特許第6744531号(P6744531)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6744531miRNA用プライマー及び該プライマーを用いた核酸増幅反応法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6744531
(24)【登録日】2020年8月4日
(45)【発行日】2020年8月19日
(54)【発明の名称】miRNA用プライマー及び該プライマーを用いた核酸増幅反応法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/686 20180101AFI20200806BHJP
   C12N 15/10 20060101ALN20200806BHJP
【FI】
   C12Q1/686 ZZNA
   !C12N15/10 Z
【請求項の数】1
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-195280(P2018-195280)
(22)【出願日】2018年10月16日
(65)【公開番号】特開2020-74683(P2020-74683A)
(43)【公開日】2020年5月21日
【審査請求日】2018年10月16日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390014306
【氏名又は名称】防衛装備庁長官
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】武井 史恵
【審査官】 池上 京子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−543288(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/076356(WO,A1)
【文献】 特開2016−042830(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
C12Q 1/00−3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩基長が18mer〜25merである鋳型としてのmiRNAと相補的に結合し得るように塩基配列が設計されたポリヌクレオチド配列を有し、修飾されていない核酸からなる塩基長が6mer〜12merのプライマー部位と、
前記プライマー部位と結合され、PCR時に前記鋳型と結合し得るポリヌクレオチド配列を有し、修飾されていない核酸からなるタグ部位と、
を備えるmiRNA用プライマーのみを使用して前記miRNAを増幅させる核酸増幅反応法であって、
前記miRNAに第1の前記miRNA用プライマーを結合させる工程と、
逆転写反応により前記miRNAに結合した第1の前記miRNA用プライマーの前記プライマー部位を伸長させてcDNAに変換する工程と、
前記cDNAを分離させる工程と、
分離した前記cDNAと第2の前記miRNA用プライマーとを結合させる工程と、
結合した第2の前記miRNA用プライマーの前記プライマー部位と前記cDNAを伸長させる工程と、
を含むことを特徴とする核酸増幅反応法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、microRNA(miRNA)を複製するためのmiRNA用プライマー及び該プライマーを用いた核酸増幅反応法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、1〜数サンプルの遺伝子を検出する方法として、核酸増幅反応法であるリアルタイムPCR(real time polymerase chain reaction )法の一つであるTaqMan(登録商標)法が知られている。この方法は、非常に感度の高い方法である一方、検出に用いるプローブの設計及び合成が煩雑で時間がかかるとともに、役務委託による高額な検出コストがかかるという問題がある。
【0003】
そこで、TaqMan(登録商標)法の問題点を解決するべく、下記特許文献1に開示される新たなPCR反応法が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−42830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、様々な疾患のバイオマーカーとして有用なmicroRNA(miRNA)が注目されている。miRNAは18〜25merのノンコーディングRNAの一種である核酸分子であり、翻訳抑制、mRNA分解、脱アデニル化など様々な方法で遺伝子発現の下方制御を行うことが知られている。そのため、例えば被験者の細胞の中にある特定のmiRNAを取り出して分析することで、どのmiRNAを調べればその人が罹患している病気の種類や、今後の疾病リスクを知得することができるため、病気の治療や予防に大いに役立てることができる。
【0006】
少量のmiRNAを何度も被験者から取り出して分析する方法は現実的ではないため、実際は採取した少量のmiRNAを何万・何億と複製して研究するのが一般的である。しかし、この技術は高額な費用が嵩むという問題の他、異なった種類のmiRNA検出を行う度に、核酸増幅反応法に適する試薬(逆転写酵素やPCR酵素など)を用意しなければならないという問題があった。
【0007】
また、miRNAの長さは18〜25mer程度と非常に短いため、特許文献1の方法を含む従来のPCR法を採用した場合、塩基長が10mer程度のプライマーではPCRがうまく進行せず複製できないという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、酵素などの試薬の制約を受けず、安価で且つ迅速にmiRNAの複製が行えるmiRNA用プライマー及び該プライマーを用いた核酸増幅反応法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記した目的を達成するため、本発明の核酸増幅反応法は、
塩基長が18mer〜25merである鋳型としてのmiRNAと相補的に結合し得るように塩基配列が設計されたポリヌクレオチド配列を有し、修飾されていない核酸からなる塩基長が6mer〜12merのプライマー部位と、
前記プライマー部位と結合され、PCR時に前記鋳型と結合し得るポリヌクレオチド配列を有し、修飾されていない核酸からなるタグ部位と、
を備えるmiRNA用プライマーのみを使用して前記miRNAを増幅させる核酸増幅反応法であって、
前記miRNAに第1の前記miRNA用プライマーを結合させる工程と、
逆転写反応により前記miRNAに結合した第1の前記miRNA用プライマーの前記プライマー部位を伸長させてcDNAに変換する工程と、
前記cDNAを分離させる工程と、
分離した前記cDNAと第2の前記miRNA用プライマーとを結合させる工程と、
結合した第2の前記miRNA用プライマーの前記プライマー部位と前記cDNAを伸長させる工程と、
を含むことを特徴としている
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、18〜25merと短いmiRNAを鋳型として核酸増幅反応法を用いて複製するにあたり、鋳型の塩基配列に対応するプライマーやプローブの複雑な設計を必要とせず、また特殊な装置や酵素の制約を受けずに安価で迅速な核酸増幅反応法を実施することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】(a)は本発明に係るmiRNA用プライマーの基本構成を示す概念図であり、(b)は同プライマーが鋳型であるmiRNAに結合した状態を示す図である。
図2】バルジ構造を形成し得るプローブ部位のシグナル発生に至るまでの流れを示す概念図である。
図3】本発明に係る核酸増幅反応法における逆転写反応法の一連の工程を示す図である。
図4】本発明に係る核酸増幅反応法におけるPCR法の一連の工程を示す図である。
図5】実施例1で使用したプライマー、タグ、プローブ及び鋳型の塩基配列を示す図である。
図6】実施例1で使用した反応溶液を用いてPCRによって得られたPCR産物を電気泳動したゲル分析結果を示す写真である。
図7】実施例1におけるPCRサイクルと蛍光強度の関係を示すグラフである。
図8】実施例2で使用した反応溶液を用いてPCRによって得られたPCR産物を電気泳動したゲル分析結果を示す写真である。
図9】実施例3で使用したプライマー、タグ、プローブ及び鋳型の塩基配列を示す図である。
図10】実施例3で使用した各フォワードプライマーを含む反応溶液のPCRによって得られたPCR産物を電気泳動したゲル分析結果を示す写真である。
図11】実施例3におけるPCRサイクルと蛍光強度の関係を示すグラフである。
図12】実施例4で使用したタグありプライマーとタグなしプライマーの塩基配列を示す図である。
図13】実施例4において各鋳型にタグありプライマーとタグなしプライマーを用いた反応溶液のPCRによって得られたPCR産物を電気泳動したゲル分析結果を示す写真である。
図14】実施例4におけるPCRサイクルと蛍光強度の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。また、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではなく、この形態に基づいて当業者などによりなされる実施可能な他の形態、実施例及び運用技術などは全て本発明の範疇に含まれるものとする。
【0017】
本願発明者は、鋳型核酸として塩基長が18〜25merと短いmiRNAを複製するにあたり、鋳型の塩基配列に対応するプライマーやプローブの複雑な設計を必要とせず、また逆転写酵素やPCR酵素などの制約を受けない安価で迅速な新規の核酸増幅反応法を確立するべく鋭意研究を重ねた。その結果、鋳型の略半分程度の長さに設計したプライマー部位2にタグ部位3を結合した構造とすることで、タグ部位3がプライマー部位2のように機能し、逆転写反応およびPCR時の伸長反応がスムーズに進行してPCRの増幅効率が格段に上がることを知得し、本願発明の開発に至った。
【0018】
[1.miRNA用プライマー]
まず、本発明に係るmiRNA用プライマー1の構造について説明する。
図1(a)、(b)に示すように、miRNA用プライマー1は、鋳型であるmiRNAと結合する基部となるプライマー部位2と、プライマー部位2に結合され鋳型と相補的に結合し得るタグ部位3と、タグ部位3との結合状態に応じて構造(バルジ構造)が変化するプローブ部位4で構成される。また、miRNA用プライマー1は、PCR中の伸長反応におけるシグナルの確認を行わずにmiRNAの増幅のみを行う場合、プライマー部位2とタグ部位3のみの構成とすることもできる。
【0019】
なお、本明細書において「相補的」とは、塩基配列におけるアデニン(A)とチミン(T)とが特異的な水素結合を介して向かい合い、グアニン(G)とシトシン(C)とが特異的な水素結合を介して向かい合う関係を意図する。
【0020】
また、「バルジ構造」とは、ポリヌクレオチド(例えば、DNA)の二本鎖領域において、一方の鎖のポリヌクレオチドに余剰のヌクレオチドが存在するために生じる膨らみ(バルジ)を意図する。
【0021】
例えば、「TCT」と「AA」とが向かい合って二本鎖を形成する場合、「TCT」の中の2つの「T」と、「AA」の中の2つの「A」とがそれぞれ対合して二本鎖を形成する。このとき、2つの「T」の間に存在する「C」には対合するヌクレオチドがないため、当該「C」が膨らむこととなる。そして、この膨らんだ構造をバルジ構造とする。
【0022】
<鋳型>
鋳型となるmiRNAは、検出対象に応じて適宜選択され得る。miRNAとしては、例えば真核生物であるヒトの血液、リンパ液、鼻水、喀痰、尿、糞便、腹水などの体液、皮膚、粘膜、各種臓器、骨などの組織、鼻腔、気管支、皮膚、各種臓器、骨などを洗浄した後の洗浄液、植物や微生物などに由来するポリヌクレオチドを鋳型として用いることができる。一例としては、ヒト細胞由来のmiRNA(Hsa−miR−122a,Hsa−miR−17,Hsa−miR−18,Hsa−miR−20など)が挙げられる。これらのmiRNAは塩基配列が既に公知であるため、miRNA用プライマー1のプライマー部位2を容易に設計することができる。また、上記のような真核生物のmiRNAの他、真正細菌や古細菌のmiRNAでも同様に使用することができる。
【0023】
<プライマー部位>
プライマー部位2は、塩基長が鋳型よりも所定長さだけ短く、鋳型と相補的に結合し得るように塩基配列が設計されたポリヌクレオチド配列を有している。
【0024】
プライマー部位2の塩基配列の長さは、塩基長が短すぎると鋳型とプライマー部位2との結合率が低くPCR反応が進行せず、また塩基長が長すぎるとPCR反応時にフォワードプライマーとリバースプライマーとが重なってしまうという問題がある。
以上のことから、プライマー部位2の長さは、鋳型の塩基配列全長の略半分程度の長さ、詳細には鋳型の塩基配列全長に対して25%以上55%以下の長さとなるように塩基長を設計するのが好ましい。
【0025】
プライマーとして、二本鎖構造の鋳型(二本鎖DNA)が変性した後に、一方の一本鎖構造の鋳型(一本鎖DNA)に結合するフォワードプライマー(Forward Primer)と、他方の一本鎖DNAに結合するリバースプライマー(Reverse Primer)と、を含む。鋳型と二本鎖を形成する、プライマー内の領域は、検出対象に応じて適宜設計され、鋳型に対して略相補的又は相補的なポリヌクレオチドとして設計されれば、具体的な構成は限定されない。
【0026】
また、プライマー部位2の塩基配列を、鋳型の特定の塩基配列にのみ結合するように設計することで、特定の塩基配列にのみ結合するため、非特異的な核酸の増幅を抑えることができる。
【0027】
<タグ部位>
タグ部位3は、鋳型やプライマー部位2と結合し得るポリヌクレオチド配列を有している。上記のように、プライマー部位2の塩基長は鋳型の塩基長よりも略半分程度と短いため、このままではPCRの進行効率が悪く複製がスムーズに進まない。しかしながら、本発明のmiRNA用プライマー1のように、プライマー部位2にタグ部位3を結合することで、このタグ部位3が恰もプライマー部位2のように機能するため、複製時に鋳型がタグ部位3まで伸長して相補的に結合することでPCRの効率を格段に上げることができる。
【0028】
<プローブ部位>
プローブ部位4は、核酸の増幅量を定量するために用いられ、分子内にバルジ構造を形成しタグ部位3と解離してバルジ構造結合分子5が結合したときにシグナル(例えば、蛍光発光)を発するポリヌクレオチド配列を有する。
【0029】
プローブ部位4は、PCR反応が開始される時点において、タグ部位3と結合していることで立体構造が変化し、その結果、プローブ中のバルジ構造が失われている。そのため、PCR反応が開始される時点では、バルジ構造結合分子に由来するシグナルは発生していない。
【0030】
ここで、プローブ部位4の機能について説明する。
PCR反応が開始されると、図2(a)に示すように、まず上記プローブとプライマーとの複合体が鋳型に結合するとともに、当該プライマーを起点として鋳型の相補鎖が伸長される。
【0031】
次に、上記相補鎖と上記鋳型とによって形成されている二本鎖は、高温処理によって、少なくとも相補鎖を含む鎖(鎖B)と、鋳型からなる一本鎖(鎖A)とに分離される。
【0032】
次に、図2(b)に示すように、鎖Bに対して別のプライマー(図1には、別のプライマーを図示せず)が結合し、当該別のプライマーを起点として鎖Bの相補鎖が伸長される。
【0033】
鎖Bの相補鎖が伸長される過程において、当該相補鎖中に、プローブ内のプライマー結合領域に対応する相補的なヌクレオチドが形成される。そして、図2(c)に示すように、結合する相手を失ったプローブは、PCR反応溶液中に解離することになる。PCR反応溶液中に解離したプローブは、プローブ分子内の水素結合などを介した相互作用によって、当該プローブ内にバルジ構造を形成し、さらに、当該バルジ構造にバルジ構造結合分子が結合することで所定のシグナルが発生する。
【0034】
プローブ部位4内に形成されるバルジ構造としては、特に限定されないが、例えばシトシンバルジ構造、チミンバルジ構造、アデニンバルジ構造及びグアニンバルジ構造を挙げることができる。シグナル強度を増してPCRの検出精度を高めるという観点からは、バルジ構造は、シトシンバルジ構造、チミンバルジ構造、又はアデニンバルジ構造であることが好ましく、シトシンバルジ構造、又はチミンバルジ構造であることがさらに好ましく、シトシンバルジ構造であることが最も好ましい。
【0035】
バルジ構造に隣接するヌクレオチドの種類は特に限定されないが、アデニン、シトシン、又はチミンが好ましい。バルジ構造結合分子が蛍光を発する分子である場合、バルジ構造にグアニンが隣接すると、蛍光の強度が低下する傾向を示し、バルジ構造にアデニン、シトシン又はチミンが隣接すると、蛍光の強度が上昇する傾向を示す。
【0036】
<バルジ構造結合分子>
バルジ構造結合分子5は、タグ部位3から解離したプローブ部位4と結合することによってシグナルを発するものであればよく、具体的な構成は限定されない。
【0037】
バルジ構造結合分子5は、例えば、バルジ構造に結合することによって、蛍光を発光する物質、発光する蛍光の波長がシフトする物質、又は蛍光が消光する物質などを用いることが好ましい。これらの蛍光を検出することで、容易にバルジ構造を検出できる。なお、バルジ構造結合分子として、自身ではシグナルを発する能力がない物質を、シグナルを発する能力を有する物質(例えば、蛍光物質)にて標識化したものを用いることも可能である。
【0038】
上記のようなバルジ構造結合分子5の一例としては、(N,N’−bis(3−aminopropyl)−2, 7−diamino−1,8−naphthyridine(DANP))や前記DANPの誘導体などがある。
【0039】
[2.核酸増幅反応法]
本発明に係る上述したmiRNA用プライマー1を用いた核酸増幅反応法は、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)を行う逆転写反応法と、逆転写反応法に続くポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行うPCR法とを含む方法である。
【0040】
<逆転写反応法>
図3には、第1のプライマーとして本発明に係るmiRNA用プライマー1を用いた逆転写反応法の一連の工程が示されている。
【0041】
図3に示すように、逆転写反応法は、増幅対象である鋳型(miRNA)と、鋳型に合せて設計したプライマー部位2とタグ部位3とを有する第1のプライマーであるmiRNA用プライマー1と、逆転写酵素とを含む反応溶液を逆転写反応にかけ、鋳型にmiRNA用プライマー1のプライマー部位2を結合させた後、逆転写によってプライマー部位2を伸長させて鋳型と対の型となるcDNA(complementary DNA )に変換する方法である。
【0042】
つまり、逆転写反応法によって得られるcDNAは、鋳型と結合したプライマー部位2が相補的に伸長したものとなる。
【0043】
<PCR法>
図4には、第2のプライマーとして本発明に係るmiRNA用プライマー1を用いたPCR法の一連の工程が示されている。
【0044】
図4に示すように、PCR法は、逆転写反応法に続くポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行う方法である。PCR法は、まず反応溶液中に存在する二本鎖となった鋳型であるmiRNAとcDNAの水素結合を熱変性させて一本鎖に解離する反応(分離反応)を行い、解離した鋳型となるcDNAに第2のプライマーとしてmiRNA用プライマー1を相補的に結合させる反応(アニーリング反応)を行い、結合させたmiRNA用プライマー1を相補的に伸長させる反応(伸長反応)を行う。
【0045】
このPCR法では、上記3つの反応を25〜40サイクル繰り返し行うことで目的生成物であるPCR産物を増幅させることができる。
【0046】
また、反応溶液にバルジ構造を有するプローブ部位4と、このプローブ部位4との結合状態に応じて発するシグナルを変化させるバルジ構造結合分子とを含有させることで、伸長反応時にタグ部位3からプローブ部位4が解離してバルジ構造を形成し、溶液中に含まれるバルジ構造結合分子5がバルジ構造となったプローブ部位4と結合してシグナルを発する。これにより、伸長反応が進行していることを確認することができる。
【0047】
なお、本発明で行われる核酸増幅反応法である逆転写反応法及びPCR法は、何れも従来から知られている方法を適宜用いることができる。また、逆転写反応法やPCR法に用いる酵素(逆転写酵素やPCR酵素など)についても、上記核酸増幅反応法に合せて適宜選択すればよく、特に制限がない。
【0048】
核酸増幅反応法の一例を挙げると、One−step RT−PCRとしては反応酵素として「SuperScript(登録商標)One−Step RT−PCR with Platinum(登録商標) Taq DNA Polymerase(Invitrogen)」や、「THUNDERBIRD(登録商標)Probe One−step qRT−PCR kit(TOYOBO)」を用いる方法があり、Two−step RT−PCRとしては反応酵素として「PrimeScript(登録商標)RT
Regent Kit(perfect Real Time)(TAKARA)及びKOD FX(TOYOBO)」を用いる方法がある。
なお、miRNA用プライマー1は、フォワードプライマーとリバースプライマーを含むが、フォワードプライマーは逆転写兼用としてもよい。
【0049】
逆転写酵素の一例としては、PrimeScript(登録商標)RT Regent Kit(perfect Real Time)(タカラバイオ株式会社製の製品名),ReverTra Ace(登録商標)(東洋紡株式会社製の製品名)などがあり、PCRキットの一例としては、KOD FX(東洋紡株式会社製の製品名),rTaq(recombinant Taq) DNA polymerase(東洋紡株式会社製の製品名),TaKaRa Ex Taq(タカラバイオ株式会社製の製品名)などがあり、1ステップ逆転写&PCRキットの一例としては、SuperScript(登録商標)One−Step RT−PCR with Platinum Taq DNA polymerase(インビトロジェン社製の製品名),THUNDERBIRD(登録商標)Probe One−step qRT−PCR kit(東洋紡株式会社製の製品名)などがある。
【0050】
また、上記方法を用いてPCRを行うPCR装置も、従来から知られている市販の装置(一例として、TaKaRa Thermal Cycler Dice,TaKaRa Thermal Cycler DiceTM Real Time System)を適宜選択して使用することができる。
【0051】
また、上記各方法は、試料に由来するシグナル(例えば蛍光状態)を検出する工程を含んでいてもよい。例えばシグナルが蛍光状態の場合は、光学的性質を測定する測定機器として蛍光マイクロプレートリーダー(一例として、TECAN Infinite(登録商標)200)を用いて蛍光状態を検出することができる。
【0052】
以上のように、本発明に係るmiRNA用プライマー1は、18〜25merと塩基長が短いmiRNAを鋳型として複製するにあたり、鋳型の略半分程度の塩基長であるプライマー部位2と、プライマー部位2に結合され鋳型と相補的に結合し得るタグ部位3と、タグ部位3との結合状態に応じて構造が変化するプローブ部位4とで構成されるため、鋳型の塩基配列に対応するプライマーやプローブの複雑な設計を必要とせず、また逆転写酵素やPCR酵素などの制約を受けないため、安価で迅速な核酸増幅反応を実施することが可能となる。
【0053】
また、鋳型の略半分程度の長さに設計したプライマー部位2にタグ部位3を結合した構造としたため、タグ部位3がプライマー部位2のように機能して鋳型とプライマー部位2とが結合した後に伸長反応がスムーズに進行してPCRの増幅効率を格段に上げることができる。
【実施例】
【0054】
次に、本発明に係るmiRNA用プライマー1を用いた鋳型の逆転写反応法・PCR法による実施例について説明する。
なお、下記に示す実施例は本発明を限定するものではなく、前・後記の趣旨に照らし合わせて本発明の構成及び特徴要件を逸脱しない範囲で適宜設計変更することは、何れも本発明の技術的範囲に含まれるものとする。
【0055】
[実施例1. PCR生成物の電気泳動解析及び蛍光解析]
実施例1は、下記に示す鋳型、miRNA用プライマー1を用いて逆転写反応及びPCRを行い、各PCR産物を電気泳動法によって検出するとともに、各PCR産物の増加にともなって蛍光強度がどのように変化するかを検証する試験を行った。
【0056】
反応溶液の内訳については図5に示す通りであり、「フォワードプライマー,リバースプライマー」はタグ部位3が結合されたプライマー部位2を指し、「プローブ」はプローブ部位4を指す。
なお、図5において、塩基配列中の下線は、タグ部位3の塩基配列を示し、太字は、鋳型と相補的な結合が可能なように設計された配列部分を示している。
【0057】
<プライマー>
・フォワードプライマー:mir122F−12−Tag
(塩基配列)5‘−AGA CAA AAG TTG TAG ATG ATT TTT ACA AAC ACC ATT −3’
・リバースプライマー:mir122R−Tag
(塩基配列)5’−AGA CAA AAG TTG TAG ATG ATT TTT TGG AGT GTG AC−3’
<プローブ>
・Hpro
(塩基配列)5’−ATC ATC TAC AAC TTT TGT CTG TAA TGA TCT C −3‘
<鋳型>
・miRNA−122a(23mer)
(塩基配列)5’−UGG AGU GUG ACA AUG GUG UUU GU−3’
【0058】
反応溶液として、上述した0.5μMの逆転写兼フォワードプライマー、0.5μMのリバースプライマー、1μMのシトシンバルジ構造を形成するプローブ、10μMのバルジ構造結合分子及び0.5nMの鋳型の反応溶液(合計20μL)を用いた。
【0059】
また、核酸増幅反応法は、One−step RT−PCRを行い、反応酵素としてSuper Script(登録商標)One−Step RT−PCR with Platinum(登録商標) Taq DNA Polymerase(インビトロジェン社)を用いた。
なお、上記核酸増幅反応法の試験条件における逆転写・PCRサイクルは、下記の通りである。
<逆転写反応法>
・50℃ 30min(cDNA合成)
<PCR法>
・初期変性処理:94℃ 2min
・分離反応:94℃ 15sec(反応1)
・アニーリング反応:55℃ 30sec(反応2)
・伸長反応:68℃ 30sec(反応3)
なお、上記反応1〜反応3の処理は35〜40サイクル繰り返し行われるが、ここでは40サイクル行った。
【0060】
図6は、上記反応溶液を用いてPCRによって得られたPCR産物を電気泳動したゲル分析結果を示す写真である。図6に示すように、上記反応溶液はPCRが順調に進み、20〜25サイクルから徐々に目的生成物であるPCR産物が増え始めて正常に複製されていることが確認された。
【0061】
図7は、PCRサイクルと蛍光強度の関係を示すグラフである。図7に示すように、蛍光強度もPCRが20サイクルから徐々に強まり、25サイクルを超えたあたりから急激に強くなっていることが確認された。これは、PCRが進むにつれて鋳型とmiRNA用プライマー1と結合による複製が進み、この複製が増えることでmiRNA用プライマー1からプローブ部位4の解離する量が増えたことで、この解離したプローブ部位4と試薬中のバルジ構造結合分子5とが結合し蛍光発光を示すプローブ部位4が増え試薬中の蛍光強度が増したものと推察される。
【0062】
[実施例2.プライマーの検討]
実施例2は、miRNA用プライマー1に結合されるタグ部位3の有無によるRT−PCRへの影響を検証する試験を行った。
【0063】
反応溶液の内訳については下記に示す通りであり、「フォワードプライマー,リバースプライマー」はプライマー部位2を指し、「プローブ」はプローブ部位4を指す。
反応溶液を3種類用意し、反応溶液1についてはタグ部位3を結合していないプライマーを使用し、反応溶液2と反応溶液3についてはタグ部位3が結合されたプライマーを使用した。また、反応溶液3にはテンプレートとなるmiRNAを含有しない溶液として調製した。
【0064】
−反応溶液1−
<プライマー>
・フォワードプライマー:mir122F−12−Tag
・リバースプライマー:mir122R(タグ部位3なし)
<プローブ>
・Hpro
<鋳型>
・miRNA−122a
−反応溶液2−
<プライマー>
・フォワードプライマー:mir122F−12−Tag
・リバースプライマー:mir122R−Tag(タグ部位3あり)
<プローブ>
・Hpro
<鋳型>
・miRNA−122a
−反応溶液3−
<プライマー>
・フォワードプライマー:mir122F−12−Tag
・リバースプライマー:mir122R−Tag
<プローブ>
・Hpro
【0065】
なお、各反応溶液で使用するプライマー、プローブ、鋳型の塩基配列については実施例1の図5に示した各塩基配列と同等である。また、反応溶液1で使用したタグ部位3を付けていないリバースプライマーの塩基配列は、図5のリバースプライマーにおける太字の部分のみとする。
【0066】
反応溶液として、上述した0.5μMの逆転写兼フォワードプライマー、0.5μMのリバースプライマー、1μMのシトシンバルジ構造を形成するプローブ、10μMのバルジ構造結合分子及び0.5nMの鋳型の反応溶液(合計20μL)を用いた。
【0067】
また、核酸増幅反応法は、One−step RT−PCRを行い、Super Script(登録商標)One−Step RT−PCR with Platinum(登録商標) Taq DNA Polymerase(インビトロジェン社製の製品名) を用いた。なお、試験条件については、上記実施例1と同様である。
【0068】
図8は、上記反応溶液を用いてRT−PCRによって得られたPCR産物を電気泳動したゲル分析結果を示す写真である。図8に示すように、反応溶液1については反応が進まず、反応溶液2のみPCRが進んでいることが確認された。これにより、プライマーとしてフォワードプライマー及びリバースプライマーに共にタグ部位3が結合していないとRT−PCRが進行しないことが明らかとなった。また、反応溶液中にテンプレートである鋳型が含まれないとRT−PCRは進行せず、また変則的な反応産物の生成も起こらないことが明らかとなった。
以上により、タグ部位3がないプライマーではmiRNAの増幅が行われないため、miRNA用プライマー1には、少なくともプライマー部位2とタグ部位3が必要であることが確認された。
【0069】
[実施例3.プライマー部位の長さによるPCR増幅の違い]
実施例3は、miRNA用プライマー1のプライマー部位2における鋳型との相補的結合部分の塩基長を複数種設計して各プライマーのPCR増幅の違いを検証する試験を行った。
【0070】
反応溶液の内訳については下記に示す通りであり、「フォワードプライマー,リバースプライマー」はプライマー部位2を指し、「プローブ」はプローブ部位4を指す。
なお、図9において、塩基配列中の下線は、タグ部位3の塩基配列を示し、太字は、鋳型と相補的な結合が可能なように設計された配列部分を示しており、各フォワードプライマーにおけるプライマー部位2の塩基数を上から順に12mer、10mer、7mer、6mer、5merで設計した。
【0071】
<プライマー>
・フォワードプライマー(12mer):mir122F−12−Tag
(塩基配列)5’−AGA CAA AAG TTG TAG ATG ATT TTT ACA AAC ACC ATT −3’
・フォワードプライマー(10mer):mir122F−10−Tag
(塩基配列)5’−AGA CAA AAG TTG TAG ATG ATT TTT ACA AAC ACC A −3’
・フォワードプライマー(7mer):mir122F−7−Tag
(塩基配列)5’−AGA CAA AAG TTG TAG ATG ATT TTT ACA AAC A −3’
・フォワードプライマー(6mer):mir122F−6−Tag
(塩基配列)5’−AGA CAA AAG TTG TAG ATG ATT TTT ACA AAC −3’
・フォワードプライマー(5mer):mir122F−5−Tag
(塩基配列)5’−AGA CAA AAG TTG TAG ATG ATT TTT ACA AA−3’
・リバースプライマー:mir122R−Tag
(塩基配列)5’−AGA CAA AAG TTG TAG ATG ATT TTT TGG AGT GTG AC−3’
<プローブ>
・Hpro
(塩基配列)5’−ATC ATC TAC AAC TTT TGT CTG TAA TGA TCT C −3’
<鋳型>
・miRNA−122a(23mer)
(塩基配列)5’−UGG AGU GUG ACA AUG GUG UUU GU−3’
【0072】
反応溶液として、上述した0.5μMの逆転写兼フォワードプライマー、0.5μMのリバースプライマー、1μMのシトシンバルジ構造を形成するプローブ、10μMのバルジ構造結合分子及び0.5nMの鋳型の反応溶液(合計20μL)を用いた。
【0073】
また、核酸増幅反応法は、Two−step RT−PCRを行い、PrimeScript(登録商標)RT Regent Kit(perfect Real Time)(タカラバイオ株式会社製の製品名)及びKOD FX(東洋紡株式会社製の製品名) を用いた。なお、上記核酸増幅反応法の試験条件における逆転写・PCRサイクルは、下記の通りである。
<逆転写反応法>
・42℃ 15min(cDNA合成)
・85℃ 5sec
・4℃
<PCR法>
・初期変性処理:94℃ 2min
・分離反応:98℃ 10sec(反応1)
・アニーリング反応:57℃ 30sec(反応2)
・伸長反応:68℃ 30sec(反応3)
なお、上記反応1〜反応3の処理は35〜40サイクル繰り返し行われるが、ここでは40サイクル行った。
【0074】
図10は、各フォワードプライマーを用いた反応溶液のPCRによって得られたPCR産物を電気泳動したゲル分析結果を示す写真である。図10に示すように、プライマー部位2が12mer、10mer、7mer、6merのフォワードプライマーを用いた反応溶液ではPCRが順調に進み、目的生成物であるPCR産物が増え始めて正常に複製されていることが確認された。
【0075】
一方、プライマー部位2が5merのフォワードプライマーを用いた反応溶液では、PCRが進まず、PCR産物が正常に複製されていないことが確認された。
【0076】
図11は、PCRサイクルと蛍光強度の関係を示すグラフである。図11に示すように、プライマー部位2が12mer、10mer、7mer、6merのフォワードプライマーを用いた反応溶液ではPCRが15〜25サイクルから徐々に蛍光強度が増えていることが確認された。これは、PCRが進むにつれて鋳型とmiRNA用プライマー1と結合による複製が進み、この複製が増えることでmiRNA用プライマー1からプローブ部位4の解離する量が増えたことで、この解離したプローブ部位4と試薬中のバルジ構造結合分子5とが結合し蛍光発光を示すプローブ部位4が増え試薬中の蛍光強度が増したものと推察される。
【0077】
一方、プライマー部位2が5merのフォワードプライマーを用いた反応溶液では、PCRが進まず、蛍光強度が殆ど上がらないことが確認された。これは、逆転写反応時にプライマー部位2の長さが短く鋳型とうまく結合されず、その後のPCRが進行しないものと推測される。
【0078】
以上のことから、miRNA用プライマー1におけるプライマー部位2の長さは、鋳型の塩基配列全長の25%以上55%以下の範囲に収まるように塩基数を調整して設計することで、プライマー部位2が鋳型に結合してPCRが正常に進行することが確認された。
【0079】
[実施例4.他種の鋳型によるmiRNAの検出]
実施例4では、実施例1〜3で使用した鋳型と異なる他種のmiRNAを鋳型として使用したときの増幅の有無を検証する試験を行った。
【0080】
鋳型として下記に示す3種の合成miRNAを各1×10-8Mに調製したものを使用した。
・Hsa−miR−17(mir17)
(塩基配列)CAA AGU GCU UAC AGU GCA GGU AG(23mer)
・Hsa−miR−18(mir18)
(塩基配列)UAA GGU GCA UCU AGU GCA GAU AG(23mer)
・Hsa−miR−20(mir20)
(塩基配列)UAA AGU GCU UAU AGU GCA GGU AG(23mer)
【0081】
反応溶液の内訳については下記に示す通りであり、「フォワードプライマー,リバースプライマー」はプライマー部位2を指し、「プローブ」はプローブ部位4を指す。
なお、図12において、塩基配列中の下線は、タグ部位3の塩基配列を示し、太字は、鋳型と相補的な結合が可能なように設計された配列部分を示している。また、3種類の鋳型に対し、フォワードプライマーとリバースプライマーはそれぞれタグ部位3がある配列とタグ部位3がない配列の2種類を設計した。
【0082】
<プライマー>
(タグありプライマー)
・フォワードプライマー(36mer):mir17F−Tag
(塩基配列)5’−AGA CAA AAG TTG TAG ATG ATT TTT CTA CCT GCA CTG −3’
・フォワードプライマー(36mer):mir18F−Tag
(塩基配列)5’−AGA CAA AAG TTG TAG ATG ATT TTT CTA TCT GCA CTA −3’
・フォワードプライマー(36mer):mir20F−Tag
(塩基配列)5’−AGA CAA AAG TTG TAG ATG ATT TTT CTA CCT GCA CTA −3’
・リバースプライマー(35mer):mir17R−Tag
(塩基配列)5’−AGA CAA AAG TTG TAG ATG ATT TTT CAA AGT GCT TA−3’
・リバースプライマー(35mer):mir18R−Tag
(塩基配列)5’−AGA CAA AAG TTG TAG ATG ATT TTT TAA GGT GCA TC−3’
・リバースプライマー(35mer):mir20R−Tag
(塩基配列)5’−AGA CAA AAG TTG TAG ATG ATT TTT TAA AGT GCT TA−3’
(タグなしプライマー)
・フォワードプライマー:mir17F
(塩基配列)5’−CTA CCT GCA CTG −3’
・フォワードプライマー:mir18F
(塩基配列)5’−CTA TCT GCA CTA −3’
・フォワードプライマー:mir20F
(塩基配列)5’−CTA CCT GCA CTA −3’
・リバースプライマー:mir17R
(塩基配列)5’−CAA AGT GCT TA−3’
・リバースプライマー:mir18R
(塩基配列)5’−TAA GGT GCA TC−3’
・リバースプライマー:mir20R
(塩基配列)5’−TAA AGT GCT TA−3’
<プローブ>
・Hpro
(塩基配列)5’−ATC ATC TAC AAC TTT TGT CTG TAA TGA TCT C −3’
【0083】
反応溶液として、上述した0.5μMの逆転写兼フォワードプライマー、0.5μMのリバースプライマー、1μMのシトシンバルジ構造を形成するプローブ、10μMのバルジ構造結合分子及び1×10-8Mの鋳型の反応溶液(合計20μL)を用いた。
【0084】
また、核酸増幅反応法は、Two−step RT−PCRを行い、PrimeScript(登録商標)RT Regent Kit(perfect Real Time)(タカラバイオ株式会社製の製品名)及びKOD FX(東洋紡株式会社製の製品名) を用いた。なお、核酸増幅反応法の試験条件は、上記実施例3と同様である。
【0085】
図13は、各鋳型にタグありプライマーとタグなしプライマーを用いた反応溶液のPCRによって得られたPCR産物を電気泳動したゲル分析結果を示す写真である。図13に示すように、タグありプライマーを用いた反応溶液(1),(3),(5)についてはmiRNAが何れも増幅が確認されたが、タグなしプライマーを用いた反応溶液(2),(4),(6)についてはPCRが進行せずmiRNAの増幅が確認できなかった。
【0086】
図14は、PCRが進行した反応溶液(1),(3),(5)におけるPCRサイクルと蛍光強度の関係を示すグラフである。図14に示すように、各反応溶液はPCRが15〜25サイクルから徐々に蛍光強度が増えていることが確認された。これは、PCRが進むにつれて鋳型とmiRNA用プライマー1と結合による複製が進み、この複製が増えることでmiRNA用プライマー1からプローブ部位4の解離する量が増えたことで、この解離したプローブ部位4と試薬中のバルジ構造結合分子5とが結合し蛍光発光を示すプローブ部位4が増え試薬中の蛍光強度が増したものと推察される。
【0087】
以上のことから、鋳型となるmiRNAの種類は特に限定されず、プライマー部位2にタグ部位3が結合された本発明に係るmiRNA用プライマー1を用いることでPCRによるmiRNAの複製が可能であることが明らかとなった。また、タグ部位3がないプライマーではmiRNAの増幅が行われないため、miRNA用プライマー1には、少なくともプライマー部位2とタグ部位3が必要であることが確認された。
【符号の説明】
【0088】
1…miRNA用プライマー
2…プライマー部位として機能するポリヌクレオチド配列
3…タグ部位として機能するポリヌクレオチド配列
4…バルジ構造を形成し得るプローブ部位として機能するポリヌクレオチド配列
5…プローブ部位と結合してシグナルを発するバルジ構造結合分子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14