(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記一定方向に並んだ複数の補強構造の区画の並び方向における一端部側と他端部側とに、当該並び方向に直交する方向に向けられた二本の前記フレームが配置されていることを特徴とする請求項4に記載の骨格構造体。
前記パネルと前記フレームとは、互いの接合面において、前記パネルと前記フレームとに生じた溶融後の凝固状態により接合されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の骨格構造体。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第一の実施形態の概略]
以下に、本発明を実施するための第一の実施形態について図面を用いて説明する。但し、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が以下の実施形態に付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0017】
図1は車両用シートの骨格構造体100の正面図、
図2は斜視図、
図3は左側面図である。この車両用シートは複数人掛けのリヤシートであり、この骨格構造体(フレーム構造体)100はリヤシートの背もたれの骨子となる。発泡成形されたパッドが骨格構造体100の前側から骨格構造体100を包み込むように骨格構造体100に設けられ、更に表皮がこのパッドの表面に吊り込まれている。吊り込みとは、パッドの表面に覆い被さった表皮が張った状態でパッドの表面に沿っていることをいう。
【0018】
骨格構造体100はパネル1、フレーム6、ストライカー11及び複数のヘッドレストの支持具12、一対のアームレストブラケット13,14等を備える。
パネル1は略長方形状であってスチールやアルミ合金等の金属板であり、
図1に示すように、パネル1における長辺に沿った方向を左右方向、短辺に沿った方向を上下方向に沿わせた状態で車両用シートに装備される。
なお、車両用シートに骨格構造体100が装備された状態において、車両の左側を骨格構造体100の左側とし、車両の右側を骨格構造体100の右側とする。また、
図1では紙面表側が「前」、紙面裏側が「後」となる。
【0019】
[フレームの概略]
上記フレーム6は、
図1〜
図3に示すように、パネル1の前面の左右両端部にそれぞれ上下方向に沿って取り付けられた第一フレームとしてのサイドフレーム61,61と、パネル1の前面の左右の端部から幾分中央部寄りにそれぞれ上下方向に沿って取り付けられた第一フレームとしてのミドルフレーム62,62と、パネル1の前面側の上端部に左右方向に沿って設けられた第二フレームとしてのアッパーフレーム63と、パネル1の前面側の下端部に左右方向に沿って設けられた第二フレームとしてのロアーフレーム64とを備えている。
上記各フレーム61〜64は、スチールやアルミ合金等の金属製の支柱である。
そして、サイドフレーム61,61とミドルフレーム62,62の上端部は、いずれもアッパーフレーム63にレーザー溶接によって接合され、サイドフレーム61,61とミドルフレーム62,62の下端部は、いずれもロアーフレーム64にレーザー溶接によって接合されている。
また、全てのフレーム61〜64は、パネル1に対向するフランジ部を有しており、当該フランジ部がパネル1に対してレーザー溶接によって接合されている。
これら各フレーム61〜64の詳細な構造については後述する。
【0020】
[パネルの概略]
パネル(パンフレーム)1は、
図1及び
図2に示すように、左右方向に長い矩形板状の金属板であり、その上部は幾分拡幅している。
そして、パネル(パンフレーム)1の前面の外周全体が前方に立ち上げられた縁部を有し、トレー状となっている。
さらに、パネル1の前面上端部及び下端部には、個別に、後方に凹んだ溝状の凹部21,22が左右方向に沿って形成されている。そして、上側の凹部21の内側には前述したフレーム6のアッパーフレーム63が設けられ、下側の凹部22にはロアーフレーム64が設けられている。
【0021】
パネル1の前面における上下の凹部21,22の間は、左右のサイドフレーム61,61及び左右のミドルフレーム62,62により三つの領域に分けられている。即ち、パネル1の前面は、左側のサイドフレーム61と左側のミドルフレーム62との間の左領域Aと、右側のサイドフレーム61と右側のミドルフレーム62との間の右領域Bと、左側のミドルフレーム62と右側のミドルフレーム62との間の中央領域Cの三つに分けられている。
【0022】
[パネル:左領域]
パネル1の左領域Aは、補強構造の区画30A,30B,30Cが上下に並んで形成されている。即ち、上から順番に区画30A,30B,30A,30B,30A,30Cが並んで形成されている。
図4は上の三つの区画30A,30B,30Aを抽出した拡大正面図である。
【0023】
補強構造の区画30Aは、
図4に示すように、当該区画30Aを囲む四つのビード31〜34と、当該四つのビード31〜34で囲まれた区画30Aをさらに小区画41〜45に分割する補助ビード35〜39から構成されている。
なお、ビードとは、パネル1の前面から前方に膨出するように形成された凸条(レール状)の構造である(補助ビードも同様)。パネルを構成する金属板は、平坦であればその平面が湾曲や曲折が生じやすいが、凸条のビードを塑性加工により形成することにより、ビードに曲がりが生じないように剛性を高めることができる。
【0024】
補強構造の区画30Aは長方形であり、左右方向に沿ったビード31,33と上下方向に沿ったビード32,34とによって長方形の四辺が構成されている。なお、隣り合うビードとビードの角部はいずれも円弧状のビードにより連接されている。
そして、四つのビード31〜34により囲繞された長方形の区画30Aの内側には、左右方向にジグザグに連なる四つの補助ビード35〜38と左右方向中央部で上下方向に形成された補助ビード39とが形成されている。
【0025】
そして、区画30A内の右下部において、ビード33,34と補助ビード35とによりこれらに囲繞された直角三角形状のトラス形状の小区画41が形成されている。
また、区画30A内の中央下部において、ビード33と補助ビード36,37とによりこれらに囲繞された二等片三角形状のトラス形状の小区画42が形成されている。
また、区画30A内の左下部において、ビード32,33と補助ビード38とによりこれらに囲繞された直角三角形状のトラス形状の小区画43が形成されている。
また、区画30A内の右上部において、ビード31と補助ビード35,36,39とによりこれらに囲繞された略三角形状のトラス形状の小区画44が形成されている。
また、区画30A内の左上部において、ビード31と補助ビード37,38,39とによりこれらに囲繞された略三角形状のトラス形状の小区画45が形成されている。
【0026】
そして、上記各ビード31〜34及び補助ビード35〜39から形成された補強構造の区画30Aは、左右対称の形状となっている。
【0027】
補強構造の区画30Bは、複数のビード及び複数の補助ビードから形成されたパターン形状が、区画30Aのパターン形状を上下に反転した形状となっている。即ち、区画30Bは、隣り合う区画30Aとの左右方向に沿った境界線を中心とする線対称なパターン形状となっている。
なお、上記のように、区画30Bの四本のビードと五本の補助ビードと四つの小区画とは、その形状及び配置が区画30Aと線対称となるので、これらの詳細な説明は省略する。
【0028】
補強構造の区画30Cは、複数のビード及び複数の補助ビードから形成されたパターン形状が区画30Bに近似している。
この区画30Cは、領域A内で最も下側に位置することから、パネル1の左下の角部に装備されたセットブラケット16Aとの干渉を避けるために、区画30Cの外周の四つのビードの内で左側に位置するビードが傾斜して形成され、区画30Cの外形が台形状となるように形成されている。
なお、外形が台形状である点以外は、区画30Cは区画30Bとほぼ同じ構造であるため、詳細な説明は省略する。
【0029】
また、上記領域Aの上端部に位置する区画30Aの小区画44,45にはそれぞれパネル1を前後に貫通する貫通孔46,47が形成されている。
これらの貫通孔46,47は、パネル1に対して各部材の接合作業を行う場合に、レーザー溶接装置に対してパネル1の位置決めを行うためのものである。
また、パネル1の向きをより精度良く位置決めするために、パネル1の領域Cの下端部に位置する区画30D(後述)内の二つの小区画にも個別に同様の貫通孔48,49が形成されている。
なお、貫通孔の個数は四つに限定されず、少なくとも二つあれば良い。貫通孔を二つとする場合には、パネル1の対角にそれぞれ一つずつ形成することが望ましい。
また、貫通孔の個数を四つ以上(例えば、各区画ごとに設ける等)として、パネル1の軽量化を図っても良い。
【0030】
[パネル:右領域]
パネル1の右領域Bは、
図1に示すように、補強構造の区画30A,30B,30Dが上下に並んで形成されている。即ち、上から順番に区画30A,30B,30A,30B,30A,30Dが並んで形成されている。
区画30A及び区画30Bは、前述した左領域Aに形成された補強構造の区画30A及び区画30Bと同一である。
また、区画30Dは、複数のビード及び複数の補助ビードから形成されたパターン形状が、区画30Cのパターン形状を左右に反転した形状、即ち、区画30Cに対して上下方向に沿った軸線を中心とする線対称なパターン形状となっている。このように、区画30Dの四本のビードと五本の補助ビードと四つの小区画とは、その形状及び配置が区画30Cと線対称となるので、これらの詳細な説明は省略する。
【0031】
[パネル:中央領域]
パネル1の中央領域Cは、
図1に示すように、補強構造の区画50A,50Bが上下に並んで形成されている。即ち、上端部に区画50Aが形成され、その下に五つの区画50Bが並んで形成されている。
【0032】
補強構造の区画50Bは、当該区画50Bを囲む四つのビードと、当該四つのビードで囲まれた区画50Bをさらに小区画に分割する六つの補助ビードから構成されている。
四つのビードは、前述した区画30Aと同様に、長方形の四辺を構成しており、その角部は、区画30Aと同様に円弧状となっている。
六つの補助ビードはいずれも上下方向に沿っており、左右方向に沿った二つのビードの間で左右方向に均一間隔で形成されている。
これらにより、区画50B内には、同一の長方形状の小区画が七つ左右方向に並んで形成されている。
【0033】
補強構造の区画50Aは、区画50Bと比べて、左右両側のビードの上半分が幅広になっている点が異なっているがそれ以外の構成については同一であるため詳細な説明は省略する。
【0034】
[フレームの詳細構造]
図5はアッパーフレーム63とミドルフレーム62との接合部の斜視図、
図6は当該接合部を拡大した斜視図である。
図示のように、アッパーフレーム63は、開断面形状であって、パネル1に対向する対向壁部631と、当該対向壁部631の両側部からパネル1に向かって立ち上げられた一対の側壁部632,632と、一対の側壁部632,632のパネル1側の端部から幅方向外側に延出されたフランジ部633,633とを有している。
【0035】
また、フレーム6を構成する他のフレーム、即ち、サイドフレーム61,61、ミドルフレーム62,62及びロアーフレーム64も、同様に、開断面形状であって、対向壁部と一対の側壁部とフランジ部とを有している。
そして、フレーム6を構成する全てのフレームは、いずれも、そのフランジ部をパネル1の前面に対して面接触させた状態で接合されている。
【0036】
図7は骨格構造体100の正面図であって、サイドフレーム61,61とミドルフレーム62,62のそれぞれのフランジ部613,623のパネル1に対する接合部(レーザー溶接箇所)に網掛け模様を付して示している。
左右のサイドフレーム61,61及び左右のミドルフレーム62,62は、いずれもそのフランジ部613,623が、レーザー溶接によって接合されている。つまり、フランジ部613,623の形成材料とパネル1の形成材料とに生じた溶融後の凝固状態により接合されている。
そして、これら左右のサイドフレーム61,61及び左右のミドルフレーム62,62は、いずれも、その長手方向に沿って、パネル1に対する接合部sと非接合部nとが存在する。なお、左右のサイドフレーム61,61及び左右のミドルフレーム62,62は、レーザー溶接により接合されるので、フランジ部613,623とパネル1との接触面に隙間が発生しないようにフランジ部613,623を一定間隔で治具により押さえ付ける必要があり、接合部sの範囲内には治具の取り付けによる溶接の途切れ箇所が存在する。しかし、非接合部nは、このような溶接おいて必然的に生じる途切れ箇所を含む意味ではなく、一定以上の長さの範囲で溶接による接合が行われていない領域を示す。
【0037】
図7に示すように、二つのサイドフレーム61,61は、上下方向における非接合部nの範囲が一致しており、これらは、いずれも、サイドフレーム61,61の上下方向における丁度中間となる位置を含まずにそれよりも下方に位置している。
また、二つのミドルフレーム62,62も、上下方向における非接合部nの範囲が一致しており、これらは、いずれも、ミドルフレーム62,62の上下方向における中央部となる位置を含まずにそれよりも下方に位置している。
そして、サイドフレーム61の非接合部nとミドルフレーム62の非接合部nとは、上下方向について、重複範囲jにおいて重複しつつも、サイドフレーム61の非接合部nはミドルフレーム62の非接合部nよりも上側に位置している。
【0038】
上記のように、左右のサイドフレーム61,61及び左右のミドルフレーム62,62に非接合部nを設けることにより、骨格構造体100に衝突等の荷重が加わった場合の塑性変形箇所を制御することができる。即ち、骨格構造体100のように平板状の構造物の場合、その中央部に変形を生じた場合に、その変形量が大きくなる。
例えば、左右のサイドフレーム61,61及び左右のミドルフレーム62,62のフランジ部613,623が全長に渡って接合されており、非接合部nが存在しないような場合には、中央部に大きな変形を生じ得る。
一方、左右のサイドフレーム61,61及び左右のミドルフレーム62,62に非接合部nを設けた場合には、接合強度が低い非接合部nに変形位置を誘導することができる。特に、左右のサイドフレーム61,61及び左右のミドルフレーム62,62の非接合部nは、いずれも上下方向における中央部よりも片側となる下側に位置するので、中央部の変形を回避することができる。
これにより、大きく変形を生じやすい中央部よりも下側に変形を生じさせて、その変形量や撓み量を低減することができる。
【0039】
また、両外側のサイドフレーム61,61の非接合部nを中央部のミドルフレーム62,62の非接合部nよりも幾分上側としているので、これら各フレーム61,61,62,62の非接合部nがおおよそ骨格構造体100の中央部を中心とする円弧に沿った範囲に並び、当該円弧に沿って変形を生じ易くすることができ、骨格構造体100の中央部に荷重が加わった場合でも、中央部の変形を抑え、その周囲を変形させることができ、さらに効果的にその変形量や撓み量を低減することができる。
なお、各フレーム61,61,62,62の非接合部nがおおよそ骨格構造体100の中央部を中心とする円弧に沿って並ぶ、より好ましい例を例示したが、各フレーム61,61,62,62の非接合部nが同じ高さで並んだ場合でも、その変形量や撓み量を低減することは可能である。
【0040】
また、サイドフレーム61,61の非接合部nとミドルフレーム62,62の非接合部nの重複範囲jは、前述したパネル1の各領域A〜Cに形成された補強構造の区画30A〜30D,50A,50Bの一部について、隣り合う区画の境界部を含む配置となっている。
即ち、領域Aの場合には、下から三番目の区画30Bと下から二番目の区画30Aとの境界部及び下から二番目の区画30Aと一番下の区画30Cとの境界部が上下方向について重複範囲jの内側となっている。
また、領域Bの場合には、下から三番目の区画30Bと下から二番目の区画30Aとの境界部及び下から二番目の区画30Aと一番下の区画30Dとの境界部が上下方向について重複範囲jの内側となっている。
また、領域Cの場合には、下から三番目の区画50Bと下から二番目の区画50Bとの境界部及び下から二番目の区画50Bと一番下の区画50Bとの境界部が上下方向について重複範囲jの内側となっている。
【0041】
補強構造の区画と区画との境界部は、他の部分に比べると、境界部に沿った変形が生じ易く、上記のように区画と区画の境界部を上下方向について重複範囲j内に含ませることにより、より効果的に中央部よりも下側に変形位置を誘導することができ、その変形量や撓み量をさらに効果的に低減することができる。
なお、重複範囲jに対して上下方向に二つの区画と区画の境界部が含まれる場合を例示したが、その数は一つでも良いし、三つ以上であっても良い。
【0042】
[各フレームの接合構造]
図8はアッパーフレーム63とミドルフレーム62との接合部における正面図、
図9は前斜め上から見た斜視図、
図10は
図8のX−X線に沿った断面を左前斜め上から見た斜視図、
図11は
図8のY−Y線に沿った断面を右前斜め上から見た斜視図である。
図5,
図6及び
図8〜
図11に基づいてフレーム同士の接合構造について説明する。
【0043】
ミドルフレーム62は、その上端部において、両側のフランジ部623,623を除去すると共に、一対の側壁部622,622を対向壁部621の近傍まで切り取った切り欠き624,624が形成されている。この切り欠き624,624により、ミドルフレーム62の上端部は、対向壁部621と僅かに残った側壁部622のみの状態となっている。
アッパーフレーム63とミドルフレーム62との接合の際には、上記切り欠き624,624の内側にアッパーフレーム63が入り込んだ状態となる。
【0044】
そして、アッパーフレーム63とミドルフレーム62とが接合された状態において、上記切り欠き624,624は、アッパーフレーム63の下側の側壁部632に対して隙間が生じる形状となっている(
図6及び
図10参照)。このため、骨格構造体100に荷重が加えられた場合に、切り欠き624,624の縁部とアッパーフレーム63の下側の側壁部632とが擦れ合って生じる異音の発生を効果的に回避することができる。また、この隙間により、アッパーフレーム63とミドルフレーム62の組み付け誤差、加工誤差を吸収し、組付けや接合作業を容易に行うことが可能となる。
【0045】
さらに、上記ミドルフレーム62の対向壁部621の上端部には、パネル1側に向かって凸となるように対向壁部の前面がU字状に後方に凹んだ凹凸構造625が形成されている。
図9及び
図10に示すように、凹凸構造625の形成により、ミドルフレーム62の上端部の対向壁部621は、その中央部が凹状に凹み、後方に凸となると共にその先端部が平坦に形成されている。そして、当該先端の平坦面がアッパーフレーム63の対向壁部631の前面に面接触した状態でレーザー溶接により接合されている。
また、凹凸構造625の中央部の凹みの左右両側は相対的に前方に凸となり、上下方向に沿った凸条となっている。
さらに、上記凹凸構造625は、ミドルフレーム62の上端部から下方に向かって、アッパーフレーム63の対向壁部631の上下幅と同程度或いはそれ以上の長さにまで及んでいる。
【0046】
ミドルフレーム62の上端部は、切り欠き624により一対の側壁部622の大部分が除去されていることから、ミドルフレーム62の上端部は、一対の側壁部622による前後方向の荷重に対する強度が切り欠きがない場合に比べて低下する。
しかしながら、ミドルフレーム62の上端部には凹凸構造625により上下方向に沿った凸条が左右両側に形成されるので、ミドルフレーム62の上端部の剛性が高められ、前後方向の荷重にも十分な強度を得ることができる。
【0047】
また、ミドルフレーム62の対向壁部621における凹凸構造625の下側には、下から上に向かうにつれて対向壁部621がパネル1から離間する方向に傾斜した傾斜面626が形成されている。
この傾斜面626により、ミドルフレーム62の上端部近傍では、一対の側壁部622の前後方向の幅が下側部分よりも広くなっている。このため、一対の側壁部622に切り欠き624を形成しても、側壁部622は完全に除去されず、ミドルフレーム62の上端部の強度を確保することができる。
【0048】
また、ミドルフレーム62は切り欠き624,624の下側において、フランジ部623,623の上端部が、アッパーフレーム63の下側のフランジ部633に重ねられ、レーザー溶接により接合されている。これにより、ミドルフレーム62とアッパーフレーム63との接合強度をより高めている。
【0049】
なお、アッパーフレーム63は、前述したように、パネル1の前面において後方に凹んだ溝状の凹部21内に接合されており、当該凹部21の深さはアッパーフレーム63のフランジ部633の厚さと一致するので、ミドルフレーム62のフランジ部623をアッパーフレーム63のフランジ部633の手前に重ねて接合しても、ミドルフレーム62のフランジ部623がパネル1の前面に対して隙間を生じない。従って、ミドルフレーム62のフランジ部623をパネル1の前面に良好にレーザー溶接により接合することが可能である。
【0050】
また、
図1及び
図2に示すように、ミドルフレーム62の下端部は上端部の切り欠き部624,624、凹凸構造625、傾斜面626と同一の構造を有し、ロアーフレーム64に接合されている。
【0051】
さらに、サイドフレーム61の上端部は、ミドルフレーム62の上端部の切り欠き部624,624、凹凸構造625、傾斜面626と同一の構造を有し、アッパーフレーム63に接合されているが、サイドフレーム61の下端部はミドルフレーム62とは異なる構造によりロアーフレーム64と接合されている。
左右のサイドフレーム61の下端部は、ロアーフレーム64の左右の端部に接合されるが、これらの接合位置である骨格構造体100の下側角部には、シートフレームに骨格構造体100を取り付けるためのプロジェクションナットを設ける必要があることから、干渉を避けるために、左右のサイドフレーム61の下端部とロアーフレーム64の左右の端部を骨格構造体100の下側角部まで延ばすことができない。
従って、左側のサイドフレーム61の下端部は、ロアーフレーム64の左端部に対してプロジェクションナット161が装備された板状のセットブラケット16Aを介して連結され、右側のサイドフレーム61の下端部は、ロアーフレーム64の右端部に対してプロジェクションナット161が装備された板状のセットブラケット16Bを介して連結されている。
【0052】
セットブラケット16Aは、
図1及び
図2に示すように、正面視L字状の金属板であり、パネル1の前面の凹部22における左端部にレーザー溶接により接合される。
このセットブラケット16Aは、L字の角部の前面にプロジェクションナット161がプロジェクション溶接によって固定装備されており、パネル1の下側角部に設けられた図示しない貫通孔を介して骨格構造体100を車両用シートに固定するボルトをプロジェクションナット161に螺入することができる。
【0053】
また、セットブラケット16Aは、角部から上方に延出された延出部の前面に対して、左側のサイドフレーム61のフランジ部の下端部がレーザー溶接により接合されている。
さらに、セットブラケット16Aは、角部から右方に延出された延出部の前面に対して、ロアーフレーム64のフランジ部の左端部がレーザー溶接により接合されている。
これにより、セットブラケット16Aは、左側のサイドフレーム61の下端部とロアーフレーム64の左端部とを連結している。
【0054】
また、セットブラケット16Aの上方に延出された延出部の左縁部から右方に延出された延出部の下縁部にかけて、前方に向かって立ち上げられたフランジ部が形成され、セットブラケット16Aの上方に延出された延出部の右縁部から右方に延出された延出部の上縁部にかけて、前方に向かって立ち上げられたフランジ部が形成されている。これらはセットブラケット16Aの補強構造を構成し、セットブラケット16Aの荷重に対する撓みや変形を低減している。
【0055】
また、セットブラケット16Bは、セットブラケット16Aと対称な構造であり、その詳細な説明は省略する。そして、セットブラケット16Bは、セットブラケット16Aと同様にして、右側のサイドフレーム61の下端部とロアーフレーム64の右端部とを連結している。
【0056】
プロジェクションナット161は、プロジェクション溶接により接合するので、板厚が薄いパネル1に直接接合することは困難であり、パネル1よりも板厚が厚いセットブラケット16A,16Bを使用しなければ、パネル1にプロジェクションナット161を取り付けることはできない。
そして、これら必須となるセットブラケット16A,16Bを利用して左右のサイドフレーム61,61とロアーフレーム64との連結を行っているので、プロジェクションナット161と干渉することなく左右のサイドフレーム61,61とロアーフレーム64との連結を図ることが可能である。
また、セットブラケット16A,16Bはパネル1よりも板厚があり、フランジ部を有するので剛性が高く、これらセットブラケット16A,16Bを介して左右のサイドフレーム61,61とロアーフレーム64とを連結した場合でも、相互間の連結強度を十分に高く維持することが可能である。
【0057】
[その他の各部材について]
ヘッドレストの支持具12は、
図1及び
図2に示すように、二つ一組で、前述したパネル1の各領域A,B,Cごとに一組ずつアッパーフレーム63に溶接により接合されている。各支持具12は、四角の筒状であり、上下方向に沿って取り付けられている。そして、上方からその内側にヘッドレストの支柱が挿入された状態で当該ヘッドレストの支持を行う。
【0058】
ストライカー11はリヤシートの背もたれ及び骨格構造体100を車体に固定するための金具である。フレーム6の下端部は前述した二つのプロジェクションナット161,161により固定され、フレーム6の上端部はストライカー11が車体に設けられた留め具にロックされる。
かかるストライカー11は金属からなる一本の太い線材を曲げ加工したものである。線材の両端部はアッパーフレーム63の長手方向中間部において対向壁部631にレーザー溶接で接合されており、線材の中間部はパネル1の上端部から後方に折り返され、さらに、下方に延出されたフック状に曲げ加工されている。
【0059】
一対のアームレストブラケット13,14は、車両用シートに装備されるアームレストを回動可能に支持する部材である。
図12は左側のアームレストブラケット13の一部を垂直断面で示した斜視図、
図13は左側のアームレストブラケット13の一部を水平断面で示した斜視図である。
【0060】
アームレストブラケット13は、ロアーフレーム64の対向壁部641の前面に接合された基端部131と、基端部131から前斜め上に延出された支持腕部132と、支持腕部132を補強するビード133と、基端部131及び支持腕部132の外縁に沿って形成されたフランジ部134とを備えており、これらは一枚の金属板からプレス加工により形成されている。
基端部131及び支持腕部132は、その外周から立ち上げられた側壁部を有し、側壁部の先端には前述したフランジ部134が外側に向かって張り出されている。
また、支持腕部132の先端部にはアームレストを支持する支軸を通す貫通孔が形成されている。さらに、支持腕部132は基端部131側の端部から延出端部側に向かって右方に膨出したビード133が形成されている。これら側壁部とビード133とフランジ部134とにより、アームレストブラケット13は、剛性が高められ、十分なアームレストの支持強度を確保している。
また、基端部131は、レーザー溶接によりロアーフレーム64の対向壁部641の前面に接合されている。ロアーフレーム64の対向壁部641のような狭い領域内ではレーザー溶接以外の他の溶接方法ではアームレストブラケット13の接合は難しいが、レーザー溶接であれば後方からのレーザー照射により接合することが可能である。従って、レーザー溶接により、アームレストブラケット13は適正な位置に十分な強度で設けられている。
【0061】
右側のアームレストブラケット14は、
図1及び
図2に示すように、ミドルフレーム62の対向壁部621の前面に接合された基端部と、基端部から前方に延出された支持腕部と、基端部及び支持腕部の外縁に沿って形成されたフランジ部とを備えており、これらは一枚の金属板からプレス加工により形成されている。
この右側のアームレストブラケット14は、ミドルフレーム62に接合されているので、支持腕部を左側のアームレストブラケット13のように長く延出する必要がないことから、ビードを設けることなく十分な強度を得ることが出来る。
なお、このアームレストブラケット14の基端部もミドルフレーム62に対してレーザー溶接により接合されている。
【0062】
[発明の実施形態の技術的効果]
上述のように、骨格構造体100のパネル1の各領域A〜Cには、パネル1から凸条に膨出したビードで囲まれた複数の補強構造の区画が形成されている。
これら補強構造の区画30A〜30D,50A,50Bのように、上下左右の各方向に沿ったビードで取り囲むことにより、それぞれのビードが個別に異なる方向からの荷重に対する剛性を高め、より多くの方向からの荷重によるパネル1の変形を抑制することが可能となる。また、方向の異なるビードがつながって途切れのない状態で各区画を囲んでいるので、各ビードが分離している場合のように、分離部分に生じる剛性の低下を抑止することが可能となる。これらにより、ビードで囲まれた領域内について、複数方向に対する撓みを低減することが可能となる。
さらに、各領域A〜Cには、ビードで囲まれた複数の補強構造の区画が設けられているので、各区画ごとに骨格構造体100に加えられた荷重を受け止めて、全体的な変形を抑制することが可能となる。
また、複数の区画が設けられることにより、平面的なパネルの撓みや弾性変形を低減することができるので、変形状態からの戻りによる異音の発生を低減することが可能となる。
【0063】
また、ビードで囲まれた補強構造の区画30A〜30D,50A,50Bは、さらに補助ビードにより小区画に分割されることにより、さらに剛性を高めると共に応力を分散することができ、撓みや弾性変形をさらに低減することが可能となる。
特に、補強構造の区画30A〜30Dでは、補助ビードにより三角形状等のトラス形状に分割された小区画を有している。三角形等のトラス形状の小区画は、例えば、ハニカム構造のような六角形の小区画の補強構造と比較した場合、ビード(又は補助ビード)とビード(又は補助ビード)との距離が離れている箇所をより少なくすることができるので、小区画内の撓みや弾性変形をさらに低減することが可能となる。
【0064】
また、領域A及び領域Bでは、補強構造の区画30Aと区画30Bとのように、隣り合う区画内の補助ビードの形成パターンが互いにその境界線を中心として線対称の形状となる様に配置している。例えば、同一形状の形成パターンからなる区画を同じ向きで並べた場合には、各区画が同じ方向からの荷重に弱くなり、同じ方向に撓みを生じやすくなるが、隣り合う区画内の補助ビードの形成パターンを線対称とした場合には、各区画ごとに撓みを生じやすい荷重の方向が一致しなくなり、同じ方向に撓みが生じやすくなることも回避できるので、より多くの方向からの荷重に対しても撓みや弾性変形を低減することが可能となる。
【0065】
また、各領域A〜Cは、いずれも、複数の補強構造の区画が上下方向に並んでパネル1に形成されると共に、各領域の両隣に、上下方向に沿ってパネル1に接合されたサイドフレーム61又はミドルフレーム62が配置されている。
このため、上下方向に並んだ複数の区画がその境界線に沿って撓むことを両隣のサイドフレーム61又はミドルフレーム62が抑制することができ、パネル1の全体における撓みや弾性変形を低減することが可能となる。
さらに、サイドフレーム61及びミドルフレーム62は、上端部と下端部とがそれぞれ左右方向に沿って設けられたアッパーフレーム63とロアーフレーム64とに接合されているので、サイドフレーム61及びミドルフレーム62は、その向きや位置が保持されるので、パネル1の全体における撓みや弾性変形をさらに低減することが可能となる。
【0066】
また、骨格構造体100では、パネル1と各フレーム61〜64とは、レーザー溶接により、互いの接合面において、パネル1の形成材料と各フレーム61〜64の形成材料とに生じた溶融後の凝固状態により接合されているので、パネル1と各フレーム61〜64以外の溶加材を加えることなく接合されており、高い接合強度を維持しつつ骨格構造体100の軽量化を図ることができる。
また、パネル1と各フレーム61〜64とを溶融させて、その後の凝固により接合を行う骨格構造体の製造方法として、レーザー溶接を行うことにより、従来のスポット溶接等に比べて溶接ができる範囲が広くなり、生産性を向上させることが可能となる。
【0067】
また、骨格構造体100では、フレーム6の各フレーム61〜64を開断面形状とし、サイドフレーム61やミドルフレーム62の端部をアッパーフレーム63又はロアーフレーム64に重ねた状態で接合している。このため、接合部の面積を広く確保しやすく、接合強度の向上を図ることが可能である。
【0068】
また、骨格構造体100のサイドフレーム61又はミドルフレーム62は、上端部又は下端部に切り欠きを有し、切り欠きの内側に配置されたアッパーフレーム63又はロアーフレーム64に対して、対向壁部のパネル側の対向面を接合したので、接合部の面積をより広く確保することができ、さらに接合強度を高めることができる。
また、サイドフレーム61又はミドルフレーム62の切り欠きは、アッパーフレーム63又はロアーフレーム64の側壁部に対して隙間を有するので、当該側壁部との摺動による異音の発生を抑止することが可能となる。また、隙間を有するので、サイドフレーム61又はミドルフレーム62の加工誤差や組み立て誤差、熱変形を許容することが可能となる。
【0069】
また、骨格構造体100のサイドフレーム61又はミドルフレーム62は、上端部又は下端部の対向壁部は、中央がパネル1に対して凸となる凹凸構造625を有するので、当該凹凸構造625が対向壁部に対向する方向の荷重に対して剛性を高めることができ、フレーム同士の接合部における強度を向上させることが可能となる。
【0070】
また、骨格構造体100のサイドフレーム61又はミドルフレーム62は、フレームの先端に向かうにつれてパネル1から離間する傾斜面626が対向壁部621形成されているので、切り欠き部624が形成された端部の側壁部622の幅を広く確保することができ、サイドフレーム61又はミドルフレーム62の接合端部の強度を高く維持することができる。
【0071】
また、骨格構造体100のサイドフレーム61又はミドルフレーム62のフランジ部の先端部とアッパーフレーム63又はロアーフレーム64のフランジ部の一部とを重ねた状態で接合しているので、サイドフレーム61又はミドルフレーム62は、対向壁部とフランジ部の双方によりアッパーフレーム63又はロアーフレーム64に対して接合された状態となり、接合強度をさらに高めることが可能となる。
【0072】
また、骨格構造体100の左右のサイドフレーム61及び左右のミドルフレーム62は、パネル1に対する非接合部nが、上下方向についてその配置が重複範囲jにて重複しているので、骨格構造体が衝突荷重や変形荷重を受けた場合に、当該重複範囲jに変形が生じるように変形を制御することができる。
特に、重複範囲jをパネルの上下方向における中央部より下方としたことにより、変形発生時にその変形量が大きくなる中央部を外して変形を生じさせることができ、変形量の低減を図ることが可能となる。
なお、変形量が最も大きくなるパネル1の中央部で変形が生じないようにすることができれば、重複範囲jは中央部より下側に限らず、上側としても良い。
【0073】
また、骨格構造体100の左右のサイドフレーム61,61は、非接合部nが、左右のミドルフレーム62,62の非接合部nよりも上下方向における中央部寄り(上側)としたので、パネルの中心を中心とする円弧に沿って各フレーム61,61,62,62の非接合部nが並んだ状態に近くなり、パネルの中心に衝突荷重や変形荷重が加えられた場合でも、非接合部nが並んだ円弧に沿って変形を生じさせることができ、より効果的に変形位置を誘導すると共に、その変形量の低減を図ることが可能となる。
【0074】
また、骨格構造体100の左右のサイドフレーム61及び左右のミドルフレーム62の非接合部nの重複範囲jが、上下方向について、パネル1において上下に並んだ補強構造の区画と区画との境界となる位置を一つ以上含む(例えば二つ)範囲としたので、変形が生じ易い区画と区画の境界線を含む状態となり、より効果的に変形位置を制御すると共に、その変形量の低減を図ることが可能となる。
【0075】
また、骨格構造体100の左右のサイドフレーム61は、パネル1にプロジェクションナット161を取り付けるために必須となるセットブラケット16A,16Bを利用してロアーフレーム64に連結されているので、プロジェクションナット161と干渉することなく左右のサイドフレーム61,61とロアーフレーム64との連結を図ることが可能である。
【0076】
[第二の実施形態]
第二の実施形態では、他の例である車両用シートの骨格構造体100Fについて説明する。車両用シートの骨格構造体100Fについては、主に前述した骨格構造体100と異なる点について説明し、同一の構成については骨格構造体100と同じ符号を使用して重複する説明は省略する。
なお、以下において、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が以下の実施形態に付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0077】
図14は車両用シートの骨格構造体100Fの正面図、
図15は骨格構造体100Fの中央上部の拡大斜視図、
図16は右下部の拡大斜視図である。
骨格構造体100Fは、骨格構造体100と同じ態様で車両に取り付けられる。また、車両用シートに骨格構造体100Fが装備された状態において、車両の左側を骨格構造体100Fの左側とし、車両の右側を骨格構造体100Fの右側とし、
図14の紙面表側を「前」、紙面裏側を「後」とする。
【0078】
骨格構造体100Fはパネル1F、フレーム6、ストライカー11及び複数のヘッドレストの支持具12、ヘッドレストピラー17F,17G、一対のアームレストブラケット13,13F等を備える。
パネル1Fはパネル1と同様に略長方形状であってスチールやアルミ合金等の金属板である。
【0079】
パネル(パンフレーム)1Fは、パネル1と同様に、左右のサイドフレーム61,61及び左右のミドルフレーム62,62により三つの領域A〜Cに分けられている。
【0080】
パネル1の左領域Aは、補強構造の区画30F,30G,30H,30G,30H,30G,30I,30Jが上から順番に並んで形成されている。
【0081】
補強構造の区画30Gは、当該区画30Gを囲む略矩形のビードと、当該ビードで囲まれた区画30Gをさらに三つの小区画に分割する二本の補助ビードとから構成されている。
即ち、ビードは、角に丸みを帯びた長方形である。
補助ビードは、ビードの内側領域内で斜め左上と斜め左下とに渡って形成されている。
これにより、ビードの長方形状の内側領域の中央に等脚台形状の小区間が形成され、二つの角部が直角となる不等脚の台形状の小区間が左右対称に形成される。
【0082】
補強構造の区画30Hは、パターン形状が区画30Gのパターン形状を上下に反転した形状となっている。即ち、区画30Gに対して左右方向に沿った軸線を中心とする線対称なパターン形状となっている。
また、補強構造の区画30Iは、パターン形状が区画30Hにほぼ等しく、後述するセットブラケット16Fとの干渉を避けるために左下部分の一部が欠けた形状となっている。
【0083】
補強構造の区画30Fは、当該区画30Fを囲む略矩形のビードと、当該ビードで囲まれた区画30F内でさらに三つの矩形の小区画を形成する補助ビードとから構成されている。
即ち、ビードは、区画30Gと同様に角に丸みを帯びた長方形である。
補助ビードは、区画30Gより小さな丸みを帯びた長方形であり、左右方向に三つ形成されている。そして、各小区画内には略台形状の開口が形成されている。
【0084】
補強構造の区画30Jは、当該区画30Jを囲む台形のビードと、当該ビードで囲まれた区画30Jをさらに二つの小区画に分割する一本の補助ビードとから構成されている。
即ち、ビードは、右側の二つの角部が直角となる不等脚の台形であって角に丸みを帯びた形状で形成されている。また、ビードの左側はセットブラケット16Fとの干渉を避ける形状となっている。
補助ビードは、ビードの内側領域内で斜め左上に渡って形成されている。
これにより、ビードの内側領域の右側に、右の二つの角部が直角となる不等脚の台形状の小区間が形成され、ビードの内側領域の左側に、平行四辺形の小区間が形成されている。
【0085】
パネル1Fの右領域Bは、
図14に示すように、補強構造の区画30F,30G,30H,30G,30H,30G,30K,30Lが上から順番に並んで形成されている。
この右領域Bは、領域Aの全体を左右に反転した形状、即ち、領域Aの各区画30F〜30Jに対して上下方向に沿った軸線を中心とする線対称なパターン形状となっている。従って、これらの詳細な説明は省略する。
【0086】
パネル1Fの中央領域Cは、補強構造の区画30M,30N,30O,30N,30O,30N,30Pが上から順番に並んで形成されている。
【0087】
補強構造の区画30Mは、前述した区画30Fにほぼ等しく、左右方向に全体的に縮小させたビードの形状パターンが形成されている。
補強構造の区画30Nは、前述した区画30Hにほぼ等しく、左右方向に全体的に縮小させたビードの形状パターンが形成されている。
補強構造の区画30Oは、前述した区画30Gにほぼ等しく、左右方向に全体的に縮小させたビードの形状パターンが形成されている。
【0088】
補強構造の区画30Pは、当該区画30Pを囲む略矩形のビードと、当該ビードで囲まれた区画30Pをさらに三つの小区画に分割する二本の補助ビードとから構成されている。
即ち、ビードは、角に丸みを帯びた長方形である。
補助ビードは、ビードの内側領域内で斜め左上と斜め左下とに渡って形成されている。
これにより、ビードの長方形状の内側領域の中央に等脚台形状の小区間が形成され、その左右両側に二つの角部が直角となる不等脚の台形状の小区間が対称に形成されている。また、等脚台形状の小区間は、その中央部に下向きの凹部が形成された形状となっている。
【0089】
また、上記各領域A〜Cの補強構造の全区画は、区画30F及び区画30Mを除いて、内側のそれぞれの小区画に、パネル1Fを前後に貫通する円形の貫通孔46Fが形成されている。また、各貫通孔46Fの周囲には、当該貫通孔46Fと同心且つ大径で円形の凸部が前方に突出した状態で形成されている。即ち、ほぼ全ての小領域について貫通孔46Fを形成することで軽量化を図り、凸部による凹凸構造を形成して剛性を高め、貫通孔46Fによる強度低下を抑えている。
また、各貫通孔46Fの規定位置(例えば、パネル1Fの四隅のいずれか)に設けられたものがレーザー溶接装置に対してパネル1Fの位置決めを行うために使用される。
【0090】
右側のセットブラケット16Gは、
図14及び
図16に示すように、正面視略三角形状の金属板であり、パネル1Fの前面の右下端部にレーザー溶接により接合される。
このセットブラケット16Gは、直角をなす角部の前面にプロジェクションナット161がプロジェクション溶接によって固定装備されている。
【0091】
また、セットブラケット16Gは、直角をなす角部の上部に右側のサイドフレーム61のフランジ部の下端部がレーザー溶接により接合され、直角をなす角部の左部にロアーフレーム64のフランジ部の右端部がレーザー溶接により接合されている。これにより、セットブラケット16Gは、右側のサイドフレーム61の下端部とロアーフレーム64の右端部とを連結している。
【0092】
また、セットブラケット16Gは、右側のサイドフレーム61とロアーフレーム64の間となる領域に後方に向かって凸となる略三角形状の凹凸構造が形成され、剛性が高められている。
さらに、セットブラケット16Gは、略三角形状の凹凸構造から、パネル1Fの中央側に向かって延出された延出部162が形成されており、当該延出部162の先端部がパネル1Fの前面の右下部にレーザー溶接により接合されている。
また、この延出部162の先端部の近傍には、前方に突出した凸条をなす補強構造が左斜め下側に沿って形成されている。
左側のセットブラケット16Fは、その形状及び構造がセットブラケット16Gを左右に反転した形状となっている。即ち、左側のセットブラケット16Fは、セットブラケット16Gに対して上下及び前後方向に沿った平面を中心とする面対称な形状及び構造となっているので、その詳細な説明は省略する。
【0093】
これらのセットブラケット16F,16Gは、その補強構造により前述したセットブラケット16A,16Bと同程度或いはそれ以上の剛性を備え、さらに、延出部162の先端でパネル1Fにレーザー溶接により接合されているので、相互の接合強度がセットブラケット16A,16Bよりも向上している。
【0094】
左領域Aと右領域Bの一対のヘッドレストの支持具12には、ヘッドレストピラー17Fがそれぞれ装備されている。このヘッドレストピラー17Fは、金属からなる一本の太い線材を曲げ加工したものである。線材の両端部は一対のヘッドレストの支持具12の上端部から挿入され、溶接で接合されており、線材の中間部はパネル1Fの上端部から前方に折曲され、さらに、下方に折曲されて全体的にフック状に曲げ加工されている。
また、ヘッドレストピラー17Fの線材の中間部、即ち、下方に折曲されたフックの先端に相当する部位には、線材間を渡るように補強ワイヤー171Fが溶接によって接合されている。
【0095】
また、中央領域Cの一対のヘッドレストの支持具12には、ヘッドレストピラー17Gが装備されている。このヘッドレストピラー17Gは、金属からなる一本の太い線材を曲げ加工したものである。線材の両端部は一対のヘッドレストの支持具12の上端部から挿入され、溶接で接合されており、線材の中間部はパネル1Fの上端部から前方に折曲され、さらに、斜め下方に折曲されて全体的にヘッドレストピラー17Fより緩やかなフック状に曲げ加工されている。
また、このヘッドレストピラー17Gの線材の中間部にも補強ワイヤー171Gが溶接によって接合されている。
【0096】
また、ヘッドレストピラー17Gの下側には、矩形の枠状に折曲加工された線材からなるバックボード係合ワイヤー172Gがパネル1Fの前面に溶接により固定装備されている。
パネル1Fの中央領域Cの前面側には、骨格構造体100Fがリヤシートに取り付けられた時に、板状のバックボードが配置され、当該バックボードの上端部がバックボード係合ワイヤー172Gの内側に挿入される。バックボードの上端部には、前方に延出された爪が設けられている。
このため、例えば、後方からの衝突等により骨格構造体100Fの中央下部に前方への荷重又は応力が加わって前方に変形した場合に、バックボードも前方に押し出されるが、その上端部の爪がバックボード係合ワイヤー172Gに引っ掛かり、押し出しを阻止するので、骨格構造体100Fの前方への変形を抑制することができる。
【0097】
一対のアームレストブラケット13,13Fは、ロアーフレーム64にレーザー溶接により固定装備されている。
この骨格構造体100Fでは、前述した右側のアームレストブラケット14に替えてアームレストブラケット13Fが設けられている。
アームレストブラケット13Fはアームレストブラケット13を左右に反転した形状となっている。即ち、アームレストブラケット13Fは、アームレストブラケット13に対して上下及び前後方向に沿った平面を中心とする面対称な形状及び構造となっているので、その詳細な説明は省略する。
【0098】
上記骨格構造体100Fは、前述した骨格構造体100と同一の技術的効果を得ることが可能であると共に、パネル1Fにおける補強構造のビードのパターンの簡易化による生産性の向上、補強構造の各小領域における貫通孔46Fの形成による軽量化、ヘッドレストピラー17F,17G、一対のアームレストブラケット13,13F、セットブラケット16F,16Gによる剛性強化等の優れた改良がなされている。
【0099】
[その他]
パネル1,1Fの補強構造の区画が形成される複数の領域のレイアウトは、
図1又は
図14に示すものに限定されない。例えば、各領域を減じても良いし、増やしても良い。
また、骨格構造体100,100Fをリヤシートの背もたれに使用する場合、背もたれの中央部を開口して後側の荷台から荷物を挿入可能とする構造とする場合がある。
これに対応するため、骨格構造体100,100Fにおける領域Bの補強構造体の形成部分全体を広く開口した開口部に変更しても良い。
【0100】
また、フレーム6を構成するサイドフレーム61,ミドルフレーム62,アッパーフレーム63,ロアーフレーム64は、いずれもフランジ部を備えているが、これを設けずに側壁部のパネル側の端面を接合する構成としても良い。