特許第6744589号(P6744589)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 荒川化学工業株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6744589
(24)【登録日】2020年8月4日
(45)【発行日】2020年8月19日
(54)【発明の名称】製紙用歩留剤の希釈液の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D21H 21/10 20060101AFI20200806BHJP
   D21H 17/37 20060101ALI20200806BHJP
   C08F 220/56 20060101ALI20200806BHJP
【FI】
   D21H21/10
   D21H17/37
   C08F220/56
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-133313(P2018-133313)
(22)【出願日】2018年7月13日
(65)【公開番号】特開2020-12204(P2020-12204A)
(43)【公開日】2020年1月23日
【審査請求日】2019年1月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000168414
【氏名又は名称】荒川化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】神原 隆介
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 大輔
【審査官】 堀内 建吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−282391(JP,A)
【文献】 特開2011−184818(JP,A)
【文献】 特開2018−108560(JP,A)
【文献】 特開2001−213968(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/050416(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/090496(WO,A1)
【文献】 特開2012−200638(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0004405(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B1/00−D21J7/00
C08C19/00−19/44
C08F6/00−246/00、301/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の条件(I)を満たす(メタ)アクリルアミド系ポリマー(A)を含む製紙用歩留剤を2段階希釈して、下記の条件(II)を満たす希釈液を得る製造方法であって、
前記製紙用歩留剤に電気伝導度0.1〜1mS/cmの水(B)を混合して1段階希釈液を調製する工程、次に、1段階希釈液に電気伝導度1〜50mS/cmの水(C)を混合して2段階希釈液を調製する工程を含む製紙用歩留剤の希釈液の製造方法。
条件(I):0.5規定NaCl水溶液で製紙用歩留剤中の(A)成分の濃度を0.5重量%に希釈した際の温度25℃における粘度をXmPa・s、
イオン交換水で製紙用歩留剤中の(A)成分の濃度を0.5重量%に希釈した際の温度25℃における粘度をYmPa・sとしたとき、
50≦X≦500、及び15≦Y/X≦100である。
条件(II):A)成分の濃度が0.01〜1重量%のときの電気伝導度が1〜50mS/cm、及び温度25℃での粘度が1〜1,500mPa・sである。
【請求項2】
(A)成分が、(メタ)アクリルアミド(a1)、並びにカチオン性ビニルモノマー(a2)及び/又はアニオン性ビニルモノマー(a3)を含むモノマー成分のポリマーを含む、請求項1の製紙用歩留剤の希釈液の製造方法
【請求項3】
(A)成分の1規定NaCl水溶液中での固有粘度(温度25℃)が5〜30dl/gである、請求項1又は2の製紙用歩留剤の希釈液の製造方法
【請求項4】
製紙用歩留剤の形態が、油中水型エマルション又は粉末である請求項1〜3のいずれかの製紙用歩留剤の希釈液の製造方法
【請求項5】
(a2)成分が、第3級アミノ基含有(メタ)アクリレート及び/又は該(メタ)アクリレートの4級化塩である請求項〜4のいずれかに記載の製紙用歩留剤の希釈液の製造方法
【請求項6】
(a3)成分が、アクリル酸、イタコン酸及び無水イタコン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項〜5のいずれかに記載の製紙用歩留剤の希釈液の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製紙用歩留剤の希釈液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原料パルプへ添加する製紙薬品の1つである製紙用歩留剤は、パルプやパルプの微細繊維、紙力増強剤やサイズ剤等の薬品及び填料等を紙中へ歩留まらせる効果を有する。また、脱水時の水切れを良くする濾水効果も持ち合わせたものである。その主流は(メタ)アクリルアミド系ポリマーであり、その形態も塩水中分散液、油中水型エマルション、粉末等の様々なものがある。
【0003】
また、近年の抄紙系のクローズド化により、原料パルプ中に微細繊維、填料や夾雑物が多く存在し、白水も再利用される動きがあり、製紙用歩留剤の本来の効果が発揮され難く、その改善に(メタ)アクリルアミド系ポリマーを高分子量化する検討がなされている。しかしながら、高分子量化に伴って粘度も上昇するため、製紙用歩留剤を水で希釈した際にダマが生じ、希釈に時間を要する、または希釈液の粘度も高くなり、原料パルプへ添加した際に分散性が不十分となり、濾水及び歩留効果が発揮され難くなる。
【0004】
前記の問題点を解決する技術としては、例えば、水溶性ポリマーの油中水型エマルションに希釈水を混合して1段階希釈液とし、該1段階希釈液にさらに希釈水を混合して2段階希釈液とするものが公知である(特許文献1)。しかしながら、未だ製紙用歩留剤の希釈液の粘度が高く、濾水及び歩留効果も改良する余地があった。また、本発明の技術分野とは異なるが、高分子量ポリマーの希釈方法としてナトリウムイオンを100ppm以上の濃度で含有する希釈用水に、粉末状水溶性カチオン高分子及びW/O型エマルション状水溶性カチオン高分子を同時又は別々に添加して、希釈させた水溶性カチオン高分子溶液も公知である(特許文献2)が、当該方法では2種類の薬品が必須であり、複数の希釈装置を要するため、設備面で複雑になるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−213968号公報
【特許文献2】特開2015−006636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、希釈した液が低粘度であり、優れた濾水及び歩留効果を有する製紙用歩留剤の希釈液の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討したところ、特定の条件において、所定の粘度及び電気伝導度を有する製紙用歩留剤の希釈液の製造方法を見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の製紙用歩留剤の希釈液の製造方法に関する。
【0008】
1. 下記の条件(I)を満たす(メタ)アクリルアミド系ポリマー(A)を含む製紙用歩留剤を2段階希釈して、下記の条件(II)を満たす希釈液を得る製造方法であって、
前記製紙用歩留剤に電気伝導度0.1〜1mS/cmの水(B)を混合して1段階希釈液を調製する工程、次に、1段階希釈液に電気伝導度1〜50mS/cmの水(C)を混合して2段階希釈液を調製する工程を含む製紙用歩留剤の希釈液の製造方法。
条件(I):0.5規定NaCl水溶液で製紙用歩留剤中の(A)成分の濃度を0.5重量%に希釈した際の温度25℃における粘度をXmPa・s、
イオン交換水で製紙用歩留剤中の(A)成分の濃度を0.5重量%に希釈した際の温度25℃における粘度をYmPa・sとしたとき、
50≦X≦500、及び15≦Y/X≦100である。
条件(II):A)成分の濃度が0.01〜1重量%のときの電気伝導度が1〜50mS/cm、及び温度25℃での粘度が1〜1,500mPa・sである。
【0009】
2.(A)成分が、(メタ)アクリルアミド(a1)、並びにカチオン性ビニルモノマー(a2)及び/又はアニオン性ビニルモノマー(a3)を含むモノマー成分のポリマーを含む、前項1の製紙用歩留剤の希釈液の製造方法
【0010】
3.(A)成分の1規定NaCl水溶液中での固有粘度(温度25℃)が5〜30dl/gである、前項1又は2の製紙用歩留剤の希釈液の製造方法
【0011】
4.製紙用歩留剤の形態が、油中水型エマルション又は粉末である前項1〜3のいずれかの製紙用歩留剤の希釈液の製造方法
【0012】
5.(a2)成分が、第3級アミノ基含有(メタ)アクリレート及び/又は該(メタ)アクリレートの4級化塩である前項〜4のいずれかに記載の製紙用歩留剤の希釈液の製造方法
【0013】
6.(a3)成分が、アクリル酸、イタコン酸及び無水イタコン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種である、前項〜5のいずれかに記載の製紙用歩留剤の希釈液の製造方法
【発明の効果】
【0015】
本発明の製紙用歩留剤の希釈液の製造方法は所定の条件において、特定の粘度及び電気伝導度を満たすものであり、製紙用歩留剤の希釈液は比較的低粘度となり、原料パルプへ添加した際の分散性が良好であり、優れた濾水及び歩留効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の製紙用歩留剤は、(メタ)アクリルアミド系ポリマー(A)(以下、(A)成分という)を含むものである。
【0017】
(A)成分としては、特に限定されないが、濾水及び歩留効果に優れる点から、(メタ)アクリルアミド(a1)(以下、(a1)成分という)、並びにカチオン性ビニルモノマー(a2)(以下、(a2)成分という)及び/又はアニオン性ビニルモノマー(a3)(以下、(a3)成分という)を含むモノマー成分のポリマーを含むことが好ましい。
【0018】
(a1)成分としては、アクリルアミド、メタクリルアミド等が挙げられる。
【0019】
(a2)成分としては、特に限定されず、例えば、第3級アミノ基含有ビニルモノマー、より具体的には、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の第3級アミノ基含有(メタ)アクリレート;N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の第3級アミノ基含有アルキル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。また、(a2)成分としては、第3級アミノ基含有ビニルモノマーの4級化塩も使用できる。当該4級化塩としては、例えば、第3級アミノ基含有ビニルモノマーの塩酸塩、硫酸塩等の無機酸塩;酢酸塩等の有機酸塩;第3級アミノ基含有ビニルモノマーと4級化剤とを反応させてなるもの等が挙げられる。前記4級化剤としては、特に限定されず、例えば、メチルクロライド、ベンジルクロライド、ジメチル硫酸、エピクロルヒドリン等が挙げられる。これらは、単独でも2種以上を組み合わせても良い。中でも(a1)成分との高い共重合性の点から、第3級アミノ基含有(メタ)アクリレート及び/又は該(メタ)アクリレートの4級化塩を含むことが好ましく、より高分子量のポリマーを得られる点から、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの4級化塩が好ましく、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレートベンジルクロライドがより好ましい。
【0020】
上記(a1)成分及び(a2)成分の含有量は、(A)成分をなす全モノマー成分を100モル%として、(a1)成分が、通常50〜95モル%程度、好ましくは60〜90モル程度である。また(a2)成分が通常、5〜50モル%程度、好ましくは10〜40モル%程度である。これにより、高分子量の(A)成分を得ることができる。
【0021】
(a3)成分としては、アニオン性ビニルモノマーであれば特に限定されず、例えば、アクリル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、メタリルスルホン酸、フマル酸、マレイン酸等が挙げられる。なお、これらはナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩やアンモニウム塩等で使用しても良い。これらの中でも、より高分子量のポリマーを得られる点から、アクリル酸、イタコン酸及び無水イタコン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0022】
上記(a1)成分及び(a3)成分の含有量は、(A)成分をなす全モノマー成分を100モル%として、(a1)成分が、通常50〜95モル%程度、好ましくは60〜90モル程度である。また(a3)成分が通常、5〜50モル%程度、好ましくは10〜40モル%程度である。これにより、高分子量の(A)成分を得ることができる。
【0023】
上記モノマー成分が、(a1)成分、(a2)成分及び(a3)成分をいずれも含有する場合のそれぞれの含有量は、10〜90モル%、5〜45モル%、及び5〜45モル%であることが好ましい。またより高分子量のポリマーを得られる点から、15〜85モル%、7.5〜42.5モル%及び7.5〜42.5モル%がより好ましく、20〜80モル%、10〜40モル%及び10〜40モル%が特に好ましい。
【0024】
また、上記モノマー成分は、(a1)〜(a3)成分を上記の含有量の範囲で含有する限りにおいて、必要に応じて、(a1)〜(a3)成分以外のラジカル重合性単量体(a4)(以下、(a4)成分という)を含んでも良い。(a4)成分としては、例えば、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−メチレンビスアクリルアミド、1,3,5−トリアクロイルヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン等の架橋性単量体;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニルモノマー;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等のアルキル(メタ)アクリレート類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル類等が挙げられる。これらは、単独でも2種以上を組み合わせても良い。また、(a4)成分の使用量は、(a1)〜(a4)成分の合計量を100モル%として、5モル%未満である。
【0025】
更に、上記モノマー成分は他の成分を含んでも良い。他の成分としては、例えば、クエン酸、コハク酸、シュウ酸等の有機酸;塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の無機塩基;消泡剤、酸化防止剤等が挙げられる。
【0026】
製紙用歩留剤の形態としては、特に限定されず、例えば、水溶液、塩水中分散液、油中水型エマルション、粉末等が挙げられるが、中でも油中水型エマルション、粉末が好ましい。
【0027】
油中水型エマルションは、特に限定されず、公知の製造方法により得られる。その方法としては、例えば、(a1)〜(a4)成分、炭化水素からなる油状物質、及び界面活性剤を混合し、強撹拌下、エマルションを形成させた後、窒素雰囲気中、重合開始剤の存在下で重合することが挙げられる。
【0028】
炭化水素からなる油状物質としては、特に限定されず、例えば、イソパラフィン、流動パラフィン等のパラフィン類;灯油、軽油等の鉱油;ミリスチン酸エステル、ポリブテン等の炭化水素系合成油等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0029】
界面活性剤の例としては、特に限定されないが、HLB3〜6のノニオン性界面活性剤を用いることが好ましく、具体例としては、ソルビタンモノオレ−ト、ソルビタンセスキオレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレ−ト、ソルビタンモノパルミテ−ト等が挙げられる。界面活性剤の使用量としては、油中水型エマルションの全量に対して0.5〜10重量%であり、好ましくは1〜5重量%である。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0030】
重合開始剤としては、熱、または光によって分解し、開始ラジカルを発生させる開始剤であれば特に限定されず、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩;2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩等の水溶性アゾ系化合物;2、2’−アゾビスイソブチロニトリル等の油溶性アゾ化合物;過酸化水素等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。また、重合開始剤の添加方法についても特に限定されず、一括添加または分割添加または連続滴下等を適宜選択できる。また、重合開始剤の使用量も特に限定されず、全モノマー成分100重量部に対して、通常は0.001〜0.5重量部程度、好ましくは0.005〜0.3重量部程度である。
【0031】
更に任意ではあるが、過酸化物のラジカル発生を容易にする点で、例えば、亜硫酸ナトリウム等の亜硫酸塩;亜硫酸水素ナトリウム等の亜硫酸水素塩;トリエタノールアミンや硫酸第一銅、硫酸鉄等を使用できる。
【0032】
重合温度としては、通常、20〜80℃であるが、好ましくは30〜60℃である。また、重合濃度は、通常10〜60重量%であり、好ましくは20〜50重量%である。
【0033】
得られた油中水型エマルションには、転相剤と呼ばれる親水性界面活性剤を添加して、エマルション粒子を水になじみ易くし、水へ溶解しやすくすることができる。親水性界面活性剤の例としては、カチオン性界面活性剤ノニオン性界面活性剤が挙げられるが、本発明においては、ノニオン性界面活性剤が好ましい。
【0034】
ノニオン性界面活性剤としては、特に限定されず、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエ−テル、ポリオキシエチレンステアリルエ−テル、ポリオキシエチレンラウリルエ−テル、ポリオキシエチレンセチルエ−テル、ポリオキシエチレントリデシルエ−テル、ポリオキシエチレンデシルエ−テル、ポリオキシエチレンオレイルエ−テル、又はこれらの混合物等が挙げられる。
【0035】
粉末は、特に限定されず、公知の製造方法により得られる。その方法としては、例えば、(a1)〜(a4)成分を含むモノマー成分のポリマーを乾燥した後、粉砕し細粒化すること等が挙げられる。詳細には、前記モノマー成分の混合液に重合開始剤、又は光増感剤を加えて、紫外光若しくは可視光、電子線等の照射により行う。重合時の形態としては、シート等の薄膜状のもの、又は直方体等の厚みのあるものを用いて重合し、その後粗砕し、ミートチョッパー等によって造粒し乾燥、その後、粉砕、篩い分け等の工程を経て粉末の(A)成分を得る方法である。
【0036】
乾燥前にゲル状になった重合物を造粒することにより、(A)成分を効率的に乾燥することができる。乾燥前の造粒物の平均粒子径は0.5〜20mmが好ましい。0.5mmより小さいと造粒時に造粒装置の負荷が大きくなる。造粒物の粒子径が20mmを超えると、乾燥時に十分に内部まで乾燥することが困難になる。同様の点から、より好ましくは1〜10mmである。
【0037】
造粒後の乾燥方法は特に限定されず、熱風乾燥、伝導伝熱乾燥、輻射熱乾燥等が挙げられる。
【0038】
単量体あるいは単量体混合物水溶液の濃度は、特に限定されず、通常20〜80質量%である。濃度が高ければ乾燥工程は早いが、水溶性高分子の重合度が上がらない場合があるため、好ましくは25〜60質量%である。
【0039】
重合開始の温度としては、特に限定されず、通常、10〜80℃である。光増感剤と紫外光あるいは可視光、電子線等の照射によって開始する場合も、0℃で開始することは可能であるが、好ましくは10〜40℃である。
【0040】
重合開始剤は、特に限定されず、前述の過酸化物系開始剤、アゾ系開始剤、レドックス系開始剤等が使用でき、また光重合を行う場合は、光重合開始剤が使用できる。また、重合開始剤の添加方法についても特に限定されず、一括添加または分割添加または連続滴下等を適宜選択できる。また、重合開始剤の使用量も特に限定されず、全モノマー成分100重量部に対して、通常は0.001〜0.5重量部程度、好ましくは0.005〜0.3重量部程度である。
【0041】
光重合開始剤としては光によって分解し、開始ラジカルを発生する開始剤であれば、特に限定されず、例えば、前記アゾ系開始剤に加えて、α−ヒドロキシケトン類、アシルホスフィンオキサイド化合物等を使用でき、より具体的には、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾフェノン等が挙げられる。また、光重合開始剤は、水に希釈してモノマー成分の混合液に添加することが好ましいが、水に不溶の場合は、エタノール、イソプロパノール等のアルコール、アセトンやトルエン等の有機溶媒も使用できる。
【0042】
光重合の場合、紫外域の光、特に近紫外線を照射することが好ましい。近紫外線の発生は、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、蛍光ケミカルランプ、蛍光青色ランプ等が挙げられる。また、近紫外線の波長領域としては、300〜500nmが好ましい。
【0043】
紫外線の照射強度は、特に限定されず、通常0.1〜100W/mの範囲であり、特に近紫外線を10W/m以下の強度で照射して重合を開始させることが好ましい。また、より好ましくは、8W/m以下であり、更に好ましくは、6W/m以下である。また、近紫外線を照射して重合する間は、近紫外線の照射強度が一定であっても変化させても良い。
【0044】
(A)成分の物性としては、特に限定されないが、濾水及び歩留効果の点から、1規定NaCl水溶液中での固有粘度(温度25℃)が、好ましくは5〜30dl/g程度であり、より好ましくは8〜25dl/g程度である。なお、固有粘度については、製紙用歩留剤を1規定NaCl水溶液で所定濃度に希釈した希釈液を調整し、オストワルド粘度計を用いて測定した。
【0045】
本発明の製紙用歩留剤は、(A)成分を含むものであるが、必要に応じて、各種添加剤を配合しても良い。該添加剤としては、特に限定されず、消泡剤、防腐剤、キレート剤、水溶性アルミニウム化合物、硫酸アンモニウムや硫酸ナトリウム等の無機塩、尿素、多糖類等が挙げられる。
【0046】
本発明の製紙用歩留剤は、濾水及び歩留効果の点から、以下の条件(I)を満たすことが重要である。
【0047】
条件(I)とは、0.5規定NaCl水溶液で製紙用歩留剤中の(A)成分の濃度を0.5重量%に希釈した際の温度25℃における粘度をXmPa・s、イオン交換水で製紙用歩留剤中の(A)成分の濃度を0.5重量%に希釈した際の温度25℃における粘度をYmPa・sとしたときに、50≦X≦500、及び15≦Y/X≦100を満たすことである。ここで“(A)成分の濃度”は、(A)成分の重量を、製紙用歩留剤の全重量(有姿)で除し、更に100で乗じた計算値である。また粘度は、B型粘度計(ブルックフィールド粘度計)で測定した値である。以下、X、Y/Xの順に詳細に説明する。
【0048】
Xの範囲は、50≦X≦500である。Xが50未満の場合、(A)成分の重量平均分子量が低いものであり、製紙用歩留剤自体の濾水及び歩留効果が発揮され難く、500を超える場合、(A)成分の重量平均分子量が高いものであり、希釈した際の粘度が高く、例えば原料パルプへ添加した際に分散不良を起こし、濾水及び歩留効果が向上しにくい。また同様の点から、好ましくは60≦X≦450、より好ましくは70≦X≦400である。
【0049】
またY/Xの範囲は、15≦Y/X≦100である。当該範囲を満たすことにより、製紙用歩留剤が濾水及び歩留効果に優れたものとなる。また同様の点から、好ましくは15≦Y/X≦90、より好ましくは15≦Y/X≦80である。
【0050】
また、本発明の製紙用歩留剤は、濾水及び歩留効果の点から、前記条件(I)に加えて、条件(II)を満たすことも重要である。
【0051】
条件(II)とは、製紙用歩留剤を2段階希釈し、その希釈液中の(A)成分の濃度が0.01〜1重量%のときの電気伝導度が1〜50mS/cm、及び温度25℃での粘度が1〜1,500mPa・sを満たすことである。ここで、“2段階希釈”とは、製紙用歩留剤へ溶媒を加えて一度希釈した後(本工程を以下、“1段階希釈”、得られた希釈液を以下、“1段階希釈液”ともいう)、さらに溶媒を加えて希釈すること(ここで得られた希釈液を以下、“2段階希釈液”ともいう)をいう。
【0052】
条件(II)では、製紙用歩留剤を2段階希釈した希釈液を用いる。前記希釈液は、未溶解物が発生し難く、水中でポリマーが十分に広がるため、優れた濾水及び歩留効果も発揮する。一方、1段階希釈の場合、希釈に時間を要する、又は[特許文献1]に記載のように濾水及び歩留効果が向上しにくくなる。
【0053】
希釈に用いる溶媒としては、水が好ましく、例えば、純水、超純水、水道水、イオン交換水、軟水、硬水、工業用水、処理水、白水等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0054】
前記希釈液の物性としては、粘度を低くする点から、(A)成分の濃度を0.01〜1重量%にし、更に当該濃度のときの電気伝導度が1〜50mS/cmである。電気伝導度が1mS/cm未満であると、希釈液の粘度がやや高い傾向にあるため、原料パルプへ添加した際に分散不良を起こし、濾水及び歩留効果が向上しにくく、50mS/cmを上回ると、金属や夾雑物のイオン性により、(A)成分と原料パルプとのイオン的相互作用、又は(A)成分と他の製紙薬品(硫酸アルミニウム等)とのイオン的相互作用が阻害され、濾水及び歩留効果が向上しにくい。また同様の点から、電気伝導度が、好ましくは1.5〜45mS/cmであり、より好ましくは2〜40mS/cmである。なお、電気伝導度は市販の電気伝導度計で測定した値であり、電気伝導度計としては、『pH/COND METER D−54』((株)堀場製作所製)等が挙げられる。
【0055】
さらに、前記濃度での温度25℃における粘度は1〜1,500mPa・sである。1,500mPa・sを上回ると、原料パルプへ添加した際に分散不良を起こし、濾水及び歩留効果が向上しにくい。また同様の点から、前記粘度が、好ましくは1〜1,300mPa・sであり、より好ましくは1〜1,100mPa・sである。
【0056】
条件(II)の希釈液としては、特に限定されないが、得られる希釈液の粘度が低く、原料パルプへ添加した際に分散しやすく、かつ優れた濾水及び歩留効果を有する点から、製紙用歩留剤及び電気伝導度0.1〜1mS/cmの水(B)(以下、(B)成分という)からなる1段階希釈液、並びに電気伝導度1〜50mS/cmの水(C)(以下、(C)成分という)を含むものが好ましい。
【0057】
前記希釈液は、まず、製紙用歩留剤に(B)成分を混合して1段階希釈液を調製する工程、次いで、1段階希釈液に(C)成分を混合して2段階希釈液を調製する工程により得られる。
【0058】
まず、製紙用歩留剤に(B)成分を混合して1段階希釈液を調製する工程について説明する。
【0059】
(B)成分は、電気伝導度0.1〜1mS/cmの水である。電気伝導度が1mS/cmを上回ると、濾水及び歩留効果が向上しにくい。なお、(B)成分としては、例えば、純水、超純水、水道水、イオン交換水、軟水、硬水、海水、工業用水、処理水、又はこれらの水を硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム等の塩で電気伝導度を0.1〜1mS/cmにしたもの等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を混合しても良い。また、(B)成分の電気伝導度としては、濾水及び歩留効果が高くなる点から、好ましくは0.1〜0.8mS/cmであり、より好ましくは0.1〜0.5mS/cmである。
【0060】
本発明の製紙用歩留剤を(B)成分で希釈する場合、室温又は加温下で行うことができ、加温の場合、その温度は特に限定されないが、5〜50℃程度が好ましい。また、混合する手段としては、特に限定されず、例えば、インラインミキサー、撹拌機等が挙げられる。
【0061】
1段階希釈液の物性としては、特に限定されず、例えば、希釈液を撹拌機等で混合した際に負荷が過度にかかることなく、また2段階希釈した際に水とよく分散し、かつ優れた濾水及び歩留効果を示しやすい点から、(A)成分の濃度が通常は0.3〜2重量%程度であり、好ましくは0.35〜1.8重量%程度である。また、同様の観点から、温度25℃における粘度が、通常は500〜20,000mPa・s程度、好ましくは1,000〜19,000mPa・s程度である。
【0062】
次に、1段階希釈液に(C)成分を混合して2段階希釈液を調製する工程について説明する。
【0063】
(C)成分は、1段階希釈液を更に希釈するために用いるもので、電気伝導度1〜50mS/cmの水である。電気伝導度が1mS/cm未満であると、希釈した際に粘度がやや高い傾向にあるため、原料パルプへ添加した際に分散不良を起こし、濾水及び歩留効果が向上しにくく、50mS/cmを上回ると、金属や夾雑物のイオン性により、(A)成分と原料パルプとのイオン的相互作用、又は(A)成分と他の製紙薬品(硫酸アルミニウム等)とのイオン的相互作用が阻害され、濾水及び歩留効果が向上しにくい。なお、(C)成分としては、例えば、処理水、白水、海水、工業用水、水道水、又はこれらの水を硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム等の塩で電気伝導度を1〜50mS/cmにしたもの等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を混合しても良い。また、(C)成分の電気伝導度としては、同様の点から、好ましくは1.5〜45mS/cmであり、より好ましくは2〜40mS/cmである。
【0064】
1段階希釈液及び(C)成分を混合する場合、室温又は加温下で行うことができ、加温の場合、その温度は特に限定されないが、5〜50℃程度が好ましい。また、混合する手段としては、特に限定されず、例えば、インラインミキサー、撹拌機等が挙げられる。
【0065】
本発明の製紙用歩留剤は、濾水及び歩留効果を発揮する上で、特に、条件(II)に記載したように、濃度0.01〜1重量%に希釈した際に、電気伝導度1〜50mS/cm、及び温度25℃における粘度1〜1,500mPa・sとなる希釈液をパルプスラリー中へ添加する。なお、ここでの希釈液としては、製紙用歩留剤及び(B)成分からなる1段階希釈液、並びに(C)成分を含むものを用いても良い。防腐剤、消泡剤等を前もって希釈液に添加することもできる。
【0066】
パルプスラリー中へ添加する場合には、条件(II)に記載の2段階希釈液をそのまま、又は更にイオン交換水等で希釈してパルプスラリーに添加し抄紙する。添加量は特に限定されないが、パルプの乾燥重量に対して、0.003〜0.2重量%程度が好ましい。また、パルプの種類も特に限定されず、LBKP、NBKP等の化学パルプや、GP、TMP等の機械パルプや古紙パルプ等が挙げられる。製紙用歩留剤の希釈液を添加する際は、その他に、定着剤として硫酸バンドや水酸化アルミニウム等、pH調整剤に硫酸や水酸化ナトリウム等、サイズ剤や紙力増強剤、湿潤紙力剤、填料として、タルク、クレー、カオリン、二酸化チタン及び炭酸カルシウム等を添加できる。
【実施例】
【0067】
以下に、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、実施例および比較例における「g」及び「%」は、特に断りのない限り、重量基準である。
【0068】
製造例1
撹拌機、還流冷却管、温度計および窒素導入管を備えた反応容器にイソパラフィン230.0gにソルビタンモノオレート17.5gを仕込んで希釈させた。別に50%アクリルアミド水溶液416.4g(80モル%)、80%アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド177.2g(20モル%)、イオン交換水105.9g、10%イソプロピルアルコール1.0gを混合した。油と水溶液を混合し、ホモジナイザーにて1000rpmで5分間撹拌乳化させた。得られた溶液の温度を40〜43℃に保ち、窒素置換を2時間行った後、1重量%の2,2‘−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩(商品名:『V−50』、和光純薬工業(株)製)12.0gを加え、重合反応を開始させた。40±1℃で12時間重合させ反応を完了させた。生成した油中水型エマルションに転相剤としてポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルエーテル14.6gを添加して混合し、形態が油中水型エマルションである製紙用歩留剤を得た。組成及び物性を表1に示す(以下同様)。
【0069】
製造例2〜4、比較製造例1〜2
製造例1において、重合温度、及び1重量%V−50水溶液の使用量等を変更して、形態が油中水型エマルションである製紙用歩留剤をそれぞれ得た。
【0070】
製造例5〜12、比較製造例3
表1に示す組成で、製造例1と同様の方法で行い、形態が油中水型エマルションである製紙用歩留剤をそれぞれ得た。
【0071】
製造例13
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素導入管および冷却装置を備えた反応容器に50%アクリルアミド水溶液416.4g(80モル%)、80%アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド177.2g(20モル%)及びイオン交換水102.5gを仕込んだ。フラスコ内部を十分に窒素置換した後、得られた溶液の温度を35℃に調整し、光重合開始剤として10重量%V−50水溶液3.5gを仕込み、全体を撹拌し均一にした。高圧水銀灯(400W、波長:365nm、光量:20mW/cm)にて照射し、重合を開始し、窒素流入をさせながら2時間照射した。重合終了後、含水ゲル状の重合体を得た。得られた含水ゲル状の重合体を容器から取り出して細断し、80℃の送風乾燥機内で20時間乾燥した後、粉砕して、形態が粉末である製紙用歩留剤を得た。
【0072】
製造例14
表1に示す組成で、製造例12と同様の方法で合成し、形態が粉末である製紙用歩留剤を得た。
【0073】
(粘度測定用の希釈液の調製)
撹拌機を備えた容器に、0.5規定NaCl水溶液、またはイオン交換水を仕込み、撹拌機(600rpm)で撹拌しながら(A)成分の濃度が0.5%となるように製紙用歩留剤を加えた。製紙用歩留剤の形態が油中水型エマルションの場合は、室温下で1時間撹拌し、粉末の場合は溶解するまで室温下で撹拌した。
【0074】
(希釈液の粘度)
上記希釈液の温度が25℃となるように調節した後、B型粘度計(芝浦システム(株)製)を用いて測定した。なお、0.5規定NaCl水溶液で希釈した液の粘度(XmPa・s)は回転数を30rpm、イオン交換水で希釈した液の粘度(YmPa・s)は回転数を6rpmにして、それぞれ測定した。結果を表1に示す(以下同様)。
【0075】
(製紙用歩留剤の固有粘度)
製紙用歩留剤を1規定NaCl水溶液で(A)成分の濃度(c)が0.02g/dl、0.04g/dl、0.06/dl、0.08g/dlとなるように希釈した液を25℃に調整し、オストワルド粘度計を用いてそれぞれの落下時間(t)を測定した。同様に、1規定NaCl水溶液の落下時間(t0)も測定し、(式2)より比粘度(ηsp)を算出した。
(式2)ηsp=(t/t0)−1
得られたηspを重合体濃度で除した値(ηsp/c)を縦軸に、重合体濃度(c)を横軸にしてプロットし、得られた直線の切片を固有粘度(単位:dl/g)とした。
【0076】
【表1】
*1:0.5規定NaCl水溶液で(A)成分の濃度を0.5%に希釈した液の粘度
*2:イオン交換水で(A)成分の濃度を0.5%に希釈した液の粘度
【0077】
表1の略号は、以下の化合物を表す。
・AM:アクリルアミド
・Q :アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド
・BQ:N,N−ジメチルアミノエチルアクリレートベンジルクロライド
・AA・Na:アクリル酸ナトリウム
【0078】
実施例1
撹拌機を備えた容器に、(A)成分の濃度が0.5%となるように仕込んだ水道水(電気伝導度:0.2mS/cm)へ製造例1の製紙用歩留剤を加えて、撹拌機(600rpm)で室温下1時間撹拌させ、1段階希釈液を得た。次いで処理水(電気伝導度:3mS/cm)を(A)成分の濃度が0.1%となるように加えて、更に1時間撹拌し、製紙用歩留剤の2段階希釈液を得た。表2に組成及び物性を示す(以下同様)。
【0079】
実施例2〜26、比較例1〜7
表2に示す処方で、実施例1と同様に行い、製紙用歩留剤の1段階希釈液、及び2段階希釈液をそれぞれ得た。
【0080】
実施例27
実施例1と同様の容器に、(A)成分の濃度が0.5%となるように仕込んだ水道水(電気伝導度:0.2mS/cm)へ製造例13の製紙用歩留剤を加えて、撹拌機(600rpm)で室温下溶解するまで撹拌させ、1段階希釈液を得た。次いで処理水(電気伝導度:3mS/cm)を(A)成分の濃度が0.1%となるように加えて、更に1時間撹拌し、製紙用歩留剤の2段階希釈液を得た。
【0081】
実施例28
表2に示す処方で、実施例27と同様に行い、製紙用歩留剤の1段階希釈液、及び2段階希釈液を得た。
【0082】
(希釈液の電気伝導度)
pH/COND METER D−54((株)堀場製作所製)を用いて測定した。
【0083】
(製紙用歩留剤の1段階希釈液及び2段階希釈液の粘度)
各製紙用歩留剤の1段階希釈液、及び2段階希釈液の温度が25℃となるように調節した後、B型粘度計(芝浦システム(株)製)を用いて、回転数を30rpmにして測定した。結果を表2に示す(以下同様)。
【0084】
段ボ−ル古紙をナイアガラ式ビーターにて叩解し、カナディアン・スタンダ−ド・フリ−ネス(C.S.F)280mlに調整し、固形分濃度1重量%の紙料を得た。つぎに、紙料の固形分量に対し1.0重量%の硫酸バンドを添加してpH7.0のパルプスラリーを調製した。次に、パルプスラリーに各製紙用歩留剤の2段階希釈液を、パルプスラリー中の紙料の固形分重量に対して0.02重量%添加した後、パルプスラリー500mlをブリットジャー(40メッシュ)に入れタービン羽根を備えた撹拌機を用いて撹拌しながら(2000rpm)下穴から濾水100mlを採取し、その重量を測定後、No2濾紙により吸引濾過した。105℃の循風乾燥機で3時間乾燥し、乾燥後の重量を測定し、下穴から採取した濾液の濃度を求めた。別途、予め同様の方法で薬品添加後のパルプスラリー濃度も算出し、(式1)より全歩留り(OPR)を求めた。
(式1)OPR(%)={(Z1−Z2)/Z1}×100
(Z1:薬品添加後のパルプスラリーの濃度、Z2=下穴から採取した濾液の濃度)
【0085】
また、上記薬品を添加した後のパルプスラリーの濾水量をJIS P8121に準拠して測定した。評価結果を表2に示す。
【0086】
【表2】