(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6744512
(24)【登録日】2020年8月3日
(45)【発行日】2020年8月19日
(54)【発明の名称】ジクロフェナクナトリウム含有貼付剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/196 20060101AFI20200806BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20200806BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20200806BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20200806BHJP
【FI】
A61K31/196
A61K9/70 401
A61K47/32
A61P29/00
【請求項の数】11
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2020-21284(P2020-21284)
(22)【出願日】2020年2月12日
【審査請求日】2020年3月2日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000160522
【氏名又は名称】久光製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100126653
【弁理士】
【氏名又は名称】木元 克輔
(72)【発明者】
【氏名】大川 宏司
(72)【発明者】
【氏名】大▲高▼ 邦章
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】稲倉 裕
(72)【発明者】
【氏名】栗城 正朗
【審査官】
山村 祥子
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2013/191128(WO,A1)
【文献】
国際公開第2018/124089(WO,A1)
【文献】
特表2015−522049(JP,A)
【文献】
特表2013−535438(JP,A)
【文献】
ジクロフェナクNaパップ 70mg「ラクール」、140mg「ラクール」、280mg「ラクール」,添付文書,ラクール薬品販売株式会社,2016年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/196
A61K 9/70
A61K 47/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体層と支持体層上に積層された粘着剤層とを備える、がん疼痛を緩和するための貼付剤であって、
粘着剤層が、粘着基剤、及び150mg〜225mgのジクロフェナクナトリウムを含有し、粘着基剤が、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体及びポリイソブチレンからなる群から選択される少なくとも1つを含み、
1日1回1枚貼付するように用いられる、貼付剤。
【請求項2】
粘着基剤が、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体及びポリイソブチレンを含む、請求項1に記載の貼付剤。
【請求項3】
粘着剤層が、ジメチルスルホキシドを含む、請求項1又は2に記載の貼付剤。
【請求項4】
粘着剤層が、有機酸を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の貼付剤。
【請求項5】
有機酸がオレイン酸である、請求項4に記載の貼付剤。
【請求項6】
粘着剤層が、粘着付与剤を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の貼付剤。
【請求項7】
粘着付与剤が、脂環族飽和炭化水素樹脂及び水素添加ロジングリセリンエステルである、請求項6に記載の貼付剤。
【請求項8】
粘着剤層が、可塑剤を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の貼付剤。
【請求項9】
可塑剤が、流動パラフィンである、請求項8に記載の貼付剤。
【請求項10】
支持体が、透湿度が1000g/m2・24時間以上のポリエチレンテレフタレート編布である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の貼付剤。
【請求項11】
貼付面積が50〜150cm2である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の貼付剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はジクロフェナクナトリウム含有貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、非ステロイド性抗炎症薬を配合した貼付剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2018/124089号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
がん患者に投与したときに、がん疼痛を十分緩和できる貼付剤の提供が望まれている。しかしながら、がん疼痛を緩和するジクロフェナクナトリウム含有貼付剤は上市された製品が未だなく、そのため、貼付剤における望ましい用法用量も判明していない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討を行ったところ、1日1回あたり150mg〜225mgのジクロフェナクナトリウムを含有する貼付剤を投与することで十分ながん疼痛の緩和効果が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明のがん疼痛を緩和するための貼付剤は、支持体層と支持体層上に積層された粘着剤層とを備え、粘着剤層が、粘着基剤、及び150mg〜225mgのジクロフェナクナトリウムを含有し、1日1回1枚貼付するように用いられる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の貼付剤は、十分ながん疼痛緩和効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】ジクロフェナクナトリウム75mg投与群のカプランマイヤー曲線を表す図である。
【
図2】ジクロフェナクナトリウム150mg投与群のカプランマイヤー曲線を表す図である。
【
図3】ジクロフェナクナトリウム225mg投与群のカプランマイヤー曲線を表す図である。
【
図4】ジクロフェナクナトリウム150mg又は225mg投与群のカプランマイヤー曲線を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の貼付剤は、支持体層と支持体層上に積層された粘着剤層とを備える。粘着剤層は、通常、支持体層の一方の面に積層され、必要に応じて、粘着剤層のもう一方の面に剥離可能なフィルムが積層される。
【0010】
まず、粘着剤層について説明する。粘着剤層は、貼付剤適用時に皮膚に圧着する部位であり、粘着基剤及びジクロフェナクナトリウムを含有する。
【0011】
ジクロフェナクナトリウムは、非ステロイド性抗炎症薬であり、がん疼痛を緩和する成分である。貼付剤1枚あたり150mg〜225mgのジクロフェナクナトリウムを含有する。
【0012】
粘着基剤は、ゴム系粘着基剤、アクリル系粘着基剤及びシリコーン系粘着基剤から選択される少なくとも一つの粘着基剤を含んでもよい。ゴム系粘着基剤は、例えば、ポリイソプレン、ポリイソブチレン(PIB)、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)ブロック共重合体、スチレン−ブタジエンゴム、スチレン−イソプレンゴム、又はこれらの組み合わせである。このうち、ジクロフェナクナトリウムの皮膚透過性を高め、また、貼付剤の粘着性をより高めるという点から、SISブロック共重合体、PIB、又はこれらの組み合わせが好ましく、SISブロック共重合体とPIBの混合物であることがより好ましい。アクリル系粘着基剤は、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリルモノマーのうちの少なくとも1種を重合又は共重合させた粘着剤である。シリコーン系粘着基剤は、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルビニルシロキサン、及びポリメチルフェニルシロキサン等のシリコーンゴムを主成分とする。
【0013】
粘着基剤の含有量は、ゴム系粘着基剤の場合、貼付剤の粘着性の点から、粘着剤層の全質量に対して、10質量%〜70質量%、20質量%〜50質量%、23質量%〜40質量%、又は25質量%〜30質量%であると好ましい。ゴム系粘着基剤としてSISブロック共重合体及びPIBの混合物を用いる場合、両者の質量比は4:1〜1:4、3:1〜1:1、又は3:1〜2:1であると好ましい。アクリル系粘着基剤又はシリコーン系粘着基剤の場合、粘着基剤の含有量は、粘着剤層の全質量に対して、50質量%〜90質量%であると好ましい。
【0014】
粘着剤層は、ジクロフェナクナトリウムを溶解させて、その皮膚透過性を向上させるため等の目的で、さらにジメチルスルホキシド(DMSO)を含有してよい。DMSOの含有量は、粘着剤層の全質量に対して、1質量%〜20質量%、2質量%〜10質量%、3質量%〜10質量%、又は5質量%〜9質量%であると好ましい。
【0015】
ジクロフェナクナトリウムとDMSOの比は、ジクロフェナクナトリウムの皮膚透過性を向上させる点、及びジクロフェナクナトリウムの結晶の析出を防止する点から、1:0.3〜1:4、1:0.4〜1:3、1:0.6〜1:3、又は1:0.72〜1:3であると好ましい。
【0016】
粘着剤層は、ジクロフェナクナトリウムの経皮吸収を促進するため、又はジクロフェナクナトリウムの結晶が経時的に析出するのを防止するため等の目的で、さらに有機酸を含有してよい。有機酸としては、脂肪族モノカルボン酸(ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ノナン酸、カプリン酸、ラウリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、イソステアリン酸、ソルビン酸、ピルビン酸等)、脂肪族ジカルボン酸(シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、オキサロ酢酸等)、及び脂肪族トリカルボン酸(アコニット酸、プロパントリカルボン酸等)等の脂肪族カルボン酸、ヒドロキシ酸(グリコール酸、乳酸、タルトロン酸、グリセリン酸、ヒドロキシ酪酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、イソクエン酸、糖酸、グルコン酸、グルクロン酸、アスコルビン酸、エリソルビン酸等)、芳香族カルボン酸(安息香酸、没食子酸、サリチル酸、アセチルサリチル酸、フタル酸等)、その他の有機酸(メシル酸、ベシル酸等)、又は、これらの塩(例えば、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩)が例示される。これらの有機酸は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これら有機酸の中でも、ジクロフェナクナトリウムの経皮吸収を促進し、ジクロフェナクナトリウムの結晶が経時的に析出するのを防止する点から、特に、クエン酸、オレイン酸、メシル酸、又はこれらのアルカリ金属塩が好ましく、オレイン酸がより好ましい。ジクロフェナクナトリウムの皮膚透過性を向上させ、かつジクロフェナクナトリウムの結晶が経時的に析出するのを防止する点から、有機酸の含有量は、粘着剤層の全質量に対して、0.1質量%〜20質量%、0.5質量%〜10質量%、1質量%〜8質量%、又は2質量%〜7質量%であると好ましい。
【0017】
粘着剤層は、粘着付与剤、可塑剤、溶解剤、安定化剤、充填剤等のその他の添加剤をさらに含んでいてよい。
【0018】
粘着付与剤は、例えば、ロジン、ロジンのグリセリンエステル、水素添加ロジン(水添ロジンともいう。)、水素添加ロジングリセリンエステル及びロジンのペンタエリストールエステルなどのロジン誘導体、アルコンP100(商品名、荒川化学工業株式会社製)などの脂環族飽和炭化水素樹脂、クイントンB170(商品名、日本ゼオン株式会社製)などの脂肪族炭化水素樹脂、クリアロンP−125(商品名、ヤスハラケミカル株式会社製)などのテルペン樹脂、マレイン酸レジンなどが挙げられる。これらの中でも、水素添加ロジングリセリンエステル、脂環族飽和炭化水素樹脂、脂肪族炭化水素樹脂又はテルペン樹脂が好ましく、脂環族炭化水素樹脂がより好ましい。これら粘着付与樹脂は2種以上組み合わせてもよい。粘着付与樹脂を含むことにより、粘着剤層の接着性を向上させ、他の物性を安定に維持することができる。粘着付与樹脂の含有量は、粘着剤層の全質量を基準として、例えば、5質量%〜60質量%、10質量%〜50質量%、30質量%〜45質量%、又は35質量%〜40質量%であると好ましい。粘着付与剤としては、脂環族飽和炭化水素樹脂と水素添加ロジングリセリンエステルの組合せがより好ましい。脂環族飽和炭化水素樹脂と水素添加ロジングリセリンエステルの質量比は、4:1〜1:4、4:1〜2:3、又は3:1〜2:1であると好ましい。
【0019】
可塑剤としては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル及び芳香族系プロセスオイルなどの石油系オイル;スクワラン;スクワレン;オリーブ油、ツバキ油、ひまし油、トール油及びラッカセイ油などの植物系オイル;シリコンオイル;ジブチルフタレート及びジオクチルフタレートなどの二塩基酸エステル;ポリブテン及び液状イソプレンゴムなどの液状ゴム;ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、セバシン酸ジエチル及びセバシン酸ジイソプロピルなどの液状脂肪酸エステル類;ジエチレングリコール;ポリエチレングリコール;サリチル酸グリコール;プロピレングリコール;ジプロピレングリコール;トリアセチン;クエン酸トリエチル;クロタミトンなどが挙げられる。これらの中でも、流動パラフィン、液状ポリブテン、ミリスチン酸イソプロピル、セバシン酸ジエチル及びラウリン酸ヘキシルが好ましく、液状ポリブテン、ミリスチン酸イソプロピル及び流動パラフィンがより好ましく、流動パラフィンが特に好ましい。これらの可塑剤は2種以上組み合わせてもよい。可塑剤の含有量は、粘着剤層の全質量に対して、例えば、7質量%〜70質量%、8質量%〜40質量%、10質量%〜20質量%、又は12質量%〜15質量%であると好ましい。
【0020】
溶解剤は、例えば、液状脂肪酸エステル類(ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル等)、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリアセチン、クエン酸トリエチル、クロタミトン等が挙げられる。これらのうち、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールが好ましく、ポリエチレングリコールがより好ましい。溶解剤がポリエチレングリコールである場合、ポリエチレングリコールの数平均分子量は200〜20000であってよく、400〜6000であると好ましく、1000〜6000であるとより好ましい。これらの溶解剤は2種以上組み合わせてもよい。溶解剤の含有量は、粘着剤層の全質量を基準として、例えば、0.1質量%〜10質量%、又は0.5質量%〜5質量%である。
【0021】
安定化剤は、脂肪酸金属塩(ステアリン酸マグネシウム等)、酸化防止剤(トコフェロール誘導体、アスコルビン酸誘導体、エリソルビン酸誘導体、ノルジヒドログアヤレチン酸、没食子酸誘導体、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール、2−メルカプトベンズイミダゾール等)、紫外線吸収剤(イミダゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、p−アミノ安息香酸誘導体、アントラニル酸誘導体、サリチル酸誘導体、ケイヒ酸誘導体、ベンゾフェノン誘導体、クマリン酸誘導体、カンファー誘導体等)などを挙げることができる。これらの安定化剤は2種以上組み合わせてもよい。安定化剤の含有量は、粘着剤層の全質量を基準として、0質量%〜5質量%であることが好ましく、0質量%〜2質量%であることがより好ましい。粘着剤層が安定化剤を含有することにより、ジクロフェナクナトリウムの安定性がより向上し得る。
【0022】
充填剤は、金属酸化物(酸化亜鉛、酸化チタン等)、金属塩(炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛等)、ケイ酸化合物(カオリン、タルク、ベントナイト、アエロジル、含水シリカ、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等)、金属水酸化物(水酸化アルミニウム等)などを挙げることができる。これらの充填剤は2種以上組み合わせてもよい。充填剤の含有量は、粘着剤層の全質量を基準として、0質量%〜10質量%であることが好ましく、0質量%〜5質量%であることがより好ましい。
【0023】
粘着剤層は、1種の組成からなる単層であってよく、組成の異なる複数の層が積層してなる複層であってもよい。粘着剤層の全体の膏体質量は、貼付剤を適切に皮膚へ粘着させる点から、10g/m
2〜1000g/m
2が好ましく、30g/m
2〜300g/m
2がより好ましく、150g/m
2〜250g/m
2がさらに好ましい。
【0024】
次に、支持体層について説明する。支持体層は、粘着剤層を保持する。支持体層は、繊維を布状(織布、不織布、又は編布)にしたものの、又は無孔性若しくは多孔性のフィルム(シート)の、単層体又は積層体であることが好ましい。支持体層の材質は、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリプロピレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、又はポリエチレンナフタレート等)、ポリオレフィン(エチレン、プロピレン、酢酸ビニル、又はアクリロニトリル等のビニル系モノマーの重合体又は共重合体)、ポリアミド(ナイロン又は絹等)、ポリウレタン(PU)、又はセルロース(木綿又は麻等)から選ばれる1種以上の材質であることが好ましい。布(織布、不織布、又は編布)にはゴム組成物がコーティングされていてもよい。ゴム組成物は、ゴム系粘着剤を含む。ゴム系粘着剤は、例えば、ポリイソプレン、PIB、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、SISブロック共重合体、スチレン−ブタジエンゴム、スチレン−イソプレンゴム、又はこれらの組み合わせである。ゴム組成物は、粘着付与剤を含んでもよい。粘着付与剤は、例えば、脂環族飽和炭化水素樹脂、水添ロジンエステル、テルペン樹脂、又はこれらの組み合わせである。また、ゴム組成物は、可塑剤、充填剤等の添加剤をさらに含んでもよい。支持体層の厚みは、例えば、0.1mm〜2mmである。支持体層の目付けは、例えば、30g/m
2〜200g/m
2である。本明細書において、支持体層の厚み及び目付けは、JIS L 1906:2000の規格に準じて測定される。
【0025】
支持体層の透湿度は1000g/m
2・24時間以上であることが好ましい。このような高い透湿度の支持体層を用いると、皮膚に適用した貼付剤からDMSOが徐々に揮散するため、貼付剤の粘着性が向上し、貼付剤を長時間適用しても、剥がれ落ちにくい。透湿度の上限値は、20000g/m
2・24時間であってよい。支持体層の透湿度がこのような範囲にあると、DMSOが粘着剤層からより揮散しやすいため、貼付剤の粘着性の向上に、より効果的である。なお、支持体層の透湿度は、JIS Z0208:1976の規格(防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法))において定義される、40℃における透湿度を意味する。
【0026】
支持体層が布状である場合、支持体層の縦方向(材料流れ方向)及び横方向(材料幅方向)のいずれの方向の50%モジュラス(JIS L 1018:1999)も、1N/50mm〜12N/50mmであることが好ましい。50%モジュラスが12N/50mm以下である場合、皮膚の伸縮により貼付剤が受けるストレスがより小さいため、皮膚への付着性が良好となる。
【0027】
支持体層がフィルムである場合、材質はポリウレタンのような、高透湿性(高DMSO透過性)であることが好ましい。ポリウレタンからなるフィルムは、伸縮性に優れるため、貼付剤の皮膚への付着性及び伸縮追従性を高める点から好ましい。
【0028】
支持体層は、例えば、ポリウレタンからなる不織布若しくはフィルム、ポリエチレンテレフタレートからなる編布、ゴム組成物でコーティングされたポリエステルの布又はこれらの組み合わせであることが好ましい。より具体的には、支持体層は、ポリウレタンからなるフィルムとポリウレタン繊維からなる不織布との積層体、PET繊維からなる不織布、又はゴム組成物でコーティングされたポリエステルの布であることが好ましい。
【0029】
十分な粘着力を確保し、かつ、十分なジクロフェナクナトリウムの皮膚透過量を確保するため、貼付剤の貼付面積は、50〜150cm
2であることが好ましい。
【0030】
貼付剤は、例えば、次の方法により製造することができるが、これに限定されず、公知の方法を使用することができる。まず、粘着剤層を構成する各成分を所定の割合で混合して均一な溶解物を得る。次に、剥離可能なフィルム(剥離フィルム、離形ライナー)又は支持体層上に溶解物を所定の厚みで展延して粘着剤層を形成する。次いで、粘着剤層が剥離可能なフィルムと支持体層とに挟まれるように、粘着剤層又は剥離可能なフィルムに支持体層を圧着する。最後に、所望の形状に切断することにより、貼付剤を得ることができる。この場合、離形ライナーは、貼付剤の適用時に除去される。また、同様にして、支持体層上に溶解物を所定の厚みで展延して粘着剤層を形成した後、剥離可能なフィルム(剥離フィルム、離形ライナー)に支持体層を圧着してもよい。
【0031】
貼付剤は、ヒト成人に対し、1日1回あたり1枚を胸部、腹部、腰部、背部、上腕部又は大腿部等に貼付し、1日(約24時間)毎に貼り替える。皮膚刺激を避けるために、毎回、貼付部位を変えることが望ましい。
【実施例】
【0032】
(ジクロフェナクナトリウムを含有する貼付剤の調製1)
ジクロフェナクナトリウムを含有する貼付剤を以下の方法で調製した。粘着剤層の各成分(下表の組成を示す)を混和し、剥離フィルム(離型処理をしたPETフィルム)上に膏体質量が214g/m
2となるように展延した。展延した粘着剤層上に支持体層を積層し、貼付剤を得た。貼付剤を7cm×10cmの大きさに裁断した。支持体層は透湿度が5667g/m
2・24時間のPET編布を使用した。
【0033】
【表1】
【0034】
(プラセボ貼付剤の調製)
ジクロフェナクナトリウムを含有しない点以外は同じ組成のプラセボ貼付剤を上記方法と同様の方法で調製した。
【0035】
(鎮痛効果の評価1)
用量調節期において、疼痛を伴うがん患者にジクロフェナクナトリウムを含有する貼付剤を1日1回、胸部、腹部、腰部、背部、上腕部又は大腿部等に1枚貼付し、1日毎に貼り替えた。鎮痛効果が十分でない場合は、貼付する枚数を2枚、3枚と順に増やした。本評価期間は6日〜22日間とした。この期間内に以下に示す基準を全て満たした患者のみ、以降の二重盲検期に移行した。
(1)移行判定日直前3日間のVAS(Visual Analogue Scale)値の平均値が、事前検査時点(用量調節期間開始前)のVAS値と比較して15mm以上改善している。VAS値の測定は就寝前に行った。
(2)移行判定日を含む直前3日間に救済措置(レスキュー)を使用していない。
(3)移行判定日の患者の疼痛改善度の評価が「完全改善」、「著明改善」又は「中等度改善」。なお、疼痛改善度の評価は医師による問診に基づき、「完全改善」、「著明改善」、「中等度改善」、「軽度改善」、「不変」及び「悪化」の6段階で評価した。
【0036】
次に患者をジクロフェナクナトリウム含有貼付剤投与群(76例)とプラセボ貼付剤投与群(79例)に分け、二重盲検で鎮痛効果を評価した。ジクロフェナクナトリウムの投与量は75mg(40例、プラセボは34例)、150mg(22例、プラセボは32例)又は225mg(14例、プラセボは13例)とした。患者から鎮痛効果が不十分であることを理由に中止の申し出があるまでの期間を、累積効果持続率(%)としてカプランマイヤー曲線で表したものを
図1〜
図3に示した。
図1は75mg投与群のカプランマイヤー曲線を、
図2は150mg投与群のカプランマイヤー曲線を、
図3は225mg投与群のカプランマイヤー曲線を表す。患者からの中止の申し出の頻度は、75mg投与群では8/40、プラセボ群9/34(Log−rank検定 p=0.5034)であり、150mg投与群では6/22、プラセボ群14/32(Log−rank検定 p=0.1325)であり、225mg投与群では2/14、プラセボ群6/13(Log−rank検定 p=0.0625)であった。これらの結果から分かるように、ジクロフェナクナトリウムの投与量が75mgでは鎮痛効果が不十分であったのに対し、ジクロフェナクナトリウムの投与量が150mg又は225mgだと鎮痛効果が十分であった。
【0037】
(鎮痛効果の評価2)
用量調節期において、疼痛を伴うがん患者にジクロフェナクナトリウムを含有する貼付剤を1日1回、胸部、腹部、腰部、背部、上腕部又は大腿部等に2枚貼付し、1日毎に貼り替えた。鎮痛効果が十分でない場合は、貼付枚数を3枚に増やした。本評価期間は2週間〜4週間とした。この期間内に以下に示す基準を全て満たした患者のみ、以降の二重盲検期に移行した。
(1)移行判定日前3日間のVAS値が全て、事前検査時のVAS値と比較して15mm以上改善している。
(2)移行判定日の患者の疼痛改善度の評価が「完全改善」、「著明改善」又は「中等度改善」。
(3)移行判定前10日間に用量調節期用治験薬の用量を変更していない。
【0038】
次に患者をジクロフェナクナトリウム含有貼付剤投与群(120例)とプラセボ貼付剤投与群(118例)に分け、二重盲検で鎮痛効果を評価した。ジクロフェナクナトリウムの投与量は150mg(55例、プラセボは53例)又は225mg(65例、プラセボは65例)とした。患者から鎮痛効果が不十分であることを理由に、申し出を決めた時点でのVAS値が15mm超悪化していた場合を鎮痛効果不十分とした。鎮痛効果不十分となるまでの期間を、累積効果持続率(%)としてカプランマイヤー曲線で表したものを
図4に示した。
図4に示した結果から分かるように、ジクロフェナクナトリウムの投与量が150mg又は225mgだと鎮痛効果が十分であった。
【要約】
【課題】がん患者に投与したときに、がん疼痛を十分緩和できる貼付剤を提供すること。
【解決手段】支持体層と支持体層上に積層された粘着剤層とを備える、がん疼痛を緩和するための貼付剤であって、粘着剤層が、粘着基剤、及び150mg〜225mgのジクロフェナクナトリウムを含有し、1日1回1枚貼付するように用いられる、貼付剤。
【選択図】なし