特許第6744243号(P6744243)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6744243発電プラント及び発電プラントの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6744243
(24)【登録日】2020年8月3日
(45)【発行日】2020年8月19日
(54)【発明の名称】発電プラント及び発電プラントの制御方法
(51)【国際特許分類】
   F01D 17/10 20060101AFI20200806BHJP
   F01D 17/00 20060101ALI20200806BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20200806BHJP
【FI】
   F01D17/10 C
   F01D17/10 H
   F01D17/00 L
   F01D17/00 E
   F01D17/10 G
   F01D25/00 G
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-49947(P2017-49947)
(22)【出願日】2017年3月15日
(65)【公開番号】特開2018-155104(P2018-155104A)
(43)【公開日】2018年10月4日
【審査請求日】2019年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 和希
【審査官】 所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−185563(JP,A)
【文献】 実開昭57−008302(JP,U)
【文献】 実開昭56−174768(JP,U)
【文献】 特開2005−291113(JP,A)
【文献】 特開2013−124583(JP,A)
【文献】 実開昭62−057704(JP,U)
【文献】 中国特許出願公開第105134311(CN,A)
【文献】 米国特許第04604028(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 17/10
F01D 17/00
F01D 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気発生器からの主蒸気を流量制御しつつタービンに導入する蒸気加減弁を具備した発電プラントであって、
バックシート構造を具備し、前記蒸気加減弁を構成するバックシート構造付き弁と、
前記バックシート構造を具備せず、前記蒸気加減弁を構成するバックシート構造無し弁と、
定格負荷運転時に前記バックシート構造付き弁を全開状態とし、前記バックシート構造無し弁を全開状態とはしないよう弁開度を制御する制御装置と
を有することを特徴とする発電プラント。
【請求項2】
前記蒸気加減弁は、4つの弁からなり、
4つの前記弁のうち、2つの前記弁は、前記バックシート構造付き弁であり、
他の2つの前記弁は、前記バックシート構造無し弁である
ことを特徴とする請求項1記載の発電プラント。
【請求項3】
前記蒸気加減弁は、3つの弁からなり、
3つの前記弁のうち、1つの前記弁は、前記バックシート構造付き弁であり、
他の2つの前記弁は、前記バックシート構造無し弁である
ことを特徴とする請求項1記載の発電プラント。
【請求項4】
前記制御装置は、定格負荷より大きな負荷で運転する際に、前記バックシート構造付き弁を全開状態とし、前記バックシート構造無し弁を全開状態とはしないよう弁開度を制御する
ことを特徴とする請求項1記載の発電プラント。
【請求項5】
前記蒸気加減弁は、4つの弁からなり、
4つの前記弁のうち、3つの前記弁は、前記バックシート構造付き弁であり、
他の1つの前記弁は、前記バックシート構造無し弁である
ことを特徴とする請求項4記載の発電プラント。
【請求項6】
蒸気発生器からの主蒸気を流量制御しつつタービンに導入する、蒸気加減弁を具備した発電プラントの制御方法であって、
前記蒸気加減弁は、
バックシート構造を具備したバックシート構造付き弁と、
前記バックシート構造を具備しないバックシート構造無し弁と、
を具備し、
定格負荷運転時に、前記バックシート構造付き弁は全開状態とし、前記バックシート構造無し弁は全開状態とはしない、
ことを特徴とする発電プラントの制御方法。
【請求項7】
前記蒸気加減弁は、4つの弁からなり、
4つの前記弁のうち、2つの前記弁は、前記バックシート構造付き弁であり、
他の2つの前記弁は、前記バックシート構造無し弁である
ことを特徴とする請求項6記載の発電プラントの制御方法。
【請求項8】
前記蒸気加減弁は、3つの弁からなり、
3つの前記弁のうち、1つの前記弁は、前記バックシート構造付き弁であり、
他の2つの前記弁は、前記バックシート構造無し弁である
ことを特徴とする請求項6記載の発電プラントの制御方法。
【請求項9】
定格負荷より大きな負荷で運転する際に、前記バックシート構造付き弁を全開状態とし、前記バックシート構造無し弁を全開状態とはしないよう弁開度を制御する
ことを特徴とする請求項6記載の発電プラントの制御方法。
【請求項10】
前記蒸気加減弁は、4つの弁からなり、
4つの前記弁のうち、3つの前記弁は、前記バックシート構造付き弁であり、
他の1つの前記弁は、前記バックシート構造無し弁である
ことを特徴とする請求項9記載の発電プラントの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、発電プラント及び発電プラントの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今における環境問題から、石炭火力などによる発電プラントにおいて、プラント効率が最も重要な評価項目となる。その状況下において、各機器において圧損低減やリーク量低減などの熱サイクル効率の向上が必要となる。
【0003】
主蒸気加減弁におけるリーク量低減策として、蒸気加減弁が機械的全開時に弁棒のシール部での蒸気リーク(以下、ステムリーク)を減少させることのできるバックシートという構造が知られている。
【0004】
また、一般的な蒸気タービンの調速方法として、低負荷から定格負荷の90%程度までの間、第1弁から第3弁を同時に弁開し、負荷90%以降の定圧運転で第4弁を開き、定格負荷運転まで引き続き各弁の開度を増大させていくノズル調速方式の2アドミッションという方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−291113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の発電プラントにおける、4弁による2アドミッションによるノズル調速では、定格負荷運転時、各弁棒シール部において、ステムリークが4弁分発生している。このため、発電プラントの熱サイクル効率が低下するという課題があった。
【0007】
本発明は上述した課題を解決するためになされたものであり、従来に比べて発電プラントの熱サイクル効率を向上させることのできる発電プラント及び発電プラントの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の発電プラントは、蒸気発生器からの主蒸気を流量制御しつつタービンに導入する蒸気加減弁を具備した発電プラントである。バックシート構造を具備し、前記蒸気加減弁を構成するバックシート構造付き弁と、前記バックシート構造を具備せず、前記蒸気加減弁を構成するバックシート構造無し弁と、定格負荷運転時に前記バックシート構造付き弁を全開状態とし、前記バックシート構造無し弁を全開状態とはしないよう弁開度を制御する制御装置とを有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態の発電プラントの概略構成を示す図。
図2図1の発電プラントの要部概略構成を示す図。
図3】実施形態の発電プラントにおける弁開度の推移を示すグラフ。
図4】バックシート構造無し弁、弁全閉の構成を示す図。
図5】バックシート構造無し弁、弁全開の構成を示す図。
図6】バックシート構造付き弁、弁全閉の構成を示す図。
図7】バックシート構造付き弁、弁全開の構成を示す図。
図8】バックシート構造の有無によるステムリークの違いを説明するための図。
図9】4弁の場合の各弁の状態を説明するための図。
図10】3弁の場合の各弁の状態を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る発電プラント(火力発電プラント)の概略構成を模式的に示す図である。
【0011】
図1に示すように、発電プラント100は、ボイラー102と、蒸気タービン103と、復水器104とを備えている。
【0012】
ボイラー102は、蒸気発生器105と再熱器106とを備えている。また、蒸気タービン103は、高圧タービン107、中圧タービン108、低圧タービン109とを備えている。これらのタービンの各タービンロータは互いに連結されており、図2に示す発電機116を回転させる。
【0013】
ボイラー102は、供給される燃料を、空気と混合して燃焼させ、燃焼ガスを生成する。蒸気発生器105は、ボイラー102にて生成した燃焼ガスの熱により、復水器104から供給された復水を加熱して蒸気を発生させる。再熱器106は、ボイラー102にて生成した燃焼ガスの熱により、高圧タービン107で膨張仕事を終えた主蒸気S1を過熱する。
【0014】
蒸気発生器105において発生した蒸気は、主蒸気S1として、主蒸気系110を介して高圧タービン107に供給される。高圧タービン107は、この主蒸気S1により、回転駆動される。高圧タービン107にて膨張仕事を終えた主蒸気S1は、逆止弁111を有する低温再循環系112を通って再熱器106に供給される。
【0015】
再熱器106において過熱された蒸気は、再熱蒸気S2として再熱蒸気系113を介して中圧タービン108に供給される。中圧タービン108は、この再熱蒸気S2により、回転駆動される。中圧タービン108にて膨張仕事を終えた再熱蒸気S2は、低圧タービン109に送られ、ここでて膨張仕事を行い、しかる後、タービン排気として復水器104に送られる。
【0016】
復水器104に送られたタービン排気は、凝縮して復水となる。復水器104は、復水給水系114によって蒸気発生器105と接続されている。復水給水系114には、給水ポンプ115が介挿されており、この給水ポンプ115によって復水器104内の復水が加圧されて蒸気発生器105に供給される。
【0017】
上記した主蒸気系110は、主蒸気止め弁120と、その下流側に配設された蒸気加減弁121とを具備している。主蒸気止め弁120は、主に負荷遮断時などの非常時に主蒸気S1の流れを止めるためのものである。蒸気加減弁121は、主に高圧タービン107に供給される主蒸気S1の流量を制御するためのものである。
【0018】
主蒸気系110の主蒸気止め弁120の上流側から、高圧タービンバイパス系122が分岐している。この高圧タービンバイパス系122は、高圧タービンバイパス弁123を具備し、低温再循環系112に合流している。この高圧タービンバイパス弁123により、主蒸気S1が高圧タービン107に供給されることなく、低温再循環系112に供給できるようになっている。例えば、タービン起動時等の負荷上昇時に主蒸気S1の圧力や温度が所定の値に達していない場合、或いは、負荷遮断時などの非常時に主蒸気S1の流量が過剰になった場合などに、高圧タービンバイパス弁123を開いて、余剰の主蒸気S1を低温再循環系112に供給する。
【0019】
再熱蒸気系113は、再熱蒸気止め弁124と、再熱蒸気止め弁124の下流側に設けられた再熱蒸気加減弁125とを具備している。再熱蒸気止め弁124は、主に非常時に再熱蒸気S2の流れを止めるためのものである。再熱蒸気加減弁125は、主に中圧タービン108に供給される再熱蒸気S2の流量を調整するためのものである。
【0020】
再熱蒸気系113の再熱蒸気止め弁124の上流側から、低圧タービンバイパス系126が分岐している。この低圧タービンバイパス系126は、低圧タービンバイパス弁127を具備しており、復水器104に接続されている。この低圧タービンバイパス系126により、再熱蒸気S2が、中圧タービン108、低圧タービン109に供給されることなく、復水器104に供給できるようになっている。例えば、負荷上昇時に主蒸気S1の圧力や温度が所定の値に達していない場合、或いは負荷遮断時などの非常時に主蒸気S1の流量が過剰になった場合に、低圧タービンバイパス弁127を開いて余剰の再熱蒸気S2を復水器104に供給する。
【0021】
図2に示すように、蒸気加減弁121は、先行大開度弁と、先行小開度弁と、後行弁とを具備している。先行大開度弁は、第1先行大開度弁と、第2先行大開度弁とを含んでいる。以下の説明では、第1先行大開度弁を第1弁121a、第2先行大開度弁を第2弁121b、先行小開度弁を第3弁121c、後行弁を第4弁121dとして説明する。
【0022】
図2に示すように、第1弁121a、第2弁121b、第3弁121c、第4弁121dの出口は、4分割された高圧タービン107の入口ノズル107aにそれぞれ連結されている。第1弁121a、第2弁121b、第3弁121c、第4弁121dを通過した主蒸気S1は、入口ノズル107aの対応する部分に供給される。そして、供給された主蒸気S1が高圧タービン107において膨張仕事することによって回転駆動力が与えられる。後述するように、第1弁121a、第2弁121bは、バックシート構造付き弁であり、第3弁121c、第4弁121dは、バックシート構造無し弁である。
【0023】
蒸気加減弁121である第1弁121a、第2弁121b、第3弁121c、第4弁121dの開度は、コンピュータなどから構成される制御装置130によって、例えば、図3のグラフに示されるように制御される。図3に示す例において、第1弁121a及び第2弁121bの開度は、第1リフトカーブL1に従って制御される。また、第3弁121cの開度は、第2リフトカーブL2に従って制御される。また、第4弁121dの開度は、第3リフトカーブL3に従って制御される。
【0024】
第4弁121dは、流量指令値が、後述する第2流量指令値Q2よりも小さい間とじている。また、リフトカーブL2,L3は、開度指令値が75%となると、その後の開度指令値が75%に維持されるようになっている。ここで、75%開度は、各弁の定格開度を意味している。また、後述する100%開度は、各弁の最大開度を意味している。
【0025】
第2リフトカーブL2は、流量指令値が第1流量指令値Q1よりも小さい場合には、第1リフトカーブL1の開度と同一の開度を有する。また第2リフトカーブL2は、流量指令値が第1流量指令値Q1以上である場合には、第1リフトカーブL1の開度よりも小さい開度を有している。すなわち、第2リフトカーブL2は、流量指令値が第1流量指令値Q1となる時点で、第1リフトカーブL1から分岐するような特性を有している。
【0026】
第3リフトカーブL3は、流量指令値が、第2流量指令値Q2以上である場合に、第4弁121dを、第2リフトカーブL2の開度よりも小さい開度で開く特性を有している。このように、本実施形態における蒸気加減弁121は、2アドミッションで制御される。なお、定格負荷運転時の流量指令値を定格負荷流量指令値Qrとすると、第2流量指令値Q2は、定格負荷流量指令値Qrよりも小さくなっている。
【0027】
また、図3に示す例では、流量指令値が第1流量指令値Q1よりも大きくかつ第2流量指令値Q2よりも小さい第3流量指令値Q3以上である場合、第1弁121a、第2弁121bの開度は、100%開度となる。
【0028】
次に、タービンの負荷上昇時における蒸気加減弁121の第1弁121a、第2弁121b、第3弁121c、第4弁121dの開度の推移について説明する。この場合、蒸気加減弁121に与えられる流量指令値は増大していく。
【0029】
図3に示すように、まず、第1弁121a、第2弁121b、第3弁121cが同時に開く。そして、流量指令値の増大に伴って、流量指令値が第1流量指令値Q1となるまで、第1弁121aの開度、第2弁121bの開度は、第1リフトカーブL1に従って増大していく。同様にして、第3弁121cの開度は、第2リフトカーブL2に従って増大していく。流量指令値が第1流量指令値Q1となるまでは、第3弁121cの開度は、第1弁121aの開度、第2弁121bの開度と同じである。
【0030】
上記のように、第1弁121a、第2弁121b、第3弁121cを同時に開いていくことによって、蒸気加減弁121を通過する主蒸気S1の流量を確保している。一方、この間、第4弁121dは閉じている。また、この間の蒸気加減弁121を通過する主蒸気S1の流量は、絞り調速、すなわち、第1弁121aの開度、第2弁121bの開度、第3弁121cの開度によって調整される。
【0031】
流量指令値が第1流量指令値Q1となると、第3弁121cの開く速度が、第1弁121aおよび第2弁121bの開く速度より遅くなり、第3弁121cの開度は、第1弁121aの開度および第2弁121bの開度よりも小さくなる。そして、流量指令値の増大に伴って、第3弁121cの開度が、第1弁121aの開度および第2弁121bの開度よりも小さい関係を維持しながら、第1弁121aの開度および第2弁121bの開度は、第1リフトカーブL1に従って増大していき、第3弁121cの開度は第2リフトカーブL2に従って増大する。この間、第1弁121aの開度および第2弁121bの開度は、同一となっている。一方、第4弁121dは、依然として閉じている。この間の蒸気加減弁121を通過する主蒸気S1の流量は、絞り調速、すなわち、第1弁121aの開度、第2弁121bの開度、第3弁121cの開度によって調整される。
【0032】
次に、流量指令値が第3流量指令値Q3となると、第1弁121aおよび第2弁121bに100%開度指令が与えられ、これらの開度が100%開度となる。そして、流量指令値が第3流量指令値Q3以上となっている間第1弁121aおよび第2弁121bの開度は、100%開度に維持される。この間の蒸気加減弁121を通過する蒸気の流量は、絞り調速、すなわち第3弁121cの開度によって調整される。
【0033】
次に、流量指令値が第2流量指令値Q2となると、第4弁121dが開き始める。このように、本実施形態では、蒸気加減弁121は、2アドミッションで制御され、ノズル調速が行われる。そして、流量指令値の増大に伴って、第4弁121dの開度は、第3弁121cの開度よりも小さい関係を維持しながら、第3リフトカーブL3に従って増大する。この間、第1弁121aおよび第2弁121bの開度は、100%に維持される。これにより、第1弁121aおよび第2弁121bを通過する主蒸気S1の絞りによる圧力損失が低減される。また、この間の蒸気加減弁121を通過する主蒸気S1の流量は、絞り調速、すなわち、第3弁121cの開度および第4弁121dの開度によって調整されるが、第4弁121dの開度が、第3弁121cの開度よりも小さいため、第3弁121cの開度よりも第4弁121dの開度の影響を受ける傾向にある。
【0034】
その後、流量指令値が定格負荷に相当する定格負荷流量指令値Qrに達し、蒸気加減弁121の全体としての開度が定格開度となる。この際、第1弁121aおよび第2弁121bの開度は、100%開度となっているため、第1弁121aおよび第2弁121bを通過する主蒸気S1の絞りによる圧力損失が低減される。
【0035】
次に、図4図5を参照して第3弁121cおよび第4弁121dの構成について説明する。第3弁121cおよび第4弁121dは、バックシート構造を具備しないバックシート構造無し弁である。また、図4は、弁全閉状態を示し、図5は弁全開状態を示している。
【0036】
図4図5に示すように、第3弁121cおよび第4弁121dにおいて、弁ケーシング201内には主蒸気流路210が形成されており、弁ケーシング201の上部開口を閉塞するように、上蓋202が配設されている。上蓋202内には、ブッシュ203が配設されており、このブッシュ203内に位置するように弁棒208が配設されている。弁棒208の先端部には弁体206が取り付けられており、弁棒208とともに弁体206が図4,5中上下方向に移動可能とされている。
【0037】
また、弁ケーシング201内には、弁体206より主蒸気流路210の下流側に位置するように、環状の弁座207が、弁体206と対向するように配設されている。そして、弁体206が移動して弁体206の先端側の周縁部が弁座207に当接されることにより、主蒸気流路210を閉塞するよう構成されている。弁棒208の周囲には、円筒状のスリーブ205が配設されており、このスリーブ205内を弁体206の後端側の部分が摺動することによって、弁体206の移動がガイドされるようになっている。
【0038】
次に、図6図7を参照して第1弁121aおよび第2弁121bの構成について説明する。第1弁121aおよび第2弁121bは、バックシート構造を具備したバックシート構造付き弁となっている。また、図6は、弁全閉状態を示し、図7は弁全開状態を示している。
【0039】
図6図7に示すように、第1弁121aおよび第2弁121bにおいて、ブッシュ203の先端部分には、シートリング204が配設されている。一方、弁棒208には、径方向に突出する突出部208aが形成されている。そして、図7に示すように、弁全開状態(100%開度)では、突出部208aの後端側の接触面208bがシートリング204に当接され、これらの間がシールされる。すなわち、シートリング204と接触面208bとによって、バックシート構造209が構成されている。このように、バックシート構造209は、弁全開状態(100%開度)において、弁棒208の周囲をシールし、ステムリークが発生することを防止する機構である。
【0040】
上記のように、第1弁121aおよび第2弁121bでは、弁全開状態(100%開度)において、突出部208aの後端側の接触面208bがシートリング204に当接され、これらの間がシールされる。したがって、シートリング204および接触面208bからなるバックシート構造209を有しない第3弁121cおよび第4弁121dと比べて100%開度におけるステムリークの発生を抑制することができる。なお、他の部分については、図4図5に示した第3弁121cおよび第4弁121dと同様に構成されているので対応する部分に同一の符号を付して重複した説明は省略する。
【0041】
以上のように、本実施形態では、蒸気加減弁121のうち、定格負荷運転時などにおいて、弁開度が100%開度とされる第1弁121aおよび第2弁121bが、シートリング204および接触面208bとから構成されるバックシート構造209を具備した構成となっている。このため、弁開度が100%開度とされている間のステムリークを大幅に減少させることができ、熱サイクル効率を向上させることができる。
【0042】
すなわち、図8(a)に示すように、バックシート構造209を具備していない弁の場合、弁開度が全開となった状態の時も、その他の場合と同様にステムリーク(第1〜3ステムリーク)が発生する。一方、図8(b)に示すように、バックシート構造209を具備している弁の場合、弁開度が全開となった状態の時は、弁棒の周囲がバックシート構造209によってシールされるため、基本的にステムリーク(第1〜3ステムリーク)が発生しない。
【0043】
そして、図9に模式的に示すように、本実施形態では、蒸気加減弁121のうち、定格負荷運転時などにおいて、バックシート構造209を具備した第1弁121aおよび第2弁121bが、100%開度とされる。また、第3弁121cおよび第4弁121dは、絞り状態とされるため、ステムリークが発生するが、4つの弁からステムリークが発生する場合に比べてステムリークの発生量を大幅に低減することができる。
【0044】
また、仮に第3弁121cおよび第4弁121dにもバックシート構造209を設けたとしても、上記のように、第3弁121cおよび第4弁121dは、絞り状態で使用されるため、バックシート構造209の有無に係わらず、ステムリークが発生する。したがって、第3弁121cおよび第4弁121dにバックシート構造209を設けてもステムリークを減少させることができず、バックシート構造209が無駄になってしまう。本実施形態によれば、このような無駄が発生することを防止できる。
【0045】
上記の実施形態では、蒸気加減弁121が、第1弁121a、第2弁121b、第3弁121c、第4弁121dの4つの弁で構成されている場合について説明したが、弁の数は4つに限定されるものではない。図10は、蒸気加減弁121を、第1弁〜第3弁の3つの弁で構成した場合の例を示している。
【0046】
この場合、定格負荷運転時などにおいて、例えば、第1弁を100%開度とし、第2弁および第3弁を絞り状態とする。このため、第1弁のみにバックシート構造が設けられており、第2弁および第3弁にはバックシート構造が設けられていない。このような構成としても、前述した実施形態と同様な効果を奏することができる。
【0047】
また、図3に示した弁開度の制御において、定格負荷より大きな負荷で運転することが想定される場合は、第1弁121a、第2弁121bとともに、第3弁121cをバックシート構造付き弁として、第3弁121cの開度を100%開度とすればよい。これによってステムリークを減少させることができ、熱サイクル効率を向上させることができる。
【0048】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0049】
100……発電プラント、102……ボイラー、103……蒸気タービン、104……復水器、105……蒸気発生器、106……再熱器、107……高圧タービン、108……中圧タービン、109……低圧タービン、110……主蒸気系、111……逆止弁、112……低温再循環系、113……再熱蒸気系、114……復水給水系、115……給水ポンプ、116……発電機、120……主蒸気止め弁、121……蒸気加減弁、122……高圧タービンバイパス系、123……高圧タービンバイパス弁、124……再熱蒸気止め弁、125……再熱蒸気加減弁、126……低圧タービンバイパス系、127……低圧タービンバイパス弁、130……制御装置、S1……主蒸気、S2……再熱蒸気。
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9
図10