ストッパが掛かり、それ以上ばね部91が収縮しないようになる。その結果、所定量以上にばね部91が収縮することがなくなり、ばね部91が弾性変形可能な範囲を超えて塑性変形してしまう不具合を防止することができる。
【0037】
また、第1接触部71とばね部91が一体となって繋がっており、第2接触部81とばね部91が一体となって繋がっており、ばね部91が圧縮されることで当該ばね部91の各波形状部92同士が当接することで、図9に示すばね部91の展開状態に沿って電気が流れる場合と比べて短い距離で第1接触部71から第2接触部81までが電気的に繋がり、低い抵抗値で配線基板1とICパッケージ2を電気的に接続することができる。
【0038】
そして、このようにばね部91を圧縮することで、当該ばね部91における突起部95と当該突起部95が入り込んだ凹部94の両脇の凸部93の側壁93aとが当接した状態が保持されて短い距離で第1接触部71から第2接触部81までが電気的に繋がると共に、ばね部91で第1接触部71と第2接触部81とを互いに離間する方向に付勢して配線基板1の電極とICパッケージ2の半田ボールに適切な接圧を持って接触させて電気的に接続させた状態で、ICパッケージ2のバーンイン試験等の導通試験を実施する。
[発明の実施の形態2]
図10図15には、この発明の実施の形態2を示す。なお、この発明の実施の形態は、以下に説明する事項以外については前記した実施の形態1と同様であるので、前記した実施の形態1と異なる事項以外は同じ符号を付して説明を省略する。
【0039】
この実施の形態は、前記した実施の形態1におけるコンタクトピン60を、図10に示すような2部材で構成されたコンタクトピン160に変更したものである。以下、この実施の形態におけるコンタクトピン160について説明する。
【0040】
この実施の形態のコンタクトピン160は、図10図14に示すように、導電性の筒状に形成されて配線基板1の電極と接触する第1部材170と、導電性の棒状(ここでは中空の棒状)に形成されてICパッケージ2の半田ボールと接触する第2部材180の、2つの部材で構成されている。
【0041】
このうち、第1部材170は、図15に示す第1部材導電材料170Aから形成されている。この第1部材導電材料170Aは、板状の部材で構成されており、板状部分170Bの一部に波状部分170Cが形成されている。ここでは、一端側に板状部分170Bが形成されており、板状部分170Bと繋がる他端側に波状部分170Cが形成されている。また、波状部分170Cの略中間位置に、他の板状部分170Dが形成されている。
【0042】
そして、図15に示す板状部分170Bが当該板状部分170Bから波状部分170Cに向かう長手方向の軸Lに沿って筒状に湾曲又は折り曲げられることで、図10に示すような、下方の配線基板1に接触する細径の第1先端部172と、第1先端部172の上部側に繋がる太径の被挿入部173とを有する筒状の第1接触部171が形成されている。なお、被挿入部173の内部は、後述する第2部材180の挿入部185が摺動しつつ挿入される大きさ及び形状となっている。
【0043】
また、図15に示す波状部分170Cが軸Lに沿って筒状に湾曲又は折り曲げられることで、図10に示すような、第1接触部171に連続して、コンタクトピン160に組み上げたときに第1接触部171と第2接触部181を軸Lに沿って離間する方向に付勢する筒状のばね部175が形成されている。
【0044】
また、図15の展開した状態に基づいて説明すると、ばね部175は、第1接触部171からばね部175に向かう長手方向の軸Lを中心として、軸Lの両側に軸Lに直交する方向に同じ距離Jだけ突出する波形状部176が交互に連続しており、これらがそれぞれ半筒状に湾曲又は折り曲げられることで、筒状のばね部175を構成するようになっている。
【0045】
さらに図15を用いて詳述すると、このばね部175は、波形状部176における外側に突出した凸部177が軸Lの一側と他側に交互に連続するようになっている。また、軸Lから一側に突出して半筒状に形成された波形状部176の凸部177が、軸Lから他側に突出して半筒状に形成された波形状部176の凸部177同士の間の凹部178に対向するようになっている。また、軸Lから他側に突出して半筒状に形成された波形状部176の凸部177が、軸Lから一側に突出して半筒状に形成された波形状部176の凸部177同士の間の凹部178に対向するようになっている。これを交互に繰り返して図10に示すようなばね部175を形成している。
【0046】
また、図15に示すように、各波形状部176の凸部177における軸Lから最も離間した位置である頂点部分には、さらに軸Lと直交する方向に突出した突起部179が形成されている。そして、この突起部179は、図14に示すように、対向する凹部178の間に入り込むように構成されている。
【0047】
また、他の板状部分170Dが軸Lに沿って筒状に湾曲又は折り曲げられることで、図10に示すように、ばね部175の略中間位置に非ばね状の筒状に形成された中間部174が設けられている。
【0048】
これらによって第1接触部171と中間部174と2つに分割されたばね部175を有する第1部材170が構成されている。
【0049】
また、第2部材180は、軸Lに沿って棒状に形成された部材であり、ここでは、中空の棒状に形成されている。なお、中実の棒状に形成されていても良い。この第2部材180は、図15に示す第2部材導電材料180Aから形成されている。この第2部材導電材料180Aは、長細形状の板状の部材で構成されている。
【0050】
そして、図15に示す第2部材導電材料180Aが長手方向の軸Lに沿って筒状に湾曲又は折り曲げられ、かつ、途中の一部分(第2接触部181の係止部183となる部分)だけ径を大きくするようにして筒状に湾曲又は折り曲げることで、図12に示すような、上方のICパッケージ2に接触する細径の第2先端部182と、第2先端部182の下部側に繋がる太径の係止部183が形成された筒状の第2接触部181が形成されると共に、当該第2接触部181に連続する筒状の挿入部185が形成されている。
【0051】
なお、係止部183は、第1部材170のばね部175の径より大きな径に形成されており、ばね部175の端部が当接するようになっている。
【0052】
また、挿入部185は、第2接触部181の係止部183より細径で、第1部材170のばね部175の内部に挿入され、第1部材170の第1接触部171の被挿入部173の内部に摺動しつつ挿入される大きさ及び形状となっている。また、挿入部185の長さは、ばね部175の内部に挿入させて収縮方向に力を掛けない状態で、第1接触部171の被挿入部173の内部に挿入されており、かつ、ばね部175を収縮方向に収縮させて突起部179でストッパが掛かったときに挿入部185の先端が被挿入部173と第1先端部172の境界部分に達しない程度に形成されている。
【0053】
また、挿入部185における第2接触部181の係止部183付近の壁面には、突出部186が所定量突出した状態で形成されている。ここでは挿入部185の軸L方向の同位置の壁面の対向する2箇所に、半球形状の突出部186が設けられている。これにより、ばね部175を係止部183に当接させた状態で外れないように保持することができるものである。
【0054】
これらによって第2接触部181と挿入部185を有する第2部材180が構成されている。
【0055】
そして、第1部材170のばね部175及び第1接触部171の被挿入部173に、第2部材180の挿入部185を挿入させて、係止部183にばね部175の端部を当接させ、ばね部175を突出部186で保持することで、コンタクトピン160を形成している。
【0056】
このように形成されたコンタクトピン160は、コンタクトモジュール30の下側保持部材33の貫通孔に、第1部材170の第1接触部171における細径の第1先端部172が挿通されて下側保持部材33の下方に突出させる(図5の第1先端部72に相当)。また、フローティングプレート40の貫通孔に、第2部材180の第2接触部181における細径の第2先端部182が挿通される(図5の第2先端部82に相当)。また、コンタクトモジュール30の中央保持部材32の貫通孔に、第1部材170のばね部175の略中間位置の中間部174が挿通される(図5の中間部96に相当)。これにより、コンタクトピン160がコンタクトモジュール30に保持されるようになっている。
【0057】
次に、このような第1部材170と第2部材180を有するコンタクトピン160を備えたICソケット10の作用について説明する。
【0058】
このICソケット10を使用する際には、複数のコンタクトピン160をそれぞれソケット本体20のコンタクトモジュール30に装着し、第1部材170の第1接触部171の第1先端部172を下側保持部材33の下方に突出させると共に、第2部材180の第2接触部181の第2先端部182をフローティングプレート40に挿通させ、第1部材170の中間部174を中央保持部材32に挿通させた状態で配置する。
【0059】
そして、このICソケット10を配線基板1に位置決め固定し、第1接触部171の第1先端部172を配線基板1の電極に接触させる。このとき、第1先端部172が配線基板1によって上方に押し上げられることで、第1部材170全体が上方に押し上げられ、ばね部175の端部が当接した第2部材180の第2接触部181の係止部183を介して第2部材180も上方に押し上げられた状態となる。
【0060】
その後、ICパッケージ2をフローティングプレート40上に収容して、半田ボールを第2接触部181の第2先端部182に接触させる。その状態で操作部材を操作してカバー部材でICパッケージ2を下方に押圧することで、ICパッケージ2と共にフローティングプレート40を上方への付勢力に抗して下降させて、半田ボールにより第2先端部182が押圧され、第2部材180がばね部175の付勢力に抗して下方に押し込まれる。
【0061】
ここで、突起部179が凹部178に入り込むようになっていることで、ばね部175を、その付勢力に抗して軸Lに沿って収縮させる方向に力が働いたときに、所定の収縮量で突起部179が入り込んだ凹部178の両脇の凸部177の側壁177aと突起部179とが当接する。これによって、ストッパが掛かり、それ以上ばね部175が収縮しないようになる。その結果、所定量以上にばね部175が収縮することがなくなり、ばね部175が弾性変形可能な範囲を超えて塑性変形してしまう不具合を防止することができる。
【0062】
また、このとき、第1部材170の第1接触部171の被挿入部173の内部に第2部材180の挿入部185が摺動しつつ挿入されることで、第2部材180の第2接触部181と挿入部185と第1部材170の被挿入部173と第1接触部171を介して、配線基板1の電極とICパッケージ2の半田ボールが短い距離で電気的に繋がることができるため、低い抵抗値で両者を電気的に接続することができる。
【0063】
また、さらに、第1接触部171と一体のばね部175が、その上端部で第2接触部181と当接しており、ばね部175が圧縮されることで当該ばね部175の各波形状部176同士が当接することで、図15のばね部175の展開状態に沿って電気が流れる場合に比べて短い距離で第1接触部171から第2接触部181までが電気的に繋がり、前記した挿入部185を介する接続と同様に、低い抵抗値で配線基板1とICパッケージ2を電気的に接続することができる。
【0064】
そして、このようにばね部175を圧縮することで、第1部材170の被挿入部173の内部に第2部材180の挿入部185が摺動しつつ挿入されて短い距離で第1接触部171と第2接触部181が電気的に繋がり、かつ、当該ばね部175における突起部179と当該突起部179が入り込んだ凹部178の両脇の凸部177の側壁177aとが当接した状態が保持されて短い距離で第1接触部171から第2接触部181までが電気的に繋がると共に、ばね部175で第1部材170の第1接触部171と第2部材180の第2接触部181とを互いに離間する方向に付勢して配線基板1の電極とICパッケージ2の半田ボールに適切な接圧を持って接触させて電気的に接続させた状態で、ICパッケージ2のバーンイン試験等の導通試験を実施する。
【0065】
このように、前記した各実施の形態のコンタクトピン60,160は、一側の波形状部92,176の凸部93,177が、他側の波形状部92,176同士の間の凹部94,178に入り込むことで、ばね部91,175の収縮時に一側の凸部93,177と他側の波形状部92,176の凹部94,178に隣接する凸部93,177とが当接することにより、収縮動作を停止させると共に互いに当接する凸部93,177同士の導通状態を形成するように構成されているため、ばね部91,175が弾性変形の限界を超えることなく、塑性変形を起こすことを防止することができる。その結果、コンタクトピン60,160の耐久性を向上させることができる。
【0066】
また、前記した各実施のコンタクトピン60,160によれば、凸部93,177の頂点部分に、軸Lに対する直交方向に向けて突起部95,179が設けられており、突起部95,179が凹部94,178に入り込むように構成されているため、突起部95,179が確実に凹部94,178に入り込んで、確実にばね部91,175の弾性変形の限界を超えないようにすることができる。
【0067】
また、前記した各実施のICソケット10は、前記したようなコンタクトピン60,160を有しているため、コンタクトピン60,160のばね部75が弾性変形の限界を超えることなく、塑性変形を起こすことを防止したICソケット10とすることができる。
【0068】
また、前記した実施の形態1のコンタクトピン60は一部材で構成され、前記した実施の形態2のコンタクトピン160は第1部材170と第2部材180の2つの部材で構成されているため、コンタクトピン160に使用する部品点数を従来の複数部材で構成されるコンタクトピンより減らすことができる。
【0069】
また、前記した実施の形態2のコンタクトピン160は、第1部材170のばね部175の内部に第2部材180の挿入部185が挿入されて、第1部材170と第2部材180が電気的に接続するようになっているため、第1接触部171に接触した配線基板1から第2接触部181に接触したICパッケージ2までの電気が通過する距離を、電気が第1部材からばね部全体を通って第2部材に到達する従来のものよりも短くすることができる。その結果、コンタクトピン160の抵抗値を下げることができる。また、第2部材180が芯材の役割を果たすため、より強度が高いコンタクトピン160とすることができる。
【0070】
また、前記した実施の形態2のコンタクトピン160は、ばね部175の内部に挿入された挿入部185が、第1接触部171と接触するようになっているため、挿入部185がばね部175のみに接触している場合より、電気の通過距離を短くすることができ、その結果、コンタクトピン160の抵抗値をより下げることができる。
【0071】
また、前記した実施の形態2のICソケット10は、前記したようなコンタクトピン160を有しているため、コンタクトピン160に使用する部品点数を従来より減らしたICソケット10とすることができる。また、前記したようなコンタクトピン160を有しているため、第1接触部171に接触した配線基板1から第2接触部181に接触したICパッケージ2までの電気が通過する距離を従来のものよりも短くして、コンタクトピン160の抵抗値を下げたICソケット10とすることができる。
【0072】
なお、本発明の「電気接触子」は、前記した各実施の形態のような構造のコンタクトピン60,160に限るものではなく、他の構造のものにも適用できる。また、前記した実施の形態では、本発明の「電気部品用ソケット」をカバー部材や操作部材を有するタイプのICソケット10に適用したが、これに限るものではなく、カバー等を有しないICソケットや、ICソケット以外の他の装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0073】
1 配線基板(第1の電気部品)
2 ICパッケージ(第2の電気部品)
10 ICソケット(電気部品用ソケット)
20 ソケット本体
40 フローティングプレート(収容部)
60,160 コンタクトピン(電気接触子)
60A,170A 導電材料
71,171 第1接触部
81,181 第2接触部
91,175 ばね部
92,176 波形状部
93,177 凸部
94,178 凹部
95,179 突起部
L 軸
図1
図2
図3
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図5
図6
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図10
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