(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記空隙部よりも前側には、前記伝達部及び前記被伝達部の間に介在され、かつ同被伝達部よりも軟質の材料からなる弾性板状部がさらに設けられている請求項1又は2に記載のエアバッグ装置の支持構造。
前記ピンホルダの後端部には、同ピンホルダに対し前記弾性部材が後方へ動くのを規制する規制部が設けられている請求項1〜4のいずれか1項に記載のエアバッグ装置の支持構造。
前記バッグホルダにおける前記取付孔の周辺部分は、同バッグホルダの他の箇所よりも後方へ隆起されていて、前記取付孔が前記被伝達部よりも後方に位置している請求項1〜6のいずれか1項に記載のエアバッグ装置の支持構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、上記のようにバッグホルダ51がスナップピン53から抜けるのを抑制するうえでは、取付孔51aの孔径を小さくすることで、その孔径と鍔部53bの外径との差を大きくすることが望ましい。鍔部53bのうち、バッグホルダ51の後方への動きを規制する領域が拡がるからである。
【0011】
一方、スナップピン53の軸部53aに加え、ピンホルダ54、ダンパホルダ55の伝達部55c、空隙部G1、弾性部材56の異音抑制部56cを取付孔51aに挿通させる構成を採っている上記特許文献1では、取付孔51aの孔径は、それらの軸部53a、ピンホルダ54、伝達部55c、空隙部G1及び異音抑制部56cから影響を受ける。
【0012】
この点、上記特許文献1では、ダイナミックダンパのばねとして機能する弾性本体部56aの内周部から異音抑制部56cを単純に前方へ延ばしているため、この異音抑制部56cが、単独で取付孔51aの内径を大きくする一因となっている。そのため、取付孔51aの孔径を小さくして、バッグホルダ51がスナップピン53から抜けるのを抑制する性能を高めるうえで、改良の余地が残されている。
【0013】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、バッグホルダがスナップピンから抜けるのを抑制する性能を高めることのできるエアバッグ装置の支持構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するエアバッグ装置の支持構造は、ダイナミックダンパのダンパマスとして機能するエアバッグ装置と、前後方向に延び、かつ前記エアバッグ装置におけるバッグホルダの取付孔に挿通された軸部を有し、その軸部の前端部においてスナップフィット構造にてステアリングホイールに取付けられるとともに、前記軸部の後部において前記エアバッグ装置を支持し、前記取付孔を挿通不能な鍔部が前記軸部の後端部に形成されたスナップピンと、前記取付孔に挿通された状態で前記軸部に摺動可能に被せられたピンホルダと、前記ピンホルダを覆った状態で前記エアバッグ装置に取付けられたダンパホルダと、前記ピンホルダ及び前記ダンパホルダの間に配置され、かつダイナミックダンパのばねとして機能する環状の弾性本体部を有する弾性部材とを備え、前記ダンパホルダの前方への動きが、同ダンパホルダの内周部に設けられて前記取付孔に挿通された伝達部と、前記ピンホルダの外周面から突出する被伝達部とを少なくとも通じて同ピンホルダに伝達されるエアバッグ装置の支持構造であって、前記伝達部の内側には空隙部が設けられ、その空隙部と前記ピンホルダとの間には、同ピンホルダよりも軟質の材料からなり、かつ前記弾性本体部の内径よりも小さな内径を有する異音抑制部が設けられている。
【0015】
上記の構成によれば、エアバッグ装置が押下げられないときには、エアバッグ装置がダイナミックダンパのダンパマスとして機能し、弾性部材の弾性本体部がダイナミックダンパのばねとして機能する。そのため、ステアリングホイールが振動すると、その振動は、スナップピン、ピンホルダ、弾性部材及びダンパホルダを介して、エアバッグ装置のバッグホルダに伝達される。弾性本体部が、上記振動の周波数と同一又は近い共振周波数で弾性変形しながらエアバッグ装置を伴って振動することで、ステアリングホイールの振動エネルギーを吸収する。この吸収により、ステアリングホイールの振動が抑制(制振)される。
【0016】
また、ピンホルダよりも軟質の材料からなる異音抑制部が、伝達部とピンホルダとの直接の接触を抑制する。異音抑制部は、伝達部との接触により弾性変形することで、接触に伴う異音の発生を抑制する。
【0017】
ここで、上記異音抑制部は、スナップピンの軸部、ピンホルダ、ダンパホルダの伝達部及び空隙部と同様、取付孔内に位置していて、取付孔の孔径に影響を及ぼす。この異音抑制部は、弾性本体部の内径よりも小さな内径を有している。そのため、異音抑制部の外周面、同異音抑制部の外側の空隙部及び伝達部を、異音抑制部が弾性本体部の内周部に設けられて、弾性本体部の内径と同じ内径を有する場合(特許文献1)に比べ、スナップピンの軸部に対し、より近い箇所に位置させ、取付孔の孔径を小さくすることが可能となる。取付孔の孔径が小さくなることで、その孔径とスナップピンの鍔部の外径との差が大きくなる。
【0018】
従って、エアバッグ装置の作動に伴いエアバッグが後方へ向けて膨張し、バッグホルダに対し後方へ向かう力が加わった場合、スナップピンにおける軸部の鍔部が、バッグホルダの取付孔の周辺部分の後方に位置することでストッパとして機能する。鍔部と取付孔の周辺部分とのオーバラップする領域が大きく、鍔部がバッグホルダの後方へ向かう動きを規制する性能が高まる。その結果、バッグホルダがスナップピンから抜けるのを抑制する性能が高められる。
【0019】
これに対し、エアバッグ装置が押下げられると、そのエアバッグ装置に加えられた力がダンパホルダに伝達される。ダンパホルダが伝達部と一緒に前方へ移動させられ、その伝達部の動きが被伝達部を介してピンホルダに伝達されて、スナップピンの軸部上を同ピンホルダが前方へ摺動させられる。
【0020】
上記エアバッグ装置の支持構造において、前記伝達部は、前記弾性本体部よりも前方に設けられ、前記ピンホルダの外周部であって前記弾性本体部よりも前方には凹部が設けられ、前記異音抑制部は前記凹部に嵌合された状態で取付けられていることが好ましい。
【0021】
上記の構成によれば、弾性本体部は、凹部よりも後方でピンホルダとダンパホルダとの間に配置される。また、ピンホルダの凹部に対し、弾性本体部の内径よりも小さな内径を有する異音抑制部が嵌合された状態で取付けられることで、その異音抑制部の外側の空隙部及び伝達部は、スナップピンの軸部に対し、より近い箇所に位置する。そのため、取付孔の孔径を小さくすることが可能となる。
【0022】
上記エアバッグ装置の支持構造において、前記空隙部よりも前側には、前記伝達部及び前記被伝達部の間に介在され、かつ同被伝達部よりも軟質の材料からなる弾性板状部がさらに設けられていることが好ましい。
【0023】
上記の構成によれば、エアバッグ装置が押下げられると、そのエアバッグ装置に取付けられたダンパホルダも前方へ移動する。これに伴い伝達部が前方へ移動するが、その動きは、空隙部よりも前側の弾性板状部を介して被伝達部に間接に伝達される。この伝達により、ピンホルダがスナップピンの軸部上を前方へ摺動させられる。
【0024】
ダンパホルダが前方へ移動する際に弾性板状部が伝達部により押圧されて弾性変形する。しかし、弾性板状部の厚みが小さいことから、同弾性板状部の弾性変形量は僅かである。そのため、弾性板状部の弾性変形が、エアバッグ装置を押下げ操作するときの操作フィーリングに及ぼす影響は僅かである。
【0025】
また、多少なりとも弾性を有している弾性板状部が伝達部と被伝達部との間に介在されることで、硬質の伝達部と硬質の被伝達部とが直接接触することが抑制され、硬いもの同士の接触による異音の発生が抑制される。
【0026】
上記エアバッグ装置の支持構造において、前記ダンパホルダは、前記弾性本体部の前面に接触した状態で同弾性本体部の前側に配置された底壁部と、前記底壁部の外周部から後方へ延びて前記弾性本体部を取り囲む周壁部とを備え、前記伝達部は、前記ダンパホルダの一部として前記底壁部の内周部から前方へ突出していることが好ましい。
【0027】
上記の構成によれば、乗員によってエアバッグ装置が引上げられる等して、後方へ向かう力がエアバッグ装置に加えられた場合、その力はダンパホルダにも伝わる。一方、ピンホルダはスナップピンの鍔部により、後方への移動を規制される。そのため、ダンパホルダが弾性本体部を弾性変形させながら後方へ移動する。
【0028】
ここで、仮に、ダンパホルダから弾性本体部への上記力の伝達が、周壁部の後端部のみで行なわれると、上記引上げに伴い、弾性本体部の一部が同周壁部の後端部と鍔部との間に入り込み、制振性能に影響を及ぼすおそれがある。これを解消するには、鍔部を拡径して、周壁部との隙間を小さくすることが考えられるが、背反事項として、支持構造の大型化を招くおそれがある。
【0029】
この点、上記の構成によれば、ダンパホルダから弾性本体部への上記力の伝達が、周壁部よりも内側の底壁部において行なわれる。そのため、弾性本体部の一部が周壁部の後端部と鍔部との間に入り込む現象が起こりにくい。鍔部を拡径しなくてもすみ、支持構造の小型化を図ることが可能である。
【0030】
上記エアバッグ装置の支持構造において、前記ピンホルダの後端部には、同ピンホルダに対し前記弾性部材が後方へ動くのを規制する規制部が設けられていることが好ましい。
上記の構成によれば、弾性部材がピンホルダに対し後方へ動くことが、同ピンホルダの後端部に設けられた規制部によって規制される。弾性部材は、ピンホルダとダンパホルダとの間に配置された状態に保持される。そのため、エアバッグ装置が押下げられて、ダンパホルダ及びピンホルダが前方へ移動された場合には、それらに追従して弾性部材も前方へ移動する。
【0031】
上記エアバッグ装置の支持構造において、前記ダンパホルダには、前記バッグホルダに設けられた被仮止め部に対し、同ダンパホルダを一時的に保持する仮止め部が設けられていることが好ましい。
【0032】
上記の構成によれば、エアバッグ装置のステアリングホイールへの取付けに先立ち、バッグホルダに支持構造が組付けられる。この際、ダンパホルダに設けられた仮止め部が、バッグホルダに設けられた被仮止め部に対し、一時的に保持される。このように、一時的な保持が、ダンパホルダとバッグホルダとの間で行なわれる。そのため、この一時的な保持は、ダンパホルダよりも外側の部品とバッグホルダとの間で行なわれる場合よりも内側で行なわれることになる。その分、支持構造の小型化を図ることが可能である。
【0033】
上記エアバッグ装置の支持構造において、前記バッグホルダは、前記エアバッグ装置の作動時に、前記取付孔を通る屈曲線に沿って屈曲させられるものであり、前記被仮止め部は、前記取付孔の内壁面であって同取付孔の軸線を挟んで相対向する箇所に形成されて、前記仮止め部が係止される一対の切欠き部により構成されており、両切欠き部は、前記屈曲線に対し交差する線上に形成されていることが好ましい。
【0034】
上記の構成によれば、エアバッグ装置が作動してエアバッグが膨張するときには、バッグホルダに対し後方へ向かう力が加えられる。しかし、エアバッグ装置を支持するスナップピンは、その前端部においてステアリングホイールに取付けられていて、後方へ動かない。そのため、バッグホルダは、取付孔を通る屈曲線に沿って屈曲しようとする。
【0035】
ここで、仮に、一対の切欠き部が上記屈曲線上に位置していると、バッグホルダが屈曲線に沿って屈曲したときに、取付孔が両切欠き部を起点として大きく拡がり、スナップピンが取付孔から抜け出るおそれがある。
【0036】
この点、上記の構成によれば、一対の切欠き部が、屈曲線に対し交差する線上に形成されている。そのため、バッグホルダが屈曲線に沿って屈曲しても、取付孔が切欠き部を起点として大きく拡がることが起こりにくく、スナップピンが取付孔から抜け出にくい。
【0037】
上記エアバッグ装置の支持構造において、前記バッグホルダにおける前記取付孔の周辺部分は、同バッグホルダの他の箇所よりも後方へ隆起されていて、前記取付孔が前記被伝達部よりも後方に位置していることが好ましい。
【0038】
上記の構成によるように、バッグホルダにおける取付孔の周辺部分が、同バッグホルダの他の箇所よりも後方へ隆起されることで、ピンホルダの外周面から突出する被伝達部とバッグホルダにおける取付孔の上記周辺部分との間に環状の空隙部が形成される。そのため、エアバッグ装置が振動したときに、ピンホルダの被伝達部と、上記取付孔の周辺部分とが干渉しにくくなる。
【0039】
また、エアバッグ装置の作動に伴いエアバッグが後方へ向けて膨張し、バッグホルダに対し後方へ向かう力が加わったときに、スナップピンにおける軸部の鍔部がストッパとして機能すると、バッグホルダにおいて、他の箇所よりも後方へ隆起している部分は、平らな形状に変形しようとする。これに伴い、取付孔も孔径が小さくなるように変形する。この変形により、鍔部と取付孔の周辺部分とのオーバラップする領域が大きくなり、鍔部がバッグホルダの後方へ向かう動きを規制する性能が高まる。その結果、バッグホルダがスナップピンから抜けるのを抑制する性能が高められる。
【0040】
上記エアバッグ装置の支持構造において、前記エアバッグ装置を前記ステアリングホイールから後方へ遠ざけるように付勢する付勢部材と、前記スナップピンの後端部により構成される固定側接点部と、前記エアバッグ装置に取付けられ、同エアバッグ装置の非押下げ時には、前記固定側接点部から後方へ離間し、前記エアバッグ装置の押下げ時には前記固定側接点部に接触してホーン装置を作動させる可動側接点部とをさらに備えることが好ましい。
【0041】
上記の構成によれば、エアバッグ装置が押下げられないときには、同エアバッグ装置が付勢部材によって付勢力されてステアリングホイールから後方へ遠ざけられる。エアバッグ装置に取付けられた可動側接点部も後方へ付勢され、スナップピンの後端部によって構成される固定側接点部から後方へ離間する。可動側及び固定側の両接点部が導通を遮断された状態となり、ホーン装置が作動しない。
【0042】
これに対し、エアバッグ装置が付勢部材に抗して押下げられると、可動側接点部が前方へ移動する。可動側接点部が固定側接点部に接触して導通すると、ホーン装置が作動する。
【0043】
上記エアバッグ装置の支持構造において、前記スナップピン、前記ピンホルダ、前記弾性部材及び前記ダンパホルダを後方から覆い、かつ前記可動側接点部が取付けられたコンタクトホルダをさらに備え、前記可動側接点部は導電性を有するばね鋼により帯状に形成されており、その可動側接点部の両端部は、前記コンタクトホルダにより、前記取付孔の周りで前記バッグホルダに押圧されていることが好ましい。
【0044】
上記の構成によれば、可動側接点部の取付けられたコンタクトホルダによって、スナップピン、ピンホルダ、弾性部材及びダンパホルダが後方から覆われると、その可動側接点部の両端部は、コンタクトホルダにより、取付孔の周りでバッグホルダに押圧される。この押圧により、可動側接点部の両端部は弾性変形させられた状態でバッグホルダに接触させられるため、その接触状態(導通状態)を保持することが可能である。
【0045】
上記エアバッグ装置の支持構造において、前記空隙部の周方向に互いに離間した複数の箇所には、弾性を有し、かつ前記空隙部の前記箇所を埋めるリブが設けられていることが好ましい。
【0046】
ここで、仮に空隙部の全体が弾性材料によって埋められると、弾性本体部の弾性変形に伴い生ずる反発力に、空隙部を埋めた弾性材料による反発力が加わって、弾性本体部が弾性変形しにくくなる。その結果、振動の周波数特性が影響を受けて不安定になるおそれがある。
【0047】
これに対し、環状の空隙部が設けられると、同空隙部を埋める弾性材料による反発力の付加がなく、弾性材料が原因で弾性本体部が弾性変形しにくくなることが抑制される。弾性本体部が弾性変形しながらエアバッグ装置を伴って振動しやすく、ステアリングホイールの狙いとする方向(上下方向や左右方向)の振動が抑制されやすい。
【0048】
反面、エアバッグ装置が、弾性部材を支点として揺動するおそれがある。この場合、振動の周波数特性が上記揺動の影響を受けて不安定になるおそれがある。
この点、空隙部を埋めるリブが、空隙部の周方向に互いに離間した複数箇所に設けられることで、弾性部材を支点とするエアバッグ装置の上記揺動が規制される。エアバッグ装置の上記揺動が振動の周波数特性に及ぼす影響は小さくなる。その結果、振動の周波数特性は、空隙部が全部埋められる場合、及び全く埋められない場合よりも安定する。
【0049】
上記エアバッグ装置の支持構造において、各リブは、前記異音抑制部及び前記伝達部の少なくとも一方に設けられていることが好ましい。
上記の構成によれば、各リブは、弾性部材とは別の部材である、異音抑制部及び伝達部の少なくとも一方に設けられている。そのため、各リブ及び弾性部材は、互いの材料から制約を受けない。各リブ及び弾性部材の材料の選択の自由度が高くなり、それぞれ要求される性能を満たす硬さを有する弾性材料によって形成することが可能となる。
【0050】
上記エアバッグ装置の支持構造において、各リブは、前記異音抑制部に一体に形成されていることが好ましい。
上記の構成によれば、異音抑制部の形成時に各リブが一緒に形成される。そのため、各リブと異音抑制部とが別々に形成される場合には、それぞれの形成後に、各リブを異音抑制部に固定する必要があるが、そうした固定のための作業が不要となる。
【0051】
上記エアバッグ装置の支持構造において、各リブの後端面は、後側ほど前記異音抑制部に近づくように、前記スナップピンの軸線に対し傾斜していることが好ましい。
各リブの後端面が、上記の構成によるように傾斜することで、同リブの後端面がスナップピンの軸線に対し直交する場合に比べ、各リブが小さくなる。これに伴い、各リブの剛性が小さくなり、弾性本体部の弾性変形に伴い生ずる反発力に、各リブによって加わる反発力が小さくなる。各リブの後端面が上記軸線に対し直交する場合に比べ、弾性本体部が弾性変形しやすくなる。その結果、振動の周波数特性をより安定させることが可能となる。
【0052】
また、異音抑制部を伝達部の内側に配置するために、異音抑制部を取付けられたピンホルダが、その後端部側からダンパホルダに挿通される場合には、各リブが伝達部と干渉するおそれがある。この点、各リブの後端面が、上記のように傾斜することから、各リブの後端部の異音抑制部からの突出量は、同リブの後端において最少となり、前側ほど多くなる。そのため、各リブの後端部が伝達部の前端部と干渉しにくく、同リブを伝達部に挿入しやすくなり、組付け性が向上する。
【0053】
上記エアバッグ装置の支持構造において、各リブの前端面は、前側ほど前記異音抑制部に近づくように、前記スナップピンの軸線に対し傾斜していることが好ましい。
各リブの前端面が、上記の構成によるように傾斜することで、同リブの前端面が前後方向に対し直交する場合に比べ、各リブが小さくなる。これに伴い、各リブの剛性が小さくなり、弾性本体部の弾性変形に伴い生ずる反発力に、各リブによって加わる反発力が小さくなる。各リブの前端面が上記軸線に対し直交する場合に比べ、弾性本体部が弾性変形しやすくなる。その結果、振動の周波数特性をより安定させることが可能となる。
【発明の効果】
【0054】
上記エアバッグ装置の支持構造によれば、バッグホルダがスナップピンから抜けるのを抑制する性能を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0056】
(第1実施形態)
以下、車両用のステアリングホイールにエアバッグ装置を支持する構造に具体化した第1実施形態について、
図1〜
図12を参照して説明する。
【0057】
図1(a)に示すように、車両には、後側ほど高くなるように傾斜した軸線L1を中心として回転するステアリングシャフト(操舵軸)14が設けられている。ステアリングシャフト14の後端部には、ステアリングホイール10が取付けられている。
【0058】
本明細書では、ステアリングホイール10の各部について説明する際には、軸線L1を基準とする。この軸線L1に沿う方向をステアリングホイール10の「前後方向」といい、軸線L1に直交する面に沿う方向のうち、ステアリングホイール10の起立する方向を「上下方向」というものとする。従って、ステアリングホイール10の前後方向及び上下方向は、車両の前後方向(水平方向)及び上下方向(鉛直方向)に対し若干傾いていることとなる。
【0059】
なお、
図2〜
図9、
図11及び
図12では、便宜上、ステアリングホイール10の前後方向が水平方向に合致し、同ステアリングホイール10の上下方向が鉛直方向に合致した状態で図示されている。この点は、第2実施形態における
図13〜
図16、及び従来技術における
図17についても同様である。
【0060】
図1(a),(b)及び
図6に示すように、ステアリングホイール10は、中央部分にエアバッグ装置(エアバッグモジュール)20を備えている。ステアリングホイール10の骨格部分は芯金12によって構成されている。芯金12は、鉄、アルミニウム、マグネシウム又はそれらの合金等によって形成されている。芯金12は、その中心部分においてステアリングシャフト14に取付けられており、同ステアリングシャフト14と一体となって回転する。
【0061】
芯金12において、中心部分の周囲の複数箇所には、それぞれ貫通孔12aを有する保持部12bが設けられている。各貫通孔12aの内壁面は、後側ほど拡径するテーパ状をなしている。
【0062】
各保持部12bの前側には、クリップ13が配置されている。クリップ13は、導電性を有するばね鋼等の金属からなる線材を所定形状に屈曲させることによって形成されており、その一部において芯金12に接触している。各クリップ13の一部は、貫通孔12aの前方近傍に位置している。
【0063】
車両にはホーン装置45が設けられている。ホーン装置45を、エアバッグ装置20に対する押圧操作により作動させるための複数(3つ)のホーンスイッチ機構30(
図2、
図4参照)が設けられている。各ホーンスイッチ機構30は、互いに同一の構成を有しており、各保持部12bにおいて、スナップフィット構造にて芯金12に装着されている。そして、これらのホーンスイッチ機構30を介してエアバッグ装置20が芯金12に支持されている。このように、各ホーンスイッチ機構30は、エアバッグ装置20を支持する機能と、ホーン装置45のスイッチ機能とを兼ね備えている。さらに、各ホーンスイッチ機構30は、エアバッグ装置20を利用してステアリングホイール10の振動を抑制、すなわち、制振する機能も有している。
【0064】
次に、エアバッグ装置20及びホーンスイッチ機構30の各々について説明する。
<エアバッグ装置20>
図3、
図4及び
図6に示すように、エアバッグ装置20は、パッド部24、リングリテーナ25、エアバッグ(図示略)及びインフレータ23を、バッグホルダ21に組付けることによって構成されている。
【0065】
パッド部24は、表面(後面)が意匠面をなす外皮部24aと、その外皮部24aの裏面側(前側)に立設された略四角環状の収容壁部24bとを有している。外皮部24aと収容壁部24bとバッグホルダ21とによって囲まれる空間は、主としてエアバッグを収容するためのバッグ収容空間xを構成している。外皮部24aのバッグ収容空間xを形成する部位には、エアバッグが展開及び膨張するときに押し破られる薄肉部24cが形成されている。
【0066】
収容壁部24bの前端部には、それぞれ矩形板状をなす複数の係止爪24dが形成されている。各係止爪24dの前端部には、バッグ収容空間xから遠ざかる側へ突出する係止突起24eが形成されている。
【0067】
パッド部24の複数箇所には、ホーンスイッチ機構30を後側から支持するためのスイッチ支持部24fがそれぞれ形成されている。各スイッチ支持部24fは、パッド部24の外皮部24aから裏面側(前側)へ延びるように、収容壁部24bと一体に形成されている。
【0068】
バッグホルダ21は、導電性を有する金属板をプレス加工することにより形成されている。これに代えて、バッグホルダ21は、導電性を有する金属材料を用い、ダイカスト成形等を行なうことにより形成されてもよい。バッグホルダ21は、上記ホーン装置45に電気的に接続されている。バッグホルダ21の周縁部は、パッド部24を固定するための略四角環状の周縁固定部21aとして構成されている。
【0069】
周縁固定部21aにおいて、上記各係止爪24dの前方となる箇所には、それぞれスリット状の爪係止孔21bが形成されており、ここに各係止爪24dの前端部が挿通されて係止されている。
【0070】
上記周縁固定部21aの内側部分は台座部21cを構成している。台座部21cの中心部には、円形状の開口部21dが形成されている。台座部21cであって、開口部21dの周縁部近傍の複数箇所には、それぞれねじ挿通孔21eが形成されている。台座部21cには、インフレータ23の一部が開口部21dに挿通された状態で取付けられている。
【0071】
より詳しくは、インフレータ23は低円柱状の本体23aを有しており、その本体23aの外周面にはフランジ部23bが形成されている。フランジ部23bには、複数の取付片23cが本体23aの径方向外方へ延出されている。各取付片23cにおいて、バッグホルダ21の上記ねじ挿通孔21eの前方となる箇所には、それぞれねじ挿通孔23dが形成されている。インフレータ23において、フランジ部23bよりも後方側となる部分は、膨張用のガスを噴出するガス噴出部23eとして構成されている。そして、インフレータ23のガス噴出部23eがバッグ収容空間x側に突出するように、前側からバッグホルダ21の開口部21dに挿通されている。さらに、フランジ部23bが開口部21dの周縁部に接触させられ、この状態で、インフレータ23はリングリテーナ25とともにバッグホルダ21に取付けられている。
【0072】
より詳しくは、リングリテーナ25は、バッグホルダ21の開口部21dと同等の円形状の開口部25aを有している。また、リングリテーナ25は、バッグホルダ21の各ねじ挿通孔21eの後方となる複数箇所に取付ねじ25bを有している。リングリテーナ25とバッグホルダ21との間には、展開及び膨張可能に折り畳まれた状態のエアバッグの開口部が配置されている。リングリテーナ25の複数の取付ねじ25bは、エアバッグの開口部の周縁部分に設けられたねじ挿通孔(図示略)と、バッグホルダ21及びインフレータ23の各ねじ挿通孔21e,23dとに対し、後側から挿通されている。さらに、挿通後の各取付ねじ25bに前側からナット26が締付けられることにより、エアバッグがリングリテーナ25を介してバッグホルダ21に固定されるとともに、インフレータ23がバッグホルダ21に固定されている。
【0073】
図4、
図7(a)及び
図10に示すように、バッグホルダ21の周縁固定部21aの複数箇所には、ホーンスイッチ機構30を取付けるための取付部21fが、円形の開口部21dの径方向外方へそれぞれ突出形成されている。各取付部21fは、上述したパッド部24のスイッチ支持部24fの前方となる箇所に位置している。各取付部21fには、その取付部21fを前後方向に貫通する取付孔21gが形成されている。バッグホルダ21の各取付孔21gの周辺の円環状の部分は、他の箇所よりも後方へ隆起されている。この部分を、バッグホルダ21の他の箇所と区別するために隆起部分21hというものとする。各取付孔21gの内壁面において、同取付孔21gの軸線L2を挟んで相対向する箇所には、被仮止め部としてそれぞれ切欠き部21iが形成されている。
【0074】
ここで、バッグホルダ21は、エアバッグ装置20の作動時には、膨張するエアバッグによって、開口部21dの周りの部分が隆起するように変形させられる。このとき、バッグホルダ21は、各取付部21fにおいて、取付孔21gを通る屈曲線LXに沿って屈曲させられる。開口部21dの中心と各取付孔21gの中心とを通る線は、開口部21dの内壁面と交差する。各屈曲線LXは、この交差する箇所での接線TLに対し、平行又は略平行の関係にある。取付孔21g毎の両切欠き部21iは、この屈曲線LXに対し交差する線LA上に形成されている。第1実施形態では、取付孔21g毎の両切欠き部21iは、屈曲線LXに対し直交する線LA上に形成されている。
【0075】
上記のように構成されたエアバッグ装置20は、ダイナミックダンパのダンパマスとして利用されている。
<ホーンスイッチ機構30>
図2、
図5及び
図7(b)に示すように、各ホーンスイッチ機構30は、スナップピン31、コンタクトホルダ32、可動側接点部33、ピンホルダ34、ダンパホルダ35、弾性部材36、異音抑制部37、弾性板状部38、支持補助部材41及び付勢部材を備えている。次に、ホーンスイッチ機構30の各構成部材について説明する。
【0076】
<スナップピン31>
スナップピン31は、導電性を有する金属材料によって形成されている。このスナップピン31の芯金12に対する支持構造については、後述する。スナップピン31は、上記ステアリングシャフト14の軸線L1に対し平行の関係にある軸線L3に沿って前後方向に延びる軸部31aを有している。軸部31aの後述する鍔部31d及び係止溝31bを除く大部分は、バッグホルダ21の取付孔21gの内径よりも小径状をなしている。スナップピン31は、この軸部31aにおいて取付孔21gに挿通されている。
【0077】
軸部31aの前端面から後方へ僅かに離れた箇所には、環状の係止溝31bが形成されている。軸部31aにおいて、その前端面と係止溝31bとによって挟まれた部分は、同軸部31aの支持部31cを構成している。
【0078】
軸部31aの後端外周部には、同軸部31aの他の部分よりも大径状をなす鍔部31dが形成されている。鍔部31dの外径は、上記取付孔21gの内径よりも大きく設定されている。
【0079】
スナップピン31の後端部、すなわち軸部31aの後端部及び鍔部31dは、固定側接点部を構成している。
<コンタクトホルダ32>
図5、
図7(b)及び
図8に示すように、コンタクトホルダ32は、絶縁性を有する硬質の樹脂材料により形成されている。コンタクトホルダ32は、略円板状をなす天板部32aと、その天板部32aの外周部から前方に延びる略円筒状の周壁部32bとを備えている。コンタクトホルダ32は、スナップピン31の鍔部31dを含む後部を覆っている。
【0080】
周壁部32bにおいて、軸線L3を中心として径方向に相対向する箇所には、それぞれ前後方向に延びる収容部32cが形成されている。各収容部32cの前端部には、周壁部32bの径方向外方へ突出する押圧片32dが形成されている。
【0081】
周壁部32bの隣り合う収容部32c間には、爪係合孔32e(
図2参照)が形成されている。爪係合孔32eは、周壁部32bの前後方向の中間部分に位置している。また、周壁部32bの前端部の隣り合う収容部32c間には切欠き部32f(
図2参照)が形成されている。
【0082】
<可動側接点部33>
可動側接点部33は、導電性を有する帯状のばね鋼をプレス加工することにより形成されている。可動側接点部33は、コンタクトホルダ32の径方向に延びる本体部33aと、同本体部33aの両端から前方へ延びる一対の側部33bと、各側部33bの前端から上記径方向の外方へ屈曲された一対の屈曲部33cとを備えている。
【0083】
本体部33aの長さ方向における複数箇所には、前側へ突出する複数の接触突部33dがそれぞれ形成されている。また、各屈曲部33cには、前側へ突出する接触突部33eが形成されている。
【0084】
本体部33aの後面であって、接触突部33dを除く部分の多くは、コンタクトホルダ32の天板部32aに接触している。各側部33bは、上記収容部32cに対し、係合した状態で接触している。この係合により、可動側接点部33はコンタクトホルダ32に位置決めされた状態で取付けられている。各屈曲部33cの接触突部33eは、コンタクトホルダ32の上記押圧片32dによって、隆起部分21hの周りでバッグホルダ21の取付部21fに押圧されている。
【0085】
<ピンホルダ34>
ピンホルダ34は、絶縁性を有する硬質の樹脂材料によって形成されている。ピンホルダ34の主要部は、前後両端が開放された略円筒状の筒状部34aによって構成されている。筒状部34aは、スナップピン31の軸部31aに前後方向へ摺動可能に被せられている。
【0086】
筒状部34aの外周部であって、前後方向における中間部分、より詳しくは、バッグホルダ21の取付孔21gよりも前方となる箇所には、同筒状部34aの径方向外方へ突出する円環状の受け部34bが形成されている。受け部34bは、後述するコイルばね42の後端部を受け止める機能を有している。また、受け部34bは、筒状部34aの外周部であって、後述する伝達部35fの直前となる箇所に形成されている。さらに、受け部34bの外径は、単に、コイルばね42の後端部を受け止めるために必要な寸法よりも大きく設定されている。受け部34bのこうした形成位置及び外径に関する設定により、受け部34bは、ダンパホルダ35の前方への動きが伝達部35fを通じて伝達される被伝達部も兼ねている。
【0087】
筒状部34aの後端部外周には、ピンホルダ34に対し弾性部材36が後方へ動くのを規制する円環状の規制部34cが全周にわたって設けられている。
筒状部34aの外周部であって、受け部34bと、そこから一定距離後方へ離れた箇所との間の領域には、凹部として、深さの均一な環状凹部34dが形成されている。環状凹部34dの最深部の径、すなわち、ピンホルダ34の筒状部34aにおいて、環状凹部34dが形成されることで、外径の小さくなっている箇所でのその外径は、弾性部材36における弾性本体部36aの内径よりも小さくなっている。
【0088】
こうした構成のピンホルダ34の少なくとも後部は、上記コンタクトホルダ32によって後方から覆われている。
<ダンパホルダ35>
ダンパホルダ35は、絶縁性を有する硬質の樹脂材料によって形成されている。ダンパホルダ35は、ピンホルダ34の一部を覆った状態でエアバッグ装置20に取付けられている。ダンパホルダ35の主要部は、底壁部35aと、その底壁部35aの外周部から後方へ延びる円筒状の周壁部35bとによって構成されている。
【0089】
底壁部35aの内周部は、上述した受け部34bの後方に位置している。底壁部35aの前面において、軸線L3を挟んで相対向する2箇所には、バッグホルダ21の対応する切欠き部21iに対し、ダンパホルダ35を一時的に保持する仮止め部が形成されている。この仮止め部は、第1実施形態では、対応する切欠き部21iに係止される仮止め爪35cによって構成されている。
【0090】
周壁部35bは、スナップピン31の鍔部31dの外径よりも大きな外径を有している。
周壁部35bの互いに周方向に離間した複数箇所には、係合爪35dが形成されている(
図5参照)。これらの係合爪35dが、コンタクトホルダ32の対応する爪係合孔32eに内側から係合されることで、ダンパホルダ35がコンタクトホルダ32に取付けられている。
【0091】
周壁部35bの前端外周部であって、上記係合爪35dから周方向に離間した箇所にはストッパ35eが形成されている。ストッパ35eがコンタクトホルダ32の対応する切欠き部32fに係合されることで、ダンパホルダ35のコンタクトホルダ32に対する前後方向の位置決めがなされている(
図2参照)。
【0092】
底壁部35aの内周部からは、円環状の伝達部35fが前方へ向けて突出している。この伝達部35fは、ダンパホルダ35の一部として設けられており、バッグホルダ21の取付孔21gに挿通されている。
【0093】
こうした構成のダンパホルダ35の大部分は、上記コンタクトホルダ32によって後方から覆われている。
<弾性部材36>
弾性部材36は、円環状の弾性本体部36aを有している。第1実施形態では、弾性部材36の全体がこの弾性本体部36aによって構成されている。弾性部材36は、ゴム(例えば、EPDM、シリコンゴム等)、エラストマー等の弾性材料によって形成されている。
【0094】
弾性本体部36aは、ピンホルダ34の筒状部34a及び規制部34cと、ダンパホルダ35の周壁部35b及び底壁部35aとによって囲まれた環状の空間に配置されている。弾性本体部36aの配置箇所は、伝達部35f及び環状凹部34dよりも後方である。
【0095】
弾性本体部36aは、その内周面において筒状部34aに接触し、外周面において周壁部35bに接触している。弾性本体部36aは、その前面において底壁部35aに接触し、後面の一部(内周部分)において規制部34cに接触している。
【0096】
上記弾性部材36の弾性本体部36aは、ダイナミックダンパのばねとして利用されている。そして、弾性本体部36aの大きさ(径方向及び前後方向の各寸法等)をチューニングすることで、ダイナミックダンパにおける上下方向や左右方向の共振周波数が、ステアリングホイール10の上下方向や左右方向の振動について、狙いとする制振の周波数、換言すると、制振したい周波数に設定されている。
【0097】
こうした構成の弾性部材36の全体もまた、上記コンタクトホルダ32によって後方から覆われている。
<異音抑制部37及び弾性板状部38>
異音抑制部37は、上記ダンパホルダ35の伝達部35fとピンホルダ34の筒状部34aとが直接接触して異音を発生するのを抑制するためのものであり、同伝達部35fから内側(径方向内方)へ離間した箇所に配置されている。伝達部35fと異音抑制部37との間は、空隙部G1を構成している。異音抑制部37は、ピンホルダ34よりも軟質の材料、ここでは、弾性部材36と同様の材料によって形成されている。異音抑制部37は、円環状に形成されており、ピンホルダ34の上記環状凹部34dに対し、嵌合された状態で取付けられている。異音抑制部37は、環状凹部34dの最深部の径と略同じであって、弾性本体部36aの内径よりも小さな内径を有している。また、異音抑制部37は、弾性本体部36aの内径と同じ外径を有している。異音抑制部37が環状凹部34dに取付けられた状態では、その異音抑制部37の外周面は、弾性本体部36aの内周面と同一面上に位置している。
【0098】
弾性板状部38は、受け部34bよりも軟質の材料によって、ここでは、弾性部材36と同様の軟質材料によって円環板状に形成されている。異音抑制部37の前端部は、空隙部G1と受け部34bとの間に位置しているところ、弾性板状部38はこの異音抑制部37の前端部の外周に一体に形成されていて、伝達部35f及び受け部34bの間に介在されている。弾性板状部38は、伝達部35f及び受け部34bの両方に接触している。表現を変えると、伝達部35fは、弾性板状部38を介して受け部34bに間接に接触されている。
【0099】
異音抑制部37は、第1実施形態では、ピンホルダ34の環状凹部34dに固着された状態で一体に形成されている。弾性板状部38は、ピンホルダ34の受け部34bに固着された状態で一体に形成されている。こうした一体形成は、例えば、ピンホルダ34をインサート部材として金型内に配置し、そのピンホルダ34の環状凹部34dの外側と受け部34bの後側とに弾性材料を注入する、いわゆるインサート成形が行なわれることによって可能である。
【0100】
<支持補助部材41>
図5、
図6及び
図7(b)に示すように、支持補助部材41は、絶縁性を有する硬質の樹脂材料によって形成されている。支持補助部材41の一部は、円環板状をなす受け部41aによって構成されている。受け部41aの外径は、貫通孔12aの内壁面における後端部の外径、すなわち、テーパ状の内壁面における最大径と同程度に設定されている。
【0101】
受け部41aの周方向に互いに離間した複数箇所からは、前方へ向けて係止片41bがそれぞれ延びている。各係止片41bの前端部には、爪部41cが径方向内方へ突設されている。また、受け部41aにおいて、周方向に隣り合う係止片41b間からは、前方へ向けて複数の係合片41dが延びている。各係合片41dの外側面の少なくとも一部は、後側ほど拡径するテーパ面の一部を構成している。
【0102】
受け部41aからは、一対の装着部41eが後方へ向けて延びている。各装着部41eは、スナップピン31の軸部31aの外形形状に対応して、受け部41aの径方向外方へ膨らむように湾曲形成されている。
【0103】
支持補助部材41は、受け部41a及び両装着部41eにおいてスナップピン31の軸部31aに嵌合され、かつ各爪部41cが係止溝31bに入り込むことにより、同スナップピン31に脱落不能に装着されている。上記のように、支持補助部材41では、複数の係合片41dの外側面が複数の係止片41bを挟んで、周方向に間欠的に配置されている。こうした構成により、支持補助部材41は、全体として、後側ほど拡径するテーパ状の外周面を有するものと同様な形態を有している。
【0104】
<付勢部材>
付勢部材は、エアバッグ装置20をステアリングホイール10から後方へ遠ざけるように付勢するためのものであり、スナップピン31の軸部31aの周りに巻回されたコイルばね42によって構成されている。コイルばね42は、ピンホルダ34の受け部34bと、支持補助部材41の受け部41aとの間に、圧縮させられた状態で配置されている。
【0105】
このようにして、複数の単体部品によってユニット化されて、アセンブリとされたホーンスイッチ機構30が構成されている。そのため、ホーンスイッチ機構30の取付けや交換の際に、ユニット化されたホーンスイッチ機構30を1つの集合体として扱うことが可能である。
【0106】
各ホーンスイッチ機構30をバッグホルダ21に取付ける際には、
図7(a)に示すように、各ホーンスイッチ機構30の一部(前後方向における前部及び中間部)が、バッグホルダ21の取付孔21gに後方から挿入される。この挿入は、ダンパホルダ35における一対の仮止め爪35cを、取付孔21gの対応する切欠き部21iの後方に位置させた状態で行なわれる。
【0107】
この挿入に伴い、
図9において矢印で示すように、各仮止め爪35cが対応する切欠き部21iに接近する。また、可動側接点部33の接触突部33eを含む屈曲部33cと、コンタクトホルダ32における押圧片32dとが、バッグホルダ21において隆起部分21hの周辺となる箇所に接近する。
【0108】
ダンパホルダ35における伝達部35f及び仮止め爪35cは一緒に取付孔21gに挿入される。そして、仮止め爪35cが切欠き部21iを通過する際に、その切欠き部21iの内壁との接触により仮止め爪35cが取付孔21gの内方へ弾性変形させられる。
【0109】
ホーンスイッチ機構30の上記挿入が、ダンパホルダ35における底壁部35aがバッグホルダ21の隆起部分21hに接触する位置まで行なわれると、
図8に示すように、仮止め爪35cが切欠き部21iを通過する。仮止め爪35cは、弾性復元力により元の形状に戻り、切欠き部21iの周辺部分においてバッグホルダ21に対し一時的に保持(仮止め)される。この仮止めにより、ホーンスイッチ機構30がバッグホルダ21から脱落することを規制されるとともに、バッグホルダ21に対し回転することを規制される。
【0110】
また、このときには、可動側接点部33の屈曲部33cが、コンタクトホルダ32の押圧片32dによって押圧されて、隆起部分21hの周囲でバッグホルダ21の取付部21fに押付けられる。この押付けにより、屈曲部33cが弾性変形させられた状態で、接触突部33eがバッグホルダ21に接触させられて、バッグホルダ21と可動側接点部33とが導通した状態に保持される。可動側接点部33及びバッグホルダ21の形状や大きさにばらつきがあっても、そのばらつきを屈曲部33cの弾性変形によって吸収することができ、可動側接点部33とバッグホルダ21との接触状態を確保することができる。
【0111】
なお、
図4を用いて説明したように、エアバッグ装置20の組付けに際し、パッド部24の係止爪24dがバッグホルダ21の爪係止孔21bに係止されることで、パッド部24がバッグホルダ21に取付けられる。
図3に示すように、パッド部24のスイッチ支持部24fがコンタクトホルダ32の天板部32aに接触することで、各ホーンスイッチ機構30は、パッド部24とバッグホルダ21とによって挟み込まれる。
【0112】
この状態では、
図6に示すようにピンホルダ34が、スナップピン31とバッグホルダ21との接触を防ぎつつ、すなわち絶縁状態にしつつ、バッグホルダ21をスナップピン31に対し前後方向へ摺動可能に支持する。また、ピンホルダ34が、コイルばね42の後ろ向きの付勢力を、鍔部31dを通じてスナップピン31に伝達する。
【0113】
次に、上記複数のホーンスイッチ機構30を介してエアバッグ装置20を芯金12に組付ける作業について説明する。
この作業に際しては、ホーンスイッチ機構30毎のスナップピン31が芯金12において対応する保持部12bの貫通孔12aに後方から挿入される。この挿入に伴い、支持補助部材41の受け部41aが保持部12bに接近し、係合片41dが貫通孔12aの内壁面に接近する。また、スナップピン31における支持部31cがクリップ13に接触する。さらに、クリップ13の付勢力に抗してスナップピン31等が前方へ移動されると、クリップ13がスナップピン31の径方向外方へ弾性変形させられる。そして、係止溝31bがクリップ13に対向する箇所までスナップピン31が移動されると、クリップ13が自身の弾性復元力により係止溝31bに入り込もうとする。
【0114】
一方、係止溝31b内には、コイルばね42によって前方へ付勢された支持補助部材41の爪部41cが入り込んでいる。そのため、クリップ13は、係止溝31b内に入り込む過程で、コイルばね42を後方へ圧縮させながら、爪部41cと支持部31cとの間に入り込む。この入り込みにより、係止溝31b内では、爪部41cがクリップ13の後側に位置する。クリップ13において、貫通孔12aの前方に位置する部分は、支持部31cと、コイルばね42によって前方へ付勢された爪部41cとによって前後から挟み込まれる。このようにして、スナップピン31がクリップ13によって芯金12に係止されることで、各ホーンスイッチ機構30の芯金12に対する締結と、エアバッグ装置20の芯金12に対する装着とが行なわれる。スナップピン31が、貫通孔12aへの挿通に伴いクリップ13の弾性によって芯金12に係止される構造は、スナップフィット構造と呼ばれる。
【0115】
次に、上記のようにして構成された第1実施形態の作用及び効果について、状況毎に分けて説明する。
車両に対し、前面衝突(前突)等による前方からの衝撃が加わらないとき(通常時)には、エアバッグ装置20では、インフレータ23のガス噴出部23eからガスが噴出されず、エアバッグが折り畳まれた状態に維持される。
【0116】
<エアバッグ装置20の非押下げ時>
図5及び
図6に示すように、上記通常時において、エアバッグ装置20が押下げられない場合には、コイルばね42の後方へ向かう付勢力が、受け部34bにおいてピンホルダ34に伝達される。後方へ付勢されたピンホルダ34は、クリップ13によって芯金12に係止されスナップピン31の鍔部31dに接触し、それ以上後方へ移動することを規制される。また、上記接触を通じ、コイルばね42の後ろ向きの付勢力が、鍔部31dを通じてスナップピン31に加わる。
【0117】
また、上記付勢力は、ダンパホルダ35を介して、バッグホルダ21及びコンタクトホルダ32に伝達される。コンタクトホルダ32に伝達された付勢力は、スイッチ支持部24fに伝達される。このようにして付勢力が伝達されたエアバッグ装置20は、ステアリングホイール10から後方へ遠ざけられる。
【0118】
これに伴い、コンタクトホルダ32に取付けられた可動側接点部33も後方へ付勢され、接触突部33dが、スナップピン31の後端部によって構成される固定側接点部から後方へ離間する。可動側接点部33及びスナップピン31が導通を遮断された状態となり、ホーン装置45が作動しない。
【0119】
また、コイルばね42の前向きの付勢力が、受け部41aを通じて支持補助部材41に加わり、同支持補助部材41においてスナップピン31の係止溝31b内に入り込んだ爪部41cが、同係止溝31b内のクリップ13を前方へ押圧する。この押圧により、クリップ13は、支持部31cと爪部41cとによって前後から挟み込まれ、動きを規制される。
【0120】
このとき、エアバッグ装置20の荷重は、主としてコンタクトホルダ32、ダンパホルダ35及び弾性部材36を介してピンホルダ34に伝わる。
そのため、上記通常時であって、車両の高速走行中や車載エンジンのアイドリング中に、ステアリングホイール10に対し、上下方向や左右方向の振動が伝わると、この振動は、芯金12及び各ホーンスイッチ機構30を介してエアバッグ装置20に伝わる。より具体的には、上記振動は、スナップピン31、ピンホルダ34、弾性部材36及びダンパホルダ35を介して、コンタクトホルダ32及びバッグホルダ21に伝達される。
【0121】
上記のように振動が伝わると、その振動に応じて、エアバッグ装置20がダイナミックダンパのダンパマスとして機能する。また、弾性部材36の弾性本体部36aは、ステアリングホイール10の振動の狙いとする周波数と同一又は近い共振周波数で弾性変形しながら、エアバッグ装置20を伴って上下方向や左右方向へ振動(共振)することで、ダイナミックダンパのばねとして機能する。この共振により、ステアリングホイール10の振動エネルギーが吸収され、ステアリングホイール10の上記方向の各振動が抑制(制振)される。
【0122】
また、ピンホルダ34の筒状部34aと伝達部35fとの間に空隙部G1が形成されていることにより、弾性本体部36aは、径方向へ圧縮されて変形した場合、この空隙部G1に入り込むことが可能である。弾性本体部36aは、空隙部G1の形成されていないものに比べ、軸線L3に沿う方向へ弾性変形しやすくなる。従って、狙いとする共振周波数で弾性本体部36aを弾性変形させながらエアバッグ装置20を伴って振動させることが容易となる。
【0123】
また、空隙部G1が形成されていないものに比べ、伝達部35fが筒状部34aに接触しにくくなる。接触に伴い異音が発生することが起こりにくい。
また、ピンホルダ34よりも軟質の材料からなる異音抑制部37は、伝達部35fと筒状部34aが直接接触するのを抑制する。異音抑制部37は、伝達部35fとの接触により弾性変形することで、接触に伴う異音の発生を抑制する。
【0124】
なお、弾性板状部38は、厚みが小さいとはいえ、多少なりとも弾性を有している。そのため、弾性板状部38が伝達部35fと受け部34bとの間に介在されることで、硬質の伝達部35fと硬質の受け部34bとが直接接触することが抑制され、硬いもの同士の接触による異音の発生が抑制される。
【0125】
さらに、ピンホルダ34の外周面から突出する受け部34bと、バッグホルダ21における取付孔21gの周辺部分との間に環状の空隙部G2が形成される。そのため、エアバッグ装置20が振動したときに、受け部34bと、取付孔21gの上記周辺部分とが干渉することを抑制される。
【0126】
<エアバッグ装置20の押下げ時>
上記通常時において、ホーン装置45の作動のためにエアバッグ装置20が押下げられると、
図11に示すように、同エアバッグ装置20に加えられた力が、少なくとも1つのホーンスイッチ機構30におけるコンタクトホルダ32を介して可動側接点部33及びダンパホルダ35に伝達される。伝達部35fを含むダンパホルダ35が押圧されて前方へ移動する。この伝達部35fの前方への動きは、同伝達部35fの直前に位置する受け部34bに対し、弾性板状部38を介して間接に伝達される。受け部34bは、コイルばね42の後ろ向きの付勢力を受ける機能に加え、ダンパホルダ35(伝達部35f)から伝達される前方へ向かう力を受ける機能も発揮する。
【0127】
この力の伝達により、ピンホルダ34がコイルばね42に抗して、スナップピン31の軸部31a上を前方へ摺動させられる。また、コンタクトホルダ32と一緒に可動側接点部33が前方へ移動する。このときには、エアバッグ装置20が押下げられるに従いコイルばね42が圧縮されて反発力が増加するため、操作荷重が増加していき、操作フィーリングが良好なものとなる。
【0128】
なお、上記のように、弾性板状部38が伝達部35fと受け部34bとの間に介在される場合には、伝達部35fの前方への動きが、空隙部G1よりも前側の弾性板状部38を介して受け部34bに間接に伝達される。弾性板状部38が伝達部35fによって前方へ押されて弾性変形させられる。この際、仮に弾性板状部38が多く弾性変形すると、エアバッグ装置20を押下げたにも拘らず操作荷重が思ったほど増加せず、操作フィーリングが損なわれる。
【0129】
しかし、第1実施形態では、弾性板状部38が板状に形成されていて、厚みが小さいことから、同弾性板状部38の弾性変形量は僅かである。そのため、弾性板状部38の弾性変形が、エアバッグ装置20を押下げ操作したときの操作フィーリングに及ぼす影響は僅かである。
【0130】
また、このとき、弾性部材36がピンホルダ34に対し後方へ動くことが、同ピンホルダ34の後端部の規制部34cによって規制される。弾性部材36は、ピンホルダ34とダンパホルダ35との間に配置された状態に保持される。そのため、エアバッグ装置20が押下げられて、ダンパホルダ35及びピンホルダ34が前方へ移動された場合には、それらに追従させて弾性部材36も前方へ移動させることができる。弾性部材36がその場にとどまるのを抑制することができる。
【0131】
そして、可動側接点部33の複数の接触突部33dの少なくとも1つが、スナップピン31の後端面に接触すると、グランドGND(車体アース)に接続された芯金12とバッグホルダ21とが、クリップ13、スナップピン31及び可動側接点部33を介して導通される。この導通により、ホーンスイッチ機構30が閉成し、バッグホルダ21に電気的に接続されたホーン装置45が作動する。
【0132】
<エアバッグ装置20の作動時>
前突等により車両に対し前方から衝撃が加わると、慣性により運転者が前傾しようとする。一方、エアバッグ装置20では、前記衝撃に応じインフレータ23が作動させられ、ガス噴出部23eからガスが噴出される。このガスがエアバッグに供給されることで、同エアバッグが展開及び膨張する。このエアバッグにより、パッド部24の外皮部24aに加わる押圧力が増大していくと、同外皮部24aが薄肉部24cにおいて破断される。破断により生じた開口を通じてエアバッグが後方へ向けて引き続き展開及び膨張する。前突の衝撃により前傾しようとする運転者の前方に、展開及び膨張したエアバッグが介在し、運転者の前傾を拘束し、運転者を衝撃から保護する。
【0133】
上記エアバッグの後方への膨張に際しては、バッグホルダ21に対し後方へ向かう力が加わる。一方で、各スナップピン31の後端部に形成された鍔部31dは、バッグホルダ21の取付孔21gよりも後方に位置している。しかも、鍔部31dは、取付孔21gの内径よりも大きな外径を有している。そのため、この鍔部31dは、バッグホルダ21が後方へ動いた場合、そのバッグホルダ21において取付孔21gの周辺部分の後方に位置することでストッパとして機能する。従って、バッグホルダ21ひいてはエアバッグ装置20が過度に後方へ動く現象が、スナップピン31の鍔部31dによって良好に規制される。
【0134】
特に、第1実施形態では、鍔部31dの上記ストッパ機能により、バッグホルダ21において、他の箇所よりも後方へ隆起している隆起部分21hが、
図12において二点鎖線で示すように、平らな形状に変形しようとする。この変形に伴い、同
図12において矢印で示すように、取付孔21gも孔径が小さくなるように変形する。鍔部31dと取付孔21gの周辺部分とのオーバラップする領域が拡大し、鍔部31dがバッグホルダ21の後方へ向かう動きを規制する性能が高まる。その結果、バッグホルダ21がスナップピン31から抜けるのを抑制する性能を高めることができる。
【0135】
ここで、上記異音抑制部37は、スナップピン31の軸部31a、ピンホルダ34の筒状部34a、ダンパホルダ35の伝達部35f及び空隙部G1と同様、取付孔21g内に位置していて、取付孔21gの孔径に影響を及ぼす。
【0136】
第1実施形態では、異音抑制部37の内径を弾性本体部36aの内径よりも小さくすることで、異音抑制に必要な厚みを確保しつつ、同異音抑制部37の外径を、弾性本体部36aの内径と同一にしている。そのため、異音抑制部37の内径を、異音抑制部56cが弾性本体部56aの内周部に設けられた場合(特許文献1:
図17)におけるその異音抑制部56cの内径(弾性本体部56aの内径と同じ内径)よりも小さくすることができる。また、異音抑制部37の外径を、上記特許文献1における異音抑制部56cの外径よりも小さくすることができる。
【0137】
こうすることにより、異音抑制部56cが弾性本体部56aの内径と同じ内径を有する上記特許文献1に比べると、異音抑制部37の外周面、同異音抑制部37の外側の空隙部G1及び伝達部35fが、スナップピン31の軸部31aに対し、より近い箇所に位置することになる。その結果、取付孔21gの孔径を小さくすることが可能となる。取付孔21gの孔径が小さくなることで、その孔径とスナップピン31の鍔部31dの外径との差が大きくなる。
【0138】
従って、上記のように、鍔部31dと取付孔21gの周辺部分とのオーバラップする領域が大きくなり、鍔部31dがバッグホルダ21の後方へ向かう動きを規制する性能が高まる。その結果、バッグホルダ21がスナップピン31から抜けるのを抑制する性能を高めることができる。
【0139】
ところで、ホーンスイッチ機構30毎のスナップピン31は、芯金12(保持部12b)に支持されることにより、ステアリングホイール10に取付けられている。そのため、エアバッグの後方への膨張に際し、バッグホルダ21に対し後方へ向かう力が加わっても、スナップピン31は後方へ動かない。バッグホルダ21では、開口部21dの周辺部分が後方へ隆起するように変形しようとする。この変形の際、各取付部21fには、各取付孔21gを通る屈曲線LX(
図10参照)に沿って同取付部21fを屈曲させようとする力が加えられる。
【0140】
仮に、取付孔21g毎の一対の切欠き部21iが上記屈曲線LX上に位置していると、取付部21fが屈曲線LXに沿って屈曲させられたときに、取付孔21gが両切欠き部21iを起点として大きく拡がり、スナップピン31が取付孔21gから抜け出るおそれがある。
【0141】
この点、取付孔21g毎の一対の切欠き部21iが、屈曲線LXに対し交差する線LA上に形成されている第1実施形態では、取付部21fが屈曲線LXに沿って屈曲しても、取付孔21gが両切欠き部21iを起点として大きく拡がることが起こりにくい。従って、スナップピン31が取付孔21gから抜け出るのを抑制することができる。特に、第1実施形態では、線LAが屈曲線LXに対し直交しているため、両切欠き部21iを起点として取付孔21gが拡がることが最も起こりにくく、スナップピン31を取付孔21gから最も抜け出にくくすることができる。
【0142】
<ホーンスイッチ機構30の小型化について>
エアバッグ装置20が乗員によって手前側に引上げられて、同エアバッグ装置20に対し、後方へ向かう力が加えられる場合も想定される。この場合、その力はダンパホルダ35にも伝わる。一方、ピンホルダ34はスナップピン31の鍔部31dに接触し、後方への移動を規制される。そのため、ダンパホルダ35が弾性本体部36aを弾性変形させながら後方へ移動する。
【0143】
ここで、仮に、ダンパホルダ35から弾性本体部36aへの上記力の伝達が、特許文献1の説明に用いられた
図17に示すように、周壁部55bの後端部のみで行なわれると、上記引上げに伴い、弾性本体部56aの一部が同周壁部55bの後端部と鍔部53bとの間に入り込み、制振性能に影響を及ぼすおそれがある。これを解消するには、鍔部53bを拡径して、周壁部55bの後端部との隙間を小さくすることが考えられるが、背反事項として、支持構造の大型化を招くおそれがある。これは、鍔部53bが拡径されると、その鍔部53bとの径方向の隙間を確保するために、スナップピン53を後方から覆うコンタクトホルダ58の外径も大きくなり、結果として、支持構造の径方向の寸法が大きくなるためである。
【0144】
この点、第1実施形態では、
図8に示すように、ダンパホルダ35から弾性本体部36aへの上記力の伝達が、周壁部35bよりも内側の底壁部35aにおいて行なわれる。しかも、この力の伝達に関わる領域は、その伝達が
図17の周壁部55bの後端部のみで行なわれる場合よりも広い。そのため、弾性本体部36aの一部が周壁部35bの後端部と鍔部31dとの間に入り込む現象が起こりにくい。その結果、ダンパホルダ35が後方へ過度に移動することが原因で制振性能が影響を受けることが起こりにくい。
【0145】
鍔部31dを拡径しなくてもすむため、ホーンスイッチ機構30の径方向のサイズを小さくすることができる。その結果、エアバッグ装置20のステアリングホイール10に対する支持構造の小型化を図ることができる。
【0146】
また、各ホーンスイッチ機構30の小型化に伴い、複数のホーンスイッチ機構30を互いに接近させ、エアバッグ装置20の取付けに要するスペースを小さくすることができる。従って、エアバッグ装置20の小型化を図ることが容易となる。エアバッグ装置20を小型化したいといった要請があった場合にも対応することができる。
【0147】
<その他>
上記の引上げにより、エアバッグ装置20に対し、後方へ向かう力が加えられた場合、その力を底壁部35aで受けるようにしたことから、その力を周壁部55bの後端部で受ける場合(特許文献1:
図17)よりも、周壁部35bの内径を大きくして厚みを小さくすることができる。その分、弾性本体部36aの外径を大きくして内径との差(厚み)を大きくすることができる。その結果、制振できる周波数帯域の設定がしやすくなる。
【0148】
(第2実施形態)
次に、エアバッグ装置の支持構造を具体化した第2実施形態について、
図13〜
図16を参照して説明する。
【0149】
ここで、仮に、上記第1実施形態における空隙部G1の全体が弾性材料によって埋められると、弾性本体部36aの弾性変形に伴い生ずる反発力に、空隙部G1を埋めた弾性材料による反発力が加わって、弾性本体部36aが弾性変形しにくくなる。その結果、弾性本体部36aによって抑制される振動の周波数特性が影響を受けて不安定になるおそれがある。
【0150】
これに対し、第1実施形態のように、環状の空隙部G1が設けられると、同空隙部G1を埋める上記弾性材料による反発力の付加がなく、弾性材料が原因で弾性本体部36aが弾性変形しにくくなることが抑制される。弾性本体部36aが弾性変形しながらエアバッグ装置20を伴って振動しやすく、ステアリングホイール10の狙いとする方向(上下方向や左右方向)の振動が抑制されやすい。
【0151】
反面、エアバッグ装置20が、
図13において二点鎖線の矢印で示すように、弾性部材36を支点として揺動するおそれがある。この場合、振動の周波数特性が上記揺動の影響を受けて不安定になるおそれがある。
【0152】
そこで、第2実施形態では、第1実施形態の構成に加え、
図13及び
図14に示すように、空隙部G1の周方向に互いに離間した複数の箇所にリブ43が設けられている。各リブ43は、弾性を有しており、空隙部G1の上記箇所を埋めている。各リブ43は、異音抑制部37と同一の材料によって、同異音抑制部37に一体に形成されている。
図15(a),(b)に示すように、各リブ43は異音抑制部37の外周面において、上記軸線L3の周りの4箇所以上の偶数箇所(第2実施形態では8箇所)に、等角度毎に形成されている。各リブ43は、他の1つのリブ43に対し軸線L3を挟んで対向する箇所に位置している。
【0153】
各リブ43の前端面43aは、弾性板状部38から後方へ離間している。リブ43毎の前端面43aは、前側ほど異音抑制部37に近づくように、スナップピン31の軸線L3に対し傾斜している。これに対し、リブ43毎の後端面43bは、後側ほど異音抑制部37に近づくように、上記軸線L3に対し傾斜している。従って、各リブ43における前端面43a及び後端面43bは互いに反対方向へ傾斜していることになる。軸線L3に対し各後端面43bがなす角度と、各前端面43aがなす角度とは同一でもよいし、異なっていてもよい。
【0154】
図14に示すように、各リブ43の外周面は、ダンパホルダ35の上記伝達部35fの内周面に対し、面接触又は接近している。
また、第2実施形態では、ピンホルダ34における筒状部34aの後端部に規制部34cが設けられていない。
【0155】
上記以外の構成は、第1実施形態と同様である。そのため、第1実施形態で説明したものと同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
第2実施形態は、複数のリブ43が設けられた点以外では、第1実施形態と共通している。そのため、第2実施形態は、基本的には、第1実施形態と同様の作用及び効果を奏する。
【0156】
そのほかにも、第2実施形態では、空隙部G1を埋める各リブ43が、同空隙部G1の周方向に互いに離間した複数箇所に設けられるにとどまる。そのため、空隙部G1の全体がリブ43によって埋められた場合に比べると、リブ43の追加に伴う反発力の増加が少ない。リブ43の追加が原因で弾性本体部36aが弾性変形しにくくなる程度が小さくなる。その結果、弾性本体部36aによって抑制される振動の周波数特性を安定させることができる。
【0157】
また、複数のリブ43が設けられることで、エアバッグ装置20が弾性本体部36aを支点として、
図13において二点鎖線で示す方向へ揺動することが規制される。エアバッグ装置20の上記揺動が振動の周波数特性に及ぼす影響は小さくなる。その結果、振動の周波数特性を、空隙部G1が全部埋められる場合、及び全く埋められない場合よりも安定させることができる。
【0158】
特に、各リブ43は、他の1つのリブ43に対し軸線L3を挟んで対向する箇所に位置する。このことから、弾性部材36を支点とするエアバッグ装置20の揺動を規制する機能と、リブ43の追加に伴う反発力の増加を抑制する機能とを、軸線L3を挟んで相対向する箇所で、すなわち、振動方向の両側でバランスよく発揮させることができる。
【0159】
また、複数(8つ)のリブ43が軸線L3の周りで等角度毎に配置されているため、振動の周波数特性を安定させる上記効果を、異音抑制部37及びピンホルダ34の周方向の組付け位置に拘わらず得ることができる。
【0160】
また、各リブ43の一部は、上下方向や左右方向へ圧縮されて弾性変形したとき、前方に膨出するように弾性変形しようとする。ここで、仮に、各リブ43が、そのリブ43の前側に位置する弾性板状部38に繋がっていると、この弾性板状部38が、各リブ43の前方への弾性変形を妨げようとする。
【0161】
しかし、第2実施形態では、各リブ43が、弾性板状部38から後方へ離間している。各リブ43と弾性板状部38との間の隙間により、同リブ43が前側へ弾性変形しやすくなる。そのため、弾性本体部36aにより抑制される振動の周波数特性に対し、各リブ43が及ぼす影響を小さくすることができる。
【0162】
また、各リブ43は、弾性部材36とは別の部材である、異音抑制部37に形成されている。各リブ43及び弾性部材36は、互いの材料から制約を受けない。そのため、各リブ43及び弾性部材36の材料の選択の自由度が高くなり、それぞれ要求される性能を満たす硬さを有する弾性材料を用いて形成することができる。
【0163】
また、異音抑制部37の形成時に全てのリブ43が一緒に形成される。そのため、各リブ43と異音抑制部37とが別々に形成される場合には、それぞれの形成後に、各リブ43を異音抑制部37に固定する必要があるが、そうした固定のための作業が、第2実施形態では不要となる。
【0164】
さらに、各リブ43の後端面43bが、後側ほど異音抑制部37に近づくように、軸線L3に対し傾斜することで、同リブ43の後端面43bが同軸線L3に対し直交する場合に比べ、各リブ43が小さくなる。これに伴い、各リブ43の剛性が小さくなり、弾性本体部36aの弾性変形に伴い生ずる反発力に、各リブ43によって加わる反発力が小さくなる。各リブ43の後端面43bが上記軸線L3に対し直交する場合に比べ、弾性本体部36aが弾性変形しやすくなる。その結果、振動の周波数特性をより安定させることができる。
【0165】
同様に、各リブ43の前端面43aが、前側ほど異音抑制部37に近づくように、上記軸線L3に対し傾斜することで、同リブ43の前端面43aが同軸線L3に対し直交する場合に比べ、各リブ43が小さくなる。これに伴い、各リブ43の剛性が小さくなり、弾性本体部36aの弾性変形に伴い生ずる反発力に、各リブ43によって加わる反発力が小さくなる。各リブ43の前端面43aが上記軸線L3に対し直交する場合に比べ、弾性本体部36aが弾性変形しやすくなる。その結果、振動の周波数特性をより安定させることができる。
【0166】
ところで、
図13に示すように、異音抑制部37を伝達部35fの内側に配置するためには、
図16に示すように、異音抑制部37の取付けられたピンホルダ34が、その後端部側から、弾性部材36の取付けられたダンパホルダ35に挿通される。この場合には、各リブ43が伝達部35fと干渉するおそれがある。
【0167】
この点、第2実施形態では、各リブ43の後端面43bが上記のように傾斜していることから、各リブ43の後端部の異音抑制部37からの突出量が、同リブ43の後端において最少となり、前側ほど多くなる。各リブ43の後端部が伝達部35fの前端部と干渉しにくい。従って、各リブ43の後端部を伝達部35fに挿入しやすくし、組付け性を向上させることができる。
【0168】
なお、上記各実施形態は、これを以下のように変更した変形例として実施することもできる。
<バッグホルダ21について>
・
図10において、取付孔21g毎の両切欠き部21iは、屈曲線LXに対し90°以外の角度で交差する線LA上に形成されてもよい。
【0169】
<ピンホルダ34について>
・ピンホルダ34の筒状部34aにおける被伝達部は、受け部34bとは別の箇所に設けられてもよい。
【0170】
・被伝達部(受け部34b)は、筒状部34aに一体に形成されてもよいが、別体で形成されてもよい。
・規制部34cは、ピンホルダ34における筒状部34aの後端部に設けられて、ピンホルダ34に対し弾性部材36が後方へ動くのを規制することを条件に、第1実施形態とは異なる構成を有するものに変更されてもよい。例えば、規制部34cは、筒状部34aの後端部であって、互いに周方向に離れた複数箇所に設けられてもよい。
【0171】
・規制部34cは、第2実施形態において設けられてもよい。
<ダンパホルダ35について>
・伝達部35fは、必ずしも円環状をなしていなくてもよく、スナップピン31の軸線L3を中心とする円上の複数箇所において、その円に沿った円弧状に形成されてもよい。
【0172】
<弾性部材36について>
・弾性部材36として、上記各実施形態とは異なる形状を有するものが用いられてもよい。弾性本体部36aだけではなく、別の部位が付加されたものが弾性部材36とされてもよい。
【0173】
<異音抑制部37及び弾性板状部38について>
・異音抑制部37及び弾性板状部38は、上記各実施形態とは異なり、ピンホルダ34とは別に形成されて、環状凹部34dに取付けられてもよい。
【0174】
・弾性板状部38は必ずしも円環状をなしていなくてもよい。
・弾性板状部38が省略されてもよい。この場合には、ダンパホルダ35の伝達部35fはピンホルダ34の受け部34bに直接接触される。
【0175】
・異音抑制部37として、その内径が弾性本体部36aの内径よりも小さいものであることを条件に、同異音抑制部37の外径が弾性本体部36aの内径よりも小さいものや大きいものが用いられてもよい。
【0176】
<付勢部材について>
・付勢部材としては、エアバッグ装置20をステアリングホイール10から後方へ遠ざけるように付勢するものであることを条件として、コイルばね42とは異なる種類のばねや、ばねとは異なる弾性体が用いられてもよい。
【0177】
<リブ43について>
・リブ43の前端部が弾性板状部38に繋げられてもよい。
・リブ43における前端面43a及び後端面43bの少なくとも一方は、スナップピン31の軸線L3に対し直交してもよい。
【0178】
・リブ43は、異音抑制部37に代えてダンパホルダ35の伝達部35fに設けられてもよい。この場合、リブ43は、伝達部35fの内壁面から径方向内方へ突出するように設けられる。
【0179】
・複数のリブ43の一部が異音抑制部37に設けられ、残部がダンパホルダ35の伝達部35fに設けられてもよい。
・リブ43の数は複数であることを条件に変更されてもよい。
【0180】
・各リブ43の形状が第2実施形態とは異なる形状に変更されてもよい。
例えば、各リブ43の形状は、ダンパホルダ35の伝達部35fの内周面に対し、面接触に代えて線接触又は点接触する形状に変更されてもよい。
【0181】
<その他>
・上記エアバッグ装置の支持構造が適用されるステアリングホイールは、車両以外の乗物、例えば、航空機、船舶等における操舵装置のステアリングホイールであってもよい。
【0182】
以下に上記各実施形態から把握できる技術的思想を、その効果とともに記載する。
(イ)前記リブは偶数設けられており、そのうちの1つの前記リブは、他の1つのリブに対し前記スナップピンの軸線を挟んで対向する箇所に配置されている請求項11〜15のいずれか1項に記載のエアバッグ装置の支持構造。
【0183】
上記の構成によれば、複数のリブのうちの1つは、他の1つのリブに対しスナップピンの軸線を挟んで対向する箇所に位置する。このことから、弾性部材を支点とするエアバッグ装置の揺動を規制する機能と、リブの追加に伴う反発力の増加を抑制する機能とは、上記軸線を挟んで相対向する箇所で、すなわち、振動方向の両側でバランスよく発揮される。
【0184】
(ロ)前記リブは、前記スナップピンにおける軸線の周りの4箇所以上の偶数箇所に、等角度毎に配置されている請求項11〜15及び上記(イ)のいずれか1項に記載のエアバッグ装置の支持構造。
【0185】
上記の構成によれば、ステアリングホイールが振動した場合、上記の条件を満たした4以上の規制部によって、弾性部材を支点とするエアバッグ装置の揺動を規制する機能と、リブの追加に伴う反発力の増加を抑制する機能とが発揮される。振動の周波数特性を安定化させる効果が、弾性部材の周方向の組付け位置に拘わらず得られる。