【実施例】
【0054】
次に、本発明に係るmiRNA用プライマー1を用いた鋳型の逆転写反応法・PCR法による実施例について説明する。
なお、下記に示す実施例は本発明を限定するものではなく、前・後記の趣旨に照らし合わせて本発明の構成及び特徴要件を逸脱しない範囲で適宜設計変更することは、何れも本発明の技術的範囲に含まれるものとする。
【0055】
[実施例1. PCR生成物の電気泳動解析及び蛍光解析]
実施例1は、下記に示す鋳型、miRNA用プライマー1を用いて逆転写反応及びPCRを行い、各PCR産物を電気泳動法によって検出するとともに、各PCR産物の増加にともなって蛍光強度がどのように変化するかを検証する試験を行った。
【0056】
反応溶液の内訳については
図5に示す通りであり、「フォワードプライマー,リバースプライマー」はタグ部位3が結合されたプライマー部位2を指し、「プローブ」はプローブ部位4を指す。
なお、
図5において、塩基配列中の下線は、タグ部位3の塩基配列を示し、太字は、鋳型と相補的な結合が可能なように設計された配列部分を示している。
【0057】
<プライマー>
・フォワードプライマー:mir122F−12−Tag
(塩基配列)5‘−AGA CAA AAG TTG TAG ATG ATT TTT ACA AAC ACC ATT −3’
・リバースプライマー:mir122R−Tag
(塩基配列)5’−AGA CAA AAG TTG TAG ATG ATT TTT TGG AGT GTG AC−3’
<プローブ>
・Hpro
(塩基配列)5’−ATC ATC TAC AAC TTT TGT CTG TAA TGA TCT C −3‘
<鋳型>
・miRNA−122a(23mer)
(塩基配列)5’−UGG AGU GUG ACA AUG GUG UUU GU−3’
【0058】
反応溶液として、上述した0.5μMの逆転写兼フォワードプライマー、0.5μMのリバースプライマー、1μMのシトシンバルジ構造を形成するプローブ、10μMのバルジ構造結合分子及び0.5nMの鋳型の反応溶液(合計20μL)を用いた。
【0059】
また、核酸増幅反応法は、One−step RT−PCRを行い、反応酵素としてSuper Script(登録商標)One−Step RT−PCR with Platinum(登録商標) Taq DNA Polymerase(インビトロジェン社)を用いた。
なお、上記核酸増幅反応法の試験条件における逆転写・PCRサイクルは、下記の通りである。
<逆転写反応法>
・50℃ 30min(cDNA合成)
<PCR法>
・初期変性処理:94℃ 2min
・分離反応:94℃ 15sec(反応1)
・アニーリング反応:55℃ 30sec(反応2)
・伸長反応:68℃ 30sec(反応3)
なお、上記反応1〜反応3の処理は35〜40サイクル繰り返し行われるが、ここでは40サイクル行った。
【0060】
図6は、上記反応溶液を用いてPCRによって得られたPCR産物を電気泳動したゲル分析結果を示す写真である。
図6に示すように、上記反応溶液はPCRが順調に進み、20〜25サイクルから徐々に目的生成物であるPCR産物が増え始めて正常に複製されていることが確認された。
【0061】
図7は、PCRサイクルと蛍光強度の関係を示すグラフである。
図7に示すように、蛍光強度もPCRが20サイクルから徐々に強まり、25サイクルを超えたあたりから急激に強くなっていることが確認された。これは、PCRが進むにつれて鋳型とmiRNA用プライマー1と結合による複製が進み、この複製が増えることでmiRNA用プライマー1からプローブ部位4の解離する量が増えたことで、この解離したプローブ部位4と試薬中のバルジ構造結合分子5とが結合し蛍光発光を示すプローブ部位4が増え試薬中の蛍光強度が増したものと推察される。
【0062】
[実施例2.プライマーの検討]
実施例2は、miRNA用プライマー1に結合されるタグ部位3の有無によるRT−PCRへの影響を検証する試験を行った。
【0063】
反応溶液の内訳については下記に示す通りであり、「フォワードプライマー,リバースプライマー」はプライマー部位2を指し、「プローブ」はプローブ部位4を指す。
反応溶液を3種類用意し、反応溶液1についてはタグ部位3を結合していないプライマーを使用し、反応溶液2と反応溶液3についてはタグ部位3が結合されたプライマーを使用した。また、反応溶液3にはテンプレートとなるmiRNAを含有しない溶液として調製した。
【0064】
−反応溶液1−
<プライマー>
・フォワードプライマー:mir122F−12−Tag
・リバースプライマー:mir122R(タグ部位3なし)
<プローブ>
・Hpro
<鋳型>
・miRNA−122a
−反応溶液2−
<プライマー>
・フォワードプライマー:mir122F−12−Tag
・リバースプライマー:mir122R−Tag(タグ部位3あり)
<プローブ>
・Hpro
<鋳型>
・miRNA−122a
−反応溶液3−
<プライマー>
・フォワードプライマー:mir122F−12−Tag
・リバースプライマー:mir122R−Tag
<プローブ>
・Hpro
【0065】
なお、各反応溶液で使用するプライマー、プローブ、鋳型の塩基配列については実施例1の
図5に示した各塩基配列と同等である。また、反応溶液1で使用したタグ部位3を付けていないリバースプライマーの塩基配列は、
図5のリバースプライマーにおける太字の部分のみとする。
【0066】
反応溶液として、上述した0.5μMの逆転写兼フォワードプライマー、0.5μMのリバースプライマー、1μMのシトシンバルジ構造を形成するプローブ、10μMのバルジ構造結合分子及び0.5nMの鋳型の反応溶液(合計20μL)を用いた。
【0067】
また、核酸増幅反応法は、One−step RT−PCRを行い、Super Script(登録商標)One−Step RT−PCR with Platinum(登録商標) Taq DNA Polymerase(インビトロジェン社製の製品名) を用いた。なお、試験条件については、上記実施例1と同様である。
【0068】
図8は、上記反応溶液を用いてRT−PCRによって得られたPCR産物を電気泳動したゲル分析結果を示す写真である。
図8に示すように、反応溶液1については反応が進まず、反応溶液2のみPCRが進んでいることが確認された。これにより、プライマーとしてフォワードプライマー及びリバースプライマーに共にタグ部位3が結合していないとRT−PCRが進行しないことが明らかとなった。また、反応溶液中にテンプレートである鋳型が含まれないとRT−PCRは進行せず、また変則的な反応産物の生成も起こらないことが明らかとなった。
以上により、タグ部位3がないプライマーではmiRNAの増幅が行われないため、miRNA用プライマー1には、少なくともプライマー部位2とタグ部位3が必要であることが確認された。
【0069】
[実施例3.プライマー部位の長さによるPCR増幅の違い]
実施例3は、miRNA用プライマー1のプライマー部位2における鋳型との相補的結合部分の塩基長を複数種設計して各プライマーのPCR増幅の違いを検証する試験を行った。
【0070】
反応溶液の内訳については下記に示す通りであり、「フォワードプライマー,リバースプライマー」はプライマー部位2を指し、「プローブ」はプローブ部位4を指す。
なお、
図9において、塩基配列中の下線は、タグ部位3の塩基配列を示し、太字は、鋳型と相補的な結合が可能なように設計された配列部分を示しており、各フォワードプライマーにおけるプライマー部位2の塩基数を上から順に12mer、10mer、7mer、6mer、5merで設計した。
【0071】
<プライマー>
・フォワードプライマー(12mer):mir122F−12−Tag
(塩基配列)5’−AGA CAA AAG TTG TAG ATG ATT TTT ACA AAC ACC ATT −3’
・フォワードプライマー(10mer):mir122F−10−Tag
(塩基配列)5’−AGA CAA AAG TTG TAG ATG ATT TTT ACA AAC ACC A −3’
・フォワードプライマー(7mer):mir122F−7−Tag
(塩基配列)5’−AGA CAA AAG TTG TAG ATG ATT TTT ACA AAC A −3’
・フォワードプライマー(6mer):mir122F−6−Tag
(塩基配列)5’−AGA CAA AAG TTG TAG ATG ATT TTT ACA AAC −3’
・フォワードプライマー(5mer):mir122F−5−Tag
(塩基配列)5’−AGA CAA AAG TTG TAG ATG ATT TTT ACA AA−3’
・リバースプライマー:mir122R−Tag
(塩基配列)5’−AGA CAA AAG TTG TAG ATG ATT TTT TGG AGT GTG AC−3’
<プローブ>
・Hpro
(塩基配列)5’−ATC ATC TAC AAC TTT TGT CTG TAA TGA TCT C −3’
<鋳型>
・miRNA−122a(23mer)
(塩基配列)5’−UGG AGU GUG ACA AUG GUG UUU GU−3’
【0072】
反応溶液として、上述した0.5μMの逆転写兼フォワードプライマー、0.5μMのリバースプライマー、1μMのシトシンバルジ構造を形成するプローブ、10μMのバルジ構造結合分子及び0.5nMの鋳型の反応溶液(合計20μL)を用いた。
【0073】
また、核酸増幅反応法は、Two−step RT−PCRを行い、PrimeScript(登録商標)RT Regent Kit(perfect Real Time)(タカラバイオ株式会社製の製品名)及びKOD FX(東洋紡株式会社製の製品名) を用いた。なお、上記核酸増幅反応法の試験条件における逆転写・PCRサイクルは、下記の通りである。
<逆転写反応法>
・42℃ 15min(cDNA合成)
・85℃ 5sec
・4℃
<PCR法>
・初期変性処理:94℃ 2min
・分離反応:98℃ 10sec(反応1)
・アニーリング反応:57℃ 30sec(反応2)
・伸長反応:68℃ 30sec(反応3)
なお、上記反応1〜反応3の処理は35〜40サイクル繰り返し行われるが、ここでは40サイクル行った。
【0074】
図10は、各フォワードプライマーを用いた反応溶液のPCRによって得られたPCR産物を電気泳動したゲル分析結果を示す写真である。
図10に示すように、プライマー部位2が12mer、10mer、7mer、6merのフォワードプライマーを用いた反応溶液ではPCRが順調に進み、目的生成物であるPCR産物が増え始めて正常に複製されていることが確認された。
【0075】
一方、プライマー部位2が5merのフォワードプライマーを用いた反応溶液では、PCRが進まず、PCR産物が正常に複製されていないことが確認された。
【0076】
図11は、PCRサイクルと蛍光強度の関係を示すグラフである。
図11に示すように、プライマー部位2が12mer、10mer、7mer、6merのフォワードプライマーを用いた反応溶液ではPCRが15〜25サイクルから徐々に蛍光強度が増えていることが確認された。これは、PCRが進むにつれて鋳型とmiRNA用プライマー1と結合による複製が進み、この複製が増えることでmiRNA用プライマー1からプローブ部位4の解離する量が増えたことで、この解離したプローブ部位4と試薬中のバルジ構造結合分子5とが結合し蛍光発光を示すプローブ部位4が増え試薬中の蛍光強度が増したものと推察される。
【0077】
一方、プライマー部位2が5merのフォワードプライマーを用いた反応溶液では、PCRが進まず、蛍光強度が殆ど上がらないことが確認された。これは、逆転写反応時にプライマー部位2の長さが短く鋳型とうまく結合されず、その後のPCRが進行しないものと推測される。
【0078】
以上のことから、miRNA用プライマー1におけるプライマー部位2の長さは、鋳型の塩基配列全長の25%以上55%以下の範囲に収まるように塩基数を調整して設計することで、プライマー部位2が鋳型に結合してPCRが正常に進行することが確認された。
【0079】
[実施例4.他種の鋳型によるmiRNAの検出]
実施例4では、実施例1〜3で使用した鋳型と異なる他種のmiRNAを鋳型として使用したときの増幅の有無を検証する試験を行った。
【0080】
鋳型として下記に示す3種の合成miRNAを各1×10
-8Mに調製したものを使用した。
・Hsa−miR−17(mir17)
(塩基配列)CAA AGU GCU UAC AGU GCA GGU AG(23mer)
・Hsa−miR−18(mir18)
(塩基配列)UAA GGU GCA UCU AGU GCA GAU AG(23mer)
・Hsa−miR−20(mir20)
(塩基配列)UAA AGU GCU UAU AGU GCA GGU AG(23mer)
【0081】
反応溶液の内訳については下記に示す通りであり、「フォワードプライマー,リバースプライマー」はプライマー部位2を指し、「プローブ」はプローブ部位4を指す。
なお、
図12において、塩基配列中の下線は、タグ部位3の塩基配列を示し、太字は、鋳型と相補的な結合が可能なように設計された配列部分を示している。また、3種類の鋳型に対し、フォワードプライマーとリバースプライマーはそれぞれタグ部位3がある配列とタグ部位3がない配列の2種類を設計した。
【0082】
<プライマー>
(タグありプライマー)
・フォワードプライマー(36mer):mir17F−Tag
(塩基配列)5’−AGA CAA AAG TTG TAG ATG ATT TTT CTA CCT GCA CTG −3’
・フォワードプライマー(36mer):mir18F−Tag
(塩基配列)5’−AGA CAA AAG TTG TAG ATG ATT TTT CTA TCT GCA CTA −3’
・フォワードプライマー(36mer):mir20F−Tag
(塩基配列)5’−AGA CAA AAG TTG TAG ATG ATT TTT CTA CCT GCA CTA −3’
・リバースプライマー(35mer):mir17R−Tag
(塩基配列)5’−AGA CAA AAG TTG TAG ATG ATT TTT CAA AGT GCT TA−3’
・リバースプライマー(35mer):mir18R−Tag
(塩基配列)5’−AGA CAA AAG TTG TAG ATG ATT TTT TAA GGT GCA TC−3’
・リバースプライマー(35mer):mir20R−Tag
(塩基配列)5’−AGA CAA AAG TTG TAG ATG ATT TTT TAA AGT GCT TA−3’
(タグなしプライマー)
・フォワードプライマー:mir17F
(塩基配列)5’−CTA CCT GCA CTG −3’
・フォワードプライマー:mir18F
(塩基配列)5’−CTA TCT GCA CTA −3’
・フォワードプライマー:mir20F
(塩基配列)5’−CTA CCT GCA CTA −3’
・リバースプライマー:mir17R
(塩基配列)5’−CAA AGT GCT TA−3’
・リバースプライマー:mir18R
(塩基配列)5’−TAA GGT GCA TC−3’
・リバースプライマー:mir20R
(塩基配列)5’−TAA AGT GCT TA−3’
<プローブ>
・Hpro
(塩基配列)5’−ATC ATC TAC AAC TTT TGT CTG TAA TGA TCT C −3’
【0083】
反応溶液として、上述した0.5μMの逆転写兼フォワードプライマー、0.5μMのリバースプライマー、1μMのシトシンバルジ構造を形成するプローブ、10μMのバルジ構造結合分子及び1×10
-8Mの鋳型の反応溶液(合計20μL)を用いた。
【0084】
また、核酸増幅反応法は、Two−step RT−PCRを行い、PrimeScript(登録商標)RT Regent Kit(perfect Real Time)(タカラバイオ株式会社製の製品名)及びKOD FX(東洋紡株式会社製の製品名) を用いた。なお、核酸増幅反応法の試験条件は、上記実施例3と同様である。
【0085】
図13は、各鋳型にタグありプライマーとタグなしプライマーを用いた反応溶液のPCRによって得られたPCR産物を電気泳動したゲル分析結果を示す写真である。
図13に示すように、タグありプライマーを用いた反応溶液(1),(3),(5)についてはmiRNAが何れも増幅が確認されたが、タグなしプライマーを用いた反応溶液(2),(4),(6)についてはPCRが進行せずmiRNAの増幅が確認できなかった。
【0086】
図14は、PCRが進行した反応溶液(1),(3),(5)におけるPCRサイクルと蛍光強度の関係を示すグラフである。
図14に示すように、各反応溶液はPCRが15〜25サイクルから徐々に蛍光強度が増えていることが確認された。これは、PCRが進むにつれて鋳型とmiRNA用プライマー1と結合による複製が進み、この複製が増えることでmiRNA用プライマー1からプローブ部位4の解離する量が増えたことで、この解離したプローブ部位4と試薬中のバルジ構造結合分子5とが結合し蛍光発光を示すプローブ部位4が増え試薬中の蛍光強度が増したものと推察される。
【0087】
以上のことから、鋳型となるmiRNAの種類は特に限定されず、プライマー部位2にタグ部位3が結合された本発明に係るmiRNA用プライマー1を用いることでPCRによるmiRNAの複製が可能であることが明らかとなった。また、タグ部位3がないプライマーではmiRNAの増幅が行われないため、miRNA用プライマー1には、少なくともプライマー部位2とタグ部位3が必要であることが確認された。