特許第6744359号(P6744359)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6744359制御装置、制御システム及びラダープログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6744359
(24)【登録日】2020年8月3日
(45)【発行日】2020年8月19日
(54)【発明の名称】制御装置、制御システム及びラダープログラム
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/05 20060101AFI20200806BHJP
【FI】
   G05B19/05 B
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-108016(P2018-108016)
(22)【出願日】2018年6月5日
(65)【公開番号】特開2019-212048(P2019-212048A)
(43)【公開日】2019年12月12日
【審査請求日】2019年11月12日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕二
【審査官】 藤井 浩介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−122410(JP,A)
【文献】 特開2004−234042(JP,A)
【文献】 特開2014−099063(JP,A)
【文献】 特開2017−091458(JP,A)
【文献】 特開平06−250709(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/04−19/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラダープログラムによって複数のロボットセルを順に動作させる制御装置であって、
前記複数のロボットセルのそれぞれから、当該ロボットセルの動作の順番を示す第1の入力信号、及び当該ロボットセルでの作業完了を示す第2の入力信号を受け付ける入力部と、
前記ラダープログラムに従って、前記第1の入力信号の組み合わせ、及び前記第2の入力信号に基づいて特定されるロボットセルに対して、動作を指示するための出力信号を出力する出力部と、
前記ラダープログラムを、前記複数のロボットセルの少なくとも一部からなる複数の動作順序のパターンに対応して、複数記憶する記憶部と、を備える制御装置。
【請求項2】
前記第1の入力信号の組み合わせは、前記第2の入力信号を受け付けたロボットセルの順番と、当該順番の直後に位置するロボットセルの順番とを含む請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記入力部は、前記ロボットセルで稼働するロボットの操作盤への操作入力に応じて、前記第1の入力信号を受け付ける請求項1又は請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
複数のロボットセルをそれぞれ制御するセル制御装置と、複数の前記セル制御装置と接続されたマスタ制御装置とを備えた制御システムであって、
前記セル制御装置は、
前記複数のロボットセルの動作順序のうち、自装置が制御するロボットセルの動作の順番を示す第1のセル信号を出力する第1のセル出力部と、
自装置が制御するロボットセルでの作業完了を示す第2のセル信号を出力する第2のセル出力部と、を備え、
前記マスタ制御装置は、
前記複数のロボットセルのそれぞれから、前記第1のセル信号に対応する第1の入力信号、及び前記第2のセル信号に対応する第2の入力信号を受け付けるマスタ入力部と、
ラダープログラムに従って、前記第1の入力信号の組み合わせ、及び前記第2の入力信号に基づいて特定されるロボットセルに対して、動作を指示するための出力信号を出力するマスタ出力部と、
前記ラダープログラムを、前記複数のロボットセルの少なくとも一部からなる複数の動作順序のパターンに対応して、複数記憶する記憶部と、を備える制御システム。
【請求項5】
複数のロボットセルを順に動作させる制御装置に、
前記複数のロボットセルのそれぞれから、当該ロボットセルの動作の順番を示す第1の入力信号、及び当該ロボットセルでの作業完了を示す第2の入力信号を受け付けたことに応じて、前記第1の入力信号の組み合わせ、及び前記第2の入力信号に基づいて特定されるロボットセルに対して、動作を指示するための出力信号を出力させるためのラダープログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のロボットセルを制御するための制御装置、制御システム及びラダープログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、産業用ロボットが組み込まれた複数台のロボットセルを配列し、生産ラインの各工程を担当するロボットセルの間でワークを順次受け渡すことで、一連の作業を行うシステムが用いられている(例えば、特許文献1参照)。このようなシステムでは、製品の仕様変更等に対応するために生産ラインを改変する場合、ロボットセルの単位で、入れ替え、取り外し又は追加といった順序の変更が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−124454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ロボットセルの順序が変更される場合、ロボットセルの制御装置であるPLC(Programmable Logic Controller)間のI/Oアドレスの変更が生じるため、入出力のパラメータ設定及びラダープログラムの変更が必要となっていた。このような作業のためには、パラメータ及びプログラムの構造を熟知している必要があり、また、多くの手間が掛かっていた。
【0005】
本発明は、ロボットセルの順序変更を容易にできる制御装置、制御システム及びラダープログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明に係る制御装置(例えば、後述のマスタPLC11)は、ラダープログラムによって複数のロボットセル(例えば、後述のロボットセルR)を順に動作させる制御装置であって、前記複数のロボットセルのそれぞれから、当該ロボットセルの動作の順番を示す第1の入力信号、及び当該ロボットセルでの作業完了を示す第2の入力信号を受け付ける入力部(例えば、後述のマスタ入力部111)と、前記ラダープログラムに従って、前記第1の入力信号の組み合わせ、及び前記第2の入力信号に基づいて特定されるロボットセルに対して、動作を指示するための出力信号を出力する出力部(例えば、後述のマスタ出力部112)と、前記ラダープログラムを、前記複数のロボットセルの少なくとも一部からなる複数の動作順序のパターンに対応して、複数記憶する記憶部(例えば、後述の記憶部113)と、を備える。
【0007】
(2) (1)に記載の制御装置において、前記第1の入力信号の組み合わせは、前記第2の入力信号を受け付けたロボットセルの順番と、当該順番の直後に位置するロボットセルの順番とを含んでもよい。
【0008】
(3) (1)又は(2)に記載の制御装置において、前記入力部は、前記ロボットセルで稼働するロボットの操作盤(例えば、後述の操作盤24)への操作入力に応じて、前記第1の入力信号を受け付けてもよい。
【0009】
(4) 本発明に係る制御システム(例えば、後述の制御システム1)は、複数のロボットセル(例えば、後述のロボットセルR)をそれぞれ制御するセル制御装置(例えば、後述のセルPLC21)と、複数の前記セル制御装置と接続されたマスタ制御装置(例えば、後述のマスタPLC11)とを備えた制御システムであって、前記セル制御装置は、前記複数のロボットセルの動作順序のうち、自装置が制御するロボットセルの動作の順番を示す第1のセル信号を出力する第1のセル出力部(例えば、後述の第1のセル出力部211)と、自装置が制御するロボットセルでの作業完了を示す第2のセル信号を出力する第2のセル出力部(例えば、後述の第2のセル出力部212)と、を備え、前記マスタ制御装置は、前記複数のロボットセルのそれぞれから、前記第1のセル信号に対応する第1の入力信号、及び前記第2のセル信号に対応する第2の入力信号を受け付けるマスタ入力部(例えば、後述のマスタ入力部111)と、ラダープログラムに従って、前記第1の入力信号の組み合わせ、及び前記第2の入力信号に基づいて特定されるロボットセルに対して、動作を指示するための出力信号を出力するマスタ出力部(例えば、後述のマスタ出力部112)と、前記ラダープログラムを、前記複数のロボットセルの少なくとも一部からなる複数の動作順序のパターンに対応して、複数記憶する記憶部(例えば、後述の記憶部113)と、を備える。
【0010】
(5) 本発明に係るラダープログラムは、複数のロボットセル(例えば、後述のロボットセルR)を順に動作させる制御装置(例えば、後述のマスタPLC11)に、前記複数のロボットセルのそれぞれから、当該ロボットセルの動作の順番を示す第1の入力信号、及び当該ロボットセルでの作業完了を示す第2の入力信号を受け付けたことに応じて、前記第1の入力信号の組み合わせ、及び前記第2の入力信号に基づいて特定されるロボットセルに対して、動作を指示するための出力信号を出力させるためのものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ロボットセルの順序変更が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係る制御システムの構成を示す概略図である。
図2】実施形態に係るマスタPLC及びセルPLCの機能構成を示す図である。
図3】実施形態に係るマスタPLCにおける入出力信号の第1の例を示す図である。
図4】実施形態に係るマスタPLCのラダープログラムを例示する図である。
図5】実施形態に係るマスタPLCにおける入出力信号の第2の例を示す図である。
図6】実施形態に係るロボットセルを入れ替えた後のラダープログラムを例示する図である。
図7】実施形態に係るマスタPLCにおける入力信号が拡充された例を示す図である。
図8】実施形態に係るロボットコントローラ、セルPLC及びマスタPLCの間での信号の入出力の関係を例示する図である。
図9】実施形態に係るロボット信号とマスタPLCの入力信号とを対応付けたパラメータ設定を例示する図である。
図10A】実施形態に係るマスタPLCの改良後のラダープログラムを例示する第1の図である。
図10B】実施形態に係るマスタPLCの改良後のラダープログラムを例示する第2の図である。
図10C】実施形態に係るマスタPLCの改良後のラダープログラムを例示する第3の図である。
図10D】実施形態に係るマスタPLCの改良後のラダープログラムを例示する第4の図である。
図10E】実施形態に係るマスタPLCの改良後のラダープログラムを例示する第5の図である。
図10F】実施形態に係るマスタPLCの改良後のラダープログラムを例示する第6の図である。
図11A】実施形態に係るマスタPLCに格納されるラダープログラムのセットを例示する第1の図である。
図11B】実施形態に係るマスタPLCに格納されるラダープログラムのセットを例示する第2の図である。
図11C】実施形態に係るマスタPLCに格納されるラダープログラムのセットを例示する第3の図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態の一例について説明する。
図1は、本実施形態に係る制御システム1の構成を示す概略図である。
制御システム1は、マスタ制御盤Mと、複数のロボットセルRとを備える。マスタ制御盤Mにはシステム全体を管理するマスタPLC11が、各ロボットセルRには自セルを制御するセルPLC21(セル制御装置)がそれぞれ設けられ、複数のセルPLC21とマスタPLC11とは、ハブ22を介して接続されている。
【0014】
また、各ロボットセルRに組み込まれたロボットは、セルPLC21からの指令に応じて、ロボットコントローラ23により動作が制御される。ロボットコントローラ23には、オペレータからの入力を受け付けるためのペンダントと呼ばれる操作盤24が無線接続される。
なお、操作盤24は、有線接続されてもよいし、ロボットコントローラ23の筐体に搭載されてもよい。すなわち、本実施形態において、操作盤24への入力とは、ペンダントへの入力、及びロボットコントローラ23の本体への入力等を含む概念である。
【0015】
図2は、本実施形態に係るマスタPLC11及びセルPLC21の機能構成を示す図である。
マスタPLC11は、マスタ入力部111と、マスタ出力部112と、記憶部113とを備え、ラダープログラムによって複数のロボットセルRを順に動作させる。
セルPLC21は、第1のセル出力部211と、第2のセル出力部212とを備える。
【0016】
マスタ入力部111は、複数のロボットセルRのそれぞれから、動作の順番、すなわちロボットセルRが生産ラインの何番目に配置されているかを示す第1の入力信号、及びロボットセルRでの作業完了を示す第2の入力信号を受け付ける。
なお、第1の入力信号は、ロボットセルRで稼働するロボットの操作盤24への操作入力に応じて入力される。
【0017】
マスタ出力部112は、ラダープログラムに従って、第1の入力信号の組み合わせ、及び第2の入力信号に基づいて特定されるいずれかのロボットセルRに対して、動作を指示するための出力信号を出力する。
第1の入力信号の組み合わせは、第2の入力信号を受け付けたロボットセルの順番と、この順番の直後に位置するロボットセルの順番とを含む。
【0018】
記憶部113は、ラダープログラムを、複数のロボットセルRの少なくとも一部からなる複数の動作順序のパターンに対応して、複数記憶する。
【0019】
第1のセル出力部211は、複数のロボットセルRの動作順序のうち、自装置(セルPLC21)が制御するロボットセルRの動作の順番を示す第1のセル信号を出力する。
第1のセル信号は、ロボットセルRで稼働するロボットの操作盤24への操作入力に応じて、ロボットコントローラ23から出力された所定の信号を中継するものである。この第1のセル信号は、前述の第1の入力信号としてマスタPLC11に入力される。
【0020】
第2のセル出力部212は、自装置が制御するロボットセルRでの作業完了を示す第2のセル信号を出力する。第2のセル信号は、前述の第2の入力信号としてマスタPLC11に入力される。
【0021】
図3は、本実施形態に係るマスタPLC11における入出力信号の第1の例を示す図である。
この例では、3つのロボットセルRがR1、R2、R3の順で配列されている。
なお、マスタPLC11への入力信号をX***で表し、マスタPLC11からの出力信号をY***で表している。
【0022】
各セルPLC21は、マスタPLC11を経由して入出力信号を受け渡す。
具体的には、まず、マスタPLC11においてワークの供給準備が完了したことを示す信号X0が入力されると、ロボットセルR1に対してワークの取り出しが可能になったことを通知するための信号Y100を出力する(1)。
【0023】
次に、信号Y100による通知を受けたロボットセルR1がワークを受け取り、作業が完了すると、ロボットセルR1から信号X100がマスタPLC11に入力される。すると、この入力信号X100に応じて、ロボットセルR2に対してワークの取り出しが可能になったことを通知するための信号Y200を出力する(2)。
【0024】
同様に、信号Y200による通知を受けたロボットセルR2がワークを受け取り、作業が完了すると、ロボットセルR2から信号X200がマスタPLC11に入力される。すると、この入力信号X200に応じて、ロボットセルR3に対してワークの取り出しが可能になったことを通知するための信号Y300を出力する(3)。そして、ロボットセルR3において作業が完了すると、ロボットセルR3から信号X300がマスタPLC11に入力される。
【0025】
図4は、本実施形態に係るマスタPLC11のラダープログラムを例示する図である。
この例は、図3のようにロボットセルR1、R2、R3が配列され、この順序が固定されている場合に用いられるラダープログラムである。
【0026】
このラダープログラムには、信号X0が入力された場合に信号Y100を出力し、信号X100が入力された場合に信号Y200を出力し、信号X200が入力された場合に信号Y300を出力することが記述されている。これにより、図3の信号Y100、Y200、Y300がそれぞれ、入力信号X0、X100、X200に応じて順に出力される。
【0027】
図5は、本実施形態に係るマスタPLC11における入出力信号の第2の例を示す図である。
第2の例では、図3の第1の例に示した3つのロボットセルR1、R2、R3のうち、1番目と2番目が順序を入れ替えて配列されている。
【0028】
したがって、各ロボットセルR1、R2、R3から入力される信号X100、X200、X300と、各ロボットセルR1、R2、R3へ出力する信号Y100、Y200、Y300とは、いずれも第1の例と同一であるが、これらの順序が異なっている。
具体的には、入力信号X0に応じて信号Y200が出力され(1)、次に、入力信号X100に応じて信号Y100が出力され(2)、最後に、入力信号X100に応じて信号Y300が出力される(3)。
【0029】
図6は、本実施形態に係るロボットセルRを入れ替えた後のラダープログラムを例示する図である。
この例は、図5のようにロボットセルR2、R1、R3が配列され、この順序が固定されている場合に用いられるラダープログラムである。
【0030】
このラダープログラムには、信号X0が入力された場合に信号Y200を出力し、信号X200が入力された場合に信号Y100を出力し、信号X100が入力された場合に信号Y300を出力することが記述されている。これにより、図5の信号Y200、Y100、Y300がそれぞれ、入力信号X0、X200、X100に応じて順に出力される。
【0031】
このように、ロボットセルR2、R1、R3の順序が変更されると、ラダープログラムは、図4及び図6に示すように記述内容の変更が必要となる。
そこで、制御システム1は、次に示すようにマスタPLC11の入力信号を拡充することで、ラダープログラムの変更を不要とする。
【0032】
図7は、本実施形態に係るマスタPLC11における入力信号が拡充された例を示す図である。
この例では、図3に示した構成において、作業完了を示す第2の入力信号に加えて、新たに第1の入力信号X101、X202、X303が追加されている。
【0033】
ここで、ロボットセルR1から受け付ける第1の入力信号X101は、ロボットセルR1が先頭に配置されていることを示している。この第1の入力信号は、例えば、ロボットセルR1が先頭から2番目の場合はX102となり、先頭から3番目の場合はX103となる。
同様に、ロボットセルR2が先頭の場合、先頭から2番目の場合、先頭から3番目の場合は、ロボットセルR2から受け付ける第1の入力信号がそれぞれX201、X202、X203となる。また、ロボットセルR3が先頭の場合、先頭から2番目の場合、先頭から3番目の場合は、ロボットセルR3から受け付ける第1の入力信号がそれぞれX301、X302、X303となる。
【0034】
図8は、本実施形態に係るロボットコントローラ23、セルPLC21及びマスタPLC11の間での信号の入出力の関係を例示する図である。
複数のロボットセルR1、R2、R3において、それぞれのロボットコントローラ23が信号DO[**]を出力する。例えば、DO[10]、DO[11]、DO[12]は、それぞれ自身の動作順が1番目、2番目、3番目であることを示すロボット信号である。
このようなロボット信号は、ペンダントへの操作入力、又はロボットコントローラ23に設けられたディップスイッチの切り替え操作等、操作盤24への入力に応じて出力される。
【0035】
これらのロボット信号は、セルPLC21のスルー信号(例えば、Y100〜Y10F)を経由して、マスタPLC11の入力信号として、ロボットセルR毎に割り当てられたアドレス(例えば、ロボットセルR1に対して、X101〜X10F)に対応付けられる。
そして、ラダープログラムに従って、入力信号に基づく出力信号が決定されると、この出力信号は、セルPLC21の入出力信号を経由して、ロボットコントローラ23の入力信号DI[**]に対応付けられる。
【0036】
なお、これらの各入出力信号は、所定のアドレスがオンになっていることで表現される。そして、装置間でのアドレスの対応付けが予めパラメータ設定されることにより、ロボットコントローラ23、セルPLC21及びマスタPLC11の間で信号が伝達される。
【0037】
図9は、本実施形態に係るロボット信号とマスタPLC11の入力信号とを対応付けたパラメータ設定を例示する図である。
この例では、ロボットセルR1、R2、R3が出力するロボット信号DO[10]、DO[11]、DO[12]は、それぞれ、動作順が先頭から1番目、2番目、3番目であることを示す。
【0038】
例えば、ロボットセルR1から出力されるロボット信号DO[10]、DO[11]、DO[12]は、それぞれマスタPLC11の入力信号X101、X102、X103に対応付けられている。同様に、ロボットセルR2から出力されるロボット信号DO[10]、DO[11]、DO[12]は、それぞれマスタPLC11の入力信号X201、X202、X203に対応付けられている。
【0039】
マスタPLC11の記憶部113に格納されるラダープログラムは、ロボットセルRの動作順を示すこれらの入力信号が条件に付加される。これにより、ロボットセルRの配列によらず、マスタ出力部112は、出力信号を一意に決定できる。
【0040】
図10A〜Fは、本実施形態に係るマスタPLC11の改良後のラダープログラムを例示する図である。
ここでは、図7のように、3つのロボットセルR1、R2、R3が配列される場合を示すが、順序は限定されない。
【0041】
図10Aは、ロボットセルRの動作順がR1、R2、R3の順である場合に、図10Bは、ロボットセルRの動作順がR1、R3、R2の順である場合に、図10Cは、ロボットセルRの動作順がR2、R1、R3の順である場合に、図10Dは、ロボットセルRの動作順がR2、R3、R1の順である場合に、図10Eは、ロボットセルRの動作順がR3、R1、R2の順である場合に、図10Fは、ロボットセルRの動作順がR3、R2、R1の順である場合に、それぞれ参照されるラダープログラムを示している。
【0042】
入力信号X0に対して、従来は図4及び図6に示したようにロボットセルRの動作順に応じてラダープログラムの書き換えが発生していたが、本実施形態では、X101、X201又はX301の条件を追加した複数パターンが記述されることにより、出力信号Y100、Y200又はY300が複数のラダーから選択的に決定される。
例えば、図10Aの上段では、信号X0が入力されたとき、ロボットセルR1の動作順が1番目である場合、すなわち信号X101が入力されている場合に、信号Y100を出力することが記述されている。
【0043】
また、入力信号X100に対して、作業が完了したロボットセルR1の順番と、次に作業するロボットセルR2又はR3の順番とを条件に追加した複数パターンが記述されることにより、出力信号Y200又はY300が複数のラダーから選択的に決定される。
例えば、図10Aの中段では、信号X100が入力されたとき、作業が完了したロボットセルR1の動作順が1番目であり、かつ、2番目がロボットセルR2である場合、すなわち信号X101及び信号X202が入力されている場合に、信号Y200を出力することが記述されている。また、図10Cの下段では、信号X100が入力されたとき、作業が完了したロボットセルR1の動作順が2番目であり、かつ、3番目がロボットセルR3である場合、すなわち信号X102及び信号X303が入力されている場合に、信号Y300を出力することが記述されている。
【0044】
図11A〜Cは、本実施形態に係るマスタPLC11に格納されるラダープログラムのセットを例示する図である。
ロボットセルR1、R2、R3の動作順毎に示した6パターンのラダープログラム(図10A〜F)から重複を除いてまとめると、3種類の出力信号Y100、Y200、Y300毎に統合された3つのラダープログラムが作成できる。
図11Aは、出力信号がY100となるラダープログラムを、図11Bは、出力信号がY200となるラダープログラムを、図11Cは、出力信号がY300となるラダープログラムを、それぞれ示している。
【0045】
例えば、図11Aでは、信号X0が入力されたときに信号X101が入力されている場合、信号X200が入力されたときに信号X201及びX102、又は信号X202及び信号X103が入力されている場合、信号X300が入力されたときに信号X301及びX102、又は信号X302及び信号X103が入力されている場合の、5種類のいずれかの条件により信号Y100が出力されることが記述されている。
【0046】
また、例えば、信号X100が入力されたとき、図11B及び11Cを参照すると、作業が完了したロボットセルR1が1番目(X101)なのか2番目(X102)なのか、1番目(X101)だとすると次の2番目はロボットセルR2(X202)なのかロボットセルR3(X302)なのか、2番目(X102)だとすると次の3番目はロボットセルR2(X203)なのかロボットセルR3(X303)なのか、という4通りの条件が網羅されている。したがって、入力信号により出力信号が一意に決定される。
【0047】
これらのラダープログラムのセットが予め格納されることにより、複数のロボットセルRの動作順序が変更された場合であっても、出力信号が一意に決定される。
なお、いずれかのロボットセルRが生産ラインから取り外された場合、取り外されたロボットセルRからの入力信号がなくなるので、一部のラダープログラムが参照されず、このロボットセルRに対する出力信号も発生しない。
例えば、ロボットセルR2が生産ラインから取り外された場合、信号X200、X201、X202、X203、X103、X303がオンになることはない。したがって、信号X100、X300、X101、X102、X301、X302のいずれかで構成されるラダープログラムのみが参照され、信号Y100又はY300のいずれかが出力される。
【0048】
また、追加の可能性のあるロボットセルRを含めてラダープログラムを用意しておくことで、ロボットセルRの入れ替え、取り外し及び追加のいずれの変更が発生した場合にも、マスタPLC11は、出力信号を一意に決定できる。
例えば、ロボットセルR1及びR3のみが配列されている生産ラインにロボットセルR2を追加した場合、予め図11A〜Cのラダープログラムが格納されていると、前述のように、ロボットセルR1〜R3の動作順によらず出力信号が正しく一意に決定される。
【0049】
本実施形態によれば、制御システム1は、マスタPLC11において、ロボットセルRの動作の順番を示す第1の入力信号、及びロボットセルRでの作業完了を示す第2の入力信号を受け付け、ラダープログラムに従って、第1の入力信号の組み合わせ、及び第2の入力信号に基づいて特定されるロボットセルRに対して、動作を指示するための出力信号を出力する。マスタPLC11は、このラダープログラムを、複数のロボットセルRの少なくとも一部からなる複数の動作順序のパターンに対応して、複数記憶することにより、ロボットセルRの順序変更が生じた場合にも、出力信号を正しく決定できる。したがって、ロボットセルRの順序変更が容易になる。
【0050】
ラダープログラムに記述される第1の入力信号の組み合わせは、第2の入力信号を受け付けたロボットセルRの順番と、この順番の直後に位置するロボットセルRの順番とを含む。これにより、マスタPLC11は、第2の入力信号と、第1の入力信号の組み合わせとに基づいて、容易に出力信号を一意に決定できる。
【0051】
マスタPLC11は、ロボットセルRの操作盤24への操作入力に応じて、ロボットセルRの動作の順番を示す第1の入力信号を受け付ける。これにより、制御システム1は、ロボットセルRの順序変更に際して、変更結果を容易にマスタPLC11へ通知できる。
【0052】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限るものではない。また、本実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0053】
制御システム1による制御方法は、ソフトウェアにより実現される。ソフトウェアによって実現される場合には、このソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータにインストールされる。また、これらのプログラムは、リムーバブルメディアに記録されてユーザに配布されてもよいし、ネットワークを介してユーザのコンピュータにダウンロードされることにより配布されてもよい。
【符号の説明】
【0054】
M マスタ制御盤
R ロボットセル
1 制御システム
22 ハブ
23 ロボットコントローラ
24 操作盤
111 マスタ入力部
112 マスタ出力部
113 記憶部
211 第1のセル出力部
212 第2のセル出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図10F
図11A
図11B
図11C